説明

化粧材繰出容器

【課題】化粧材繰出容器の部品点数を増やすことなく、確実にワンウェイ繰り出しが可能な化粧材繰出容器を提供すること。
【解決手段】先端に先端開口孔11が形成され化粧材αが内挿される先筒10と、先筒10に回転自在に組み付けられる基筒20と、内周にメネジ42が形成されるとともに基筒20の内周に一体化される螺旋筒40と、メネジ42と螺合するオネジ35が外周に形成され先筒10と基筒20との相対回転によって軸方向に移動して化粧材αを先端開口孔11から進出させる押出杆30とを備える化粧材繰出容器1であって、基筒20は、内周の軸方向に延設されるラチェット段部26を有し、押出杆30は、化粧材αを後退させようとするとラチェット段部26に当接して押出杆30と基筒20の相対回転を不能とするストッパー部37aを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧材の繰出機構に関する発明で、化粧材繰出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、同軸に連結される先筒と基筒との相対回転によって化粧材を進退させる化粧材繰出容器が用いられている。
【0003】
特許文献1には、先筒と軸筒との相対回転によって軸方向に移動するネジ軸と、軸筒に対するネジ軸の回転を一方向にのみ許容するラチェット機構とを備える棒状化粧材容器が開示されている。この棒状化粧材容器は、ラチェット機構によってネジ軸を進出可能かつ後退不能とする、いわゆるワンウェイ繰り出しが可能なものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−212613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の棒状化粧料容器では、軸筒に内挿される環状の固定カムと、スプリングによって軸方向に付勢され固定カムに係合する可動カムとによってラチェット機構を構成している。この棒状化粧材容器は、ラチェット機構を構成するための独立した部品が必要であるため、部品点数が多く構造も複雑である。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、化粧材繰出容器の部品点数を増やすことなく、確実にワンウェイ繰り出しが可能な化粧材繰出容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、先端に先端開口孔が形成され、化粧材が内挿される先筒と、前記先筒に回転自在に組み付けられる基筒と、内周にメネジが形成されるとともに、前記基筒の内周に一体化される螺旋筒と、前記メネジと螺合するオネジが外周に形成され、前記先筒と前記基筒との相対回転によって軸方向に移動し、前記化粧材を前記先端開口孔から進出させる押出杆と、を備える化粧材繰出容器であって、前記基筒は、内周の軸方向に延設されるラチェット段部を有し、前記押出杆は、前記化粧材を後退させようとすると前記ラチェット段部に当接して前記押出杆と前記基筒の相対回転を不能とするストッパー部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、化粧材は先端開口孔から進出可能であるが、化粧材を後退させようとすると、押出杆に形成されるストッパー部が、基筒に形成されるラチェット段部に当接して化粧材を後退不能とする。よって、ラチェット機構を構成するために他の独立した部品を設ける必要がない。したがって、化粧材繰出容器の部品点数を増やすことなく、確実にワンウェイ繰り出しを可能にできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(A)は、本発明の第1の実施の形態に係る化粧材繰出容器の断面図であり、(A’)は、図1(A)におけるA−A断面図である。(B)は、螺旋筒の斜視図及びP矢視図である。
【図2】(C)は、先筒の斜視図であり、(C’)は、図2(C)におけるB−B断面図である。(D)は、基筒の断面図であり、(D’)は、図2(D)におけるC−C断面の拡大図である。(E)は、押出杆の斜視図であり、(E’)は、図2(E)におけるT部の拡大図である。
【図3】(F)は、本発明の第2の実施の形態に係る化粧材繰出容器の断面図であり、(G)は、キャップの断面図である。(H)は、図3(F)におけるD−D断面図であり、(H’)は、図3(H)における螺旋筒を示す図である。
【図4】(I)は、先筒の断面図であり、(I’)は、図4(I)におけるE−E断面図である。(J)は、押出杆の斜視図である。(K)は、基筒の断面図であり、(K’)は、図4(K)におけるF−F断面図である。
【図5】(L)は、押出杆の変形例の斜視図であり、(L’)は、図5(L)におけるG−G断面図である。(M)は、押出杆の他の変形例の斜視図であり、(M’)は、図5(M)におけるH−H断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
(第1の実施の形態)
以下、図1及び図2を参照しながら、第1の実施の形態に係る化粧材繰出容器1について説明する。
【0012】
図1(A)は、本発明の第1の実施の形態に係る化粧材繰出容器1の断面図を示すものである。ここで使用される化粧材αは、例えば、アイブロー,アイライナー等の小径の棒状化粧材である。
【0013】
化粧材繰出容器1は、先端に先端開口孔11が形成され化粧材αが内挿される先筒10と、先筒10に回転自在に組み付けられる基筒20とを備える。また、化粧材繰出容器1は、内周にメネジ42が形成され基筒20の内周に係合して同期回転する螺旋筒40と、メネジ42と螺合するオネジ35が外周に形成され先筒10と基筒20との相対回転によって軸方向に移動して化粧材αを先端開口孔11から進出させる押出杆30とを備える。
【0014】
次に、化粧材繰出容器1を構成する各部材について説明する。
【0015】
図1(B),図2(C),(D),及び(E)は、化粧材繰出容器1を構成する各部材を示す図であり、図2(C)には先筒10、図2(D)には基筒20、図2(E)には押出杆30、図1(B)には螺旋筒40が各々示されている。
【0016】
図2(C)に示す先筒10は、先端の先端開口孔11に向けて外径が小さくなるように軸方向に設けられる摘部14と、摘部14における最も外径が大きな端部から軸方向に延設され、組み立てられた状態では基筒20に嵌入される基筒嵌入部15とを有する。
【0017】
基筒嵌入部15には、基筒20と相対回転可能に連結される環状凸部18と、Oリング(図示省略)が装着されるOリング溝16とが設けられている。このOリングによって、先筒10と基筒20との相対回転に適度な抵抗をもたせている。又、先筒10の内周には、先端開口孔11とほぼ同じ内径寸法の貫通孔12が穿設されるとともに、この貫通孔12に沿って、四本の摺動溝13が形成される(図2(C’)参照)。
【0018】
図2(D)に示す基筒20は、底面24を有する有底円筒状に形成される。基筒20の内周には、先筒10の環状凸部18に嵌合する環状凹部23と、螺旋筒40と係合するローレット21と、更に下方の軸方向に延設されるラチェット段部26とが形成される。
【0019】
ラチェット段部26は、図2(D’)に示すように、内径が徐々に変化する傾斜部25aと、段差によって内径が変化する段部25bとを有する。
【0020】
傾斜部25aは、その傾斜によって、内周の一方向(図2(D’)では時計回り方向)に向かってラチェット段部26の内径を徐々に縮小するものである。傾斜部25aは、ラチェット段部26の全周に等間隔で複数設けられ、その全てが同一方向に向かって傾斜する。
【0021】
段部25bは、円筒状の基筒20の径方向に立設され、隣り合う傾斜部25aどうしを連結する。具体的には、段部25bは、一方の傾斜部25aにおける内径が最小の端部と、他方の傾斜部25aにおける内径が最大の端部とを連結する。これにより、段部25bは、その段差の分だけ、内周の一方向に向かってラチェット段部26の内径を拡大する。
【0022】
図2(E)に示す押出杆30は、先筒10と係合して同期回転し、基筒20と相対回転する。押出杆30は、化粧材αを保持する化粧材保持部31を形成する四片の爪片32と、爪片32から延設され先筒10の摺動溝13を摺動する係合条部33と、係合条部33から軸方向に更に延設される棒軸34とを有する。棒軸34には、ストローク長のオネジ35が外周に形成され、このオネジ35の端部から棒軸34と比べて大径の円筒部36が同軸に延設される。
【0023】
円筒部36には、コの字状のスリット38によって区画される弾性片37が、円筒部36の外周に向けて突設される。弾性片37は、180°位相差で二つ設けられるが、一つ以上であれば幾つであってもよい。弾性片37における自由端の端面には、ストッパー部37aが形成される(図2(E’)参照)。
【0024】
押出杆30は、先端の爪片32を含む係合条部33の外径寸法が、棒軸34に螺刻されたオネジ35の外径寸法より大きく形成される。また、棒軸34に延設される円筒部36の外径寸法は、基筒20のラチェット段部内周27の寸法より微かに小さく、かつ、オネジ35の外径寸法より大きく形成される。押出杆30は、金型を用いたプラスチックの射出成形によって一部材で成形される。
【0025】
スリット38は、円筒部36の外周に、その周方向に沿ってコの字状に形成される。スリット38が形成されることによって、弾性片37が円筒部36の周方向に沿って形成される。弾性片37は、円筒部36から外周に突出して設けられ、組み立てられた状態で基筒20のラチェット段部26と当接する。
【0026】
ここで、先筒10と基筒20とが相対回転すると、押出杆30は、先筒10と一体に同期回転し、基筒20と相対回転する。よって、弾性片37は、傾斜部25a及び段部25bと連続的に当接しながらラチェット段部26のラチェット段部内周27を摺動することとなる。
【0027】
押出杆30は、先筒10側では、爪片32で化粧材αを保持し、基筒20側では、円筒部36の弾性片37が傾斜部25a及び段部25bと連続的に当接しながら摺動するため、先筒10,基筒20内の押出杆30は、左右にぶれることなく、スムースな摺動を行うことができる。
【0028】
先筒10と基筒20との相対回転によって化粧材αが繰り出される方向(図2(D’)では時計回り方向)に押出杆30が回転した場合には、弾性片37は、内径が徐々に縮小される傾斜部25aに沿って摺動し、円筒部36の内周に向けて押し込まれる。押出杆30が更に回転して弾性片37が段部25bに差し掛かると、ラチェット段部26の内径は段部25bの段差の分だけ拡大されるため、弾性片37は、「パチッ」と音を立てて円筒部36の外周に向けて拡がる。これにより、弾性片37が段部25bに引っ掛かることがなく、基筒20と押出杆30との相対回転が可能である。したがって、押出杆30が上昇して化粧材αを繰り出すことができるとともに、「パチッ」という音によって、化粧材αが繰り出されていることを使用者に知らせることができる。
【0029】
一方、先筒10と基筒20との相対回転によって化粧材αが繰り戻される方向(図2(D’)では反時計回り方向)に押出杆30が回転した場合には、弾性片37は、内径が徐々に拡大される傾斜部25aに沿って摺動し、円筒部36の外周に向けて拡がる。押出杆30が更に回転して弾性片37が段部25bに差し掛かると、ラチェット段部26の内径は段部25bの段差の分だけ縮小されるため、弾性片37のストッパー部37aが段部25bと当接し、基筒20と押出杆30とは、それ以上相対回転することができなくなる。これにより、先筒10と基筒20との相対回転によって化粧材αを後退させようとすると、ラチェット段部26にストッパー部37aが当接して、押出杆30と基筒20との相対回転が不能になり、化粧材αは後退できなくなる。
【0030】
以上より、基筒20のラチェット段部26と押出杆30の弾性片37とによってラチェット機構が構成され、押出杆30は、上昇可能かつ後退不能となる。これにより、いわゆるワンウェイ繰り出しが可能となる。
【0031】
このラチェット機構は、ラチェット段部26に対して弾性片37が周方向及び軸方向に摺動するものである。化粧材αを繰り出す際には、弾性片37が段部25bを越える際に「パチッ」という音とともに、弾性片37が拡がって傾斜部25aに当接することによる衝撃力が発生する。しかしながら、この衝撃力は、押出杆30の周方向に作用する力であり、軸方向に作用する力ではない。よって、ラチェット機構によって化粧材αに軸方向の力が作用することがないため、化粧材αが化粧材保持部31から抜け落ちることを防止できる。
【0032】
図1(B)に示す螺旋筒40は、周の一部にスリット状の開口部44を有するC形断面に形成され、その内周にはメネジ42が形成される。螺旋筒40は、棒軸34に開口部44を押しあて、そのまま押圧することで嵌着され、内周のメネジ42が棒軸34のオネジ35と螺合する。
【0033】
勿論、棒軸34と円筒部36とを有する第一の部材と、爪片32と係合条部33とを有する第二の部材とを分離して形成し、開口部44を有さない円筒状の螺旋筒を棒軸34に挿通した後に、第一の部材と第二の部材とを結合させて一体物としてもよい。
【0034】
螺旋筒40の外周壁47には、周方向に所定の間隔をあけて三個の縦リブ41a,41b,及び41cが突設される。縦リブ41a〜41cは、基筒20内周のローレット21に係合して、螺旋筒40と基筒20とを一体化する(図1(A’)参照)。これにより、螺旋筒40と基筒20とは一体として同期回転することとなる。
【0035】
縦リブ41a〜41cのうち中央の縦リブ41cは、螺旋筒40における開口部44と対向する位置の外周壁47、即ち開口部44の180°反対側の外周壁47に形成される。開口部44と対向する位置の外周壁47に形成される縦リブ41cは、一本ではなく二本以上であってもよい。つまり、複数の縦リブ41a〜41cのうち少なくとも一つの縦リブ41cが、開口部44と対向する位置の外周壁47に形成される。
【0036】
ここで、螺旋筒40における開口部44と対向する内周壁48の一部には、メネジ42が形成されている。螺旋筒40のメネジ42と棒軸34のオネジ35との螺合によって、螺旋筒40には、棒軸34から離れる方向の力が作用する。そのため、棒軸34は、開口部44のスリット幅を拡げて螺旋筒40からはみ出ようとし、螺旋筒40は、棒軸34から離れようとする。
【0037】
螺旋筒40には、開口部44と対向する位置の外周壁47に縦リブ41cが設けられるため、ローレット21と係合した縦リブ41cがストッパとして機能し、螺旋筒40が棒軸34から離れようとするのを防止し、メネジ42とオネジ35との螺合を確実なものにする。
【0038】
更に、両端の縦リブ41a,41bは、螺旋筒40の開口部44に臨む自由端の外周壁47に形成される。これにより、棒軸34から開口部44のスリット幅を拡げるような力が作用した場合に、ローレット21と係合した縦リブ41a,41bが螺旋筒40の自由端を支持するストッパとして機能するため、螺旋筒40が変形して開口部44のスリット幅が大きくなることを防止できる。よって、螺旋筒40の剛性が増し、メネジ42とオネジ35との螺合を確実なものとし、棒軸34が螺旋筒40から抜けることを防止できる。
【0039】
なお、螺旋筒40と基筒20とは、各々別体に形成され、縦リブ41a〜41cとローレット21との係合によって一体化されるものであるが、基筒20の内周にメネジ43を形成し、螺旋筒40と基筒20とを一体に形成してもよい。
【0040】
次に、本発明の化粧材繰出容器1の組み立て方法について説明する。
【0041】
螺旋筒40の開口部44を押出杆30の棒軸34に押しあて、そのまま押圧して嵌着し、メネジ42とオネジ35とを螺合させる。その際、螺旋筒40の上端面45を押出杆30の係合条部33の下端33a(図2(E)参照)に接触させながら、押出杆30と螺旋筒40とを組み立てる。組み立てられた押出杆30と螺旋筒40とを基筒20の開口部から挿入すると、螺旋筒40の外周から突設した縦リブ41a〜41cが、基筒20の内周のローレット21に係合して、基筒20と螺旋筒40とは一体化する。
【0042】
次に、先筒10の貫通孔12に押出杆30を挿通し、爪片32を摺動溝13に係合させる。そして、先筒10の基筒嵌入部15に形成された環状凸部18と、基筒20の環状凹部23とを嵌合することで組み立てが完了する。
【0043】
このように組み立てられた化粧材繰出容器1は、図1(A)に示す状態である。図1(A)は、押出杆30が繰出下降限にある状態を示している。又、この下降限の状態で、先筒10の先端開口孔11から化粧材αが挿入され、爪片32によって保持される。
【0044】
以下、化粧材繰出容器1の作動を説明する。
【0045】
化粧材αを先端開口孔11から進出させる場合には、図1(A)に示される化粧材繰出容器1を先筒10と基筒20を所定の回転方向に相対回転させると、押出杆30の棒軸34に形成されたオネジ35は、螺旋筒40のメネジ42と螺合して繰出機構を構成する。螺旋筒40は基筒20と一体化しているため、押出杆30は。微動に上昇をはじめる。このとき、化粧材αを保持する爪片32と、爪片32から延設される係合条部33とが、先筒10の摺動溝13を摺動して回転止機構を構成する。
【0046】
押出杆30の後部に形成された円筒部36は、オネジ35のリードに応じて回転しながら基筒20内を微動に前進する。その際、図2の(D’)に示すラチェット段部26の傾斜部25aに沿って回転することで、円筒部36に設置した弾性片37は傾斜部25aに沿って回動する。
【0047】
押出杆30が、繰り出し上昇限まで繰り出され、更なる回動負荷がかかった場合には、開口部44の方向へ棒軸34が逃げて螺合状態を解除し、また、螺旋筒40における開口部44の両端の内周壁48に押されて螺合復帰を繰り返すため、「パチパチ」と音をたててクラッチを繰り返し、両部材に損傷を与えない。また、この音によって使用者に繰り出し上昇限を知らしめる。
【0048】
なお、化粧材αが繰り出される方向に先筒10と基筒20とが相対回転する際には、上述したラチェット機構によっても「パチッ」という音が発生する。押出杆30の繰り出し上昇限においては、ラチェット機構による「パチッ」という音と、クラッチによる「パチパチ」という音とが共に発生する。よって、使用者には、音の変化によって、化粧材αをこれ以上繰り出せないことが知らされる。
【0049】
一方、化粧材αを先筒10内に後退させる場合には、先筒10と基筒20とを逆方向に相対回転させる。このとき、円筒部36の弾性片37のストッパー部37aが、ラチェット段部26の段部25bに当接して回動を不能とする。これにより、ワンウェイの繰出機構が構成される。
【0050】
以上の構成によれば、微動に化粧材を繰出す化粧材容器において、ラチェット機構を構成するための独立した部材を増加することもなく、安全で確実なワンウェイの繰出機構を製作することが可能である。
【0051】
以上の実施の形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0052】
化粧材αは先端開口孔11から進出可能であるが、先筒10と基筒20との相対回転によって化粧材αを後退させようとすると、押出杆30に形成されるストッパー部37aが、基筒20に形成されるラチェット段部26に当接して化粧材αを後退不能とする。よって、ラチェット機構を構成するために他の独立した部品を設ける必要がない。したがって、化粧材繰出容器1の部品点数を増やすことなく、確実にワンウェイ繰り出しを可能にできる。
【0053】
また、化粧材繰出容器1のラチェット機構は、ラチェット段部26に対して弾性片37が周方向に摺動するものである。化粧材αを繰り出す際には、弾性片37が段部25bを越える際に「パチッ」という音とともに、弾性片37が拡がって傾斜部25aに当接することによる衝撃力が発生する。しかしながら、この衝撃力は、押出杆30の周方向に作用する力であり、軸方向に作用する力は発生しない。よって、ラチェット機構によって化粧材αに軸方向の力が作用することがないため、化粧材αが化粧材保持部31から抜け落ちることを防止できる。
【0054】
(第2の実施の形態)
以下、図3から図5を参照しながら、本発明の第2の実施の形態に係る化粧材繰出容器101について説明する。なお、以下に示す各実施形態では前述した実施の形態と同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0055】
第2の実施の形態では、化粧材αと比べて軟らかく芯径が太い化粧材βが用いられる点で、第1の実施の形態とは相違する。
【0056】
化粧材繰出容器101は、先端に先端開口孔11が形成され化粧材βが内挿される先筒110と、先筒110に回転自在に組み付けられる基筒120と、基筒120の外周に嵌着されて先筒110を覆うキャップ103とを備える。また、化粧材繰出容器101は、内周にメネジ42が形成され基筒120の内周に係合して同期回転する螺旋筒140と、メネジ42と螺合するオネジ35が外周に形成され先筒110と基筒120との相対回転によって軸方向に移動して化粧材βを先端開口孔11から進出させる押出杆130とを備える。
【0057】
化粧材βは、例えば、口紅,コンシーラー,クリームアイシャドウ等の比較的芯径が太く軟らかいものである。先筒110,基筒120,及び螺旋筒140は、化粧材βに対応して大径に形成される等の形状の相違を除いて化粧材繰出容器1における先筒10,基筒20,及び螺旋筒40と同様の構成であるため、ここでは説明を省略する。
【0058】
図4(J)に示す押出杆130は、先筒110と係合して同期回転し、基筒120と相対回転する。押出杆130は、化粧材βを保持する化粧材保持部131と、化粧材保持部131の外周に形成され先筒110の摺動溝13を摺動する係合条部133と、係合条部133から軸方向に延設される棒軸34とを有する。棒軸34には、ストローク長のオネジ35が外周に形成され、このオネジ35の端部から棒軸34と比べて大径の円筒部136が同軸に延設される。
【0059】
化粧材保持部131は、太い芯径の化粧材βを保持するために、先端が開口した円筒形に形成される。四本の爪片32で保持する化粧材保持部31(図2(E)参照)とは異なり、円筒形の化粧材保持部131が化粧材βの外周全周を保持するため、この化粧材保持部131は、口紅のような軟らかい材質の化粧材βを保持することが可能である。
【0060】
一般に、口紅のような軟らかい材質の化粧材βを用いる場合には、先端開口孔11から化粧材βが突出した状態でキャップ103を装着すると、キャップ103によって押しつぶされた化粧材βが、先端開口孔11の周囲に付着するおそれがある。そこで、オネジ35及びメネジ42の繰り出しピッチを小さく設定し、化粧材βを微小量だけ繰り出すようにしている。
【0061】
また、円筒部136には、L字状のスリット138によって区画される弾性片137が、円筒部136の外周に向けて突設される。弾性片137は、180°位相差で二つ設けられるが、一つ以上であれば幾つであってもよい。弾性片137における自由端の端面には、ストッパー部137aが設けられる。
【0062】
弾性片137は、円筒部136における自由端の端部に形成される。弾性片137が端部に形成されると、円筒部36の軸方向略中央に弾性片37が形成される場合と比べて、円筒部136の全長を短くすることができる。これにより、化粧材繰出容器101の全長が抑制される。
【0063】
先筒110と基筒120との相対回転によって化粧材βが繰り出される方向に押出杆130が回転した場合には、弾性片137は、内径が徐々に縮小される傾斜部25aに沿って摺動し、円筒部136の内周に向けて押し込まれる。押出杆130が更に回転して弾性片137が段部25bに差し掛かると、ラチェット段部26の内径が段部25bの段差の分だけ拡大されるため、弾性片137は、「パチッ」と音を立てて円筒部136の外周に向けて拡がる。これにより、弾性片137が段部25bに引っ掛かることがなく、基筒120と押出杆130との相対回転が可能である。したがって、押出杆130が上昇して化粧材βを繰り出すことができるとともに、「パチッ」という音によって、化粧材βが繰り出されていることを使用者に知らせることができる。
【0064】
一方、先筒110と基筒120との相対回転によって化粧材βが繰り戻される方向に押出杆130が回転した場合には、弾性片137は、内径が徐々に拡大される傾斜部25aに沿って摺動し、円筒部136の外周に向けて拡がる。押出杆130が更に回転して弾性片137が段部25bに差し掛かると、ラチェット段部26の内径が段部25bの段差の分だけ縮小されるため、弾性片137のストッパー部137aが段部25bと当接し、基筒120と押出杆130とは、それ以上相対回転することができなくなる。これにより、先筒110と基筒120との相対回転によって化粧材βを後退させようとすると、ラチェット段部26にストッパー部137aが当接して、押出杆130と基筒120との相対回転が不能になり、化粧材βは後退できなくなる。
【0065】
以上より、基筒120のラチェット段部26と押出杆130の弾性片137とによってラチェット機構が構成され、押出杆130は、上昇可能かつ後退不能となる。これにより、いわゆるワンウェイ繰り出しが可能となる。
【0066】
ここで、先端開口孔11から繰り出された化粧材βは、化粧時の押圧によって押しつぶされたり、体温によって溶けた部分が拡がったりして先端が拡径する場合がある。そのため、仮に、化粧材βが繰り戻される場合には、繰り戻しの際に先端開口孔11の周囲に化粧材βの一部が付着するおそれがある。そこで、化粧材繰出容器101では、ラチェット機構を設けて繰り戻しを不可能にしている。これにより、微小量だけ突出した化粧材βを使いきった後、繰り戻さずにキャップ103を装着するようにしている。
【0067】
以上の実施の形態によれば、化粧材繰出容器101は、化粧材βが突出し過ぎないようにオネジ35及びメネジ42の繰り出しピッチを小さくし、ラチェット機構によって化粧材βのワンウェイ繰出を可能とすることで、口紅のような軟らかい材質の化粧材βに対応可能である。
【0068】
また、図5(L’)に示す押出杆230のように、オネジ235が円周上に連続して形成されない場合にも、螺旋筒140と押出杆230との螺合が可能である。
【0069】
押出杆230の棒軸234の断面形状は、円形ではなく、二つの円弧の間が二本の弦で繋がれた形状である。つまり、棒軸234には、対向する二つの面が軸と平行に形成される。そのため、棒軸234には、オネジ235が全周に形成されず、円周上の対向する二か所のみに形成される。
【0070】
押出杆230は、金型を用いてプラスチックなどの樹脂で射出成型される。そのため、押出杆230を成形する際に用いる割型のPL(Parting Line:パーティング・ライン)付近にオネジが形成されていない方が成形が容易である。押出杆230では、螺旋筒140における開口部44のスリット幅は、棒軸234のオネジが形成されていない二つの面の二面幅より小さく形成される。これにより、押出杆230が回転してオネジ235がどの角度になっても、棒軸234が開口部44から抜けることが防止される。
【0071】
また、図5(M)に示す押出杆330のように、スリットが形成されることで円筒部から突出する弾性片の代わりに、円筒部336の外周に突設される単数又は複数の羽根337を設けてもよい。
【0072】
羽根337は、円筒部336の外周に、180°間隔で二つ突設される。羽根337は、図5(M’)に示すように、円筒部336に対して垂直ではなく、円筒部336に対して垂直な位置から所定の傾斜角Rだけ傾斜した傾斜部337bを有する。羽根337は、その自由端にストッパー部337aを有する。
【0073】
先筒110と基筒120との相対回転によって化粧材βが繰り出される方向(図5(M’)では時計回り方向)に押出杆330が回転した場合には、羽根337は、傾斜角Rが大きくなるように撓んで変形する。これにより、羽根337は、ラチェット段部26の段部25b(図2(D’)参照)を乗り越えることができる。よって、押出杆330は、ラチェット段部内周27(図2(D’)参照)を摺動することができる。
【0074】
一方、先筒110と基筒120との相対回転によって化粧材βが繰り戻される方向(図5(M’)では反時計回り方向)に押出杆330が回転した場合には、羽根337は、傾斜角Rが小さくなるように、即ち、羽根337が円筒部336に対して垂直に近付くように変形しようとする。しかしながら、段部25bを乗り越えるためには、羽根337が円筒部336に対して垂直な状態を越えて大きく変形する必要があり、これには大きな力が必要である。
【0075】
これにより、羽根337は、ストッパー部337aがラチェット段部26の段部25bに引っ掛かり、段部25bを乗り越えることができない。よって、押出杆330は、ラチェット段部内周27を摺動することができない。
【0076】
以上より、押出杆330のように、円筒部336から突設される羽根337を設け、羽根337の自由端面をストッパー部337aとした場合にも、ワンウェイの繰出機構を構成することが可能である。
【0077】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の化粧材繰出容器は、棒状化粧材や液状化粧材などの化粧材を繰り出して使用するための容器として利用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 化粧材繰出容器
10 先筒
11 先端開口孔
20 基筒
21 ローレット
25a 傾斜部
25b 段部
26 ラチェット段部
30 押出杆
31 化粧材保持部
34 棒軸
35 オネジ
36 円筒部
37 弾性片
37a ストッパー部
38 スリット
40 螺旋筒
42 メネジ
44 開口部
α 化粧材
β 化粧材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に先端開口孔が形成され、化粧材が内挿される先筒と、
前記先筒に回転自在に組み付けられる基筒と、
内周にメネジが形成されるとともに、前記基筒の内周に一体化される螺旋筒と、
前記メネジと螺合するオネジが外周に形成され、前記先筒と前記基筒との相対回転によって軸方向に移動し、前記化粧材を前記先端開口孔から進出させる押出杆と、を備える化粧材繰出容器であって、
前記基筒は、内周の軸方向に延設されるラチェット段部を有し、
前記押出杆は、前記化粧材を後退させようとすると前記ラチェット段部に当接して前記押出杆と前記基筒の相対回転を不能とするストッパー部を有することを特徴とする化粧材繰出容器。
【請求項2】
前記押出杆は、
前記先筒と係合して同期回転し、前記化粧材を保持する化粧材保持部と、
前記化粧材保持部と比べて小径に形成され、前記化粧材保持部から同軸に延設されて外周に前記オネジが形成される棒軸と、
前記棒軸から同軸に延設される円筒部と、を有し、
前記ストッパー部は、前記円筒部の外周に突設されることを特徴とする請求項1に記載の化粧材繰出容器。
【請求項3】
前記円筒部は、
前記ラチェット段部の内径より小径に形成され、
外周に形成されるコの字状のスリットと、前記スリットによって区画され外周に向けて突設される弾性片と、を有し、
前記ストッパー部は、前記弾性片の自由端であることを特徴とする請求項2に記載の化粧材繰出容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−40230(P2012−40230A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184993(P2010−184993)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000252090)鈴野化成株式会社 (32)