説明

包装袋

【課題】コストアップを招くことがなく、内容物を直接袋内に収納しても、外部からの衝撃による内容物の変形・損傷が生じにくい包装袋を提供する。
【解決手段】包装袋1は、2枚の矩形状の包装フィルム30を重ねて周縁部31を全周に亘って熱接着することによって形成される袋体3内の収納部32に、固形物からなる複数の内容物2を密閉状態で収納している。袋体3の収納部32には、複数の内容物2とともに所定量の空気が封入されていて、袋体3の厚みDが、収納部32に内容物2が整列して収納される状態で、内容物2が自然に起立する状態の高さHよりも大きく、かつ、内容物2の前記高さHの1.45倍よりも小さく設定されている。周縁部1に形成された熱シール部33は、その強度が純曲げ試験機(クランプ幅5cm、シート幅5cm)による平均曲げこわさ値で1.0g・cm/cm〜3.7g・cm/cmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品などの固形物からなる内容物を密閉状態で包装するための包装袋に関し、特に本発明は、四方シールにより密封された包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、球形状のアイスクリームや一口サイズのチョコレート、ケーキなどの菓子類などは、その変質を防止するために、密封性の高い包装袋に包装され、埃や塵から衛生的に保護された状態で流通している。
【0003】
この種の包装袋として、1枚の包装フィルムをその両端が合掌状に重なるように折り曲げて筒状体とし、筒状体の上縁部、下縁部、および背面の重合部を熱シールした、ピロー包装袋が広く知られている。しかし、このピロー包装袋は、熱シール部が袋の上縁部、下縁部および背面の重合部のみにしか設けられていないため、袋を開封するための切欠や切込(ノッチ)を形成可能な場所が限定され、開封しづらいという欠点を有している。また、包装袋の両側縁部が熱シールされていないために外部からの衝撃に弱く、その結果、内容物に対する保護が十分でなかったり、包装フィルムを突き破るピンホールが発生したりするなどの欠点も有している。
【0004】
一方、その他の包装袋として、2枚の包装フィルムを重ね合わせ、上縁部、下縁部および両側縁部の四辺をそれぞれ熱シールした、四方シール包装袋も広く知られている。この四方シール包装袋は、袋の周縁部の全周に亘って熱シール部が形成されているので、ピロー包装袋と比較すると、側方からの衝撃にも強いという利点を有しているとともに、袋を開封するためのノッチを袋の周縁部の至る場所に設けることが可能であるので、袋の開封する際の利便性も向上するという利点も有している。
【0005】
ただし、上記した四方シール包装袋においても、商品の流通過程において、包装袋が大量に箱詰めされるなどして、包装袋に上下方向から重みなどによる衝撃が加わると、その衝撃が包装袋から内容物である食品に直接伝わるため、食品の変形や破損を招くという課題があった。
【0006】
このような包装袋に対する上下方向からの衝撃による内容物の変形・破損を防止するために、内容物を保護するための緩衝材を包装袋内に設けることが考えられるが、この方法だと、緩衝材を別に用意する必要があるので、製作に手間がかかるとともに、その材料費などによるコスト高を招くという問題がある。
【0007】
そこで、包装袋内に内容物を収容するとともに空気を封入して、袋自体を膨張させることが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−301342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の包装袋では、内部に封入された空気がエアクッションの役割を果たすので、緩衝材がなくても内容物が上下方向の衝撃から保護され、内容物の変形・破損が防止されるようになっている。
【0010】
しかしながら、この特許文献1に記載の包装袋のように、袋自体を単に膨張させただけでは、内容物が袋内を自由に動き回ることが可能になる。その結果、包装袋内に内容物が複数収容されている場合には、袋内で内容物同士が衝突することにより、各々が変形・破損したり、袋内の一部の領域に複数の内容物が密集して集積することにより、集積した内容物が包装袋と密に接触する結果、内部に封入された空気がエアクッションの役割を果たさず、包装袋への衝撃が直接内容物に伝わるようになったり、内容物が冷凍食品である場合には、内容物同士がブロッキングして塊状になるなどの問題がある。
【0011】
内容物同士の衝突やブロッキングを防ぐために、複数の内容物を区分けされたトレーに収納した状態で包装袋内に収容することも考えられるが、この方法だと、上記した緩衝材を用いる場合と同様、製作に手間がかかるとともに、その材料費などによるコスト高を招く。
【0012】
本発明は、上記した問題に着目してなされたもので、コストアップを招くことがなく、内容物を直接袋内に収納しても、外部からの衝撃による内容物の変形・損傷が生じにくい包装袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の前記目的は、少なくとも一方の面に熱接着性樹脂層を備える2枚の矩形状の包装フィルムを重ねて周縁部を全周に亘って熱接着することによって形成される袋体内の収納部に、固形物からなる複数の内容物を密閉状態で収納したものであって、前記袋体の収納部には、複数の内容物とともに空気が封入されていて、前記袋体の厚みDは、前記収納部に内容物が整列して収納される状態で、内容物が自然に起立する状態の高さHよりも大きく、かつ、内容物の前記高さHの1.45倍よりも小さく設定されており、熱接着により前記袋体の周縁部に形成された熱シール部は、その強度が純曲げ試験機(クランプ幅5cm、シート幅5cm)による平均曲げこわさ値で1.0g・cm/cm〜3.7g・cm/cmである包装袋により達成される。
【0014】
本発明の好ましい実施態様においては、前記袋体は、腰の強さがループスティフネス値で0.5g/15mm幅〜7.0g/15mm幅(ループ長100mm)の範囲にある包装フィルムで構成されていることを特徴としている。
【0015】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記熱シール部は、そのシール幅が3mm〜30mmに設定されていることを特徴としている。
【0016】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記袋体の少なくとも一辺に形成された熱シール部は、前記袋体の外方に向けて部分的に切り欠かれてシール幅が他の領域よりも狭い幅狭領域を有しており、前記袋体は、前記収納部から前記幅狭領域に向けて突き出る個別取出部を備えていることを特徴としている。
【0017】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記幅狭領域が形成された熱シール部と直交する両側の熱シール部の少なくとも一方には、前記袋体を開封するための第1の開封手段および第2の開封手段が設けられており、前記第1の開封手段は、前記側方の熱シール部の前記個別取出口よりも下方にあたる位置に設けられているとともに、前記第2の開封手段は、前記側方の熱シール部の前記個別取出部の先端部近傍にあたる位置に設けられていることを特徴としている。
【0018】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記第2の開封手段は、前記側方の熱シール部に設けられる切り込みと、前記切り込みを始点として前記個別取出部に向かって延びる誘導補助線により構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明の包装袋によれば、内容物を直接袋内に収納するのでコストアップを招くことがなく、かつ、袋内に収納された内容物の外部からの衝撃による変形・損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る包装袋の平面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る包装袋の側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る包装袋の断面図である。
【図4】内容物の高さを形状ごとに説明する説明図である。
【図5】包装フィルムの断面図である。
【図6】包装袋の製造工程を示した説明図である。
【図7】包装袋の製造工程を示した説明図である。
【図8】従来例の包装袋を縦置きした場合の内容物の状態を示す模式図である。
【図9】本発明の包装袋を縦置きした場合の内容物の状態を示す模式図である。
【図10】従来例の包装袋に側方から圧力を加えた場合の内容物の状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1および図2は、本発明の一実施例である包装袋1の外観構成を、図3は、この包装袋1の断面図を、それぞれ示している。図示例の包装袋1は、食品などの固形物からなる複数の内容物2を、いわゆる「パウチ」と呼ばれる袋体3内に密閉状態で収納した構成のものである。
【0022】
内容物2としては、例えば、球形状のアイスクリームや一口サイズのチョコレート、ケーキなどの菓子類、あるいは、加熱調理済みのギョーザやシュウマイ、小龍包、饅頭などのチルド食品または冷凍食品など、固形状の食品を例示することができるが、これに限定されるものではなく、固形物であれば種々のものを適用できる。固形状の内容物2は、載置の向き、仕方に応じてそれぞれ所定の高さを有するが、本実施例では、内容物2を平面などに載置した際、内容物2が自然に起立する状態、つまり、内容物2が外部から何らの作用も受けずに自立する状態における平面からの垂直方向の長さを、内容物2の高さHとしている。
【0023】
例えば、図4(a)に示すように、内容物2が断面視円状の球形状のものであれば、この内容物2の高さHは、球径(直径)Rとなる。また、図4(b)に示すように、内容物2が断面視楕円状の楕円体形状のものであれば、楕円体が自然に起立する状態は横に倒れた状態であるから、この内容物2の高さHは、短径rとなる。また、図4(c)に示すように、内容物2が円柱形状のものであれば、円柱は縦向き(図4(c)の左図)でも横向き(図4(c)の右図)でも自然に起立するから、内容物2を載置する向き、仕方に応じて、この内容物2の高さHは、円柱の高さa、幅bのいずれかとなる。
【0024】
袋体3は、柔軟性を有する表裏2枚の矩形状の包装フィルム30,30からなり、これらの包装フィルム30を重ね合わせ、四方の周縁部31を熱接着(熱シール)することにより、中央部分に内容物3の収納部32を、四方の周縁部31に袋体3を密封する熱シール部33を、それぞれ形成したものである。
【0025】
各包装フィルム30は、図5に示すように、包装フィルム30の表基材となるベース層30Aと、熱シール材として包装フィルム30の内面に位置する熱接着性樹脂層(シーラント層)30Bと、ベース層30Aとシーラント層30Bとの間に挟まれた中間バリア層30Cとによって構成されている。これらの各層30A〜30Cを、例えば、溶融押出しラミネートまたはドライラミネートにより積層して、各包装フィルム30が形成されている。
【0026】
ベース層30Aとしては、印刷適性がありかつ透明な一軸もしくは二軸延伸の合成樹脂フィルムを好適に使用することができ、例えば、高強度で耐熱性の良いポリエチレンテレフタラートフィルム(PET)、ポリプロピレンフィルム(OPP)などを好ましく使用することができる。ベース層30Aの内側面には、包装フィルム30の表面に意匠性を与えるために、必要に応じて印刷層(図示せず)が設けられる。この印刷層は、印刷を行うベース層30Aの合成樹脂フィルムに適したインキタイプを選んでベース層30Aの全面または必要部分に印刷される。
【0027】
シーラント層30Bとしては、加熱によって溶融して相互に接着し得る熱接着(熱シール)性を有する合成樹脂フィルムであれば良く、例えば、線状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE)、未延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)などを好適に使用することができる。
ポリエチレンフィルムや未延伸ポリプロピレンフィルムを用いれば、比較的低い温度で優れたシール性を発揮することができる。
【0028】
中間バリア層30Cは、袋体3に、酸素や水蒸気などを遮断するガスバリア性、遮光性、保香性、さらに強度を付与するために設けられる層であり、例えば、延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムに、アルミニウムや酸化ケイ素、アルミナなどの薄膜を蒸着などにより設けたフィルムなどを好ましく使用することができる。
【0029】
このように、袋体3を構成する包装フィルム30は、内容物2を収納した状態で保管・流通に供される際に、ピンホールや破袋を発生しない程度の強度をもつとともに、例えば、冷凍状態の内容物を収納して熱シールする場合においても、冷凍内容物に支障のない温度の低温熱シール性をもち、さらに、内容物の香味を放散させたり、酸化などの化学変化、脱水乾燥などの物理変化を阻止するバリア性をもつことが好ましい。
【0030】
なお、ベース層30Aとシーラント層30Bとの間、好ましくは、ベース層30Aと中間バリア層30Cとの間に、手切れ性を有するフィルムなどの易引裂き材層を設けてもよい。手切れ性を有するフィルムとしては、例えば、横方向に直線引裂き性を有する高密度ポリプロピレンフィルムや高密度ポリエチレンフィルム、例えば、東洋化学株式会社製の「カラリアンY」などを好適に挙げることができる。
【0031】
上記構成からなる2枚の矩形の包装フィルム30を、シーラント層30Bが相互に対向するようにして重ね合わせた後、上縁部31aを除く三方の周縁部31(下縁部31bおよび両側縁部31c)を熱シールして、熱シール部33b,33cを形成する。そして、図6に示すように、熱シールしていない側の周縁部(上縁部31a)にある開口部34から、袋体3内に複数の内容物2を挿入して、収納部32に整列状態で収納する。その際、内容物2を挿入した袋体3の開口部34に向けて空気供給管(図示せず)から空気を噴出して、袋体内3に所定量の空気を充填させて袋体3を膨らませる。その後、図7に示すように、各包装フィルム30の上縁部31aを熱シールして、熱シール部33aを形成することにより、複数の内容物2を収納する収納部32が完全に密封された袋体3が得られる。
【0032】
このようにして密封された袋体3は、収納部32が空気の封入量に見合った膨張状態を維持している。本発明の包装袋1では、平面に横置きした際の袋体3の厚みD(図7に示す)が、少なくとも内部に整列状態で収納された内容物2の前記高さHよりも大きく、かつ、内容物2の前記高さHの1.45倍よりも小さな範囲となるように、封入される空気量が制御されている。例えば、後述するように、内容物2が球形状のアイスボールの場合には、その球径(内容物2の前記高さH)25mmに対して、袋体3の厚みDが26mm〜30mmになるように、袋体3の収納部32内に空気が封入されている。
【0033】
このように、袋体3内に空気を封入して袋体3を膨ませ、その厚みDを内容物2の前記高さHよりも大きくすることにより、内部に封入された空気がエアクッションの役割を果たすので、緩衝材などがなくても内容物2が上下方向の衝撃(袋体3の上面および下面に加わる衝撃)から保護され、内容物2の変形・破損が防止されるようになっている。
【0034】
ただし、袋体3の厚みDが内容物2の前記高さHに対して大きすぎると、袋体3内における内容物2の自由度が大きくなる、つまり、袋体3内で内容物2が自由に動き回って内容物2の移動が激しくなる。そのため、袋体3内に複数の内容物2が収納されている場合、包装袋1が保管・流通時に縦置きなどされると、内容物2は、図7に示すような袋体3への収納時の整列状態を維持せず、図8に示すように、袋体3の下方領域に密集して集積するようになる。その結果、袋体3内で内容物2同士が衝突することによる変形・破損がしたり、袋体3内の一部の領域に内容物2が密集することにより、集積した内容物2が袋体3と密に接触して内部に封入された空気がエアクッションの役割を果たさない結果、袋体3への外部からの衝撃が直に内容物2に伝達したり、内容物2が冷凍食品である場合には、内容物2同士がブロッキングして塊状になったりするという問題が生じる。
【0035】
一方、本発明の包装袋1のように、袋体3の厚みDが、内容物2の前記高さHの1.45倍よりも小さな値に設定されていると、袋体3内における内容物2の自由度が制限される、つまり、袋体3内で内容物2が自由に動き回ることができなくなる。その結果、内容物2は、包装袋1が縦置きされても、図9に示されるように、袋体3内の収納部32に、収納時の整列状態をほぼ維持した状態で収納されるので、保管・流通時に、袋体3内で内容物2同士が衝突して変形・破損したり、内容物2が塊状にブロッキングしたりするのが防止されるようになっている。加えて、内容物2が袋体3内の一部領域に密集しないので、内容物2と袋体3とが密着せず、内部に封入された空気がエアクッションとして機能し続ける。その結果、空気の緩衝作用により、外部からの衝撃に対して、緩衝材を使用している場合と同様の保護機能を備えることが可能となっている。
【0036】
袋体3の厚みDを、上記した所定の厚みに維持するためには、袋体3内に封入する空気量を所定の量に制御する必要があると同時に、袋体3自体が、内容物2の自重によって変形して膨まない程度の強度を有する材質で形成されている必要がある。
【0037】
そのため、本発明の包装袋1では、袋体3の材質、つまり、袋体3を構成する上記包装フィルム30は、そのフィルムの腰強度が、内容物2の自重にもよるが、例えば、内容物2が後述する球径約25mmのアイスボール(約8g)であれば、ループスティフネス値で2.5g/15mm幅〜7.0g/15mm幅(ループ長100mm)の範囲となるように形成されている。なお、ループスティフネス値とは、詳細は後述するが、決められた幅、長さの短冊状フィルムをループ状に曲げ、このループの中央部を押したときにはね返る反発力をフィルムの腰の指標とするものであり、値が大きいほど高い剛性を示す。
【0038】
これにより、袋体3自体が適度な剛性を持つ結果、内容物2の自重が袋体3の上面または下面(包装フィルム30)に作用した場合でも、袋体3が自ら膨むのが抑制されるので、袋体3の厚みDを所定の厚みに維持でき、内容物2の自由度が制限された状態を継続保持することが可能になっている。
【0039】
加えて、袋体3の内部に封入した空気のエアクッション機能を持続し続けるには、袋体3の側方からの衝撃(熱シール部33に側方から加わる衝撃)による変形を防止する必要がある。すなわち、図10に示すように、側方からの衝撃Fにより袋体3が容易に変形すると、この袋体3の変形により、袋体3の上面および下面が膨らみ、これにより、厚みDが幅広となる袋体3内の一部領域に内容物2が密集して集積するようになる。その結果、集積した内容物2が袋体3と密に接触するので、内部に封入された空気がエアクッションの役割を果たさずに、外部からの衝撃が直に内容物2に伝達するようになる。
【0040】
このような袋体3の変形を防止するためには、袋体3の周縁部31に形成された熱シール部33の強度が所定の強度を有している必要がある。この熱シール部33の強度は、熱シール部33の縦幅(シール幅)と、袋体3を構成する上記包装フィルム30の腰強度とに依存し、シール幅が大きいほど、または/および、包装フィルム30の腰強度が高いほど、強度が高まるようになっている。本実施例では、熱シール部33の強度は、純曲げ試験機(クランプ幅5cm、シート幅5cm)による平均曲げこわさ値で、1.0g・cm/cm〜3.7g・cm/cmとなっている。なお、平均曲げこわさ値(EI)とは、紙などに曲げを与えたときの抵抗性を表す性質(剛性)のことをいい、詳細は後述するが、試料全体をある一定の曲率Rで曲げて正確な円弧状としたときに試料全体に発生する曲げモーメントMに基づき測定されるもの(EI=M・R)であり、値が大きいほど高い剛性を示す。
【0041】
このように、本発明の包装袋1では、袋体3の熱シール部33の強度を、純曲げ試験機(クランプ幅5cm、シート幅5cm)による平均曲げこわさ値で1.0g・cm/cm以上、好ましくは、1.3g・cm/cm以上として熱シール部33自体に所定の剛性を持たせることにより、袋体3に側方からの衝撃が作用しても、熱シール部33によってシールドされるので、袋体3が容易に変形するのが防止される。さらに、一時的に袋体3が変形しても、熱シール部33の反発力により、袋体3自体が元の形状に復元しようとするので、袋体3の変形が防止され、その結果、袋体3の内部に封入した空気がエアクッションとしての機能を果たし続ける。
【0042】
熱シール部33は、袋体3の上縁部31aに形成された上部熱シール部33aが、下縁部31bおよび両側縁部31cに形成された下部熱シール部33bおよび各側部熱シール部33cよりも幅広に形成されていて、これら他の熱シール部33b,33cとは区別されている。
【0043】
この上部熱シール部33aのシール幅は、幅広となっている分、手指で把持し易いようになっているとともに、詳細は後述するが、熱シールが施されていない非シール部分(個別取出部35)を有している。
【0044】
上部熱シール部33aは、図3に示すように、その中央部よりも少し側方にずれた位置に、その縦幅(シール幅)が他の領域の縦幅(シール幅)よりも狭くなっている幅狭領域36が形成されている。これにより、上部熱シール部33aには、袋体3の外方に向けてこの上部熱シール部33aを部分的に切り欠く矩形状の非シール部分からなる個別取出部35が区画形成されている。この個別取出部35は、袋体3内の収納部32と連通しており、収納部32から幅狭領域36に向けて突き出ることにより、収納部32に収納されている複数の内容物2を1つ1つ個別に取り出すことのできる取出口として機能する。
【0045】
個別取出部35の横幅、つまり、幅狭領域36の横幅は、少なくとも1つの内容物2が個別取出部35を円滑に通過できる程度の横幅であればよく、例えば、内容物2が球径約25mmのアイスボールの場合では、40mm〜70mmの範囲であることが望ましい。また、幅狭領域36の縦幅(シール幅)は、上述したように、このシール部分の強度が純曲げ試験機(クランプ幅5cm、シート幅5cm)による平均曲げこわさ値で1.0g・cm/cm〜3.7g・cm/cmとなるような大きさに設定されている。
【0046】
なお、個別取出部35の平面形状は、本実施例では矩形状に形成されているが、必ずしもこれに限られるものではなく、台形状など、内容物2が通過できる形状であれば、種々の形状に形成することができる。
【0047】
幅狭領域36が形成された上部熱シール部33aと直交する両側の側部熱シール部33cには、袋体3を開封するための第1の開封手段37および第2の開封手段38が設けられている。第1の開封手段37は、一方の側部熱シール部33cの個別取出部35よりも下方にあたる位置に設けられている。この第1の開封手段37を開封のきっかけとして、袋体3を横断方向(開封方向)に引き裂くことにより、袋体3の上部に大きな開口が形成されて収納部32が全開するので、多数の内容物2を取り出すことができるようになっている。
【0048】
本実施例では、第1の開封手段37は、袋体3を横切る方向に向いたI字状の切り込み(ノッチ)を側部熱シール部33cに設けることにより構成されているが、必ずしもこれに限られるものではなく、切り込み(ノッチ)をV字状やU字状、半円状など種々の形状にすることができる。また、切り込み(ノッチ)に変えて、直線状またはミシン目状のハーフカット線などを側部熱シール部33cに設けるようにしてもよい。
【0049】
これに対して、第2の開封手段38は、袋体3から内容物2を1個ずつ取り出して食べたりなどすることを可能とするものであり、他方の側部熱シール部33cの個別取出部35の先端部近傍にあたる位置に設けられている。この第2の開封手段38を開封のきっかけとして、袋体3を横断方向(開封方向)に引き裂くと、個別取出部35のみが開口して収納部32は開口しないので、収納部32の内容物2は個別取出部35を介してのみ外部に排出される。これにより、内容物2を1個ずつ取り出して食べることができるようになっている。
【0050】
この第2の開封手段38は、本実施例では、個別取出部35を開口するための起点となるI字状の切り込み(ノッチ)39と、切り込み(ノッチ)39からの開封を誘導・補助する誘導補助線40とで構成されている。誘導補助線40は、切り込み(ノッチ)39を始点として、袋体3の幅方向へ個別取出口35の側方に向かって延び、包装袋1を構成する包装フィルム30のいずれかの層に厚み方向に設けられた切目で形成された直線状またはミシン目状のハーフカット線により構成されている。この誘導補助線40に沿って袋体3を開封することにより、袋体3が直線状に引き裂かれ、個別取出部35をスムーズに開口できるようになっている。
【0051】
なお、誘導補助線40は必ずしも設ける必要はなく、切り込み(ノッチ)39だけで第2の開封手段38を構成してもよい。また、側部熱シール部33cから個別取出部35まで延びるハーフカット線により第2の開封手段38を構成するようにしてもよい。
【0052】
このように、本実施例では、内容物2の種類や使用者の好みなどによって、開封手段37,38をそれぞれ選択することで、内容物2を取り出す量など簡単に調整することができるようになっている。
【0053】
以下、種々の内容物2を上記した構成の袋体3を使用して包装した包装袋1について、本発明の作用・効果、つまり、袋体3の熱シール部33の強度と袋体3の形状保持能力との関係、および、袋体3の厚みDと袋体3の内容物保護能力との関係を、それぞれ実験した実施例を示す。
【0054】
(1)実施例1
まず、ベース層30Aとして、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、このベース層30Aの表面に印刷層(図示せず)を形成し、さらに易引裂き材層(図示せず)として厚さ18μmの高密度ポリエチレンフィルムを積層し、中間バリア層30Cとして厚さ12μmのアルミ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムを積層した。さらに、中間バリア層30Cの表面にシーラント層30Bとして厚さ60μmのポリエチレンフィルムを積層して包装フィルム30を製造した。この包装フィルム30の腰強度を、株式会社東洋精機製作所製の「ループスティフネステスタ」を用いて測定したところ、ループスティフネス値で約5.7g/15mm幅〜5.9g/15mm幅(ループ長100mm)であった。なお、ループスティフネス値の測定にあたっては、包装フィルム30を所定の大きさの帯状片に切断して、幅15mm、ループ長100mmの円形ループを作り、この円形ループに、常温下で、外側から一定変位10mmを与えたときにかかる荷重を、ループスティフネス値として測定した。
【0055】
次に、この包装フィルム30を用いて、外寸120mm×165mm、下部熱シール部33bおよび各側部熱シール部33cのシール幅16mm,6mmの袋体3を製造した。この袋体3内に未シール部の開口部34から、所定量の空気とともに内容物2として、球径25mmの球形状のアイスボールを12個、整列状態で収納し、未シール部をシール幅20mmで熱シールして、その厚みDが21mm〜34mmの種々の包装体1を製造した。この包装体1の各熱シール部33a〜33cの強度を、株式会社エムエステー製の純曲げ試験機を用いて測定したところ、平均曲げこわさ値で、上部熱シール部33aが約2.6g・cm/cm、下部熱シール部33bが約2.2g・cm/cm、各側部熱シール部33cが約1.3g・cm/cmであった。なお、平均曲げこわさ値の測定にあたっては、各熱シール部33を長さ5cmの帯状片に切断し、この帯状片に対して、株式会社エスエムテー製の純曲げ試験機JTC−911BTにより、常温下で、曲率変化速度0.1cm−1/sec、クランプ幅5cm、最大曲率2.5cm−1の条件下で平均曲げこわさ値を測定した。
【0056】
また、比較例として、各側部熱シール部33cのシール幅を適宜変更して、各側部熱シール部33cの強度が、上記純曲げ試験機(クランプ幅5cm、シート幅5cm)による平均曲げこわさ値で0.8g・cm/cm〜1.7g・cm/cmの値をとる包装体1も製造した。
【0057】
そして、厚みDが21mm〜34mmの種々の包装体1に対して、包装体1の上面および下面に、0.3kgf/cm程度の圧力をかけたときの内容物2の損傷状況を調べた。その結果が、表1に示されている。
【0058】
【表1】

【0059】
表1の結果から、厚みDが21mmから25mmの包装体1では、封入された空気がエアクッションとしての役割を果たさず、外部からの圧力により内容物2は損傷を受けて、その形状は変形していた。一方、厚みDが31mmから34mmの包装体1では、揺さぶられることにより、内容物2が袋体3内で自由に動き回って袋体3の一部領域に密集して集積し、内容物2が袋体3と密に接触していた。よって、封入された空気がエアクッションとしての役割を果たし得ず、内容物2を保護できないことが確認された。
【0060】
これに対して、厚みDが26mmから30mm(内容物2の前記高さHの1.04倍〜1.20倍)の包装体1では、外部からの圧力を受けても、内容物2は損傷を受けておらず球形状を維持しており、封入された空気がエアクッションとして機能していることが確認された。さらに、包装袋1が揺さぶられても、内容物2は袋体3への収納時の整列状態を維持しており、よって、内部に封入された空気がエアクッションとして機能し続け得ることも確認された。
【0061】
次に、各側部熱シール部33cの強度が、平均曲げこわさ値で0.8g・cm/cm〜1.7g・cm/cmの値をとる各包装体1に対して、包装体1の側方、つまり、側部熱シール部33cの側から、0.1kgf/cm程度の圧力をかけたときの袋体3の変形状況を調べた。その結果が、表2に示されている。
【0062】
【表2】

【0063】
表2の結果から、熱シール部33の強度が高いほど、袋体3の形状保持能力が高いことが確認された。すなわち、各側部熱シール部33cの強度が、平均曲げこわさ値で0.8g・cm/cm〜0.9g・cm/cmの値をとる包装体1では、外部からの圧力により、袋体3は容易に変形してその上面および下面が膨み、これにより厚みDが幅広となった領域に内容物2が密集して集積することが確認された。よって、内容物2が袋体3と密に接触する結果、封入された空気がエアクッションとしての役割を果たし得ず、内容物2を保護できないことが確認された。
【0064】
一方、各側部熱シール部33cの強度が、平均曲げこわさ値で1.0g・cm/cm〜1.2g・cm/cmの値をとる包装体1では、外部からの圧力により、袋体3は多少変形するが、元の形状をやや保持していることが確認された。さらに、各側部熱シール部33cの強度が、平均曲げこわさ値で1.3g・cm/cm以上の値をとる包装体1では、外部からの圧力を受けても、元の形状をほとんど保持しているか、または、多少変形しても、各側部熱シール部33cの反発力により、袋体3自体が元の形状に復元することが確認された。なお、熱シール部33の強度は、平均曲げこわさ値で3.7g・cm/cmよりも大きな値をとると、コスト増や強度が強すぎてかえって引き裂き開封しづらくなるなどの問題が生じるので、平均曲げこわさ値で3.7g・cm/cm以下の値をとるのが望ましい。
【0065】
よって、熱シール部33の強度が、純曲げ試験機(クランプ幅5cm、シート幅5cm)による平均曲げこわさ値で1.0g・cm/cm〜3.7g・cm/cmの値をとる包装体1では、熱シール部33の側から、多少の圧力を受けても袋体3はその形状を保持し、これにより、内容物2は袋体3への収納時の整列状態を維持する結果、内部に封入された空気がエアクッションとして機能し続け得ることが確認された。
【0066】
(2)実施例2
まず、ベース層30Aとして、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、このベース層30Aの表面に印刷層(図示せず)を形成し、さらに易引裂き材層(図示せず)として厚さ18μmの高密度ポリエチレンフィルムを積層し、中間バリア層30Cとして厚さ12μmのアルミ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムを積層した。さらに、中間バリア層30Cの表面にシーラント層30Bとして厚さ60μmのポリエチレンフィルムを積層して包装フィルム30を製造した。この包装フィルム30の腰強度を、上記実施例1と同じ条件で、株式会社東洋精機製作所製の「ループスティフネステスタ」を用いて測定したところ、ループスティフネス値で約5.7g/15mm幅〜5.9g/15mm幅(ループ長100mm)であった。
【0067】
次に、この包装フィルム30を用いて、外寸133mm×126mm、下部熱シール部33bおよび各側部熱シール部33cのシール幅3mm,3mmの袋体3を製造した。この袋体3内に未シール部の開口部34から、所定量の空気とともに内容物2として、短径25mmの楕円体形状の米菓を5個、整列状態で収納し、未シール部をシール幅10mmで熱シールして、その厚みDが25mm〜42mmの種々の包装体1を製造した。この包装体1の各熱シール部33a〜33cの強度を、上記実施例1と同じ条件で、株式会社エムエステー製の純曲げ試験機を用いて測定したところ、平均曲げこわさ値で、上部熱シール部33aが約1.7g・cm/cm、下部熱シール部33bが約1.0g・cm/cm、各側部熱シール部33cが約1.0g・cm/cmであった。
【0068】
また、比較例として、各側部熱シール部33cのシール幅を適宜変更して、各側部熱シール部33cの強度が、上記純曲げ試験機(クランプ幅5cm、シート幅5cm)による平均曲げこわさ値で0.8g・cm/cm〜1.7g・cm/cmの値をとる包装体1も製造した。
【0069】
そして、厚みDが25mm〜42mmの種々の包装体1に対して、包装体1の上面および下面に、0.3kgf/cm程度の圧力をかけたときの内容物2の損傷状況を調べた。その結果が、表3に示されている。
【0070】
【表3】

【0071】
表3の結果から、厚みDが25mmから29mmの包装体1では、封入された空気がエアクッションとしての役割を果たさず、外部からの圧力により内容物2は損傷を受けて、その形状は変形していた。一方、厚みDが37mmから42mmの包装体1では、揺さぶられることにより、内容物2が袋体3内で自由に動き回って袋体3の一部領域に密集して集積し、内容物2が袋体3と密に接触していた。よって、封入された空気がエアクッションとしての役割を果たし得ず、内容物2を保護できないことが確認された。
【0072】
これに対して、厚みDが30mmから36mm(内容物2の前記高さHの1.20倍〜1.44倍)の包装体1では、外部からの圧力を受けても、内容物2は損傷を受けておらず楕円体形状を維持しており、封入された空気がエアクッションとして機能していることが確認された。さらに、包装袋1が揺さぶられても、内容物2は袋体3への収納時の整列状態を維持しており、よって、内部に封入された空気がエアクッションとして機能し続け得ることも確認された。
【0073】
次に、各側部熱シール部33cの強度が、平均曲げこわさ値で0.8g・cm/cm〜1.7g・cm/cmの値をとる各包装体1に対して、包装体1の側方、つまり、各側部熱シール部33cの側から、0.1kgf/cm程度の圧力をかけたときの袋体3の変形状況を調べた。その結果が、表4に示されている。
【0074】
【表4】

【0075】
表4の結果から、熱シール部33の強度が高いほど、袋体3の形状保持能力が高いことが確認された。すなわち、各側部熱シール部33cの強度が、平均曲げこわさ値で0.8g・cm/cm〜0.9g・cm/cmの値をとる包装体1では、外部からの圧力により、袋体3は容易に変形してその上面および下面が膨み、これにより厚みDが幅広となった領域に内容物2が密集して集積することが確認された。よって、内容物2が袋体3と密に接触する結果、封入された空気がエアクッションとしての役割を果たし得ず、内容物2を保護できないことが確認された。
【0076】
一方、各側部熱シール部33cの強度が、平均曲げこわさ値で1.0g・cm/cm〜1.2g・cm/cmの値をとる包装体1では、外部からの圧力により、袋体3は多少変形するが、元の形状をやや保持していることが確認された。さらに、各側部熱シール部33cの強度が、平均曲げこわさ値で1.3g・cm/cm以上の値をとる包装体1では、外部からの圧力を受けても、元の形状をほとんど保持しているか、多少変形しても、各側部熱シール部33cの反発力により、袋体3自体が元の形状に復元することが確認された。なお、上記実施例1と同様に、熱シール部33の強度は、平均曲げこわさ値で3.7g・cm/cmよりも大きな値をとると、コスト増や強度が強すぎてかえって引き裂き開封しづらくなるなどの問題が生じるので、平均曲げこわさ値で3.7g・cm/cm以下の値をとるのが望ましい。
【0077】
よって、熱シール部33の強度が、純曲げ試験機(クランプ幅5cm、シート幅5cm)による平均曲げこわさ値で1.0g・cm/cm〜3.7g・cm/cmの値をとる包装体1では、熱シール部33の側から、多少の圧力を受けても袋体3はその形状を保持し、これにより、内容物2は袋体3への収納時の整列状態を維持する結果、内部に封入された空気がエアクッションとして機能し続け得ることが確認された。
【0078】
(3)実施例3
まず、ベース層30Aとして、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、このベース層30Aの表面に印刷層(図示せず)を形成し、さらに易引裂き材層(図示せず)として厚さ18μmの高密度ポリエチレンフィルムを積層し、中間バリア層30Cとして厚さ12μmのアルミ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムを積層した。さらに、中間バリア層30Cの表面にシーラント層30Bとして厚さ60μmのポリエチレンフィルムを積層して包装フィルム30を製造した。この包装フィルム30の腰強度を、上記実施例1と同じ条件で、株式会社東洋精機製作所製の「ループスティフネステスタ」を用いて測定したところ、ループスティフネス値で約5.7g/15mm幅〜5.9g/15mm幅(ループ長100mm)であった。
【0079】
次に、この包装フィルム30を用いて、外寸160mm×150mm、下部熱シール部33bおよび各側部熱シール部33cのシール幅10mm,10mmの袋体3を製造した。この袋体3内に未シール部の開口部34から、所定量の空気とともに内容物2として、高さ30mmの円柱形状の冷凍シュウマイを6個、図4(c)左図で示したように縦向きに整列状態で収納し、未シール部をシール幅15mmで熱シールして、その厚みDが30mm〜43mmの種々の包装体1を製造した。この包装体1の各熱シール部33a〜33cの強度を、上記実施例1と同じ条件で、株式会社エムエステー製の純曲げ試験機を用いて測定したところ、平均曲げこわさ値で、上部熱シール部33aが約2.2g・cm/cm、下部熱シール部33bが約1.7g・cm/cm、各側部熱シール部33cが約1.7g・cm/cmであった。
【0080】
また、比較例として、各側部熱シール部33cのシール幅を適宜変更して、各側部熱シール部33cの強度が、上記純曲げ試験機(クランプ幅5cm、シート幅5cm)による平均曲げこわさ値で0.8g・cm/cm〜1.7g・cm/cmの値をとる包装体1も製造した。
【0081】
そして、厚みDが30mm〜43mmの種々の包装体1に対して、包装体1の上面および下面に、0.3kgf/cm程度の圧力をかけたときの内容物2の損傷状況を調べた。その結果が、表5に示されている。
【0082】
【表5】

【0083】
表5の結果から、厚みDが30mmから34mmの包装体1では、封入された空気がエアクッションとしての役割を果たさずに、外部からの圧力により内容物2は損傷を受けて、その形状は変形していた。一方、厚みDが41mmから43mmの包装体1では、揺さぶられることにより、内容物2が袋体3内で自由に動き回って袋体3の一部領域に密集して集積し、内容物2が袋体3と密に接触していた。よって、封入された空気がエアクッションとしての役割を果たし得ず、内容物2を保護できないことが確認された。
【0084】
これに対して、厚みDが35mmから40mm(内容物2の前記高さHの1.20倍〜1.33倍)の包装体1では、外部からの圧力を受けても、内容物2は損傷を受けておらず円柱状を維持しており、封入された空気がエアクッションとして機能していることが確認された。さらに、包装袋1が揺さぶられても、内容物2は袋体3への収納時の整列状態を維持しており、よって、内部に封入された空気がエアクッションとして機能し続け得ることも確認された。
【0085】
次に、各側部熱シール部33cの強度が、平均曲げこわさ値で0.8g・cm/cm〜1.7g・cm/cmの値をとる各包装体1に対して、包装体1の側方、つまり、側部熱シール部33cの側から、0.1kgf/cm程度の圧力をかけたときの袋体3の変形状況を調べた。その結果が、表6に示されている。
【0086】
【表6】

【0087】
表6の結果から、熱シール部33の強度が高いほど、袋体3の形状保持能力が高いことが確認された。すなわち、各側部熱シール部33cの強度が、平均曲げこわさ値で0.8g・cm/cm〜0.9g・cm/cmの値をとる包装体1では、外部からの圧力により、袋体3は容易に変形してその上面および下面が膨み、これにより厚みDが幅広となった領域に内容物2が密集して集積することが確認された。よって、内容物2が袋体3と密に接触する結果、封入された空気がエアクッションとしての役割を果たし得ず、内容物2を保護できないことが確認された。
【0088】
一方、各側部熱シール部33cの強度が、平均曲げこわさ値で1.0g・cm/cm〜1.2g・cm/cmの値をとる包装体1では、外部からの圧力により、袋体3は多少変形するが、元の形状をやや保持していることが確認された。さらに、各側部熱シール部33cの強度が、平均曲げこわさ値で1.3g・cm/cm以上の値をとる包装体1では、外部からの圧力を受けても、元の形状をほとんど保持しているか、多少変形しても、各側部熱シール部33cの反発力により、袋体3自体が元の形状に復元することが確認された。なお、上記実施例1と同様に、熱シール部33の強度は、平均曲げこわさ値で3.7g・cm/cmよりも大きな値をとると、コスト増や強度が強すぎてかえって引き裂き開封しづらくなるなどの問題が生じるので、平均曲げこわさ値で3.7g・cm/cm以下の値をとるのが望ましい。
【0089】
よって、熱シール部33の強度が、純曲げ試験機(クランプ幅5cm、シート幅5cm)による平均曲げこわさ値で1.0g・cm/cm〜3.7g・cm/cmの値をとる包装体1では、熱シール部33の側から、多少の圧力を受けても袋体3はその形状を保持し、これにより、内容物2は袋体3への収納時の整列状態を維持する結果、内部に封入された空気がエアクッションとして機能し続け得ることが確認された。
【0090】
以上のように、本発明の包装袋1によると、袋体3内に内容物2とともに空気を封入して袋体3を膨ませ、その厚みDを内容物2の前記高さHよりも大きくしているので、内部に封入された空気がエアクッションの役割を果たし、緩衝材などがなくても外部からの衝撃に対して内容物2を保護できる。
【0091】
かつ、袋体3の厚みDが、内容物2の前記高さHの1.45倍よりも小さな値に設定されているので、袋体3内における内容物2の自由度が制限されて、保管・流通時において、内容物2が袋体3の収納時の整列状態をほぼ維持した状態で収納される。その結果、袋体3内で内容物2同士が衝突して変形・破損したり、内容物2が塊状にブロッキングしたりするのが防止されるとともに、内容物2は袋体3とは密に接触しないので、内部に封入された空気がエアクッションとして機能し続ける。
【0092】
さらに、袋体3を構成する上記包装フィルム30が、ループスティフネステスタで測定されるフィルムの腰強度が0.5g/15mm幅〜7.0g/15mm幅(ループ長100mm)の範囲となるように形成されて、袋体3自体が適度な剛性を有しているので、内容物2の自重により袋体3が自ら膨むのが抑制される。その結果、袋体3の厚みDが所定の厚みに維持されて、内容物2はその自由度が制限された状態で継続保持される。
【0093】
さらに、袋体3の熱シール部33の強度が、純曲げ試験機(クランプ幅5cm、シート幅5cm)による平均曲げこわさ値で1.0g・cm/cm〜3.7g・cm/cmとなって、熱シール部33が所定の剛性を有しているので、袋体3に側方からの衝撃が作用しても、熱シール部33によってシールドされて、袋体3が容易に変形するのが防止される結果、袋体3の内部に封入した空気がエアクッションとしての機能を果たし続ける。
【符号の説明】
【0094】
1 包装袋
2 内容物
3 袋体
30 包装フィルム
30B 熱接着樹脂層
32 収納部
33 熱シール部
33a 上部熱シール部
33b 下部熱シール部
33c 側部熱シール部
35 個別取出部
36 幅狭領域
37 第1の開封手段
38 第2の開封手段
39 切り込み
40 ハーフカット線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の面に熱接着性樹脂層を備える2枚の矩形状の包装フィルムを重ねて周縁部を全周に亘って熱接着することによって形成される袋体内の収納部に、固形物からなる複数の内容物を密閉状態で収納した包装袋であって、
前記袋体の収納部には、複数の内容物とともに所定量の空気が封入されていて、前記袋体の厚みDが、前記収納部に内容物が整列して収納される状態で、少なくとも内容物が自然に起立する状態の高さHよりも大きく、かつ、内容物の前記高さHの**倍よりも小さく設定されており、
熱接着により前記袋体の周縁部に形成された熱シール部は、その強度が純曲げ試験機(クランプ幅5cm、シート幅5cm)による平均曲げこわさ値で1.0g・cm/cm〜3.7g・cm/cmである包装袋。
【請求項2】
前記袋体は、腰の強さがループスティフネス値で0.5g/15mm幅〜7.0g/15mm幅(ループ長100mm)の範囲にある包装フィルムで構成されている請求項1に記載の包装袋。
【請求項3】
前記熱シール部は、そのシール幅が3mm〜30mmに設定されている請求項1または2に記載の包装袋。
【請求項4】
前記袋体の少なくとも一辺に形成された熱シール部は、前記袋体の外方に向けて部分的に切り欠かれてシール幅が他の領域よりも狭い幅狭領域を有しており、前記袋体は、前記収納部から前記幅狭領域に向けて突き出る個別取出口を備えている請求項1〜3のいずれかに記載の包装袋。
【請求項5】
前記幅狭領域が形成された熱シール部と直交する両側の熱シール部の少なくとも一方には、前記袋体を開封するための第1の開封手段および第2の開封手段が設けられており、
前記第1の開封手段は、熱シール部の前記個別取出部よりも下方にあたる位置に設けられているとともに、前記第2の開封手段は、熱シール部の前記個別取出部の先端部近傍にあたる位置に設けられている請求項4に記載の包装袋。
【請求項6】
前記第2の開封手段は、前記側方の熱シール部に設けられる切り込みと、前記切り込みを始点として前記個別取出部に向かって延びる誘導補助線により構成されている請求項5に記載の包装袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−162245(P2011−162245A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28975(P2010−28975)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000000228)江崎グリコ株式会社 (187)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】