説明

化粧料

【課題】二酸化チタンによる近赤外線遮蔽性を有し、適度な可視光線隠蔽性を有する化粧料を提供する。
【解決手段】化粧料に、単一粒子の平均長軸径が1.5〜6.0μmの範囲にあり、平均短軸径が0.2〜0.8μmの範囲にある棒状二酸化チタンを含有させる。より好ましい平均長軸径の範囲は1.5〜4μmであり、より好ましい平均短軸径の範囲は0.2〜0.5μmである。特に、平均軸比(平均長軸径/平均短軸径)が3〜15の範囲にあるものが、近赤外線遮蔽能と可視光線隠蔽性とのバランスが優れているので好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化チタンを含有する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧料に配合される二酸化チタンは、白色顔料としての可視光線隠蔽を目的とする顔料級二酸化チタン(一次粒子径0.15〜0.3μmの粒子状粒子)と、紫外線防御を目的とする微粒子二酸化チタン(一次粒子径0.01〜0.1μmの略球状粒子または平均長軸径が0.05〜0.3μm、平均短軸径が0.01〜0.05μmの紡錘状粒子)の2つの流れで開発が行われてきた。一方このような流れとは別に、近年、太陽光等に含まれる赤外線を遮蔽する二酸化チタンを化粧料に配合することも検討されており、皮膚温度の上昇を抑える効果等が期待されている。このような二酸化チタンとしては、例えば一次粒子径が0.5〜2.0μmであり、粉末のプレス成型体の可視光線反射率が95%未満である粒子状二酸化チタンが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】WO04/052786パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の一次粒子径が0.5〜2.0μmの粒子状二酸化チタンは赤外線遮蔽能を有し、赤外線による温度上昇を抑制する可能性はあるものの、略球状で大きな粒子であるために可視光線隠蔽性が顔料級二酸化チタンに比べ低く、そのため可視光線隠蔽性を確保するためには顔料級二酸化チタンを別途配合する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願人は先に、特定の範囲の平均長軸径と平均短軸径とを有する棒状粒子とすることにより、近赤外線遮蔽能と可視光線隠蔽性とを両立できる二酸化チタンを見出し、特願2004−314133号として出願した。この棒状二酸化チタンは、長軸径を近赤外線遮蔽能に最適の範囲に、短軸径を可視光の散乱にとって最適の範囲とすることで、近赤外線遮蔽能と可視光線隠蔽性とを高いレベルで両立させたものである。
そして、本発明者らは前記の棒状二酸化チタンの用途開発を進めた結果、棒状二酸化チタンを化粧料に含有することにより、近赤外線遮蔽能と可視光線隠蔽性とを両立した化粧料が得られ、前記問題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、単一粒子の平均長軸径が1.5〜6.0μmの範囲に、平均短軸径が0.2〜0.8μmの範囲にある棒状二酸化チタンを少なくとも含有している化粧料である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の化粧料は、含有した棒状二酸化チタンにより近赤外線(0.8〜3μm程度の波長の光)の遮蔽能(遮熱性ともいう)を有し、近赤外線からの皮膚の保護、あるいは皮膚温度上昇の抑制等の効果がある。また、適度な可視光線隠蔽性(二酸化チタンの可視光の吸収・散乱・反射によって下地の色を隠す能力)を有し、自然で適度な白色を与える。また、棒状二酸化チタンの細長い粒子形状を利用して、すべり性、配向性等の感触などの化粧料使用時の適性等も改良することができる。
このようなことから、本発明の化粧料は、メイクアップ化粧料、基礎化粧料などの種々の化粧料とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の化粧料は、少なくとも、単一粒子の平均長軸径が1.5〜6.0μmの範囲にあり、平均短軸径が0.2〜0.8μmの範囲にある棒状二酸化チタンを含有しているものである。棒状二酸化チタンの平均長軸径、平均短軸径が少なくとも前記範囲であれば、近赤外線遮蔽能と可視光線隠蔽性とを両立させることができ、より好ましい平均長軸径の範囲は1.5〜4.0μmであり、より好ましい平均短軸径の範囲は0.2〜0.5μmである。特に、平均軸比(平均長軸径/平均短軸径)が3〜15の範囲にあるものが、近赤外線遮蔽能と可視光線隠蔽性とのバランスが優れているので好ましく、5〜10の範囲がより好ましい。棒状二酸化チタンの結晶形には特に制限はなく、ルチル型、アナターゼ型のいずれを用いることもできる。しかし、ルチル型は長波長の光の反射率が高く、また、耐候性、耐光性に優れているので好ましい。
【0009】
本発明で用いる棒状二酸化チタンは、粒子表面に、Al、Si、Zr、Ti、Znなどの群より選ばれる少なくとも1種の元素の含水酸化物(水和酸化物、水酸化物を含む)および/または酸化物、あるいはAl、Zr、Ti、Zn、Feなどの群より選ばれる少なくとも1種のリン酸塩などの無機物が被覆されていても良く、さらにこれらの処理と同時、または単独でシリコーン化合物、シラン類、金属石鹸、フッ素化合物、水溶性高分子化合物、N−アシル化リジン、ポリオール、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂などの群より選ばれる少なくとも1種の有機物が被覆されていても良い。このような無機物や有機物の表面処理により固体触媒活性や光触媒活性を抑制することができ、さらには濡れ性の改善、耐皮脂性付与、分散性の改良を適宜行うことができる。この内、メチルハイドロジェンポリシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸、フルオロアルキル・ポリオキシアルキレン共変性シリコーンなどのシリコーン化合物、オクチルトリエトキシシランなどのシラン類(シラン化合物)、ステアリン酸亜鉛などの金属石鹸、パーフルオロアルキルリン酸ジエタノールアミン塩、テフロン(登録商標)、パーフルオロアルキルシランなどのフッ素化合物、デオキシリボ核酸、ヒアルロン酸などの水溶性高分子化合物、N−ラウロイルリジンなどのN−アシル化リジンで被覆処理されたものは化粧料に配合時の上記特性改良に効果があるため特に好ましい。前記の無機物の被覆量は適宜設定することができるが、通常、棒状二酸化チタンに対して0.05〜30重量%程度の範囲が好ましく、0.1〜15重量%程度がより好ましく、0.5〜10重量%程度がさらに好ましい。また、有機物の被覆量も適宜設定できるが、通常、棒状二酸化チタンに対して0.01〜15重量%程度の範囲が好ましく、0.05〜10重量%程度がより好ましく、0.1〜5重量%程度がさらに好ましい。
【0010】
本発明に用いる棒状二酸化チタンは、公知の方法、例えば、特公平6−24977号公報に開示される棒状二酸化チタン核晶の存在下、チタン源、アルカリ金属塩、オキシリン化合物の混合物を加熱焼成する方法(以下、方法1という)によって得ることができる。しかし、この方法1では長軸が短軸に比べて成長し易く、短軸を大きくすると、長軸がさらに大きくなるので、近赤外線遮蔽用に求められる棒状粒子が得られ難い。そこで、本発明で用いる好ましい棒状二酸化チタンは、棒状二酸化チタン核晶が存在する液相中で加水分解性チタン化合物を加水分解して生成物を得た後、アルカリ金属化合物を含む焼成処理剤の存在下で加水分解生成物を加熱焼成する(以下、方法2という)。この方法2では、長軸が短軸に比べて成長し難く、このため、単一粒子の平均長軸径が1.5〜6.0μmの範囲にあり、平均短軸径が0.2〜0.8μmの範囲にある所望の棒状粒子が、特に、平均軸比が3〜15の範囲に、好ましくは5〜10の範囲にあるものが得られ易いので好ましい。
【0011】
前記方法2について以下に詳述する。この方法2では先ず、加水分解性チタン化合物の溶液に棒状二酸化チタン核晶を添加するか、棒状二酸化チタン核晶のスラリー中に加水分解性チタン化合物の溶液を添加するなどした後、液相中で加水分解性チタン化合物を加水分解して生成物を得る。前記加水分解生成物は、加水分解性チタン化合物の加水分解により生成した含水酸化チタン(または水酸化チタン)が、棒状二酸化チタン核晶の表面に沈着したものと考えられる。加水分解には、加熱加水分解、中和加水分解などを用いることができるが、中和剤を要さないので、工業的には加熱加水分解が好ましい。加熱加水分解は、50℃以上の温度で行うと加水分解が進み易いので好ましく、80℃以上であればさらに好ましい。加熱加水分解の温度には特に上限はないが、100℃未満の温度であれば、常圧下で加水分解を行うことができるので好ましい。中和加水分解は、pHを5.5〜9の範囲とすると加水分解が進み易いので好ましく、6〜8の範囲とするのがより好ましい。中和剤には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩、アンモニア、炭酸アンモニウム、硝酸アンモニウムなどのアンモニウム化合物等を用いることができる。
【0012】
この工程で用いる棒状二酸化チタン核晶は、目的とする棒状二酸化チタンの長軸径、短軸径に応じてそれぞれの大きさを選択する。具体的には、棒状二酸化チタン核晶の短軸径は目標より小さいものを選択しても良いが、加熱焼成後に長軸に収縮が認められるので、該核晶の長軸径は目標より若干大きくても良い。例えば、核晶として単一粒子の平均長軸径が1〜10μmの範囲にあり、平均短軸径が0.05〜0.6μmの範囲にあり、好ましくは軸比が8〜25の範囲にあるものの中から適宜選択することができる。棒状二酸化チタン核晶を得るには、公知の方法、例えば、チタン源、アルカリ金属塩、オキシリン化合物の混合物を加熱焼成する方法を用いることができる。あるいは、市販の棒状二酸化チタン、例えば、FTL−100、FTL−200、FTL−300(いずれも石原産業社製)などを用いることもできる。棒状二酸化チタン核晶は、加水分解性チタン化合物に対し0.5〜30重量%の範囲で用いると、所望の棒状粒子が得られ易いので好ましく、1〜15重量%の範囲がより好ましい。
【0013】
この工程で用いる加水分解性チタン化合物としては、例えば、硫酸チタニル(TiOSO)、四塩化チタン、チタンアルコキシドなどを用いることができ、コストの点で硫酸チタニル、四塩化チタンを用いるのが好ましい。硫酸チタニルは、例えば、所謂硫酸法と呼ばれる二酸化チタン顔料の製造工程において、イルミナイト鉱、チタンスラグなどのチタン含有鉱石を、硫酸で溶解させながらチタン成分と硫酸とを反応させることで得られる。また、四塩化チタンは、所謂塩素法の工程において、コークス等の還元剤の存在下、チタン含有鉱石と塩素ガスとを1000℃程度の温度下で反応させることで得られる。
【0014】
次に、方法2では、前記で得られた加水分解生成物を、アルカリ金属化合物を含む焼成処理剤の存在下で加熱焼成する。この工程で用いるアルカリ金属化合物を含む焼成処理剤は、加熱焼成時に二酸化チタンの棒状化を促進する作用を有する。アルカリ金属化合物としてはナトリウム化合物、カリウム化合物、リチウム化合物などが挙げられ、これらから選ばれる1種以上を用いることができ、中でもナトリウム化合物とカリウム化合物を併用すると、棒状化促進の効果が高く好ましい。ナトリウム化合物としては水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどを、カリウム化合物としては水酸化カリウム、塩化カリウムなどを、リチウム化合物としては水酸化リチウム、塩化リチウムなどを用いることができる。その使用量は、加水分解生成物に含まれるTiOに換算した総チタン量に対し、それぞれ、NaO換算で0.1〜1.5重量%の範囲、KO換算で0.1〜1.5重量%の範囲、LiO換算で0.1〜1.5重量%の範囲が好ましい。より好ましい範囲は、NaO換算で0.1〜1重量%、KO換算で0.2〜1.2重量%、LiO換算で0.2〜1.2重量%の範囲である。加熱焼成時に前記焼成処理剤を存在させるには、焼成処理剤と加水分解生成物とを予め混合した後に加熱焼成するのが好ましく、予め混合する方法には特に制限はないが、加水分解生成物のスラリーに前記焼成処理剤を添加、混合すると、均一に混合できるので好ましい。スラリーに焼成処理剤を混合した後、必要に応じて脱水し、次の加熱焼成工程に供する。
【0015】
この工程の加熱焼成温度は加水分解生成物が脱水して二酸化チタンになり、棒状化が進む程度であれば良く、900〜1200℃程度の範囲が好ましい。加熱焼成温度が前記範囲より低いと、粒子が所望の形状に棒状化し難いため好ましくなく、前記範囲より高くしてもさらなる効果は得られ難く、長期的には加熱焼成炉の耐久性を低下させることにもなるので好ましくない。より好ましい温度範囲は950〜1150℃程度の温度であり、少なくともこの温度範囲であれば棒状化が十分に進むとともに経済的でより好ましい。加熱焼成炉にはロータリーキルン、トンネルキルンなど公知の機器を用いることができる。
【0016】
ルチル型の棒状二酸化チタンを製造するには、好ましくは棒状二酸化チタン核晶としてルチル型の結晶構造を有するものを用い、さらに、アルミニウム化合物および/またはリン化合物が前記焼成処理剤に含まれていると、安定してルチル型結晶を生成させることができるので好ましい。アルミニウム化合物としては酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどが、リン化合物としてはオルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸およびそれらの塩などが挙げられる。アルミニウム化合物、リン化合物の使用量は、加水分解生成物に含まれるTiOに換算した総チタン量に対し、Al換算で0.1〜1.5重量%の範囲が、P換算で0.1〜1.5重量%の範囲が好ましく、Al換算で0.2〜1.2重量%の範囲が、P換算で0.2〜1.2重量%の範囲がより好ましい。また、ルチル型結晶を安定化させる化合物としては、アルミニウム化合物、リン化合物以外にも、例えば、マグネシウム化合物、亜鉛化合物などを用いることもできる。好ましい使用量は化合物によって異なるが、マグネシウム化合物であれば、前記のTiO換算値に対し、MgOとして0.005〜0.1重量%の範囲であり、より好ましい範囲は0.01〜0.05重量%である。マグネシウム化合物としては塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウムなどを用いることができる。
【0017】
また、ルチル型の棒状二酸化チタンを得る場合には、より一層ルチル型結晶が安定化するので、加水分解生成物の加熱焼成を、さらにルチル型微粒状核晶の存在下で行っても良い。その方法としては、加水分解性チタン化合物の溶液に棒状二酸化チタン核晶に加えて、さらにルチル型微粒状核晶を添加して加水分解を行うか、または、加水分解生成物のスラリー中にルチル型微粒状核晶を添加、混合することで、加水分解生成物にルチル型微粒状核晶を含ませるのが好ましい。ルチル型微粒状核晶は、公知の方法、例えば、硫酸チタニルを炭酸ナトリウムで中和する方法、含水酸化チタンを水酸化ナトリウムと反応させた後、塩酸で処理する方法などで調製することができる。
【0018】
このようにして所定の棒状二酸化チタンが得られた後は、公知の方法により、湿式粉砕、脱水・洗浄、乾燥、乾式粉砕しても良い。湿式粉砕には縦型サンドミル、横型サンドミルなどが、乾燥にはバンド式ヒーター、バッチ式ヒーターなどが、乾式粉砕にはハンマーミル、ピンミルなどの衝撃粉砕機、解砕機等の摩砕粉砕機、ジェットミル、スネイルミルなどの気流粉砕機、噴霧乾燥機等の機器を用いることができる。
【0019】
棒状二酸化チタンは必要に応じて、粒子表面に無機物、有機物を被覆することができる。無機物の被覆を行う場合は、得られた棒状粒子を水等の媒液に分散させスラリーにした後、好ましくはさらに湿式粉砕した後、目的とする無機物の塩の溶液を添加し、酸性化合物または塩基性化合物を添加したり、無機物の塩と酸性化合物または塩基性化合物とを同時に添加するなどして中和反応させて無機物を粒子表面に沈着させることにより行うことができる。有機物の被覆は、通常、得られた棒状二酸化チタンを乾式粉砕後にヘンシェルミキサー、スーパーミキサーなどの高速撹拌機を用いて有機物と混合して被覆したり、あるいは、乾式粉砕機中に棒状二酸化チタンと有機物を添加して、粉砕と混合・被覆処理を同時に行う、所謂乾式処理を適用することができる。オルガノシラン類のように、二酸化チタンの表面と反応し強く結合する有機物を被覆する場合は、湿式粉砕後あるいは無機物の被覆処理後のスラリーに、有機物を添加し被覆する、所謂湿式処理を適用することもできる。
【0020】
本発明の化粧料では、上記の棒状二酸化チタン以外に、通常化粧料に用いられる粉体(顔料、色素、樹脂)、油剤、フッ素化合物、樹脂、界面活性剤、紫外線防御剤、抗酸化剤、粘剤、防腐剤、香料、保湿剤、生理活性成分、塩類、溶媒、キレート剤、中和剤、pH調整剤などの成分を同時に配合することができる。
【0021】
粉体としては、例えば、赤色104号、赤色201号、黄色4号、青色1号、黒色401号などの色素、黄色4号Alレーキ、黄色203号Baレーキなどのレーキ色素、ナイロンパウダー、シルクパウダー、ウレタンパウダー、テフロン(登録商標)パウダー、シリコーンパウダー、セルロースパウダー、シリコーンエラストマー、キチン、キトサン、アルギン酸カルシウムなどの高分子、黄酸化鉄、赤色酸化鉄、黒酸化鉄、酸化クロム、カーボンブラック、群青、紺青などの有色顔料、二酸化チタン、酸化セリウムなどの白色顔料、タルク、マイカ、セリサイト、カオリンなどの体質顔料、雲母チタンなどのパール顔料、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウムなどの金属塩、シリカ、アルミナなどの無機粉体、微粒子二酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、粒子酸化鉄、アルミナ処理微粒子二酸化チタン、シリカ処理微粒子二酸化チタン、ベントナイト、スメクタイトなどが挙げられる。これらの粉体の形状、大きさに特に制限はない。この内、棒状二酸化チタンと、微粒子二酸化チタン、微粒子酸化亜鉛などの無機系紫外線防御成分とを組み合わせて使用することは、紫外線防御効果を向上させる上で好ましい。
【0022】
また、上記の粉体は、従来公知の各種表面処理、例えば、シリコーン処理、シラン処理、フッ素化合物処理、油剤処理、金属石鹸処理、ワックス処理、N−アシル化リジン処理、水溶性高分子化合物処理、樹脂処理、金属酸化物処理、プラズマ処理、メカノケミカル処理、粘剤処理などが行われていてもいなくても構わない。
【0023】
油剤の例としては、セチルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクチルドデカノールなどの高級アルコール、イソステアリン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸などの脂肪酸、グリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどの多価アルコール、ミリスチン酸ミリスチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸イソプロピル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、モノステアリン酸グリセリン、フタル酸ジエチル、モノステアリン酸エチレングリコール、オキシステアリン酸オクチルなどのエステル類、流動パラフィン、ワセリン、スクワランなどの炭化水素、ラノリン、還元ラノリン、カルナバロウなどのロウ、ミンク油、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油、ツバキ油、ゴマ油、ヒマシ油、オリーブ油などの油脂、エチレン・α−オレフィン・コオリゴマーなどが挙げられる。
【0024】
また、別の形態の油剤の例としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、フルオロアルキル・ポリオキシアルキレン共変性オルガノポリシロキサン、アルキル変性オルガノポリシロキサン、末端変性オルガノポリシロキサン、フッ素変性オルガノポリシロキサン、アモジメチコーン、アミノ変性オルガノポリシロキサン、シリコーンゲル、アクリルシリコーン、トリメチルシロキシケイ酸、シリコーンRTVゴムなどのシリコーン化合物、パーフルオロポリエーテル、フッ化ピッチ、フルオロカーボン、フルオロアルコール、フッ素化シリコーンレジンなどのフッ素化合物が挙げられる。
【0025】
界面活性剤としては、例えば、アニオン型界面活性剤、カチオン型界面活性剤、ノニオン型界面活性剤、ベタイン型界面活性剤を用いることができる。
【0026】
溶媒としては、精製水、エタノール、軽質流動イソパラフィン、低級アルコール、エーテル類、LPG、フルオロカーボン、N−メチルピロリドン、フルオロアルコール、パーフルオロポリエーテル、代替フロン、揮発性シリコーンなどが挙げられる。
【0027】
また、有機系の紫外線防御剤である紫外線吸収剤の例としては、例えば、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、パラジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−硫酸、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、p−メトキシハイドロケイ皮酸ジエタノールアミン塩、パラアミノ安息香酸(以後、PABAと略す)、サリチル酸ホモメンチル、メチル−O−アミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、オクチルジメチルPABA、メトキシケイ皮酸オクチル、サリチル酸オクチル、2−フェニル−ベンズイミダゾール−5−硫酸、サリチル酸トリエタノールアミン、3−(4−メチルベンジリデン)カンフル、2,4−ジヒドロキシベンゾフェニン、2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−N−オクトキシベンゾフェノン、4−イソプロピルジベンゾイルメタン、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、4−(3,4−ジメトキシフェニルメチレン)−2,5−ジオキソ−1−イミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシル、これらの高分子誘導体などが挙げられる。これらの紫外線吸収剤も無機系紫外線防御剤と併用して用いると製品の紫外線防御能を向上させるのに効果的である。
【0028】
また、本発明の化粧料では抗酸化剤を併用することが、酸化亜鉛粉末等の光触媒活性による他の配合成分の変質を防止するためにも好ましく、その抗酸化剤の例としては、例えば、トコフェロール類、SOD、フェノール類、テルペン類、ブチルヒドロキシトルエン、ビタミンC、ビタミンE、カテキン類、グルコース、ヒアルロン酸、β−カロチン、テトラヒドロクルクミン、茶抽出物、ゴマ抽出物、アントシアニン、配糖体などの植物系等の抗酸化剤など従来公知の物質を用いることができる。
【0029】
本発明の化粧料としては、ファンデーション、白粉、アイシャドウ、アイライナー、チーク、口紅、ネイルカラーなどのメイクアップ化粧料、乳液、クリーム、ローション、カラミンローション、サンスクリーン剤、化粧下地料、サンタン剤、アフターシェーブローション、プレシェーブローション、パック料、クレンジング料、洗顔料、アクネ対策化粧料などの基礎化粧料、ヘアカラー、ボディパウダー、デオドラント、石鹸、ボディシャンプー、入浴剤、香水などが挙げられる。
【0030】
本発明の化粧料における、棒状二酸化チタンの含有量はその目的に応じて適宜設定することができ、化粧料の総量に対して、0.1〜80重量%が好ましく、さらに好ましくは1〜50重量%である。
【0031】
本発明の化粧料の剤型としては、二層状、油中水型エマルション、水中油型エマルション、ジェル状、スプレー、ムース状、油性、固形状、スティック状、ペースト状、パウダー状など従来公知の剤型を使用することができる。特に、ファンデーション用途としては、固形状、固形エマルション状、ジェル状、油中水型エマルション、水中油型エマルション、油性、ムースなどが好ましい。
【実施例】
【0032】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0033】
製造例1
(1)棒状二酸化チタンの調製
硫酸チタニル溶液に、市販のルチル型棒状二酸化チタン(FTL−100:石原産業社製、平均長軸径1.68μm、平均短軸径0.13μm)を核晶として硫酸チタニルに対し5重量%添加、混合し、99℃の温度で4時間加熱して、硫酸チタニルを加水分解して生成物を得た。この加水分解生成物に含まれるTiOに換算した総チタン量は、1000gであった。
次いで、加水分解生成物のスラリーに前記の総チタン量に対し、Al換算で0.2重量%に相当する硫酸アルミニウム、NaO換算で0.5重量%に相当する炭酸ナトリウム、KO換算で0.5重量%に相当する水酸化カリウム、P換算で0.2重量%に相当するオルトリン酸を添加、混合し、脱水した。得られた脱水ケーキを、電気炉を用いて1050℃で加熱焼成して、ルチル型の棒状二酸化チタンを得た。
【0034】
(2)表面被覆
前記(1)で得られた棒状二酸化チタンをTiO濃度が300g/リットルの水性スラリーとし、水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを11.0として分散させた後、サンドミルで粉砕し、篩(目開き45μm)で分級を行った。
次いで、分級後のスラリー1000ミリリットルの温度を60℃に保持し、撹拌下で、硫酸を添加してpHを9に調整した後、アルミン酸ナトリウム水溶液(Alとして300g/リットル)20ミリリットルを硫酸でpHを8〜9に調整しながら20分間かけて添加した。次いで、pHを7に調整してから30分間熟成し、Alとして2重量%の酸化アルミニウム水和物を被覆した。その後、吸引濾過器で濾過、水洗し、120℃で20時間乾燥してから、ジェットミルで粉砕して棒状二酸化チタン(試料A)を得た。
【0035】
比較製造例1
TiOとして1000gに相当する含水酸化チタンに、含水酸化チタン中のTiOに対し、Al換算で0.05重量%に相当する硫酸アルミニウム、NaO換算で0.2重量%に相当する炭酸ナトリウム、KO換算で0.15重量%に相当する水酸化カリウム、P換算で0.2重量%に相当するオルトリン酸を添加し、電気炉を用いて1100℃で加熱焼成し、ルチル型二酸化チタンの球状粒子を得た。その後の湿式粉砕、表面被覆、分級、固液分離、洗浄、乾燥、乾式粉砕は実施例1と同様に行って比較試料(試料B)を得た。
【0036】
比較製造例2
市販の顔料級ルチル型二酸化チタン(CR−50:石原産業社製)を比較試料(試料C)とする。
【0037】
評価1:平均粒子径の評価
製造例1および比較製造例1、2で得られた試料(A〜C)について、パーティクルアナライザー(カール・ツァイス社製)を用いて、平均長軸径、平均短軸径、平均軸比および平均粒子径を電子顕微鏡法により測定した。尚、平均長軸径、平均短軸径は、二酸化チタンの一次粒子1個について長軸径、短軸径から円柱相当体積を算出し、それら約1000個分の50%累積値から算出したものである。また、平均軸比とは、平均長軸径/平均短軸径を意味する。結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
評価2:可視光線隠蔽性の評価
製造例1および比較製造例1、2で得られた試料(A〜C)を用い、表2に示す処方1の各成分とガラスビーズ80gとを容量225ccのガラス製容器に仕込み、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)を用いて20分間分散して分散液を調製した後、表3に示す処方2にて、樹脂成分1重量部に対し二酸化チタン試料1重量部、固形分体積濃度46%の塗料とした。次いで、#30バーコーターを用いて白黒チャート紙上に塗布し、110℃で40分間焼きつけ、塗膜化した。白黒チャート紙上に塗布した塗膜の黒地上の反射率(Y値)、白地上の反射率(Y値)を、カラーコンピューター(SM−7型:スガ試験機社製)を用いて計測した。可視光線隠蔽率(C値)は、下式1に従って算出した。結果を表4に示す。C値の高いものが可視光線隠蔽性に優れている。製造例1の棒状二酸化チタンは、従来の顔料級二酸化チタンとほぼ同等の可視光線隠蔽性を有している。
式1:可視光線隠蔽率(C)=(Y/Y)×100(%)
【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
【表4】

【0043】
評価3:近赤外線遮蔽能の評価
評価2で作製した製造例1、比較製造例1、2の塗料を、#60バーコーターを用いてPETフィルム上に塗布し、110℃で40分間焼きつけ、塗膜化した。塗膜の反射率を、分光光度計(V−570型:日本分光社製)を用いて波長が500〜2000nmの範囲で測定した。結果を表5に示す。製造例1の棒状二酸化チタンは、近赤外域(波長が800〜3000nmの範囲)での反射率が高く、優れた近赤外線遮蔽能を有していることが判る。また、参考までに、前記の塗料をキシレンとn−ブタノールの混合溶剤(重量比4:1)で希釈して、固形分体積濃度を21.2%とし、#30バーコーターで塗布し、同様に塗膜化した後、この塗膜の反射率を、分光光度計で波長が500〜2500nmの範囲で測定した。結果を表6に示す。製造例1の棒状二酸化チタンは、近赤外域での透過率が低いことからも、優れた近赤外線遮蔽能を有していることが判る。
【0044】
【表5】

【0045】
【表6】

【0046】
実施例1(クリームファンデーション)
製造例1の棒状二酸化チタン(試料A)を用いて、ハイカバータイプのクリームファンデーションを作製した。下記の油相成分と水相成分をそれぞれ70℃で加熱混合した後、70℃に保った水相に油相をゆっくり注いでからホモミキサーで乳化した。次いで、撹拌しながら室温まで冷却して製品(試料a)を得た。
【0047】
<油相>
NIKKOL Decaglyn 5-HS 2.0重量%
NIKKOL Hexaglyn PR-15 0.6重量%
NIKKOL スクワラン 2.0重量%
NIKKOL CIO 8.0重量%
NIKKOL IPM-EX 4.0重量%
KF-995(D-5) 19.0重量%
酸化鉄 1.0重量%
試料A 10.0重量%

<水相>
グリセリン 5.0重量%
硫酸マグネシウム・7水和物 MgSOとして0.5重量%
精製水 残部
【0048】
比較例1(クリームファンデーション)
製造例1の棒状二酸化チタン(試料A)の代わりに、比較製造例1の二酸化チタン(試料B)を用いた他は全て実施例1と同様にして製品(試料b)を得た。
【0049】
比較例2(クリームファンデーション)
製造例1の棒状二酸化チタン(試料A)の代わりに、比較製造例2の二酸化チタン(試料C)を用いた他は全て実施例1と同様にして製品(試料c)を得た。
【0050】
実施例および比較例のクリームファンデーション(試料a〜c)を2milsアプリケーターを用いてトリアセテートフィルム上に塗布して分光光度計(V−570型:日本分光社製)を用いて波長が500〜3000nmの範囲で測定した。表7に測定結果を示す。この結果から、本発明の化粧料は、優れた近赤外線遮蔽能と適度な可視光線隠蔽性とを有していることが判った。このことから、本発明の化粧料は近赤外線からの皮膚の保護、あるいは皮膚温度上昇の抑制等の効果がある。また、本発明の化粧料はすべり性等の感触も良好であった。
【0051】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の化粧料は、優れた近赤外線遮蔽能と適度な可視光線隠蔽性とを有しており、近赤外線からの皮膚の保護、あるいは皮膚温度上昇の抑制等の効果があり、しかも、すべり性等の感触も良好であることから、メイクアップ化粧料、基礎化粧料などの種々の化粧料に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】試料Aの粒子形状を示す電子顕微鏡写真である。
【図2】試料Bの粒子形状を示す電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一粒子の平均長軸径が1.5〜6.0μmの範囲に、平均短軸径が0.2〜0.8μmの範囲にある棒状二酸化チタンを少なくとも含有している化粧料。
【請求項2】
棒状二酸化チタンの平均軸比が3〜15の範囲にある請求項1記載の化粧料。
【請求項3】
棒状二酸化チタンの結晶形がルチル型である請求項1記載の化粧料。
【請求項4】
棒状二酸化チタンの粒子表面がAl、Si、Zr、Ti、Znの群より選ばれる少なくとも1種の元素の含水酸化物および/または酸化物で被覆されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の化粧料。
【請求項5】
棒状二酸化チタンの粒子表面がシリコーン化合物、シラン類、金属石鹸、フッ素化合物、水溶性高分子化合物、N−アシル化リジンの群より選ばれる少なくとも1種の有機物で被覆されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の化粧料。




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−308395(P2007−308395A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−137051(P2006−137051)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(000000354)石原産業株式会社 (289)
【Fターム(参考)】