説明

化粧品用組成物

【課題】使用時の感触や塗布時及び塗布面での感触、保湿性や分散性にすぐれた化粧品用組成物、並びに該化粧品組成物を含む化粧品を提供すること。
【解決手段】水溶性キシランの主鎖の数平均重合度が6以上5000以下である化粧品用組成物。水溶性キシランの数平均分子量が7,000以上100万以下である化粧品用組成物。水溶性キシランがキシロース残基またはアセチル化キシロース残基と、アラビノース残基と4−O−メチルグルクロン酸残基とからなる化粧品用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた分散機能を有する新規原料である、水溶性キシランを含む化粧品に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性高分子物質は、皮膜形成性、ゲル化性、増粘性、保湿性などを有しており、種々の用途に幅広く利用されている。水溶性高分子としては、化学合成高分子、動物由来又は植物由来の天然高分子等がある。このうち、特に化粧品や医薬品等の用途においては、安全性等の観点から、化学合成高分子や動物由来の高分子を避け、植物性の天然高分子を使用することが好まれている。これまで、化粧品にはさまざまな天然高分子が使われてきているが、キシランが利用されることはなかった。これは通常キシランが難水溶性であるため、化粧品に有効に利用できないと考えられていなかったためである。
【0003】
【非特許文献1】Montalkら、FEBS Letters 471、第219-223頁、2000年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
分散機能に優れ、かつ化粧品に使用可能な水溶性天然高分子が期待されていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を行った。その結果、主鎖の数平均重合度が6以上5000以下の水溶性キシラン、より好ましくはキシロース残基またはアセチル化キシロース残基と、アラビノース残基と4−O−メチルグルクロン酸残基とからなる水溶性キシラン、さらに好ましくはキシロース残基またはアセチル化キシロース残基と4−O−メチルグルクロン酸残基とからなる水溶性キシランが、難溶性物質の分散機能を有しているため、化粧品に適した物性を提供しうる水溶性高分子であることを見出し、更に鋭意検討を重ねて本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、次の事項に係る。
項1.水溶性キシランを含有することを特徴とする化粧品用組成物。
項2.水溶性キシランの主鎖の数平均重合度が6以上5000以下である、項1に記載の化粧品用組成物。
項3.水溶性キシランが、キシロース残基またはアセチル化キシロース残基と、アラビノース残基と4−O−メチルグルクロン酸残基とからなる、項2に記載の化粧品用組成物。
項4.水溶性キシランにおいて、アラビノース残基1に対してキシロース残基およびアセチル化キシロース残基の合計が20〜100の割合である、項3に記載の化粧品用組成物。
項5.水溶性キシランが、キシロース残基またはアセチル化キシロース残基と4−O−メチルグルクロン酸残基とからなる、項1に記載の化粧品用組成物。
項6.水溶性キシランが、4−O−メチルグルクロン酸残基1に対してキシロース残基およびアセチル化キシロース残基の合計が1〜20の割合である、項5に記載の化粧品用組成物。
項7.水溶性キシランの数平均分子量が7,000以上100万以下である、項1に記載の化粧品用組成物。
項8.水溶性キシランが、木本性植物由来のキシランである、項1に記載の化粧品用組成物。
項9.前記水溶性キシランが、広葉樹由来のキシランである、8に記載の化粧品用組成物。
項10.項1〜9のいずれかに記載の化粧品用組成物を含んでなる化粧品。
項11.液状、乳液状、クリーム状、ゲル状、ムース状、ペースト状、固形状、粉末状及び多層状からなる群から選ばれるいずれかの形態である項10に記載の化粧品。
項12.化粧品が、ローション、化粧水、乳液、クリーム、パック剤、美容液、洗顔料、メーキャップ剤、ヘアケア用品、ボディーソープ、入浴剤及び香料からなる群から選ばれるいずれかである項10又は11に記載の化粧品。
【発明の効果】
【0006】
水溶性キシラン
本明細書中で用いられる場合、用語「キシラン」とは、β−1,4結合によって連結された2以上のキシロース残基を含む分子をいう。本明細書中では、キシロース残基のみから構成される分子(すなわち、純粋なキシロースポリマー)に加えて、それらの修飾された分子、およびアラビノース残基などの他の残基が純粋なキシロースポリマーに結合した分子をも「キシラン」という。純粋なキシロースポリマーは、重合度5までは6mg/mL以上の濃度で水に溶解する。しかし、重合度6以上では水への溶解度は6mg/mL未満である。
【0007】
本明細書中で用いられる場合、用語「水溶性キシラン」とは、β−1,4結合によって連結された6以上のキシロース残基を含む分子であって、20℃の水に6mg/mL以上溶解する分子をいう。水溶性キシランは、純粋なキシロースポリマーではなく、キシロースポリマー中の少なくとも一部の水酸基が他の置換基(例えば、アセチル基、グルクロン酸残基、アラビノース残基など)に置き換わっている分子である。キシロース残基のみからなるキシランの水酸基が他の置換基に置き換わることにより、キシロース残基のみからなるキシランよりも水溶性が高くなることがある。キシロース残基のみからなるキシランの水酸基が他の置換基に置き換わっている分子は、キシロースポリマーに置換基が結合した分子、または修飾されたキシロースポリマーということもできる。なお、本明細書中で用語「修飾された」とは、基準分子と比較して修飾されている分子をいい、人為的操作によって製造された分子だけでなく、天然に存在する分子をも包含する。キシロースポリマーに4−O−メチルグルクロン酸残基およびアセチル基が結合したものは、一般に、グルクロノキシランと呼ばれる。キシロースポリマーにアラビノース残基および4−O−メチルグルクロン酸が結合したものは、一般に、アラビノグルクロノキシランと呼ばれる。
【0008】
水溶性キシランは、その主鎖にキシロース残基またはその修飾物のみを含むことが好ましく、その主鎖にキシロース残基またはアセチル化キシロース残基のみを含むことがより好ましい。本明細書中では、用語「主鎖」とは、β−1,4−結合によって連結された最も長い鎖をいう。水溶性キシロースが直鎖状である場合、その分子自体が主鎖であり、水溶性キシロースが分枝状である場合、β−1,4−結合によって連結された最も長い鎖が主鎖である。本発明で用いられる水溶性キシランの主鎖の数平均重合度は、好ましくは約6以上であり、より好ましくは約7以上であり、さらに好ましくは約8以上であり、特に好ましくは約9以上であり、最も好ましくは約10以上である。本発明で用いられる水溶性キシランの主鎖の数平均重合度は、好ましくは約5000以下であり、より好ましくは約1000以下であり、さらに好ましくは約500以下であり、特に好ましくは約100以下であり、最も好ましくは約50以下である。水溶性キシランの主鎖の数平均重合度が高すぎると水溶性が低すぎる場合がある。
【0009】
置換基は、キシロース残基の1位、2位、3位または4位のいずれの位置においても結合し得る。1つのキシロース残基に対する置換基の結合箇所は、4箇所の全てであり得るが、3箇所以下が好ましく、2箇所以下がより好ましく、1箇所であることが最も好ましい。置換基は、キシロースポリマーの全てのキシロース残基に結合していてもよいが、好ましくは一部のキシロース残基にのみ結合している。置換基の結合の割合は、好ましくはキシロース残基10個あたり1個以上であり、より好ましくはキシロース残基10個あたり2個以上であり、さらに好ましくはキシロース残基10個あたり3個以上であり、特に好ましくはキシロース残基10個あたり4個以上であり、最も好ましくはキシロース残基10個あたり5個以上である。置換基の例としては、アセチル基、4−O−メチル−α−D−グルクロン酸残基、L−アラビノフラノース残基、α−D−グルクロン酸残基が挙げられる。
【0010】
本発明の特定の実施形態では、キシロース残基の2位に、他の糖残基が結合している水溶性キシランが好ましい。この水溶性キシランにおいて、キシロース残基およびアセチル化キシロース残基の合計と他の糖残基との割合は、他の糖残基1モルに対し、キシロース残基およびアセチル化キシロース残基の合計が20モル以下であることが好ましく、10モル以下であることがより好ましく、6モル以下であることがさらに好ましい。キシロース残基およびアセチル化キシロース残基の合計と他の糖残基との割合は、他の糖残基1モルに対し、キシロース残基およびアセチル化キシロース残基の合計が1モル以上であることが好ましく、2モル以上であることがより好ましく、5モル以上であることがさらに好ましい。
【0011】
本発明の特定の実施形態では、キシロース残基の2位に4−O−メチル−α−D−グルクロン酸残基がα−1,2−結合している水溶性キシランが好ましい。この水溶性キシランにおいて、キシロース残基およびアセチル化キシロース残基の合計と4−O−メチル−α−D−グルクロン酸残基との割合は、4−O−メチル−α−D−グルクロン酸残基1モルに対し、キシロース残基およびアセチル化キシロース残基の合計が100モル以下であることが好ましく、50モル以下であることがより好ましく、20モル以下であることがさらに好ましい。キシロース残基およびアセチル化キシロース残基の合計と4−O−メチル−α−D−グルクロン酸残基との割合は、4−O−メチル−α−D−グルクロン酸残基1モルに対し、キシロース残基およびアセチル化キシロース残基の合計が1モル以上であることが好ましく、5モル以上であることがより好ましく、9モル以上であることがより好ましく、10モル以上であることがより好ましく、14モル以上であることがさらに好ましい。
【0012】
水溶性キシランの数平均分子量は、好ましくは約100万以下であり、より好ましくは約50万以下であり、さらにより好ましくは約10万以下であり、特に好ましくは約5万以下であり、最も好ましくは約2万以下である。水溶性キシランの数平均分子量は、好ましくは約1500以上であり、より好ましくは約2000以上であり、さらにより好ましくは約4000以上であり、特に好ましくは約5000以上であり、格別好ましくは約6000以上であり、最も好ましくは約1万以上である。
【0013】
本発明で用いられる好適な水溶性キシランは、好ましくは木本性植物由来である。水溶性キシランは、植物の細胞壁部分に多く含まれる。木材は特に、水溶性キシランを多く含む。水溶性キシランの構造は、由来する植物の種類に依存して様々である。広葉樹の木材に含まれるヘミセルロースの主成分はグルクロノキシランであることが公知である。広葉樹に含まれるグルクロノキシランは、キシロース残基10:4−O−メチルグルクロン酸1:アセチル基6の割合で構成されることが多い。針葉樹の木材に含まれるヘミセルロースの主成分はグルコマンナンであり、針葉樹の木材はまたグルクロノキシランおよびアラビノグルクロノキシランも含むことが公知である。なお、グルコマンナンは主鎖がマンノース残基とグルコース残基とから構成されており、その比は一般に、マンノース残基3〜4:グルコース残基1である。本発明で用いられる水溶性キシランはより好ましくは広葉樹由来であり、より好ましくはブナ、カバ、アスペン、ニレ、ビーチまたはオーク由来である。広葉樹のヘミセルロース成分は、本発明で用いられる水溶性キシランを多く含む。広葉樹由来の水溶性キシランは、アラビノース残基をほとんど含まないため特に好適である。当然のことながら、天然由来の水溶性キシランは、異なる分子量を有する種々の分子の混合物である。天然由来の水溶性キシランは、その効果を発揮し得る限り、夾雑物を含んだ状態で使用されてもよく、広い分子量分布を有する集団として使用されてもよく、より狭い分子量分布を有する集団になるように、より高純度に精製されてから使用されてもよい。
【0014】
少量ではあるが、トウモロコシ、イネ、麦などのイネ科の草本植物などにも水溶性キシランは含まれる。草本植物由来の水溶性キシランは、4−O−メチル−α−D−グルクロン酸残基以外に、α−L−アラビノース残基がキシロース残基に共有結合しているアラビノグルクロノキシランである。α−L−アラビノース残基の含量が高いキシランは本発明の目的に好適ではない。草本性植物由来の水溶性キシランであっても、L−アラビノース残基を少なくとも一部除去することにより、本発明で利用され得る。L−アラビノース残基は、化学的方法または酵素的方法などの公知の方法によって除去され得る。
【0015】
本発明の特定の実施形態では、水溶性キシランが、キシロース残基またはアセチル化キシロース残基と、アラビノース残基と4−O−メチルグルクロン酸残基とからなることが好ましい。この実施形態において、水溶性キシラン中のL−アラビノース残基1に対してキシロース残基およびアセチル化キシロース残基の合計は、好ましくは約7以上であり、より好ましくは約10以上であり、さらに好ましくは約20以上である。この実施形態において、水溶性キシラン中のL−アラビノース残基1に対してキシロース残基およびアセチル化キシロース残基の合計は、好ましくは約100以下であり、より好ましくは約60以下であり、さらに好ましくは約40以下である。
【0016】
水溶性キシランは、例えば木材から、公知の方法に従って精製される。水溶性キシランの精製方法としては、例えば、脱リグニン処理した木材を原料として、10%程度の水酸化カリウム溶液で抽出する方法などが挙げられる。水溶性キシランはまた、木材から製造された粉末セルロースを水に分散し、この溶液を濾紙、0.45μmフィルター、0.2μmフィルターで順次濾過して得られる濾液を乾燥することによっても得られる。
【0017】
本発明で用いられる水溶性キシランにおいて、キシロース残基とL−アラビノース残基との割合は、L−アラビノース残基1モルに対し、キシロース残基が7モル以上であることが好ましく、10モル以上であることがより好ましく、20モル以上であることがさらに好ましい。L−アラビノース残基1モルに対するキシロース残基の比に上限はなく、L−アラビノース残基1モルに対して、キシロース残基は例えば、100残基以下、60残基以下、40残基以下などである。
【0018】
本発明の特に好ましい実施形態では、水溶性キシランは好ましくはL−アラビノース残基を含まない。水溶性キシランは、キシロース残基またはアセチル化キシロース残基と4−O−メチルグルクロン酸残基とからなる。この実施形態において、水溶性キシラン中の4−O−メチルグルクロン酸残基1に対してキシロース残基およびアセチル化キシロース残基の合計は、好ましくは約1以上であり、より好ましくは約5以上であり、さらに好ましくは約9以上であり、さらに好ましくは約10以上であり、さらにより好ましくは約14以上である。この実施形態において、水溶性キシラン中の4−O−メチルグルクロン酸残基1に対してキシロース残基およびアセチル化キシロース残基の合計は、好ましくは約100以下であり、より好ましくは約50以下であり、さらに好ましくは約20以下である。
【0019】
化粧品用組成物
本発明の化粧品組成物は、上記水溶性キシランを、水、又は化粧品として許容可能な媒体と水との混合物に含有せしめることにより得られるものである。化粧品として許容可能な媒体の種類は特に限定されない。混合割合も適宜設定し得る。また本発明の化粧用組成物には、水溶性キシランや媒体に加えて、通常の化粧品に配合し得る成分や添加剤等を適宜配合してもよい。
【0020】
化粧品組成物における、水溶性キシランの配合量は、化粧品用組成物の総量に対し、0.2重量%〜50重量% が好ましく、0.5重量%〜30重量%がより好ましい。本発明の化粧品用組成物は、酸性多糖である水溶性キシランを成分とするものであり、細胞に対する作用が穏やかで、且つ、線維芽細胞増殖効果を奏する。
【0021】
また、本発明の化粧品組成物が含有する水溶性キシランは、増粘効果や溶液安定性に優れることから、皮膜形成能力、増粘効果、安定性等において優れた性質を有する化粧品組成物が得られることになる。
【0022】
本発明の化粧品用組成物を製造する方法は、上記水溶性キシランを、水又は化粧品として許容可能な媒体と水との混合物に含有せしめるものであれば、特に限定されない。
【0023】
化粧品
本発明の化粧品は、上記化粧品用組成物を含んでなるものであって、常法に従って製造することができる。
【0024】
本発明の化粧品の形態は、特に限定されず、例えば、液状、乳液状、クリーム状、ゲル状、ムース状、ペースト状、固形状、粉末状又は多層状等とすることができる。本発明の含有成分である水溶性キシランは、水溶性であって、溶液の状態で利用することもできるが、使用する濃度を高めたり、ゲル化促進剤を加えることにより、ゲルやゾルの状態として使用することもできる。ここでゲルとは、高分子溶質(水溶性キシラン)が、相互作用のために独立した運動性を失って集合した構造を持ち、固化した状態をいい、ゾルとは、高分子溶質(水溶性キシラン)が、液体中に分散して粘性はあるが流動性を示す状態をいう。本発明の水溶性キシランは、溶解状態で含有されていることから、微粒子の縣濁状態とはならず、上記のような種々の形態での化粧品の適用が可能である。また、水溶液、ゲル、ゾルの状態から、さらに水分を蒸発させ、乾燥状態で利用することもできる。
【0025】
また本発明の化粧品の種類も、特に限定されない。例えば、ローション、化粧水、乳液、クリーム、パック剤、美容液、日焼け止め、洗顔料、メーキャップ剤、ヘアケア用品、ボディーソープ、入浴剤及び香料などとして用いることができる。
【0026】
メーキャップ剤としては、例えば、ファンデーション、おしろい、頬紅、口紅、アイシャドー、アイライナー、アイブロー、マスカラ、マニキュアなどが挙げられる。
【0027】
ヘアケア用品としては、例えば、シャンプー、リンス、コンディショナー、トリートメント、育毛剤、ヘアリキッド、ヘアジェル、ヘアカラー、ヘアクリーム、パーマ剤、ブリーチ剤などが挙げられる。
【0028】
本発明の化粧品においては、必要に応じて化粧品、外用医薬部外品などに用いる他の添加成分を適宜配合することができる。他の添加成分としては、例えば油性原料(油脂、ロウ類、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル類、シリコーン系オイル、弗素オイルなど):粉体(有機あるいは無機の天然粉体、半合成粉体、合成粉体、球状微粒子など):色材(有機合成色素、無機顔料、天然色素、真珠光沢顔料、機能性顔料、高分子粉体、染料、染料中間体など):保湿剤(ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、キシリトール、マルチトール、マルトース、D−マンニット、水アメ、ブドウ糖、果糖、乳糖、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、アデノシンリン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、ピロリドンカルボン酸、グルコサミン多価アルコール、酸性ムコ多糖類、コラーゲン、セリシン、フイブロイン、グリコーゲンなど):高分子化合物(天然、半合成又は合成のポリマー):紫外線吸収剤(有機低分子系、有機高分子系及び無機系の紫外線吸収遮蔽剤):界面活性剤(ノニオン系、アニオン系、カチオン系、両イオン系、高分子系、天然系界面活性剤など):酸化防止剤、金属イオン封鎖剤、防腐剤、有機溶剤(エタノール、メタノールなど)、賦香剤(天然又は合成香料、香油など)、消臭剤、酸化剤、酸化防止剤、増粘剤、ゲル化促進剤、pH調整剤、などが挙げられる。
【0029】
また、薬剤成分としては、美白用薬剤(β-アルブチン、α-アルブチン、ビタミンC誘導体、ビタミンCなど):育毛用薬剤(血管拡張剤、栄養剤、女性ホルモン、毛根賦活剤など):肌荒れ防止用薬剤(抗炎症剤、収斂剤、清涼化剤、ビタミン、ホルモン、抗ヒスタミン剤など):ニキビ用薬剤(皮脂抑制剤、角質剥離・溶解剤、殺菌剤など):ふけ・かゆみ用薬剤(角質剥離・溶解剤、抗脂漏剤、殺菌剤、消炎剤、鎮痒剤など):腋臭防止用薬剤(制汗剤、殺菌剤、消臭剤など):ビタミン類:タンパク質(コラーゲン、セリシン、フイブロイン);ホルモン剤:アミノ酸類:血行促進剤:冷感剤:制汗剤:殺菌剤:皮膚賦活剤:多様な薬効を有する各種の抽出物やエキス類などが例示される。これらの任意成分は、本発明の目的、効果を損なわない質的、量的範囲内において、配合可能である。また上記の成分は、本発明の外用剤を得るのに用い得る代表的なものを例示したのであって、本発明の皮膚外用剤に配合し得る成分はこれらに限定されるものではない。
【0030】
本発明の化粧品の含有成分である上記水溶性キシランは、酸性多糖を主骨格とする高分子であって、動物由来のものではない。このため、化粧品として安心して使用可能で、細胞や皮膚に対する作用も穏やかである。
【0031】
また、本発明の化粧品は、皮膜形成能力、増粘効果、安定性等において優れた性質を有する化粧品組成物を用いていることから、使用時の感触、塗布時及び塗布面の感触、保湿性や安定性などにおいて優れた特性を有する。
【実施例】
【0032】
以下、実施例及び試験例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されることはない。
【0033】
試験例1(水溶性キシランの調製)
木材パルプより製造された市販粉末セルロース(日本製紙ケミカル KCフロック)800gに、水20Lを加え、室温で30分間攪拌した。この溶液を濾紙、0.45μmフィルター、0.2μmフィルターにより順次ろ過し、ろ液を水溶性キシラン溶液として回収した。フェノール硫酸法によって測定したところ、こうして得られた溶液中には、水溶性キシランが約0.45mg/mL含まれていた。この溶液を乾燥することにより、約9gのキシラン粉末が得られた。
【0034】
試験例1の水溶性キシランの分子量をゲルろ過−多角度光散乱法で測定した。測定は、ゲルろ過カラムShodex SB802MおよびSB806M、カラム温度40℃、溶離液0.1M硝酸ナトリウム、流速1mL/minで行った。検出器は、示差屈折計 Shodex RI−71(昭和電工製)、多角度光散乱検出器
DAWN−DSP(Wyatt Technology社製)を使用した。測定の結果、得られた水溶性キシランの重量平均分子量は6,100であり、数平均分子量は7,500であった。
【0035】
試験例1の水溶性キシランのH−NMR分析を行った。H−NMR分析は、試料を濃度5.0重量%で重水に溶解し、80℃で測定した。結果を図2Aおよび図2Bに示す。図2Aは、調製例1で得られた水溶性キシランの結果を示す。調製例1の水溶性キシランについて検出されたピークのケミカルシフト値が、市販のグルクロノキシラン(Institute
of Chemistry, Slovak Academy of Sciences製、数平均分子量18,000、キシロース残基:4−O−メチル−D−グルクロン酸残基=10:1;アセチル化なし;ブナ由来)について検出されたピークのケミカルシフト値と一致したことから、市販粉末セルロース中に含まれている水溶性キシランは、グルクロノキシランであり、アセチル化されていないことが分かった。図2Aにおいて、5.2ppm付近のピークは、4−O−メチル−D−グルクロン酸残基の1位炭素に結合した水素原子のピークを、4.6ppm付近のダブレットのピークは、4−O−メチル−D−グルクロン酸が結合しているキシロース残基の1位炭素に結合した水素原子のピークを、4.4ppm付近のダブレットのピークは、キシロース残基の1位炭素に結合した水素原子のピークをそれぞれ示す。そのため、(5.2ppm付近のピーク面積):(4.6ppm付近のダブレッットのピーク面積)+(4.4ppm付近のダブレットのピーク面積)を求めることにより、水溶性キシランを構成する4−O−メチル−D−グルクロン酸残基とキシロース残基のモル比を求めることができる。図2Aよりこれら面積比を測定したところ、市販セルロースから得られた水溶性キシランは、キシロース残基:4−O−メチル−D−グルクロン酸残基=14:1であることが分かった。
【0036】
また、この水溶性キシランを2.5Mトリフルオロ酢酸中、100℃、6時間加熱することにより加水分解し、生じた単糖類をHPLC(カラム:Dionex社製CarboPac
PA−1、溶離液:水、ポストカラム溶液:300mM NaOH、検出器:Dionex社製 PED−II)により確認した。その結果、アラビノースがほとんど検出されなかった(全糖量の0.2%以下)ことから、調製例1で得られた水溶性キシランは、実質的にアラビノースを含んでいないことが分かった。
【0037】
試験例2(線維芽細胞増殖試験)
試験例1の水溶性キシランを蒸留水で溶解し、オートクレーブ滅菌した後、浮遊培養用96ウェルマルチプレート(BD Bioscience製)に水溶性キシランのコート量が固形物として100μg/cm2 となるように添加し、クリーンベンチ内で無菌的に風乾させた。
【0038】
ヒト皮膚由来正常線維芽細胞「NB1RGB」(理研細胞バンクより分譲)を10%FBS(牛胎児血清)含有MEM培地で1×104 セル/mlとなるように分散し、水溶性キシランをコートした各ウェルに100μl添加した。次に、これを、37℃、5%CO2 雰囲気下で培養し、3、5日目の細胞数を下記のクリスタルバイオレット法により把握した。尚、水溶性キシランをコートしていないウェルを用い上記と同様な方法で培養したものを対照とした。
【0039】
各ウェルに25容量%グルタルアルデヒド含有PBS(−)を添加し、10分間静置して細胞を固定した後、培地を除去し、PBS(−)で1回洗浄した。次に、染色液である0.4w/v%クリスタルバイオレット含有メタノールを各ウェルに50μl添加し、30分間静置して染色した後、染色液を除去し、蒸留水で洗浄し、2時間程度風乾し、540nmにおける吸光度をBenchmark マイクロプレートリーダー(BIO-RAD社製)で測定し、6ウェルの平均値を求めたところ、表1の結果が得られた。表に示した値は、吸光度0.1当たり約2.5×103 の細胞数に相当する。
【0040】
(表1)


【0041】
表1に示されるように、水溶性キシラン含有品は線維芽細胞増殖効果を有していることが確認された。
【0042】
実施例1(化粧水)
試験例1の水溶性キシランを精製水に溶解させて組成物を形成し、以下の組成比となるよう各種成分と混合して、常法に従い、化粧水を製造した。
グリセリン 5.0g
プロピレングリコール 4.0g
エタノール 8.0g
ポリオキシエチレン(20)オレイルアルコール
0.5g
アラントイン 0.1g
メチルパラベン 0.1g
クエン酸 0.01g
クエン酸Na 0.1g
香料 0.05g
水溶性キシラン 1.0g
精製水 81.14g
【0043】
使用効果試験1
女性パネル20名を1群10名に分け、一方の群には水溶性キシランを配合した実施例1に記載の化粧水(本発明品)、他方の群には水溶性キシランを配合せず精製水で置き換えて調製した化粧水(比較品)をブラインドにて3ヵ月間使用させ、使用前後の皮膚のしわ、きめの変化を写真撮影及び皮膚表面のレプリカにより観察し、改善効果を評価したところ、表2の結果が得られた。尚、改善効果は、「改善」、「やや改善」、「変化なし」の三段階で評価した。
【0044】
(表2)


【0045】
表2の結果に示されるように、水溶性キシランを配合させた化粧品は、皮膚の老化症状の改善に対して、良好な効果を有することがわかった。
【0046】
実施例2(乳液)
下記(A)を油相部、および試験例1の水溶性キシランを含有せしめた(B)を水相部として、それぞれ約70℃で均一に溶解した後、AにBを添加しながら予備乳化し、次にホモミキサーにて均一に乳化した。その後、攪拌しながら30℃まで冷却し乳液を得た。
(A)
1)ステアリン酸 2.5g
2)セチルアルコール 1.5g
3)ワセリン 5.0g
4)流動パラフィン 10.0g
5)ポリオキシエチレン(10)モノオレエート
2.0g
6)香料 0.05g
(B)
1)水溶性キシラン 1.0g
2)カルボキシビニルポリマー 0.2g
3)プロピレングリコール 5.0g
4)メチルパラベン 0.1g
5)精製水 72.65g
【0047】
使用効果試験2
20〜40代の女性パネル40名を一群20名にわけ、一方の群には実施例2に記載の水溶性キシランを配合した乳液(本発明品)、他方の群には水溶性キシラン配合せず精製水に置き換えて調製した乳液(比較品)をブラインドにて1日2回(朝・夕)の割合で1ヵ月間使用させ、各乳液を使用前後のTEWL値(経表皮水分喪失量)をテヴァメーターを用いて測定し、TEWL値の低減率を算出して、保湿効果を評価した。評価結果を表3に示す。
TEWL値の低減率は、化粧水使用前後のTEWL値、TEWLAおよびTEWLBからTEWL値の低減率が20%以上の場合を「有効」、低減率が20%未満の場合を「無効」とした。試験結果は、20人中の「有効」であったパネルの人数を示す。
【0048】
TEWL値低減率=(1−TEWLB/TEWLA )×100(%)
但し、TEWLA:使用前のTEWL値TEWLB:使用後のTEWL値
【0049】
(表3)


【0050】
表3に示されるように、本発明の水溶性キシランを配合せしめた化粧品は、優れた保湿効果を有することがわかった。
【0051】
本発明の化粧品用組成物は、酸性多糖である水溶性キシランを構成成分とするものであって、化粧品中の成分の分散性を向上させることにより好ましい物性の化粧品を提供できる。さらに水溶性キシランは線維芽細胞増殖効果を奏する一方、細胞や皮膚に対する作用が穏やかで、安心して使用可能なものである。また増粘効果や溶液安定性に優れる水溶性キシランを用いていることから、皮膜形成能力、増粘効果、安定性等において優れた性質を奏する。
【0052】
そして、本発明の化粧品は、上記のような優れた特性を有する化粧品用組成物を含んで製造されるものであって、使用時の感触や塗布時及び塗布面での感触、保湿性や分散性等において優れた効果を奏するものである。
【0053】
また、水溶性キシランが溶解形態で含有されていることから、化粧品用組成物として適切な形態での使用、例えば、液状、乳液状、クリーム状、ゲル状、ムース状、ペースト状、固形状、粉末状又は多層状での使用が可能になっている。
【0054】
本発明の化粧品用組成物又は化粧品は、従来適用がみられなかった水溶性高分子材料を、化粧品として適切な形態で初めて使用可能とするものであり、消費者のニーズに合致した、優れた製品を提供するものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性キシランを含有することを特徴とする化粧品用組成物。
【請求項2】
前記水溶性キシランの主鎖の数平均重合度が6以上5000以下である、請求項1に記載の化粧品用組成物。
【請求項3】
前記水溶性キシランが、キシロース残基またはアセチル化キシロース残基と、アラビノース残基と4−O−メチルグルクロン酸残基とからなる、請求項1に記載の化粧品用組成物。
【請求項4】
前記水溶性キシランにおいて、アラビノース残基1に対してキシロース残基およびアセチル化キシロース残基の合計が20〜100の割合である、請求項3に記載の化粧品用組成物。
【請求項5】
前記水溶性キシランが、キシロース残基またはアセチル化キシロース残基と4−O−メチルグルクロン酸残基とからなる、請求項1に記載の化粧品用組成物。
【請求項6】
前記水溶性キシランが、4−O−メチルグルクロン酸残基1に対してキシロース残基およびアセチル化キシロース残基の合計が1〜20の割合である、請求項5に記載の化粧品用組成物。
【請求項7】
前記水溶性キシランの数平均分子量が7,000以上100万以下である、請求項1に記載の化粧品用組成物。
【請求項8】
前記水溶性キシランが、木本性植物由来のキシランである、請求項1に記載の化粧品用組成物。
【請求項9】
前記水溶性キシランが、広葉樹由来のキシランである、請求項8に記載の化粧品用組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の化粧品用組成物を含んでなる化粧品。
【請求項11】
液状、乳液状、クリーム状、ゲル状、ムース状、ペースト状、固形状、粉末状及び多層状からなる群から選ばれるいずれかの形態である請求項10に記載の化粧品。
【請求項12】
化粧品が、ローション、化粧水、乳液、クリーム、パック剤、美容液、洗顔料、メーキャップ剤、ヘアケア用品、ボディーソープ、入浴剤及び香料からなる群から選ばれるいずれかである請求項10又は11に記載の化粧品。


【公開番号】特開2009−196915(P2009−196915A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38812(P2008−38812)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000000228)江崎グリコ株式会社 (187)
【Fターム(参考)】