説明

化粧用パックシート及び化粧品キット

【課題】圧縮成形された化粧用パックシートを顔形状に展開するときに破れないシートを提供する。
【解決手段】タブレット状に圧縮成形されており、湿潤時に圧縮回復性を有する乾燥状態の化粧用パックシートにおいて、該パックシートは、顔面の一部又は全部を被覆する形状に成形された吸水性シートからなり、該パックシート材は周縁部から中央部にかけて収束させるように塊状とされ、次いで圧縮成形されてなることを特徴とする化粧用パックシート、及びその圧縮パックシートと液状化粧料を備えた化粧品キット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円柱状などのタブレット状に乾燥状態で圧縮成形された化粧用パックシートに関し、さらに詳しくは、使用時に化粧水などの任意の液状化粧料を含ませて使用できるタイプの化粧用パックシートとそれを備えた化粧品キットに関する。
【背景技術】
【0002】
使用時に化粧水などを含ませて使用する圧縮成形された化粧用パックシートについては、含浸させる化粧料を使用者が任意に選択できることから、これまでも多用されてきており、この範疇の製品は多数上市されているし、これに関する技術も種々提案されている。
例えば、特開平8−38251号公報(特許文献1)には、顔を覆う形状に成形されたパックシートを乾燥状態で折り畳み、巻くことによってロール体を形成し、ロール体をプレス工程でその軸線方向に圧潰することによってこのような圧縮体を得る方法が開示されているとともに、従来技術としてフェイスマスクをそのままぐちゃぐちゃに縮めて圧縮することも記載されている。
【0003】
一方パックシート基材に化粧料を含浸または塗布工程を経て保持せしめ、乾燥した後、圧縮成形してタブレット状としたパック用マスクについて、国際公開WO/2004/22025号(特許文献2)に開示されている。しかし、このタブレット化については、公知の方法で製造できるとのみ記載されている。
【0004】
さらに、タブレット状に圧縮されたフェイスマスクシートに化粧水を含浸させて軟らかくし、これを顔型状に展開する際に折り重なった部分同士がくっついてはがしにくいた め、きれいな顔型状に展開するまでにはかなりの手間と時間がかかるという問題があり、これを解消するために不織布からなるフェイスマスクの片面、両面又は内面に穴あき樹脂フィルムを重ねて接合しておき、これをタブレット状に圧縮することは特開2000−287751号公報(特許文献3)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08−038251号公報
【特許文献2】国際公開第2004/022025号パンフレット
【特許文献3】特開2000−287751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示された技術によると、顔にフィットする所定形状に成形された基材を折り畳み、巻き取り、しかるのちに圧縮するという煩雑な工程を経るもので、機械的に実行しようとするとこれに伴う設備が必要になっていた。また、工程の歩留まりも悪いという問題も存在していた。
このような方法で得られる圧縮成形体は全体として高密度となり、使用時に湿潤状態としても液体が浸透しにくく、ほぐれにくく、さらに折り重なった部分同士がくっついてはがしにくいため、きれいな顔型状に展開するまでにはかなりの手間と時間がかかるという問題があった。また、無理にほぐそうとするとシートが破れてしまうという使用上の問題もあった。
また、従来の折り畳み、丸めてからプレスするという工程を経るために、プレス工程で折り目の部分がさらに局部的に高密度化して、シート基材を損傷する問題も実在していた。
さらに従来技術として記載されたぐちゃぐちゃに圧縮する方法によると、フェイスマスクの縁がどこにあるのか見当がつかず、広げる際にフェイスマスクの縁を摘むことが困難になるし、この方法で得られた圧縮成形体を化粧水などの液体に浸した場合、圧縮回復が起こっても、顔に貼付できるように解きほぐすには、折り合わせて重なった部分が引っ付いて剥がしにくく、薄い基材を使った場合には、目部、口部などの開口部位や、密着性のために設けられたスリット線の所で破れてしまうという使用性の問題があった。
【0007】
また、特許文献2の技術では、特定の化粧料を予め保持させた後で乾燥させるという余分な工程を経ることとなり、また、使用者が目的とする組成物と異なる場合は使えず、汎用性にかけるという欠点を有していた。
さらに、特許文献3記載のフェイスマスクシートは、タブレット状に圧縮されたフェイスマスクシートに化粧水を含浸させて、顔型状に展開する際に折り重なった部分同士がくっついてはがしにくいため、きれいな顔型状に展開するまでにはかなりの手間と時間がかかるという問題を解決するものであるが、その解決手段がフェイスマスクに穴あき樹脂フィルムを重ねるものであるから、不織布シートと穴あき樹脂フィルムとの圧縮特性が異なるために圧縮時に両者間で剥離が発生したり、破れが発生する問題があり、うまく圧縮されたとしても圧縮された成形体が嵩張り、製品として包装する場合、余分な包装材を消費する問題、使用時にはフィット性に欠ける問題、かつ使用後には機能しない穴あき樹脂フィルムが大きな廃棄物として生じることになる。
【0008】
本発明は、上記した問題点を解決しようと鋭意検討の結果到達したものであり、複雑な工程を採らずに、圧縮成形体が簡単に得られるとともに、使用時に、化粧水などの液体に浸して圧縮状態を解除後、展開する場合に薄い基材を使った場合でも破れの問題が発生することのない化粧用パックシートを提供しようとするものである。
また、パックを行う場合に、使用者が好みの任意の化粧料を選択して使用できるような化粧用パックシートを提供しようとするものである。
さらには使用者の多様な要求を満たせるように複数種類の液状化粧料と、化粧用パックシートとを組み合わせた化粧品キットを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、タブレット状に圧縮成形されており、水分の浸透により圧縮回復する乾燥状態の化粧用パックシートにおいて、該パックシートは、顔面の一部又は全部を被覆する形状に成形された吸水性シートからなり、該パックシートは周縁部から中央部にかけて収束させるように塊状とされ、次いで圧縮成形されてなることを特徴とする化粧用パックシートであって、前記化粧用パックシートに周縁部から中央方向に寄せ集めることによって隆起部を形成するように収束した状態で、該隆起部を圧潰するように圧縮成形されてもよく、前記化粧用パックシートが、圧縮の軸線方向の圧縮度が、これに垂直方向の圧縮度より大となるように圧縮成形され、摘み用部材が設けられるか着色部を有してもよく、該圧縮成形されたパックシートの嵩密度が、0.50g/cm〜0.90g/cmであってもよく、前記吸水性シート材が、コットン、パルプ又はレーヨンから選ばれる1種又は2種以上のセルロース繊維を70重量%以上含有する繊維シート、目付20g/m〜80g/mの繊維シートでもよく、また、そのようなパックシートと、液状化粧料を備えたことを特徴とする化粧品キットとする。
【発明の効果】
【0010】
本願発明は、パックシート基材を折り畳んで、巻いた後、圧縮するという従来の枠組みとは全く異なる発想に基いて得られた圧縮成形タイプの化粧用パックシートである。
パックシート基材を中央方向に寄せ集めて形成される隆起構造物を押し潰す方向でプレスするために、あまり高密度とはならず、使用時に化粧水等に浸して湿潤状態とすると速やかに水分が浸透し、圧縮状態が解きほぐされやすくなる。
また、本発明によると、複雑な多数の工程を得ることなく簡単に製造できるのでコスト面でもメリットを有する。
また、上記のようにプレス工程で付与する圧縮応力は、パックシートの展開を妨げる方向には殆ど作用しないので、平面状態への展開が容易になるという顕著な効果を奏する。
このように、製造性と、圧縮状態からの解除と顔面への装着に関し、使用性に特に優れた化粧用パックシートを得ることが初めて可能となった。
本発明によると、顔へのフィット性の点で、低目付の薄いパックシートを使用した場合においても、水分浸透後の解きほぐしが容易となり、シートの破れの問題を大幅に低減できる。ことに従来の技術では不可能とされていた20g/m〜60g/mの範囲の低目付パックシートの場合でも実現可能となったものである。
さらには、パックシートがフィット性を考慮した様々な形態のスリット線を有する場合であっても、シートを傷めずに解きほぐしが容易であるという顕著な効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】パックシート中央付近を指で摘み上げた状態の図
【図2】パックシート中央部付近を中心に同心円状に円形のプリーツを設けた図
【図3】パックシートに直線状のプリーツを設けた図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のパックシートは、嵩密度が0.50g/cm以上で、好ましくは0.6g/cmを超えるように略乾燥状態で圧縮成形されたパックシートであり、乾燥状態ではタブレット状の固形物であるが、水あるいは、水を主成分とする化粧水や乳液のような液状化粧料と接触せしめて水分が浸透し湿潤状態になると、恰も圧縮されていたバネが弾性回復するように急速に圧縮状態が開放されて弾性回復する。本発明は、この特性を利用したものであるが、従来技術のように高密度化することなく、湿潤状態になると速やかに圧縮構造が自然に開放され、解きほぐしが容易となる点が大きな特徴である。ここで乾燥状態とは、所定の乾燥条件に調節された状態に限らず、気乾状態をも包含するものである。
本発明のパックシートは周縁部から中央部にかけて収束させるように乾燥状態で塊状とされ、次いで圧縮成形されてなることを特徴とする化粧用パックシートであって、従来技術のように正確に折り畳んだり、ロール状に丸める工程を経て得た圧縮成形タイプの化粧用パックシートとは異なり、正確に折り畳むことを行わないので、圧縮前の段階の塊状のものはより多くの空隙部の前駆体が存在する。乾燥状態で圧縮するがゆえに、得られる圧縮体は高密度になりすぎない利点がある。
そのような塊状のものを圧縮すると、圧縮後においても依然として存在する空隙のために、化粧用パックシートとなっても従来のものよりも低密度である。これは、圧縮前の工程で、上述のように隆起部を形成すると、同時に谷部あるいは凹み部も同時に形成される。隆起部を押し潰す方向に圧縮応力を付加しても、三次元的に起伏のある構造であるために緻密化が阻害されるからである。
その結果、使用時に液状化粧料等が含浸される段階においても、該空隙が化粧水のような液状化粧料を浸透させるに必要な経路として存在しているので、その空隙を通って液状化粧料等が速やかに浸透し、圧縮状態が解きほぐれやすくなるのである。一端、水分が構造体内部に浸透して圧縮状態が開放されると、回復応力はまず、プレス方向、すなわち圧縮の軸線方向(圧縮体が円柱状であれば中心軸方向)に主に作用するが、これに伴って、これに垂直な方向、つまり中心から周囲に向かう方向にも回復力が作用して簡単に解きほぐしが出来るようになる。これは、プレス工程に際して、上記軸線方向の圧縮度が主体であるが、これに直交する方向に関しても、プレス金型により拘束されていたために回復力が作用することに起因する。
このような理由により、本発明のパックシートを、化粧水や水性の乳液のような比較的低粘度の液状化粧料と接触せしめて水分を浸透せしめると、簡単に圧縮状態が解放されるので、顔面にすぐに装着できるような平面状態に容易に解きほぐせ、その際にパックシートが破れたりする問題も大幅に低減できる。
【0013】
また、上記のように本発明のパックシートは周縁部から中央部にかけて収束させるように塊状とされる工程を含むので、その後に垂直方向に圧縮された後の成形体の中央部にはパックシートの中央部が、成形体の周縁部にはパックシートの周縁部が存在することになり、液状化粧料が浸透して解きほぐれた後においても、ほぐれた成形体の周縁部を引っ張ることはパックシートの周縁部を引っ張ることになるので、使用前にパックシートを展開することがより簡単になる。さらに予めパックシートの周縁部に摘み用部材や着色などによりマーキングすることにより、フェイスマスクを展開するために、使用者がパックシートに化粧料が浸透して少し展開しそうになっている状態で、どこを引っ張ればよいのかを容易に確認できる。
【0014】
前記化粧用パックシート材に隆起部を形成するように収束した状態で、該隆起部を圧潰するように圧縮成形するとき、圧縮方向に作用する圧縮力は大きいが、これに垂直な方向の圧縮力はこれに比し大きくなく、水分の浸透後にはより簡単に、迅速に拡布することが可能である。上記の周縁部から中央部にかけて収束させるように塊状とされた状態は隆起部が形成された状態である。かくして得られる隆起構造体には、山部あるいは凸部とともに、谷部あるいは凹部も存在しており、圧縮工程で山部あるいは凸部が圧縮変形を受けてもこの谷部あるいは凹部は圧縮されにくく空隙部として残存することになる。
【0015】
隆起部を形成する手段としては特に限定をしないが、例えば、A.パックシート中央部を指で少し摘み上げ、周囲部を中央部に寄せるようにしてまとめることにより収束させる手段が好ましく、また、B.パックシート中央部から周縁部にかけて略同心円状に山と谷の大まかな折り目からなるプリーツをつけ、その際に中央部ほど山と谷の間隔を大きくし、周縁部に近づくほど山と谷の間隔を小さくする。このような円状のプリーツを正確に折り畳むことはできないし、その必要はないものの、大まかにはそのプリーツの折り目を折り曲げるようにしてパックシートを収束させる手段もまた好ましい。なお、このB法の変形例として、所定形状に成形したマスク基材を平面上に載置し、外周縁から内側へほぼ均等に寄せ集めるようにする手段で形成することも好ましくできる。この変形例によって形成される隆起部は、複雑な起伏を有する立体構造となるが、これを圧潰して得られるタブレット状の圧縮体であっても、使用時に液状化粧料を含浸せしめたときの液の浸透性は良好で、含浸後、顔に装着できる状態までシートを破損することなく面状に容易に解きほぐせる。C.プリーツを設けて収束させる別法としては、パックシートに直線状の山と谷からなるプリーツを設け、パックシート中央部ほど、その山と谷の間隔を大きくし、周縁部に近づくほど小さくすることにより、プリーツを正確に折りたたまなくてもおおよそその山と谷を折り曲げるようにすると、一旦パックシート中央部の幅が広い棒状の折り曲げ体ができ、その棒状の長さが隆起部に相当する部分となる。
そして、上記AとBの方法において、もとのパックシートの面に垂直の方向、及び上記Cの方法においては棒状の折り曲げ体の棒の長さを短くする方向、のこれらの方向に圧縮させるには、それらの方向の圧縮度が、その圧縮方向に垂直の方向の圧縮度より大となるように圧縮成形させること、さらには、圧縮後の形状を考慮して塊状としたときの形状や、圧縮に要する力を調整することが必要で、結果的には、圧縮成形されたパックシートの嵩密度が、0.50〜0.90g/cmであることが好ましい。
この範囲内であると、使用開始前に圧縮体の形状を成形時のまま保つことが出来、かつ、化粧水などの液状化粧料と接触せしめて水分が十分浸透した湿潤状態になると、解きほぐしやすくなる。さらに好ましい範囲は、0.70〜0.85g/cmである。
なお、本発明でいう圧縮成形されたパックシートの嵩密度とは、成形物を室温下、気乾状態で1日以上保持した圧縮体の重量を、見掛け体積で割った値をいう。
かかる圧縮成形物を得るには、プレス用金型を使用した公知のプレス成形の手段によればよい。好ましいプレス条件は、成形物1個あたり、0.5〜0.9MPa程度の圧力を加えるのが良く、さらに好ましくは0.6〜0.8MPa程度の圧力が適当である。この範囲内であると、製品の寸法安定性が向上するとともに、湿潤時にパックシートを解きほぐしやすくなり、外観品位や基材損傷など製品品質を抑止することができる。また、プレス動作時間は、特段制限されるものではないが、好ましくは1ショットあたり0.5秒〜60秒程度の範囲内であればよい。なお、プレス工程の温湿度の環境設定は特に限定されず、任意に設定できるものである。かかるプレス工程では、パックシート基材として乾燥状態のものを供給して使用する。ここでいう乾燥状態は、気乾状態も包含するものである。このようにすると、プレス圧や時間のような操作条件が変動してもその影響を低減できるので、工程管理幅が広くなり好ましい。
上記A〜Cのいずれの方法で得られた圧縮体であっても、密度が疎な部分が存在しており、この疎な部分が湿潤時に化粧水の浸透を促進する流路として機能するために圧縮体内部へいち早く水分が浸透し、ほぐれやすくなる。
これに対し、従来法の折り畳み、ロール状に丸め、圧縮成形する方法では、本発明のシート基材と同じシート基材を使用しても、折り畳み、あるいはロール化する工程で構造物が全体的に緻密化し、これをさらに圧縮すると局部的にさらに高密度化しやすくなり、該高密度の部位では応力集中により、シート基材が損傷して製品不良となる場合があった。
一方、従来法の場合、使用の際、湿潤状態にしても圧縮体内部に液状化粧料が浸透しにくく、ほぐれるのに時間がかかるし、シートが密着しあっているので手指を使用しても、ほぐしにくくなるし、無理にほぐそうとすると破れたりしていた。
【0016】
その際の圧縮に使用する装置としては、パックシートの圧縮成形に使用されている公知の装置を適宜使用することが可能である。使用する金型に関しても公知の円柱状の圧縮パックシート製造用の金型であっても良いし、中央部が厚く、周縁部が薄い、例えば円錐型あるいはコーン型のような形状の圧縮パックシートを得ることができる金型であっても良い。このような中央部が厚く、周縁部が薄い形状の圧縮パックシートは、化粧料を浸透させた後において、円柱状のものよりもさらにパックシート周縁部を指によりつかみやすくなるものである。
【0017】
また、パックシートを構成する材料としては、コットン、パルプ又はレーヨンから選ばれる1種又は2種以上のセルロース繊維を70重量%以上含有する繊維シートを採用することが、水分の浸透に伴う圧縮回復性、そして使用時の液状化粧料の保持性、肌への刺激低減の点から好ましく、なかでも該セルロース繊維を85重量%以上とすることがより好ましく、さらに目付20g/m〜80g/mの繊維シートとすることが肌へのフィット性を担保するための柔軟性の点からみて適切である。本発明で好ましく使用できる繊維シートとして、上記セルロース質の不織布、織物、編み物を例示できる。
【0018】
また、上記のようにパックシートの周縁部が圧縮成形されたパックシートの周縁部に位置するものの、化粧料の浸透後の展開をさらに容易にするために、パックシートの周縁部に指で摘むための摘み部及び/又は着色部を形成することにより、使用者が指でどの部分を摘み、引っ張れば良いのかを示すことができる。
圧縮されるパックシートの形状や構造は任意のもので良いが、顔面の一部又は全部を被覆する形状に成形されたものであって、好ましくは、全顔形状のフェイスマスク、そして一部を覆う形状としては、上半分を覆う形状、あるいは下半分を覆う形状のものが本発明には適切である。なお、目、口、鼻にあたる部分の形状や、フィット性を高めるためのスリット線の位置や方向等は任意のものを使用できる。
【0019】
そして、このような圧縮成形されたパックシートは、複数個をまとめて樹脂製等の容器内にパッケージングすると共に、その容器に該パックシート1つと浸透させる化粧料を収納する凹部を設けておくことが、使用性の向上のためには好ましい。使用者はその凹部に1つのパックシートを配置し、さらに所望の液状化粧料を供給すると、その凹部内にてパックシートが展開されるものであるし、すでに液状化粧料が含浸されたパックシートとは異なり、状況に応じて使用する化粧料を任意に選択することが可能となる。
【実施例】
【0020】
図1は該パックシート材1を周縁部から中央部にかけて収束させるように塊状とするために、パックシート1中央部付近を指で摘み、かつ少し上方に持ち上げる状態とする。その後に、パックシート1の周囲に記載した矢印の方向に向けて手などによりパックシートを周縁部より中央部に向けて集めるように塊状となるようにまとめるための手で摘んだ状態である。
この状態からさらに、例えば別の手でパックシート1の周縁部を中央部に寄せるようにして収束し、全体を圧縮することによって塊状とし、その後に公知のパックシートの圧縮のための装置により圧縮をして所望の形状に圧縮成形することにより圧縮パックシートを得る。
【0021】
また、図2に記載するように、パックシート1中央部を中心に同心円状にプリーツを形成するように山2と谷3の一応の折り目を設けておき、パックシート1周縁部より中央部に収束するときには、中央部を指で摘んでも摘まなくても良く、プリーツにより正確ではないものの一応の折り目の形成を誘導することを通じて収束を誘導する。
さらにそのプリーツはパックシート1中央部ほど山2と谷3の間隔を大きくするように、パックシート周縁部ほど山2と谷3の間隔を小さくするように形成されることにより、手などで周縁部から中央部にかけて収束させると、そのプリーツを正確に折りたたまなくても、結果的には中央部に間隔が広い山2と谷3を反映してなる隆起部を有する収束されたものを形成することができる。
図2においては、パックシートの周縁部にはプリーツを形成していないが、これに限らず、周縁部にもプリーツを形成することも可能である。
【0022】
さらに、図3に記載のパックシートは、図2に記載のパックシート1のプリーツを直線状にして設けてなる例であり、やはりパックシート1中央部ほどプリーツの山2と谷3の間隔を広く、パックシート1周縁部ほどプリーツの山2と谷3の間隔を小さくしたものである。この例においても、例えば、任意に中央部を指で摘みながら、周縁部からプリーツを大まかに折り畳むようにし、次いで、プリーツの方向に沿って縮めるように力を加えて、最終的には周縁部から中央部にかけて収束させたような塊状とすることができるし、また中央部を指で摘まなくても、プリーツを折り畳むようにまとめ、得られた棒状体をその長さ方向に収束させて、隆起部を有する収束された塊状のものを得ることができる。
そしてこれらのパックシートにプリーツを形成する手段としては、山と谷が形成されて互いの山と谷がかみ合うようにされてなる上下の型の間に、成形したパックシートを載置し、上下の型を合わせるようにして、パックシートにプリーツを形成させる。
そしてこの際には、プリーツの山と谷の折り目を強くはっきりと形成しても良いが、弱く形成することにより、プリーツを畳むようにした際には、そのプリーツの折り目がパックシートを大まかに塊状にできる程度としてもよい。
【0023】
そして図2に記載されているように、図3記載のパックシートを含む各パックシート1において、周縁部に摘み用部材4及び/又は着色部5を設けておくと、圧縮パックシートはその外表面に摘み用部材4及び/又は着色部5が面することになる。これを使用時において化粧料を浸透させると、圧縮パックシートが膨潤して摘み用部材4の端部あるいは着色部5が圧縮パックシートから広がることにより、使用者が目視で展開するに都合が良い箇所を確認できるので、その後の展開が容易となって使用性が良好となる。摘み用部材としては、耳のような摘み部をパックシートと一体に形成することも出来るし、パックシートとは別体の帯状体や糸条体をパックシートに固定して形成しても良い。
【0024】
圧縮成形されたパックシートは、複数をまとめて樹脂製等の袋や容器内にパッケージングしてもよく、さらに、化粧水、水性乳液のような液状化粧料が収容された容器とキット化することも好ましい。
キットとする場合、該液状化粧料を注入し、圧縮成形されたパックシートを投入できるような凹部を有する容器部材もパッケージ内にセットしておくのが使用性の点でよい。使用者はその凹部に1つのパックシートを配置し、さらに液状化粧料を供給すると、その凹部内にてパックシート化粧料を吸収して展開されるものであるし、すでに化粧料が含浸されたパックシートとは異なり、状況に応じて使用する化粧料を任意に選択使用することが可能となる。
このような圧縮されたパックシートは、液状化粧料等のように浸みこませる液体と共にキット化され、その際には該化粧料の容器の蓋を、使用時において圧縮されたパックシートを投入し、かつ1回分の液状化粧料を注入して圧縮されたパックシートに浸みこませる容器とすることもできる。
【符号の説明】
【0025】
1・・・パックシート
2・・・プリーツの山
3・・・プリーツの谷
4・・・摘み用部材
5・・・着色部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タブレット状に圧縮成形されており、水分の浸透により圧縮回復する乾燥状態の化粧用パックシートにおいて、
該パックシートは、顔面の一部又は全部を被覆する形状に成形された吸水性シートからなり、
該パックシートは周縁部から中央部にかけて収束させるように塊状とされ、次いで圧縮成形されてなることを特徴とする化粧用パックシート。
【請求項2】
前記化粧用パックシートに隆起部を形成するように収束した状態で、該隆起部を圧潰するように圧縮成形されてなることを特徴する請求項1に記載の化粧用パックシート。
【請求項3】
前記化粧用パックシートが、圧縮の軸線方向の圧縮度が、これに垂直方向の圧縮度より大となるように圧縮成形されてなることを特徴とする請求項2に記載の化粧用パックシート。
【請求項4】
前記隆起部が、パックシートを周縁部から中央方向へ寄せ集めることによって形成されたものであることを特徴とする請求項2又は3に記載の化粧用パックシート。
【請求項5】
前記圧縮成形されたパックシートの嵩密度が、0.50g/cm〜0.90g/cmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の化粧用パックシート。
【請求項6】
前記吸水性シートが、コットン、パルプ又はレーヨンから選ばれた1種又は2種以上のセルロース繊維を70重量%以上含有する繊維シートであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の化粧用パックシート。
【請求項7】
前記吸水性シートが、目付20g/m〜80g/mの繊維シートであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の化粧用パックシート。
【請求項8】
前記パックシートに摘み用部材が設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の化粧用パックシート。
【請求項9】
前記パックシートに着色部が設けられていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の化粧用パックシート。
【請求項10】
請求項1〜9に記載の化粧用パックシートと、液状化粧料を備えたことを特徴とする化粧品キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−165766(P2012−165766A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146143(P2009−146143)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(595118010)
【Fターム(参考)】