説明

化粧材繰出容器

【課題】オネジが螺刻された芯チャック部材とメネジ筒との組み付け性を向上した化粧材繰出容器を提供すること。
【解決手段】先端に先端開口孔11が形成された先筒10と、先筒10に回転自在に組み付けられる基筒20と、外周にオネジ35が形成され、先筒10と基筒20との相対回転によって進退可能な芯チャック部材30と、オネジ35と螺合するメネジ42が形成されるとともに、基筒20の内周に係合して同期回転するメネジ筒40と、を備え、芯チャック部材30の先端に保持された棒状化粧材Aを、先筒10と基筒20との相対回転によって先端開口孔11より進退させる化粧材繰出容器1であって、メネジ筒40は、周の一部が開口するスリット44を有するC形断面に形成され、メネジ42は、スリット44と対向する内周壁48の一部に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧材の繰出機構に関する発明で、化粧材繰出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧材繰出容器で、繰出しリードを小さくしようとすると、繰出し部材のオネジのリードを小さく製作するため、これに螺合するためのメネジ部材が組付けるとき、何回転もしないと所定の位置に来ないので、非常に組付けが困難であった。そのため、組付を簡単にするメネジ筒が提案されるようになった。
【0003】
特許文献1には、回転式棒状物繰り出し具として、繰出し機構が開示されている。棒状物ホルダ5の外周部に形成された多数の係合突起5cがスペーサ4の内周に形成された螺旋案内部4bに係合、案内されている。
【0004】
図13、図14には、螺旋案内部4bを簡単に成形できるヒンジ部4eを備えたスペーサ4が開示されている。
【0005】
しかし、図13、図14のスペーサ4も、ヒンジ部4eを開いて螺旋案内部4bを棒状物ホルダ5の係合突起5cに合わせて組立てなければならず、簡単な組立て手法とは言えない。
【0006】
また、特許文献2では、更に改良を加えた回転式棒状物繰り出し具の中ねじ部材が開示されている。
【0007】
この中ねじ部材6は、末端部が大径の棒状繰り出し具の内部機構において、スライダ3のおねじ部3cに中ねじ部材6のめねじ部6iを装着する目的でなされたもので、中ねじ部材6は、外壁6aと内壁6bに分かれている。図9〜図11に詳細に図示されているように、外壁6aと内壁6bとは、横方向の連結部6gで連結され、連結部6gの上下には、空隙部6hが形成され、これによって、各部の肉厚をほぼ均一にし、ひけの問題を解消している。
【0008】
更に、内壁6bには、スライダ3のおねじ部3cと螺合するめねじ部6iが形成されている。
【0009】
また、組付け方法は、明細書中〔0020〕,〔0021〕,及び〔0022〕段落に記載されているが、特に〔0021〕段落に、「この場合、作業者は中ねじ部材6の外壁に形成された係止突条6kを指先で摘んで空隙部6fの中央方向に向かって力を加えると空隙部6fが狭められる一方スライダ3が案内部6eによってガイドされて割り溝6ddを押し開くので、中ねじ部材6は無理なくスライダ3に組み込むことが出来る。」と記載され、請求項1でも、「中ねじ部材の外側に形成された係止突条が上記割り溝と反対側に設けられた空隙部の両側外壁付近に夫々配置されてなることを特徴とする」と記載されている。
【0010】
故に、スライダ3とめねじ部6iの螺合方法は、割り溝6ddの反対側に形成された空隙部6fを、係止突条6kを摘んで狭ませることで割り溝6ddを拡げる手段を採っているため、また、スライダ3のおねじが円周上になく、一部しかないため、ワンタッチで螺合させる訳にはいかず、また、スムーズな繰出摺動も期待できない。
【0011】
更には、繰上の上昇限で更に繰上げる回転動作が行われると、めねじ部6iが無理な回転によって削られたり、中ねじ部材6そのものが歪むおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平9-238743号公報
【特許文献2】特許第3724769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、前記問題点を解決し、オネジが螺刻された芯チャック部材とメネジ筒との組み付け性を向上し、部材の損傷を防止可能な化粧材繰出容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の発明は、先端に先端開口孔が形成された先筒と、前記先筒に回転自在に組み付けられる基筒と、外周にオネジが形成され、前記先筒と前記基筒との相対回転によって進退可能な芯チャック部材と、前記オネジと螺合するメネジが形成されるとともに、前記基筒の内周に係合して同期回転するメネジ筒と、を備え、前記芯チャック部材の先端に保持された棒状化粧材を、前記先筒と前記基筒との相対回転によって前記先端開口孔より進退させる化粧材繰出容器であって、前記メネジ筒は、周の一部が開口するスリットを有するC形断面に形成され、前記メネジは、前記スリットと対向する内周壁の一部に形成されることを特徴とする。
【0015】
第2の発明は、前記メネジは、前記スリットのスリット幅より大きな幅に形成されることを特徴とする。
【0016】
第3の発明は、前記メネジ筒の外周には、前記基筒の内周に向かって突設した複数の縦リブが形成され、前記基筒の内周には、前記縦リブが係合して前記メネジ筒と同期回転可能にするローレットが形成され、前記縦リブのうち少なくとも一つは、前記スリットと対向する位置の外周壁より突設されることを特徴とする。
【0017】
第4の発明は、前記メネジ筒の前記スリットの幅は、前記オネジの外径より小径に形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明によれば、芯チャック部材のオネジと螺合するメネジが内周に形成されたメネジ筒は、周の一部が開口するスリットを有するC形断面に形成されるため、スリットから芯チャック部材を嵌着し、オネジとメネジとを螺合させることができる。このとき、メネジ筒のメネジは、スリットと対向する内周壁の一部に形成されるため、芯チャック部材をメネジ筒に嵌着するときに、オネジとメネジとが螺合しやすく、芯チャック部材がメネジ筒内へと入りやすい。したがって、オネジが螺刻された芯チャック部材とメネジ筒との組み付け性を向上できる。
【0019】
また、繰上上昇限,繰下下降限で更なる回動負荷がかかった場合、芯チャック部材のオネジとメネジ筒のメネジとは、オネジがスリット方向へ逃げることで螺合状態が解除され、メネジ筒のスリット両端の内周に押されて螺合復帰してクラッチを繰り返し、両部材に損傷を与えることを防止できる。また、クラッチ時には、螺合解除と螺合復帰との繰り返しでパチパチと音をたてて繰上上昇限又は繰下下降限であることを知らせる。
【0020】
第2の発明によれば、メネジ筒のスリットと対向する内周壁に設けられるメネジは、スリットのスリット幅より大きな幅に形成されるため、芯チャック部材のオネジとの螺合を確実なものとできる。
【0021】
第3の発明によれば、基筒の内周にローレットが形成されるため、メネジ筒の縦リブがローレットに係合して、基筒とメネジ筒を一体として同期回転させることができる。また、メネジ筒が螺着された芯チャック部材を、基筒に挿入するだけで螺合機構が構成されるため、組付が容易である。
【0022】
第4の発明によれば、スリットは、芯チャック部材のオネジの直径寸法より小さな幅に形成されるため、ワンタッチで棒軸に螺着したメネジ筒は、メネジとオネジとが螺合するとともに、棒軸より落下脱出する事がないので、この状態での移動や輸送が可能で、組付の簡素化に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る化粧材繰出容器1を示すもので、(A)は化粧材Aの繰下下降限の縦一部断面図をあらわし、(A’)はA−A断面図をあらわす。
【図2】化粧材Aの繰上上昇限を示すもので、(B)は化粧材繰出容器1の縦一部断面図をあらわす。(B’)はメネジ筒40のメネジと二条螺旋ネジを備えた棒軸34のオネジとの螺合位置をあらわす。
【図3】図1の化粧材繰出容器1に使用される各部材を示し、(C)は先筒10、(C’)はB−B断面図、(D)は基筒20、(E)は芯チャック部材30、(F)はメネジ筒40をあらわしている。
【図4】メネジ筒の詳細を示した図であり、(F’)はメネジ筒40の拡大図、(F’’)は別の形態であるメネジ筒140をあらわしている。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る化粧材繰出容器201を示すもので、(I)は化粧材Bの繰下下降限の縦一部断面図、(J)はキャップ203、(K)はE−E断面図、(L)はメネジ筒240、(L’)は別の形態であるメネジ筒340をあらわしている。
【図6】図5の化粧材繰出容器201に使用される各部材を示し、(M)は先筒210、(M’)はF−F断面図、(N)は芯チャック部材230、(O)は基筒220をあらわし、(P)は、芯チャック部材330、(P’)は、G−G断面図をあらわす。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を図により詳細に説明する。
【0025】
(第1の実施の形態)
以下、図1から図4を参照しながら、第1の実施の形態に係る化粧材繰出容器1について説明する。
【0026】
図1(A)は、本発明の第1の実施の形態に係る化粧材繰出容器1の縦一部断面図を示すもので、ここで使用されている化粧材Aは、例えば、アイブロウ,アイライナー,リップライナー等の小径の棒状化粧材を示している。また、図1(A)は、化粧材Aの繰下下降限を示している。
【0027】
図2(B)は、化粧材Aの繰上上昇限を示す。
【0028】
図1(A)及び図2(B)に示される化粧材繰出容器1の各部材を説明する。それぞれの部材は図3に図示されている。
【0029】
図3(C)に示す先筒10は、軸方向に摘部14と、これに続く基筒嵌入部15より構成され、先端開口孔11とほぼ同寸法で貫通孔12が穿設され、この貫通孔12に沿って4本の摺動溝13が設けられている。
【0030】
また、基筒嵌入部15には、基筒20と回動可能に連結する環状凸部18が設けられるとともに、Oリング溝16が設置される。
【0031】
図3(D)に示す基筒20は、円筒形状を形成し、先端開口孔25の内側に前記先筒10と連結される嵌合凹部23が設けられ、内周の中段には、段部22とローレット21が形成される。
【0032】
図3(E)に示す芯チャック部材30は、先端の化粧材保持部31が、四本の爪片32で形成され、この爪片32に延設して四本の係合条部33が設けられ、この係合条部33より更に下方方向に棒軸34が外周にストローク長のオネジ35を螺刻、延設し、後部に、この棒軸34より大径の円筒部36が形成される。
【0033】
芯チャック部材30は、オネジ直径寸法Xが、係合条部直径寸法Rより小さく、かつ円筒部直径寸法Sより小さく形成されるため、図3(F)に示すメネジ筒40は、棒軸34がスリット44から押し込まれる形で組付けられる。
【0034】
以下、図4を参照して、メネジ筒40を更に詳しく説明する。
【0035】
図4(F’)の拡大図は、左側より正面立体図、C−C縦断面図、P矢視図と区別され、メネジ筒40は、薄肉45でC形筒にプラスチックなどの樹脂で成形される部材であって、薄肉45の寸法は、弾性が充分に活用できる0.25mm〜0.55mm程度を理想とする。
【0036】
メネジ筒40は、先筒10の下端面17と基筒20の段部22との間に挟まれることで軸方向に拘束され、縦リブ41a〜41cが基筒20のローレット21に係合することでその回転が拘束される。
【0037】
メネジ筒40は、周の一部が開口して形成される軸方向に延びるスリット44と、芯チャック部材30のオネジ35に対応して内周壁48に形成されるメネジ42とを備える。メネジ筒40は、スリット44が設けられることで、C形の断面形状になるように形成される。これにより、スリット44からメネジ筒40に棒軸34を嵌着することができる。
【0038】
スリット44のスリット幅Yは、棒軸34のオネジ35の外径より小さくなるように形成する。これにより、棒軸34をメネジ筒40に押し込んで嵌入することが可能であると共に、嵌入された棒軸34がメネジ筒40から抜けることを防止できる。また、メネジ筒40の薄肉45は、弾性が充分に活用できる0.25mm〜0.55mm程度のプラスチックで成形されるため、メネジ筒40に芯チャック部材30の棒軸34が嵌着される際に、棒軸34によって瞬時にスリット44の開口幅Yを拡げることができる。
【0039】
メネジ筒40のスリット44と対向する内周壁48の一部にメネジ42を列状に連続して設置したことを第1の特徴としている。実施例においては、左二条ネジL=1mm、P=0.5mmが、0.25mmの高さで11山設けられている。これにより、芯チャック部材30をスリット44に押し当て、押し込めば、メネジ42とオネジ35との螺合は完了する。この動作は、ワンタッチで行うことが可能である。
【0040】
図4(F’)に示すメネジ42のメネジ幅Zは、メネジ筒40内周壁48における、メネジ42が形成されている部分の幅である。メネジ42は、メネジ幅Zがスリット44のスリット幅Yより大きくなるように形成される。メネジ42のメネジ幅Zを最大限に大きく設けることで、棒軸34のオネジ35との螺合距離を長くし、螺合を確実なものとしている。
【0041】
また、メネジ筒40の外周壁47より、スリット44に平行に縦リブ41a,41bが突設され、スリット44の反対側の外周壁47より縦リブ41cが突設される。これらの縦リブ41a〜41cが基筒20内径の段部22とローレット21に係合することで、基筒20とメネジ筒40は一体化される。
【0042】
縦リブ41a〜41cのうち中央の縦リブ41cは、メネジ筒40におけるスリット44と対向する位置の外周壁47、即ちスリット44の180°反対側の外周壁47に形成される。スリット44と対向する位置の外周壁47に形成される縦リブ41cは、一本ではなく二本以上であってもよい。つまり、複数の縦リブ41a〜41cのうち少なくとも一つの縦リブ41cが、スリット44と対向する位置の外周壁47に形成される。
【0043】
ここで、メネジ筒40のスリット44と対向する内周壁48の一部には、メネジ42が形成されている。メネジ筒40のメネジ42と棒軸34のオネジ35との螺合によって、メネジ筒40には、棒軸34から離れる方向の力が作用する。そのため、棒軸34は、スリット44のスリット幅Yを拡げてメネジ筒40からはみ出ようとし、メネジ筒40は、棒軸34から離れようとする。
【0044】
メネジ筒40には、スリット44と対向する位置の外周壁47に縦リブ41cが設けられるため、ローレット21と係合した縦リブ41cがストッパとして機能し、メネジ筒40が棒軸34から離れようとするのを防止し、メネジ42とオネジ35との螺合を確実なものにする。
【0045】
更に、両端の縦リブ41a,41bは、メネジ筒40のスリット44に臨む自由端の外周壁47に形成される。これにより、棒軸34からスリット44のスリット幅Yを拡げるような力が作用した場合に、ローレット21と係合した縦リブ41a,41bがメネジ筒40の自由端を支持するストッパとして機能するため、メネジ筒40が変形してスリット44のスリット幅Yが大きくなることを防止できる。よって、メネジ筒40の剛性が増し、メネジ42とオネジ35との螺合を確実なものとし、棒軸34がメネジ筒40から抜けることを防止できる。
【0046】
三本の縦リブ41a〜41cは、それぞれ90°より大きな間隔で形成される。縦リブ41a〜41cのうち両端の二本の縦リブ41a,41bは、中央の縦リブ41cの反対側に向けてメネジ筒40に作用する力を受けることができる。よって、メネジ筒40がローレット21に係合したときに、外周の全ての方向からメネジ筒40に作用する力を三本の縦リブ41a〜41cで受けることができる。
【0047】
図4(F’’)の拡大図は、メネジ筒140を示す図で、スリット144の反対側の内周壁148の一部に単一のメネジ142を突設したものであり、棒軸34のオネジ35に螺合可能な例として挙げている。このように、メネジ142の山の数は一つ以上であれば幾つであってもよい。
【0048】
本発明の化粧材繰出容器1は、以下の手順で組付けられる。
【0049】
メネジ筒40のスリット44に芯チャック部材30の棒軸34を押し込んで棒軸34に嵌着する。この作業は、ワンタッチで行う事ができる。
【0050】
前記スリット幅Yは、オネジ直径寸法Xより小径に設定されているため、棒軸34に嵌着したメネジ筒40は、嵌着すると同時に棒軸34の円周上に螺刻されたオネジ35にメネジ筒40のメネジ42が螺合する。
【0051】
また、棒軸34に嵌着したメネジ筒40は、棒軸34から脱出する事も軸方向に位置がずれることもない。
【0052】
図3(E)に示す係合条部33の後端面33aと、メネジ筒40の前端面40aを接触する位置で嵌着し、この状態で先筒10の下端面17より芯チャック部材30の爪片32を摺動溝13に挿入していくと、爪片32に延設される係合条部33も摺動溝13内に誘導され、回転止機構が構成される。
【0053】
そして、先筒10の下端面17とメネジ筒40の前端面40aが当接する。芯チャック部材30が、その円筒部36から順次、基筒20の先端開口孔25より基筒20内に挿入されると、メネジ筒40の縦リブ41a,41b,41cは、基筒20内径の段部22とローレット21に係合して、メネジ筒40と基筒20は一体化される。そのとき、先筒10の環状凸部18と基筒20内周の嵌合凹部23は、回動可能に嵌合する事で組付が完了する。
【0054】
以上の様に組み付けされた化粧材繰出容器1が、図1に示す繰下下降限で示される。
【0055】
次に、作動について説明する。
【0056】
図1(A)の化粧材Aが充填された下降限に位置する化粧材繰出容器1の先筒10と基筒20とを相対回転させると、芯チャック部材30の係合条部33は、先筒10の摺動溝13に位置して回転止機構を構成し、棒軸34の円周上に螺刻したオネジ35は、メネジ筒40のメネジ42に螺合して繰出機構を構成し、また、メネジ筒40が基筒20と一体化されているため、化粧材Aは、棒軸34のオネジ35のリードに従って前進する。
【0057】
化粧材Aは、先筒10の先端開口孔より突出して化粧を可能とする。
【0058】
図2(B)は、繰上上昇限を示す図で、メネジ筒40の後端面40bに芯チャック部材30の円筒部36の前端面36aが当接した位置が繰上の上昇限として決定される。
【0059】
例えば、図1の繰下下降限の位置にある状態で更なる後退させる回動負荷がかかった場合、メネジ筒40のスリット44の反対側に設置したメネジ42から、棒軸34外周に螺刻したオネジ35は、螺合が解けてスリット44方向に微かに移動する。
【0060】
しかし、棒軸34のオネジ直径寸法Xは、スリット幅Yより大きいため、スリット44より脱出はしない。螺合が解けたオネジ35は、図4のP矢視図に図示されたスリット付近の内径面46に押され螺合復帰する。
【0061】
この作動により、パチパチと音をたてて螺合離脱と螺合復帰を繰返す事で、繰下の下降限位置を使用者に知らせる。
【0062】
繰出ピッチの小さい繰出容器では、繰下下降限より繰上上昇限迄の回転数が、実施例においてP=0.5mm、L=1mm、二条ネジストローク約25mmに設定しているので、25回転以上の回転が繰下下降限と繰上上昇限迄必要となるため、化粧材の充填は、機械によって自動回転させるのがほとんどである。そのため、回動負荷による繰上上昇限、繰下下降限のクラッチ機構は、必要な絶対条件である。
【0063】
本発明の繰下下降限におけるクラッチは、繰上上昇限でも行われ、パチパチと音をたてて繰上上昇限を知らせ、メネジ筒40及び芯チャック部材30の棒軸34のオネジ35に損傷を与える事がない。
【0064】
繰下下降限及び繰上上昇限におけるクラッチ時には、メネジ筒40に作用する棒軸34から離れる方向の力が、オネジ35とメネジ42との通常の螺合時と比べて大きくなる。このようなクラッチ時にもまた、スリット44と対向する位置の外周壁47に設けられる縦リブ41cが、ローレット21と係合した縦リブ41cがストッパとして機能し、メネジ筒40が棒軸34から離れようとするのを防止できる。また、両端のメネジ筒40のスリット44に臨む自由端の外周壁47に形成される縦リブ41a,41bもまたストッパとして機能し、棒軸34がメネジ筒40から抜けることを防止できる。
【0065】
更に、図2(B’)は、メネジ筒40のメネジ42と棒軸34に螺刻したオネジ35との螺合位置を示した図で、棒軸34の円周上にオネジを二条螺旋に螺刻した場合であり、オネジ35を35a,35bの二条とすると、35aのオネジは、35a1と42a、35a2と42c、35a3と42eと、メネジ筒40のメネジ42に対し、1個とびに螺合する事となる。
【0066】
実施例においては、P=0.5mm、L=1mm、ストローク約25mm、回転数25回以上となる。
【0067】
以上の実施の形態によれば、以下に示すような作用効果を奏する。
【0068】
化粧材繰出容器1では、メネジ筒40はC形の断面形状になるように形成され、スリット44と対向するメネジ筒40の内周壁48の一部にメネジ42を設けたため、芯チャック部材30をスリット44に押し当て、押し込めば、メネジ42とオネジ35の螺合は完了する。この動作は、ワンタッチで行うことが可能である。
【0069】
ここで、メネジ筒40のメネジ42は、スリット44と対向する一部の内周壁48の一部に形成されるため、芯チャック部材30をメネジ筒40に嵌着するときに、メネジ42とオネジ35とが螺合しやすい。したがって、オネジ35が螺刻された芯チャック部材30とメネジ筒40との組み付け性を向上できる。
【0070】
また、メネジ筒40は、芯チャック部材30に螺着した状態で基筒20と係合して同期回転する。先筒10と基筒20を相対回転させれば、芯チャック部材30は、オネジ35のリードに従い前進する。
【0071】
繰出ピッチの細い化粧材繰出容器1で、芯チャック部材30が繰上上昇限にある場合に、化粧材Aを先筒10の先端開口孔11より充填すると、芯チャック部材30を、繰下下降限迄繰下げなければならない。何処の位置で化粧材Aを充填しても、一度は上昇限迄繰上げ確認し、下降限迄繰下げる動作が行われる。
【0072】
繰出リードが小さい分、回転数が多くなるため、この動作は機械(図示省略)で行われ、上昇限,下降限で余分な回動負荷がかかる。
【0073】
本発明においては、繰上上昇限,繰下下降限で更なる回動負荷がかかった場合、芯チャック部材30のオネジ35とメネジ筒40のメネジ42との螺合が、スリット44方向へ棒軸34が逃げて螺合状態を解除し、また、メネジ筒40のスリット44両端の内周壁48に押されて螺合復帰を繰り返すため、パチパチと音をたててクラッチを繰り返し、両部材に損傷を与えない。また、この音で繰上上昇限を知らしめる。
【0074】
同様に、繰下下降限の回動負荷に対しても、パチパチと音をたて、これを知らせる。
【0075】
本発明の第1の効果は、繰上上昇限,繰下下降限において、音をたててこれを知らせるとともに、各部材に損傷を与えない事にある。
【0076】
また、メネジ筒40のスリット44と対向する内周壁48の一部に設けられるメネジ42のメネジ幅Zは、スリット44のスリット幅Yより大きな幅に設定されるため、芯チャック部材30のオネジ35との螺合を確実なものとでき、メネジ42は単一でも、列状に連続した複数のメネジ42でも設置可能である。
【0077】
また、メネジ筒40の外周壁47から三本の縦リブ41a〜41cが突設され、基筒20の内径にローレット21が形成されるため、縦リブ41a〜41cがローレット21に係合して、基筒20とメネジ筒40を一体として同期回転させることができる。
【0078】
メネジ筒40が螺着された芯チャック部材30を、基筒20に挿入するだけで螺合機構が構成されるため、組付が簡単である。
【0079】
また、メネジ筒40は、弾性のあるプラスチックなどの樹脂で薄肉に成形され、スリット44のスリット幅Yは、芯チャック部材30の棒軸34のオネジ35のオネジ直径寸法Xより小径に設定されているため、ワンタッチで棒軸34に螺着したメネジ筒40は、メネジ42とオネジ35とが螺合するとともに、棒軸34より落下脱出する事がないので、この状態での移動や輸送が可能で、組付の簡素化に貢献する。
【0080】
(第2の実施の形態)
以下、図5及び図6を参照しながら、第2の実施の形態に係る化粧材繰出容器201について説明する。なお、以下に示す実施の形態では、前述した実施の形態と重複する説明は適宜省略し、相違点のみについて説明する。
【0081】
第2の実施の形態に係る化粧材繰出容器201は、例えば口紅のような太い芯径の棒状の化粧材Bを対象とした容器である点で第1の実施の形態に係る化粧材繰出容器1と相違する。
【0082】
化粧材保持部231は、口紅のような太い芯径の化粧材Bを保持するために、先端が開口した円筒形に形成される。四本の爪片32で保持する化粧材保持部31とは異なり、円筒形の化粧材保持部231が化粧材Bの外周全周を保持するため、この化粧材保持部231は、口紅のような軟らかい材質の化粧材Bを保持することが可能である。
【0083】
化粧材Bの繰出上昇限は、芯チャック部材230の係合条部233の当接部236が、先筒210の係合条部摺動溝213の段部213aに当接することによって定まる。
【0084】
一方、化粧材Bの繰出下降限は、芯チャック部材230の後端面237が、メネジ筒240の前端面240aに当接することによって定まる。
【0085】
メネジ筒240は、三本の縦リブがそれぞれ90°間隔で形成されるため、三本のうち両端の二本の縦リブは、180°間隔で直線的に形成されている。
【0086】
また、図5(L’)に示すようなメネジ筒340を用いてもよい。メネジ筒340は、四本の縦リブを備える点で、前述した三本の縦リブを備えるメネジ筒と相違する。
【0087】
メネジ筒340には、それぞれ60°間隔で四本の縦リブが形成される。縦リブは、五本以上であってもよく、また、縦リブではなく基筒220のローレット221に対応する突起をメネジ筒340の外周全体に形成し、外周全体で基筒220に係合するようにしてもよい。
【0088】
また、図6(P)に示す芯チャック部材330のように、オネジ335が円周上に連続して形成されない場合にも、メネジ筒240と芯チャック部材330との螺合が可能である。
【0089】
芯チャック部材330の棒軸334の断面形状は、円形ではなく、二つの円弧の間が二本の弦で繋がれた形状である。つまり、棒軸334には、対向する二つの面が軸と平行に形成される。そのため、棒軸334には、オネジ335が全周に形成されず、対向する二か所の円周のみに形成される。
【0090】
芯チャック部材330は、金型を用いてプラスチックなどの樹脂で射出成型される。そのため、図6(P’)に示すPL(Parting Line:割型のパーティング・ライン)付近にオネジが形成されていない方が成形が容易である。芯チャック部材330では、メネジ筒240のスリット244のスリット幅は、棒軸334のオネジが形成されていない二つの面の二面幅より小さく形成される。これにより、芯チャック部材330が回転してオネジ335がどの角度であっても、棒軸334がスリット244から抜けることが防止される。
【0091】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の化粧材繰出容器は、棒状化粧材などの化粧材を繰り出して使用するための容器として利用することができる。
【符号の説明】
【0093】
1 化粧材繰出容器
10 先筒
11 先端開口孔
20 基筒
21 ローレット
25 先端開口孔
30 芯チャック部材
31 化粧材保持部
34 棒軸
35 オネジ
40 メネジ筒
41a 縦リブ
41b 縦リブ
41c 縦リブ
42 メネジ
44 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に先端開口孔が形成された先筒と、
前記先筒に回転自在に組み付けられる基筒と、
外周にオネジが形成され、前記先筒と前記基筒との相対回転によって進退可能な芯チャック部材と、
前記オネジと螺合するメネジが形成されるとともに、前記基筒の内周に係合して同期回転するメネジ筒と、を備え、
前記芯チャック部材の先端に保持された棒状化粧材を、前記先筒と前記基筒との相対回転によって前記先端開口孔より進退させる化粧材繰出容器であって、
前記メネジ筒は、周の一部が開口するスリットを有するC形断面に形成され、
前記メネジは、前記スリットと対向する内周壁の一部に形成されることを特徴とする化粧材繰出容器。
【請求項2】
前記メネジは、前記スリットのスリット幅より大きな幅に形成されることを特徴とする請求項1に記載の化粧材繰出容器。
【請求項3】
前記メネジ筒の外周には、前記基筒の内周に向かって突設した複数の縦リブが形成され、
前記基筒の内周には、前記縦リブが係合して前記メネジ筒と同期回転可能にするローレットが形成され、
前記縦リブのうち少なくとも一つは、前記スリットと対向する位置の外周壁より突設されることを特徴とする請求項1又は2に記載の化粧材繰出容器。
【請求項4】
前記メネジ筒の前記スリットの幅は、前記オネジの外径より小径に形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の化粧材繰出容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−143156(P2011−143156A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8067(P2010−8067)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【特許番号】特許第4560583号(P4560583)
【特許公報発行日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000252090)鈴野化成株式会社 (32)