説明

動物用システムトイレ及びそれに用いる液透過パネル

【課題】清掃が容易であり、且つ、排泄時の尿による足濡れ、及び、尿による足濡れに起因する室内の汚染が殆ど生じない動物用システムトイレを提供すること、及び、動物用システムトイレの清掃を容易にし、且つ、動物用システムトイレの使用による排泄時の尿による足濡れ、及び、尿による足濡れに起因する室内の汚染を著しく抑制できる、動物用システムトイレ用の使い捨ての液透過パネルを提供すること。
【解決手段】排泄物収容部21と、排泄物収容部21の上方に配置され液体を透過させる使い捨ての液透過パネル3と、排泄物収容部21と液透過パネル3との間に空間5を形成した状態で液透過パネル3を支持する支持部4とを備え、液透過パネル3は、吸水性を有し、且つ、支持部4に対して着脱可能に構成される動物用システムトイレ1を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物用システムトイレ及びそれに用いる液透過パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、室内で飼育する動物の排泄物の処理にあたっては、室内に設置できる動物用トイレが使用されている。近年、この動物用トイレとしては、市販のトイレ用のペットシートを直接床面に敷いたもの、ペットシートをペットシートの外周を押さえる外枠により固定する動物用トイレ(特許文献1)、浅底のトレイ状の受け皿に、板状の尿吸収マットと、該尿吸収マットの上面の全域を密接して被覆する液透過性の不織布とを収容した動物用トイレ(特許文献2)等が使用されている。
【0003】
しかし、これらの動物用トイレでは、動物はペットシートや不織布上に直接乗った状態で排泄するため、排泄跡を動物が踏みつけることや、排泄物が排泄直後にペットシートや不織布上で広がることにより尿が足に触れてしまうことによる尿による足濡れが頻繁に起こる問題がある。かかる足濡れが生じた場合、ペットが排泄後に室内を移動することにより室内の床面が尿により汚染されることから、排泄時に動物が足濡れを起さない動物用トイレが強く望まれている。
【0004】
これらの、ペットシートや不織布上に直接乗った状態で動物が排泄する動物用トイレの尿による足濡れの問題を改善するため、四角形の受け皿にペットシートや猫砂等の排泄物を吸収する吸湿性材を敷き、吸湿性材との間に適度な空間を設けて格子状基枠を吸湿性材上に設置した動物用トイレが提案されている(特許文献3)。
【0005】
しかし、特許文献3に記載の動物用トイレによっても、格子状基枠に付着する少量の尿によって依然として足濡れが発生しており、足濡れの発生についてさらなる改善が求められている。
【0006】
また、特許文献3に記載の動物用トイレでは、動物が格子状基枠上で排泄するため、格子状基枠の開口部はある適度面積が小さく設計されており、排泄された大便が格子状基枠の開口部に詰まりやすい。このため、特許文献3に記載の動物用トイレは、面倒な格子状基枠の清掃作業を頻繁に行う必要がある点でも問題がある。
【0007】
さらに、犬や猫等の動物が室内で排泄をする場合、室内の同じエリアで排泄することを飼い主からしつけられている。しかしながら、犬や猫等は同じエリアで排泄をしようとするものの、例えばペットシート等の吸収性シートに排泄した場合、排泄物が吸収された同じ所で、2回目以降の排泄をすることが殆どない。例えば1回目にペットシートの中央部で排泄し、吸収させると、2回目からは中央部をさけ、その周辺で排泄するという傾向がある。これは、犬や猫が濡れた感じ、すなわち足の裏側に水分が付着することで冷たさを感じるということを嫌がる傾向にあり、動物は基本的に濡れることを本能的に嫌がるからである。この習性が故に、できるだけ動物の足の裏が直接触れる部分を濡らさないということが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3609855号公報
【特許文献2】特開2002−142599号公報
【特許文献3】特開2003−235389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明は、清掃が容易であり、且つ、排泄時の尿による足濡れ、及び、尿による足濡れに起因する室内の汚染が殆ど生じない動物用システムトイレを提供することを目的とする。また、本発明は、動物用システムトイレの清掃を容易にし、且つ、動物用システムトイレの使用による排泄時の尿による足濡れ、及び、尿による足濡れに起因する室内の汚染を著しく抑制できる、動物用システムトイレ用の使い捨て液透過パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、排泄物収容部と、排泄物収容部の上方に配置され液体を透過させる液透過パネルと、排泄物収容部と液透過パネルとの間に空間を形成した状態で液透過パネルを支持する支持部とを備え、液透過パネルは吸水性を有し、且つ、前記支持部に対して着脱可能に構成される動物用システムトイレを用いることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には本発明は以下のものを提供する。
【0011】
(1) 排泄物収容部を有する排泄容器と、前記排泄物収容部の上部空間を覆うように着脱可能に配置され、吸水性を有する使い捨ての液透過パネルと、を備える動物用システムトイレ。
【0012】
(2) 前記液透過パネルは、該液透過パネルの厚さ方向に貫通する複数の孔部を有し、前記液体は、前記複数の孔部を通って前記液透過パネルの厚さ方向に透過する(1)記載の動物用システムトイレ。
【0013】
(3) 前記液透過パネルは、有機繊維材料と、疎水剤又は撥水剤と、により構成される(1)又は(2)に記載の動物用システムトイレ。
【0014】
(4) 前記排泄容器は、前記排泄物収容部と前記液透過パネルとの間に空間を形成した状態で前記液透過パネルを支持するための支持部を備える(1)〜(3)の何れかに記載の動物用システムトイレ。
【0015】
(5) 前記複数の孔部の平均面積は、10〜100mm/個である(2)〜(4)の何れかに記載の動物用システムトイレ。
【0016】
(6) 前記液透過パネルは、90%以上の液透過率を有する(1)〜(5)の何れかに記載の動物用システムトイレ。
【0017】
(7) 前記液透過パネルは、10〜50%/minの吸水性を有する(1)〜(6)の何れかに記載の動物用システムトイレ。
【0018】
(8) 前記液透過パネルは、複数の液透過パネル分割体により構成され、該複数の液透過パネル分割体は、面方向に沿って並べた状態で、前記支持部に支持される(2)〜(7)の何れかに記載の動物用システムトイレ。
【0019】
(9) 前記支持部は、前記液透過パネルにおける少なくとも一対の側部の下面を支持する(2)〜(8)の何れかに記載の動物用システムトイレ。
【0020】
(10) 前記支持部は、格子状の多孔板により構成され、前記液透過パネルの下面の略全域を支持する(2)〜(8)の何れか記載の動物用システムトイレ。
【0021】
(11) 吸水性を有するパネルにより構成され、厚さ方向における液体の透過率が90%以上である動物用システムトイレ用の使い捨ての液透過パネル。
【0022】
(12) 10〜50%/minの吸水性を有する(11)に記載の液透過パネル。
【0023】
(13) 前記パネルは、該パネルの厚さ方向に貫通する複数の孔部を有し、前記液体は、前記複数の孔部を通って前記パネルの厚さ方向に透過する(11)又は(12)に記載の液透過パネル。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、清掃が容易であり、且つ、排泄時の尿による足濡れ、及び、尿による足濡れに起因する室内の汚染が殆ど生じない動物用システムトイレが提供される。また、本発明よれば、動物用システムトイレの清掃を容易にし、且つ、動物用システムトイレの使用による排泄時の尿による足濡れ、及び、尿による足濡れに起因する室内の汚染を著しく抑制できる、動物用システムトイレ用の使い捨ての液透過パネルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施形態に係る動物用システムトイレの斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る動物用システムトイレにおいて、液透過パネル及び引出しトレイを取り外した状態の動物用システムトイレの斜視図である。
【図3】第1実施形態に係る動物用システムトイレの断面の模式図である。
【図4】第1実施形態に係る動物用システムトイレに用いる液透過パネルの上面図である。
【図5】第1実施形態に係る動物用システムトイレに用いる液透過パネルの断面図である。
【図6】第2実施形態に係る動物用システムトイレの斜視図である。
【図7】第3実施形態に係る動物用システムトイレの上面図である。
【図8】第4実施形態に係る動物用システムトイレの上面図である。
【図9】第5実施形態に係る動物用システムトイレの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明の実施形態は、下記の実施形態に何ら限定されることなく、本発明の技術的範囲は、これに限定されるものではない。
【0027】
[1]第1実施形態
<全体構造>
まず、本発明の第1実施形態である動物用システムトイレ1を用いて、本発明の動物用システムトイレ1の全体構造について説明する。
【0028】
図1、図2及び図3を参照して、第1実施形態に係る動物用システムトイレ1を説明する。図3に示されるように、第1実施形態に係る動物用システムトイレ1は、排泄物収容部21を内部に有する排泄容器2と、排泄物収容部21の上方に配置され液体を透過させる使い捨ての液透過パネル3と、排泄物収容部21と液透過パネル3との間に空間5を形成した状態で液透過パネル3を支持する支持部4と、を有する。また、液透過パネル3は吸水性を有するパネルにより構成され、且つ、支持部4に対して着脱可能に構成される。さらに、図3に示すように、支持部4と排泄物収容部21との間には空間5が形成されている。
【0029】
図2に示されるように、第1実施形態において支持部4は格子状の多孔板からなり、液透過パネル3の下面の略全域を支持する。格子状の多孔板のそれぞれの開口部の形状は本発明の目的を阻害しない範囲で特に制限されないが、典型的には縦及び横の長さがそれぞれ1〜100mm、より好ましくは3〜50mmの四角形である。また、格子状の多孔板の縦及び横方向の桟の太さはそれぞれ1〜10mmである。支持部4の厚さは、液透過パネル3を支持可能であり動物の体重に耐えられれば特に制限されず、典型的には、1〜10mmである。なお、支持部4の具体的な実施形態については後述の他の実施形態において説明する。
【0030】
格子状の多孔板の材質は、液透過パネル3を支持可能であり、排泄物を排泄物収容部21へ透過可能であれば特に限定されず、木材、金属、プラスチック等の種々の材質を用いることができる。これらの材質の中では、排泄物が材料の内部に染み込むことによる臭気の発生の問題や、排泄物による腐食の問題がなく、排泄物を良好に排泄物収容部21へ透過できることからプラスチックを用いるのが好ましい。プラスチックとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂等種々の材料を使用することができる。
【0031】
排泄容器2は、支持部4の周縁から、垂直上方及び垂直下方に向けて壁面が形成される。排泄容器2の内部の排泄物収容部21にはそのまま排泄物を収容してもよいが、排泄物収容部21の清掃を容易にする目的で、排泄物収容部21と下水管とを接続して直接排泄物を処理してもよく、排泄物収容部21に排泄物を吸収可能な排泄物吸収物品6を敷設して使用することも好ましい。排泄物吸収物品6の具体例としてはペットシート、トイレ砂等が挙げられ、何れも公知のものを適宜選択して使用することができる。トイレ砂の具体例としては、ベントナイト、紙、ゼオライト、シリカゲル等を直径数mm〜数cm程度の略球状に成形したものが挙げられる。
【0032】
排泄容器2の内部の排泄物収容部21は、排泄容器2の底部に水平方向に引出し可能な引出トレイ22を設け、引出しトレイ22上に構成されるのが好ましい。引出しトレイ22はそのまま排泄物を収容するか、引出しトレイ22の内部に排泄物吸収物品6を敷設した状態で使用される。引出しトレイ22を設けることにより、排泄物収容部21の清掃が非常に容易になる。また、引出しトレイ22は排泄容器2からの取り出しが容易であることから取手221を備えるのが好ましい。取手221の形状は引出しトレイ22を把持できる限り特に制限されない。
【0033】
排泄容器2の上部の開口部の形状は特に限定されず、意匠性等を考慮して、正方形、長方形、台形、楕円形、円形、半円形等種々の形状から選択することができる。大型の吸水性のパネルから液透過パネル3を切断して加工する際に余剰の部材が生じないことから、排泄容器2の上部の開口部の形状は正方形又は長方形であるのが好ましい。
【0034】
<使い捨て液透過パネル>
次に、本発明におけるパネルを構成する使い捨ての液透過パネル3について説明すると、液透過パネル3は全体として平面パネル状であり、図1及び図2に示されるように排泄容器2の開口部の略全面を覆うように支持部4に対して着脱可能に構成される。
【0035】
液透過パネル3の厚さは、構成するパネルの形態や材質等によって異なるが、典型的には、3〜25mmが好ましく、3〜10mmがより好ましく、3〜7mmが特に好ましい。液透過パネル3が薄すぎる場合、パネルの変形により排泄物の排泄物収容部21への透過が妨げられたり、動物の重量によってはパネルが破壊されたりする場合がある等、強度の点で問題が生じやすい。液透過パネル3が厚すぎる場合は、一回の排泄による液透過パネル3の排泄物の吸収量が増加し交換サイクルが短くなる問題や、交換用パネルを保管する際に嵩張ること等の問題がある。
【0036】
液透過パネル3は、その厚さ方向に貫通する複数の孔部を有し、複数の孔部を通じて排泄物を液透過パネル3の厚さ方向に透過するものを用いるのが好ましい。複数の孔部の開口部の形状及び面積は同一であっても異なっていてもよい。かかる複数の孔部を有する液透過パネル3は、例えばスポンジ状の材料のように不規則な方向の孔部を有するパネルと比較して、使い捨て液透過パネル3の内部に残留する排泄物の量を低減しやすく、動物による液透過パネル3の踏みつけによる動物の足濡れを抑制しやすい。
【0037】
液透過パネル3が、液透過パネル3の厚さ方向に貫通する複数の孔部を有する場合、複数の孔部の開口部の平均面積は10〜100mm/個であるのが好ましく、15〜60mm/個であるのがより好ましい。孔部の開口部の平均面積が小さすぎると使い捨て液透過パネル3に付着する排泄物の量が増え足濡れを抑制しにくく、孔部の開口部の平均面積が広すぎると液透過パネル3に十分な強度を付与するために使い捨て液透過パネルを厚くする必要がある点で好ましくない。複数の孔部の開口部の平均面積の測定方法は特に制限されず公知の種々の方法を用いることができ、例えば、開口部の写真を画像解析する方法等により測定することが出来る。
【0038】
液透過パネル3が、その厚さ方向に貫通する複数の孔部を有する場合、パネルの好ましい構造としては、ハニカム構造又はコルゲートハニカム構造が挙げられる。これらのパネルの中では、製造が容易で安価に入手可能であることからコルゲートハニカム構造のパネルがより好ましい。
【0039】
以下コルゲートハニカム構造のパネル7について図4及び図5を参照して説明する。コルゲートハニカム構造のパネル7は波板状シート72と平板状シート73とを接合して構成されており、波板状シート72と平板状シート73とに囲まれる孔部71を構成している。波板状シート72と平板状シート73とを接合する方法は特に制限されず、接着剤による接合方法等の公知の接合方法から適宜選択すればよい。図4では波板状シート72は曲線状のシートで構成されているが、波板状シート72はジグザグに折り曲げられたシートにより構成されてもよい。
【0040】
液透過パネル3を構成する吸水性を有するパネルの材料は、排泄物を良好に透過しつつ、所定の吸水性を有するものであれば特に制限されず種々の材料を用いることができる。吸水性を有する材料の具体例としては、パルプ等の木質繊維の他、種々の有機又は無機の多孔質材料や、種々の有機又は無機の繊維材料からなる織布又は不織布が挙げられる。有機繊維材料の具体例としては、木質繊維(パルプ等)、コットン、麻等のセルロース性繊維材料や、獣毛(ウール等)等の動物性繊維、又は、ポリオレフィン繊維(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル繊維(ポリエチレンテレフタレート等)、ナイロン繊維(ナイロン6、ナイロン66等)、アクリル繊維等の合成繊維が挙げられる。
【0041】
これらの材料の中では加工が容易でコストが安いという点からパルプが好ましく、適度な液透過性と吸水性を実現可能な段ボール紙がより好ましい。この場合、当該段ボール紙はサイズ剤等の疎水剤又は撥水剤を含有することが好ましく、当該サイズ剤の種類と量によって所定の吸水性を選択できる。
【0042】
<液透過パネルの液透過率及び吸水性>
液透過パネル3の液透過率は90%以上が好ましく、93%以上がより好ましい。かかる液透過率の使い捨て液透過パネル3を用いることにより、排泄後の液透過パネル3への尿の付着を低減でき、内部での尿の拡散や、踏みつけによる動物の足濡れを抑制しやすい。液透過パネル3の液透過率は下記の方法により測定出来る。
【0043】
〔液透過率測定方法〕
あらかじめ重量(A)を測定された受け皿を、液透過パネル3等の液透過率を測定する試料の下部に置く。人工尿約30mlを測りとり人工尿の重量(B)を測定する。試料上に内径60mmの円筒を置き、円筒の内側に人工尿をまんべんなく滴下する。試料から人工尿の液滴が落下しなくなった時点で人工尿の入った受け皿の重量(C)を測定する。液透過率の値を下式に基づいて算出する。なお、人工尿は後述する実施例の組成のものを使用する。
【0044】
(液透過率計算式)
液透過率(%)=(重量(C)−重量(A))÷重量(B)×100
【0045】
液透過パネル3は、10〜50%/min、より好ましくは15〜40%/minの吸水性を有する。かかる吸水性の液透過パネル3を用いることにより、排泄物の大部分が透過した後に少量付着する排泄物を液透過パネル3に吸収させることができ足濡れを抑制することができる。液透過パネル3の吸水性が高すぎると排泄物が透過する最中に多量に液透過パネル3に吸収されてしまい、動物が排泄した個所を踏みつけることによる排泄物の染み出しにより足濡れが起こりやすくなる。液透過パネル3の吸水性が低すぎると、付着した排泄物が液状で液透過パネル3の表面に残存してしまい足濡れが起こりやすくなる。液透過パネル3の吸水性は下記の方法により測定できる。
【0046】
〔吸水性測定方法〕
液透過パネル3等の測定対象を5cm×5cmにカットした試料の重量(A)を測定する。カットされた試料を1分間、人工尿に浸漬する。1分間浸漬後、試料を引き上げ、表面に付着した人工尿を拭き取った後、各試料の重量(B)を測定する。吸水率の値を下式に基づいて算出する。なお、人工尿は液透過率の測定と同じものを使用する。
【0047】
(吸水性計算式)
吸水性(%/min)=(重量(B)−重量(A))÷重量(A)×100
【0048】
動物用システムトイレ1を係る構成とすることにより、排泄物の大部分を液透過パネル3を通じて排泄物収容部21へ透過させ、且つ、液透過パネル3に付着する少量の排泄物を吸収させることが出来るので、排泄物による足濡れを顕著に抑制することが可能となる。また、上記従来技術の記載のように、液透過パネルは動物の足の裏が直接触れる部分を濡らさないということが望まれるが、本発明によれば、排泄物が液透過パネルにて殆ど透過し、且つ透過パネルに残った排泄物を殆ど吸収することで、同じ場所でも繰り返し排泄することが可能となる。なお、液透過パネル3は支持部4に対して着脱可能に構成されているので、尿の吸収や大便の詰まりにより汚染されても容易に交換することができ、動物用システムトイレ1の清掃作業が非常に容易である。
【0049】
さらに、液透過パネル3と排泄物収容部21の間には空間5が形成されている。このため、大量の排尿があった場合でも、尿は液透過パネル3の孔部を通過して裏面側の表面で拡散し、その後に排泄物吸収物品6で吸収される。すなわち、空間5によって尿が戻り孔部がオーバーフローして液透過パネル3の表面側へ残ることを効果的に防止する。これにより上記の足濡れの発生が抑制される。
【0050】
[2]第2実施形態
図6を参照して第2実施形態に係る動物用システムトイレ1Aについて説明する。第2実施形態においては、使い捨て液透過パネル3が複数の液透過パネル分割体31a、31b、31c、及び31dにより構成され、複数の液透過パネル分割体31a、31b、31c、及び31dが、面方向に沿って並べた状態で支持部(図示せず)に支持される点で、第1実施形態と異なる。
【0051】
図6に示すように、液透過パネル分割体31は支持部(図示せず)上に面方向に沿って複数個を並べた状態で配置される。図6では液透過パネル3は4枚の液透過パネル分割体31から構成されるが、液透過パネル3を構成する液透過パネル分割体31の数は特に制限されず、通常2〜10個、より好ましくは2〜8個である。液透過パネル分割体31の数が多すぎると支持部4上に液透過パネル分割体31に面方向に沿って並べて配置する作業が煩雑となる。使い捨て液透過パネル3を、複数の液透過パネル分割体31を面方向に沿って並べた状態で構成することにより、動物が頻繁に排泄を行う個所の液透過パネル分割体31のみを交換できるようになり、ゴミを減量化できる。
【0052】
[3]第3実施形態
図7を参照して第3実施形態に係る動物用システムトイレ1Bについて説明する。第3実施形態においては、支持部4が使い捨て液透過パネル(図示せず)の一対の側部の下面を支持するように設けられている点で、第1実施形態と異なる。
【0053】
図7に示すように、支持部4は使い捨て液透過パネル(図示せず)の一対の側部の下面の全部(又は一部でもよい)を支持する小さなものであるので、排泄容器2の上部の開口部からの支持部4の清掃作業が容易となる。また、支持部4が排泄物により濡れにくくなるので、支持部4を清掃する回数が減る。
【0054】
[4]第4実施形態
図8を参照して第4実施形態に係る動物用システムトイレ1Cについて説明する。第4実施形態においては、液透過パネル(図示せず)の4角を支持するように支持部4が4箇所設けられている点で第1実施形態と異なる。
【0055】
図8に示すように、4角の支持部4で液透過パネル(図示せず)を支持するため、第3実施形態に係る動物用システムトイレと同様に、液透過パネル(図示せず)が安定した状態で支持される。また、支持部4は液透過パネル(図示せず)の側部の下面の一部を支持する小さなものであるので、排泄容器2の上部の開口部からの支持部4の清掃作業が容易となる。さらに、支持部4が排泄物により濡れにくくなるので、支持部4を清掃する回数が減る。
【0056】
[5]第5実施形態
図9を参照して第5実施形態に係る動物用システムトイレ1Dについて説明する。第5実施形態においては、支持部4が液透過パネル(図示せず)の外周全体の下面を支持するように排泄容器2の内周に沿って環状に設けられている点で第1実施形態と異なる。
【0057】
図9に示すように、環状の支持部4で液透過パネル(図示せず)の外周の下部全体を支持するため、第3実施形態又は第4実施形態に係る動物用システムトイレよりも液透過パネル(図示せず)が安定した状態で支持される。また、支持部4は液透過パネル(図示せず)の下面の周縁部のみを支持するものであるので、排泄容器2の上部の開口部からの支持部4の清掃作業が容易となる。また、支持部4が排泄物により濡れにくくなるので、支持部4を清掃する回数が減る。なお、本発明の支持部の構成は、液透過性を有していればよく上記の実施形態には限定されない。例えば、液透過層の周縁部の下面を支持する周縁支持部と、該液透過層の所定方向における中央部の下面及び該所定方向に直交する方向における中央部の下面を支持する中央支持部と、を備えるもの等であってもよい。
【0058】
本発明の動物用システムトイレ1は、上述した実施形態に制限されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。例えば、第1実施形態から第6実施形態に係る動物用システムトイレにおいて、排泄容器2の上部に液透過パネル3表面での排泄物の飛散による動物用システムトイレ1の周囲の汚染を防止するために、所望の形状のフードを設けてもよい。
【0059】
また、第1実施形態に係る動物用システムトイレ1において、支持部4は格子状の多孔板に変えて、円形の開口部が規則的に設けられたパンチングプレート、平行してスリットが多数設けられた多孔板、網状の板等に変更されてもよい。
【0060】
本発明の動物用システムトイレ1は、犬、猫、兎等のペットとして飼育される動物用のトイレとして使用でき、特に室内で飼育される犬用のトイレとして好適に使用できる。
【実施例】
【0061】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0062】
参考例、実施例、及び比較例において、人工尿は以下の組成のものを用いた。
〔人工尿組成〕
尿素 400g
塩化ナトリウム 160gg
硫酸マグネシウム(7水和物) 16g
塩化カルシウム(2水和物) 6g
以上を合計20Lになるように水で調整する。
調整液に、青色1号を2g加え着色する。
【0063】
<参考例>
下記の方法により、プラスチック製のスノコ上に尿を排泄した場合の足濡れによる室内の汚染を再現する試験を行った。
【0064】
〔足濡れ汚染試験方法〕
プラスチック製のスノコは以下のものを用いた。
プラスチック製スノコ:メッシュトレー(ポリプロピレン製、開口部形状:縦6mm×横6mm、横方向桟太さ3.5mm、縦方向桟太さ3.5mm)
【0065】
スノコ上に内径60mmの円筒を置き、円筒の内側にまんべんなく30mlの人工尿を滴下した。30分後、直径18mmのウレタン製の半球をスノコに残った水滴に押し当て、半球をろ紙(JIS P3801に定められる2種)上にスタンプした。次いでろ紙上の人工尿の跡の最も大きな直径を測定した。同様の試験を、スノコ上に3箇所(A〜C)において、1箇所あたり5回行った。足濡れ汚染の測定結果を表1に記す。
【0066】
【表1】

【0067】
参考例の試験により、プラスチック製のスノコ上で動物が排泄するとき、1回の尿の排泄量を30mlと仮定した場合では、床面に直径11.43mm程度の尿による汚染跡が形成されることが分かった。このように、従来の動物用トイレでは尿による足濡れによって室内の汚染が生じていることが分かった。
【0068】
<実施例1、実施例2、及び比較例1>
以下に記す方法に従い、下記の紙製液透過パネル材料、不織布性液透過パネル材料、及びプラスチック製スノコについて、それぞれ、5回ずつ、足濡れ試験、吸水性試験、液透過率試験を行った。液透過率試験の結果を表2に、吸水性試験の結果を表3に、足濡れ性試験の結果を表4にそれぞれ記す。
【0069】
(液透過パネル材料)
紙製液透過パネル(実施例1):ニューレンコートを原紙として使用、Aフルート段ボールをコルゲートハニカム構造に加工したもの、孔部開口部の平均面積16mm/個。
不織布性液透過パネル(実施例2):活性炭を含有したポリエステル繊維を使用した脱臭紙を原紙として使用、Aフルート段ボールをコルゲートハニカム構造に加工したもの、孔部開口部の平均面積10.5mm/個、パラフィン系撥水剤4.8%添加。
プラスチック製スノコ(比較例1):メッシュトレー(ポリプロピレン製、開口部形状:縦6mm×横6mm、横方向桟太さ3.5mm、縦方向桟太さ3.5mm)
【0070】
〔液透過率試験〕
あらかじめ重量(A)を測定された受け皿を、液透過率を測定する試料の下部に置く。人工尿約30mlを測りとり人工尿の重量(B)を測定する。試料上に内径60mmの円筒を置き、円筒の内側に人工尿をまんべんなく滴下する。試料から人工尿の液滴が落下しなくなった時点で人工尿の入った受け皿の重量(C)を測定する。液透過率の値を下式に基づいて算出する。
【0071】
(液透過率計算式)
液透過率(%)=(重量(C)−重量(A))÷重量(B)×100
【0072】
〔吸水性試験〕
使い捨て液透過パネル3の材料を5cm×5cmにカットした試料の重量(A)を測定する。カットされた試料を1分間、人工尿に浸漬する。1分間浸漬後、試料を引き上げ、表面に付着した人工尿を拭き取った後、各試料の重量(B)を測定する。吸水率の値を下式に基づいて算出する。
【0073】
(吸水性計算式)
吸水性(%/min)=(重量(B)−重量(A))÷重量(A)×100
【0074】
〔足濡れ性試験〕
使い捨て液透過パネル3の材料の上に内径60mmの円筒を置き、その内側に30mlの人工尿をまんべんなく滴下する。人工尿の滴下後、円筒を取り除き、30分間放置する。10cm×10cmのろ紙(JIS P3801に定められる2種)の重量(A)を測定する。30分後、液透過パネル3の材料の人工尿を滴下した箇所の上に10cm×10cmのろ紙を載せ、5秒間静置する。5秒後、ろ紙を取り外し、ろ紙の重量(B)を測定する。足濡れ性の試験結果を下式に基づいて算出する。
【0075】
(足濡れ性計算式)
足濡れ性(g)=重量(B)−重量(A)
【0076】
【表2】

【0077】
【表3】

【0078】
【表4】

【0079】
比較例1より、プラチック製のスノコが、人工尿を良好に透過すること、及び、透過しなかった人工尿は全く吸収されないことが表2及び表3より分かる。このため、足濡れ試験において、スノコ上に残存した人工尿が多量にろ紙に付着する結果となった。従って、プラスチック製のスノコ上で排泄を行う従来の動物用トイレでは足濡れは改善されないことが分かる。
【0080】
一方、紙や不織布等からなるコルゲートハニカム形状のパネルからなる液透過パネル3を用いた実施例1及び実施例2では、液透過パネル3が優れた液透過性及び吸水性を示すことが分かった。このため、実施例1及び実施例2の液透過パネル3を用いれば、人工尿の大分部分が液透過パネル3を透過し、僅かに液透過パネル3上に残存する人工尿は液透過パネル3に吸収されるため、足濡れ試験において表4に示されるようにろ紙には殆ど人工尿が付着しないことが分かった。
【符号の説明】
【0081】
1 動物用システムトイレ
2 排泄容器
21 排泄物収容部
22 引出しトレイ
221 取手
23 挿入口
3 液透過パネル
31 液透過パネル分割体
4 支持部
5 空間
6 排泄物吸収物品
7 パネル
71 孔部
72 波板状シート
73 平板状シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排泄物収容部を有する排泄容器と、前記排泄物収容部の上部空間を覆うように着脱可能に配置され、吸水性を有する使い捨ての液透過パネルと、を備える動物用システムトイレ。
【請求項2】
前記液透過パネルは、該液透過パネルの厚さ方向に貫通する複数の孔部を有し、前記液体は、前記複数の孔部を通って前記液透過パネルの厚さ方向に透過する請求項1記載の動物用システムトイレ。
【請求項3】
前記液透過パネルは、有機繊維材料と、疎水剤又は撥水剤と、により構成される請求項1又は2に記載の動物用システムトイレ。
【請求項4】
前記排泄容器は、前記排泄物収容部と前記液透過液透過パネルとの間に空間を形成した状態で前記液透過パネルを支持するための支持部を備える請求項1〜3の何れかに記載の動物用システムトイレ。
【請求項5】
前記複数の孔部の平均面積は、10〜100mm/個である請求項2〜4の何れかに記載の動物用システムトイレ。
【請求項6】
前記液透過パネルは、90%以上の液透過率を有する請求項1〜5の何れかに記載の動物用システムトイレ。
【請求項7】
前記液透過パネルは、10〜50%/minの吸水性を有する請求項1〜6の何れかに記載の動物用システムトイレ。
【請求項8】
前記液透過パネルは、複数の液透過パネル分割体により構成され、該複数の液透過パネル分割体は、面方向に沿って並べた状態で、前記支持部に支持される請求項4〜7の何れかに記載の動物用システムトイレ。
【請求項9】
前記支持部は、前記液透過パネルにおける少なくとも一対の側部の下面を支持する請求項4〜8の何れかに記載の動物用システムトイレ。
【請求項10】
前記支持部は、格子状の多孔板により構成され、前記液透過パネルの下面の略全域を支持する請求項4〜8の何れか記載の動物用システムトイレ。
【請求項11】
吸水性を有する液透過パネルにより構成され、厚さ方向における液体の透過率が90%以上である動物用システムトイレ用の使い捨ての液透過パネル。
【請求項12】
10〜50%/minの吸水性を有する請求項11に記載の液透過パネル。
【請求項13】
前記液透過パネルは、該液透過パネルの厚さ方向に貫通する複数の孔部を有し、前記液体は、前記複数の孔部を通って前記液透過パネルの厚さ方向に透過する請求項11又は12に記載の液透過パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−135839(P2011−135839A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298783(P2009−298783)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】