説明

包装方法及び払い出し部材

【課題】最後のマルチパックを直前のマルチパックに押し付けた状態でグルーピング装置に送り込むことができる方法と装置を提供する。
【解決手段】複数の容器(缶10)を包装してなるマルチパック12をコンベヤベルト16に載せ、コンベヤベルトとマルチパックとの摩擦接触を利用してマルチパックに搬送力を付与しつつ且つマルチパックに対してコンベヤベルトを摺動させながらコンベヤベルトの移動速度よりも遅い速度でマルチパックを搬送し、コンベヤベルトで搬送される複数のマルチパックを集めて別のパッケージに包装するマルチパック包装方法において、コンベヤベルトによって搬送される最終列のマルチパックの後に、マルチパックと同一又はほぼ同一の外形を有し且つマルチパックの包装材料よりも摩擦係数の大きな材料を底面に備えた払い出し部材20を配置し、払い出し部材で最終列のマルチパックを押しながら搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の容器(例えば、缶)をまとめた複数のマルチパックを別のパッケージで包装する方法及びその方法に利用される払い出し部材である。
【背景技術】
【0002】
図3に示すように複数本(図示する例では6個)の缶10又はビンなどの容器を包装材(例えば、紙)11で束ねたマルチパック(6缶パック)12を更に別のパッケージ(例えば、厚紙又段ボールの箱)で包装する包装方法及びそれに利用する包装装置が知られている。
【0003】
図4〔図4(a)、図4(b)〕は、この種の包装装置の一部を示す。図示するように、包装装置13は、多数のマルチパック12を整列搬送するコンベヤ14を有する。コンベヤ14は、マルチパック12の長辺方向の幅B1(図3参照)の約2倍の幅B2をあけて対向する一対のガイド壁15を有する。ガイド壁15の間には、複数の帯状コンベヤベルト16が搬送方向(図の右側から左側)に向けて配置されている。各コンベヤベルト16は、図の左右に配置されたローラ又はホイールに巻回されており、ローラ又はホイールに加えられた回転によって、上部コンベヤベルト部が図の右側から左側に向かって移動するようにしてある。
【0004】
コンベヤベルト16とマルチパック包装材12は共に、摩擦係数の比較的小さな材料で形成されている。したがって、コンベヤベルト16はマルチパック12との摩擦接触により該マルチパック12に搬送力を付与するものの、両者の間には相対的な滑りが発生することから、実際に搬送されるマルチパック12の搬送速度は、コンベヤベルト16の移動速度よりも遅い。そのため、各マルチパック12が他のマルチパック12から大きな押圧力を受けることがなく、包装材11や缶10の損傷が防止される。
【0005】
コンベヤ14の終端領域には、4つのマルチパック12をまとめて、コンベヤ14の側方(図4の上方向)に配置された最終包装工程に供給する供給装置(図示せず)が設けてある。そのために、コンベヤ搬送方向に関して搬送装置の上流側には、連続して搬送されてくる多数のマルチパック12を4つのマルチパックにグルーピングするグルーピング装置17が設けてある。これにより、後の供給装置に対して、4つのマルチパックがグループとなって供給される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、包装装置では、コンベヤベルト16とマルチパック包装材11の間に作用する摩擦力は比較的小さい。そのため、コンベヤベルト16によって搬送される最後のマルチパック12の後には、該マルチパック12を押し進める後続のマルチパックが存在しないので、その直前にあるマルチパック12から遅れて離れてしまい、グルーピング装置17にまとまった状態(隙間の無い状態)で送り込まれないという問題がある。
【0007】
そこで、従来の包装装置では、作業員が稼働している装置に手を入れて最後のマルチパックを押してその直前にあるマルチパックに押し当てる、といった作業が必要であった。
【0008】
本発明は、このような作業を無くし、安全且つ確実に、コンベヤで搬送される多数のマルチパック、特に最後のマルチパックを直前のマルチパックに押し付けた状態でグルーピング装置に送り込むことができる包装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため、本発明は、複数の容器を包装してなるマルチパックをコンベヤベルトに載せ、上記コンベヤベルトとマルチパックとの摩擦接触を利用して上記マルチパックに搬送力を付与しつつ且つ上記マルチパックに対して上記コンベヤベルトを摺動させながら上記コンベヤベルトの移動速度よりも遅い速度で上記マルチパックを搬送し、上記コンベヤベルトで搬送される複数のマルチパックを集めて別のパッケージに包装するマルチパック包装方法において、上記コンベヤベルトによって搬送される最終列のマルチパックの後に、上記マルチパックと同一又はほぼ同一の外形を有し且つ上記マルチパックの包装材料よりも摩擦係数の大きな材料を底面に備えた払い出し部材を配置し、上記払い出し部材で上記最終列のマルチパックを押しながら搬送することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、複数の容器を包装してなるマルチパックをコンベヤベルトに乗せ、上記コンベヤベルトとマルチパックとの摩擦接触を利用して上記マルチパックに搬送力を付与しつつ且つ上記マルチパックに対して上記コンベヤベルトを摺動させながら上記コンベヤベルトの移動速度よりも遅い速度で上記マルチパックを搬送し、上記コンベヤベルトで搬送される複数のマルチパックを集めて別のパッケージに包装するマルチパック包装方法に利用される部材であって、上記マルチパックと同一又はほぼ同一の外形を有し且つ上記マルチパックの包装材料よりも摩擦係数の大きな材料を底面に備えており、上記コンベヤベルトによって搬送される最終列のマルチパックの後に配置されて上記最終列のマルチパックを押しながら搬送することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このような構成を採用した本発明によれば、コンベヤで搬送される最後のマルチパックは、直前のマルチパックに押し当てられた状態でグルーピング装置に送り込まれる。そのため、作業員が最後のマルチパックを手で押し進めるといった作業が不要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明に係る包装装置及びそれに使用する部材(払い出し部材)について説明する。なお、以下の図面を参照した説明では、特定の方向を示す用語(「上」、「下」、「左」、「右」、およびそれらを含む別の用語)を使用するが、これは図面を通じて発明が十分に理解できるようにするためであり、それらの用語によって発明の技術的範囲が限定的に解釈されるべきものではない。
【0013】
図1は、本発明に係る払い出し部材20を示す。図1と図3を対比すれば明らかなように、払い出し部材20は、マルチパック12の外形と同一又はほぼ同一の大きさと形状を有する長方形のブロックである。払い出し部材20を構成する材料は、特に限定的ではないが、マルチパック12の重量とほぼ同一又はそれよりも重いことが好ましい。また、払い出し部材20は、合成樹脂で形成することが好ましいが、その他の材料(金属材料、金属材料と樹脂材料の組み合わせ、その他の材料)で形成してもよい。
【0014】
払い出し部材20の底部は、マルチパック12の包装材料よりも摩擦係数の大きな材料からなる摩擦部材21を有する。本実施例では、摩擦部材21は、払い出し部材20の底部をすべて覆っているが、コンベヤベルト16との間に必要な摩擦力が確保できれば、払い出し部材20の底部をすべて覆う必要はない。摩擦部材21は、摩擦係数の大きな材料、例えば、天然ゴム又は合成ゴム、柔軟性のある発泡ウレタンなどが好適に利用できる。
【0015】
払い出し部材20の上面には、この払い出し部材20をつかむための把持部を形成することが好ましい。本実施例では、把持部は、払い出し部材20の上面に形成された一対の窪み22によって構成されている。しかし、把持部の形状や大きさは実施例に限るものでない。ただし、払い出し部材20の外形はマルチパック12と同一又はほぼ同一であることが好ましいので、把持部は突部であるよりも窪みであることが好ましい。
【0016】
このように構成された払い出し部材20は、図2に示すように、コンベヤ14によって搬送される多数のマルチパック12の最後尾に配置される。その際、最後尾のマルチパックの12がちょうど4つのグループになる様に半端なマルチパック12がある場合は取り出しておく。図示の例では、コンベヤ14は、マルチパック12の長辺方向の幅B1の約2倍の幅B2を有する。したがって、払い出し部材20は、2列に並んで搬送されるマルチパック12の最後尾に横一列に配置される。
【0017】
コンベヤ14の上に横一列に配置された払い出し部材20は、底部に設けた摩擦部材21の摩擦係数がマルチパック包装材料のそれよりも大きいことから、コンベヤベルト16との間に大きな摩擦力が得られる。その結果、払い出し部材20の前に配置されているマルチパック12は払い出し部材20により前方に押される。そのため、払い出し部材20の前にあるマルチパック12は搬送方向に関してその直前にある別のマルチパック12から離れることなく接触した状態でグルーピング装置17に供給され、そこで4つのマルチパック12が一つのグループにまとめられ、最終包装工程に供給される。そして、最後の4つのマルチパック12のグルーピングが終了すると、払い出し部材20はコンベヤ14から取り除かれる。
【0018】
グルーピング装置17の直前に、払い出し部材20を検知する手段を設けてもよい。検知手段は、光学式、磁気式、機械接触式のいずれの検出器であってもよい。また、検出器の出力とコンベヤ14の制御装置を電気的に接続し、検出器が払い出し部材20を検出した時点で、制御装置がコンベヤ14を停止するように構成することが好ましい。
【0019】
このように、本発明によれば、多数のマルチパックをベルトコンベヤで搬送しながらグルーピングする装置において、最後のグルーピングを確実に行うことができる。また、稼働している装置に手を入れて最後のマルチパックを押す必要がないため、より安全である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る払い出し部材の斜視図。
【図2】図1の払い出し部材の使用状態を示す、包装装置の平面図〔図2(a)〕と、該包装装置で搬送されるマルチパックの状態を示す側面図〔図2(b)〕。
【図3】マルチパックの一部を切除した斜視図。
【図4】払い出し部材を使用しない包装装置の平面図〔図4(a)〕と、該包装装置で搬送されるマルチパックの状態を示す側面図〔図4(b)〕。
【符号の説明】
【0021】
10:缶
11:包装材
12:マルチパック
13:包装装置
14:コンベヤ
15:ガイド壁
16:コンベヤベルト
17:グルーピング装置
20:払い出し部材
21:摩擦部材
22:窪み(把持部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の容器を包装してなるマルチパックをコンベヤベルトに載せ、上記コンベヤベルトとマルチパックとの摩擦接触を利用して上記マルチパックに搬送力を付与しつつ且つ上記マルチパックに対して上記コンベヤベルトを摺動させながら上記コンベヤベルトの移動速度よりも遅い速度で上記マルチパックを搬送し、上記コンベヤベルトで搬送される複数のマルチパックを集めて別のパッケージに包装するマルチパック包装方法において、
上記コンベヤベルトによって搬送される最終列のマルチパックの後に、上記マルチパックと同一又はほぼ同一の外形を有し且つ上記マルチパックの包装材料よりも摩擦係数の大きな材料を底面に備えた払い出し部材を配置し、上記払い出し部材で上記最終列のマルチパックを押しながら搬送することを特徴とするマルチパック包装方法。
【請求項2】
複数の容器を包装してなるマルチパックをコンベヤベルトに乗せ、上記コンベヤベルトとマルチパックとの摩擦接触を利用して上記マルチパックに搬送力を付与しつつ且つ上記マルチパックに対して上記コンベヤベルトを摺動させながら上記コンベヤベルトの移動速度よりも遅い速度で上記マルチパックを搬送し、上記コンベヤベルトで搬送される複数のマルチパックを集めて別のパッケージに包装するマルチパック包装方法に利用される部材であって、
上記マルチパックと同一又はほぼ同一の外形を有し且つ上記マルチパックの包装材料よりも摩擦係数の大きな材料を底面に備えており、
上記コンベヤベルトによって搬送される最終列のマルチパックの後に配置されて上記最終列のマルチパックを押しながら搬送することを特徴とする払い出し部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−132300(P2010−132300A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308240(P2008−308240)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】