説明

動物用ケージ

【課題】 本発明は、ペット滞在空間部内を常に減圧状態とすることにより室内にペット滞在空間部内空気を発散させることなく屋外に排気することにより他のペットへの感染を防止することができる動物用ケージを提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明は、ペット滞在空間を有する前面開口状の複数のケージセル3と、前記ケージセル3の開口端に開閉自在な状態で取り付けられる開閉扉8と、前記ケージセル3内にその開口端が前記開閉扉8に密接するような状態で収納されるペット滞在部18と、前記開閉扉8に設けられる空気取入れ口11と、前記空気取入れ口11より空気が吸い込まれて前記ペット滞在部18内が減圧した状態で換気流を生じさせる機能を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物用ケージに関する。詳しくは動物病院やペットホテルなどのように犬、猫などの動物を滞在させる動物用ケージに係るものである。
【背景技術】
【0002】
近年、犬や猫などのペットの飼い主が旅行等のために不在となる場合に、ペットを一時的に預る形で滞在させるペットホテル、あるいは動物病院での入院では、ペットを複数に間仕切りされたケージに滞在させるものが提案されており、例えば特許文献1に記載されている。具体的には図9に示すように、ケージセル101を壁部を介した連接方向において各々独立かつ分離可能に構成され、副壁部107にてケージセル101を連接配置したとき、それらケージセル101のペット滞在空間同士をペットの通行が可能な状態で連結する連結開口部102が設けられる。この連結開口部102に対し着脱可能に設けられ、かつ連結開口部102を閉塞する着脱壁部103が取り付けられ、いっぽうペット滞在空間内部の空気を吸い出すためにケージセル101に空気吸出し口104が形成され、空気吸出し口104には換気用配管105の第一端が連通し、換気用配管105の第二端に、換気用配管105から空気吸出し口104を経てペット滞在空間に吸出し方向の換気流を生じさせる換気駆動部106が設けられた構成のケージが提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2007−75025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながらペットホテルや動物病院では、必ずしも健康状態の良好なペットのみを滞在させることはなく、病気に掛かった、あるいは伝染病に感染したペットを滞在させる場合がある。したがって、互いに触れさせることがなくてもケージ内から室内への病原菌の発散により健康なペットに空気感染する恐れがある。
【0005】
また、特許文献1のケージでは、ペット滞在空間部の空気を吸い出すために、ケージセルに空気吸出し口が形成され、この空気吸出し口には換気用配管および換気駆動部を設けることにより屋外への排気を行うものであるが、ケージセルのペット滞在空間同士をペットの通行が可能な状態で連結する連結開口部が副壁部に設けられるために、ペットがせきすることなどにより病原菌が連結開口部を通して隣接するケージセルに拡散されて他のペットに病気が感染する恐れがある。
【0006】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであって、ペット滞在空間部内を常に減圧状態とすることにより室内にペット滞在空間部内空気を発散させることなく屋外に排気することにより他のペットへの感染を防止することができる動物用ケージを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明に係る動物用ケージは、ペット滞在空間を有する前面開口状の複数のケージセルと、前記ケージセルの開口端に開閉自在な状態で取り付けられる開閉扉と、前記開閉扉に設けられる空気取入れ口と、前記空気取入れ口より空気が吸い込まれて前記ペット滞在部内が減圧した状態で換気流を生じさせる機能を備える。
【0008】
ここで、ペット滞在空間内を減圧した状態で換気流を生じさせることにより、病気に感染したペットを滞在させる場合でも感染した空気が外部に漏れることなく換気させることで他のペットへの感染を防ぐことが可能となる。
【0009】
また、前記ケージセル内に、その開口端が前記開閉扉に密接するような状態で配置されるペット滞在部が設けられると共に、前記空気取入れ口より空気が吸い込まれて前記ペット滞在部内の空気が排気される機能を備えることにより、ペット滞在空間内の空気が室外へ排気されることで他のペットへの感染を防ぐことが可能となる。
【0010】
また、ペット滞在部内に、ペット滞在部底面との間に通気路が形成されるように敷板部を設け、敷板部には空気噴出し口が開口されると共に、開閉扉に設けられる空気取入れ口を前記通気路と連通状となる位置に設けることにより、空気取入れ口より吸い込まれる空気は敷板部とペット滞在部底面との間に通気路内に気流が生じ、敷板部に開口される空気噴出し口を通して換気されることによりペット滞在部内に滞在るペットは気流に晒されることがないためにストレスを感ずることなく過ごすことが可能となる。
【0011】
また、敷板部の下部に、ヒーターマットが収納できるヒーターマット挿入部が設けられることにより、ヒーターマットが露出することなく敷板部を暖めることができるために、ペットによるヒーターマットの損傷を防ぐとともに事故を未然に防ぐことが可能となる。
【0012】
また、ペット滞在部に換気機能を設け、かつケージセルに対して着脱自在とすることにより、既存のケージ、あるいはアングル材などによって骨組み状態で組み立てられたケージセルに取り付けることが可能となる。
【0013】
また、ペット滞在部が円筒形状に構成されることにより、掃除の際に角がないために非常に効率良く行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の動物用ケージによれば、ケージ内を常に減圧状態とすることによりペットが感染していた場合であっても病原菌に晒された空気をケージ外に漏れ出すことなく換気を行うことが可能となり他のペットへの感染を防ぐことができる。
【0015】
また、ケージ内に滞在中のペットは、換気流に晒されることがないためにストレスがなく過ごすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参酌しながら説明し、本発明の理解に供する。
図1は、本発明を適用した動物用ケージの一例を示す正面図、図2は、本発明を適用した動物用ケージの内部機構示す断面図、図3は、本発明を適用した動物用ケージのケージセルを示す斜視図である。
【0017】
ここで示すケージ本体1は、枠体2により格子状に組み合わされることで角形状の複数のケージセル3が形成されている。このケージセル3は、床面部4、天井部5及び左右壁6並びに奥壁部6Aにより取り囲まれた単一のペット滞在空間7が形成されている。
【0018】
また、ケージセル3の開口端には、開閉扉8が設けられる。この開閉扉8は、一端が連結枢支され、他端にレバー10が設けられ、このレバー10を手前に引くことで開閉扉8が開き、閉めるとレバーロックがかかるので内側から開くことがない構成とされている。更に、開閉扉8の下部には、空気取入れ口11が開口される。この空気取入れ口11には、スライド式の空気流入調整板12が設けられて空気の流入量を自在に調整できる構成とされている。
【0019】
更に、開閉扉8には、湿温度計30が設けられ、ケージセル3内の湿度および温度が確認できる構成とされている。また、ペットに点滴をする際に点滴のチューブを挿入するためのポート31が貫設されると共に、空気取入れ口11の周辺にはヒーターマットの電気コードを挿入するためのコード挿通穴32が開口された構成とされている。
【0020】
ここで、それぞれのケージセル3の奥壁部6Aには、排気口13が開口されている。これらの排気口13は、枠体2の後端に形成される排気ダクト14に連通されている。そしてこの排気ダクト14には換気用配管15が接続され、換気用配管15から空気吸出し口16を経て屋外へ換気を行う換気駆動部17が設けられた構成とされている。
【0021】
また、ケージセル3内には円筒状のペット滞在部18が設置されると共に、開口扉8側に向けて前傾した状態で設置され、このペット滞在部18内にペットが滞在するペット滞在空間部7が形成された構成とされている。また、ペット滞在部18内下部には平坦状とするための敷板部19が配置されている。この敷板部19は、円筒状のペット滞在部18の内周面に載置することにより内周面との間に通気路30が形成されている。
【0022】
また、敷板部19の下部には二重構造としたヒーターマット挿入部20が設けられると共に、敷板部19の両側に沿ってスリット状の空気噴出し口21が開口されている。
【0023】
図1に示す開閉扉8の下部の空気取入れ口11が図2に示すように、ペット滞在部18内に設置される敷板部19とペット滞在部18内周面との通気路30に位置することとなり、空気取入れ口11から吸い込まれた空気は敷板部19とペット滞在部18内周面との通気路30を通してペット滞在部18の空気噴出し口21より吹き出し、ケージセル3の奥壁部6Aの排気口13より排気されることからペットが気流に晒されることなく換気とケージセル3内を常に減圧状態に保持されている。
【0024】
また、図4は、本発明を適用した動物用ケージのペット滞在部の他の形態を示す説明図である。
ここで示す動物用ケージのペット滞在部18は、円筒形状に形成され、その一端側に排気ファン22が取り付けられた排気管25が取り付けられている。また、ペット滞在部18内には図3で詳述した敷板部19が設置されている。
【0025】
図4で示す構成のペット滞在部18の場合、枠体2により格子状に組み合わされることで角形状の複数のペット滞在空間7が形成されているケージセル3に対してケージセル3の奥壁部6Aにペット滞在部18の排気管25を嵌め入れられる貫通穴(図示せず。)を設けることで容易に本発明を実現することができる。
【0026】
また、図5に示すのは、ペット滞在部を使用した動物用ケージの他の例を示すものであり、アングル材などにより枠組されたケージセル3が形成され、このケージセル3の扉側の開口端に、開閉扉8が取り付けられている。
【0027】
ここで、開閉扉8にペット滞在部18の開口端が当接するような状態でペット滞在部18がアングル部材などによって枠組みされるケージセル3内に配置されている。更に、ペット滞在部18の排気管25に屋外に配管される排気ホース26を連結することによりペット滞在部18内のペットに取り入れ空気が直接に当たることなく換気とケージセル3内を常に減圧状態に保持している。
【0028】
また、図6に示すのは、動物用ケージを壁際に配置せずに部屋の略中央位置に配置する場合の一例を示すものであり、アングル部材などによってペット滞在部18が縦列できる幅以上に枠組みされたケージセル3の両側の開口端に開閉扉8が取り付けられている。
【0029】
ここで、開閉扉8にペット滞在部18の開口端が当接するような状態でペット滞在部18をケージセル3内に縦列配置されている。更に、縦列配置されるペット滞在部18との間に排気ダクト14を設け、この排気ダクト14に排気ファン22が取り付けられたペット滞在部18の排気管25を連通状に接続することにより屋外への換気が行えると共に、ペット滞在部18内のペットに取り入れられる空気によってペットが晒されることなくケージセル3内が常に減圧状態に保持されている。
【0030】
次に、図7は、本発明を適用した動物用ケージの他の例を示す説明図であり、ケージセル3の左右壁6内面に、敷板部係留突起部23が一定高さで配置されている。更に、敷板部係留突起部23上に敷板部19の両側端が係留するような状態で載置することにより敷板部19とケージセル3の床面部4との間に通気路30が形成されている。
【0031】
また、敷板部19の下部には二重構造としたヒーターマット挿入部20が設けられると共に、敷板部19の両側に沿ってスリット状の空気噴出し口21が開口されている。
【0032】
図1に示す開閉扉8の下部の空気取入れ口11が図7に示す敷板部19とケージセル3の床面部4との通気路30に位置することとなり、空気取入れ口11から吸い込まれた空気はケージセル3の床面部4との通気路30を通して空気噴出し口21より吹き出してケージセル3の奥壁部6Aの排気口13より排気されることからペットが気流に晒されることなく換気とケージセル3内が常に減圧状態に保持される。
【0033】
また、開閉扉8の空気取入れ口11に病原菌を吸着させるペパフィルター(図示せず。)を設けることにより感染を防ぐことが可能となる。更に排気を屋外に出さずに屋内で行う場合にはペパフィルターを通して行うことが望ましい。
【0034】
以上の構成よりなる本発明の動物用ケージでは図8に示すように、開閉扉8の空気取入れ口11より取り入れられる空気は、ペット滞在部18内に設けられる敷板部19とペット滞在部18の内周面との間の空間部内を通り、敷板部19の両側に開口される空気噴出し口21より吹き出してケージセル3の奥壁部6Aの排気口13より排気されることにより、ペットAが気流に晒されることがなく換気を行うことが可能となる。
【0035】
また、開閉扉8の空気取入れ口11より取り入れられる空気量と排気量とを調整し、常にペット滞在部18内が減圧状態とすることによりペット滞在部18内の空気がケージセル3外へ漏れ出ることがなく感染したペットの病原菌を屋内に放出することを防止することが可能となる。
【0036】
更に、敷板部19下部のヒーターマット挿入部20内にヒートマット(図示せず。)が入れられることにより、ペットが爪で引掻く、あるいは噛むことによってヒーターマットを破損させることなく安全に使用することが可能となる。
【0037】
また、殆んどの棚式のケージセルは方形状であり、かつステンレスなどの鏡面仕上げでるために、ケージセル内を洗浄する際には各コーナー部分の洗浄、あるいは拭き取りが非常に煩雑となる。しかしながら本発明における円筒状のペット滞在部18をペットが感じない程度に前傾させることにより、敷板部19を取外してペット滞在部18内を水洗いする際にはペット滞在部18内にコーナーが無くなることで非常に洗い易くなり、かつ水が開閉扉8より流れ出すことにより洗浄を効率良く行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明を適用した動物用ケージの一例を示す正面図である。
【図2】本発明を適用した動物用ケージの内部機構を示す断面説明図である。
【図3】本発明を適用した動物用ケージのペット滞在部を示す説明図である。
【図4】本発明を適用した動物用ケージのペット滞在部の他の形態を示す説明図である。
【図5】本発明を適用した動物用ケージの他の形態を示す説明図である。
【図6】本発明を適用した動物用ケージのペット滞在部を縦列させた形態を示す説明図である。
【図7】本発明を適用した動物用ケージのケージセルの他の形態を示す説明図である。
【図8】本発明を適用した動物用ケージの作用状態を示す説明図である。
【図9】従来の動物用ケージの一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1 ケージ本体
2 枠体
3 ケージセル
4 床面部
5 天井部
6 左右壁
6A 奥壁部
7 ペット滞在空間
8 開閉扉
10 レバー
11 空気取入れ口
12 空気流入調整板
13 排気口
14 排気ダクト
15 換気用配管
16 空気吹出し口
17 換気駆動部
18 ペット滞在部
19 敷板部
20 ヒーターマット挿入部
21 空気噴出し口
22 排気ファン
25 排気管
26 排気ホース
30 湿温度計
31 ポート
32 コード挿通穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペット滞在空間を有する前面開口状の複数のケージセルと、
前記ケージセルの開口端に開閉自在な状態で取り付けられる開閉扉と、
前記開閉扉に設けられる空気取入れ口と、
前記空気取入れ口より空気が吸い込まれて前記ペット滞在部内が減圧した状態で換気流を生じさせる機能を備える
動物用ケージ。
【請求項2】
前記ケージセル内に、その開口端が前記開閉扉に密接するような状態で配置されるペット滞在部が設けられると共に、前記空気取入れ口より空気が吸い込まれて前記ペット滞在部内の空気が排気される機能を備える
請求項1記載の動物用ケージ。
【請求項3】
前記ペット滞在部内に、該ペット滞在部底面との間に通気路が形成されるように敷板部を設け、該敷板部には空気噴出し口が開口されると共に、前記開閉扉に設けられる空気取入れ口を前記通気路と連通状となる位置に設ける
請求項2記載の動物用ケージ。
【請求項4】
前記敷板部の下部に、ヒーターマットが収納できるヒーターマット挿入部が設けられた
請求項3記載の動物用ケージ。
【請求項5】
前記ペット滞在部に換気機能を設け、かつケージセルに対して着脱自在とする
請求項2、請求項3または請求項4記載の動物用ケージ。
【請求項6】
前記ペット滞在部が円筒形状に構成された
請求項2、請求項3、請求項4または請求項5記載の動物用ケージ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−225750(P2009−225750A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−77630(P2008−77630)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(502131811)株式会社新興精機 (8)
【Fターム(参考)】