説明

半導体レーザおよびその製造方法

【課題】酸化絶縁物による電流狭窄構造を有するストライプ状リッジ構造の半導体レーザにおいて、酸化絶縁物による電流狭窄構造部分からクラック等が発生するのを防止または抑制する。
【解決手段】基板10と、基板内の活性層14と、基板に設けられた第1および第2の溝42、44と、溝42と44の間に形成されAl含有化合物半導体を含む層を有するリッジ46とを備え、Al含有化合物半導体を含む層は、第1の溝の全周囲にわたって設けられた酸化絶縁物20と、第2の溝の全周囲にわたって設けられた酸化絶縁物20と、リッジ内の両側の酸化絶縁物20に挟まれたAl含有化合物半導体と、を有し、リッジ内において、両側の酸化絶縁物20により電流狭窄構造を形成し、基板の端面には酸化絶縁物20は露出しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザおよびその製造方法に関し、特に、酸化絶縁物による電流狭窄構造を有するストライプ状リッジ構造の半導体レーザおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化絶縁物による電流狭窄構造を有するストライプ状リッジ構造の半導体レーザは、例えば、特許文献1、2に開示されている。このような構造の半導体レーザでは、リッジ構造内のAl含有化合物半導体層を、当該Al含有化合物半導体層がリッジの側面に露出する両側から酸化して酸化絶縁物を形成し、中央には当該Al含有化合物半導体層を残しているので、両側に形成される酸化絶縁物が電流狭窄層として機能する。しかしながら、このような中央のAl含有化合物半導体層とその両側の酸化絶縁物が共に存在する構造では、材料の違いから歪が蓄積されることになる。
【0003】
そして、このようなストライプ状リッジ構造の半導体レーザでは、ストライプ状リッジ構造の長手方向と直交する方向に半導体基板を劈開し、その劈開面をレーザ光の発振面としている。従って、その劈開面には、中央のAl含有化合物半導体層とその両側の酸化絶縁物が共に露出することになり、上記歪により、劈開時やその後の熱履歴等によって、クラック等が発生するという問題があった。
【0004】
このような問題を解決するために、ストライプ状リッジ構造の長手方向の両端のレーザ光の発振面近傍では、リッジの幅を広くして、半導体レーザの基板の幅と同じにすることが提案されている(特許文献3参照)。このようにすれば、レーザ光の発振面にはAl含有化合物半導体層のみが露出し酸化絶縁物は露出しない構造とすることができる。従って、レーザ光の発振面には、クラック等が発生せず、半導体レーザの不良化率を低減することができるとされていた。
【0005】
しかしながら、本発明者達がこのような構造の半導体レーザについて、鋭意研究した結果、ストライプ状リッジ構造の長手方向と平行な面において、劈開時やその後の熱履歴等によって、クラック等が発生するという問題があることを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−101189号公報
【特許文献2】特開2000−124547号公報
【特許文献3】特開2000−133877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の主な目的は、酸化絶縁物による電流狭窄構造を有するストライプ状リッジ構造の半導体レーザにおいて、酸化絶縁物による電流狭窄構造部分からクラック等が発生するのを防止または抑制できる半導体レーザおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、
基板と、
前記基板内に設けられた活性層と、
前記基板内に設けられた、Al含有化合物半導体を含む層と、
前記Al含有化合物半導体を含む層をそれぞれ露出して前記基板に設けられた第1および第2の溝と、を備え、
前記第1の溝と前記第2の溝との間には、前記Al含有化合物半導体を含む層を有するストライプ状のリッジが形成され、
前記Al含有化合物半導体を含む層は、第1の酸化絶縁物と、第2の酸化絶縁物と、前記第1の酸化絶縁物および第2の酸化絶縁物以外の領域に存在する前記Al含有化合物半導体とからなり、
前記第1の酸化絶縁物は、前記第1の溝の全周囲に露出して設けられ、
前記第2の酸化絶縁物は、前記第2の溝の全周囲に露出して設けられ、
前記リッジ内において、前記第1の酸化絶縁物と前記第2の酸化絶縁物とによって、前記第1の酸化絶縁物と前記第2の酸化絶縁物との間に存在する前記Al含有化合物半導体に電流経路を狭窄する電流狭窄構造が形成され、
前記基板の端面には前記第1の酸化絶縁物と前記第2の酸化絶縁物は露出しない半導体レーザが提供される。
【0009】
上記半導体レーザは、
前記Al含有化合物半導体を含む層をそれぞれ露出して前記基板に設けられた第3および第4の溝、をさらに備え、
前記第3の溝と前記第4の溝との間には、前記Al含有化合物半導体を含む層を有するストライプ状の第2のリッジが形成され、
前記第3の溝は前記第2の溝と隣接し、
前記Al含有化合物半導体を含む層は、前記第1の酸化絶縁物と、前記第2の酸化絶縁物と、第3の酸化絶縁物と、第4の酸化絶縁物と、前記第1乃至第4の酸化絶縁物以外の領域に存在する前記Al含有化合物半導体と、からなり、
前記第3の酸化絶縁物は、前記第3の溝の全周囲に露出して設けられ、
前記第4の酸化絶縁物は、前記第4の溝の全周囲に露出して設けられ、
前記第2のリッジ内において、前記第3の酸化絶縁物と前記第4の酸化絶縁物とによって、前記第3の酸化絶縁物と前記第4の酸化絶縁物との間に存在する前記Al含有化合物半導体に電流経路を狭窄する第2の電流狭窄構造が形成され、
前記基板の端面には前記第1乃至第4の酸化絶縁物のいずれもが露出しない構造のものとすることもできる。
【0010】
また、上記半導体レーザは、
前記Al含有化合物半導体を含む層を露出して、前記第2の溝に隣接して前記基板に設けられた第3の溝をさらに備え、
前記第2の溝と前記第3の溝との間には、前記Al含有化合物半導体を含む層を有するストライプ状の第2のリッジが形成され、
前記Al含有化合物半導体を含む層は、前記第1の酸化絶縁物と、前記第2の酸化絶縁物と、第3の酸化絶縁物と、前記第1乃至第3の酸化絶縁物以外の領域に存在する前記Al含有化合物半導体と、からなり、
前記第3の酸化絶縁物は、前記第3の溝の全周囲に露出して設けられ、
前記第2のリッジ内において、前記第2の酸化絶縁物と前記第3の酸化絶縁物とによって、前記第2の酸化絶縁物と前記第3の酸化絶縁物との間に存在する前記Al含有化合物半導体に電流経路を狭窄する第2の電流狭窄構造が形成され、
前記基板の端面には前記第1乃至第3の酸化絶縁物のいずれもが露出しない構造のものとすることもできる。
【0011】
好ましくは、前記Al含有化合物半導体を含む層と前記基板の端面とが交差する箇所の全てにおいて、前記Al含有化合物半導体が露出している。
【0012】
また、好ましくは、前記ストライプ状のリッジの長手方向と交差する前記基板の端面がレーザ光の発振面である。
【0013】
また、好ましくは、前記第1の溝に露出する前記第1の酸化絶縁物、前記第2の溝に露出する前記第2の酸化絶縁物、前記第3の溝に露出する前記第3の酸化絶縁物および前記第4の溝に露出する前記第4の酸化絶縁物を覆うパッシベーション膜をさらに備える。
【0014】
また、好ましくは、前記基板はInP基板であり、前記Al含有化合物半導体はAlInAsであり、前記第1乃至第4の酸化絶縁物は、AlInAsを酸化した絶縁物である。
【0015】
また、好ましくは、前記基板はGaAs基板であり、前記Al含有化合物半導体はAlGaAsであり、前記第1乃至第4の酸化絶縁物は、AlGaAsを酸化した絶縁物である。
【0016】
また、好ましくは、前記基板はGaAs基板であり、前記Al含有化合物半導体はAlAsであり、前記第1乃至第4の酸化絶縁物は、アルミニウムの酸化物である。
【0017】
また、本発明の他の態様によれば、上記いずれかの半導体レーザを用いた光通信システムが提供される。
【0018】
本発明のさらに他の態様によれば、
活性層と、Al含有化合物半導体からなる層と、を含む基板を準備する工程と、
前記Al含有化合物半導体からなる層をそれぞれ全周囲にわたって露出する第1の溝および第2の溝の対を、前記基板の一主面内の第1の方向および前記第1の方向と交差する第2の方向にそれぞれ複数、前記基板の一主面側から前記基板に形成し、各対の前記第1の溝と前記第2の溝との間には、前記Al含有化合物半導体からなる層を有し長手方向が前記第1の方向に延在するストライプ状のリッジを形成する工程と、
前記Al含有化合物半導体からなる層を、前記Al含有化合物半導体からなる層が前記第1の溝の全周囲にわたって露出する部分および前記第2の溝の全周囲にわたって露出する部分から酸化して、前記第1の溝の全周囲に露出する第1の酸化絶縁物と、前記第2の溝の全周囲に露出する第2の酸化絶縁物と、前記第1の酸化絶縁物および前記第2の酸化絶縁物以外の領域に残る前記Al含有化合物半導体とからなるAl含有化合物半導体を含む層に形成する工程と、
各対の前記第1の溝および第2の溝の前記第1の方向における両側であって、前記第1の溝および前記第2の溝に対して前記第1の酸化絶縁物および前記第2の酸化絶縁物よりも外側で前記第2の方向に沿って前記基板を切断し、隣接する前記第1の溝および第2の溝の対の間であって、各対にとって前記第1の酸化絶縁物および前記第2の酸化絶縁物よりも外側で前記第1の方向に沿って前記基板を切断する工程と、
を備える半導体レーザの製造方法が提供される。
【0019】
好ましくは、前記Al含有化合物半導体を含む層と前記基板の端面とが交差する箇所の全てにおいて、前記Al含有化合物半導体が露出している。
【0020】
また、好ましくは、前記ストライプ状のリッジまたは前記ストライプ状の第1および第2のリッジの長手方向と交差する前記基板の端面がレーザ光の発振面である。
【0021】
また、好ましくは、前記第1の溝に露出する前記第1の酸化絶縁物および前記第2の溝に露出する前記第2の酸化絶縁物を覆ってパッシベーション膜を形成する工程をさらに備える。
【0022】
また、好ましくは、前記基板はInP基板であり、前記Al含有化合物半導体はAlInAsであり、前記第1および第2の酸化絶縁物は、AlInAsを酸化した絶縁物である。
【0023】
また、好ましくは、前記基板はGaAs基板であり、前記Al含有化合物半導体はAlGaAsであり、前記第1および第2の酸化絶縁物は、AlGaAsを酸化した絶縁物である。
【0024】
また、好ましくは、前記基板はGaAs基板であり、前記Al含有化合物半導体はAlAsであり、前記第1および第2の酸化絶縁物は、アルミニウムの酸化物である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、酸化絶縁物による電流狭窄構造を有するストライプ状リッジ構造の半導体レーザにおいて、酸化絶縁物による電流狭窄構造部分からクラック等が発生するのを防止または抑制できる半導体レーザおよびその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の好ましい第1の実施の形態の半導体レーザを説明するための概略斜視図である。
【図2】図1のX1−X1線概略縦断面図である。
【図3】図1のX2−X2線概略側面図である。
【図4】本発明の好ましい第1の実施の形態の半導体レーザの製造方法を説明するための概略縦断面図である。
【図5】本発明の好ましい第1の実施の形態の半導体レーザの製造方法を説明するための概略側面図である。
【図6】本発明の好ましい第1および第2の実施の形態の半導体レーザの構造および製造方法を説明するための概略上面図である。
【図7】本発明の好ましい第2の実施の形態の半導体レーザを説明するための概略斜視図である。
【図8】図7のX3−X3線概略縦断面図である。
【図9】図7のX4−X4線概略側面図である。
【図10】本発明の好ましい第3の実施の形態の半導体レーザを説明するための概略斜視図である。
【図11】図10のX5−X5線概略縦断面図である。
【図12】図7のX6−X6線概略側面図である。
【図13】本発明の好ましい第4の実施の形態の半導体レーザを説明するための概略斜視図である。
【図14】図13のX7−X7線概略縦断面図である。
【図15】図7のX8−X8線概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0028】
(第1の実施の形態)
図1〜図3を参照すれば、本発明の第1の実施の形態の端面発光型の半導体レーザ100は、略直方体形状であり、上面101、底面102、側部の端面103〜106を備えている。端面103と端面104は互いに対向し、方向107、108を含む面に平行に延在している。端面105と端面106は互いに対向し、方向107、109を含む面に平行に延在している。
【0029】
半導体レーザ100は、n−InP基板10と、n−InP基板10上のn−InPクラッド層12と、n−InPクラッド層12上のSCH−MQW(Separate Confinement Heterostructure Multiple Quantum Well)活性層14と、SCH−MQW活性層14上の第1のP−InPクラッド層16と、第1のP−InPクラッド層16上のp−AlInAsを含む層19と、p−AlInAsを含む層19上の第2のP−InPクラッド層22と、第2のP−InPクラッド層22上のp−GaInAsコンタクト層24とを備えている。なお、SCH−MQW活性層14には,例えば,レーザの発振波長が1.25〜1.6μm帯の場合には,GaInAsP井戸層やAlGaInAs井戸層が用いられる
【0030】
基板10の上面101側には、溝42、44が設けられている。溝42、44は、p−AlInAsを含む層19よりも深く、第1のP−InPクラッド層16に達して設けられている。
【0031】
溝42、44は、方向109に沿って横長に設けられている。溝42と溝44との間には、ストライプ状のリッジ46が形成されている。ストライプ状のリッジ46の長手方向は、方向109に沿っている。ストライプ状のリッジ46は、第1のP−InPクラッド層16の上部と、p−AlInAsを含む層19と、第2のP−InPクラッド層22と、p−GaInAsコンタクト層24とを備えている。
【0032】
溝42の側部42aには、溝42の全周囲にわたって、第1のP−InPクラッド層16と、p−AlInAsを含む層19と、第2のP−InPクラッド層22と、p−GaInAsコンタクト層24とが露出している。溝42の底部42bには、第1のP−InPクラッド層16が露出している。
【0033】
溝44の側部44aには、溝44の全周囲にわたって、第1のP−InPクラッド層16と、p−AlInAsを含む層19と、第2のP−InPクラッド層22と、p−GaInAsコンタクト層24とが露出している。溝44の底部44bには、第1のP−InPクラッド層16が露出している。
【0034】
p−AlInAsを含む層19は、p−AlInAs層18と、AlInAsを酸化した酸化絶縁物層20とを備えている。AlInAsを酸化した酸化絶縁物層20は、溝42および溝44の全周囲にわたってそれぞれ設けられており(図6参照)、酸化絶縁物層20の端部20aは、溝42の全周囲にわたって溝42の側部42aに露出し、溝44の全周囲にわたって溝44の側部44aに露出している。
【0035】
溝42と溝44との間には、ストライプ状のリッジ46が形成されていることから、溝42の内側の側面42aおよび溝44の内側の側面44aはリッジ46の両側の側面46aであり、リッジ46の両側の側面46aに酸化絶縁物層20の端部20aが露出し、酸化絶縁物層20は、両側の側面46aからリッジ46の内側に向かってp−AlInAsを含む層19内に延在して設けられている。p−AlInAsを含む層19のリッジ46の中央の領域には、p−AlInAs層18が両側の酸化絶縁物層20に挟まれて設けられている。
【0036】
溝42の周囲の酸化絶縁物層20の外側の領域および溝44の周囲の酸化絶縁物層20の外側の領域のp−AlInAsを含む層19には、p−AlInAs層18が設けられている。p−AlInAsを含む層19と側部の端面103〜106とが交差する箇所の全てにおいて、p−AlInAs層18が露出している。p−AlInAsを含む層19と側部の端面103〜106とが交差する箇所のいずれにおいても、酸化絶縁物層20は露出していない。
【0037】
p−GaInAsコンタクト層24上、溝42の側面42a上および底面42b上、ならびに溝44の側面44a上および底面44b上には、SiNX膜26が設けられている。従って、溝42の全周囲にわたって溝42の側部42aに露出する酸化絶縁物層20および溝44の全周囲にわたって溝44の側部44aに露出する酸化絶縁物層20は、SiNX膜26によって覆われている。SiNX膜26はパッシベーション膜として機能する。
【0038】
リッジ46上のSiNX膜26の中央部には、窓32が方向109に沿って、端面103から端面104にわたって設けられている(図6参照)。窓32によって、リッジ46のp−GaInAsコンタクト層24が露出している。
【0039】
上面101のSiNX膜26上には、全面にわたってp側電極28が設けられている。p側電極28は窓32を介して、リッジ46のp−GaInAsコンタクト層24に接続されている。基板10の底面102側には、n側電極30が設けられている。
【0040】
リッジ46内のp−AlInAsを含む層19においては、中央のp−AlInAs層18が両側の酸化絶縁物層20に挟まれて設けられている。そのため、両側の酸化絶縁物層20が、窓32に設けられたp側電極28と底面のn側電極30との間を上下方向に流れる電流を狭窄する電流狭窄構造として機能する。
【0041】
方向109と交差する端面103、104がレーザ光の発振面であり、端面103、104に露出するSCH−MQW活性層14からレーザ光が出射する。
【0042】
本実施の形態においては、AlInAsを酸化した酸化絶縁物層20は、溝42および溝44の全周囲にわたってそれぞれ設けられており、酸化絶縁物層20の端部20aは、溝42の全周囲にわたって溝42の側部42aに露出し、溝44の全周囲にわたって溝44の側部44aに露出している。従って、溝42、44には、酸化絶縁物層20のみが露出し、p−AlInAs層18は露出しないので、酸化絶縁物層20とp−AlInAs層18が共に露出する場合のような歪は存在せず、その結果、熱履歴等によってこの歪が原因となってクラック等が発生するのを防止または有効に抑制することができる。
【0043】
酸化絶縁物層20は、p−AlInAsを含む層19に含まれているが、p−AlInAsを含む層19と側部の端面103〜106とが交差する箇所の全てにおいて、p−AlInAs層18が露出しており、p−AlInAsを含む層19と側部の端面103〜106とが交差する箇所のいずれにおいても、酸化絶縁物層20は露出していない構造となっているので、端面103〜106を劈開等で形成する場合にも、劈開等によってクラックが端面103〜106に発生するのを防止または有効に抑制することができる。
【0044】
また、AlInAsを酸化した酸化絶縁物層20は大気中の水分を吸収して酸化絶縁物層20の強度が弱くなる傾向があるが、溝42の全周囲にわたって溝42の側部42aに露出する酸化絶縁物層20の端部20aおよび溝44の全周囲にわたって溝44の側部44aに露出する酸化絶縁物層20の端部20aは、パッシベーション膜として機能するSiNX膜26によって覆われているので、酸化絶縁物層20が大気中の水分を吸収することを防止できる。
【0045】
次に、図4〜6を参照して、第1の実施の形態の半導体レーザ100の製造方法を説明する。
【0046】
まず、図4(a)、図5(a)に示すように、MOCVD法により、n−InP基板10上に、n−InPクラッド層12を形成し、n−InPクラッド層12上にSCH−MQW活性層14を形成し、SCH−MQW活性層14上に第1のP−InPクラッド層16を形成し、第1のP−InPクラッド層16上にp−AlInAs層17を形成し、p−AlInAs層17上に第2のP−InPクラッド層22を形成し、第2のP−InPクラッド層22上にp−GaInAsコンタクト層24を形成する。
【0047】
その後、図4(b)、図5(b)、図6に示すように、SiOからなるマスク40を選択的に形成し、マスク40をエッチングマスクとして、p−GaInAsコンタクト層24、第2のP−InPクラッド層22、p−AlInAs層17をエッチング除去し、さらに、第1のP−InPクラッド層16を途中までエッチング除去し、溝42および溝44の対を、方向108および方向109にそれぞれ複数形成する。これにより、各対の溝42と溝44との間には、方向109に延在するストライプ状のリッジ46が形成される。溝42、44は、方向109に沿って横長に設けられる。ストライプ状のリッジ46は、第1のP−InPクラッド層16の上部と、p−AlInAs層17と、第2のP−InPクラッド層22と、p−GaInAsコンタクト層24とを備えている。
【0048】
溝42の側部42aには、溝42の全周囲にわたって、第1のP−InPクラッド層16と、p−AlInAs層17と、第2のP−InPクラッド層22と、p−GaInAsコンタクト層24とが露出している。溝42の底部42bには、第1のP−InPクラッド層16が露出している。
【0049】
溝44の側部44aには、溝44の全周囲にわたって、第1のP−InPクラッド層16と、p−AlInAs層17と、第2のP−InPクラッド層22と、p−GaInAsコンタクト層24とが露出している。溝44の底部44bには、第1のP−InPクラッド層16が露出している。
【0050】
次に、図4(c)、図5(c)、図6に示すように、マスク40を除去する。その後、水蒸気を使用して酸化する酸化装置(図示せず)によって、水蒸気中、約450℃で酸化処理を行い、溝42の側部42aに全周囲にわたって露出するp−AlInAs層17と、溝44の側部44aに全周囲にわたって露出するp−AlInAs層17を、溝42の側部42aおよび溝44の側部44aから酸化し、p−AlInAs層17を、p−AlInAs層18と、AlInAsを酸化した酸化絶縁物層20とを備えるp−AlInAsを含む層19に形成する。
【0051】
AlInAsを酸化した酸化絶縁物層20は、溝42および溝44の全周囲にわたってそれぞれ形成され(図6参照)、酸化絶縁物層20の端部20aは、溝42の全周囲にわたって溝42の側部42aに露出し、溝44の全周囲にわたって溝44の側部44aに露出する。
【0052】
溝42と溝44との間には、ストライプ状のリッジ46が形成されることから、リッジ46の両側の側面46aに酸化絶縁物層20の端部20aが露出し、酸化絶縁物層20は、両側の側面46aからリッジ46の内側に向かってp−AlInAsを含む層19内を延在し、p−AlInAsを含む層19のリッジ46の中央の領域には、p−AlInAs層18が両側の酸化絶縁物層20に挟まれた状態で残される。
【0053】
水蒸気中、約450℃での酸化処理の後、基板10の温度を下げて酸化を止めるが、100℃よりも低い温度にはせず、基板10を100℃以上、例えば250℃の温度に保持した状態で、酸化装置(図示せず)から搬出し、その後プラズマCVD装置(図示せず)に搬入する。あるいは、酸化装置(図示せず)とプラズマCVD装置(図示せず)との間にロードロック室(図示せず)を接続して、窒素雰囲気中または真空雰囲気中で、基板10を酸化装置(図示せず)からロードロック室(図示せず)を経由してプラズマCVD装置(図示せず)に搬送する。この場合は、基板10の温度を100℃よりも低い温度として搬送してもよい。
【0054】
次に、プラズマCVD装置(図示せず)を使用して、モノシランガスと窒素ガスとを用いてプラズマCVD法により、p−GaInAsコンタクト層24上、溝42の側面42a上および底面42b上、ならびに溝44の側面44a上および底面44b上に、SiNX膜26を形成する。これによって、溝42の全周囲にわたって溝42の側部42aに露出する酸化絶縁物層20および溝44の全周囲にわたって溝44の側部44aに露出する酸化絶縁物層20を、SiNX膜26によって覆う。なお、SiNX膜26はパッシベーション膜として機能する。
【0055】
次に、リッジ46上のSiNX膜26の中央部に、窓32を方向109に沿って形成する(図6参照)。窓32によって、リッジ46のp−GaInAsコンタクト層24を露出する。
【0056】
次に、n−InP基板10が所定の厚さとなるように、n−InP基板10の底面102を研磨する。
【0057】
その後、SiNX膜26上に、全面にわたってp側電極28を設ける。p側電極28は窓32を介して、リッジ46のp−GaInAsコンタクト層24に接続される。また、基板10の底面102側には、n側電極30を形成する。
【0058】
次に、図6に示すように、方向108の切断線60および方向109の切断線70に沿って基板10を劈開して、上述した本実施の形態の半導体レーザを形成する。切断線60は、溝42および溝44の方向109における両側であって、溝42および溝44に対して酸化絶縁物20よりも外側で方向108に沿って設けられた線であり、切断線70は、溝42および溝44の対と溝42および溝44の対との間であって、各対にとって酸化絶縁物20よりも外側で方向109に沿って設けられた線である。
【0059】
上述のように、溝42および溝44を形成することによりこれらの溝42、44間にリッジを形成し、溝42の側部42aおよび溝44の側部44aのそれぞれの全周囲にわたって露出するp−AlInAs層17を酸化して、AlInAsを酸化した酸化絶縁物を形成するので、AlInAsを酸化した酸化絶縁物層20は、溝42および溝44の全周囲にわたってそれぞれ設けられることになり、酸化絶縁物層20の端部20aは、溝42の全周囲にわたって溝42の側部42aに露出し、溝44の全周囲にわたって溝44の側部44aに露出する。従って、溝42、44には、酸化絶縁物層20のみが露出し、p−AlInAs層18は露出しないので、酸化絶縁物層20とp−AlInAs層18が共に露出する場合のような歪は存在せず、その結果、熱履歴等によってこの歪が原因となってクラック等が発生するのを防止または有効に抑制することができる。
【0060】
また、図6に示すように、溝42および溝44の方向109における両側であって、溝42および溝44に対して酸化絶縁物20よりも外側で方向108の切断線60、および溝42および溝44の対と溝42および溝44の対との間であって、各対にとって酸化絶縁物20よりも外側で方向109の切断線70に沿って劈開するので、劈開面には酸化絶縁物層20が露出していない状態で劈開することになり、劈開時にクラックが発生するのを防止または有効に抑制することができる。
【0061】
また、AlInAsを酸化した酸化絶縁物層20は大気中の水分を吸収して酸化絶縁物層20の強度が弱くなる傾向があるが、水蒸気中、約450℃での酸化処理の後、基板10を100℃以上に保持した状態で、酸化装置(図示せず)かプラズマCVD装置(図示せず)に搬送するか、あるいは、窒素雰囲気中または真空雰囲気中の非酸化雰囲気中で、基板10を酸化装置(図示せず)からプラズマCVD装置(図示せず)に搬送するので、溝42の全周囲にわたって溝42の側部42aに露出する酸化絶縁物層20および溝44の全周囲にわたって溝44の側部44aに露出する酸化絶縁物層20は、大気中の水分に晒されることなくプラズマCVD装置(図示せず)に搬送される。その結果、大気中の水分を吸収して酸化絶縁物層20の強度が弱くなることが防止される。
【0062】
さらに、プラズマCVD装置(図示せず)によって、溝42の全周囲にわたって溝42の側部42aに露出する酸化絶縁物層20の端部20aおよび溝44の全周囲にわたって溝44の側部44aに露出する酸化絶縁物層20の端部20aを、パッシベーション膜として機能するSiNX膜26によって覆うので、酸化絶縁物層20が大気中の水分を吸収することを防止でき、大気中の水分を吸収して酸化絶縁物層20の強度が弱くなることが防止される。
【0063】
(第2の実施の形態)
図7〜図9を参照すれば、本発明の第2の実施の形態の端面発光型の半導体レーザ100は、略直方体形状であり、上面101、底面102、側部の端面103〜106を備えている。端面103と端面104は互いに対向し、方向107、108を含む面に平行に延在している。端面105と端面106は互いに対向し、方向107、109を含む面に平行に延在している。
【0064】
半導体レーザ100は、n−GaAs基板110と、n−GaAs基板110上のn−Al0.3GaAsクラッド層112と、n−Al0.3GaAsクラッド層112上のSCH−MQW(Separate Confinement Heterostructure Multiple Quantum Well)活性層114と、SCH−MQW活性層114上の第1のP−Al0.3GaAsクラッド層116と、第1のP−Al0.3GaAsクラッド層116上のp−Al0.98GaAsを含む層119と、p−Al0.98GaAsを含む層119上の第2のP−Al0.3GaAsクラッド層122と、第2のP−Al0.3GaAsクラッド層122上のp−GaAsコンタクト層124とを備えている。なお、SCH−MQW活性層114には、レーザの発振波長が850nm帯の場合には、GaAs/Al0.2GaAs量子井戸構造が用いられ、960−1200nm帯の場合には、InGaAs/GaAs量子井戸構造が用いられ、980−1600nm帯の場合には、InGaNAs(Sb)/GaAs量子井戸構造が用いられる。
【0065】
基板10の上面101側には、溝42、44が設けられている。溝42、44は、p−Al0.98GaAsを含む層119よりも深く、第1のP−Al0.3GaAsクラッド層116に達して設けられている。
【0066】
溝42、44は、方向109に沿って横長に設けられている。溝42と溝44との間には、ストライプ状のリッジ46が形成されている。ストライプ状のリッジ46の長手方向は、方向109に沿っている。ストライプ状のリッジ46は、第1のP−Al0.3GaAsクラッド層116の上部と、p−Al0.98GaAsを含む層119と、第2のP−Al0.3GaAsクラッド層122と、p−GaAsコンタクト層124とを備えている。
【0067】
溝42の側部42aには、溝42の全周囲にわたって、第1のP−Al0.3GaAsクラッド層116と、p−Al0.98GaAsを含む層119と、第2のP−Al0.3GaAsクラッド層122と、p−GaAsコンタクト層124とが露出している。溝42の底部42bには、第1のP−Al0.3GaAsクラッド層116が露出している。
【0068】
溝44の側部44aには、溝44の全周囲にわたって、第1のP−Al0.3GaAsクラッド層116と、p−Al0.98GaAsを含む層119と、第2のP−Al0.3GaAsクラッド層122と、p−GaAsコンタクト層124とが露出している。溝44の底部44bには、第1のP−Al0.3GaAsクラッド層116が露出している。
【0069】
p−Al0.98GaAsを含む層119は、p−Al0.98GaAs層118と、Al0.98GaAsを酸化した酸化絶縁物層120とを備えている。Al0.98GaAsを酸化した酸化絶縁物層120は、溝42および溝44の全周囲にわたってそれぞれ設けられており(図6参照)、酸化絶縁物層120の端部120aは、溝42の全周囲にわたって溝42の側部42aに露出し、溝44の全周囲にわたって溝44の側部44aに露出している。
【0070】
溝42と溝44との間には、ストライプ状のリッジ46が形成されていることから、溝42の内側の側面42aおよび溝44の内側の側面44aはリッジ46の両側の側面46aであり、リッジ46の両側の側面46aに酸化絶縁物層120の端部120aが露出し、酸化絶縁物層120は、両側の側面46aからリッジ46の内側に向かってp−Al0.98GaAsを含む層119内に延在して設けられている。p−Al0.98GaAsを含む層119のリッジ46の中央の領域には、p−Al0.98GaAs層118が両側の酸化絶縁物層120に挟まれて設けられている。
【0071】
溝42の周囲の酸化絶縁物層120の外側の領域および溝44の周囲の酸化絶縁物層120の外側の領域のp−Al0.98GaAsを含む層119には、p−Al0.98GaAs層118が設けられている。p−Al0.98GaAsを含む層119と側部の端面103〜106とが交差する箇所の全てにおいて、p−Al0.98GaAs層118が露出している。p−Al0.98GaAsを含む層119と側部の端面103〜106とが交差する箇所のいずれにおいても、酸化絶縁物層120は露出していない。
【0072】
p−GaAsコンタクト層124上、溝42の側面42a上および底面42b上、ならびに溝44の側面44a上および底面44b上には、SiNX膜26が設けられている。従って、溝42の全周囲にわたって溝42の側部42aに露出する酸化絶縁物層120および溝44の全周囲にわたって溝44の側部44aに露出する酸化絶縁物層120は、SiNX膜26によって覆われている。SiNX膜26はパッシベーション膜として機能する。
【0073】
リッジ46上のSiNX膜26の中央部には、窓32が方向109に沿って、端面103から端面104にわたって設けられている(図6参照)。窓32によって、リッジ46のp−GaAsコンタクト層124が露出している。
【0074】
上面101のSiNX膜26上には、全面にわたってp側電極28が設けられている。p側電極28は窓32を介して、リッジ46のp−GaAsコンタクト層124に接続されている。基板10の底面102側には、n側電極30が設けられている。
【0075】
リッジ46内のp−Al0.98GaAsを含む層119においては、中央のp−Al0.98GaAs118が両側の酸化絶縁物層120に挟まれて設けられている。そのため、両側の酸化絶縁物層120が、窓32に設けられたp側電極28と底面のn側電極30との間を上下方向に流れる電流を狭窄する電流狭窄構造として機能する。
【0076】
方向109と交差する端面103、104がレーザ光の発振面であり、端面103、104に露出するSCH−MQW活性層114からレーザ光が出射する。
【0077】
本実施の形態においては、Al0.98GaAsを酸化した酸化絶縁物層120は、溝42および溝44の全周囲にわたってそれぞれ設けられており、酸化絶縁物層120の端部120aは、溝42の全周囲にわたって溝42の側部42aに露出し、溝44の全周囲にわたって溝44の側部44aに露出している。従って、溝42、44には、酸化絶縁物層120のみが露出し、p−Al0.98GaAs層118は露出しないので、酸化絶縁物層120とp−Al0.98GaAs層118が共に露出する場合のような歪は存在せず、その結果、熱履歴等によってこの歪が原因となってクラック等が発生するのを防止または有効に抑制することができる。
【0078】
酸化絶縁物層120は、p−Al0.98GaAsを含む層119に含まれているが、p−Al0.98GaAsを含む層119と側部の端面103〜106とが交差する箇所の全てにおいて、p−Al0.98GaAs層118が露出しており、p−Al0.98GaAsを含む層119と側部の端面103〜106とが交差する箇所のいずれにおいても、酸化絶縁物層120は露出していない構造となっているので、端面103〜106を劈開等で形成する場合にも、劈開等によってクラックが端面103〜106に発生するのを防止または有効に抑制することができる。
【0079】
また、Al0.98GaAsを酸化した酸化絶縁物層120は大気中の水分を吸収して酸化絶縁物層120の強度が弱くなる傾向があるが、溝42の全周囲にわたって溝42の側部42aに露出する酸化絶縁物層120の端部120aおよび溝44の全周囲にわたって溝44の側部44aに露出する酸化絶縁物層120の端部120aは、パッシベーション膜として機能するSiNX膜26によって覆われているので、酸化絶縁物層120が大気中の水分を吸収することを防止できる。
【0080】
次に、第2の実施の形態の半導体レーザ100の製造方法を説明するが、上述の第1の実施の形態の半導体レーザ100の製造方法と各層の組成等が異なるが、基本的には類似の方法なので詳細は省略する。
【0081】
本実施の形態においても、溝42および溝44の対を、方向108および方向109にそれぞれ複数形成して、各対の溝42と溝44との間には、方向109に延在するストライプ状のリッジ46を形成する。
【0082】
その後、第1の実施の形態と同じ装置を使用し、同じ方法で、水蒸気中、約400℃で酸化処理を行い、溝42の側部42aに全周囲にわたって露出するp−Al0.98GaAs層と、溝44の側部44aに全周囲にわたって露出するp−Al0.98GaAs層を、溝42の側部42aおよび溝44の側部44aから酸化し、p−Al0.98GaAs層を、p−Al0.98GaAs層118と、Al0.98GaAsを酸化した酸化絶縁物層120とを備えるp−Al0.98GaAsを含む層119に形成する。
【0083】
Al0.98GaAsを酸化した酸化絶縁物層120は、溝42および溝44の全周囲にわたってそれぞれ形成され(図6参照)、酸化絶縁物層120の端部20aは、溝42の全周囲にわたって溝42の側部42aに露出し、溝44の全周囲にわたって溝44の側部44aに露出する。
【0084】
溝42と溝44との間には、ストライプ状のリッジ46が形成されることから、リッジ46の両側の側面46aに酸化絶縁物層120の端部120aが露出し、酸化絶縁物層120は、両側の側面46aからリッジ46の内側に向かってp−Al0.98GaAsを含む層119内を延在し、p−Al0.98GaAsを含む層119のリッジ46の中央の領域には、p−Al0.98GaAs層118が両側の酸化絶縁物層120に挟まれた状態で残される。
【0085】
水蒸気中、約400℃での酸化処理の後、第1の実施の形態と同じ装置を使用し、同じ方法で、基板10をプラズマCVD装置(図示せず)に搬送する。
【0086】
次に、プラズマCVD装置(図示せず)を使用して、モノシランガスと窒素ガスとを用いてプラズマCVD法により、p−GaAsコンタクト層124上、溝42の側面42a上および底面42b上、ならびに溝44の側面44a上および底面44b上に、SiNX膜26を形成する。これによって、溝42の全周囲にわたって溝42の側部42aに露出する酸化絶縁物層120および溝44の全周囲にわたって溝44の側部44aに露出する酸化絶縁物層120を、SiNX膜26によって覆う。
【0087】
次に、第1の実施の形態と同じ方法で窓32を形成し、n−GaAs基板110の底面102を研磨し、p側電極28およびn側電極30を形成する。
【0088】
次に、図6に示すように、第1の実施の形態と同じ方法で、方向108の切断線60および方向109の切断線70に沿って基板10を劈開して、上述した本実施の形態の半導体レーザ100を形成する。
【0089】
上述のように、溝42および溝44を形成することによりこれらの溝42、44間にリッジを形成し、溝42の側部42aおよび溝44の側部44aのそれぞれの全周囲にわたって露出するp−Al0.98GaAs層を酸化して、Al0.98GaAsを酸化した酸化絶縁物を形成するので、Al0.98GaAsを酸化した酸化絶縁物層120は、溝42および溝44の全周囲にわたってそれぞれ設けられることになり、酸化絶縁物層120の端部120aは、溝42の全周囲にわたって溝42の側部42aに露出し、溝44の全周囲にわたって溝44の側部44aに露出する。従って、溝42、44には、酸化絶縁物層120のみが露出し、p−Al0.98GaAs層118は露出しないので、酸化絶縁物層120とp−Al0.98GaAs層118が共に露出する場合のような歪は存在せず、その結果、熱履歴等によってこの歪が原因となってクラック等が発生するのを防止または有効に抑制することができる。
【0090】
また、図6に示すように、溝42および溝44の方向109における両側であって、溝42および溝44に対して酸化絶縁物120よりも外側で方向108の切断線60、および溝42および溝44の対と溝42および溝44の対との間であって、各対にとって酸化絶縁物120よりも外側で方向109の切断線70に沿って劈開するので、劈開面には酸化絶縁物層120が露出していない状態で劈開することになり、劈開時にクラックが発生するのを防止または有効に抑制することができる。
【0091】
また、水蒸気中、約400℃での酸化処理の後、第1の実施の形態と同じく、基板10を100℃以上に保持した状態で、酸化装置(図示せず)かプラズマCVD装置(図示せず)に搬送するか、あるいは、窒素雰囲気中または真空雰囲気中の非酸化雰囲気中で、基板10を酸化装置(図示せず)からプラズマCVD装置(図示せず)に搬送するので、溝42の全周囲にわたって溝42の側部42aに露出する酸化絶縁物層120および溝44の全周囲にわたって溝44の側部44aに露出する酸化絶縁物層120は、大気中の水分に晒されることなくプラズマCVD装置(図示せず)に搬送される。その結果、大気中の水分を吸収して酸化絶縁物層120の強度が弱くなることが防止される。
【0092】
さらに、プラズマCVD装置(図示せず)によって、溝42の全周囲にわたって溝42の側部42aに露出する酸化絶縁物層120の端部120aおよび溝44の全周囲にわたって溝44の側部44aに露出する酸化絶縁物層120の端部120aを、パッシベーション膜として機能するSiNX膜26によって覆うので、酸化絶縁物層120が大気中の水分を吸収することを防止でき、大気中の水分を吸収して酸化絶縁物層120の強度が弱くなることが防止される。
【0093】
なお、本実施の形態では、p−Al0.98GaAs層を酸化して、中央のp−Al0.98GaAs118と両側の酸化絶縁物層120とを備えるp−Al0.98GaAsを含む層119からなる電流狭窄構造を形成したが、p−AlAs層を酸化して形成した、中央のp−AlAsと両側のアルミニウムの酸化物からなる電流狭窄構造を用いることもできる。
【0094】
(第3の実施の形態)
図10〜図12を参照すれば、本実施の形態の半導体レーザ100は、n−InP基板10と、n−InP基板10上のn−InPクラッド層12と、n−InPクラッド層12上のSCH−MQW活性層14と、SCH−MQW活性層14上の第1のP−InPクラッド層16と、第1のP−InPクラッド層16上のp−AlInAsを含む層19と、p−AlInAsを含む層19上の第2のP−InPクラッド層22と、第2のP−InPクラッド層22上のp−GaInAsコンタクト層24と、SiNX膜26と、p側電極28とn側電極30とを備えている。
【0095】
第1の実施の形態の端面発光型の半導体レーザ100では、溝42、44を設け、溝42、44間にストライプ状のリッジ46を形成したが、本実施の形態では、溝42、44を設け、溝42、44間にストライプ状のリッジ46を形成し、溝52、54を設け、溝52、54間にストライプ状のリッジ56を形成している。溝42と溝54は隣接している。溝42、44およびリッジ46の構造は第1の実施の形態の溝42、44およびリッジ46の構造と同じである。溝52、54およびリッジ56の構造は本実施の形態の溝42、44およびリッジ46の構造と同じである。
【0096】
p−AlInAsを含む層19は、p−AlInAs層18と、AlInAsを酸化した酸化絶縁物層20とを備えている。AlInAsを酸化した酸化絶縁物層20は、溝42、溝44、溝52および溝54の全周囲にわたってそれぞれ設けられており、酸化絶縁物層20の端部20aは、溝42の全周囲にわたって溝42の側部42aに露出し、溝44の全周囲にわたって溝44の側部44aに露出し、溝52の全周囲にわたって溝52の側部52aに露出し、溝54の全周囲にわたって溝54の側部54aに露出している。
【0097】
溝42と溝44との間には、ストライプ状のリッジ46が形成されていることから、溝42の内側の側面42aおよび溝44の内側の側面44aはリッジ46の両側の側面46aであり、リッジ46の両側の側面46aに酸化絶縁物層20の端部20aが露出し、酸化絶縁物層20は、両側の側面46aからリッジ46の内側に向かってp−AlInAsを含む層19内に延在して設けられている。p−AlInAsを含む層19のリッジ46の中央の領域には、p−AlInAs層18が両側の酸化絶縁物層20に挟まれて設けられている。
【0098】
溝52と溝54との間には、ストライプ状のリッジ56が形成されていることから、溝52の内側の側面52aおよび溝54の内側の側面54aはリッジ56の両側の側面56aであり、リッジ56の両側の側面56aに酸化絶縁物層20の端部20aが露出し、酸化絶縁物層20は、両側の側面56aからリッジ56の内側に向かってp−AlInAsを含む層19内に延在して設けられている。p−AlInAsを含む層19のリッジ56の中央の領域には、p−AlInAs層18が両側の酸化絶縁物層20に挟まれて設けられている。
【0099】
溝42の周囲の酸化絶縁物層20の外側の領域、溝44の周囲の酸化絶縁物層20の外側の領域、溝52の周囲の酸化絶縁物層20の外側の領域、溝54の周囲の酸化絶縁物層20の外側の領域および溝42の周囲の酸化絶縁物層20と溝54の周囲の酸化絶縁物層20との間の領域のp−AlInAsを含む層19には、p−AlInAs層18が設けられている。p−AlInAsを含む層19と側部の端面103〜106とが交差する箇所の全てにおいて、p−AlInAs層18が露出している。p−AlInAsを含む層19と側部の端面103〜106とが交差する箇所のいずれにおいても、酸化絶縁物層20は露出していない。
【0100】
リッジ46内のp−AlInAsを含む層19においては、中央のp−AlInAs層18が両側の酸化絶縁物層20に挟まれて設けられている。そのため、両側の酸化絶縁物層20が、窓32に設けられたp側電極28と底面のn側電極30との間を上下方向に流れる電流を狭窄する電流狭窄構造として機能する。
【0101】
リッジ56内のp−AlInAsを含む層19においては、中央のp−AlInAs層18が両側の酸化絶縁物層20に挟まれて設けられている。そのため、両側の酸化絶縁物層20が、窓32に設けられたp側電極28と底面のn側電極30との間を上下方向に流れる電流を狭窄する電流狭窄構造として機能する。
【0102】
上面101は、パッシベーション膜として機能するSiNX膜26によって覆われている。従って、溝42の全周囲にわたって溝42の側部42aに露出する酸化絶縁物層20、溝44の全周囲にわたって溝44の側部44aに露出する酸化絶縁物層20、溝52の全周囲にわたって溝52の側部52aに露出する酸化絶縁物層20、溝54の全周囲にわたって溝54の側部54aに露出する酸化絶縁物層20は、SiNX膜26によって覆われている。
【0103】
方向109と交差する端面103、104がレーザ光の発振面であり、端面103、104に露出するSCH−MQW活性層14からレーザ光が出射する。
【0104】
次に、第3の実施の形態の半導体レーザ100の製造方法を説明するが、上述の第1の実施の形態の半導体レーザ100の製造方法と各層の組成も同じであり、基本的には類似の方法なので詳細は省略する。
【0105】
本実施の形態においては、溝42、溝44、溝52および溝54の組を、方向108および方向109にそれぞれ複数形成して、各組の溝42と溝44との間には、方向109に延在するストライプ状のリッジ46を形成し、各組の溝52と溝54との間には、方向109に延在するストライプ状のリッジ56を形成する。
【0106】
その後、第1の実施の形態と同じ装置を使用し、同じ方法で、水蒸気中、約450℃で酸化処理を行い、溝42の側部42aに全周囲にわたって露出するp−AlInAs層と、溝44の側部44aに全周囲にわたって露出するp−AlInAs層と、溝52の側部52aに全周囲にわたって露出するp−AlInAs層と、溝54の側部54aに全周囲にわたって露出するp−AlInAs層とを、溝42の側部42a、溝44の側部44a、溝52の側部52aおよび溝54の側部54aから酸化し、p−AlInAs層を、p−AlInAs層18と、AlInAsを酸化した酸化絶縁物層20とを備えるp−AlInAsを含む層19に形成する。
【0107】
AlInAsを酸化した酸化絶縁物層20は、溝42、溝44、溝52および溝54の全周囲にわたってそれぞれ形成され、酸化絶縁物層20の端部20aは、溝42の全周囲にわたって溝42の側部42aに露出し、溝44の全周囲にわたって溝44の側部44aに露出し、溝52の全周囲にわたって溝52の側部52aに露出し、溝54の全周囲にわたって溝54の側部54aに露出する。
【0108】
溝42と溝44との間には、ストライプ状のリッジ46が形成されることから、リッジ46の両側の側面46aに酸化絶縁物層20の端部20aが露出し、酸化絶縁物層20は、両側の側面46aからリッジ46の内側に向かってp−AlInAsを含む層19内を延在し、p−AlInAsを含む層19のリッジ46の中央の領域には、p−AlInAs層18が両側の酸化絶縁物層20に挟まれた状態で残される。
【0109】
溝52と溝54との間には、ストライプ状のリッジ56が形成されることから、リッジ56の両側の側面56aに酸化絶縁物層20の端部20aが露出し、酸化絶縁物層20は、両側の側面56aからリッジ56の内側に向かってp−AlInAsを含む層19内を延在し、p−AlInAsを含む層19のリッジ56の中央の領域には、p−AlInAs層18が両側の酸化絶縁物層20に挟まれた状態で残される。
【0110】
水蒸気中、約450℃での酸化処理の後、第1の実施の形態と同じ装置を使用し、同じ方法で、基板10をプラズマCVD装置(図示せず)に搬送する。
【0111】
次に、プラズマCVD装置(図示せず)を使用して、モノシランガスと窒素ガスとを用いてプラズマCVD法により、p−GaInAsコンタクト層24上、溝42の側面42a上および底面42b上、溝44の側面44a上および底面44b上、溝52の側面52a上および底面52b上、ならびに溝54の側面54a上および底面54b上に、SiNX膜26を形成する。これによって、溝42の全周囲にわたって溝42の側部42aに露出する酸化絶縁物層20、溝44の全周囲にわたって溝44の側部44aに露出する酸化絶縁物層20、溝52の全周囲にわたって溝52の側部52aに露出する酸化絶縁物層20および溝54の全周囲にわたって溝54の側部54aに露出する酸化絶縁物層20を、SiNX膜26によって覆う。
【0112】
次に、第1の実施の形態と同じ方法で窓32を形成し、n−InP基板10の底面102を研磨し、p側電極28およびn側電極30を形成する。
【0113】
次に、第1の実施の形態と同じ方法で、溝42、溝44、溝52および溝54の方向109における両側であって、溝42、溝44、溝52および溝54に対して酸化絶縁物20よりも外側で方向108に沿って設けられた切断線、および溝42、溝44、溝52および溝54の組と溝42、溝44、溝52および溝54の組との間であって、各組にとって酸化絶縁物20よりも外側で方向109に沿って設けられた切断線に沿って基板10を劈開して、上述した本実施の形態の半導体レーザ100を形成する。
【0114】
(第4の実施の形態)
図13〜図15を参照すれば、本実施の形態の半導体レーザ100は、n−InP基板10と、n−InP基板10上のn−InPクラッド層12と、n−InPクラッド層12上のSCH−MQW活性層14と、SCH−MQW活性層14上の第1のP−InPクラッド層16と、第1のP−InPクラッド層16上のp−AlInAsを含む層19と、p−AlInAsを含む層19上の第2のP−InPクラッド層22と、第2のP−InPクラッド層22上のp−GaInAsコンタクト層24と、SiNX膜26と、p側電極28とn側電極30とを備えている。
【0115】
第1の実施の形態の端面発光型の半導体レーザ100では、溝42、44を設け、溝42、44間にストライプ状のリッジ46を形成したが、本実施の形態では、溝42、44、72を設け、溝42、44間にストライプ状のリッジ46を形成し、溝42、72間にストライプ状のリッジ76を形成している。溝42、44および72の構造は第1の実施の形態の溝42および44の構造と同じである。リッジ46、76の構造は、第1の実施の形態のリッジ46の構造と同じである。
【0116】
p−AlInAsを含む層19は、p−AlInAs層18と、AlInAsを酸化した酸化絶縁物層20とを備えている。AlInAsを酸化した酸化絶縁物層20は、溝42、溝44および溝72の全周囲にわたってそれぞれ設けられており、酸化絶縁物層20の端部20aは、溝42の全周囲にわたって溝42の側部42aに露出し、溝44の全周囲にわたって溝44の側部44aに露出し、溝72の全周囲にわたって溝72の側部72aに露出している。
【0117】
溝42と溝44との間には、ストライプ状のリッジ46が形成されていることから、溝42の内側の側面42aおよび溝44の内側の側面44aはリッジ46の両側の側面46aであり、リッジ46の両側の側面46aに酸化絶縁物層20の端部20aが露出し、酸化絶縁物層20は、両側の側面46aからリッジ46の内側に向かってp−AlInAsを含む層19内に延在して設けられている。p−AlInAsを含む層19のリッジ46の中央の領域には、p−AlInAs層18が両側の酸化絶縁物層20に挟まれて設けられている。
【0118】
溝42と溝74との間には、ストライプ状のリッジ76が形成されていることから、溝42の内側の側面42aおよび溝72の内側の側面72aはリッジ76の両側の側面76aであり、リッジ76の両側の側面76aに酸化絶縁物層20の端部20aが露出し、酸化絶縁物層20は、両側の側面76aからリッジ76の内側に向かってp−AlInAsを含む層19内に延在して設けられている。p−AlInAsを含む層19のリッジ76の中央の領域には、p−AlInAs層18が両側の酸化絶縁物層20に挟まれて設けられている。
【0119】
溝42の周囲の酸化絶縁物層20の外側の領域、溝44の周囲の酸化絶縁物層20の外側の領域および溝72の周囲の酸化絶縁物層20の外側の領域のp−AlInAsを含む層19には、p−AlInAs層18が設けられている。p−AlInAsを含む層19と側部の端面103〜106とが交差する箇所の全てにおいて、p−AlInAs層18が露出している。p−AlInAsを含む層19と側部の端面103〜106とが交差する箇所のいずれにおいても、酸化絶縁物層20は露出していない。
【0120】
リッジ46内のp−AlInAsを含む層19においては、中央のp−AlInAs層18が両側の酸化絶縁物層20に挟まれて設けられている。そのため、両側の酸化絶縁物層20が、窓32に設けられたp側電極28と底面のn側電極30との間を上下方向に流れる電流を狭窄する電流狭窄構造として機能する。
【0121】
リッジ76内のp−AlInAsを含む層19においては、中央のp−AlInAs層18が両側の酸化絶縁物層20に挟まれて設けられている。そのため、両側の酸化絶縁物層20が、窓32に設けられたp側電極28と底面のn側電極30との間を上下方向に流れる電流を狭窄する電流狭窄構造として機能する。
【0122】
上面101は、パッシベーション膜として機能するSiNX膜26によって覆われている。従って、溝42の全周囲にわたって溝42の側部42aに露出する酸化絶縁物層20、溝44の全周囲にわたって溝44の側部44aに露出する酸化絶縁物層20、溝72の全周囲にわたって溝72の側部72aに露出する酸化絶縁物層20は、SiNX膜26によって覆われている。
【0123】
方向109と交差する端面103、104がレーザ光の発振面であり、端面103、104に露出するSCH−MQW活性層14からレーザ光が出射する。
【0124】
次に、第4の実施の形態の半導体レーザ100の製造方法を説明するが、上述の第1の実施の形態の半導体レーザ100の製造方法と各層の組成も同じであり、基本的には類似の方法なので詳細は省略する。
【0125】
本実施の形態においては、溝42、溝44および溝72の組を、方向108および方向109にそれぞれ複数形成して、各組の溝42と溝44との間には、方向109に延在するストライプ状のリッジ46を形成し、各組の溝42と溝72との間には、方向109に延在するストライプ状のリッジ76を形成する。
【0126】
その後、第1の実施の形態と同じ装置を使用し、同じ方法で、水蒸気中、約450℃で酸化処理を行い、溝42の側部42aに全周囲にわたって露出するp−AlInAs層と、溝44の側部44aに全周囲にわたって露出するp−AlInAs層と、溝72の側部72aに全周囲にわたって露出するp−AlInAs層とを、溝42の側部42a、溝44の側部44aおよび溝57の側部72aから酸化し、p−AlInAs層を、p−AlInAs層18と、AlInAsを酸化した酸化絶縁物層20とを備えるp−AlInAsを含む層19に形成する。
【0127】
AlInAsを酸化した酸化絶縁物層20は、溝42、溝44および溝72の全周囲にわたってそれぞれ形成され、酸化絶縁物層20の端部20aは、溝42の全周囲にわたって溝42の側部42aに露出し、溝44の全周囲にわたって溝44の側部44aに露出し、溝72の全周囲にわたって溝72の側部72aに露出する。
【0128】
溝42と溝44との間には、ストライプ状のリッジ46が形成されることから、リッジ46の両側の側面46aに酸化絶縁物層20の端部20aが露出し、酸化絶縁物層20は、両側の側面46aからリッジ46の内側に向かってp−AlInAsを含む層19内を延在し、p−AlInAsを含む層19のリッジ46の中央の領域には、p−AlInAs層18が両側の酸化絶縁物層20に挟まれた状態で残される。
【0129】
溝42と溝72との間には、ストライプ状のリッジ76が形成されることから、リッジ76の両側の側面76aに酸化絶縁物層20の端部20aが露出し、酸化絶縁物層20は、両側の側面76aからリッジ76の内側に向かってp−AlInAsを含む層19内を延在し、p−AlInAsを含む層19のリッジ76の中央の領域には、p−AlInAs層18が両側の酸化絶縁物層20に挟まれた状態で残される。
【0130】
水蒸気中、約450℃での酸化処理の後、第1の実施の形態と同じ装置を使用し、同じ方法で、基板10をプラズマCVD装置(図示せず)に搬送する。
【0131】
次に、プラズマCVD装置(図示せず)を使用して、モノシランガスと窒素ガスとを用いてプラズマCVD法により、p−GaInAsコンタクト層24上、溝42の側面42a上および底面42b上、溝44の側面44a上および底面44b上、ならびに溝72の側面72a上および底面72b上に、SiNX膜26を形成する。これによって、溝42の全周囲にわたって溝42の側部42aに露出する酸化絶縁物層20、溝44の全周囲にわたって溝44の側部44aに露出する酸化絶縁物層20および溝72の全周囲にわたって溝72の側部72aに露出する酸化絶縁物層20を、SiNX膜26によって覆う。
【0132】
次に、第1の実施の形態と同じ方法で窓32を形成し、n−InP基板10の底面102を研磨し、p側電極28およびn側電極30を形成する。
【0133】
次に、第1の実施の形態と同じ方法で、溝42、溝44および溝72の方向109における両側であって、溝42、溝44および溝72に対して酸化絶縁物20よりも外側で方向108に沿って設けられた切断線、および溝42、溝44および溝72の組と溝42、溝44および溝72の組との間であって、各組にとって酸化絶縁物20よりも外側で方向109に沿って設けられた切断線に沿って基板10を劈開して、上述した本実施の形態の半導体レーザ100を形成する。
【0134】
なお、第3の実施の形態および第4の実施の形態では、第1の実施の形態と同じく、n−InP基板10と、n−InP基板10上のn−InPクラッド層12と、n−InPクラッド層12上のSCH−MQW活性層14と、SCH−MQW活性層14上の第1のP−InPクラッド層16と、第1のP−InPクラッド層16上のp−AlInAsを含む層19と、p−AlInAsを含む層19上の第2のP−InPクラッド層22と、第2のP−InPクラッド層22上のp−GaInAsコンタクト層24と、SiNX膜26と、p側電極28とn側電極30とを備える半導体レーザを例にとって説明したが、第3の実施の形態のように、溝42、44を設け、溝42、44間にストライプ状のリッジ46を形成し、溝52、54を設け、溝52、54間にストライプ状のリッジ56を形成する構造や、第4の実施の形態のように、溝42、44、72を設け、溝42、44間にストライプ状のリッジ46を形成し、溝42、72間にストライプ状のリッジ76を形成する構造は、第2の実施の形態のように、n−GaAs基板110と、n−GaAs基板110上のn−Al0.3GaAsクラッド層112と、n−Al0.3GaAsクラッド層112上のSCH−MQW活性層114と、SCH−MQW活性層114上の第1のP−Al0.3GaAsクラッド層116と、第1のP−Al0.3GaAsクラッド層116上のp−Al0.98GaAsを含む層119と、p−Al0.98GaAsを含む層119上の第2のP−Al0.3GaAsクラッド層122と、第2のP−Al0.3GaAsクラッド層122上のp−GaAsコンタクト層124と、SiNX膜26と、p側電極28とn側電極30とを備える半導体レーザについても、適用できる。
【0135】
また、上記各半導体レーザは、当該半導体レーザを用いた光通信システムに好適に使用できる。さらに、上記各半導体レーザは、ファイバーレーザの励起用や産業用の溶接用などにも好適に使用できる。
【0136】
以上、本発明の種々の典型的な実施の形態を説明してきたが、本発明はそれらの実施の形態に限定されない。従って、本発明の範囲は、次の特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0137】
10 n−InP基板
12 n−InPクラッド層
14 SCH−MQW活性層
16 第1のP−InPクラッド層
17 p−AlInAs層
18 p−AlInAs層
19 p−AlInAsを含む層
20 AlInAsを酸化した酸化絶縁物層
20a 端部
22 第2のP−InPクラッド層
24 p−GaInAsコンタクト層
26 SiNX
28 p側電極
30 n側電極
32 窓
40 マスク
42、44、52、54、72 溝
42a、44a、52a、54a、72a 側部
42b、44b 底部
46、56、76 リッジ
46a、56a、76a 側部
60、70 切断線
100 半導体レーザ
101 上面
102 底面
103〜106 端面
107〜109 方向
110 n−GaAs基板
112 n−Al0.3GaAsクラッド層
114 SCH−SQW活性層
116 第1のP−Al0.3GaAsクラッド層
118 p−Al0.98GaAs層
119 p−Al0.98GaAsを含む層
120 Al0.98GaAsを酸化した酸化絶縁物層
120a 端部
122 第2のP−Al0.3GaAsクラッド層
124 p−GaAsコンタクト層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板内に設けられた活性層と、
前記基板内に設けられた、Al含有化合物半導体を含む層と、
前記Al含有化合物半導体を含む層をそれぞれ露出して前記基板に設けられた第1および第2の溝と、を備え、
前記第1の溝と前記第2の溝との間には、前記Al含有化合物半導体を含む層を有するストライプ状のリッジが形成され、
前記Al含有化合物半導体を含む層は、第1の酸化絶縁物と、第2の酸化絶縁物と、前記第1の酸化絶縁物および第2の酸化絶縁物以外の領域に存在する前記Al含有化合物半導体とからなり、
前記第1の酸化絶縁物は、前記第1の溝の全周囲に露出して設けられ、
前記第2の酸化絶縁物は、前記第2の溝の全周囲に露出して設けられ、
前記リッジ内において、前記第1の酸化絶縁物と前記第2の酸化絶縁物とによって、前記第1の酸化絶縁物と前記第2の酸化絶縁物との間に存在する前記Al含有化合物半導体に電流経路を狭窄する電流狭窄構造が形成され、
前記基板の端面には前記第1の酸化絶縁物と前記第2の酸化絶縁物は露出しない半導体レーザ。
【請求項2】
前記Al含有化合物半導体を含む層をそれぞれ露出して前記基板に設けられた第3および第4の溝、をさらに備え、
前記第3の溝と前記第4の溝との間には、前記Al含有化合物半導体を含む層を有するストライプ状の第2のリッジが形成され、
前記第3の溝は前記第2の溝と隣接し、
前記Al含有化合物半導体を含む層は、前記第1の酸化絶縁物と、前記第2の酸化絶縁物と、第3の酸化絶縁物と、第4の酸化絶縁物と、前記第1乃至第4の酸化絶縁物以外の領域に存在する前記Al含有化合物半導体と、からなり、
前記第3の酸化絶縁物は、前記第3の溝の全周囲に露出して設けられ、
前記第4の酸化絶縁物は、前記第4の溝の全周囲に露出して設けられ、
前記第2のリッジ内において、前記第3の酸化絶縁物と前記第4の酸化絶縁物とによって、前記第3の酸化絶縁物と前記第4の酸化絶縁物との間に存在する前記Al含有化合物半導体に電流経路を狭窄する第2の電流狭窄構造が形成され、
前記基板の端面には前記第1乃至第4の酸化絶縁物のいずれもが露出しない請求項1記載の半導体レーザ。
【請求項3】
前記Al含有化合物半導体を含む層を露出して、前記第2の溝に隣接して前記基板に設けられた第3の溝をさらに備え、
前記第2の溝と前記第3の溝との間には、前記Al含有化合物半導体を含む層を有するストライプ状の第2のリッジが形成され、
前記Al含有化合物半導体を含む層は、前記第1の酸化絶縁物と、前記第2の酸化絶縁物と、第3の酸化絶縁物と、前記第1乃至第3の酸化絶縁物以外の領域に存在する前記Al含有化合物半導体と、からなり、
前記第3の酸化絶縁物は、前記第3の溝の全周囲に露出して設けられ、
前記第2のリッジ内において、前記第2の酸化絶縁物と前記第3の酸化絶縁物とによって、前記第2の酸化絶縁物と前記第3の酸化絶縁物との間に存在する前記Al含有化合物半導体に電流経路を狭窄する第2の電流狭窄構造が形成され、
前記基板の端面には前記第1乃至第3の酸化絶縁物のいずれもが露出しない請求項1記載の半導体レーザ。
【請求項4】
前記Al含有化合物半導体を含む層と前記基板の端面とが交差する箇所の全てにおいて、前記Al含有化合物半導体が露出している請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体レーザ。
【請求項5】
前記ストライプ状のリッジの長手方向と交差する前記基板の端面がレーザ光の発振面である請求項1乃至4のいずれかに記載の半導体レーザ。
【請求項6】
前記第1の溝に露出する前記第1の酸化絶縁物、前記第2の溝に露出する前記第2の酸化絶縁物、前記第3の溝に露出する前記第3の酸化絶縁物および前記第4の溝に露出する前記第4の酸化絶縁物を覆うパッシベーション膜をさらに備える請求項1乃至5のいずれかに記載の半導体レーザ。
【請求項7】
前記基板はInP基板であり、前記Al含有化合物半導体はAlInAsであり、前記第1乃至第4の酸化絶縁物は、AlInAsを酸化した絶縁物である請求項1乃至6のいずれかに記載の半導体レーザ。
【請求項8】
前記基板はGaAs基板であり、前記Al含有化合物半導体はAlGaAsであり、前記第1乃至第4の酸化絶縁物は、AlGaAsを酸化した絶縁物である請求項1乃至6のいずれかに記載の半導体レーザ。
【請求項9】
前記基板はGaAs基板であり、前記Al含有化合物半導体はAlAsであり、前記第1乃至第4の酸化絶縁物は、アルミニウムの酸化物である請求項1乃至6のいずれかに記載の半導体レーザ。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の半導体レーザを用いた光通信システム。
【請求項11】
活性層と、Al含有化合物半導体からなる層と、を含む基板を準備する工程と、
前記Al含有化合物半導体からなる層をそれぞれ全周囲にわたって露出する第1の溝および第2の溝の対を、前記基板の一主面内の第1の方向および前記第1の方向と交差する第2の方向にそれぞれ複数、前記基板の一主面側から前記基板に形成し、各対の前記第1の溝と前記第2の溝との間には、前記Al含有化合物半導体からなる層を有し長手方向が前記第1の方向に延在するストライプ状のリッジを形成する工程と、
前記Al含有化合物半導体からなる層を、前記Al含有化合物半導体からなる層が前記第1の溝の全周囲にわたって露出する部分および前記第2の溝の全周囲にわたって露出する部分から酸化して、前記第1の溝の全周囲に露出する第1の酸化絶縁物と、前記第2の溝の全周囲に露出する第2の酸化絶縁物と、前記第1の酸化絶縁物および前記第2の酸化絶縁物以外の領域に残る前記Al含有化合物半導体とからなるAl含有化合物半導体を含む層に形成する工程と、
各対の前記第1の溝および第2の溝の前記第1の方向における両側であって、前記第1の溝および前記第2の溝に対して前記第1の酸化絶縁物および前記第2の酸化絶縁物よりも外側で前記第2の方向に沿って前記基板を切断し、隣接する前記第1の溝および第2の溝の対の間であって、各対にとって前記第1の酸化絶縁物および前記第2の酸化絶縁物よりも外側で前記第1の方向に沿って前記基板を切断する工程と、
を備える半導体レーザの製造方法。
【請求項12】
前記Al含有化合物半導体を含む層と前記基板の端面とが交差する箇所の全てにおいて、前記Al含有化合物半導体が露出している請求項11記載の半導体レーザの製造方法。
【請求項13】
前記ストライプ状のリッジまたは前記ストライプ状の第1および第2のリッジの長手方向と交差する前記基板の端面がレーザ光の発振面である請求項11または12記載の半導体レーザの製造方法。
【請求項14】
前記第1の溝に露出する前記第1の酸化絶縁物および前記第2の溝に露出する前記第2の酸化絶縁物を覆ってパッシベーション膜を形成する工程をさらに備える請求項11乃至13のいずれかに記載の半導体レーザの製造方法。
【請求項15】
前記基板はInP基板であり、前記Al含有化合物半導体はAlInAsであり、前記第1および第2の酸化絶縁物は、AlInAsを酸化した絶縁物である請求項11乃至14のいずれかに記載の半導体レーザの製造方法。
【請求項16】
前記基板はGaAs基板であり、前記Al含有化合物半導体はAlGaAsであり、前記第1および第2の酸化絶縁物は、AlGaAsを酸化した絶縁物である請求項11乃至14のいずれかに記載の半導体レーザの製造方法。
【請求項17】
前記基板はGaAs基板であり、前記Al含有化合物半導体はAlAsであり、前記第1および第2の酸化絶縁物は、アルミニウムの酸化物である請求項11乃至14のいずれかに記載の半導体レーザの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2011−142212(P2011−142212A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2039(P2010−2039)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】