説明

包装容器

【課題】薄厚状の商品を収容する包装容器において、包装容器自体を自立可能にして別途陳列具を用いなくても効果的に商品を商品棚等に陳列させることができること、持ち運び時には収容される商品の厚さに合わせて収容空間を偏平状にして嵩張ることなく持ち運ぶことができること。
【解決手段】第2形態変更線29を非折り曲げ状態にして第1底面形成片15と第2底面形成片16とによって底面を形成して正面壁形成片10の下辺と側部折り曲げ片11,12の下辺11A,12Aとで包装容器1を自立可能にする第1の状態と、第2形態変更線29を折り曲げ状態にして第2底面形成片16を背面壁形成片14と略同一面状にすることで収容空間Mを偏平状にする第2の状態とを切り替え可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート材を折り曲げ加工して形成される包装容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂シートや紙シート等のシート材を折り曲げ加工して形成される包装容器には各種の形態がある。薄厚状の商品を包装するものとしては、例えば図1に示すように、商品Sが納められる矩形状の中央本体部J1を備え、その外周の4辺を折り目J2として、商品Sを覆うように折り曲げられる左右の側片J3,J4、下片J5、上カバー片J6を備え、下片J5に形成される係止孔J5aに上カバー片J6の頂部に形成される凸部J6aを係止するものなどが知られている(同図(a)が展開状態、同図(b)が折り曲げ加工状態を示している)。
【0003】
一方、シート材を折り曲げ加工して形成される包装容器であって、厚みのある商品を収容するための包装容器としては、例えば下記特許文献1に記載されるもの等が知られており、一対の壁部の下端を閉塞する底部を所定の面積を有する形状に形成して、内部に所望の収容空間を形成している。
【0004】
また、シート材を折り曲げ加工して形成される包装容器としては、特許文献2に記載されるように、不使用時に折り曲げ線を介して偏平状に折り畳んで保管し、使用時に拡開して対向する表裏両面板との間に適宜幅の側面部と底面部とを有する袋体又は箱体に組み立てて商品を収容するものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−76645号公報
【特許文献2】特許第3677622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図1に示したような薄厚状の商品を収容する包装容器は、容器自体に厚さがないので、包装容器に収容された状態の商品を商品棚に陳列する際に、そのままでは寝かせた状態にならざるを得ず、効果的な陳列を行うためには別途箱や吊り下げ具等の陳列具が必要になる。
【0007】
一方、特許文献1のような底部を有する包装容器を用いる場合は、包装容器を自立させることができるので、別途陳列具を用いなくても、包装容器を自立させた状態で効果的に商品を商品棚等に陳列させることができる。しかしながら、商品自体が薄厚状の場合は、このような底部を有する包装容器では無用な収容空間を形成することで包装容器が嵩張るので、持ち運びが不便になる問題が生じる。
【0008】
また、特許文献2のように、不使用時に偏平状に折り畳んで保管し、使用時に拡開して商品を収容する包装容器は知られているが、これは、偏平状の折り畳み状態では容器としての機能を成しておらず、仮に収容する商品が薄厚状のものであっても、偏平状に折り畳んだ状態ではこれを収容して体裁良く持ち運ぶことはできないものである。
【0009】
本発明は、このような事情に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、薄厚状の商品を収容する包装容器において、包装容器自体を自立可能にして別途陳列具を用いなくても効果的に商品を商品棚等に陳列させることができるようにすること、持ち運び時には収容する商品の厚さに合わせて収容空間を偏平状にして嵩張ることなく持ち運ぶことができるようにすること、包装容器を偏平状に折り畳んだ状態であっても包装容器としての機能を維持し、体裁良く持ち運ぶことができること、更には、自立可能な状態から偏平状に折り畳んだ状態への変形を簡易な操作で速やかに行うことができること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明による包装容器は、以下の構成を少なくとも具備するものである。
【0011】
シート材を折り曲げ加工して形成される包装容器であって、一対の側部折り曲げ線と上部折り曲げ線又は上部端縁と左右の下部端縁とその間に形成される下部折り曲げ線とによって囲まれた矩形状の正面壁形成片と、前記一対の側部折り曲げ線に沿ってそれぞれ折り曲げられる一対の側部折り曲げ片と、前記下部折り曲げ線と該下部折り曲げ線と平行に形成された第1形態変更線と前記左右の下部端縁に連続する側端縁に囲まれ、前記下部折り曲げ線と前記第1形態変更線との間に設定された嵩上げ幅を形成する底部嵩上げ片と、前記第1形態変更線と平行に当該第1形態変更線から前記嵩上げ幅だけ離れた位置に形成される第2形態変更線と一対の側部端縁と上部端縁又は上部折り曲げ線とに囲まれ、前記側部折り曲げ片に接着して前記正面壁形成片との間に収容空間を形成する矩形状の背面壁形成片と、前記第1形態変更線と前記第2形態変更線と両側端縁で囲まれた台形状の第1底面形成片と、前記背面壁形成片内で第3形態変更線に囲まれて、前記第2形態変更線を対称軸として前記第1底面形成片と対称形状に形成される第2底面形成片とを備え、前記第2形態変更線を非折り曲げ状態にして前記第1底面形成片と前記第2底面形成片とによって底面を形成して前記正面壁形成片の下辺と前記側部折り曲げ片の下辺とで当該包装容器を自立可能にする第1の状態と、前記第2形態変更線を折り曲げ状態にして前記第2底面形成片を前記背面壁形成片と略同一面状にすることで前記収容空間を偏平状にする第2の状態とを切り替え可能にしたことを特徴とする包装容器。
【発明の効果】
【0012】
このような特徴による包装容器は、薄厚状の商品を収容する包装容器において、前述した第1の状態で包装容器自体を自立可能にして、効果的に商品を商品棚等に陳列させることができる。また、持ち運び時には第2の状態に切り替えることで、収容される商品の厚さに合わせて収容空間を偏平状にして嵩張ることなく持ち運ぶことができる。また、包装容器を偏平状に折り畳んだ状態であっても、前述した第1底面形成片と第2底面形成片との間で商品を保持して包装容器としての機能を維持することができるので、体裁良く包装容器を持ち運ぶことができる。更には、自立可能な状態から偏平状に折り畳んだ状態への変形を、第2形態変更線を非折り曲げ状態から折り曲げ状態にするだけの簡易な操作で速やかに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来技術の説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る包装容器を説明する展開図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る包装容器の第1の状態を示した説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る包装容器の第1の状態を示した説明図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る包装容器の第2の状態を示した説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る包装容器の第1の状態と第2の状態を説明する説明図(断面図)である(同図(a)が第1の状態を示しており、同図(b)が第2の状態を示している)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
図2は本発明の一実施形態に係る包装容器を説明する展開図である。以下の説明で「折り曲げ線」とはシート材に折り曲げ加工が施された又は施される線であり、「形態変更線」とはシート材の折り曲げ状態を変更可能にした線である。「片」とは前述した折り曲げ線又は形態変更線又は端縁で区画することができるシート材の単位であり、「端縁」とはシート材に切断加工が施された外縁の一部である。また、上下左右は、本発明の実施形態に係る包装容器を自立させた状態でみた位置関係を示している。
【0015】
本発明の実施形態に係る包装容器1は、シート材を折り曲げ加工して形成される包装容器であって、正面壁形成片10、側部折り曲げ片11,12、底部嵩上げ片13、背面壁形成片14、第1底面形成片15、第2底面形成片16を備え、必要に応じて蓋部形成片17を備えている。ここで用いられるシート材は、樹脂(プラスチック)シート、紙シート、金属シート等、折り曲げ加工が可能なものであればどのような材質であっても良い。以下の説明では蓋部形成片17を正面壁形成片10側に設けている場合を説明するが、蓋部形成片17は背面壁形成片14側に設けても良く、また、蓋部形成片17を省いても良い。
【0016】
正面壁形成片10は、一対の側部折り曲げ線20,21と上部折り曲げ線22(蓋部形成片17が形成されない場合は上部端縁)と左右の下部端縁23,24とその間に形成される下部折り曲げ線25とによって囲まれた矩形状の部位である。
【0017】
側部折り曲げ片11,12は、一対の側部折り曲げ線20,21に沿ってそれぞれ折り曲げられる一対の部位であり、側折り曲げ線20,21を介して正面壁形成片10の両側部に形成される。
【0018】
底部嵩上げ片13は、下部折り曲げ線25と下部折り曲げ線25と平行に形成された第1形態変更線26と左右の下部端縁23,24に連続する側端縁27,28に囲まれた部位であり、下部折り曲げ線25と第1形態変更線26との間に設定された嵩上げ幅wを形成している。この底部嵩上げ片13は、展開状態では正面壁形成片10の下部端縁23,24と下部折り曲げ線25からなる下辺から突出するように矩形状に形成されている。
【0019】
背面壁形成片14は、第1形態変更線26と平行に第1形態変更線26から嵩上げ幅wだけ離れた位置に形成される第2形態変更線29と一対の側部端縁30,31と上部端縁32(背面壁形成片14側に蓋部形成片17が形成される場合は上部折り曲げ線)とに囲まれた矩形状の部位であり、側部折り曲げ片11,12に接着して正面壁形成片10との間に収容空間を形成する。
【0020】
第1底面形成片15は、第1形態変更線26と第2形態変更線29と両側端縁33,34で囲まれた部位であり、展開状態で台形状の部位である。第2底面形成片16は、背面壁形成片14内で第3形態変更線35に囲まれて形成され、第2形態変更線29を対称軸として第1底面形成片15と対称形状に形成される部位である。
【0021】
そして、必要に応じて正面壁形成片10(又は前記背面壁形成片)の上部折り曲げ線22を介して蓋部形成片17が形成されている。蓋部形成片17には被係止切り込み部17Aが形成され、蓋部形成片17の折り曲げ時に対面する背面壁形成片14側に被係止切り込み部17Aが係止される係止切り込み部14Aが形成されている。
【0022】
図3及び図4は、包装容器1の第1の状態を示した説明図である。一対の側部折り曲げ線20,21と上部折り曲げ線22と下部折り曲げ線25とに沿ってシート材を折り曲げ加工し、一対の側部折り曲げ線20,21に沿って折り曲げられた側部折り曲げ片11,12と背面壁形成片14を接着部40で接着することで、正面壁形成片10と背面壁形成片14との間が収容空間となる包装容器1が形成される。側部折り曲げ片11,12は背面壁形成片14の上に被さるように折り曲げられ、接着部40で背面壁形成片14と接着している。
【0023】
図3及び図4に示した第1の状態では、第1形態変更線26に沿って底部嵩上げ片13と第1底面形成片15とが略直角状に折り曲げられており、第3形態変更線35に沿って第2底面形成片16と背面壁形成片14とが略直角状に折り曲げられている。そして、第2形態変更線29を非折り曲げ状態にして第1底面形成片15と第2底面形成片16とによって包装容器1の底面を形成している。この状態では、正面壁形成片10の下辺(下部端縁23,24と下部折り曲げ線25)と側部折り曲げ片11,12の下辺11A,12Aが底面の回りに所定角度で開いて位置するので、この下辺によって包装容器1が床面T上に自立可能な状態になっている。
【0024】
図5は、包装容器1の第2の状態を示した説明図である。この状態では、第2形態変更線29を折り曲げ状態にして第2底面形成片16を背面壁形成片14と略同一面状にすることで、正面壁形成片10と背面壁形成片14との間に形成される収容空間を偏平状にしている。図3に示す第1の状態から図5に示す第2の状態に切り替えるには、第1の状態で弓なり状に湾曲している第1底面形成片15と第2底面形成片16を左右に引っ張るように引き伸ばすことで第2形態変更線29を外から見て山状に折り曲げる。
【0025】
図6は、包装容器の第1の状態と第2の状態を説明する説明図(断面図)である(同図(a)が第1の状態を示しており、同図(b)が第2の状態を示している)。同図(a)に示す第1の状態では、第2形態変更線29を非折り曲げ状態にすることで、第1底面形成片15と第2底面形成片16が中央付近で嵩上げ幅wだけ嵩上げされた状態で湾曲状の底面を形成し、第2形態変更線29は非折り曲げ状態が保持される。これに対して、湾曲状の底面を引き伸ばすように力を加えると、湾曲状態の第2形態変更線29が直線状に引き伸ばされると同時に、第2形態変更線29に沿って第1底面形成片15と第2底面形成片16が対面状態になり、同図(b)に示すように、収容空間Mが偏平状になる。
【0026】
この際、第2の状態になっても、第1底面形成片15と第2底面形成片16は、正面壁形成片10と背面壁形成片14の幅全体に亘って存在するので、包装容器1の底に開口が形成されるようなことはなく容器としての機能が十分に確保される。また、第2の状態では、第1底面形成片15は正面壁形成片10と背面壁形成片14の間に収納された状態になり、第2底面形成片16は背面壁形成片14の一部となって同化するので、外観上は矩形状の正面壁形成片10と背面壁形成片14を重ねただけの偏平状の容器になって、容器形状の体裁を崩すことがない。
【0027】
このような本発明の実施形態に係る包装容器1は、薄厚状の商品を収容する包装容器において、第1の状態で包装容器1自体を自立可能にして、効果的に包装容器1に収容された商品を商品棚等に陳列させることができる。また、持ち運び時には第2の状態に切り替えることで、収容される商品の厚さに合わせて収容空間Mを偏平状にして嵩張ることなく持ち運ぶことができる。また、包装容器1を偏平状に折り畳んだ第2の状態であっても、正面壁形成片10と背面壁形成片14の幅全体に亘って存在する第1底面形成片15と第2底面形成片16との間で商品を保持して容器としての機能を十分に維持することができる。
【0028】
更に、第2の状態では、第1底面形成片15は正面壁形成片10と背面壁形成片14の間に収納された状態になり、第2底面形成片16は背面壁形成片14の一部となって同化するので、外観上は矩形状の正面壁形成片10と背面壁形成片14を重ねただけの偏平状の容器になり、体裁良く包装容器1を持ち運ぶことができる。
【0029】
更には、第1の状態の自立可能な状態から第2の状態の偏平状に折り畳んだ状態への変形を、第2形態変更線29を非折り曲げ状態から折り曲げ状態にするだけの簡易な操作で速やかに行うことができるので、商品棚に陳列した状態から即座に嵩張らない状態に切り替えて持ち運ぶことができる。
【符号の説明】
【0030】
1:包装容器,
10:正面壁形成片,11,12:側部折り曲げ片,11A,12A:下辺,
13:底部嵩上げ片,14:背面壁形成片,14A:係止切り込み部,
15:第1底面形成片,16:第2底面形成片,
17:蓋部形成片,17A:被係止切り込み部,
20,21:側部折り曲げ線,22:上部折り曲げ線,
23,24:下部端縁,25:下部折り曲げ線,
26:第1形態変更線,27,28:側端縁,
29:第2形態変更線,30,31:側部端縁,32:上部端縁,
33,34:側端縁,
35:第3形態変更線,40:接着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材を折り曲げ加工して形成される包装容器であって、
一対の側部折り曲げ線と上部折り曲げ線又は上部端縁と左右の下部端縁とその間に形成される下部折り曲げ線とによって囲まれた矩形状の正面壁形成片と、
前記一対の側部折り曲げ線に沿ってそれぞれ折り曲げられる一対の側部折り曲げ片と、
前記下部折り曲げ線と該下部折り曲げ線と平行に形成された第1形態変更線と前記左右の下部端縁に連続する側端縁に囲まれ、前記下部折り曲げ線と前記第1形態変更線との間に設定された嵩上げ幅を形成する底部嵩上げ片と、
前記第1形態変更線と平行に当該第1形態変更線から前記嵩上げ幅だけ離れた位置に形成される第2形態変更線と一対の側部端縁と上部端縁又は上部折り曲げ線とに囲まれ、前記側部折り曲げ片に接着して前記正面壁形成片との間に収容空間を形成する矩形状の背面壁形成片と、
前記第1形態変更線と前記第2形態変更線と両側端縁で囲まれた台形状の第1底面形成片と、
前記背面壁形成片内で第3形態変更線に囲まれて、前記第2形態変更線を対称軸として前記第1底面形成片と対称形状に形成される第2底面形成片とを備え、
前記第2形態変更線を非折り曲げ状態にして前記第1底面形成片と前記第2底面形成片とによって底面を形成して前記正面壁形成片の下辺と前記側部折り曲げ片の下辺とで当該包装容器を自立可能にする第1の状態と、
前記第2形態変更線を折り曲げ状態にして前記第2底面形成片を前記背面壁形成片と略同一面状にすることで前記収容空間を偏平状にする第2の状態とを切り替え可能にしたことを特徴とする包装容器。
【請求項2】
前記正面壁形成片又は前記背面壁形成片の上部折り曲げ線を介して蓋部形成片が形成されることを特徴とする請求項1記載の包装容器。
【請求項3】
前記蓋部形成片には被係止切り込み部が形成され、当該蓋部形成片の折り曲げ時に対面する前記正面壁形成片又は前記背面壁形成片側に前記被係止切り込み部が係止される係止切り込み部が形成されることを特徴とする請求項2に記載の包装容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−84296(P2011−84296A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237306(P2009−237306)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【出願人】(000000550)オカモト株式会社 (118)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)