説明

化粧料塗布用シート

【課題】衛生的で操作性が良く、化粧料を肌に均一に塗布する化粧料塗布用シートを提供する。
【解決手段】化粧料を肌に塗布するための化粧料塗布用シートであって、前記化粧料を含浸する不織布と、前記不織布を所定の指の第3関節から指先に対応する領域に着脱自在に貼り付け可能とする粘着部とを有することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料塗布用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、メーキャップ化粧料やスキンケア化粧料を顔に塗布する方法として、例えば指を用いたり、スポンジやブラシ等の化粧料塗布具を用いたりしながら、顔に塗布していく塗布方法が知られている。
【0003】
例えばメーキャップ化粧料を、指を用いて塗布する場合には、細部への塗布が手軽に調整できる一方、肌へのメーキャップ化粧料の付着量が多くなって、ムラになりやすく、手が汚れるといった問題がある。また、スポンジを用いて塗布する場合には、メーキャップ化粧料を肌に薄くのばし、肌になじませやすい一方、スポンジ表面の凹凸にメーキャップ化粧料が吸収されてしまうため、肌にツヤが出にくく、スポンジを洗う手間もかかるといった問題がある。更に、ブラシを用いて塗布する場合には、使用者のテクニックの差により仕上がりが大きく変わり、ブラシを洗う手間もかかるといった問題があった。
【0004】
そこで、従来では、例えばメーキャップ化粧料で手や指を汚さないように、使い捨てにすることで衛生的な使用を可能とする筒状袋体の化粧用具が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、従来では、指先に接着したアプリケータによりファンデーション等を顔に塗布する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−079016号公報
【特許文献2】特開2007−175524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1に示す筒状袋体の化粧用具は、筒状袋体に人差し指、中指、薬指を挿入しただけの状態でメーキャップ化粧料を塗布する。したがって、特許文献1の場合には、筒状袋体と各指との隙間からずれが生じる場合があり、各指の塗布動作とは異なる動きをする場合があるため操作性が悪く、例えば細かい部分を塗布するような場合には適していなかった。
【0007】
また、上述した特許文献2に示すアプリケータは、例えば人差し指の指先部分のみ覆う形状であるため、例えば頬全体を、メーキャップ化粧料を滑らせたり、パッティングしたりしながら塗布するような場合等には適していなかった。また、特許文献2の場合には、アプリケータの塗布面からメーキャップ化粧料がはみ出して手が汚れてしまう場合や、使用するごとにアプリケータを洗う手間もかかった。
【0008】
更に、上述した筒状袋体に用いられる綿糸やコットン不織布、又はアプリケータの塗布面に用いられる単なる不織布等は、塗布表面の平滑性を考慮していないため、メーキャップ化粧料を薄く均一に塗布することができない。したがって、メーキャップ化粧料のきれいな仕上がりを実現できないといった問題も生じた。
【0009】
なお、上述した問題は、例えばリキッドファンデーション等の液状のメーキャップ化粧料やパウダリーファンデーション等の粉末状のメーキャップ化粧料を塗布する場合にも生じる他、化粧水、乳液等のスキンケア化粧料を塗布する場合にも生じる。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、衛生的で操作性が良く、化粧料を肌に均一に塗布する化粧料塗布用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために、化粧料を肌に塗布するための化粧料塗布用シートであって、前記化粧料を含浸する不織布と、前記不織布を所定の指の第3関節から指先に対応する領域に着脱自在に貼り付け可能とする粘着部とを有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明において、前記不織布は、繊維繊度が0.01〜2.00dtexであり、メルトブローン製法又はスパンレース製法で作製されることを特徴とする。また、前記不織布は、引張強度が3N/inch以上であり、前記スパンレース製法のうち湿式スパンレース製法で作製されることを特徴とする。また、本発明において、前記粘着部は、前記化粧料を含浸しない芯材を含むことを特徴とする。また、本発明の化粧料塗布用シートは、外形の一部にアーチ形状を含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明において、前記化粧料は、メーキャップ化粧料又はスキンケア化粧料を含み、前記メーキャップ化粧料は、液状、クリーム状、又は粉末状であり、前記スキンケア化粧料は、化粧水又は乳液であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、衛生的で操作性が良く、化粧料を肌に均一に塗布することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係る化粧料塗布用シートを説明するための図である。
【図2】本実施形態に係る化粧料塗布用シートの装着例を示す図である。
【図3】本実施形態に係る化粧料塗布用シートの形状を説明するための図である。
【図4】本実施形態に係る化粧料塗布用シートの具体的な形状を示す図である。
【図5】使用評価テストに用いた不織布の種類を説明するための図である。
【図6】図5に示す不織布を用いた使用評価テストの結果を示す図である。
【図7】本実施形態に係る粘着部の芯材の厚さに関する使用評価テストの結果を示す図である。
【図8】本実施形態に係る粘着層の粘着力に関する使用評価テストの結果を示す図である。
【図9】本実施形態に係る化粧料塗布用シート、指、スポンジをそれぞれ用いたときの使用性評価の結果を示す図である。
【図10】本実施形態に係る化粧料塗布用シートの使用方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<本発明について>
本発明は、例えば化粧料を肌に塗布するための化粧料塗布用シートであって、化粧料を含浸する不織布と、不織布を所定の指の第3関節から指先に対応する領域に着脱自在に貼り付け可能とする粘着部とを有する。なお、不織布は、例えば、繊維繊度が約0.01〜2.00dtexであり、メルトブローン製法又はスパンレース製法で作製した不織布を用いることが好ましく、更に、引張強度が約3N/inch以上であることが好ましい。また、不織布は、スパンレース製法のうち湿式スパンレース製法で作製されることが好ましい。
【0017】
また、粘着部は、例えば化粧料を含浸しない芯材を含み、化粧料塗布用シートは、例えば外形の一部にアーチ形状を含むと良いが、本発明においては、これに限定されるものではない。
【0018】
なお、上述した化粧料には、例えば液状やクリーム状、粉末状のメーキャップ化粧料、スキンケア化粧料を広く含む。
【0019】
また、液状メーキャップ化粧料には、液状ファンデーション(例えば、リキッド、クリーム等を含む)、液状化粧下地、その他液状のチーク等を含み、粉末状のメーキャップ化粧料には、例えばパウダリーファンデーション等を含む。また、スキンケア化粧料には、例えば化粧水、乳液等を含む。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、一例として、リキッドファンデーションを用いて、使用者の肌(顔)に塗布する例について説明する。
【0021】
<化粧料塗布用シートについて>
図1は、本実施形態に係る化粧料塗布用シートを説明するための図である。図1(A)は、本実施形態に係る化粧料塗布用シートの外観(例えば、指との接触面側)を示している。また、図1(B)は、本実施形態に係る化粧料塗布用シートを指に貼り付けた状態を示している。また、図1(C)は、本実施形態に係る化粧料塗布用シートの断面図を示している。
【0022】
図1(A)に示すように、化粧料塗布用シート100は、不織布10と粘着部20とを有するように構成される。なお、粘着部20は、不織布10よりも僅かに内側(例えば、数ミリ程度)の領域に設けられているが、不織布10と同一の領域に設けても良く、一部(例えば、指先部分等)のみ不織布10より内側の領域に設けても良い。
【0023】
化粧料塗布用シート100の全体形状は、例えば略長方形とする。ここで、長方形を形成する長辺L(図1(A)に示す縦方向)、短辺S(図1(A)に示す横方向)は、使用者の指の形や大きさにより任意に設定することができるが、例えばリキッドファンデーションを塗布するときに使用する所定の指の第3関節よりも上の領域から指先に対応する領域を覆う長さとすると良い。また、化粧料塗布用シート100は、所定の指の指先全体を覆うように、外形の一部に、例えばアーチ形状のような丸みを含むと良い。
【0024】
図1(B)に示すように、化粧料塗布用シート100は、粘着部20を使用者の指に直接貼り付けて用いられる。図1(B)の例では、化粧料塗布用シート100は、粘着部20により、不織布10を、使用者の右手の中指及び薬指の第3関節から指先に対応する領域に着脱自在に貼り付けることが可能である。
【0025】
化粧料塗布用シート100は、使用者の顔にリキッドファンデーションを塗布する場合、不織布10にリキッドファンデーションを含浸させて用いる。また、化粧料塗布用シート100は、使用後は、指から取り外して使い捨てにする。これにより、化粧料塗布用シートは、衛生的に使用することが可能となる。
【0026】
図1(C)に示すように、化粧料塗布用シート100において、粘着部20は、粘着層21と、芯材22と、粘着層23とを有するように構成される。
【0027】
粘着部20は、粘着層21を指に接着させることで、不織布10を指に着脱可能とする。また、芯材22は、粘着層21と粘着層23との間に挟まれ、不織布10に含浸したリキッドファンデーションの浸透を遮断して、手を汚さないようにする。粘着層23は、不織布10と粘着して、粘着部20と不織布10とを一体化させる。
【0028】
<化粧料塗布用シート100の装着例>
次に、図2を用いて、上述した化粧料塗布用シート100を、例えば右手の中指及び薬指に貼り付け、装着したときの状態について説明する。図2は、本実施形態に係る化粧料塗布用シートの装着例を示している。
【0029】
なお、図2(A)は、化粧料塗布用シートを装着した状態を掌側から見た図であり、図2(B)は、図2(A)の中指及び薬指の装着部分を拡大した図である。また、図2(C)は、化粧料塗布用シートを装着した状態を手の甲側から見た図であり、図2(D)は、図2(C)の中指及び薬指を拡大した図である。また、図2(E)は、化粧料塗布用シートを装着した状態を中指の側面側から見た図である。
【0030】
本実施形態では、化粧料塗布シート100を使用者の指に貼り付ける場合、粘着部20を使用者の所定の指の所定領域に当接させる。これにより、例えば、図2(A)、図2(B)に示すように、化粧料塗布用シート100は、不織布10が使用者のリキッドファンデーションを顔に塗布するときに使用する中指及び薬指の第3関節よりも上の領域から指先に対応する領域を覆った状態となる。
【0031】
また、図2(C)、図2(D)に示すように、化粧料塗布用シート100は、中指及び薬指の指先からわずかにはみ出した状態となる。
【0032】
このように、化粧料塗布用シート100は、リキッドファンデーションの塗布に使用する中指及び薬指の指先に対応する領域まで覆っているため、操作性が向上し、例えば指先の端部付近(例えば指先から爪に接する領域)に接着された不織布10により、顔の細部を容易に塗布することが可能となる。
【0033】
また、化粧料塗布用シート100は、中指及び薬指の第3関節よりも上の領域を覆っているため、例えば第3関節から上の領域に接着された不織布10により、顔の頬等の広い領域を滑らせながら塗布することが可能となる。
【0034】
また、図2(E)に示すように、化粧料塗布用シート100は、不織布10が中指の側面領域を一部覆った状態となっている。また、同様に、化粧料塗布用シート100は、不織布10が薬指の側面領域も一部覆った状態となっている。したがって、中指及び薬指全体を使用してリキッドファンデーションを塗布しているときであっても、リキッドファンデーションが不織布10に覆われた指の側面領域を越えることはなく、手が汚れることを防ぐことが可能となる。
【0035】
また、上述したように、化粧料塗布用シート100は、外形の一部が、例えば中指及び薬指の指先全体に沿ったアーチ形状に形成されている。したがって、指先に沿って不織布10を覆った場合でも、図2(B)の点線Aに示す塗布面に、不織布10の折から生じるシワや角部が形成されないため、顔の細部を塗布しやすくすることが可能となる。
【0036】
<化粧料塗布用シート100の形状>
次に、図3及び図4を用いて、上述した化粧料塗布用シート100の具体的な形状について説明する。図3は、本実施形態に係る化粧料塗布用シートの形状を説明するための図である。また、図4は、本実施形態に係る化粧料塗布用シートの具体的な形状を示している。
【0037】
また、図3(A)は、従来の形状からなる化粧料塗布用シートの一例を示している。また、図3(B)は、上述のように略長方形にした化粧料塗布用シートの一例を示している。
【0038】
図3(A)に示すように、化粧料塗布用シート101として、例えば人差し指から小指に対応する領域全体を覆うことができる大きさの長方形を用いる。
【0039】
ここで、化粧料塗布用シート101を使用した際のアンケートや観察結果等によると、リキッドファンデーションを顔に塗布する場合に使用する指の領域は、化粧料塗布用シート101のうち、点線領域Bに示す中指と薬指の第3関節よりも上の領域から指先に対応する領域の使用率が高かった。また、中指や薬指は、肌が柔らかく、表面の凹凸が少なくなめらかであるため、通常、リキッドファンデーション等の塗布に使用されることが多い。
【0040】
したがって、化粧料塗布用シート101を用いた場合には、リキッドファンデーションの塗布に使用しない部分(例えば人差し指や小指等を覆う部分)にまで余分なリキッドファンデーションが浸透してしまうことになり、無駄が生じることとなる。また、化粧料塗布用シート101は、このような余分なリキッドファンデーションを顔に塗布してしまうため、例えば筋ムラが生じてきれいに仕上がらない場合が生じる。
【0041】
また、化粧料塗布用シート101は、指先の形状に沿わない単なる長方形であるため、不織布に覆われた指先を顔の細かい部分を塗布する塗布面とする場合、化粧料塗布用シート101を指先に沿って爪先方向へ折り込む必要が生じる。この結果、図3(A)の矢印に示す指先の塗布面に、化粧料塗布用シートの折シワや角部が生じてしまう。このような折シワや角部は、肌への密着不足から筋ムラ等を生じさせ、顔の細部を塗布しにくくする。
【0042】
そこで、例えば、図3(B)に示すように、化粧料塗布用シート100は、上述した点線領域Bを覆う形状となるよう、長辺Lと短辺Sを設定する。また、化粧料塗布用シート100は、顔の細部の塗布に使用する指先の形状に沿うように、図3(A)の矢印に示す角部となる2つの部分に丸みをもたせて、例えば外形の一部をアーチ形状とすると良い。
【0043】
これにより、化粧料塗布用シート100は、肌が柔らかでなめらかな中指と薬指を用いて、リキッドファンデーションをきれいに均一に仕上げると共に、指先に沿った形状により、無駄な折りシワや角部が生じないため、細部まできれいに仕上げることが可能となる。
【0044】
上述したように、化粧料塗布用シート100は、例えば使用者がリキッドファンデーションを塗布する手の中指及び薬指の第3関節から指先に対応する領域を覆うように、予め形状が設定されるのが好ましい。
【0045】
具体的には、図4に示すように、例えば長辺L1は、約55〜75mm(好ましくは約65mm)とし、短辺S1は、約40mmとする。曲率半径Rは、例えば指先形状に対応させて設定するのが好ましく、上述したように、小さすぎると指に沿った形状とならず折りシワ等が発生するため、下限をR10とする。また、曲率半径Rは、大きすぎると面積が減って、指の先端が覆えなくなるため、上限をR30とし、好ましくはR20とする。曲率半径RをR20とする場合、アーチ形状が始まる部分までの長辺L2は、約45mmとなる。
【0046】
なお、化粧料塗布用シート100は、例えばリキッドファンデーションを塗布する指として、人差し指から薬指までの指1本〜3本まで固定して、各指の第3関節よりも上の領域から指先を覆う形状としても良く、例えば指1本〜4本まで固定して、各指の第3関節よりも上の領域から指先を覆う形状としても良い。このように、例えば指1本を用いる場合、短辺S1は約20mmを下限とし、指4本を用いる場合、短辺S1は約80mmを上限とすると良い。
【0047】
また、化粧料塗布用シート100は、指先に沿う形状が含まれるように、例えば楕円、円形等の形状としても良い。なお、化粧料塗布用シート100は、予め設定された形状とするのではなく、粘着部20を保護する保護シートを含む化粧料塗布用シートとして形成しておき、使用者が、上述した点線領域Bを覆いながら、指先の形に沿った形状に、その都度切り取って用いても良い。
【0048】
<不織布10について>
次に、図5を用いて、上述した化粧料塗布用シート100の不織布10を選出するために検討した不織布について説明する。図5は、使用評価テストに用いた不織布の種類を説明するための図である。
【0049】
図5に示すように、使用評価テストには、種類の異なる代表的な不織布5種類を用いて、化粧料塗布用シート100の不織布10を検討した。5種類のサンプルには、例えば、「エアーレイド」、「PET」、「スパンレース」、「極細の湿式不織布」、「メルトブローン」を用いた。
【0050】
「エアーレイド」は、例えば繊維仕様がパルプ3〜5dtex(98%)、アクリル系バインダ(2%)、繊維配列がエアーレイド、製法がエアーレイド製法、接着方法がバインダ塗布、目付け100g/mとする不織布である。なお、エアーレイド製法とは、例えば一定の長さに切断された合成、天然繊維を気流搬送し、混合して、平滑面に配列して、熱、加圧、接着剤のいずれか、又は複合した手段により繊維間が接着された製法を示す。
【0051】
「PET」は、例えば繊維仕様がコットン4〜10dtex(80%)、低融点PET(20%)、繊維配列が乾式、製法が乾式スパンレース製法、接着方法がウォータージェット(水流交絡)、目付け60g/mとする不織布である。なお、乾式スパンレース製法とは、例えば一定の長さに切断された合成、天然繊維を、液体を用いずに開繊、混合、定量均一化して、シート状にした後、高圧の水流により近接する繊維同士を絡ませる製法を示す。
【0052】
「スパンレース」は、例えば繊維仕様がコットン4〜10dtex(60%)、レーヨン4dtex(40%)、繊維配列が乾式、製法が乾式スパンレース、接着方法がウォータージェット(水流交絡)、メッシュパターン賦与、目付けが40g/mとする不織布である。
【0053】
「極細の湿式不織布」は、例えば繊維仕様がPET約0.1dtex(100%)、繊維配列が湿式、製法が湿式スパンレース製法、接着方法がウォータージェット(水流交絡)、目付けが約50g/mとする不織布である。なお、湿式スパンレース製法とは、例えば一定の長さに切断された合成、天然繊維を、液体中に分散、混合し、鋤き上げながら定量均一化しシート状にした後、高圧の水流により近接する繊維同士を絡ませる製法を示す。
【0054】
「メルトブローン」は、例えば繊維仕様がPP約0.05dtex(100%)、繊維配列がメルトブローン(溶融紡糸)、製法がメルトブローン製法、接着方法なし、すなわち、溶融状態から冷却時の自己接着、目付けが約15g/mとする不織布である。なお、メルトブローン製法とは、例えば熱可塑性樹脂を溶融紡糸し、平滑面に配列し、シート状にしたものであり、紡糸後、冷却する際の繊維同士の固着のみで繊維間が接着する製法を示す。
【0055】
上述した5種類のサンプルは、繊維仕様、繊維配列、製法、接着方法、目付け等の違いにより、例えば不織布の密度の面から比較すると、「エアーレイド」がより密度が低く、「メルトブローン」がより密度が高い。また、不織布表面の平滑性の面から比較すると、「エアーレイド」がより劣っている一方、「メルトブローン」がより優れているといえる。
【0056】
<不織布10の使用評価テストによる最適条件の選出>
次に、上述した5種類のサンプルを用いて、本実施形態に最適な不織布10を選出するために実施した使用評価テストについて説明する。図6は、図5に示す不織布を用いた使用評価テストの結果を示している。
【0057】
なお、使用評価テストは、上述した化粧料塗布用シート100の不織布10に、図5に示す不織布を用いて、リキッドファンデーションを塗布しているときの使用感評価を、20代〜30代の一般女性を対象に実施したものである。また、図5に示す不織布の他、通常使用されるスポンジ(ウレタン、9mm厚)も同様に用いて、使用感評価を実施した。なお、使用評価テストに用いたリキッドファンデーションは、油相:20〜40%、粉末:10〜30%、水相:20〜50%である。
【0058】
この使用評価テストでは、リキッドファンデーションを塗布しているときの「塗布中のなめらかさ」、「塗布具の肌当たり」、リキッドファンデーションを塗布した後の「カバー力」、「仕上がりのツヤ」、「仕上がりの均一さ」、「全体評価」を検討項目とする評価を行った。具体的には、各検討項目に対して、上述した一般女性10名(n=10)に、−3〜+3の7段階(−3、−2、−1、0、1、2、3)で評価してもらい、各検討項目に対する評価点の平均点を算出して、「−3〜−1.5未満→評価×」、「−1.5〜0未満→評価△」、「0〜1.5未満→評価○△」、「1.5〜2.5→評価○」、「2.5〜3→評価◎」を評価基準としたものである。
【0059】
図6に示すように、「塗布中のなめらかさ」は、「スポンジ」、「極細の湿式不織布」、「メルトブローン」が「評価○(1.5〜2.5)」であり、「スポンジ」、「極細の湿式不織布」、「メルトブローン」が、肌に対してなめらかであるという評価結果が得られた。
【0060】
また、「塗布具の肌当たり」については、「極細の湿式不織布」、「メルトブローン」が「評価◎(2.5〜3)」であり、「極細の湿式不織布」、「メルトブローン」が、肌当たりが非常に良いという評価結果が得られた。
【0061】
また、「カバー力」については、「極細の湿式不織布」、「メルトブローン」が「評価◎(2.5〜3)」であり、「極細の湿式不織布」、「メルトブローン」が、カバー力が良いという評価結果が得られた。
【0062】
また、「仕上がりのツヤ」については、「メルトブローン」が「評価◎(2.5〜3)」であり、「極細の湿式不織布」が「評価○(1.5〜2.5)」であり、「メルトブローン」が、仕上がりのツヤが非常に良く、「極細の湿式不織布」も仕上がりのツヤが良いという評価結果が得られた。
【0063】
また、「仕上がりの均一さ」については、「極細の湿式不織布」が「評価◎(2.5〜3)」であり、「スポンジ」が「評価○(1.5〜2.5)」であり、「極細の湿式不織布」がリキッドファンデーションを肌に非常に均一に塗布でき、「スポンジ」も均一に塗布できるという評価結果が得られた。
【0064】
更に、上述した各検討項目に対する評価を纏めた「全体評価」については、「極細の湿式不織布」が「評価◎(2.5〜3)」、「スポンジ」が「評価○(1.5〜2.5)」、「メルトブローン」が「評価○△(0〜1.5未満)」であり、「極細の湿式不織布」の評価が最も高く、次に「スポンジ」の評価が高く、次に「メルトブローン」の評価が高かった。
【0065】
ここで、上述した「極細の湿式不織布」は、繊維が細く、密度が高いことから、「スポンジ」よりもリキッドファンデーションを含浸する量が少なく、肌へのリキッドファンデーションの付着量が増えるため、「スポンジ」よりもカバー力が高かったといえる。
【0066】
また、「極細の湿式不織布」は、繊維が細く、平滑性が比較的高いため、リキッドファンデーション塗布時のムラが少なく、均一な仕上がりとなり、最も評価が高かったといえる。更に、「極細の湿式不織布」は、製法上、高圧の水流により近接する繊維どうしを絡ませているため、「メルトブローン」よりも強度があり、肌との摩擦で伸びるヨレや局所的なシワが発生せず、筋状のムラが生じないため、仕上がりの均一さの評価が高かったといえる。
【0067】
「メルトブローン」は、繊維が細く、密度が高いことから、「スポンジ」よりもリキッドファンデーションを含浸する量が少なく、肌へのリキッドファンデーションの付着量が増えるため、「スポンジ」よりもカバー力が高かったといえる。
【0068】
また、「メルトブローン」は、繊維が細く、製法上の理由から連続繊維であり、繊維端面が存在しない。したがって、表面の平滑性が高いため、例えばリキッドファンデーションに含まれる板状のパール材が肌表面に平行に付着しやすく、反射することで仕上がりのツヤが最も高かったといえる。
【0069】
一方、「メルトブローン」は、製法上、繊維配置後に接着のための工程がないため、上述したように、強度が弱い。そのため、リキッドファンデーション塗布時に肌との摩擦で不織布が伸びてヨレてしまい、局所的にシワが発生し、塗布用シート全体に凹凸が生じる場合がある。このような場合には、シワ等による肌への密着不足により筋状のムラが生じことがあるため、仕上がりの均一感に対する評価が下がったといえる。
【0070】
なお、「スパンレース」、「PET」は、コットンの繊維が太く(繊維繊度:4〜10dtex)、表面平滑性は比較的低い。また、製法上の理由から、太い繊維であるコットンの切断された繊維端面が一定の割合で表面に存在するため、肌に対してざらつきが生じやすい。また、水流交絡処理により繊維間距離にバラつきが生じてしまうため、ミクロでの平滑性が劣り、評価が低い結果になったものと推測される。
【0071】
なお、上述したリキッドファンデーション(外相が油相、すなわち疎水性の性質を持つ)との相性を考慮して、親水、疎水のバランスを変えて比較例の評価を行ったが、平滑性の影響が大きく作用し、評価は上がらなかった。
【0072】
「エアーレイド」は、パルプの繊維がコットンより細い。しかしながら、製法上気流で搬送しやすくするために繊維長がかなり短く、切断された繊維端面がかなりの割合で表面に存在するため、ざらつきが生じやすい。また、「エアーレイド」は、パルプ繊維剛性の高さから、使用時の力でも凹凸が解消しにくく、助長されたため、「塗布中のなめらかさ」、「仕上がりの均一さ」の両面で評価が低い結果になったものと推測される。
【0073】
また、上述したリキッドファンデーションとの相性を考慮して、親水性を高めた比較例の評価を行ったが、平滑性の影響が大きく作用し、評価は上がらなかった。
【0074】
以上の通り、使用評価テストでは、図5に示す不織布のうち「極細の湿式不織布」が最も高い評価を得た。したがって、最適な不織布10として、例えば「極細の湿式不織布」を用いると良い。
【0075】
<不織布10の強度について>
次に、不織布10の強度について説明する。上述した「メルトブローン」のように、例えば強度が不十分な場合には、塗布時に肌との摩擦で不織布が伸びてヨレてしまい、局所的なシワが発生し、塗布用シート全体に凹凸が形成されることがある。これにより、仕上がりに筋状のムラが生じ、仕上がりの均一感の低下につながる場合が生じる。
【0076】
そこで、「メルトブローン」の引張強度から、不織布10の強度を検討する。例えば、力を定量的に検知するロードセル等のセンサを搭載した一般的な引張試験機を用いて、つかみチャック間50mm、試験片サンプル幅1inch、速度100mm/minの条件で引張強度を測定する。測定点は、5%伸張時強度、10%伸張時強度、20%伸張時強度、最大強度とし、最大強度時の伸度も検討する。
【0077】
上述した測定の結果、「メルトブローン」(n=5)の平均は、それぞれ1.09N、2.10N、2.43N、2.59N、33.6%伸びとなり、「メルトブローン」が破れる直前の最大強度としては、平均2.59Nとの結果が得られた。なお、「極細の湿式不織布」(n=5)の平均は、それぞれ2.43N、8.16N、17.43N、41.6N、48.0%伸びとなり、「メルトブローン」の最大強度2.59Nに対して、最大強度41.6Nという結果が得られた。
【0078】
ここから、上述した「メルトブローン」が、少なくとも3N/inch以上、余裕を見て10N/inch以上の引張強度を備えている場合、塗布時に肌との摩擦により不織布が伸びてヨレが生じる状態を避け、仕上がりの均一感を得ることが可能といえる。
【0079】
<不織布10の選出について>
次に、不織布10の選出について説明する。上述した図5に示す「メルトブローン」(繊維仕様:PP約0.05dtex)と「エアーレイド」(繊維仕様:パルプ3dtex)とを比較すると、「エアーレイド」の方が不織布表面の平滑性が劣る。
【0080】
不織布表面の平滑性とは、例えば不織布表面の凹凸の状態を意味し、不織布の表面に凹凸がある場合には、肌との接触の仕方に局所的な差異が生じるため、リキッドファンデーションが多めに塗布されたり、少なめに塗布されたりして、いわゆるムラを発生させる。
【0081】
この不織布表面の平滑性は、例えば繊維が太い細い等の繊維繊度等に影響され、繊維繊度が約2.00dtexを超えるとスジムラを発生する場合がある。
【0082】
一方、繊維が細くなるにつれて、一般的に不織布の強度が低下する。すなわち、繊維1本1本の強度が低くなるため、局所的に繊維切れや交絡はずれ等が発生して、不織布の一部が伸びたり切れたりして、弛んだ部分がシワになり、シート全体に凹凸が生じて、塗布時のムラの発生につながる。具体的には、繊維繊度が約0.01dtexを下回る場合には、伸びや切れが顕著に発生してしまう。
【0083】
そこで、不織布10に用いる繊維繊度としては、約0.01〜2.00dtexを目処に設定すると良い。
【0084】
また、図5の「スパンレース」や「PET」は乾式スパンレース製法により作製され、「極細の湿式不織布」は湿式スパンレース製法によりされているが、乾式スパンレース製法と湿式スパンレース製法とは、液体を用いて繊維を分散させるか否かにより製法が異なる。
【0085】
乾式スパンレース製法の場合には、一定の長さに切断された合成、天然繊維を、水を使わずに、ほぐして均一に配置するため、トゲのような突起のついた回転体の上で物理的にかきとりながら繊維を分散させる。この工程上、乾式スパンレース製法で用いられる繊維は、細すぎると固まったり、切れてしまったりするため、繊維繊度としては、約1.00dtexが下限となる。しかしながら、繊維繊度が、約1.00〜2.00dtex程度の細い繊維を用いた乾式スパンレースであれば、「スパンレース」や「PET」よりも表面平滑性が優れた不織布を得ることが可能となる。
【0086】
以上のことから、本実施形態では、化粧料塗布用シート100の不織布10には、例えば、繊維繊度が、約0.01〜2.00dtexであり、メルトブローン製法又はスパンレース製法で作製した不織布を用いるものとする。また、不織布10は、引張強度が3N/inch以上とすることが好ましく、スパンレース製法のうち湿式スパンレース製法で作製されることがより好ましい。
【0087】
このように、本実施形態に係る不織布10を用いることで、塗布中になめらかさや肌当たりの良さを感じながら、リキッドファンデーションのカバー力やツヤ、均一感のある仕上がりを実現することが可能となる。
【0088】
<粘着部20の芯材22の材質について>
次に、上述した化粧料塗布用シート100を構成する粘着部20の芯材22について説明する。粘着部20の芯材22は、リキッドファンデーション等の液状メーキャップ化粧料の浸透を遮断し、液状メーキャップ化粧料が含浸しないための材質を用いる。
【0089】
例えば、芯材22の材質としては、炭化水素系プラスチック(非極性プラスチック)、極性ビニル系プラスチック(ビニル基を持つモノマー重合体)、線状構造プラスチック(エンジニアリング・プラスチック)、セルロース系プラスチック(セルロース誘導体)、シリコーン系樹脂、熱可塑性エラストマー等を用いると良い。
【0090】
炭化水素系プラスチックには、結晶性のものとして、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、結晶性ポリブタジエン等を用いると良い。また、非晶性のものとして、例えばポリスチレン、ポリブタジエン、スチレン・ブタジエン樹脂等を用いると良い。
【0091】
また、極性ビニル系プラスチックには、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA、AS、ABS、アイオノマー、AAS、ACS)、ポリメチルメタクリレート(アクリル)、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンポリテトラフルオロエチレン共重合体等を用いると良い。
【0092】
また、線状構造プラスチックには、ポリアセタール(ポリオキシメチレン)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート(Uポリマー)、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリオキシベンゾイル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、その他液晶ポリエステル等を用いると良い。
【0093】
また、セルロース系プラスチックには、例えば酢酸セルロース、酢酪酸セルロース、セロファン、セルロイド等を用いると良い。また、熱可塑性エラストマーには、スチレン・ブタジエン系、ポリオレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、1,2−ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル系、アイオノマー等を用いると良い。
【0094】
上述したように、粘着部20の芯材22に、液状メーキャップ化粧料の浸透を遮断し、液状メーキャップ化粧料が含浸しない材質を用いることで、化粧料塗布用シート100を手に貼り付けて使用した場合でも、手を汚さないまま、液状メーキャップ化粧料を塗布することが可能となる。
【0095】
<粘着部20の芯材22の厚さについて>
次に、図7を用いて、上述した粘着部20における芯材22の厚さについて説明する。図7は、本実施形態に係る粘着部の芯材の厚さに関する使用評価テストの結果を示している。
【0096】
なお、使用評価テストは、粘着部20における芯材22の厚さ条件を決定するため、上述した化粧料塗布用シート100の芯材の厚さ条件を変えたときの使用感評価を、20代〜30代の一般女性を対象に実施したものである。また、通常使用されるスポンジ(ウレタン、9mm厚)も同様に用いて、使用感評価を実施した。なお、使用評価テストに用いたリキッドファンデーションは、油相:20〜40%、粉末:10〜30%、水相:20〜50%である。
【0097】
この使用評価テストでは、リキッドファンデーションを塗布しているときの「塗布中のなめらかさ」、「塗布具の肌当たり」、「全体評価」を検討項目とする評価を行った。具体的には、各検討項目に対して、上述した一般女性10名(n=10)に、−3〜+3の7段階(−3、−2、−1、0、1、2、3)で評価してもらい、各検討項目に対する評価点の平均点を算出し、「−3〜−1.5未満→評価×」、「−1.5〜0未満→評価△」、「0〜1.5未満→評価○△」、「1.5〜2.5→評価○」、「2.5〜3→評価◎」を評価基準としたものである。
【0098】
図7に示すように、「塗布中のなめらかさ」は、芯材の厚さが「50μm〜75μm」の場合に、「評価◎(2.5〜3)」であり、芯材の厚さが「30μm」の場合に、「評価○(1.5〜2.5)」であり、芯材の厚さが「50μm〜75μm」の場合に、塗布中のなめらかさが非常に良く、芯材の厚さが「30μm」の場合も塗布中のなめらかさが良いという評価結果が得られた。
【0099】
また、「塗布具の肌当たり」は、芯材の厚さが「30μm〜75μm」の場合に、「評価○(1.5〜2.5)」であり、塗布具の肌当たりが良いという評価結果が得られた。また、各項目に対する評価を纏めた「全体評価」については、芯材の厚さが「50μm〜75μm」の場合に「評価◎(2.5〜3)」となり最も評価が高く、「30μm〜50μm」の場合に「評価○(1.5〜2.5)」となり、次に評価が高かった。
【0100】
一方、芯材の厚さが「19μm未満」、「101μm以上」の場合には、「塗布中のなめらかさ」、「塗布具の肌当たり」に対する評価結果が「評価△(−1.5〜0未満)」となり、塗布中のなめらかさも、塗布具の肌当たりに対する評価も低い結果となった。
【0101】
これは、芯材の厚さが「19μm未満」の場合には、リキッドファンデーション塗布時における弾力等の張りがなくなることにより、なめらかさが低下し、指の筋ムラが発生するためと推測される。また、芯材の厚さが「100μm以上」の場合には、指の感覚を肌で感じることができないため、塗布中のなめらかさ、肌当たりが良くない結果となったと推測される。
【0102】
したがって、芯材22の厚さとしては、例えば、約50〜75μmの範囲が最も望ましく、約30〜75μmの範囲としても良い。このように、芯材22に、所定の厚みと弾力性を有することで、不織布10の表面の凹凸にリキッドファンデーションが入り込みやすくなり、塗布中のなめらかさや肌当たりにつながることとなる。
【0103】
<粘着部20の粘着層21について>
次に、図8を用いて、上述した粘着部20の粘着層21の粘着力及び材質について説明する。図8は、本実施形態に係る粘着層の粘着力に関する使用評価テストの結果を示している。
【0104】
なお、使用評価テストは、粘着層21の粘着力条件を決定するため、上述した化粧料塗布用シート100の粘着層21の粘着力条件を変えたときの使用感評価を、20代〜30代の一般女性を対象に実施したものである。
【0105】
この使用評価テストでは、化粧料塗布用シート100を指に貼り付けたときの「シール(粘着層21)の強度」、「シール(粘着層21)のはがしやすさ」を検討項目とする評価を行った。具体的には、各検討項目に対して、上述した一般女性10名(n=10)に、−3〜+3の7段階(−3、−2、−1、0、1、2、3)で評価してもらい、各検討項目に対する評価点の平均点を算出し、「−3〜−1.5未満→評価×」、「−1.5〜0未満→評価△」、「0〜1.5未満→評価○△」、「1.5〜2.8→評価○」、「2.8〜3→評価◎」を評価基準としたものである。
【0106】
図8に示すように、「シールの強度」は、粘着層21の粘着力が「〜1N/cm」、「15.1〜N/cm」の場合にも、「評価○(1.5〜2.8)」であり、シールの強度の評価は良かった。
【0107】
また、「シールの剥がし易さ」は、粘着層21の粘着力が「1.1〜5N/cm」の場合に、「評価◎(2.8〜3)」であり、剥がし易いという評価結果が得られた。「全体評価」としても「評価◎(2.8〜3)」であった。
【0108】
また、粘着層21の粘着力が「5.1〜15N/cm」の場合には、「シールの強度」、「シールの剥がし易さ」、「全体評価」に対して「評価○(1.5〜2.8)」であり、評価が良かった一方、「1N/cm未満」や「15.1N/cm以上」の場合には、「シールの剥がし易さ」、「全体評価」に対して「評価△(−1.5〜0未満)」となり、評価が低くなった。
【0109】
ここで、粘着層21の粘着力が「1N/cm未満」になると、化粧料塗布用シート100が、リキッドファンデーションの塗布中に指から剥がれてしまい、リキッドファンデーションを最後まで塗布することが困難になることから評価が低くなったといえる。また、「15N/cm以上」になると、指から剥がす際に物理的刺激が強くなるため、評価が低くなったといえる。
【0110】
したがって、毎日使用することを考慮すると、できるだけ物理的刺激が弱く、かつ剥がれにくいことが望まれるため、粘着層21の粘着力は、「1N/cm以上5N/cm以下」にすると良く、例えば「1〜15N/cm」としても良い。
【0111】
なお、粘着層21には、例えばゴム系粘着剤を用いる。ゴム系粘着剤の一般的な組成として、例えば、ポリスチレン/ポリイソプレン系ブロック共重合体、ポリスチレン/ポリブタジエン系ブロック共重合体及びこれらの水素添加物をはじめとする各種スチレン系熱可塑性ブロック共重合体を主成分とするエラストマーを含み、粘着付与剤、軟化剤、老化防止剤等をブレンドしたものを用いると良い。
【0112】
また、粘着付与剤には、例えば脂肪族系石油樹脂、脂肪族/芳香族系石油樹脂、シクロペンタジエン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、テルペン系樹脂等を用いると良い。また、軟化剤には、アジピン酸系エーテルエステル、アジピン酸系ポリエステル、ポリエーテルエステル、脂肪酸アルキルエステル等を用いると良い。
【0113】
また、老化防止剤は、例えばゴム系接着剤の主成分のゴムや粘着付与剤等が時間の経過とともに劣化することを防ぐための目的で添加され、ジタ―シャリーブチルヒドロキシトルエン(BHT)、N、N‘−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(DPPD)等を用いると良い。
【0114】
<化粧料塗布用シート100の使用性評価>
次に、図9を用いて、化粧料塗布用シート100と、指と、スポンジとをそれぞれ用いてリキッドファンデーションを塗布したときの使用性評価の結果について説明する。図9は、本実施形態に係る化粧料塗布用シート、指、スポンジをそれぞれ用いたときの使用性評価の結果を示している。
【0115】
なお、この使用性評価は、20代〜30代の一般女性を対象に実施したものであり、化粧料塗布用シート100、指、スポンジをそれぞれ使用してリキッドファンデーションを塗布しているときの「のびが軽い」、「のびのフィット感がある」等を検討項目とする評価を行った。
【0116】
具体的には、上述した一般女性10名(n=10)に、−3〜+3の7段階(−3、−2、−1、0、1、2、3)で評価してもらい、各検討項目に対する評価点の平均点を算出したものが示されている。
【0117】
また、使用性評価では、化粧水、乳液で肌を整えた後、リキッドファンデーション(100μl/半顔)の塗布を行い、半顔をスポンジ、もう一方の半顔に化粧料塗布用シート100又は指で塗布し、スポンジに対する化粧料塗布用シート100又は指の評価を行ったものである。
【0118】
図9に示すように、指を用いたとき、「カバー力がある」の検討項目に対して高い評価が得られたが、これは、指がリキッドファンデーションを吸収しないため、肌へのリキッドファンデーションの付着量が多くなったためといえる。一方、リキッドファンデーション仕上がりを示す「仕上がりの均一感がある」、「筋ムラがない」等の検討項目に対する評価は低かった。これは、指の指紋のシワや指紋による凹凸が筋ムラとなったためといえる。その他、塗布中における「のびのフィット感がある」、「なめらである」や塗布後の「手が汚れない」等の検討項目に対する評価も低かった。
【0119】
また、化粧料塗布用シート100を用いたときには、スポンジよりも全体的に高い評価が得られたが、特に「カバー力がある」、「仕上がりのフィット感がある」、「仕上がりの均一感がある」等の検討項目に対して高い評価が得られた。これは、上述したように、不織布10の繊維・製法により、不織布表面の密度が高く、平滑性があるためといえる。
【0120】
また、「細部への塗布ができる」等の検討項目に対して高い評価が得られたが、これは、化粧料塗布用シート100を指に直接貼り付けることにより、指を用いたときと同等に手軽に操作を調整できるためといえる。
【0121】
<化粧料塗布用シート100の使用方法について>
次に、図10を用いて、化粧料塗布用シート100の使用方法について説明する。図10は、本実施形態に係る化粧料塗布用シートの使用方法を説明するための図である。なお、図10の例では、従来のリキッドファンデーションを塗布する塗布具としてスポンジを用いた例を比較例として説明する。
【0122】
図10(A)は、従来の使用方法と化粧料塗布用シート100の使用方法とを比較した図である。例えば、化粧水、乳液、リキッドファンデーション(リキッドFD)を塗布する流れについて説明する。
【0123】
従来の使用方法では、例えば500円玉硬貨大の化粧水をコットンに含ませて使用した後、10円玉硬貨大の乳液をコットンに含ませて使用し、リキッドFDを例えばスポンジにディスペンサー1プッシュ(約100μl)して顔に塗布していく。
【0124】
一方、化粧料塗布用シート100を用いた場合には、化粧水、乳液、リキッドFDを同じ1枚のシートを用いて使用することが可能となる。また、化粧水の量は、500円玉硬貨大の約1/6、乳液の量は、10円玉硬貨大の約1/10、リキッドFDの量は、ディスペンサー1プッシュの約1/2の量で仕上げることが可能となる。
【0125】
このように、化粧料塗布用シート100を用いた場合には、従来のようにコットンとスポンジを両方用いる必要がなく、不織布10の表面密度及び平滑性により、化粧水、乳液、リキッドFDの使用量を少なくして仕上げることが可能となる。これにより、従来よりも簡便、かつ節約しながら使用することが可能となる。また、化粧料塗布用シート100は、使い捨てにすることができるため、従来のようにスポンジを洗う手間をかけることなく、衛生的に使用することが可能となる。
【0126】
なお、上述の場合には、1枚の化粧料塗布用シート100で化粧水、乳液、リキッドFDを塗布したが、本発明においてはこれには限られず、リキッドFDのみ化粧料塗布用シート100を用いて塗布しても良い。
【0127】
図10(B)は、スポンジと化粧料塗布用シート100のそれぞれに吸収されたリキッドFD量(%)を示している。ここでは、同量のリキッドFDをスポンジと化粧料塗布用シート100に使用して顔に塗布した後に、それぞれに残ったリキッドFDの残存量から、吸収されたリキッドFD量(%)を測定した値が示されている。
【0128】
図10(B)に示すように、スポンジに吸収されたリキッドFD量が80%を超えているのに対し、化粧料塗布用シートに吸収されたリキッドFD量は20%に満たない値となっている。
【0129】
これは、スポンジの場合、スポンジ中に80%以上のリキッドFDが吸収され、顔には20%未満のリキッドFDしか塗布されなかったことを示している。また、化粧料塗布用シート100の場合、顔に80%以上のリキッドFDが塗布され、化粧料塗布用シート100には20%未満のリキッドFDしか吸収されていないことを示している。
【0130】
このように、スポンジには化粧料塗布用シート100に吸収されたリキッドFD量の約4倍の量が吸収されてしまうため、リキッドFDの使用量を多くする必要が生じる。一方、化粧料塗布用シート100は、吸収されるリキッドFD量が少ないため、同じ量のリキッドFDを使用した場合でも、スポンジよりも多くのリキッドFDを顔に塗布することが可能となり、リキッドFDを節約しながら使用することが可能となる。
【0131】
上述したように、本発明の実施形態によれば、衛生的で操作性が良く、化粧料を肌に均一に塗布する化粧料塗布用シートを提供することが可能となる。
【0132】
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0133】
10 不織布
20 粘着部
21,23 粘着層
22 芯材
100,101 化粧料塗布用シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料を肌に塗布するための化粧料塗布用シートであって、
前記化粧料を含浸する不織布と、前記不織布を所定の指の第3関節から指先に対応する領域に着脱自在に貼り付け可能とする粘着部とを有することを特徴とする化粧料塗布用シート。
【請求項2】
前記不織布は、繊維繊度が0.01〜2.00dtexであり、メルトブローン製法又はスパンレース製法で作製されることを特徴とする請求項1に記載の化粧料塗布用シート。
【請求項3】
前記不織布は、引張強度が3N/inch以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の化粧料塗布用シート。
【請求項4】
前記不織布は、前記スパンレース製法のうち湿式スパンレース製法で作製されることを特徴とする請求項2に記載の化粧料塗布用シート。
【請求項5】
前記粘着部は、前記化粧料を含浸しない芯材を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の化粧料塗布用シート。
【請求項6】
外形の一部にアーチ形状を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の化粧料塗布用シート。
【請求項7】
前記化粧料は、メーキャップ化粧料又はスキンケア化粧料を含み、前記メーキャップ化粧料は、液状、クリーム状、又は粉末状であり、前記スキンケア化粧料は、化粧水又は乳液であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の化粧料塗布用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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