医薬品製造制御装置、医薬品製造制御方法、医薬品製造制御プログラム、医薬品製造システム
【課題】医薬品の品質維持を、高い信頼性で実現すること。
【解決手段】製造工程に置かれた医薬品の状態を非破壊且つリアルタイムに測定可能な測定機器から測定データを取得し、取得されたデータに対して予め設定されている検量線モデルを適用して医薬品の中間製品重要品質特性(粒子径、水分値、フレーク密度、硬度、含量等)を推定し、推定された中間製品重要品質特性が、医薬品の重要品質特性(溶出、製剤均一性、含量、類縁物質等)が安定して得られるように予め設定された目標値又は目標値軌道に沿うように制御量をフィードバック制御する医薬品製造制御装置。
【解決手段】製造工程に置かれた医薬品の状態を非破壊且つリアルタイムに測定可能な測定機器から測定データを取得し、取得されたデータに対して予め設定されている検量線モデルを適用して医薬品の中間製品重要品質特性(粒子径、水分値、フレーク密度、硬度、含量等)を推定し、推定された中間製品重要品質特性が、医薬品の重要品質特性(溶出、製剤均一性、含量、類縁物質等)が安定して得られるように予め設定された目標値又は目標値軌道に沿うように制御量をフィードバック制御する医薬品製造制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品の製造工程を制御する医薬品製造制御装置、方法、プログラム、並びに医薬品製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医薬品製造の分野において、所望の品質を維持するための工夫がなされている。
【0003】
例えば、流動層転動造粒装置を用いて混合工程、造粒工程、乾燥工程を行う錠剤の製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、流動層転動造粒装置内の混合原料粉粒体の水分含有量が、事前の検証結果から導き出した値に沿って推移するように、バインダー溶液の吹き付け流量を工程毎に切り替えている。また、混合原料粉粒体の水分含有量は、近赤外照射装置を用いて測定される近赤外スペクトルを解析して行っている。
【0004】
また、近赤外スペクトルを解析して製剤における滑沢剤の混合状態をモニターする方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。この方法では、近赤外スペクトルの各波長における吸光度変動を算出し、これを滑沢剤の純スペクトルと比較することで、滑沢剤の特徴的なピークを含む波長領域を選択し、この波長領域でベースライン処理等を行うことにより滑沢剤の混合状態を評価している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−249359号公報
【特許文献2】特開2010−8404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の特許文献1に記載の方法では、バインダー溶液の吹き付け流量を各工程に対して一義的に決定しているため、外乱の影響等により混合原料粉粒体の水分含有量が所望の値とならない場合がある。この結果、最終製品である錠剤の品質がばらつく可能性がある。また、目標とする水分含有量を一定に保つ管理方法ではなく、理想プロファイルとなるようにリアルタイムコントロールする場合のほうが、より良い品質の医薬品を得ることが出来る場合もある。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、医薬品の品質維持を、高い信頼性で実現することが可能な医薬品製造制御装置、及び医薬品製造システムを提供することを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための一態様は、
製造工程に置かれた医薬品の状態を非破壊且つリアルタイムに測定可能な測定機器から測定データを取得し、取得されたデータに対して予め設定されている検量線モデルを適用して医薬品の中間製品重要品質特性(粒子径、水分値、フレーク密度、硬度、含量等)を推定し、推定された中間製品重要品質特性が、医薬品の重要品質特性(溶出、製剤均一性、含量、類縁物質等)が安定して得られるように予め設定された目標値又は目標値軌道に沿うように制御量をフィードバック制御する医薬品製造制御装置である。
【0009】
この一態様によれば、医薬品の品質維持を、高い信頼性で実現することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、医薬品の品質維持を、高い信頼性で実現することが可能な医薬品製造制御装置、及び医薬品製造システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施例に係る医薬品製造制御装置1、及びこれを含む医薬品製造システムのシステム構成例である。
【図2】制御コンピュータ10のハードウエア構成例である。
【図3】本実施例に係る医薬品製造システムにおいて実現される制御モデルを簡易に示す図である。
【図4】本実施例に係る医薬品製造システムにより実行される処理の流れを大まかに示すフローチャートである。
【図5】第1実施例に係る医薬品製造システムにより実行されるフィードバック制御に係る処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】画面制御部15によって制御される入出力装置40の表示画面遷移の概要を示す図である。
【図7】メインメニュー画面40Aの一例である。
【図8】品目選択画面40Bの一例である。
【図9】キーボード画面40Baの一例である。
【図10】準備運転/手動運転画面40Cの一例である。
【図11】自動運転画面40Dの一例である。
【図12】トレンドグラフ表示画面40Eの一例である。
【図13】設定値一覧画面40Fの一例である。
【図14】システム設定画面40Gの一例である。
【図15】品目設定画面40Hの一例である。
【図16】パスワード入力画面40Iの一例である。
【図17】警報リスト表示画面40Jの一例である。
【図18】筐体60に収容された医薬品製造制御装置1のハード構成例である。
【図19】本発明の第2実施例に係る医薬品製造制御装置2、及びこれを含む医薬品製造システムのシステム構成例である。
【図20】水分値推定部11Aにより推定された水分値が、制御ステップにより異なる目標値又は目標値軌道に沿うように制御される様子を示す図である。
【図21】水分値推定部11Aにより推定された水分値が、図20とは異なる目標値又は目標値軌道に沿うように制御される様子を示す図である。
【図22】エアパージ、状態測定等を含む医薬品製造制御システムの各動作に伴って送受信される信号の変化を示すタイムチャートである。
【図23】第2実施例に係る医薬品製造システムにより実行されるフィードバック制御に係る処理の流れを示すフローチャートである。
【図24】本発明の第3実施例に係る医薬品製造制御装置3、及びこれを含む医薬品製造システムのシステム構成例である。
【図25】本発明の第4実施例に係る医薬品製造制御装置4、及びこれを含む医薬品製造システムのシステム構成例である。
【図26】本発明の第5実施例に係る医薬品製造制御装置5、及びこれを含む医薬品製造システムのシステム構成例である。
【図27】本発明の他の実施例に係る医薬品製造制御装置のシステム構成例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【実施例】
【0013】
<第1実施例>
以下、図面を参照し、本発明の第1実施例に係る医薬品製造制御装置1、及びこれを含む医薬品製造制御システムについて説明する。
【0014】
[システム構成]
図1は、本発明の第1実施例に係る医薬品製造制御装置1、及びこれを含む医薬品製造システムのシステム構成例である。医薬品製造制御装置1は、主要な構成として、制御コンピュータ10と、記憶装置30と、入出力装置40と、プリンタ50と、を備える。
【0015】
制御コンピュータ10は、例えば図2に例示するようなハードウエア構成を有するマイクロコンピュータである。図2は、制御コンピュータ10のハードウエア構成例である。制御コンピュータ10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)10_1と、
ドライブ装置10_2と、補助記憶装置10_4と、メモリ装置10_5と、I/O20とを備える。これらの構成要素は、バスやシリアル回線等を介して接続されている。CPU10_1は、例えば、プログラムカウンタや命令デコーダ、各種演算器、LSU(Load Store Unit)、汎用レジスタ等を有するプロセッサである。ドライブ装置10_2は、記憶媒体10_3からプログラムやデータを読み込み可能な装置である。プログラムを記録した記録媒体10_3がドライブ装置10_2に装着されると、プログラムが記録媒体10_3からドライブ装置10_2を介して補助記憶装置10_4にインストールされる。記録媒体10_3は、例えば、CD−ROM、DVDディスク、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の可搬型の記録媒体である。また、補助記憶装置10_4は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリである。
【0016】
プログラムのインストールは、このように記憶媒体10_3を用いる他、I/O20が図示しないネットワーク等を介して他のコンピュータよりダウンロードし、補助記憶装置10_4にインストールすることによって行うこともできる。また、情報処理装置の出荷時に、予め補助記憶装置10_4やROM(Read Only Memory)等に格納されていてもよい。このようにしてインストール又は予め格納されたプログラムをCPU10_1が実行することにより、図2に示す態様のマイクロコンピュータが、本実施例の制御コンピュータ10として機能することができる。メモリ装置10_5は、例えば、RAM(Random Access Memory)やEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)である。I/O20は、記憶装置30、入出力装置40、プリンタ50、製造装置100、測定センサ200、その他の機器との情報送受信を制御する。
【0017】
図1に示すように、制御コンピュータ10は、機能ブロックとして、中間製品CQA推定部11と、フィードバック制御部12と、測定前準備動作制御部13と、プロファイルデータ作成部14と、画面制御部15と、ユーザ認証部16と、を備える。これらの機能ブロックは、補助記憶装置10_4等に格納されたプログラム・ソフトウエアをCPU10_1が実行することにより機能する。なお、これらの機能ブロックが明確に異なるプログラムによって実現される必要は無く、他の機能ブロックに呼び出されるサブルーチンや関数等であっても構わない(第2実施例以下についても同様)。各機能ブロックの機能については、後述する。
【0018】
記憶装置30は、制御コンピュータ10の外部記憶装置として機能する。記憶装置30は、補助記憶装置10_4やメモリ装置10_5と統合されてもよい。入出力装置40は、例えば、各種情報を表示すると共に、ユーザがGUI(Graphical User Interface)スイッチを操作することにより各種指示入力を行うことが可能なタッチパネルディスプレイである。プリンタ50は、後述するCQAプロファイル等を印刷する。
【0019】
医薬品製造制御装置1には、製造装置100と測定センサ200が接続される。製造装置100は、例えば、流動層造粒機、乾式造粒機、打錠機、粉砕機、或いはこれらの組み合わせである。測定センサ200は、製造装置100による製造工程に置かれた医薬品の状態を非破壊且つリアルタイムに測定可能な測定センサであり、例えば、近赤外線分光分析装置やレーザー回折式粒子計測定装置である。測定センサ200は、例えば覗窓を介して製造装置100の内部の医薬品に近赤外線を照射してスペクトルを測定したり、製造装置100の内部の医薬品をサンプリングして成分を測定したりする。
【0020】
[機能ブロックの機能]
以下、制御コンピュータ10により実現される各機能ブロックの機能について説明する。
【0021】
中間製品CQA推定部11は、測定センサ200からI/O20を介して取得された測定データに対して、予め設定されている検量線モデルを適用することにより、医薬品の中間製品重要品質特性(中間製品CQA;Critical Quality Attributes)を推定する。中間製品CQAは、例えば、医薬品の粒子径、水分値、フレーク密度、硬度、含量、或いはこれらの組み合わせである。
【0022】
検量線モデルとは、測定センサ200による測定データから、中間製品CQAに比例・反比例等の連動した変化をする特定の成分(近赤外線分光分析装置の場合、特定周波数成分)を抽出し、抽出した成分に所定係数を乗じる等して中間製品CQAを得る手法である。この特定成分、所定係数を導出するには、例えばケモメトリクス手法が用いられる。ケモメトリクス手法とは、化学における変量(圧力、温度、時間、濃度、スペクトル、クロマトグラフ等)を多変量データとして取得し、解析を行うことにより上記中間製品CQAのような有用な情報を取り出す手法である。ケモメトリクス手法において採用される解析手法には、PCA(Principle Component Analysis)、クラスター分析、非線形写像、MLR(Multiple Linear Regression)、PCR(Principle Component Regression)、PLS(Partial Least Squires)、LDA(Linear Discriminant Analysis)、SIMCA(Soft Independent Modelling of Class Analogy)、NN(Neural Network)等が挙げられ、本発明の適用上、医薬品及び中間製品の特性に応じて任意の手法を採用し得る。
【0023】
フィードバック制御部12は、中間製品CQA推定部11により推定された中間製品CQAが、医薬品の重要品質特性(CQA)が安定して得られるように予め設定された目標値又は目標値軌道に沿うように、製造装置100の制御量をフィードバック制御する。ここで、医薬品のCQAは、溶出、製剤均一性、含量、類縁物質、又はこれらの組み合わせである。また、フィードバック制御部12は、製造装置100が目的の異なる制御ステップで医薬品の製造を行う場合、中間製品CQA推定部11により推定された中間製品CQAに基づいて制御ステップの切替制御を行う。詳しくは、第2実施例以降で説明する。
【0024】
測定前準備動作制御部13は、測定センサ200が医薬品の状態を測定するのに先立って、測定条件を整えるための動作を指示する指示信号を製造装置100に出力する。
【0025】
プロファイルデータ作成部14は、制御ステップ毎に、中間製品CQA推定部11により推定された中間製品CQAの推移を記述したプロファイルデータを作成する。プロファイルデータ作成部14が作成したプロファイルデータは、記憶装置30に格納され、入出力装置40によって表示されたり、プリンタ50により印刷されたりする。
【0026】
図3は、本実施例に係る医薬品製造システムにおいて実現される制御モデルを簡易に示す図である。なお、本図における「SV」等の符号は、後述する図11の自動運転画面40Dに対応している。
【0027】
(処理フロー)
図4は、本実施例に係る医薬品製造システムにより実行される処理の流れを大まかに示すフローチャートである。
【0028】
まず、ユーザによって製造装置100の電源がオン状態とされると(S300)、続いて医薬品製造制御装置1の電源がオン状態とされる(S302)。
【0029】
次に、ユーザが製造装置100に対して品目設定を行うと(S304)、医薬品製造制御装置1に設定情報が送信され、医薬品製造制御装置1において品目設定がなされる(S306)。
【0030】
次に、ユーザが製造装置100に対して機能確認指示を行うと(S308)、医薬品製造制御装置1に指示信号が送信され、医薬品製造制御装置1において機能確認が開始される(S310)。医薬品製造制御装置1は、機能確認動作を指示する信号を測定センサ200に送信し(S312)、測定センサ200が機能確認動作を行って(S314)、機能確認動作の結果を医薬品製造制御装置1に送信する。医薬品製造制御装置1は、機能確認動作の結果を確認し、確認した結果を、入出力装置40を用いて出力する(S316)。
【0031】
図5は、第1実施例に係る医薬品製造システムにより実行されるフィードバック制御に係る処理の流れを示すフローチャートである。
【0032】
まず、ユーザが製造装置100に対して運転開始指示を行うと(S400)、医薬品製造制御装置1は、指定時間の間、測定前準備動作を指示する信号を製造装置100又は測定センサ200に送信する(S402)。製造装置100又は測定センサ200は、測定前準備動作を指示する信号を受信すると、測定前準備動作を行う(S404、S404*)。
【0033】
次に、医薬品製造制御装置1は、測定トリガを測定センサ200に送信する(S406)。測定センサ200は、測定トリガを受信すると、測定を行って測定結果を医薬品製造制御装置1に送信する(S408)。
【0034】
医薬品製造制御装置1は、測定センサ200から受信した測定結果を記憶装置30等に記憶させ(S410)、中間製品CQAを推定して記憶装置30等に記憶させる(S412)。そして、医薬品製造制御装置1は、推定した中間製品CQAが目標値又は目標値軌道に沿うように、製造装置100のフィードバック制御量を演算し(S414)、演算結果を製造装置100に送信する(S416)。この際に、フィードバック演算において異常値が入力又は算出された場合には、アラーム出力指示やイベント処理指示を併せて製造装置100に送信する。製造装置100では、医薬品製造制御装置1から受信した演算結果に基づいて設定値の変更を行ったり、アラーム出力指示やイベント出力指示が含まれる場合にはアラーム出力やイベントを行ったりする(S418)。
【0035】
ここで、中間製品CQAの目標値や目標値軌道は、医薬品の溶出、製剤均一性、含量、類縁物質等を含む重要品質特性が安定して得られるように予め設定されたものである。従って、係る制御の結果、医薬品の品質維持を、高い信頼性で実現することができる。
【0036】
次に、医薬品製造制御装置1は、制御ステップの移行タイミングが到来したか否かを判定する(S420)。制御ステップの移行タイミングが到来した場合には、次のステップに移行する(S422)。具体的には、「目標値又は目標値軌道」を変更する等して、フィードバック制御量の演算式を変更する。また、全ての制御ステップが終了した場合には、S422に代えて終了処理を行ってもよい。
【0037】
制御ステップの移行タイミングが到来したか否かの判定は、例えば、中間製品CQA推定部11により推定された中間製品CQAが基準値に達したか否かに基づき行う。
【0038】
次に、医薬品製造制御装置1は、測定サイクルがタイムアップしたか否かを判定する(S424)。測定サイクルとは、測定センサ200による測定間隔を規定する時間単位であり、予めユーザにより設定される。測定サイクルがタイムアップすると、S402に戻る。
【0039】
なお、S402〜S424を繰り返し行う中で、ユーザが製造装置100に対して運転停止指示を行うと(S426)、医薬品製造制御装置1は、測定センサ200に停止指示を送信して測定を停止させる(S428)。測定センサ200は、停止指示に従って測定を停止する(S430)。
【0040】
医薬品製造制御装置1は、ユーザが入出力装置40に対して行った操作に応じて、S408において記憶装置30に記憶された中間製品CQAの推移を、入出力装置40又はプリンタ50を用いてユーザに提示する。
【0041】
(表示画面)
以下、画面制御部15によって制御される入出力装置40の表示画面遷移について説明する。図6は、画面制御部15によって制御される入出力装置40の表示画面遷移の概要を示す図である。
【0042】
医薬品製造制御装置1が起動すると、まず、メインメニュー画面40Aが表示される。図7は、メインメニュー画面40Aの一例である。図示するように、メインメニュー画面40Aでは、Recipe Selection(品目選択)、Stand-by Operation(準備運転)、Manual Operation(手動運転)、Automatic Operation(自動運転)、System Settings(システム設定)、System Shutdown(強制停止)等を指示するためのGUIスイッチが表示される。
【0043】
ユーザがメインメニュー画面40AにおいてRecipe Selection(品目選択)をタッチ操作すると、品目選択画面40Bに遷移する。図8は、品目選択画面40Bの一例である。品目選択画面40Bでは、医薬品製造システムが製造する品目の選択が行われる。品目選択画面40Bでは、01〜04等のインデックスに品名等(図中、「ABC」と表記した)が対応付けられており、いずれかのインデックスをユーザがタッチ操作することにより、当該インデックスに対応付けられた品名が選択される。
【0044】
品目選択画面40Bでは、Batch No.を登録することができる。この際には、キーボード画面40Baが呼び出される。図9は、キーボード画面40Baの一例である。図示するように、キーボード画面40Baは、通常のキーボードに擬したGUIスイッチが並べられた画面である。キーボード画面40BaにおいてBatch No.をタイプしてSave(保存)がタッチ操作され、更に、品目選択画面40BにおいてRegister(登録)がタッチ操作されると、品名とBatch No.が登録(或いは更新)される。なお、本品目設定は製造装置100からも行うことができる。
【0045】
メインメニュー画面40AにおいてStand-by Operation(準備運転)又はManual Operation(手動運転)がタッチ操作されると、準備運転/手動運転画面40Cに遷移する。図10は、準備運転/手動運転画面40Cの一例である。準備運転/手動運転画面40Cでは、外部ソフトウエアの起動(Calibration)、及びデジタル出力が行われる。又、後述するエアパージ(Air Purge)の有無等が指定可能となっている。準備運転/手動運転画面40Cでは、医薬品の製造前後の準備運転(例えば機能確認等)、医薬品の手動による製造運転に係る指示がなされる。準備運転/手動運転画面40Cを表示中に、前述したようにフィードバック演算において異常値が入力又は算出された場合には、警報表示画面に遷移する。
【0046】
メインメニュー画面40AにおいてAutomatic Operation(自動運転)がタッチ操作されると、自動運転画面40Dに遷移する。図11は、自動運転画面40Dの一例である。図中、SVはセット値(目標値)であり、PV1、PV2は中間製品CQA推定部11による推定値であり、MVは操作量である。また、Current Stepは当該制御ステップを表し、Elapsed Timeは総経過時間であり、Step Timeは当該制御ステップの経過時間である。
【0047】
自動運転画面40Dにおいて連動スイッチをオン又はオフにすることにより、連動と単動を切り替えることができる。連動とは、複数の制御ステップを連続して自動的に行うモードであり、単動とは、制御ステップの移行を手動で行うモードである。また、自動運転画面40DにおいてNext Step(次工程)を数秒間以上長押しすると、次の制御ステップに移行させることができる(単動モードのみ有効)。また、自動運転画面40DにおいてReport Resultを数秒間長押しすると、バッチ結果レポートがPDF(Portable Document Format)ファイルで作成され、表示される(自動運転終了後の停止時のみ有効)。また、自動運転画面40DにおいてReset Resultを数秒間長押しすると、測定結果がリセットされる(単動時のみ有効)。
【0048】
また、自動運転画面40DにおいてTrend Graphがタッチ操作されると、トレンドグラフ表示画面40Eに遷移する。図12は、トレンドグラフ表示画面40Eの一例である。トレンドグラフ表示画面40Eでは、カーソル、PV1、PV2、MV等が表示される。すなわち、トレンドグラフ表示画面40Eでは、前述したプロファイルデータが表示される。
【0049】
トレンドグラフ表示画面40Eでは、グラフ面をタッチ操作することにより、その地点にカーソルが移動する(Tracking OFF状態)。また、トレンドグラフ表示画面40Eでは、Nowをタッチ操作することにより、現在時にカーソルが移動する(Tracking ON状態)。また、トレンドグラフ表示画面40Eでは、矢印スイッチをタッチ操作することにより半画面のスクロールが行われ、上部には、カーソル位置におけるPV1等が表示される。
【0050】
また、自動運転画面40Dにおいて、Parameters Listがタッチ操作されると、設定値一覧画面40Fに遷移する。
【0051】
図13は、設定値一覧画面40Fの一例である。設定値一覧画面40Fでは、制御ステップ毎の、後述する「品目定義ファイル」で定義される主要なパラメータが一覧表示される。図中、P、I、DはPID制御における各項の比例係数である。また、設定値一覧画面40Fの下部の欄には、ユーザがタッチ操作等により選択した制御ステップの、より詳細な制御パラメータが表示される。製造装置100の運転中に設定値一覧画面40Fが開かれたときには、現在実行中の制御ステップが初期選択され、製造装置100の停止中に設定値一覧画面40Fが開かれたときには、先頭の制御ステップが初期選択される。また、矢印スイッチをタッチ操作することにより、一覧表の頁を切り替えることができる。
【0052】
図14は、システム設定画面40Gの一例である。システム設定画面40GにおいてRecipe Settingsがタッチ操作されると、品目設定画面40Hに遷移する。システム設定画面40GにおいてExplorerがタッチ操作されると、エクスプローラ画面が開かれる。システム設定画面40GにおいてControl Panelがタッチ操作されると、コントロールパネル画面が開かれる。システム設定画面40GにおいてDate & Time Settingsがタッチ操作されると、日付と時刻の設定画面が開かれる。
【0053】
図15は、品目設定画面40Hの一例である。品目設定画面40Hでは、品目番号(Recipe#)を選択し、品目番号に品目定義ファイルを対応付ける。品目設定画面40HにおいてBrowseがタッチ操作されると、「ファイルを開く」ダイアログが開き、ユーザが参照ファイルを指定することができる。品目設定画面40HにおいてClearがタッチ操作されると、File path欄が空欄となる。品目設定画面40HにおいてRegisterがタッチ操作されると、確認画面(Yes/No)がポップアップ表示される。確認画面においてYesが選択されると、品目番号の変更が確定する。
【0054】
上記説明した画面操作のうち、自動運転画面40D及び自動運転画面40Dから展開する画面、並びにシステム設定画面40G及びシステム設定画面40Gから展開する画面を開くには(或いは画面上で操作を行うには)、所定のパスワードの入力が要求される。例えば、自動運転画面40D及び自動運転画面40Dから展開する画面を開く(又は操作する)には、第1の認証レベル(Manager)に相当するパスワードが要求される。また、システム設定画面40G及びシステム設定画面40Gから展開する画面を(又は操作する)には、より高い第2の認証レベル(Maintenance)に相当するパスワードが要求される。
【0055】
ユーザ認証部16は、ユーザにより入力されたパスワードを所定のテーブルと比較する等し、ユーザの認証レベルを判別する。そして、画面制御部15は、ユーザ認証部16による判別結果に基づいて、入出力装置40の表示画面又は操作を制限する。図16は、パスワード入力画面40Iの一例である。この画面は、パスワードが必要な画面に遷移しようとしたとき等に表示される。
【0056】
また、図17は、警報リスト表示画面40Jの一例である。警報リスト表示画面40Jでは、例えば直近100件の警報(アラーム)が、新しいものから順に一覧表示される。警報リスト表示画面40Jは、アラームが発生したときに自動的に表示される。警報リスト表示画面40Jでは、アラームの発生日時、アラームの名称、レベル、ロット番号、確認済ユーザ名等が表示される。警報リスト表示画面40JにおいてAlarm Stopがタッチ操作されると、ブザー信号がオフ状態となり、アラームが停止する。また、警報リスト表示画面40JにおいてResetがタッチ操作されると、現在未確認状態の項目が確認済状態となる。
【0057】
[ハード構成]
医薬品製造制御装置1は、例えば筐体に収容され、粉塵の侵入等を抑制可能なハード構成を有すると好適である。図18は、筐体60に収容された医薬品製造制御装置1のハード構成例である。図18(A)は、医薬品製造制御装置1の上面視であり、図18(B)は、医薬品製造制御装置1の正面視であり、図18(C)は、医薬品製造制御装置1の背面視であり、図18(D)、(E)は、医薬品製造制御装置1の側面視である。図示するように、筐体60の上蓋部60Aには、入出力装置(タッチパネル)40が取り付けられ、筐体60を開放することなく入力操作や表示内容の視認が可能となっている。また、入出力装置(タッチパネル)40が取り付けられた上蓋部60Aは、蝶番60B等によって開閉可能となっている。筐体60の側面60C、60Dには、防塵フィルター付排熱口60Ca、60Cb、防塵フィルター付吸気口60Da、60Dbが設けられている。
【0058】
また、図18(F)は、医薬品製造制御装置1を背面から見た断面図であり、図18(G)、(H)は、それぞれ、図18(F)におけるA−A線における断面図、図18(F)におけるB−B線における断面図である。図示するように、筐体60の内部には、キーボード42、マウス44等が収容されており、入出力装置(タッチパネル)40よりも詳細な入力操作が必要なときに使用可能となっている。また、筐体60の下部には、制御コンピュータ10等の本体部10*が収容される。
【0059】
このようなハード構成により、医薬品製造において生じる粉塵が内部に侵入することを抑制することができ、装置の寿命を長くすることができる。なお、プリンタ50は、筐体60に収容されてもよいが、ケーブル又は無線で接続された外部装置であってもよい。
【0060】
以上説明した本実施例の医薬品製造制御装置1によれば、医薬品の品質維持を、高い信頼性で実現することができる。また、図18に示すハード構成を採用することにより、医薬品製造において生じる粉塵が内部に侵入することを抑制することができ、装置の寿命を長くすることができる。また、タッチパネルを採用し、製造時はタッチパネルのみで製造に必要な操作のみが可能となるように操作ミスを防止するよう設計され、医薬品製造において重要な他製品の混入を防止するための清掃性を高めている。
【0061】
<第2実施例>
以下、図面を参照し、本発明の第2実施例に係る医薬品製造制御装置2、及びこれを含む医薬品製造制御システムについて説明する。
【0062】
[システム構成]
図19は、本発明の第2実施例に係る医薬品製造制御装置2、及びこれを含む医薬品製造システムのシステム構成例である。以下、第1実施例と共通する構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0063】
第2実施例に係る医薬品製造制御装置2には、経口剤を製造する流動層造粒機101と、測定センサである近赤外線分光分析装置201が接続される。近赤外線分光分析装置201は、覗窓を介して流動層造粒機101の内部の経口剤に近赤外線を照射してスペクトルを測定する。流動層造粒機101とは、粉体層を熱風により流動状態に保ち、この粉体に結合剤を含む溶液を噴霧して凝集造粒させることにより顆粒を製造する装置である。
【0064】
[機能ブロックの機能]
また、第2実施例に係る医薬品製造制御装置2が有する制御コンピュータ10は、機能ブロックとして、水分値推定部11Aと、フィードバック制御部12Aと、エアパージ動作制御部13Aと、プロファイルデータ作成部14と、画面制御部15と、ユーザ認証部16と、を備える。これらの機能ブロックは、第1実施例と同様、補助記憶装置10_4等に格納されたプログラム・ソフトウエアをCPU10_1が実行することにより機能する。
【0065】
水分値推定部11Aは、近赤外線分光分析装置201からI/O20を介して取得された測定データ(経口剤の水分値に関連する波長領域のスペクトル値)に対して、予め設定されている検量線モデルを適用することにより、経口剤の水分値を推定する。検量線モデルについては、説明を省略する。
【0066】
フィードバック制御部12Aは、水分値推定部11Aにより推定された水分値が、経口剤の類縁物質や溶出が安定して得られるように予め設定された目標値又は目標値軌道に沿うように、流動層造粒機101の制御量をフィードバック制御する。具体的には、水分値推定部11Aにより推定された水分値Hと、セットされた目標値(又は目標値軌道とその時点の時刻から導出される目標値)H*との差分についてPID制御を行う。更に具体的には、以下の傾向で制御を行う。なお、PID制御に代えて、P制御、PI制御その他のフィードバック制御手法が用いられてもよい。係る制御によって、医薬品の重要品質特性である類縁物質や溶出を所望の値に維持することができる。この結果、医薬品の品質維持を、高い信頼性で実現することができる。
【0067】
H≧H*→(熱風の)給気温度上昇and/or(熱風の)給気風量増加and/or(結合剤の)スプレー速度低下and/or給気露点温度低下
H<H*→(熱風の)給気温度低下and/or(熱風の)給気風量減少and/or(結合剤の)スプレー速度上昇and/or給気露点温度上昇
【0068】
PID制御は、例えば次式(1)のような演算式に基づいて行われる。式中、Kpは比例項のゲインであり、Kiは積分項のゲインであり、Kdは微分項のゲインである。
【0069】
(給気温度の上昇量)=Kp・(H−H*)+Ki・∫(H−H*)+Kd・d(H−H*)/dt …(1)
【0070】
また、フィードバック制御部12Aは、流動層造粒機101における制御ステップ(例えば、予備乾燥、造粒1、造粒2、乾燥と区別される)について、水分値推定部11Aにより推定された水分値に基づいて切替制御を行う。
【0071】
図20は、水分値推定部11Aにより推定された水分値が、制御ステップにより異なる目標値又は目標値軌道に沿うように制御される様子を示す図である。図中、水分値推定部11Aにより推定された水分値をH、目標水分値をH*と表記している。図示するように、制御ステップ「造粒1」では、目標水分値H*は徐々に増加し、制御ステップ「造粒2」では、目標水分値H*は一定値となる。制御ステップ「造粒1」から制御ステップ「造粒2」への移行は、水分値Hが基準値H1に達したときに行われる。また、図中H3、L3は、アラーム発動基準値であり、L4、H4は、異常停止基準値である。
【0072】
更に、制御ステップ「乾燥」では、目標水分値H*は徐々に減少し、水分値Hが基準値Heを下回る状態が時間Te以上継続したときに製造工程が終了となる。なお、水分値Hが下限値Leを下回ると、アラームが発動する。
【0073】
また、図21は、水分値推定部11Aにより推定された水分値が、図20とは異なる目標値又は目標値軌道に沿うように制御される様子を示す図である。図示するように、制御ステップ「造粒」では、目標水分値H*は徐々に増加し、制御ステップ「乾燥」では、目標水分値H*は徐々に減少する。制御ステップ「造粒」から制御ステップ「乾燥」への移行は、水分値Hが基準値H1に達したときに行われる。
【0074】
図20、20で示したような目標値起動は、例えば目標値が経過時間に対応付けられたテキストデータとして予め補助記憶装置10_4やROM等に記憶されており、これがシステム起動時にメモリ装置10_5に読み出され、制御演算に用いられる。
【0075】
エアパージ動作制御部13Aは、近赤外線分光分析装置201が経口剤の状態を測定するのに先立って、測定条件を整えるための動作を指示するエアパージ指示信号を流動層造粒機101に送信する。流動層造粒機101は、エアパージ指示信号を受信すると、覗窓の内側に付いた経口剤を、エア噴射により取り除く動作(エアパージ)を行う。
【0076】
図22は、エアパージ、状態測定等を含む医薬品製造制御システムの各動作に伴って送受信される信号の変化を示すタイムチャートである。
【0077】
時刻(1)において、近赤外線分光分析装置201(図中、「NIR」;Near Infra Redと表記した)は、運転中である(測定可能である)ことを示すNIR運転中信号を、医薬品製造制御装置2及び流動層造粒機101(図中、「造粒」と表記した)に送信する(制御No.1)。流動層造粒機101は、NIR運転中信号を受信すると、システム運転中信号を医薬品製造制御装置2に送信する(制御No.11)。
【0078】
時刻(2)において、医薬品製造制御装置2は、後述するNIR測定中信号がOFFになっていることを確認した上で、エアパージ指示信号を時間T2の間、流動層造粒機101に送信し、続いて時間T3の間、待機する(制御No.3)。
【0079】
時刻(3)において、医薬品製造制御装置2は、測定トリガを所定時間の間(例えば500[ms]の間)、送信する(制御No.4)。近赤外線分光分析装置201は、測定トリガを受信すると、NIR測定中信号をON状態に変更し、測定を行う(制御No.2)。
【0080】
時刻(4)において、近赤外線分光分析装置201が測定を終了すると、近赤外線分光分析装置201は、NIR測定中信号をOFF状態に変更し(制御No.2)、測定結果を医薬品製造制御装置2に送信する(制御No.5)。
【0081】
時刻(5)において、近赤外線分光分析装置201は、測定結果が前回値から所定範囲内にあるか否かを判定し、所定範囲外であればアウトライヤー信号を医薬品製造制御装置2に送信する(制御No.6)。医薬品製造制御装置2では、アウトライヤー信号を受信すると、今回のフィードバック演算結果を使用せず、前回の操作量を使用する。
【0082】
近赤外線分光分析装置201の測定結果が前回値から所定範囲内にある場合、医薬品製造制御装置2は、前述のようにフィードバック演算を行う(制御No.7)。
【0083】
時刻(6)において、医薬品製造制御装置2は、フィードバック演算の結果として導出される操作量(今回値)を、流動層造粒機101に送信する(制御No.8)。この際に、操作量を更新したことを示す操作量更新信号を、所定期間の間(例えば500[ms]の間)、流動層造粒機101に送信する(制御No.9)。流動層造粒機101は、操作量更新信号を検知すると、受信した操作量を読み取って制御量を更新する。
【0084】
また、医薬品製造制御装置2は、フィードバック演算の結果として導出される操作量(今回値)が、現在の操作量から所定値以上解離している場合には、アラート信号を流動層造粒機101に送信する(制御No.10)。
【0085】
そして、時刻(2)〜時刻(6)の間に行われた処理を、制御周期T1毎に繰り返し実行する。その間に制御ステップが切り替わった場合には、フィードバック演算のパラメータを変更したり、制御工程を終了したりする。
【0086】
(処理フロー)
図23は、第2実施例に係る医薬品製造システムにより実行されるフィードバック制御に係る処理の流れを示すフローチャートである。
【0087】
まず、ユーザが流動層造粒機101に対して運転開始指示を行うと(S500)、医薬品製造制御装置2は、指定時間の間、エアパージ指示信号を流動層造粒機101に送信する(S502)。流動層造粒機101は、エアパージ指示信号を受信すると、エアパージ動作を行う(S504)。
【0088】
次に、医薬品製造制御装置2は、測定トリガを近赤外線分光分析装置201に送信する(S506)。近赤外線分光分析装置201は、測定トリガを受信すると、測定を行って測定結果を医薬品製造制御装置2に送信する(S508)。
【0089】
医薬品製造制御装置2は、近赤外線分光分析装置201から受信した測定結果を記憶装置30等に記憶させ(S510)、経口剤の水分値を推定して記憶装置30等に記憶させる(S512)。そして、医薬品製造制御装置2は、水分値が目標値又は目標値軌道に沿うように、流動層造粒機101のフィードバック制御量を演算し(S514)、演算結果を流動層造粒機101に送信する(S516)。この際に、フィードバック演算において異常値が入力又は算出された場合には、アラーム出力指示やイベント処理指示を併せて流動層造粒機101に送信する。流動層造粒機101では、医薬品製造制御装置2から受信した演算結果に基づいて設定値の変更を行ったり、アラーム出力指示やイベント出力指示が含まれる場合にはアラーム出力やイベントを行ったりする(S518)。
【0090】
前述のように、経口剤の中間製品における水分値に対する目標値や目標値軌道は、経口剤の類縁物質や溶出が安定して得られるように予め設定されたものである。従って、係る制御の結果、医薬品の品質維持を、高い信頼性で実現することができる。
【0091】
次に、医薬品製造制御装置2は、制御ステップの移行タイミングが到来したか否かを判定する(S520)。制御ステップの移行タイミングが到来した場合には、次のステップに移行する(S522)。具体的には、「目標値又は目標値軌道」を変更する等して、フィードバック制御量の演算式を変更する。また、全ての制御ステップが終了した場合には、S522に代えて終了処理を行ってもよい。
【0092】
制御ステップの移行タイミングが到来したか否かは、例えば、水分値推定部11Aにより推定された水分値が基準値に達したか否か、により行う。
【0093】
次に、医薬品製造制御装置2は、測定サイクルがタイムアップしたか否かを判定する(S524)。測定サイクルとは、近赤外線分光分析装置201による測定間隔を規定する時間単位であり、予めユーザにより設定される(図22におけるT1)。測定サイクルがタイムアップすると、S502に戻る。
【0094】
なお、S502〜S524を繰り返し行う中で、ユーザが流動層造粒機101に対して運転停止指示を行うと(S526)、医薬品製造制御装置2は、近赤外線分光分析装置201に停止指示を送信して測定を停止させる(S528)。近赤外線分光分析装置201は、停止指示に従って測定を停止する(S530)。
【0095】
医薬品製造制御装置2は、ユーザが入出力装置40に対して行った操作に応じて、S508において記憶装置30に記憶された水分値の推移を、入出力装置40又はプリンタ50を用いてユーザに提示する。
【0096】
なお、表示画面、ハード構成等については第1実施例と同様であるため、説明を省略する。
【0097】
以上説明した本実施例の医薬品製造制御装置2によれば、医薬品の品質維持を、高い信頼性で実現することができる。
【0098】
<第3実施例>
以下、図面を参照し、本発明の第3実施例に係る医薬品製造制御装置3、及びこれを含む医薬品製造制御システムについて説明する。
【0099】
[システム構成]
図24は、本発明の第3実施例に係る医薬品製造制御装置3、及びこれを含む医薬品製造システムのシステム構成例である。以下、第1実施例や第2実施例と共通する構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0100】
第3実施例に係る医薬品製造制御装置3には、経口剤を製造する乾式造粒機102と、測定センサである近赤外線分光分析装置201が接続される。近赤外線分光分析装置201は、乾式造粒機102の内部の経口剤をサンプリング機器によって取得し、これに近赤外線を照射してスペクトルを測定する。乾式造粒機102とは、水や結合剤を使用せず、ロール装置等の圧力によって材料を圧縮して造粒する装置である。このロール装置では、粉体供給速度が変更可能であり、粉体供給速度を増やすと圧縮力が高まり、経口剤の密度が増加する。また、ロールギャップ間隔を制御することも考えられる。
【0101】
[機能ブロックの機能]
また、第3実施例に係る医薬品製造制御装置3が有する制御コンピュータ10は、機能ブロックとして、フレーク密度推定部11Bと、フィードバック制御部12Bと、プロファイルデータ作成部14と、画面制御部15と、ユーザ認証部16と、を備える。これらの機能ブロックは、第1実施例と同様、補助記憶装置10_4等に格納されたプログラム・ソフトウエアをCPU10_1が実行することにより機能する。
【0102】
フレーク密度推定部11Bは、近赤外線分光分析装置201からI/O20を介して取得された測定データ(経口剤のフレーク密度に関連する波長領域のスペクトル値)に対して、予め設定されている検量線モデルを適用することにより、経口剤のフレーク密度を推定する。検量線モデルについては、説明を省略する。
【0103】
フィードバック制御部12Bは、フレーク密度推定部11Bにより推定されたフレーク密度が、経口剤の類縁物質や溶出が安定して得られるように予め設定された目標値又は目標値軌道に沿うように、乾式造粒機102のロールギャップ間隔をフィードバック制御する。具体的には、フレーク密度推定部11Bにより推定されたフレーク密度Dと、目標値(又は目標値軌道とその時点の時刻から導出される目標値)D*との差分についてPID制御を行う。更に具体的には、以下の傾向で制御を行う。なお、PID制御に代えて、P制御、PI制御その他のフィードバック制御手法が用いられてもよい。係る制御によって、医薬品の重要品質特性である類縁物質や溶出を所望の値に維持することができる。この結果、医薬品の品質維持を、高い信頼性で実現することができる。
【0104】
D≧D*→ロールギャップ間隔を大きく変更
D<D*→ロールギャップ間隔を小さく変更
【0105】
PID制御は、例えば次式(2)のような演算式に基づいて行われる。式中、Kpは比例項のゲインであり、Kiは積分項のゲインであり、Kdは微分項のゲインである。
【0106】
(ロールギャップ間隔の変化量)=Kp・(D−D*)+Ki・∫(D−D*)+Kd・d(D−D*)/dt …(2)
【0107】
以上説明した本実施例の医薬品製造制御装置3によれば、医薬品の品質維持を、高い信頼性で実現することができる。
【0108】
<第4実施例>
以下、図面を参照し、本発明の第4実施例に係る医薬品製造制御装置4、及びこれを含む医薬品製造制御システムについて説明する。
【0109】
[システム構成]
図25は、本発明の第4実施例に係る医薬品製造制御装置4、及びこれを含む医薬品製造システムのシステム構成例である。以下、第1ないし第3実施例と共通する構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0110】
第4実施例に係る医薬品製造制御装置4には、錠剤を製造する打錠機103と、測定センサである近赤外線分光分析装置201が接続される。近赤外線分光分析装置201は、打錠機103の内部の錠剤をサンプリング機器によって取得し、これに近赤外線を照射してスペクトルを測定する。打錠機103は、例えばロータリー式打錠機であり、原料容器かくはん装置103Aから供給される粉末を、回転盤に取り付けられた金型に充填し、回転盤を回転させながら圧縮成型して製品を取り出す動作を行う。なお、打錠機103は、ロータリー式打錠機に限らず、単発式打錠機であってもよい。
【0111】
[機能ブロックの機能]
また、第4実施例に係る医薬品製造制御装置4が有する制御コンピュータ10は、機能ブロックとして、含量推定部11Cと、フィードバック制御部12Cと、プロファイルデータ作成部14と、画面制御部15と、ユーザ認証部16と、を備える。これらの機能ブロックは、第1実施例と同様、補助記憶装置10_4等に格納されたプログラム・ソフトウエアをCPU10_1が実行することにより機能する。
【0112】
含量推定部11Cは、近赤外線分光分析装置201からI/O20を介して取得された測定データ(錠剤の所定成分の含量に関連する関連する波長領域のスペクトル値)に対して、予め設定されている検量線モデルを適用することにより、錠剤の所定成分の含量を推定する。検量線モデルについては、説明を省略する。
【0113】
フィードバック制御部12Cは、含量推定部11Cにより推定された錠剤の所定成分の含量が、錠剤の製剤均一性が安定して得られるように予め設定された目標値又は目標値軌道に沿うように、打錠機103に付設された原料容器かくはん装置103Aの回転数をフィードバック制御する。具体的には、含量推定部11Cにより推定された錠剤の所定成分の含量Cと、目標値(又は目標値軌道とその時点の時刻から導出される目標値)C*との差分についてフィードバック制御を行う。更に具体的には、以下の傾向で制御を行う。係る制御によって、医薬品の重要品質特性である製剤均一性を所望の値に維持することができる。この結果、医薬品の品質維持を、高い信頼性で実現することができる。
【0114】
C≧C*+α→回転数を上下に変更
C*−α≦C<C*+α→回転数を変更しない
C<C*−α→回転数を上下に変更
【0115】
PID制御は、例えば次式(3)のような演算式に基づいて行われる。式中、Kpは比例項のゲインであり、Kiは積分項のゲインであり、Kdは微分項のゲインである。
【0116】
(医薬品の原末の供給速度の変化量)=Kp・|C−C*|+Ki・∫|C−C*|+Kd・d|C−C*|/dt …(3)
【0117】
また、本実施例のフィードバック制御部12Cは、含量推定部11Cにより推定された含量が含量の基準範囲から外れたときに、製造工程を終了するように制御する。
【0118】
以上説明した本実施例の医薬品製造制御装置4によれば、医薬品の品質維持を、高い信頼性で実現することができる。
【0119】
なお、本実施例において、「錠剤の所定成分の含量」を、「原料容器内の錠剤の原末における所定成分の含量」に置換してもよい。
【0120】
<第5実施例>
以下、図面を参照し、本発明の第5実施例に係る医薬品製造制御装置5、及びこれを含む医薬品製造制御システムについて説明する。
【0121】
[システム構成]
図26は、本発明の第5実施例に係る医薬品製造制御装置5、及びこれを含む医薬品製造システムのシステム構成例である。以下、第1ないし第4実施例と共通する構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0122】
第5実施例に係る医薬品製造制御装置5には、医薬品の原末を粉砕する粉砕機104と、測定センサであるレーザー回折式粒子径測定装置202が接続される。レーザー回折式粒子径測定装置202は、粉砕機104により粉砕された医薬品の原末にレーザビームを照射し、その回折・散乱光の強度分布パターンを解析して、粉砕された原末の粒子径を測定する。
【0123】
[機能ブロックの機能]
また、第5実施例に係る医薬品製造制御装置5が有する制御コンピュータ10は、機能ブロックとして、フィードバック制御部12Dと、プロファイルデータ作成部14と、画面制御部15と、ユーザ認証部16と、を備える。これらの機能ブロックは、第1実施例と同様、補助記憶装置10_4等に格納されたプログラム・ソフトウエアをCPU10_1が実行することにより機能する。
【0124】
フィードバック制御部12Dは、レーザー回折式粒子径測定装置202により測定された粒子径が、医薬品の類縁物質や溶出が安定して得られるように予め設定された目標値に沿うように、医薬品の原末の供給速度をフィードバック制御する。具体的には、レーザー回折式粒子径測定装置202により測定された粒子径Rと、目標値R*との差分についてPID制御を行う。更に具体的には、以下の傾向で制御を行う。なお、PID制御に代えて、P制御、PI制御その他のフィードバック制御手法が用いられてもよい。係る制御によって、医薬品の重要品質特性である類縁物質や溶出を所望の値に維持することができる。この結果、医薬品の品質維持を、高い信頼性で実現することができる。
【0125】
R≧R*→医薬品の原末の供給速度を低下させる
R<R*→医薬品の原末の供給速度を上昇させる
【0126】
PID制御は、例えば次式(4)のような演算式に基づいて行われる。式中、Kpは比例項のゲインであり、Kiは積分項のゲインであり、Kdは微分項のゲインである。
【0127】
(医薬品の原末の供給速度の変化量)=Kp・(R−R*)+Ki・∫(R−R*)+Kd・d(R−R*)/dt …(4)
【0128】
また、本実施例のフィードバック制御部12Dは、レーザー回折式粒子径測定装置202により測定された粒子径が粒子径の基準範囲から外れたときに、製造工程を終了するように制御する。
【0129】
以上説明した本実施例の医薬品製造制御装置5によれば、医薬品の品質維持を、高い信頼性で実現することができる。
【0130】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【0131】
例えば、図27に示すように、本発明の医薬品製造制御装置は、PID制御以外の制御システムに基づくものであってもよい。図27は、本発明の他の実施例に係る医薬品製造制御装置のシステム構成例である。本実施例は、モデル予測制御という方式に基づいている。図中、ソフトセンサモデルAとは、リアルタイムの観測値を推定するものであり、ハードウエアセンサの代替として機能する。ソフトセンサモデルAは静的なモデルであるが、自由応答モデルB1〜Bnはモデル予測制御が制御対象の将来のダイナミックなふるまい(応答)を予測するために内部に備える動的なモデルである。
【0132】
目標軌道生成部Cは、一定の目標値に対して、現在の制御量の値を滑らかにその目標値に近づけるための仮想的な軌道を制御周期毎に内部で生成し、その軌道に沿って目標値に漸近させるような操作量を計算する。この仮想的な軌道を、目標軌道(又は参照)と称する。
【0133】
自由応答制御偏差計算部Dは、上記制御偏差を、仮想的に操作量を変化させない状態において計算する。
【0134】
目的関数Eは、制御対象のモデルを用いて計算される。目的関数Eは、一般に、予測区間といわれる現在から一定時間先の将来までの時間区間に亘る{(制御偏差)2+(操作量変化分)2}の時間積分となる。このとき、{(制御偏差)=(目標軌道)−(モデルから計算される制御量)}の関係が成立する。
【0135】
そして、バッチプロセスにおいては、制御対象の特性がシーケンシャルな処理の進行に伴って変化する。モデル予測制御では、制御対象のモデルを用いて予測計算をしながら制御するため、制御対象とモデルがずれると、制御性能が劣化する。切替管理機構Fは、シーケンサGの動作に従ってモデル予測制御におけるモデルを適切に切り替えるように自由応答予測部Hに指示する。
【0136】
このような構成によって、制御対象の特性に応じた制御モデルが適切に選択され、目標軌道に沿った制御量が実現される。
【符号の説明】
【0137】
1、2、3、4、5 医薬品製造制御装置
10 制御コンピュータ
11 中間製品CQA推定部
12 フィードバック制御部
13 測定前準備動作制御部
14 プロファイルデータ作成部
15 画面制御部
16 ユーザ認証部
30 記憶装置
40 入出力装置
50 プリンタ
100 製造装置
200 測定センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品の製造工程を制御する医薬品製造制御装置、方法、プログラム、並びに医薬品製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医薬品製造の分野において、所望の品質を維持するための工夫がなされている。
【0003】
例えば、流動層転動造粒装置を用いて混合工程、造粒工程、乾燥工程を行う錠剤の製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、流動層転動造粒装置内の混合原料粉粒体の水分含有量が、事前の検証結果から導き出した値に沿って推移するように、バインダー溶液の吹き付け流量を工程毎に切り替えている。また、混合原料粉粒体の水分含有量は、近赤外照射装置を用いて測定される近赤外スペクトルを解析して行っている。
【0004】
また、近赤外スペクトルを解析して製剤における滑沢剤の混合状態をモニターする方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。この方法では、近赤外スペクトルの各波長における吸光度変動を算出し、これを滑沢剤の純スペクトルと比較することで、滑沢剤の特徴的なピークを含む波長領域を選択し、この波長領域でベースライン処理等を行うことにより滑沢剤の混合状態を評価している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−249359号公報
【特許文献2】特開2010−8404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の特許文献1に記載の方法では、バインダー溶液の吹き付け流量を各工程に対して一義的に決定しているため、外乱の影響等により混合原料粉粒体の水分含有量が所望の値とならない場合がある。この結果、最終製品である錠剤の品質がばらつく可能性がある。また、目標とする水分含有量を一定に保つ管理方法ではなく、理想プロファイルとなるようにリアルタイムコントロールする場合のほうが、より良い品質の医薬品を得ることが出来る場合もある。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、医薬品の品質維持を、高い信頼性で実現することが可能な医薬品製造制御装置、及び医薬品製造システムを提供することを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための一態様は、
製造工程に置かれた医薬品の状態を非破壊且つリアルタイムに測定可能な測定機器から測定データを取得し、取得されたデータに対して予め設定されている検量線モデルを適用して医薬品の中間製品重要品質特性(粒子径、水分値、フレーク密度、硬度、含量等)を推定し、推定された中間製品重要品質特性が、医薬品の重要品質特性(溶出、製剤均一性、含量、類縁物質等)が安定して得られるように予め設定された目標値又は目標値軌道に沿うように制御量をフィードバック制御する医薬品製造制御装置である。
【0009】
この一態様によれば、医薬品の品質維持を、高い信頼性で実現することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、医薬品の品質維持を、高い信頼性で実現することが可能な医薬品製造制御装置、及び医薬品製造システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施例に係る医薬品製造制御装置1、及びこれを含む医薬品製造システムのシステム構成例である。
【図2】制御コンピュータ10のハードウエア構成例である。
【図3】本実施例に係る医薬品製造システムにおいて実現される制御モデルを簡易に示す図である。
【図4】本実施例に係る医薬品製造システムにより実行される処理の流れを大まかに示すフローチャートである。
【図5】第1実施例に係る医薬品製造システムにより実行されるフィードバック制御に係る処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】画面制御部15によって制御される入出力装置40の表示画面遷移の概要を示す図である。
【図7】メインメニュー画面40Aの一例である。
【図8】品目選択画面40Bの一例である。
【図9】キーボード画面40Baの一例である。
【図10】準備運転/手動運転画面40Cの一例である。
【図11】自動運転画面40Dの一例である。
【図12】トレンドグラフ表示画面40Eの一例である。
【図13】設定値一覧画面40Fの一例である。
【図14】システム設定画面40Gの一例である。
【図15】品目設定画面40Hの一例である。
【図16】パスワード入力画面40Iの一例である。
【図17】警報リスト表示画面40Jの一例である。
【図18】筐体60に収容された医薬品製造制御装置1のハード構成例である。
【図19】本発明の第2実施例に係る医薬品製造制御装置2、及びこれを含む医薬品製造システムのシステム構成例である。
【図20】水分値推定部11Aにより推定された水分値が、制御ステップにより異なる目標値又は目標値軌道に沿うように制御される様子を示す図である。
【図21】水分値推定部11Aにより推定された水分値が、図20とは異なる目標値又は目標値軌道に沿うように制御される様子を示す図である。
【図22】エアパージ、状態測定等を含む医薬品製造制御システムの各動作に伴って送受信される信号の変化を示すタイムチャートである。
【図23】第2実施例に係る医薬品製造システムにより実行されるフィードバック制御に係る処理の流れを示すフローチャートである。
【図24】本発明の第3実施例に係る医薬品製造制御装置3、及びこれを含む医薬品製造システムのシステム構成例である。
【図25】本発明の第4実施例に係る医薬品製造制御装置4、及びこれを含む医薬品製造システムのシステム構成例である。
【図26】本発明の第5実施例に係る医薬品製造制御装置5、及びこれを含む医薬品製造システムのシステム構成例である。
【図27】本発明の他の実施例に係る医薬品製造制御装置のシステム構成例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【実施例】
【0013】
<第1実施例>
以下、図面を参照し、本発明の第1実施例に係る医薬品製造制御装置1、及びこれを含む医薬品製造制御システムについて説明する。
【0014】
[システム構成]
図1は、本発明の第1実施例に係る医薬品製造制御装置1、及びこれを含む医薬品製造システムのシステム構成例である。医薬品製造制御装置1は、主要な構成として、制御コンピュータ10と、記憶装置30と、入出力装置40と、プリンタ50と、を備える。
【0015】
制御コンピュータ10は、例えば図2に例示するようなハードウエア構成を有するマイクロコンピュータである。図2は、制御コンピュータ10のハードウエア構成例である。制御コンピュータ10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)10_1と、
ドライブ装置10_2と、補助記憶装置10_4と、メモリ装置10_5と、I/O20とを備える。これらの構成要素は、バスやシリアル回線等を介して接続されている。CPU10_1は、例えば、プログラムカウンタや命令デコーダ、各種演算器、LSU(Load Store Unit)、汎用レジスタ等を有するプロセッサである。ドライブ装置10_2は、記憶媒体10_3からプログラムやデータを読み込み可能な装置である。プログラムを記録した記録媒体10_3がドライブ装置10_2に装着されると、プログラムが記録媒体10_3からドライブ装置10_2を介して補助記憶装置10_4にインストールされる。記録媒体10_3は、例えば、CD−ROM、DVDディスク、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の可搬型の記録媒体である。また、補助記憶装置10_4は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリである。
【0016】
プログラムのインストールは、このように記憶媒体10_3を用いる他、I/O20が図示しないネットワーク等を介して他のコンピュータよりダウンロードし、補助記憶装置10_4にインストールすることによって行うこともできる。また、情報処理装置の出荷時に、予め補助記憶装置10_4やROM(Read Only Memory)等に格納されていてもよい。このようにしてインストール又は予め格納されたプログラムをCPU10_1が実行することにより、図2に示す態様のマイクロコンピュータが、本実施例の制御コンピュータ10として機能することができる。メモリ装置10_5は、例えば、RAM(Random Access Memory)やEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)である。I/O20は、記憶装置30、入出力装置40、プリンタ50、製造装置100、測定センサ200、その他の機器との情報送受信を制御する。
【0017】
図1に示すように、制御コンピュータ10は、機能ブロックとして、中間製品CQA推定部11と、フィードバック制御部12と、測定前準備動作制御部13と、プロファイルデータ作成部14と、画面制御部15と、ユーザ認証部16と、を備える。これらの機能ブロックは、補助記憶装置10_4等に格納されたプログラム・ソフトウエアをCPU10_1が実行することにより機能する。なお、これらの機能ブロックが明確に異なるプログラムによって実現される必要は無く、他の機能ブロックに呼び出されるサブルーチンや関数等であっても構わない(第2実施例以下についても同様)。各機能ブロックの機能については、後述する。
【0018】
記憶装置30は、制御コンピュータ10の外部記憶装置として機能する。記憶装置30は、補助記憶装置10_4やメモリ装置10_5と統合されてもよい。入出力装置40は、例えば、各種情報を表示すると共に、ユーザがGUI(Graphical User Interface)スイッチを操作することにより各種指示入力を行うことが可能なタッチパネルディスプレイである。プリンタ50は、後述するCQAプロファイル等を印刷する。
【0019】
医薬品製造制御装置1には、製造装置100と測定センサ200が接続される。製造装置100は、例えば、流動層造粒機、乾式造粒機、打錠機、粉砕機、或いはこれらの組み合わせである。測定センサ200は、製造装置100による製造工程に置かれた医薬品の状態を非破壊且つリアルタイムに測定可能な測定センサであり、例えば、近赤外線分光分析装置やレーザー回折式粒子計測定装置である。測定センサ200は、例えば覗窓を介して製造装置100の内部の医薬品に近赤外線を照射してスペクトルを測定したり、製造装置100の内部の医薬品をサンプリングして成分を測定したりする。
【0020】
[機能ブロックの機能]
以下、制御コンピュータ10により実現される各機能ブロックの機能について説明する。
【0021】
中間製品CQA推定部11は、測定センサ200からI/O20を介して取得された測定データに対して、予め設定されている検量線モデルを適用することにより、医薬品の中間製品重要品質特性(中間製品CQA;Critical Quality Attributes)を推定する。中間製品CQAは、例えば、医薬品の粒子径、水分値、フレーク密度、硬度、含量、或いはこれらの組み合わせである。
【0022】
検量線モデルとは、測定センサ200による測定データから、中間製品CQAに比例・反比例等の連動した変化をする特定の成分(近赤外線分光分析装置の場合、特定周波数成分)を抽出し、抽出した成分に所定係数を乗じる等して中間製品CQAを得る手法である。この特定成分、所定係数を導出するには、例えばケモメトリクス手法が用いられる。ケモメトリクス手法とは、化学における変量(圧力、温度、時間、濃度、スペクトル、クロマトグラフ等)を多変量データとして取得し、解析を行うことにより上記中間製品CQAのような有用な情報を取り出す手法である。ケモメトリクス手法において採用される解析手法には、PCA(Principle Component Analysis)、クラスター分析、非線形写像、MLR(Multiple Linear Regression)、PCR(Principle Component Regression)、PLS(Partial Least Squires)、LDA(Linear Discriminant Analysis)、SIMCA(Soft Independent Modelling of Class Analogy)、NN(Neural Network)等が挙げられ、本発明の適用上、医薬品及び中間製品の特性に応じて任意の手法を採用し得る。
【0023】
フィードバック制御部12は、中間製品CQA推定部11により推定された中間製品CQAが、医薬品の重要品質特性(CQA)が安定して得られるように予め設定された目標値又は目標値軌道に沿うように、製造装置100の制御量をフィードバック制御する。ここで、医薬品のCQAは、溶出、製剤均一性、含量、類縁物質、又はこれらの組み合わせである。また、フィードバック制御部12は、製造装置100が目的の異なる制御ステップで医薬品の製造を行う場合、中間製品CQA推定部11により推定された中間製品CQAに基づいて制御ステップの切替制御を行う。詳しくは、第2実施例以降で説明する。
【0024】
測定前準備動作制御部13は、測定センサ200が医薬品の状態を測定するのに先立って、測定条件を整えるための動作を指示する指示信号を製造装置100に出力する。
【0025】
プロファイルデータ作成部14は、制御ステップ毎に、中間製品CQA推定部11により推定された中間製品CQAの推移を記述したプロファイルデータを作成する。プロファイルデータ作成部14が作成したプロファイルデータは、記憶装置30に格納され、入出力装置40によって表示されたり、プリンタ50により印刷されたりする。
【0026】
図3は、本実施例に係る医薬品製造システムにおいて実現される制御モデルを簡易に示す図である。なお、本図における「SV」等の符号は、後述する図11の自動運転画面40Dに対応している。
【0027】
(処理フロー)
図4は、本実施例に係る医薬品製造システムにより実行される処理の流れを大まかに示すフローチャートである。
【0028】
まず、ユーザによって製造装置100の電源がオン状態とされると(S300)、続いて医薬品製造制御装置1の電源がオン状態とされる(S302)。
【0029】
次に、ユーザが製造装置100に対して品目設定を行うと(S304)、医薬品製造制御装置1に設定情報が送信され、医薬品製造制御装置1において品目設定がなされる(S306)。
【0030】
次に、ユーザが製造装置100に対して機能確認指示を行うと(S308)、医薬品製造制御装置1に指示信号が送信され、医薬品製造制御装置1において機能確認が開始される(S310)。医薬品製造制御装置1は、機能確認動作を指示する信号を測定センサ200に送信し(S312)、測定センサ200が機能確認動作を行って(S314)、機能確認動作の結果を医薬品製造制御装置1に送信する。医薬品製造制御装置1は、機能確認動作の結果を確認し、確認した結果を、入出力装置40を用いて出力する(S316)。
【0031】
図5は、第1実施例に係る医薬品製造システムにより実行されるフィードバック制御に係る処理の流れを示すフローチャートである。
【0032】
まず、ユーザが製造装置100に対して運転開始指示を行うと(S400)、医薬品製造制御装置1は、指定時間の間、測定前準備動作を指示する信号を製造装置100又は測定センサ200に送信する(S402)。製造装置100又は測定センサ200は、測定前準備動作を指示する信号を受信すると、測定前準備動作を行う(S404、S404*)。
【0033】
次に、医薬品製造制御装置1は、測定トリガを測定センサ200に送信する(S406)。測定センサ200は、測定トリガを受信すると、測定を行って測定結果を医薬品製造制御装置1に送信する(S408)。
【0034】
医薬品製造制御装置1は、測定センサ200から受信した測定結果を記憶装置30等に記憶させ(S410)、中間製品CQAを推定して記憶装置30等に記憶させる(S412)。そして、医薬品製造制御装置1は、推定した中間製品CQAが目標値又は目標値軌道に沿うように、製造装置100のフィードバック制御量を演算し(S414)、演算結果を製造装置100に送信する(S416)。この際に、フィードバック演算において異常値が入力又は算出された場合には、アラーム出力指示やイベント処理指示を併せて製造装置100に送信する。製造装置100では、医薬品製造制御装置1から受信した演算結果に基づいて設定値の変更を行ったり、アラーム出力指示やイベント出力指示が含まれる場合にはアラーム出力やイベントを行ったりする(S418)。
【0035】
ここで、中間製品CQAの目標値や目標値軌道は、医薬品の溶出、製剤均一性、含量、類縁物質等を含む重要品質特性が安定して得られるように予め設定されたものである。従って、係る制御の結果、医薬品の品質維持を、高い信頼性で実現することができる。
【0036】
次に、医薬品製造制御装置1は、制御ステップの移行タイミングが到来したか否かを判定する(S420)。制御ステップの移行タイミングが到来した場合には、次のステップに移行する(S422)。具体的には、「目標値又は目標値軌道」を変更する等して、フィードバック制御量の演算式を変更する。また、全ての制御ステップが終了した場合には、S422に代えて終了処理を行ってもよい。
【0037】
制御ステップの移行タイミングが到来したか否かの判定は、例えば、中間製品CQA推定部11により推定された中間製品CQAが基準値に達したか否かに基づき行う。
【0038】
次に、医薬品製造制御装置1は、測定サイクルがタイムアップしたか否かを判定する(S424)。測定サイクルとは、測定センサ200による測定間隔を規定する時間単位であり、予めユーザにより設定される。測定サイクルがタイムアップすると、S402に戻る。
【0039】
なお、S402〜S424を繰り返し行う中で、ユーザが製造装置100に対して運転停止指示を行うと(S426)、医薬品製造制御装置1は、測定センサ200に停止指示を送信して測定を停止させる(S428)。測定センサ200は、停止指示に従って測定を停止する(S430)。
【0040】
医薬品製造制御装置1は、ユーザが入出力装置40に対して行った操作に応じて、S408において記憶装置30に記憶された中間製品CQAの推移を、入出力装置40又はプリンタ50を用いてユーザに提示する。
【0041】
(表示画面)
以下、画面制御部15によって制御される入出力装置40の表示画面遷移について説明する。図6は、画面制御部15によって制御される入出力装置40の表示画面遷移の概要を示す図である。
【0042】
医薬品製造制御装置1が起動すると、まず、メインメニュー画面40Aが表示される。図7は、メインメニュー画面40Aの一例である。図示するように、メインメニュー画面40Aでは、Recipe Selection(品目選択)、Stand-by Operation(準備運転)、Manual Operation(手動運転)、Automatic Operation(自動運転)、System Settings(システム設定)、System Shutdown(強制停止)等を指示するためのGUIスイッチが表示される。
【0043】
ユーザがメインメニュー画面40AにおいてRecipe Selection(品目選択)をタッチ操作すると、品目選択画面40Bに遷移する。図8は、品目選択画面40Bの一例である。品目選択画面40Bでは、医薬品製造システムが製造する品目の選択が行われる。品目選択画面40Bでは、01〜04等のインデックスに品名等(図中、「ABC」と表記した)が対応付けられており、いずれかのインデックスをユーザがタッチ操作することにより、当該インデックスに対応付けられた品名が選択される。
【0044】
品目選択画面40Bでは、Batch No.を登録することができる。この際には、キーボード画面40Baが呼び出される。図9は、キーボード画面40Baの一例である。図示するように、キーボード画面40Baは、通常のキーボードに擬したGUIスイッチが並べられた画面である。キーボード画面40BaにおいてBatch No.をタイプしてSave(保存)がタッチ操作され、更に、品目選択画面40BにおいてRegister(登録)がタッチ操作されると、品名とBatch No.が登録(或いは更新)される。なお、本品目設定は製造装置100からも行うことができる。
【0045】
メインメニュー画面40AにおいてStand-by Operation(準備運転)又はManual Operation(手動運転)がタッチ操作されると、準備運転/手動運転画面40Cに遷移する。図10は、準備運転/手動運転画面40Cの一例である。準備運転/手動運転画面40Cでは、外部ソフトウエアの起動(Calibration)、及びデジタル出力が行われる。又、後述するエアパージ(Air Purge)の有無等が指定可能となっている。準備運転/手動運転画面40Cでは、医薬品の製造前後の準備運転(例えば機能確認等)、医薬品の手動による製造運転に係る指示がなされる。準備運転/手動運転画面40Cを表示中に、前述したようにフィードバック演算において異常値が入力又は算出された場合には、警報表示画面に遷移する。
【0046】
メインメニュー画面40AにおいてAutomatic Operation(自動運転)がタッチ操作されると、自動運転画面40Dに遷移する。図11は、自動運転画面40Dの一例である。図中、SVはセット値(目標値)であり、PV1、PV2は中間製品CQA推定部11による推定値であり、MVは操作量である。また、Current Stepは当該制御ステップを表し、Elapsed Timeは総経過時間であり、Step Timeは当該制御ステップの経過時間である。
【0047】
自動運転画面40Dにおいて連動スイッチをオン又はオフにすることにより、連動と単動を切り替えることができる。連動とは、複数の制御ステップを連続して自動的に行うモードであり、単動とは、制御ステップの移行を手動で行うモードである。また、自動運転画面40DにおいてNext Step(次工程)を数秒間以上長押しすると、次の制御ステップに移行させることができる(単動モードのみ有効)。また、自動運転画面40DにおいてReport Resultを数秒間長押しすると、バッチ結果レポートがPDF(Portable Document Format)ファイルで作成され、表示される(自動運転終了後の停止時のみ有効)。また、自動運転画面40DにおいてReset Resultを数秒間長押しすると、測定結果がリセットされる(単動時のみ有効)。
【0048】
また、自動運転画面40DにおいてTrend Graphがタッチ操作されると、トレンドグラフ表示画面40Eに遷移する。図12は、トレンドグラフ表示画面40Eの一例である。トレンドグラフ表示画面40Eでは、カーソル、PV1、PV2、MV等が表示される。すなわち、トレンドグラフ表示画面40Eでは、前述したプロファイルデータが表示される。
【0049】
トレンドグラフ表示画面40Eでは、グラフ面をタッチ操作することにより、その地点にカーソルが移動する(Tracking OFF状態)。また、トレンドグラフ表示画面40Eでは、Nowをタッチ操作することにより、現在時にカーソルが移動する(Tracking ON状態)。また、トレンドグラフ表示画面40Eでは、矢印スイッチをタッチ操作することにより半画面のスクロールが行われ、上部には、カーソル位置におけるPV1等が表示される。
【0050】
また、自動運転画面40Dにおいて、Parameters Listがタッチ操作されると、設定値一覧画面40Fに遷移する。
【0051】
図13は、設定値一覧画面40Fの一例である。設定値一覧画面40Fでは、制御ステップ毎の、後述する「品目定義ファイル」で定義される主要なパラメータが一覧表示される。図中、P、I、DはPID制御における各項の比例係数である。また、設定値一覧画面40Fの下部の欄には、ユーザがタッチ操作等により選択した制御ステップの、より詳細な制御パラメータが表示される。製造装置100の運転中に設定値一覧画面40Fが開かれたときには、現在実行中の制御ステップが初期選択され、製造装置100の停止中に設定値一覧画面40Fが開かれたときには、先頭の制御ステップが初期選択される。また、矢印スイッチをタッチ操作することにより、一覧表の頁を切り替えることができる。
【0052】
図14は、システム設定画面40Gの一例である。システム設定画面40GにおいてRecipe Settingsがタッチ操作されると、品目設定画面40Hに遷移する。システム設定画面40GにおいてExplorerがタッチ操作されると、エクスプローラ画面が開かれる。システム設定画面40GにおいてControl Panelがタッチ操作されると、コントロールパネル画面が開かれる。システム設定画面40GにおいてDate & Time Settingsがタッチ操作されると、日付と時刻の設定画面が開かれる。
【0053】
図15は、品目設定画面40Hの一例である。品目設定画面40Hでは、品目番号(Recipe#)を選択し、品目番号に品目定義ファイルを対応付ける。品目設定画面40HにおいてBrowseがタッチ操作されると、「ファイルを開く」ダイアログが開き、ユーザが参照ファイルを指定することができる。品目設定画面40HにおいてClearがタッチ操作されると、File path欄が空欄となる。品目設定画面40HにおいてRegisterがタッチ操作されると、確認画面(Yes/No)がポップアップ表示される。確認画面においてYesが選択されると、品目番号の変更が確定する。
【0054】
上記説明した画面操作のうち、自動運転画面40D及び自動運転画面40Dから展開する画面、並びにシステム設定画面40G及びシステム設定画面40Gから展開する画面を開くには(或いは画面上で操作を行うには)、所定のパスワードの入力が要求される。例えば、自動運転画面40D及び自動運転画面40Dから展開する画面を開く(又は操作する)には、第1の認証レベル(Manager)に相当するパスワードが要求される。また、システム設定画面40G及びシステム設定画面40Gから展開する画面を(又は操作する)には、より高い第2の認証レベル(Maintenance)に相当するパスワードが要求される。
【0055】
ユーザ認証部16は、ユーザにより入力されたパスワードを所定のテーブルと比較する等し、ユーザの認証レベルを判別する。そして、画面制御部15は、ユーザ認証部16による判別結果に基づいて、入出力装置40の表示画面又は操作を制限する。図16は、パスワード入力画面40Iの一例である。この画面は、パスワードが必要な画面に遷移しようとしたとき等に表示される。
【0056】
また、図17は、警報リスト表示画面40Jの一例である。警報リスト表示画面40Jでは、例えば直近100件の警報(アラーム)が、新しいものから順に一覧表示される。警報リスト表示画面40Jは、アラームが発生したときに自動的に表示される。警報リスト表示画面40Jでは、アラームの発生日時、アラームの名称、レベル、ロット番号、確認済ユーザ名等が表示される。警報リスト表示画面40JにおいてAlarm Stopがタッチ操作されると、ブザー信号がオフ状態となり、アラームが停止する。また、警報リスト表示画面40JにおいてResetがタッチ操作されると、現在未確認状態の項目が確認済状態となる。
【0057】
[ハード構成]
医薬品製造制御装置1は、例えば筐体に収容され、粉塵の侵入等を抑制可能なハード構成を有すると好適である。図18は、筐体60に収容された医薬品製造制御装置1のハード構成例である。図18(A)は、医薬品製造制御装置1の上面視であり、図18(B)は、医薬品製造制御装置1の正面視であり、図18(C)は、医薬品製造制御装置1の背面視であり、図18(D)、(E)は、医薬品製造制御装置1の側面視である。図示するように、筐体60の上蓋部60Aには、入出力装置(タッチパネル)40が取り付けられ、筐体60を開放することなく入力操作や表示内容の視認が可能となっている。また、入出力装置(タッチパネル)40が取り付けられた上蓋部60Aは、蝶番60B等によって開閉可能となっている。筐体60の側面60C、60Dには、防塵フィルター付排熱口60Ca、60Cb、防塵フィルター付吸気口60Da、60Dbが設けられている。
【0058】
また、図18(F)は、医薬品製造制御装置1を背面から見た断面図であり、図18(G)、(H)は、それぞれ、図18(F)におけるA−A線における断面図、図18(F)におけるB−B線における断面図である。図示するように、筐体60の内部には、キーボード42、マウス44等が収容されており、入出力装置(タッチパネル)40よりも詳細な入力操作が必要なときに使用可能となっている。また、筐体60の下部には、制御コンピュータ10等の本体部10*が収容される。
【0059】
このようなハード構成により、医薬品製造において生じる粉塵が内部に侵入することを抑制することができ、装置の寿命を長くすることができる。なお、プリンタ50は、筐体60に収容されてもよいが、ケーブル又は無線で接続された外部装置であってもよい。
【0060】
以上説明した本実施例の医薬品製造制御装置1によれば、医薬品の品質維持を、高い信頼性で実現することができる。また、図18に示すハード構成を採用することにより、医薬品製造において生じる粉塵が内部に侵入することを抑制することができ、装置の寿命を長くすることができる。また、タッチパネルを採用し、製造時はタッチパネルのみで製造に必要な操作のみが可能となるように操作ミスを防止するよう設計され、医薬品製造において重要な他製品の混入を防止するための清掃性を高めている。
【0061】
<第2実施例>
以下、図面を参照し、本発明の第2実施例に係る医薬品製造制御装置2、及びこれを含む医薬品製造制御システムについて説明する。
【0062】
[システム構成]
図19は、本発明の第2実施例に係る医薬品製造制御装置2、及びこれを含む医薬品製造システムのシステム構成例である。以下、第1実施例と共通する構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0063】
第2実施例に係る医薬品製造制御装置2には、経口剤を製造する流動層造粒機101と、測定センサである近赤外線分光分析装置201が接続される。近赤外線分光分析装置201は、覗窓を介して流動層造粒機101の内部の経口剤に近赤外線を照射してスペクトルを測定する。流動層造粒機101とは、粉体層を熱風により流動状態に保ち、この粉体に結合剤を含む溶液を噴霧して凝集造粒させることにより顆粒を製造する装置である。
【0064】
[機能ブロックの機能]
また、第2実施例に係る医薬品製造制御装置2が有する制御コンピュータ10は、機能ブロックとして、水分値推定部11Aと、フィードバック制御部12Aと、エアパージ動作制御部13Aと、プロファイルデータ作成部14と、画面制御部15と、ユーザ認証部16と、を備える。これらの機能ブロックは、第1実施例と同様、補助記憶装置10_4等に格納されたプログラム・ソフトウエアをCPU10_1が実行することにより機能する。
【0065】
水分値推定部11Aは、近赤外線分光分析装置201からI/O20を介して取得された測定データ(経口剤の水分値に関連する波長領域のスペクトル値)に対して、予め設定されている検量線モデルを適用することにより、経口剤の水分値を推定する。検量線モデルについては、説明を省略する。
【0066】
フィードバック制御部12Aは、水分値推定部11Aにより推定された水分値が、経口剤の類縁物質や溶出が安定して得られるように予め設定された目標値又は目標値軌道に沿うように、流動層造粒機101の制御量をフィードバック制御する。具体的には、水分値推定部11Aにより推定された水分値Hと、セットされた目標値(又は目標値軌道とその時点の時刻から導出される目標値)H*との差分についてPID制御を行う。更に具体的には、以下の傾向で制御を行う。なお、PID制御に代えて、P制御、PI制御その他のフィードバック制御手法が用いられてもよい。係る制御によって、医薬品の重要品質特性である類縁物質や溶出を所望の値に維持することができる。この結果、医薬品の品質維持を、高い信頼性で実現することができる。
【0067】
H≧H*→(熱風の)給気温度上昇and/or(熱風の)給気風量増加and/or(結合剤の)スプレー速度低下and/or給気露点温度低下
H<H*→(熱風の)給気温度低下and/or(熱風の)給気風量減少and/or(結合剤の)スプレー速度上昇and/or給気露点温度上昇
【0068】
PID制御は、例えば次式(1)のような演算式に基づいて行われる。式中、Kpは比例項のゲインであり、Kiは積分項のゲインであり、Kdは微分項のゲインである。
【0069】
(給気温度の上昇量)=Kp・(H−H*)+Ki・∫(H−H*)+Kd・d(H−H*)/dt …(1)
【0070】
また、フィードバック制御部12Aは、流動層造粒機101における制御ステップ(例えば、予備乾燥、造粒1、造粒2、乾燥と区別される)について、水分値推定部11Aにより推定された水分値に基づいて切替制御を行う。
【0071】
図20は、水分値推定部11Aにより推定された水分値が、制御ステップにより異なる目標値又は目標値軌道に沿うように制御される様子を示す図である。図中、水分値推定部11Aにより推定された水分値をH、目標水分値をH*と表記している。図示するように、制御ステップ「造粒1」では、目標水分値H*は徐々に増加し、制御ステップ「造粒2」では、目標水分値H*は一定値となる。制御ステップ「造粒1」から制御ステップ「造粒2」への移行は、水分値Hが基準値H1に達したときに行われる。また、図中H3、L3は、アラーム発動基準値であり、L4、H4は、異常停止基準値である。
【0072】
更に、制御ステップ「乾燥」では、目標水分値H*は徐々に減少し、水分値Hが基準値Heを下回る状態が時間Te以上継続したときに製造工程が終了となる。なお、水分値Hが下限値Leを下回ると、アラームが発動する。
【0073】
また、図21は、水分値推定部11Aにより推定された水分値が、図20とは異なる目標値又は目標値軌道に沿うように制御される様子を示す図である。図示するように、制御ステップ「造粒」では、目標水分値H*は徐々に増加し、制御ステップ「乾燥」では、目標水分値H*は徐々に減少する。制御ステップ「造粒」から制御ステップ「乾燥」への移行は、水分値Hが基準値H1に達したときに行われる。
【0074】
図20、20で示したような目標値起動は、例えば目標値が経過時間に対応付けられたテキストデータとして予め補助記憶装置10_4やROM等に記憶されており、これがシステム起動時にメモリ装置10_5に読み出され、制御演算に用いられる。
【0075】
エアパージ動作制御部13Aは、近赤外線分光分析装置201が経口剤の状態を測定するのに先立って、測定条件を整えるための動作を指示するエアパージ指示信号を流動層造粒機101に送信する。流動層造粒機101は、エアパージ指示信号を受信すると、覗窓の内側に付いた経口剤を、エア噴射により取り除く動作(エアパージ)を行う。
【0076】
図22は、エアパージ、状態測定等を含む医薬品製造制御システムの各動作に伴って送受信される信号の変化を示すタイムチャートである。
【0077】
時刻(1)において、近赤外線分光分析装置201(図中、「NIR」;Near Infra Redと表記した)は、運転中である(測定可能である)ことを示すNIR運転中信号を、医薬品製造制御装置2及び流動層造粒機101(図中、「造粒」と表記した)に送信する(制御No.1)。流動層造粒機101は、NIR運転中信号を受信すると、システム運転中信号を医薬品製造制御装置2に送信する(制御No.11)。
【0078】
時刻(2)において、医薬品製造制御装置2は、後述するNIR測定中信号がOFFになっていることを確認した上で、エアパージ指示信号を時間T2の間、流動層造粒機101に送信し、続いて時間T3の間、待機する(制御No.3)。
【0079】
時刻(3)において、医薬品製造制御装置2は、測定トリガを所定時間の間(例えば500[ms]の間)、送信する(制御No.4)。近赤外線分光分析装置201は、測定トリガを受信すると、NIR測定中信号をON状態に変更し、測定を行う(制御No.2)。
【0080】
時刻(4)において、近赤外線分光分析装置201が測定を終了すると、近赤外線分光分析装置201は、NIR測定中信号をOFF状態に変更し(制御No.2)、測定結果を医薬品製造制御装置2に送信する(制御No.5)。
【0081】
時刻(5)において、近赤外線分光分析装置201は、測定結果が前回値から所定範囲内にあるか否かを判定し、所定範囲外であればアウトライヤー信号を医薬品製造制御装置2に送信する(制御No.6)。医薬品製造制御装置2では、アウトライヤー信号を受信すると、今回のフィードバック演算結果を使用せず、前回の操作量を使用する。
【0082】
近赤外線分光分析装置201の測定結果が前回値から所定範囲内にある場合、医薬品製造制御装置2は、前述のようにフィードバック演算を行う(制御No.7)。
【0083】
時刻(6)において、医薬品製造制御装置2は、フィードバック演算の結果として導出される操作量(今回値)を、流動層造粒機101に送信する(制御No.8)。この際に、操作量を更新したことを示す操作量更新信号を、所定期間の間(例えば500[ms]の間)、流動層造粒機101に送信する(制御No.9)。流動層造粒機101は、操作量更新信号を検知すると、受信した操作量を読み取って制御量を更新する。
【0084】
また、医薬品製造制御装置2は、フィードバック演算の結果として導出される操作量(今回値)が、現在の操作量から所定値以上解離している場合には、アラート信号を流動層造粒機101に送信する(制御No.10)。
【0085】
そして、時刻(2)〜時刻(6)の間に行われた処理を、制御周期T1毎に繰り返し実行する。その間に制御ステップが切り替わった場合には、フィードバック演算のパラメータを変更したり、制御工程を終了したりする。
【0086】
(処理フロー)
図23は、第2実施例に係る医薬品製造システムにより実行されるフィードバック制御に係る処理の流れを示すフローチャートである。
【0087】
まず、ユーザが流動層造粒機101に対して運転開始指示を行うと(S500)、医薬品製造制御装置2は、指定時間の間、エアパージ指示信号を流動層造粒機101に送信する(S502)。流動層造粒機101は、エアパージ指示信号を受信すると、エアパージ動作を行う(S504)。
【0088】
次に、医薬品製造制御装置2は、測定トリガを近赤外線分光分析装置201に送信する(S506)。近赤外線分光分析装置201は、測定トリガを受信すると、測定を行って測定結果を医薬品製造制御装置2に送信する(S508)。
【0089】
医薬品製造制御装置2は、近赤外線分光分析装置201から受信した測定結果を記憶装置30等に記憶させ(S510)、経口剤の水分値を推定して記憶装置30等に記憶させる(S512)。そして、医薬品製造制御装置2は、水分値が目標値又は目標値軌道に沿うように、流動層造粒機101のフィードバック制御量を演算し(S514)、演算結果を流動層造粒機101に送信する(S516)。この際に、フィードバック演算において異常値が入力又は算出された場合には、アラーム出力指示やイベント処理指示を併せて流動層造粒機101に送信する。流動層造粒機101では、医薬品製造制御装置2から受信した演算結果に基づいて設定値の変更を行ったり、アラーム出力指示やイベント出力指示が含まれる場合にはアラーム出力やイベントを行ったりする(S518)。
【0090】
前述のように、経口剤の中間製品における水分値に対する目標値や目標値軌道は、経口剤の類縁物質や溶出が安定して得られるように予め設定されたものである。従って、係る制御の結果、医薬品の品質維持を、高い信頼性で実現することができる。
【0091】
次に、医薬品製造制御装置2は、制御ステップの移行タイミングが到来したか否かを判定する(S520)。制御ステップの移行タイミングが到来した場合には、次のステップに移行する(S522)。具体的には、「目標値又は目標値軌道」を変更する等して、フィードバック制御量の演算式を変更する。また、全ての制御ステップが終了した場合には、S522に代えて終了処理を行ってもよい。
【0092】
制御ステップの移行タイミングが到来したか否かは、例えば、水分値推定部11Aにより推定された水分値が基準値に達したか否か、により行う。
【0093】
次に、医薬品製造制御装置2は、測定サイクルがタイムアップしたか否かを判定する(S524)。測定サイクルとは、近赤外線分光分析装置201による測定間隔を規定する時間単位であり、予めユーザにより設定される(図22におけるT1)。測定サイクルがタイムアップすると、S502に戻る。
【0094】
なお、S502〜S524を繰り返し行う中で、ユーザが流動層造粒機101に対して運転停止指示を行うと(S526)、医薬品製造制御装置2は、近赤外線分光分析装置201に停止指示を送信して測定を停止させる(S528)。近赤外線分光分析装置201は、停止指示に従って測定を停止する(S530)。
【0095】
医薬品製造制御装置2は、ユーザが入出力装置40に対して行った操作に応じて、S508において記憶装置30に記憶された水分値の推移を、入出力装置40又はプリンタ50を用いてユーザに提示する。
【0096】
なお、表示画面、ハード構成等については第1実施例と同様であるため、説明を省略する。
【0097】
以上説明した本実施例の医薬品製造制御装置2によれば、医薬品の品質維持を、高い信頼性で実現することができる。
【0098】
<第3実施例>
以下、図面を参照し、本発明の第3実施例に係る医薬品製造制御装置3、及びこれを含む医薬品製造制御システムについて説明する。
【0099】
[システム構成]
図24は、本発明の第3実施例に係る医薬品製造制御装置3、及びこれを含む医薬品製造システムのシステム構成例である。以下、第1実施例や第2実施例と共通する構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0100】
第3実施例に係る医薬品製造制御装置3には、経口剤を製造する乾式造粒機102と、測定センサである近赤外線分光分析装置201が接続される。近赤外線分光分析装置201は、乾式造粒機102の内部の経口剤をサンプリング機器によって取得し、これに近赤外線を照射してスペクトルを測定する。乾式造粒機102とは、水や結合剤を使用せず、ロール装置等の圧力によって材料を圧縮して造粒する装置である。このロール装置では、粉体供給速度が変更可能であり、粉体供給速度を増やすと圧縮力が高まり、経口剤の密度が増加する。また、ロールギャップ間隔を制御することも考えられる。
【0101】
[機能ブロックの機能]
また、第3実施例に係る医薬品製造制御装置3が有する制御コンピュータ10は、機能ブロックとして、フレーク密度推定部11Bと、フィードバック制御部12Bと、プロファイルデータ作成部14と、画面制御部15と、ユーザ認証部16と、を備える。これらの機能ブロックは、第1実施例と同様、補助記憶装置10_4等に格納されたプログラム・ソフトウエアをCPU10_1が実行することにより機能する。
【0102】
フレーク密度推定部11Bは、近赤外線分光分析装置201からI/O20を介して取得された測定データ(経口剤のフレーク密度に関連する波長領域のスペクトル値)に対して、予め設定されている検量線モデルを適用することにより、経口剤のフレーク密度を推定する。検量線モデルについては、説明を省略する。
【0103】
フィードバック制御部12Bは、フレーク密度推定部11Bにより推定されたフレーク密度が、経口剤の類縁物質や溶出が安定して得られるように予め設定された目標値又は目標値軌道に沿うように、乾式造粒機102のロールギャップ間隔をフィードバック制御する。具体的には、フレーク密度推定部11Bにより推定されたフレーク密度Dと、目標値(又は目標値軌道とその時点の時刻から導出される目標値)D*との差分についてPID制御を行う。更に具体的には、以下の傾向で制御を行う。なお、PID制御に代えて、P制御、PI制御その他のフィードバック制御手法が用いられてもよい。係る制御によって、医薬品の重要品質特性である類縁物質や溶出を所望の値に維持することができる。この結果、医薬品の品質維持を、高い信頼性で実現することができる。
【0104】
D≧D*→ロールギャップ間隔を大きく変更
D<D*→ロールギャップ間隔を小さく変更
【0105】
PID制御は、例えば次式(2)のような演算式に基づいて行われる。式中、Kpは比例項のゲインであり、Kiは積分項のゲインであり、Kdは微分項のゲインである。
【0106】
(ロールギャップ間隔の変化量)=Kp・(D−D*)+Ki・∫(D−D*)+Kd・d(D−D*)/dt …(2)
【0107】
以上説明した本実施例の医薬品製造制御装置3によれば、医薬品の品質維持を、高い信頼性で実現することができる。
【0108】
<第4実施例>
以下、図面を参照し、本発明の第4実施例に係る医薬品製造制御装置4、及びこれを含む医薬品製造制御システムについて説明する。
【0109】
[システム構成]
図25は、本発明の第4実施例に係る医薬品製造制御装置4、及びこれを含む医薬品製造システムのシステム構成例である。以下、第1ないし第3実施例と共通する構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0110】
第4実施例に係る医薬品製造制御装置4には、錠剤を製造する打錠機103と、測定センサである近赤外線分光分析装置201が接続される。近赤外線分光分析装置201は、打錠機103の内部の錠剤をサンプリング機器によって取得し、これに近赤外線を照射してスペクトルを測定する。打錠機103は、例えばロータリー式打錠機であり、原料容器かくはん装置103Aから供給される粉末を、回転盤に取り付けられた金型に充填し、回転盤を回転させながら圧縮成型して製品を取り出す動作を行う。なお、打錠機103は、ロータリー式打錠機に限らず、単発式打錠機であってもよい。
【0111】
[機能ブロックの機能]
また、第4実施例に係る医薬品製造制御装置4が有する制御コンピュータ10は、機能ブロックとして、含量推定部11Cと、フィードバック制御部12Cと、プロファイルデータ作成部14と、画面制御部15と、ユーザ認証部16と、を備える。これらの機能ブロックは、第1実施例と同様、補助記憶装置10_4等に格納されたプログラム・ソフトウエアをCPU10_1が実行することにより機能する。
【0112】
含量推定部11Cは、近赤外線分光分析装置201からI/O20を介して取得された測定データ(錠剤の所定成分の含量に関連する関連する波長領域のスペクトル値)に対して、予め設定されている検量線モデルを適用することにより、錠剤の所定成分の含量を推定する。検量線モデルについては、説明を省略する。
【0113】
フィードバック制御部12Cは、含量推定部11Cにより推定された錠剤の所定成分の含量が、錠剤の製剤均一性が安定して得られるように予め設定された目標値又は目標値軌道に沿うように、打錠機103に付設された原料容器かくはん装置103Aの回転数をフィードバック制御する。具体的には、含量推定部11Cにより推定された錠剤の所定成分の含量Cと、目標値(又は目標値軌道とその時点の時刻から導出される目標値)C*との差分についてフィードバック制御を行う。更に具体的には、以下の傾向で制御を行う。係る制御によって、医薬品の重要品質特性である製剤均一性を所望の値に維持することができる。この結果、医薬品の品質維持を、高い信頼性で実現することができる。
【0114】
C≧C*+α→回転数を上下に変更
C*−α≦C<C*+α→回転数を変更しない
C<C*−α→回転数を上下に変更
【0115】
PID制御は、例えば次式(3)のような演算式に基づいて行われる。式中、Kpは比例項のゲインであり、Kiは積分項のゲインであり、Kdは微分項のゲインである。
【0116】
(医薬品の原末の供給速度の変化量)=Kp・|C−C*|+Ki・∫|C−C*|+Kd・d|C−C*|/dt …(3)
【0117】
また、本実施例のフィードバック制御部12Cは、含量推定部11Cにより推定された含量が含量の基準範囲から外れたときに、製造工程を終了するように制御する。
【0118】
以上説明した本実施例の医薬品製造制御装置4によれば、医薬品の品質維持を、高い信頼性で実現することができる。
【0119】
なお、本実施例において、「錠剤の所定成分の含量」を、「原料容器内の錠剤の原末における所定成分の含量」に置換してもよい。
【0120】
<第5実施例>
以下、図面を参照し、本発明の第5実施例に係る医薬品製造制御装置5、及びこれを含む医薬品製造制御システムについて説明する。
【0121】
[システム構成]
図26は、本発明の第5実施例に係る医薬品製造制御装置5、及びこれを含む医薬品製造システムのシステム構成例である。以下、第1ないし第4実施例と共通する構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0122】
第5実施例に係る医薬品製造制御装置5には、医薬品の原末を粉砕する粉砕機104と、測定センサであるレーザー回折式粒子径測定装置202が接続される。レーザー回折式粒子径測定装置202は、粉砕機104により粉砕された医薬品の原末にレーザビームを照射し、その回折・散乱光の強度分布パターンを解析して、粉砕された原末の粒子径を測定する。
【0123】
[機能ブロックの機能]
また、第5実施例に係る医薬品製造制御装置5が有する制御コンピュータ10は、機能ブロックとして、フィードバック制御部12Dと、プロファイルデータ作成部14と、画面制御部15と、ユーザ認証部16と、を備える。これらの機能ブロックは、第1実施例と同様、補助記憶装置10_4等に格納されたプログラム・ソフトウエアをCPU10_1が実行することにより機能する。
【0124】
フィードバック制御部12Dは、レーザー回折式粒子径測定装置202により測定された粒子径が、医薬品の類縁物質や溶出が安定して得られるように予め設定された目標値に沿うように、医薬品の原末の供給速度をフィードバック制御する。具体的には、レーザー回折式粒子径測定装置202により測定された粒子径Rと、目標値R*との差分についてPID制御を行う。更に具体的には、以下の傾向で制御を行う。なお、PID制御に代えて、P制御、PI制御その他のフィードバック制御手法が用いられてもよい。係る制御によって、医薬品の重要品質特性である類縁物質や溶出を所望の値に維持することができる。この結果、医薬品の品質維持を、高い信頼性で実現することができる。
【0125】
R≧R*→医薬品の原末の供給速度を低下させる
R<R*→医薬品の原末の供給速度を上昇させる
【0126】
PID制御は、例えば次式(4)のような演算式に基づいて行われる。式中、Kpは比例項のゲインであり、Kiは積分項のゲインであり、Kdは微分項のゲインである。
【0127】
(医薬品の原末の供給速度の変化量)=Kp・(R−R*)+Ki・∫(R−R*)+Kd・d(R−R*)/dt …(4)
【0128】
また、本実施例のフィードバック制御部12Dは、レーザー回折式粒子径測定装置202により測定された粒子径が粒子径の基準範囲から外れたときに、製造工程を終了するように制御する。
【0129】
以上説明した本実施例の医薬品製造制御装置5によれば、医薬品の品質維持を、高い信頼性で実現することができる。
【0130】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【0131】
例えば、図27に示すように、本発明の医薬品製造制御装置は、PID制御以外の制御システムに基づくものであってもよい。図27は、本発明の他の実施例に係る医薬品製造制御装置のシステム構成例である。本実施例は、モデル予測制御という方式に基づいている。図中、ソフトセンサモデルAとは、リアルタイムの観測値を推定するものであり、ハードウエアセンサの代替として機能する。ソフトセンサモデルAは静的なモデルであるが、自由応答モデルB1〜Bnはモデル予測制御が制御対象の将来のダイナミックなふるまい(応答)を予測するために内部に備える動的なモデルである。
【0132】
目標軌道生成部Cは、一定の目標値に対して、現在の制御量の値を滑らかにその目標値に近づけるための仮想的な軌道を制御周期毎に内部で生成し、その軌道に沿って目標値に漸近させるような操作量を計算する。この仮想的な軌道を、目標軌道(又は参照)と称する。
【0133】
自由応答制御偏差計算部Dは、上記制御偏差を、仮想的に操作量を変化させない状態において計算する。
【0134】
目的関数Eは、制御対象のモデルを用いて計算される。目的関数Eは、一般に、予測区間といわれる現在から一定時間先の将来までの時間区間に亘る{(制御偏差)2+(操作量変化分)2}の時間積分となる。このとき、{(制御偏差)=(目標軌道)−(モデルから計算される制御量)}の関係が成立する。
【0135】
そして、バッチプロセスにおいては、制御対象の特性がシーケンシャルな処理の進行に伴って変化する。モデル予測制御では、制御対象のモデルを用いて予測計算をしながら制御するため、制御対象とモデルがずれると、制御性能が劣化する。切替管理機構Fは、シーケンサGの動作に従ってモデル予測制御におけるモデルを適切に切り替えるように自由応答予測部Hに指示する。
【0136】
このような構成によって、制御対象の特性に応じた制御モデルが適切に選択され、目標軌道に沿った制御量が実現される。
【符号の説明】
【0137】
1、2、3、4、5 医薬品製造制御装置
10 制御コンピュータ
11 中間製品CQA推定部
12 フィードバック制御部
13 測定前準備動作制御部
14 プロファイルデータ作成部
15 画面制御部
16 ユーザ認証部
30 記憶装置
40 入出力装置
50 プリンタ
100 製造装置
200 測定センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造工程に置かれた医薬品の状態を非破壊且つリアルタイムに測定可能な測定機器から、該測定機器が測定した測定データを取得する測定データ取得手段と、
該測定データ取得手段により取得された測定データに対して、予め設定されている検量線モデルを適用することにより、前記医薬品の粒子径、水分値、フレーク密度、硬度、含量のうち少なくとも一部を含む中間製品重要品質特性を推定する推定手段と、
該推定手段により推定された中間製品重要品質特性が、前記医薬品の溶出、製剤均一性、含量、類縁物質のうち少なくとも一部を含む重要品質特性が安定して得られるように予め設定された目標値又は目標値軌道に沿うように、前記医薬品の製造工程における制御量をフィードバック制御する制御手段と、
を備える医薬品製造制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の医薬品製造制御装置であって、
前記目標値又は目標値軌道、及び前記フィードバック制御における制御パラメータは、目的の異なる複数の制御ステップ毎に予め設定されている、
医薬品製造制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の医薬品製造制御装置であって、
前記制御ステップ毎に、前記推定手段により推定された中間製品重要品質特性の推移を記述したプロファイルデータを作成するプロファイルデータ作成手段を備える、
医薬品製造制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の医薬品製造制御装置であって、
前記測定機器が前記医薬品の状態を測定するのに先立って、測定条件を整えるための動作を指示する指示信号を出力する指示信号出力手段を備える、
医薬品製造制御装置。
【請求項5】
請求項2に記載の医薬品製造制御装置であって、
前記制御手段は、前記推定手段により推定された中間製品重要品質特性値が基準値に達したときに、次の制御ステップに移行するように制御する手段である、
医薬品製造制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の医薬品製造制御装置であって、
前記測定データ取得手段、前記推定手段、前記制御手段を収容すると共に、内部に粉塵が侵入することを抑制可能な構造の筐体と、
前記筐体の外壁部に取り付けられ、ユーザによって操作可能な入力操作手段と、
前記ユーザの認証レベルを判別可能なユーザ認証手段と、を備え、
前記ユーザ認証手段によって判別された認証レベルに応じて、前記ユーザによる動作指示及び/又はメンテナンス指示を可能とし、最も高い認証レベルを有していないユーザがシステム設定その他の変更操作を行うことを禁止することを特徴とする、
医薬品製造制御装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の医薬品製造制御装置と、
前記医薬品の製造を行う製造装置と、
前記測定機器と、
を有する医薬品製造システム。
【請求項8】
製造工程に置かれた医薬品の状態を非破壊且つリアルタイムに測定可能な測定機器から、該測定機器が測定した測定データを取得するステップと、
該取得された測定データに対して、予め設定されている検量線モデルを適用することにより、前記医薬品の粒子径、水分値、フレーク密度、硬度、含量のうち少なくとも一部を含む中間製品重要品質特性を推定するステップと、
該推定された中間製品重要品質特性が、前記医薬品の溶出、製剤均一性、含量、類縁物質のうち少なくとも一部を含む重要品質特性が安定して得られるように予め設定された目標値又は目標値軌道に沿うように、前記医薬品の製造工程における制御量をフィードバック制御するステップと、
をコンピュータが実行する医薬品製造制御方法。
【請求項9】
製造工程に置かれた医薬品の状態を非破壊且つリアルタイムに測定可能な測定機器から、該測定機器が測定した測定データを取得する処理と、
該取得された測定データに対して、予め設定されている検量線モデルを適用することにより、前記医薬品の粒子径、水分値、フレーク密度、硬度、含量のうち少なくとも一部を含む中間製品重要品質特性を推定する処理と、
該推定された中間製品重要品質特性が、前記医薬品の溶出、製剤均一性、含量、類縁物質のうち少なくとも一部を含む重要品質特性が安定して得られるように予め設定された目標値又は目標値軌道に沿うように、前記医薬品の製造工程における制御量をフィードバック制御する処理と、
をコンピュータに実行させる医薬品製造制御プログラム。
【請求項10】
請求項1に記載の医薬品製造制御装置であって、
前記測定データ取得手段は、流動層造粒機による造粒工程に置かれた経口剤の状態を非破壊且つリアルタイムに測定可能な近赤外線分光分析装置から、前記経口剤の水分値に関連する波長領域のスペクトル値を取得する手段であり、
前記推定手段は、前記測定データ取得手段により取得されたスペクトル値に対して、予め設定されている検量線モデルを適用することにより、前記経口剤における水分値を推定する手段であり、
前記制御手段は、前記推定手段により推定された水分値が、前記経口剤の類縁及び/又は溶出が安定して得られるように予め設定された目標値軌道に沿うように、前記経口剤の造粒工程における給気温度、給気風量、スプレー速度、給気露点温度の少なくとも一部をフィードバック制御する手段である、
医薬品製造制御装置。
【請求項11】
請求項10に記載の医薬品製造制御装置であって、
前記目標値軌道、及び前記フィードバック制御における制御パラメータは、造粒ステップ、及び乾燥ステップのそれぞれについて予め設定されている、
医薬品製造制御装置。
【請求項12】
請求項11に記載の医薬品製造制御装置であって、
前記造粒ステップ、及び前記乾燥ステップ毎に、前記推定手段により推定された水分値の推移を記述したプロファイルデータを作成するプロファイルデータ作成手段を備える、
医薬品製造制御装置。
【請求項13】
請求項10に記載の医薬品製造制御装置であって、
前記近赤外線分光分析装置が前記経口剤の水分値に関連する波長領域のスペクトル値を測定するのに先立って、前記流動層造粒機の覗窓内部の顆粒をエアーで除去する動作を指示する指示信号を出力する指示信号出力手段を備える、
医薬品製造制御装置。
【請求項14】
請求項11に記載の医薬品製造制御装置であって、
前記制御手段は、前記推定手段により推定された水分値が移行水分基準値に達したときに、前記造粒ステップから前記乾燥ステップに移行するように制御する手段である、
医薬品製造制御装置。
【請求項15】
請求項1に記載の医薬品製造制御装置であって、
前記測定データ取得手段は、乾式造粒機による造粒工程に置かれた経口剤の状態を非破壊且つリアルタイムに測定可能な近赤外線分光分析装置から、サンプリングされた前記経口剤のフレーク密度に関連する波長領域のスペクトル値を取得する手段であり、
前記推定手段は、前記測定データ取得手段により取得されたスペクトル値に対して、予め設定されている検量線モデルを適用することにより、前記経口剤におけるフレーク密度を推定する手段であり、
前記制御手段は、前記推定手段により推定されたフレーク密度が、前記経口剤の類縁物質及び/又は溶出が安定して得られるように予め設定された目標値軌道に沿うように、前記経口剤の造粒工程における粉体供給速度またはロールギャップ間隔をフィードバック制御する手段である、
医薬品製造制御装置。
【請求項16】
請求項1に記載の医薬品製造制御装置であって、
前記測定データ取得手段は、打錠機による製造工程に置かれた錠剤の状態を非破壊且つリアルタイムに測定可能な近赤外線分光分析装置から、前記錠剤の所定成分の含量に関連する波長領域のスペクトル値を取得する手段であり、
前記推定手段は、前記測定データ取得手段により取得されたスペクトル値に対して、予め設定されている検量線モデルを適用することにより、前記錠剤の所定成分の含量を推定する手段であり、
前記制御手段は、前記推定手段により推定された所定成分の含量が、前記錠剤の製剤均一性が安定して得られるように予め設定された目標値軌道に沿うように、前記打錠機に付設された原料容器かくはん装置の回転数をフィードバック制御する手段である、
医薬品製造制御装置。
【請求項17】
請求項1に記載の医薬品製造制御装置であって、
前記測定データ取得手段は、打錠機による製造工程に置かれた錠剤の状態を非破壊且つリアルタイムに測定可能な近赤外線分光分析装置から、前記錠剤の原末の所定成分の含量に関連する波長領域のスペクトル値を取得する手段であり、
前記推定手段は、前記測定データ取得手段により取得されたスペクトル値に対して、予め設定されている検量線モデルを適用することにより、原料容器内の前記錠剤の原末における所定成分の含量を推定する手段であり、
前記制御手段は、前記推定手段により推定された含量が、前記錠剤の製剤均一性が安定して得られるように予め設定された目標値軌道に沿うように、前記打錠機に付設された原料容器かくはん装置の回転数をフィードバック制御する手段である、
医薬品製造制御装置。
【請求項18】
請求項16又は17に記載の医薬品製造制御装置であって、
前記制御手段は、前記推定手段により推定された含量が含量の基準範囲から外れたときに、前記製造工程を終了するように制御する手段である、
医薬品製造制御装置。
【請求項19】
粉砕機による原末粉砕工程に置かれた医薬品の状態を非破壊且つリアルタイムに測定可能なレーザー回折式粒子径測定装置から、前記医薬品の粒子径を示すデータを取得する測定データ取得手段と、
前記測定データ取得手段により取得された粒子径を示すデータが、前記医薬品の類縁物質及び/又は溶出が安定して得られるように予め設定された目標値軌道に沿うように、前記医薬品の原末の供給速度をフィードバック制御する制御手段と、
を備える医薬品製造制御装置。
【請求項20】
請求項19に記載の医薬品製造制御装置であって、
前記制御手段は、前記測定データ取得手段により取得された粒子径が粒子径の基準範囲から外れたときに、前記製造工程を終了するように制御する手段である、
医薬品製造制御装置。
【請求項1】
製造工程に置かれた医薬品の状態を非破壊且つリアルタイムに測定可能な測定機器から、該測定機器が測定した測定データを取得する測定データ取得手段と、
該測定データ取得手段により取得された測定データに対して、予め設定されている検量線モデルを適用することにより、前記医薬品の粒子径、水分値、フレーク密度、硬度、含量のうち少なくとも一部を含む中間製品重要品質特性を推定する推定手段と、
該推定手段により推定された中間製品重要品質特性が、前記医薬品の溶出、製剤均一性、含量、類縁物質のうち少なくとも一部を含む重要品質特性が安定して得られるように予め設定された目標値又は目標値軌道に沿うように、前記医薬品の製造工程における制御量をフィードバック制御する制御手段と、
を備える医薬品製造制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の医薬品製造制御装置であって、
前記目標値又は目標値軌道、及び前記フィードバック制御における制御パラメータは、目的の異なる複数の制御ステップ毎に予め設定されている、
医薬品製造制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の医薬品製造制御装置であって、
前記制御ステップ毎に、前記推定手段により推定された中間製品重要品質特性の推移を記述したプロファイルデータを作成するプロファイルデータ作成手段を備える、
医薬品製造制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の医薬品製造制御装置であって、
前記測定機器が前記医薬品の状態を測定するのに先立って、測定条件を整えるための動作を指示する指示信号を出力する指示信号出力手段を備える、
医薬品製造制御装置。
【請求項5】
請求項2に記載の医薬品製造制御装置であって、
前記制御手段は、前記推定手段により推定された中間製品重要品質特性値が基準値に達したときに、次の制御ステップに移行するように制御する手段である、
医薬品製造制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の医薬品製造制御装置であって、
前記測定データ取得手段、前記推定手段、前記制御手段を収容すると共に、内部に粉塵が侵入することを抑制可能な構造の筐体と、
前記筐体の外壁部に取り付けられ、ユーザによって操作可能な入力操作手段と、
前記ユーザの認証レベルを判別可能なユーザ認証手段と、を備え、
前記ユーザ認証手段によって判別された認証レベルに応じて、前記ユーザによる動作指示及び/又はメンテナンス指示を可能とし、最も高い認証レベルを有していないユーザがシステム設定その他の変更操作を行うことを禁止することを特徴とする、
医薬品製造制御装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の医薬品製造制御装置と、
前記医薬品の製造を行う製造装置と、
前記測定機器と、
を有する医薬品製造システム。
【請求項8】
製造工程に置かれた医薬品の状態を非破壊且つリアルタイムに測定可能な測定機器から、該測定機器が測定した測定データを取得するステップと、
該取得された測定データに対して、予め設定されている検量線モデルを適用することにより、前記医薬品の粒子径、水分値、フレーク密度、硬度、含量のうち少なくとも一部を含む中間製品重要品質特性を推定するステップと、
該推定された中間製品重要品質特性が、前記医薬品の溶出、製剤均一性、含量、類縁物質のうち少なくとも一部を含む重要品質特性が安定して得られるように予め設定された目標値又は目標値軌道に沿うように、前記医薬品の製造工程における制御量をフィードバック制御するステップと、
をコンピュータが実行する医薬品製造制御方法。
【請求項9】
製造工程に置かれた医薬品の状態を非破壊且つリアルタイムに測定可能な測定機器から、該測定機器が測定した測定データを取得する処理と、
該取得された測定データに対して、予め設定されている検量線モデルを適用することにより、前記医薬品の粒子径、水分値、フレーク密度、硬度、含量のうち少なくとも一部を含む中間製品重要品質特性を推定する処理と、
該推定された中間製品重要品質特性が、前記医薬品の溶出、製剤均一性、含量、類縁物質のうち少なくとも一部を含む重要品質特性が安定して得られるように予め設定された目標値又は目標値軌道に沿うように、前記医薬品の製造工程における制御量をフィードバック制御する処理と、
をコンピュータに実行させる医薬品製造制御プログラム。
【請求項10】
請求項1に記載の医薬品製造制御装置であって、
前記測定データ取得手段は、流動層造粒機による造粒工程に置かれた経口剤の状態を非破壊且つリアルタイムに測定可能な近赤外線分光分析装置から、前記経口剤の水分値に関連する波長領域のスペクトル値を取得する手段であり、
前記推定手段は、前記測定データ取得手段により取得されたスペクトル値に対して、予め設定されている検量線モデルを適用することにより、前記経口剤における水分値を推定する手段であり、
前記制御手段は、前記推定手段により推定された水分値が、前記経口剤の類縁及び/又は溶出が安定して得られるように予め設定された目標値軌道に沿うように、前記経口剤の造粒工程における給気温度、給気風量、スプレー速度、給気露点温度の少なくとも一部をフィードバック制御する手段である、
医薬品製造制御装置。
【請求項11】
請求項10に記載の医薬品製造制御装置であって、
前記目標値軌道、及び前記フィードバック制御における制御パラメータは、造粒ステップ、及び乾燥ステップのそれぞれについて予め設定されている、
医薬品製造制御装置。
【請求項12】
請求項11に記載の医薬品製造制御装置であって、
前記造粒ステップ、及び前記乾燥ステップ毎に、前記推定手段により推定された水分値の推移を記述したプロファイルデータを作成するプロファイルデータ作成手段を備える、
医薬品製造制御装置。
【請求項13】
請求項10に記載の医薬品製造制御装置であって、
前記近赤外線分光分析装置が前記経口剤の水分値に関連する波長領域のスペクトル値を測定するのに先立って、前記流動層造粒機の覗窓内部の顆粒をエアーで除去する動作を指示する指示信号を出力する指示信号出力手段を備える、
医薬品製造制御装置。
【請求項14】
請求項11に記載の医薬品製造制御装置であって、
前記制御手段は、前記推定手段により推定された水分値が移行水分基準値に達したときに、前記造粒ステップから前記乾燥ステップに移行するように制御する手段である、
医薬品製造制御装置。
【請求項15】
請求項1に記載の医薬品製造制御装置であって、
前記測定データ取得手段は、乾式造粒機による造粒工程に置かれた経口剤の状態を非破壊且つリアルタイムに測定可能な近赤外線分光分析装置から、サンプリングされた前記経口剤のフレーク密度に関連する波長領域のスペクトル値を取得する手段であり、
前記推定手段は、前記測定データ取得手段により取得されたスペクトル値に対して、予め設定されている検量線モデルを適用することにより、前記経口剤におけるフレーク密度を推定する手段であり、
前記制御手段は、前記推定手段により推定されたフレーク密度が、前記経口剤の類縁物質及び/又は溶出が安定して得られるように予め設定された目標値軌道に沿うように、前記経口剤の造粒工程における粉体供給速度またはロールギャップ間隔をフィードバック制御する手段である、
医薬品製造制御装置。
【請求項16】
請求項1に記載の医薬品製造制御装置であって、
前記測定データ取得手段は、打錠機による製造工程に置かれた錠剤の状態を非破壊且つリアルタイムに測定可能な近赤外線分光分析装置から、前記錠剤の所定成分の含量に関連する波長領域のスペクトル値を取得する手段であり、
前記推定手段は、前記測定データ取得手段により取得されたスペクトル値に対して、予め設定されている検量線モデルを適用することにより、前記錠剤の所定成分の含量を推定する手段であり、
前記制御手段は、前記推定手段により推定された所定成分の含量が、前記錠剤の製剤均一性が安定して得られるように予め設定された目標値軌道に沿うように、前記打錠機に付設された原料容器かくはん装置の回転数をフィードバック制御する手段である、
医薬品製造制御装置。
【請求項17】
請求項1に記載の医薬品製造制御装置であって、
前記測定データ取得手段は、打錠機による製造工程に置かれた錠剤の状態を非破壊且つリアルタイムに測定可能な近赤外線分光分析装置から、前記錠剤の原末の所定成分の含量に関連する波長領域のスペクトル値を取得する手段であり、
前記推定手段は、前記測定データ取得手段により取得されたスペクトル値に対して、予め設定されている検量線モデルを適用することにより、原料容器内の前記錠剤の原末における所定成分の含量を推定する手段であり、
前記制御手段は、前記推定手段により推定された含量が、前記錠剤の製剤均一性が安定して得られるように予め設定された目標値軌道に沿うように、前記打錠機に付設された原料容器かくはん装置の回転数をフィードバック制御する手段である、
医薬品製造制御装置。
【請求項18】
請求項16又は17に記載の医薬品製造制御装置であって、
前記制御手段は、前記推定手段により推定された含量が含量の基準範囲から外れたときに、前記製造工程を終了するように制御する手段である、
医薬品製造制御装置。
【請求項19】
粉砕機による原末粉砕工程に置かれた医薬品の状態を非破壊且つリアルタイムに測定可能なレーザー回折式粒子径測定装置から、前記医薬品の粒子径を示すデータを取得する測定データ取得手段と、
前記測定データ取得手段により取得された粒子径を示すデータが、前記医薬品の類縁物質及び/又は溶出が安定して得られるように予め設定された目標値軌道に沿うように、前記医薬品の原末の供給速度をフィードバック制御する制御手段と、
を備える医薬品製造制御装置。
【請求項20】
請求項19に記載の医薬品製造制御装置であって、
前記制御手段は、前記測定データ取得手段により取得された粒子径が粒子径の基準範囲から外れたときに、前記製造工程を終了するように制御する手段である、
医薬品製造制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図18】
【公開番号】特開2013−29323(P2013−29323A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163596(P2011−163596)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】
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