説明

化粧・美容用不織布

【課題】フェイスマスクシート、拭き取りシート、クレンジングシート等の化粧・美容用途に適した不織布であって、原料繊維として含油繊維を使用することにより、従来にない優れた柔らかさ、肌触り性及び拭き取り性等の機能性を高めた化粧・美容用不織布を提供する。
【解決手段】繊度0.3dtex〜5.0dtex、繊維長3mm〜25mmの繊維に、スクワランやスクワレンなどの油分を含有させてなる含油繊維を用いて、化粧・美容用不織布を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばフェイスマスクシート、拭き取りシート、クレンジングシート等の化粧・美容用途に適した不織布であって、原料繊維として含油繊維を使用することにより、従来にない優れた柔らかさ、肌触り性及び拭き取り性等の機能性を高めた化粧・美容用不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
顔全体もしくは目もと、口もと、首筋などの肌を手入れするための化粧料又は美容料を含浸したフェイスマスクシートや、メイク落とし剤を使用した後のメイクを拭き取るための拭き取りシート、メイクを落とすためのクレンジングシート、或いはメイクを施すための化粧シート等の化粧品や美容品の分野においては、基材となるシート材として従来、不織布シートが使用されている。
【0003】
例えば、フェイスマスクシートとして、所定の形状に打抜かれた吸水性の高い不織布シートに化粧料や美容料を含浸し、包装体内にこのシートを積層して密封するか、1つの包装体内にこのシートを1枚だけ封入した1回分の使い切りタイプのパック型化粧品が一般に提供されている。
【0004】
かかる化粧・美容用不織布としては、合成繊維もしくは合成繊維+天然繊維の不織布が用いられている。例えば、特許文献1には、セルロース質不織布と合成繊維不織布とを接合したフェイスマスクシートとすることにより、折畳み時の折れジワがなく、高粘度の化粧液を均一に含浸でき、使用時に顔へのフィット感がよく、手へのべとつきや衣服の汚損を防止することができるフェイスマスクシートが記載されている。
【0005】
また、化粧・美容用不織布には、化粧料や美容料を含浸したり、拭き取ったりするために、保液性が要求される。これに対して、特許文献2には、極細繊維を用いて湿式法で製造した不織布を三層構造にすることにより、化粧品向け不織布に要求される保液性を前提として、それまでの化粧品向け不織布にない柔らかさ、肌触り、拭き取り性等の機能性を高めた化粧品向け不織布が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−2253号公報
【特許文献2】特開2008−95223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば上記特許文献2に記載されているように化粧品向け不織布を構成する繊維を単に極細にしただけでは、現実には、使用者の希望する柔らかさ、肌触り、更には拭き取り性等において十分に満足のいくものを提供することはできていない。
【0008】
すなわち、使用者が柔らかさ、肌触り及び拭き取り性等において満足するためには、化粧品向け不織布を構成する繊維が使用者の肌に触れた際に違和感なく、そしてなじみよく使用できることが必要とされる。しかしながら、上記特許文献2のように極細繊維を用いることで肌への接触圧などに由来する違和感をある程度低減できるものの、繊維と人間の肌とは本質的に異なるものであり例えば表面性状などが異なるため、これが使用者の満足度を不十分なものとしている原因の1つとなっていると考えられる。また、近年の美容ブームにより、使用者の商品品質に対する要求が従来に比べてより強いものとなったことも、十分な満足感が得られない原因になっていると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、例えばスクワランなどの油分を含有する繊維(含油繊維)を用いて不織布を製造することで、化粧や美容用途として優れた柔らかさ、肌触り又は拭き取り性等を有する不織布が得られることを見出し、以下の発明を完成させた。
【0010】
[1] 含油繊維を含む化粧・美容用不織布。
【0011】
[2] 前記含油繊維に含まれる油分が、スクワラン、スクワレン、スクワレン部分水素添加物、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、流動パラフィン、スクワラン、イソパラフィン、メチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・2−オクチルドデシル)、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、オゾケライト、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、セラミド、コレステロール、フィトステロール、マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル、及びN−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・ベヘニル・2−オクチルドデシル)からなる群から選択される少なくとも1つである、上記[1]に記載する化粧・美容用不織布。
【0012】
[3] 前記含油繊維が、繊度0.3dtex〜5.0dtex、繊維長3mm〜25mmの繊維である、上記[1]又は[2]に記載する化粧・美容用不織布。
【0013】
[4] 前記含油繊維に含まれる油分が、前記含油繊維の重量を基準として0.1〜30重量%である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載する化粧・美容用不織布。
【0014】
[5] 前記不織布に含まれる前記含油繊維が、前記不織布の重量を基準として5〜100重量%である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載する化粧・美容用不織布。
【0015】
[6] さらに、繊度0.1dtex〜0.8dtex、繊維長5mm〜25mmの無含油の極細繊維を含む、上記[1]〜[5]のいずれかに記載する化粧・美容用不織布。
【0016】
[7] 前記無含油の極細繊維が、レーヨン繊維、ポリエステル繊維、及びアクリル繊維からなる群から選択された少なくとも1つである、上記[6]に記載する化粧・美容用不織布。
【0017】
[8] 前記含油繊維が、天然繊維、再生繊維、半合成繊維、及び合成繊維からなる群から選択された少なくとも1つに油分を含有させたものである、上記[1]〜[7]のいずれかに記載する化粧・美容用不織布。
【0018】
[9] 前記天然繊維が、綿、ラミー、リネン、大麻、黄麻、亜麻、マニラ麻、サイザル麻、竹繊維、バナナ繊維、ウール、カシミヤ、モヘア、アンゴラ、キャメル、アルパカ及び絹からなる群から選択された少なくとも1つである、上記[8]に記載する化粧・美容用不織布。
【0019】
[10] 前記再生繊維がレーヨンである、上記[8]に記載する化粧・美容用不織布。
【0020】
[11] 前記半合成繊維がアセテートである、上記[8]に記載する化粧・美容用不織布。
【0021】
[12] 前記合成繊維が、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、及びポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1つである、上記[8]に記載する化粧・美容用不織布。
【0022】
[13] 上記[1]〜[12]のいずれかに記載する不織布を用いて形成した三層構造を有する化粧・美容用不織布。
【0023】
[14] 前記三層構造が、1つの中間層と2つの表面層とから構成され、該表面層として上記[1]〜[12]のいずれかに記載する不織布を用い、該中間層として前記含油繊維及び前記極細繊維を含まない不織布または上記[1]〜[12]のいずれかに記載する不織布を用いてなる、上記[13]に記載する化粧・美容用不織布。
【0024】
[15] 前記中間層は保液性を有する、上記[14]に記載する化粧・美容用不織布。
【0025】
[16] 透かし模様を有する、上記[13]〜[15]のいずれかに記載する化粧・美容用不織布。
【0026】
[17] 前記中間層に紙層の欠如部分又は薄層部分を形成し、前記表面層を介して該欠如部分又は該薄層部分を透かし模様とした、上記[16]に記載する化粧・美容用不織布。
【0027】
[18] フェイスマスクシート、拭き取りシート、クレンジングシート、化粧料のアプリケーター又はボディ用シートである、上記[1]〜[17]のいずれかに記載する化粧・美容用不織布。
【0028】
[19] 前記含油繊維に含まれる油分がスクワランを含有する、上記[1]〜[18]のいずれかに記載する化粧・美容用不織布。
【0029】
[20] 前記含油繊維に含まれる油分がスクワラン及びスクワレンを含有する、上記[1]〜[18]のいずれかに記載する化粧・美容用不織布。
【0030】
[21] 前記含油繊維に含まれる油分が、1重量部の前記スクワランに対して2〜6重量部の前記スクワレンを含有する、上記[20]に記載する化粧・美容用不織布。
【0031】
[22] 前記含油繊維に含まれる油分が、皮脂成分である脂肪酸グリセリンエステルを含有する、上記[19]〜[21]のいずれかに記載する化粧・美容用不織布。
【0032】
[23] 前記含油繊維が、さらに0.5〜0.8重量%の塩化ナトリウムと0.06〜0.1重量%の尿素と0.01〜0.05重量%の乳酸を含む水分を含む、上記[19]〜[22]のいずれかに記載する化粧・美容用不織布。
【0033】
[24] 前記含油繊維が、さらに0.8〜1.0重量%の塩化ナトリウムと0.06〜0.1重量%の尿素と0.01〜0.05重量%の乳酸を含む水分を含む、上記[19]〜[22]のいずれかに記載する化粧・美容用不織布。
【発明の効果】
【0034】
本発明の好ましい態様に係る化粧・美容用不織布によれば、例えばスクワランなどの油分を含有する繊維を使用することによって、従来の不織布にはなかった優れた柔らかさ、肌触り性及び拭き取り性を実現することができる。また、三層構造を有する化粧・美容用不織布とした場合には、中間層によっても保液性を実現することができ、さらに中間層に透かし模様を形成することにより、従来の無味乾燥で何らの意匠も施されていない化粧・美容用不織布に付加価値を付けることができる。また、中間層には高価な含油繊維や無含油の極細繊維を必ずしも使用する必要がなく、使用者の肌に直接触れる表面層だけに含油繊維や無含油の極細繊維を使用することも可能なため、上述した優れた柔らかさなどの機能を付与しながら、製造コストを抑えた化粧・美容用不織布とすることができる。
【0035】
さらに、含油繊維に含まれる油分をスクワランにしたり、さらにスクワレンを添加したりすることにより、含油繊維の性状を人間の肌から分泌される皮脂成分の性状に近づけ、より肌となじみのよい化粧・美容用不織布にすることができる。この効果は、含油繊維に含まれる油分に皮脂の主成分である脂肪酸グリセリンエステルを添加したり、汗の成分(塩化ナトリウムなどのミネラルを含む水分)を添加したりすることによりさらに向上させることができる。また、このように含油繊維に皮脂成分や汗成分を補うことで例えば乾燥肌や冬場の使用に適した化粧・美容用不織布にすることができる。さらに、マラソンなどの運動により汗の成分が変化することに着目し、含有させる汗の成分を運動後のものに調整することにより、運動後の肌になじみがよく運動後のケアに適した化粧・美容用不織布にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明に係る化粧・美容用不織布について詳細に説明する。本発明の化粧・美容用不織布は、含油繊維を含む化粧・美容用不織布である。
【0037】
<含油繊維>
含油繊維とは、後述するその製造方法の説明によりさらに明確になるが、油分を含有する繊維であり、繊維の表面だけに油分が付着したようなものではなく、繊維の中に油分を分散させたもの、好ましくは油分を均一に分散させたものを意味する。
【0038】
含油繊維に含まれる油分としては、化粧料や美容料の原料として用いられる油分であれば特に限定されず、例えば、天然由来または化学合成されたスクワラン、天然由来または化学合成されたスクワレン、天然由来または化学合成されたスクワレンを部分水素添加したもの、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、流動パラフィン、スクワラン、イソパラフィン、メチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、及びN−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・2−オクチルドデシル)等の液体油脂、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、オゾケライト、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、セラミド、コレステロール、フィトステロール、マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル、及びN−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・ベヘニル・2−オクチルドデシル)等の固体油脂及びロウなどが挙げられる。ただし、含油繊維中では繊維の中に油分が均一に分散・浸透していることが好ましいため、固体油脂などはこれを溶解できる液体油脂や化粧・美容用溶媒などに溶解させて使用することが好ましい。また、含油繊維の製造工程上、これらの油分は各製造工程で用いる薬品や製造条件に対応して耐薬品性や耐熱性を有するものが好ましい。好ましい油分としては、スクワラン又はスクワレンが挙げられ、特にスクワランが好ましい。
【0039】
含油繊維中の油分の含有量は、含油繊維の重量を基準として0.1〜30重量%であり、好ましくは0.3〜20重量%、より好ましくは0.5〜15重量%、特に好ましくは1.0〜10重量%である。含油繊維中の油分の含有量が0.1重量%より少なかったり30重量%より多かったりすると、本発明の効果が十分でなくなったり得られなくなったりする。また、30重量%より多く油分を含む含油繊維については、製造方法の制約から製造できない場合もある。
【0040】
含油繊維中の油分として例示したスクワランやスクワレンは、雑菌や外界の刺激から皮膚を守る皮脂膜を構成する成分であるが、皮脂膜中にはこの他にも皮脂の主成分である脂肪酸グリセリンエステルや、汗の成分(塩化ナトリウムなどのミネラルを含む水分)などが含まれる。そこで、含油繊維に含まれる油分をスクワランにしたり、さらにスクワレンを添加したりすることにより、含油繊維の性状を人間の肌から分泌される皮脂成分の性状に近づけ、より肌となじみのよい化粧・美容用不織布にすることができる。さらに、脂肪酸グリセリンエステルや汗の成分を添加することによりこの効果をさらに向上させることができる。
【0041】
油分として、スクワランとスクワレンを含有する場合には、1重量部のスクワランに対して2〜6重量部のスクワレンを含有させるとよく、好ましくは1重量部のスクワランに対して2.5〜5.5重量部のスクワレン、より好ましくは1重量部のスクワランに対して3〜5重量部のスクワレン、さらに好ましくは1重量部のスクワランに対して3.5〜4.5重量部のスクワレンを含有させる。この混合割合にすることにより、人間の皮脂膜に含まれるスクワランとスクワレンの含有比率に近づけることができる。
【0042】
また、汗の主成分は水であり、それ以外には約0.65重量%の塩化ナトリウム、約0.08重量%の尿素、約0.03重量%の乳酸などが含まれる。しかしこの成分は常に一定ではなく、例えば運動して大量に汗をかいたときは、塩化ナトリウムの含有量が約0.9重量%に近づいていく。
【0043】
したがって、含油繊維に通常時の汗類似の成分を含ませる場合には、0.5〜0.8重量%の塩化ナトリウムと0.06〜0.1重量%の尿素と0.01〜0.05重量%の乳酸を含む水分、好ましくは0.6〜0.7重量%の塩化ナトリウムと0.07〜0.09重量%の尿素と0.02〜0.04重量%の乳酸を含む水分を含ませればよい。
また、含油繊維に運動後の汗類似の成分を含ませる場合には、0.8〜1.0重量%の塩化ナトリウムと0.06〜0.1重量%の尿素と0.01〜0.05重量%の乳酸を含む水分、好ましくは0.85〜9.5重量%の塩化ナトリウムと0.06〜0.1重量%の尿素と0.01〜0.05重量%の乳酸を含む水分を含ませればよい。
【0044】
このように含油繊維に皮脂成分や汗成分を補うことにより、例えば乾燥肌や冬場の使用に適した化粧・美容用不織布にすることができる。さらに、マラソンなどの運動により汗の成分が変化することに着目し、含有させる汗の成分を運動後のものに調整することにより、運動後の肌になじみがよく運動後のケアに適した化粧・美容用不織布にすることができる。
【0045】
含油繊維の繊度は、繊度0.3dtex〜5.0dtexであり、好ましくは繊度0.3dtex〜3.0dtexであり、より好ましくは繊度0.3dtex〜2.5dtexであり、さらに好ましくは繊度0.3dtex〜1.5dtexである。なお、繊度1dtex(デシテックス)は、10000mで重さが1gの太さの繊維を表わす。また、「極細」繊維とは一般的に繊度0.1dtex〜0.8dtexの繊維であり、本発明で用いる含油繊維には、極細の繊維や極細でない繊維も含まれる。
【0046】
含油繊維の繊維長は、繊維長3mm〜25mmであり、好ましくは繊維長3mm〜20mmであり、より好ましくは繊維長4mm〜15mmであり、さらに好ましくは繊維長5mm〜10mmである。
【0047】
含油繊維の繊度や繊維長が上記範囲から外れると、本発明の効果が十分でなくなったり得られなくなったりする。
【0048】
<含油繊維の製造方法>
繊維は、一般的に、繊維原料の溶液や繊維原料の加熱溶融物などを紡糸することにより製造することができる。例えば、レーヨン(ビスコースレーヨン)は、木材パルプや竹などの植物原料(セルロース)を水酸化ナトリウムなどのアルカリ及び二硫化炭素と反応させてアルカリ水溶液(ビスコース)とし、これを口金から硫酸などの酸性水溶液中に押し出して紡糸することにより製造される(湿式紡糸法)。また、例えば、ポリエステル系合成繊維は、グリコールとジカルボン酸あるいはオキシカルボン酸との縮重合物であるポリエステルを加熱により溶融させながら、これを紡糸して製造される。
【0049】
本発明で使用される含油繊維は、上述したように、繊維の表面だけに油分が付着したようなものではなく、繊維の中に油分を分散させたものであるため、繊維原料の溶液や繊維原料の加熱溶融物などにあらかじめ所望の油分を分散又は混和させて、これを紡糸することにより製造することができる。
【0050】
繊維原料の溶液や繊維原料の加熱溶融物などに油分を分散又は混和させる方法としては、一般的に用いられる種々の方法が挙げられる。例えば、紡糸前の繊維原料の溶液や繊維原料の加熱溶融物などがある程度の粘性を有する場合には、添加剤などを用いずにそのまま分散、混和させてもよい。一方、添加剤なしでの分散などが困難な場合には、特開2000−192326号公報などに記載されているように、紡糸前に、界面活性剤などの乳化剤によりあらかじめ乳化された油分の乳化液を繊維原料の溶液や繊維原料の加熱溶融物などに分散、混和させてもよい。
【0051】
乳化液の調製に用いる界面活性剤の具体例としては、アニオン性界面活性剤として、たとえば高級脂肪酸石鹸、高級アルコール硫酸エステル、N−アミルグルタミン酸塩、リン酸エステル塩、アルキル硫酸エステルナトリウム、オレフィン硫酸エステルナトリウム、アルキルベンゼン硫酸ナトリウム、アルキルナフタレン硫酸ナトリウム、アルキル硫酸塩、オレイン酸アミドスルフォコハク酸ナトリウムなどを挙げることができる。またカチオン性界面活性剤としては、たとえばアルキルアンモニウム塩、アルキルピリジウム塩、アルキルイソキノリウム塩、ベンゼトニウム塩などを挙げることができる。ノニオン性界面活性剤としては、たとえば多価アルコールエステルとして、脂肪酸モノグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなど、高級アルコール酸化エチレン縮合物、脂肪酸の酸化エチレン縮合物、ブロックポリマー型酸化エチレン縮合物例えば脂肪酸アルキロールアミドを挙げることができる。両性イオン界面活性剤としては、アルキルトリメチルアミノ酢酸、アルキルジエチレントリアミン酢酸などを挙げることができる。
【0052】
乳化液を調製するための界面活性剤のHLBは特に限定されない。通常は3〜20程度のHLBの範囲から適宜に選択することができる。また、乳化液のイオン性はアニオン性、カチオン性およびノニオン性のいずれであることもできる。イオン性に応じて適宜にアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤を選択し、これを用いて乳化させる。
【0053】
乳化液のエマルジョン粒径は特に限定されない。例えば、紡糸のためのノズル径の大小に関係なく、任意の径の乳化液とすることができる。しかしながら乳化液の安定の観点から、通常は粒径200μm以下になるよう調製することが好ましい。エマルジョンの粒径が200μmを超えると、乳化液の安定性が劣り、その結果、繊維原料の溶液や繊維原料の加熱溶融物などとの混和・紡糸の際に凝集が起きる可能性がある。粒径の下限の値も特に限定されないが、通常は粒径で0.01μm以上であることが多い。なお、乳化液には、必要に応じて酸化防止剤、防腐剤、帯電防止剤などを適宜に添加し使用することができる。
【0054】
<含油繊維を含む化粧・美容用不織布>
化粧・美容用不織布は、上述した含油繊維だけを用いて製造してもよい。また、含油繊維により安価な無含油の極細繊維やさらに安価な極細でない一般的な繊維を混ぜて製造してもよい。
【0055】
化粧・美容用不織布中の含油繊維の量は、不織布の重量を基準として5〜100重量%であり、好ましくは5〜80重量%、より好ましくは5〜60重量%、特に好ましくは5〜40重量%である。この含油繊維によって、従来にない絹のような優しい柔らかさと肌触りを実現しつつ、同時に拭き取り性を向上させることができ、含油繊維の機能を発揮するためには、5重量%以上配合する必要がある。また、原料全てを含油繊維としてもよい。しかしながら、含油繊維は高価な繊維であるため、後述する無含油の極細繊維やその他の一般的な繊維を混抄することもできる。
【0056】
含油繊維の製造に用いることができる原料繊維としては、綿、ラミー、リネン、大麻、黄麻、亜麻、マニラ麻、サイザル麻、竹繊維またはバナナ繊維等の植物繊維(天然繊維)、ウール、カシミヤ、モヘア、アンゴラ、キャメル、アルパカまたは絹等の動物繊維(天然繊維)、レーヨン、キュプラまたはリヨセル等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリルまたはポリプロピレン等の合成繊維などが挙げられる。
【0057】
無含油の極細繊維の繊度は、繊度0.1dtex〜0.8dtexであり、好ましくは繊度0.1dtex〜0.7dtexであり、より好ましくは繊度0.1dtex〜0.6dtexであり、さらに好ましくは繊度0.1dtex〜0.5dtexである。
無含油の極細繊維の繊維長は、繊維長5mm〜25mmであり、好ましくは繊維長5mm〜20mmであり、より好ましくは繊維長5mm〜15mmであり、さらに好ましくは繊維長5mm〜10mmである。
【0058】
化粧・美容用不織布中の無含油の極細繊維の量は、不織布の重量を基準として0〜95重量%であり、好ましくは20〜95重量%、より好ましくは40〜95重量%、特に好ましくは60〜95重量%である。化粧・美容用不織布中の無含油の極細繊維の含有量が95重量%より多いと、本発明の効果が十分でなくなったり得られなくなったりする。
【0059】
無含油の極細繊維の材料としては、上述した含油繊維の製造に用いることができる原料繊維として挙げたものなどがあり、好ましくは、レーヨン繊維、ポリエステル繊維、又はアクリル繊維等が挙げられる。
【0060】
極細でない一般的な繊維としては、繊度が約1.0dtex以上の繊維で、上述した含油繊維の製造に用いることができる原料繊維としてあげたものなどがある。
【0061】
化粧・美容用不織布の目付は、20〜100g/m2である。目の周りなど細かい部分を拭く用途など、しなやかさ、ドレープ性などが重視される場合は好ましくは30〜60g/m2、さらに好ましくは40〜50g/m2である。一方、体全体を拭く用途など大きな吸水量、強度などが重視される場合は40〜100g/m2、さらに好ましくは50〜80g/m2である。
【0062】
本発明に係る化粧・美容用不織布は、顔全体や目もと、口もと、首筋などの肌を手入れするための所定の形状に打ち抜かれたシート材に化粧料又は美容料を含浸したフェイスマスクシートや、メイク落とし剤を使用した後のメイクを拭き取るための拭き取りシート、メイクを落とすためのクレンジングシート、或いはメイクを施すための化粧シート等のシートタイプの化粧品の基材として用いることができる。その他、本発明に係る化粧・美容用不織布は、化粧料のアプリケーター又はボディ用シートなどに用いることができる。
【0063】
<含油繊維を含む化粧・美容用不織布の製造方法>
本発明に係る化粧・美容用不織布の製造工程について説明する。まず、所定量の上記含油繊維、及び必要に応じて所定量の無含油の極細繊維や極細でない一般的な繊維を配合した原料繊維を用意する。次に、この原料繊維を湿式不織布の抄造工程に従い水中に分散させ、水中分散させた原料繊維を円網抄紙機等の公知の抄紙機を用いて抄紙する。その後、これを乾燥させ、ロール状に巻き取って化粧・美容用不織布を製造することができる。
【0064】
<三層構造を有する化粧・美容用不織布>
三層構造を有する化粧・美容用不織布は、湿式抄造した中間層の両面に、湿式抄造した2つの表面層を重ねて抄紙機上で絡合させて抄き合わせた構造を有している。2つの表面層のいずれか一方又は両方には、上述した含油繊維を含む化粧・美容用不織布を用いる。表面層のいずれか一方だけに含油繊維を含む化粧・美容用不織布を用いる場合には、肌に触れる面(使用面)を色や後述する透かし模様により識別できるようにしておくことが好ましい。
【0065】
両面に表面層が抄き合わされる中間層は、直接使用者の肌に触れることがないため、含油繊維を含む化粧・美容用不織布や極細繊維で作製した不織布を使用しなくてもよい。むしろ化粧・美容用不織布に要求される保液性を維持するために、クラフトパルプ、レーヨン、アセテート等の保液性の高い繊維や、異形断面の繊維や繊維径の大きい嵩を出すことのできる繊維を使用することが好ましい。これにより、化粧・美容用不織布としての機能を表面層と中間層との間で分担することができる。好適な例として、クラフトパルプ30重量%〜70重量%に繊度0.8dtexを超えるレーヨン70重量%〜30重量%を配合する。なお、中間層に使用する繊維に限定はなく、含油繊維を含む化粧・美容用不織布や極細繊維で作製した不織布を使用することもできる。
【0066】
中間層の目付は特に限定されないが、中間層の目付を多くすることが保液性を確保するために適当である。また、中間層の目付を確保することにより、高価な含油繊維や極細繊維を使用する表面層の目付を少なくすることもできる。中間層の目付は、例えば20〜100g/m2であり、好ましくは40〜100g/m2、さらに好ましくは50〜80g/m2である。
【0067】
また、中間層には、紙層の欠如部分又は薄層部分を形成することにより、表面層を抄き合わせた際に、該紙層の欠如部分又は薄層部分、或いは厚層部分を透かし模様とすることもできる。化粧・美容用不織布は、化粧品としての用途の制約から、塗料等を使用した印刷を施すことが難しく、包装袋等にはメーカー名や商品名、或いは好ましい意匠を施してあったとしても、フェイスマスクシート等として取り出したときは、無色無模様のものとなり、化粧品としてブランド等が不明となってしまっていた。中間層に透かし模様の機能を付与することでこの問題を解決することができる。
【0068】
<三層構造を有する化粧・美容用不織布の製造方法>
次に本発明に係る三層構造を有する化粧・美容用不織布の製造方法を説明する。まず、表面層は、所定量の上記含油繊維、及び必要に応じて所定量の無含油の極細繊維や極細でない一般的な繊維を配合した原料繊維を用意して、この原料繊維を湿式不織布の抄造工程に従い水中に分散させ、水中分散させた原料繊維を円網抄紙機等の公知の抄紙機を用いて抄紙する。次に、中間層は、保液性を実現できる原料繊維(又は表面層の抄造に用いた原料と同じであってもよい)を用意して、この原料繊維を湿式不織布の抄造工程に従い水中に分散させ、水中分散させた原料繊維を円網抄紙機等の公知の抄紙機を用いて抄紙する。
【0069】
さらに、抄紙された中間層の紙層を中心として、抄紙された表面層の紙層を抄紙機上で三層に重ね合わせ、公知のウォータージェット装置を使用して三層に重ね合わされた紙層を水流絡合させる。その結果、三層の紙層は抄き合わせられて、三層構造の不織布となる。最後に、この三層に抄き合わせられた紙層を乾燥させ、ロール状に巻き取って三層構造を有する化粧・美容用不織布を製造することができる。
【0070】
<透かし模様を有する化粧・美容用不織布>
また、化粧・美容用不織布に透かし模様を付す場合には、例えば中間層に紙層の欠如部分又は薄層部分を形成することにより、表面層を介して該紙層の欠如部分又は薄層部分を透かし模様とすることができる。
【0071】
このような中間層を製造する場合には、透かし模様の形態だけ網目の空隙を全部又は部分的に埋めて、網目に欠如部分を形成した抄紙網を用いればよい。この網目の欠如部分には水中分散させた原料繊維が載らないため、抄紙された中間層の紙層には、網目の欠如部分に相当する部分が紙層の欠如部分又は薄層部分となって模様が形成される。この模様の両面には表面層が抄き合わされるため、模様は表面層を介して透かし模様となる。
【実施例】
【0072】
以下、本発明の実施例1及び比較例1〜3に係る化粧・美容用不織布について説明する。表1は実施例及び比較例で用いた繊維、及び不織布構造などの概要である。
【0073】
【表1】

【0074】
[実施例1]
0.1〜0.6dtex×5〜10mm(繊度×繊維長)、無含油のポリエチレンテレフタレート極細繊維(TEPYRUS−PET、帝人ファイバー株式会社製)70重量%と、油分としてスクワラン1〜2重量%を含有する1.1dtex×7mm(繊度×繊維長)のレーヨン含油繊維(PAPOLIS−RAYON、オーミケンシ株式会社製)30重量%とを混合した原料を、前述した方法にて湿式抄造して不織布を製造した。次に、抄紙機上でこの不織布を3枚重ね合わせて、ウォータージェット装置で水流絡合させた後、乾燥させて巻き取り、1枚の中間層を2枚の表面層で挟み込んだ三層構造の化粧・美容用不織布を製造した。1枚の不織布の目付は60g/m2とした。
【0075】
[比較例1]
無含油のコットン繊維をスパンレース法により水流交絡することにより製造した不織布(COTTOACE CO60−S−A07、ユニチカ株式会社製)を用いて、一層構造の化粧・美容用不織布とした。不織布の目付は60g/m2とした。なお、ここで用いた不織布は化粧・美容用途で一般的に用いられているグレードの素材である。
【0076】
[比較例2]
1.7dtex×38mm(繊度×繊維長)、無含油のレーヨン繊維をスパンレース法により水流交絡することにより製造した不織布(HOPE SRBR−0060、オーミケンシ株式会社製)を用いて、一層構造の化粧・美容用不織布とした。不織布の目付は60g/m2とした。なお、ここで用いた不織布は化粧・美容用途で一般的に用いられているグレードの素材である。
【0077】
[比較例3]
0.1〜0.6dtex×5〜10mm(繊度×繊維長)、無含油のポリエチレンテレフタレート極細繊維(TEPYRUS−PET、帝人ファイバー株式会社製)70重量%と、1.1dtex×7mm(繊度×繊維長)、無含油のレーヨン繊維(HOPE−RAYON、オーミケンシ株式会社製)30重量%とを混合した原料を、実施例1と同様に湿式抄造して不織布を製造した。次に、抄紙機上でこの不織布を3枚重ね合わせて、ウォータージェット装置で水流絡合させた後、乾燥させて巻き取り、1枚の中間層を2枚の表面層で挟み込んだ三層構造の化粧・美容用不織布を製造した。1枚の不織布の目付は60g/m2とした。
【0078】
次に、実施例1及び比較例1〜3に係る化粧・美容用不織布について、人による官能評価及び摩擦感テスターによる評価を行った。
【0079】
[人による官能評価]
人による官能評価は、5名のパネルが下記の基準に従って、比較例1に係る化粧・美容用不織布を比較対象として実施例1及び比較例2、3に係る化粧・美容用不織布のやわらかさ及びなめらかさを評価した。その結果を以下の表に示す。
(1)やわらかさ:手で掴んだり、曲げたりしたときの感触
◎:非常にやわらかい
○:やわらかい
△:どちらともいえない
×:やわらかくない
(2)なめらかさ:不織布の表面を手でなでたときの感触
◎:非常になめらか
○:なめらか
△:どちらともいえない
×:なめらかではない
【0080】
【表2】

【0081】
【表3】

【0082】
以上の表から明らかなように、実施例1に係る化粧・美容用不織布は、化粧・美容用途で一般的に用いられているグレードである比較例1及び2の化粧・美容用不織布はもちろんのこと、極細繊維で製造した比較例3に係る化粧・美容用不織布よりも、人により感じられるやわらかさ及びなめらかさが優れていることが分かる。
【0083】
[摩擦感テスターによる評価]
摩擦感テスターによる評価は、KES(川端エバリューションシステム)試験機(摩擦感テスター KESSE、カトーテック株式会社製)を用いて行った。摩擦感度をHighレベルにセットして、2cm×30cmに切断した不織布の試験片に0.5mmφのピアノ線を巻き付けた1cm角の摩擦子を接触させ、25gの摩擦静荷重を掛けながら、秒速1mmで30秒間水平移動(移動距離30mm)させた時の摩擦係数の平均偏差(MMD)及び平均摩擦係数(MIU)を測定した。実施例1及び比較例1〜3に係る化粧・美容用不織布それぞれについて5枚の試験片を用意して、5回測定した。
【0084】
不織布表面のMMD値は、摩擦係数のばらつきを示す数値であり、数値が大きくなるほど摩擦係数の値はばらつきが大きくなり、表面の触感はザラザラした感じがつよいものとなる。したがって、MMD値が大きいほどざらつき、MMD値が小さいほどなめらかであることを示している。
また、不織布表面のMIU値は、不織布と接した面との間に生じた摩擦係数の平均値であり、数値が大きいほど対象物との間に生じる摩擦力が大きく滑りにくくなる。したがって、MIU値が大きいほどひっかかり感があり、MIU値が小さいほどさらさら感があることを示している。結果を以下の表に示す。
【0085】
【表4】

【0086】
【表5】

【0087】
以上の表から明らかなように、実施例1に係る化粧・美容用不織布は、化粧・美容用途で一般的に用いられているグレードである比較例1及び2の化粧・美容用不織布はもちろんのこと、極細繊維で製造した比較例3に係る化粧・美容用不織布よりも、MMD値が小さく、なめらかさが優れていることが分かる。
【0088】
しかしながら厳密に検討すれば、実施例1に係る化粧・美容用不織布と比較例3に係る化粧・美容用不織布とで、MMD値にはそれほど有意な差があるとはいえない。このため、さらにMIU値の結果を検討すると、実施例1に係る化粧・美容用不織布は、極細繊維で製造した比較例3に係る化粧・美容用不織布よりも、MIU値が小さく、さらさら感が優れていることが分かる。
【0089】
更に、実施例1に係る化粧・美容用不織布は、柔らかさ、肌触り感によって、肌への密着性が向上するため、必然的にクレンジング時の化粧品の拭き取り、その他の拭き取り性能が向上する。この点について、実施例及び比較例に係る化粧・美容用不織布について、クレンジング化粧品にてメイク落としをした化粧品の拭き取りの官能試験を複数のパネラ(女性)にて行ったところ、実施例1に係る化粧・美容用不織布の拭き取り性能が比較例に係る化粧・美容用不織布に比して良好であるとの結果を得た。
【0090】
また、実施例1に係る化粧・美容用不織布に透かし模様として適当な文字を入れたところ、従来の無味乾燥の化粧・美容用不織布の中に鮮やかに文字が透かし模様として浮かび上がった。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明によれば、含油繊維を含む原料を使用して不織布を製造することによって、従来の不織布では実現できなかった優れた柔らかさ、肌触り性及び拭き取り性を実現することができるので、優れた化粧・美容用不織布を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含油繊維を含む化粧・美容用不織布。
【請求項2】
前記含油繊維に含まれる油分が、スクワラン、スクワレン、スクワレン部分水素添加物、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、流動パラフィン、スクワラン、イソパラフィン、メチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・2−オクチルドデシル)、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、オゾケライト、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、セラミド、コレステロール、フィトステロール、マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル、及びN−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・ベヘニル・2−オクチルドデシル)からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載する化粧・美容用不織布。
【請求項3】
前記含油繊維が、繊度0.3dtex〜5.0dtex、繊維長3mm〜25mmの繊維である、請求項1又は2に記載する化粧・美容用不織布。
【請求項4】
前記含油繊維に含まれる油分が、前記含油繊維の重量を基準として0.1〜30重量%である、請求項1〜3のいずれかに記載する化粧・美容用不織布。
【請求項5】
前記不織布に含まれる前記含油繊維が、前記不織布の重量を基準として5〜100重量%である、請求項1〜4のいずれかに記載する化粧・美容用不織布。
【請求項6】
さらに、繊度0.1dtex〜0.8dtex、繊維長5mm〜25mmの無含油の極細繊維を含む、請求項1〜5のいずれかに記載する化粧・美容用不織布。
【請求項7】
前記無含油の極細繊維が、レーヨン繊維、ポリエステル繊維、及びアクリル繊維からなる群から選択された少なくとも1つである、請求項6に記載する化粧・美容用不織布。
【請求項8】
前記含油繊維が、天然繊維、再生繊維、半合成繊維、及び合成繊維からなる群から選択された少なくとも1つに油分を含有させたものである、請求項1〜7のいずれかに記載する化粧・美容用不織布。
【請求項9】
前記天然繊維が、綿、ラミー、リネン、大麻、黄麻、亜麻、マニラ麻、サイザル麻、竹繊維、バナナ繊維、ウール、カシミヤ、モヘア、アンゴラ、キャメル、アルパカ及び絹からなる群から選択された少なくとも1つである、請求項8に記載する化粧・美容用不織布。
【請求項10】
前記再生繊維がレーヨンである、請求項8に記載する化粧・美容用不織布。
【請求項11】
前記半合成繊維がアセテートである、請求項8に記載する化粧・美容用不織布。
【請求項12】
前記合成繊維が、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、及びポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項8に記載する化粧・美容用不織布。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載する不織布を用いて形成した三層構造を有する化粧・美容用不織布。
【請求項14】
前記三層構造が、1つの中間層と2つの表面層とから構成され、該表面層として請求項1〜12のいずれかに記載する不織布を用い、該中間層として前記含油繊維及び前記極細繊維を含まない不織布または請求項1〜12のいずれかに記載する不織布を用いてなる、請求項13に記載する化粧・美容用不織布。
【請求項15】
前記中間層は保液性を有する、請求項14に記載する化粧・美容用不織布。
【請求項16】
透かし模様を有する、請求項13〜15のいずれかに記載する化粧・美容用不織布。
【請求項17】
前記中間層に紙層の欠如部分又は薄層部分を形成し、前記表面層を介して該欠如部分又は該薄層部分を透かし模様とした、請求項16に記載する化粧・美容用不織布。
【請求項18】
フェイスマスクシート、拭き取りシート、クレンジングシート、化粧料のアプリケーター又はボディ用シートである、請求項1〜17のいずれかに記載する化粧・美容用不織布。
【請求項19】
前記含油繊維に含まれる油分がスクワランを含有する、請求項1〜18のいずれかに記載する化粧・美容用不織布。
【請求項20】
前記含油繊維に含まれる油分がスクワラン及びスクワレンを含有する、請求項1〜18のいずれかに記載する化粧・美容用不織布。
【請求項21】
前記含油繊維に含まれる油分が、1重量部の前記スクワランに対して2〜6重量部の前記スクワレンを含有する、請求項20に記載する化粧・美容用不織布。
【請求項22】
前記含油繊維に含まれる油分が、皮脂成分である脂肪酸グリセリンエステルを含有する、請求項19〜21のいずれかに記載する化粧・美容用不織布。
【請求項23】
前記含油繊維が、さらに0.5〜0.8重量%の塩化ナトリウムと0.06〜0.1重量%の尿素と0.01〜0.05重量%の乳酸を含む水分を含む、請求項19〜22のいずれかに記載する化粧・美容用不織布。
【請求項24】
前記含油繊維が、さらに0.8〜1.0重量%の塩化ナトリウムと0.06〜0.1重量%の尿素と0.01〜0.05重量%の乳酸を含む水分を含む、請求項19〜22のいずれかに記載する化粧・美容用不織布。

【公開番号】特開2010−195735(P2010−195735A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44634(P2009−44634)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000103622)オーミケンシ株式会社 (9)
【Fターム(参考)】