説明

化学物質による発芽生育阻害を軽減除去した作物栽培方法

【課題】農薬などの化学物質による発芽生育阻害を軽減除去した作物栽培方法を提供することを課題とする。
【解決手段】種子を播種し、発芽段階において除草剤、殺菌剤、殺虫剤、殺虫殺菌剤などの農薬等の化学物質を適用して作物を栽培する際に、活性炭などの多孔性物質を種子に接触させることにより、化学物質の発芽および生育に対する阻害作用を軽減もしくは除去して作物を栽培することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農薬などの化学物質による発芽生育阻害を軽減除去した作物栽培方法に関する。更に詳細には、種子を播種し、発芽段階において除草剤、殺虫剤、殺菌剤、殺虫殺菌剤などの農薬等の化学物質を適用して作物を栽培する際に、多孔性物質を種子に接触させることにより、化学物質の発芽および生育に対する阻害作用を軽減もしくは除去して作物を栽培する作物栽培方法に関する。
本発明の作物栽培方法により、農薬などの化学物質が種子の発芽に与える発芽阻害、更にはその後の実生の生育に与える生育阻害などの悪影響を軽減もしくは除去することができ、作物を有効に栽培することが可能になる。
【0002】
作物栽培では一般的に除草剤、殺虫剤、殺菌剤、殺虫殺菌剤などの農薬等の化学物質が使用される。しかしながら、農薬などの化学物質は、雑草防除や害虫駆除などにより作物栽培にとって有益ではあるが、他方においては、作物の生育を阻害するという有害な面も有する。このような農薬等の作物に対する生育阻害を軽減もしくは除去する方法としては、生育阻害作用を有しない農薬を初めから選定して用いる方法、農薬の薬害を軽減できる別の化合物をセーフナーとして更に添加する方法、農薬の使用時期を発芽後のある程度生育した作物に制限する方法などが挙げられる。
しかしながら、生育阻害作用を有しない農薬を選定する場合には、使用可能な農薬が限定され、使用したい農薬が使用できないという欠点がある。セーフナーを用いる場合には、適切なセーフナーの選択が困難であり、また選択できたとしても農薬費が嵩むという問題がある。農薬の使用時期を制限する場合には、特に雑草防除の必要のある発芽段階の作物に対して農薬が使用できない、あるいは使用できても使用できる薬剤の種類が限定されるという難点がある。
【0003】
近年では、水稲の種子などを水田に直接播種して栽培する直播栽培が、栽培の簡便さなどからその普及が見込まれている。水稲を直播栽培する際には、水稲が発芽し生育する時期と同時期に雑草なども発生し育つため、特に種子の播種から発芽段階において除草剤などの農薬の使用が望まれる。しかしながら、上記したように、発芽段階において農薬を使用した場合には、農薬による作物の発芽阻害が問題となる。従って、発芽段階においても除草剤などの農薬の使用が可能となるような新たな作物栽培方法の開発が特に望まれている。
【0004】
他方、新たな種子の開発も行われており、例えば、活性炭を含むゲル層で種子を被覆し、富酸素化処理して種子からの発根を促進する方法(特許文献1)、脱ぷしたイネ玄米の外表面を活性炭などを含む被膜で被覆した被覆種子により種子伝染病性病害を防除する方法(特許文献2)などが提案されている。また、種子籾に活性炭などの多孔性物質を粉衣して、水稲育苗における細菌性病害を防除する方法も提案されている(特許文献3)。
しかしながら、これらの方法のいずれもが、種子の発芽段階において除草剤などの農薬を使用しない方法であり、種子の発芽段階において除草剤などの農薬を使用した場合の、農薬による発芽および生育阻害を低減もしくは除去することについては、全く検討がなされていない。
【0005】
【特許文献1】特開平9−135608号公報
【特許文献2】特開平9−248017号公報
【特許文献3】特開平5−316817号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、発芽段階においても除草剤などの農薬の使用が可能となるような新たな作物栽培方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決することを目的として鋭意研究した結果、種子を播種し、発芽段階において除草剤、殺虫剤、殺菌剤、殺虫殺菌剤などの農薬等の化学物質を適用して作物を栽培する際に、多孔性物質を種子に接触させることにより、化学物質の発芽および生育に対する阻害作用を軽減もしくは除去して、発芽、更にはその後の実生の生育を有効に行うことが可能であり、従って作物を極めて効果的に栽培できることを見出し、本発明を完成させた。
従って、本発明は、種子を播種し、発芽段階において化学物質を適用して作物を栽培する作物栽培方法において、多孔性物質を種子に接触させることにより、化学物質の発芽および生育に対する阻害作用を軽減もしくは除去して作物を栽培することを特徴とする作物栽培方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の作物栽培方法は、種子を畑または水田に直接播種して栽培する直播栽培に用いることができる。特に、例えば、水稲の種子などを水田に直接播種して栽培する直播栽培、あるいは畑に作物の種子を直接播種する栽培において、従来困難とされていた種子の播種から発芽段階において除草剤などの農薬を使用する場合に、好ましく本発明の作物栽培方法を使用できる。種子から育苗させ、次いで畑または水田に移植する移植栽培にも、本発明の作物栽培方法は使用できる。特に、従来困難とされていた種子を育苗する際に、除草剤などの農薬を使用する場合に、好ましく本発明の作物栽培方法を使用できる。また、本発明の栽培方法は、フェノール樹脂発泡体などから得られる支持マットに種子を播種し、この支持マットを水田、畑などに直接設置して直播栽培する場合にも使用でき、この支持マットで種子から育苗させ、次いで畑または水田に移植する移植栽培にも使用することができる。
本発明で対象とする種子としては、特に限定されず、いずれの種子でもよい。例えば、稲、豆類、ソバ、トウモロコシなどの穀類、野菜類、芝、牧草、花木などの有用植物などが挙げられる。種子は、催芽または未催芽のいずれの種子であってもよい。
本発明では、このような種子を播種してその発芽段階において、化学物質を使用することができる。このような化学物質としては、例えば、除草剤、殺虫剤、殺菌剤、殺虫・殺菌剤などの農薬、その他作物の発芽や実生の生育に悪影響を与える化学物質などが挙げられる。
【0009】
本発明では、多孔性物質を種子に接触させることにより、化学物質の発芽および生育に対する阻害作用を軽減もしくは除去して、発芽、更にはその後の実生の生育を有効に行うことが可能となる。本発明で用いる多孔性物質とは、通常、粒径30nm以下、好ましくは1〜20nmの微細孔構造を有する物質を指す。多孔性物質は通常、粉状化された状態が好ましく、その粒度はいずれでもよく、特に限定されない。このような多孔性物質としては、例えば、木粉、木炭(素炭)、草炭(ピート)、おが屑、鋸屑、硬質の木材チップ、籾ガラ炭、椰子ガラ炭、植皮炭、製糖廃物(バガス)、廃糖蜜などを原料として高温下700〜800℃で蒸し焼きした植物質炭化物;更に植物質炭化物を賦活させた植物系活性炭;亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭、オイルカーボン、フェノール樹脂、石灰ピッチ、石油ピッチなどを原料として高温下700〜800℃で蒸し焼きした石炭系炭化物;更に石炭系炭化物を賦活させた石炭系活性炭;更には活性アルミナ、シリカゲル、焼成ゼオライト、合成ゼオライト、珪藻土、活性白土などの多孔性無機物質などが挙げられる。これらのうち、植物系活性炭、石炭系活性炭が望ましい。ここで、賦活させる方法としては、主に水蒸気賦活法と薬品賦活法がある。前者は原料と加熱した水蒸気を炉内に送り込み、高温下800〜1000℃で賦活後、水洗、乾燥させる方法である。後者は塩化亜鉛溶液を含浸させた後、一定の加熱条件で賦活させて冷却後、塩酸で洗浄して亜鉛を回収除去し、水洗、乾燥させる方法である。
なお、本発明では、これらの多孔性物質と共に、過酸化カルシウムなどの酸素発生剤、種子消毒剤などの農薬、植物成長調整剤などを併用することはなんらさしつかえない。
【0010】
多孔性物質を種子に接触させる実際的方法としては、主として以下の三つの方法が挙げられる。
(1)粉末化した多孔性物質を種子に粉衣することにより、多孔性物質を種子に接触させることができる。粉衣するには、粉末化した多孔性物質と種子を混合すればよい。通常、種子100重量部当たり1重量部〜100重量部、好ましくは10重量部〜25重量部の多孔性物質を粉衣する。粉衣の際には、適量の水または0.1〜10重量%程度のα化デンプン、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子を含む水溶液を添加して、多孔性物質と種子を混合して粉衣してもよい。このように粉末化した多孔性物質で粉衣した種子を水田、畑、育苗用培地、フェノール樹脂発泡体などから得られる支持マットなどに播種する。
(2)種子と多孔性物質を液状物に浸漬し攪拌して得られる種子と多孔性物質を含む液状物を、水田、畑、育苗用培地、フェノール樹脂発泡体などから得られる支持マットなどに播種することにより、多孔性物質を種子に接触させることができる。通常、乾燥種子100重量部当たり1重量部〜100重量部の多孔性物質を液状物に混入させ、攪拌する。液状物としては、水あるいは水に0.1〜10重量%程度のα化デンプン、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子を添加した水溶液などが挙げられる。
(3)種子の播種前の播種場所および/または播種後の種子に多孔性物質を散布または混入することにより、多孔性物質と種子との接触を行うことができる。例えば、播種前の水田、畑、育苗用培地、フェノール樹脂発泡体などから得られる支持マットなどに、および/またはこれらに播種後の種子に多孔性物質を散布または混入することができる。通常、多孔性物質を種子100重量部当たり10重量部〜1000重量部を散布し、種子に接触させる。
【0011】
上記したようにして、多孔性物質を種子に接触させることにより、種子の播種以後発芽段階において除草剤、殺虫剤などの農薬等の化学物質を適用しても、農薬などの化学物質の発芽および生育に対する阻害作用を軽減もしくは除去することができ、発芽、更にはその後の実生の生育を有効に行うことが可能となる。
【実施例】
【0012】
以下、本願発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
実施例1
(1)活性炭粉末で粉衣した種子の作成
種子籾(品種コシヒカリ)の乾物100重量部に対し過酸化カルシウム粉粒(商品名カルパー粉粒剤16)を200重量部、鋸屑を原料として得た活性炭粉末20重量部を混和し、水25重量部を加えながら乾籾表面に粉衣して活性炭粉衣種子を得た(以下Ca活性炭粉衣と略記する)。
対照として種子籾の乾物100重量部に対し過酸化カルシウム粉粒剤を200重量部を粉衣した(以下Ca粉衣と略記する)。
【0013】
(2)活性炭粉末で粉衣した種子の播種および除草剤の適用
水田圃場に屋根を設置した温室内において1区あたり1m2の試験区を設け、代かきをした水田土壌の表面から0.5cmの深さにそれぞれの粉衣籾120粒をピンセットで条播し、水深を2cmにした後に水稲用除草剤((a)ピラゾレート粒剤(商品名サンバード粒剤)、(b)ブロモブチド・ペントキサゾン水和剤(商品名ショキニーフロアブル)、(c)プレチラクロール・ベンゾフェナップ水和剤(商品名ユニハーブフロアブル)、(d)ダイムロン・ペントキサゾン水和剤(商品名テマカットフロアブル)、(e)ダイムロン・テニルクロール水和剤(商品名ショッカーフロアブル)、(f)プレチラクロール・ベンゾビシクロン水和剤(商品名クサコントフロアブル)、(g)プレチラクロール粒剤(商品名ソルネット1キロ粒剤)、(h)クミルロン・ペントキサゾン水和剤(商品名草笛フロアブル)、(i)クロメプロップ・テニルクロール水和剤(商品名ターシャルカットフロアブル))をそれぞれ所定量処理した。また、対照区として薬剤処理を行わない区(無処理区)を設けた。
播種後5日目からイネが1葉期になるまで6日間落水して芽干しを行い、その後入水して3〜4cm湛水で管理した。
【0014】
(3)除草剤の発芽および生育への影響
播種後20日目に苗立ち率及びイネ葉齢を調査し結果を表1に示した。苗立ち率は、無処理区における苗立ち数に対する各薬剤処理区における苗立ち数の割合を100分率で表したものである。値は3連の試験区の平均値を示す。葉齢は生育した葉の数で表した。
【0015】
【表1】

【0016】
表1の結果から明らかなように、湛水直播条件でのイネ栽培において、各種除草剤による苗立ち率の抑制作用が、慣行法であるCa粉衣のみよりも本発明方法により軽減もしくは除去されることが示されている。また、各種除草剤によるイネ葉齢の進展阻害作用も、本発明方法により軽減もしくは除去されることが示されている。なお、無処理区の播種数に対する苗立ち数の比率はCa粉衣、活性炭粉衣のどちらにおいても70%前後であった。試験区内で最も生育の進行したイネの葉齢は、無処理区ではCa粉衣、活性炭粉衣のどちらにおいても3.5であった。
【0017】
播種後46日目に全てのイネ株を抜き取り地上部乾物重を調査し結果を表2に示した。また、イネ1個体あたりの平均乾物重として、地上部乾物重を各薬剤処理区の出芽イネ数で除した値を併せて表2に示した。
【0018】
【表2】

【0019】
表2によれば、Ca粉衣のみでは(b)〜(i)の除草剤により地上部乾物重の減少が認められるが、本発明方法により(b)、(d)、(e)および(h)の除草剤処理区の地上部乾物重は無処理区と同等あるいは優っており、除草剤による生育阻害作用の軽減もしくは除去があることを示している。イネ1個体あたりの平均乾物重においても、(b)、(d)、(e)および(h)の除草剤処理区は無処理区と同等あるいは優っている。また、(c)、(f)、(g)および(i)除草剤処理区においても、Ca粉衣に比べ本発明方法により生育阻害作用の軽減が認められる。
【0020】
実施例2
(1)活性炭粉末で粉衣した種子の作成
水25重量部にカルボキシメチルセルロース(商品名:セロゲンPR)を1重量部混合した水溶液にイネ乾燥種籾100重量部を混合した。その後活性炭(商品名:太閤活性炭)20重量部を添加した後よく混合して粉衣種子(CMC活性炭粉衣と略記)を作成した。また、実施例1と同等の方法によりCa活性炭粉衣およびCa粉衣のイネ種子を作成した。対照として粉衣処理を行わないイネ種子(無粉衣と略記)も供試した。
【0021】
(2)活性炭粉末で粉衣した種子の播種および除草剤の適用
屋外の水田圃場において1区あたり0.8m2の試験区を設け、代かきをした水田土壌の表面に水深0〜0.5cmの状態でそれぞれの粉衣籾を4kg/10aずつ手振りにより散播し、水深を3cmにした後に水稲用除草剤((a)ピラゾレート粒剤(商品名サンバード粒剤)、(b)ブロモブチド・ペントキサゾン水和剤(商品名ショキニーフロアブル)、(d)ダイムロン・ペントキサゾン水和剤(商品名テマカットフロアブル)、(e)ダイムロン・テニルクロール水和剤(商品名ショッカーフロアブル)、(g)プレチラクロール粒剤(商品名ソルネット1キロ粒剤)、(j)イマゾスルフロン・エトベンザミド・ダイムロン粒剤(商品名キックバイ1キロ粒剤)、(k)カフェンストロール・ダイムロン・ベンスルフロンメチル水和剤(商品名ラクダーLフロアブル)(l)シクロスルファムロン・ペントキサゾン粒剤(商品名ユートピア1キロ粒剤)、(m)ピリミノバックメチル・ブロモブチド・ベンスルフロンメチル・ペントキサゾン水和剤(商品名トップガンLフロアブル))をそれぞれ所定量処理した。また、対照区として薬剤処理を行わない区(無処理区)を設けた。
処理後15日間試験区内には入水せず、自然減水のまま放置し芽干しを行った。その後は3〜5cmの水深を維持した。
【0022】
(3)除草剤の発芽への影響
播種後28日目に苗立ち率を調査し結果を表3に示した。苗立ち率は、播種数に対する各薬剤処理区における苗立ち数の割合を100分率で表したものである。値は2連の試験区の平均値を示す。
【0023】
【表3】

【0024】
表3によれば、屋外の湛水直播条件下でのイネ栽培において、各種除草剤による苗立ち率の抑制作用が、慣行法であるCa粉衣のみよりも本発明方法により軽減もしくは除去されることが示されている。特に、慣行法ではその生育阻害作用のため使用が困難であった除草剤((d)、(g)、(k)、(l)、(m))についても、生育阻害作用の軽減が認められる。
【0025】
実施例3
(1)活性炭粉末で粉衣した種子の作成、該種子の播種および除草剤の適用
実施例2の方法に基づいてアズキ種子のCMC活性炭粉衣を作成した。25℃前後に温度管理された温室内において、プラスチック製コンテナポット(縦29×横17×深さ10cm)に火山灰壌土を充填し深さ1cm程度の播種穴を設置し粉衣種子を播種し供試土壌で覆土(粉衣区)した。併せて無粉衣種子も供試した(無粉衣区)。播種後の土壌表面に除草剤フルミオキサジン水和剤(商品名Sumisoya)を所定量の水で希釈し、10g/10a、散布水量100L/10aとなるようにポットの土壌表面に均一に散布した。その後は土壌表層が乾かないように適宜散水した。
【0026】
(2)除草剤の発芽率および生育への影響
処理後16日後に生育状況の調査を行い、その結果を表4に示す。発芽率は、播種数に対する各薬剤処理区における発芽数の割合を100分率で表したものである。値は2連の試験区の平均値を示す。
【0027】
【表4】

【0028】
表4によれば、無粉衣のアズキ種子に対し発芽率低下や生育抑制を引き起こした除草剤の生育阻害作用を、本発明方法により低減させることを示している。
【0029】
実施例4
(1)種子播種後の活性炭粉末の散布および除草剤の適用
実施例3で用いたものと同型のプラスチック製コンテナポットに火山灰壌土を充填し深さ1cm程度の播種穴を設置しソバ種子を播種し活性炭粉末で覆った(活性炭覆土区)。対照として供試土壌覆土した区(普通覆土区)を設けた。播種後の土壌表面に除草剤アラクロール乳剤(商品名ラッソー)を所定量の水で希釈し、300ml/10a、散布水量100L/10aとなるようにポットの土壌表面に均一に散布した。その後は土壌表層が乾かないように適宜散水した。
【0030】
(2)除草剤の発芽率および生育への影響
処理後16日後に生育状況の調査を行い、その結果を表5に示す。発芽率は、播種数に対する各薬剤処理区における発芽数の割合を100分率で表したものである。値は2連の試験区の平均値を示す。
【0031】
【表5】

【0032】
表5によれば、ソバ種子に対し生育抑制を引き起こした除草剤の生育阻害作用を、本発明処理により低減させることを示している。
【0033】
以上に詳細に記載したとおり、本発明は、粉状化した多孔性物質を作物種子に種々の方法により接触させることにより、作物栽培で使われる農薬などの化学物質による作物の薬害、特に種子からの発芽段階において農薬などを使用した場合の薬害を効果的に軽減もしくは除去することを可能とする。この結果、従来薬害が理由で適切な薬剤がなかった種子から発芽させる際の作物栽培法や作物に対してより多くの種類の薬剤選択の機会を提供することが可能となり、結果として農業の効率化に多大に貢献できる。また、従来防除がうまくいかないために何度も薬剤散布が必要であった病害虫雑草に対しより少量で適切に効果のある薬剤を選択することで、農業による環境負荷を低減させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
種子を畑に直接播種し、発芽段階において化学物質である除草剤を適用して作物を栽培する作物直播栽培方法において、植物系活性炭および石炭系活性炭から選ばれる少なくとも一種の多孔性物質を種子に粉衣することにより、あるいは、種子と該多孔性物質を液状物に浸漬し攪拌して得られる種子と該多孔性物質を含む液状物を播種することにより、化学物質である除草剤の発芽および生育に対する阻害作用を軽減もしくは除去して作物を栽培することを特徴とする作物直播栽培方法。
【請求項2】
アズキまたはソバ種子を畑に直接播種し、発芽段階において化学物質である除草剤を適用して作物を栽培する作物直播栽培方法において、植物系活性炭および石炭系活性炭から選ばれる少なくとも一種の多孔性物質を種子に粉衣することにより、あるいは、種子と該多孔性物質を液状物に浸漬し攪拌して得られる種子と該多孔性物質を含む液状物を播種することにより、化学物質である除草剤の発芽および生育に対する阻害作用を軽減もしくは除去して作物を栽培することを特徴とする作物直播栽培方法。
【請求項3】
多孔性物質とともにカルボキシメチルセルロースを用いる請求項1または2の作物直播栽培方法。

【公開番号】特開2008−264003(P2008−264003A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173739(P2008−173739)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【分割の表示】特願2002−298434(P2002−298434)の分割
【原出願日】平成14年10月11日(2002.10.11)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成14年4月13日 日本雑草学会発行の「雑草研究 第47巻(別号)」に発表
【出願人】(596077846)財団法人日本植物調節剤研究協会 (2)
【出願人】(000000169)クミアイ化学工業株式会社 (86)
【Fターム(参考)】