説明

半導体発光装置

【課題】 発光素子及び静電気保護素子のバンプによる接合形態の改良により製品歩留り、配光性及び発光輝度を向上し得る半導体発光装置を提供する。
【解決手段】 静電気保護素子としてのツェナーダイオード2をリードフレーム10のマウント部10aに搭載し、フリップチップ型の半導体発光素子1を上面にp側及びn側の電極を導通させて搭載し、半導体発光素子1の搭載面側と反対側を主光取出し面とした半導体発光装置において、発光素子1とツェナーダイオード2のそれぞれに、両者間を相互に逆極性で導通させるp側とn側のバンプのいずれかを振り分けて形成し、発光素子1とツェナーダイオード2にバンプを1個ずつ振り分けることで製品の不良率を低下させる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フリップチップ型の発光素子を静電気保護素子とともに複合素子化した半導体発光装置に係り、特に発光素子と静電気保護素子の製造歩留りの向上及び発光輝度の向上を可能とした半導体発光装置に関する。
【0002】
【従来の技術】GaN,GaAlN,InGaN及びInAlGaN等の窒化ガリウム系化合物の半導体の製造では、その表面において半導体膜を成長させるための結晶基板として、一般的には絶縁性のサファイアが利用される。このサファイアのような絶縁性の結晶基板を用いる場合では、結晶基板側から電極を出すことができないので、半導体層に設けるp,nの電極は結晶基板と対向する側の一面に形成されることになる。
【0003】たとえば、GaN系化合物半導体を利用した発光素子は、絶縁性の基板としてサファイア基板を用いてその上面にn型層及びp型層を有機金属気相成長法によって積層形成し、p型層の一部をエッチングしてn型層を露出させ、これらのn型層とp型層のそれぞれにn側電極及びp側電極を形成するというものがその基本的な構成である。そして、p側電極を透明電極とした場合であれば、これらのp側及びn側の電極にそれぞれボンディングパッド部を形成して、リードフレームや基板にそれぞれワイヤボンディングされる。
【0004】一方、サファイア基板側から光を取り出すようにしたフリップチップ型の半導体発光素子では、p側電極を透明電極としないままでこのp側及びn側の電極のそれぞれにマイクロバンプを形成し、これらのマイクロバンプを基板またはリードフレームのp側及びn側に接続する。
【0005】図5はフリップチップ型の半導体発光素子を利用したLEDランプの概略を示す縦断面図である。
【0006】図において、発光素子51は、絶縁性の透明なサファイア基板51aの表面に半導体化合物層を積層してたとえばその中の一つの層として形成されるInGaN活性層を発光層としたものである。そして、n型層にn側電極52が、及びp型層にはp側電極53がそれぞれ蒸着法によって形成され、これらのn側電極52及びp側電極53の上にはそれぞれマイクロバンプ54,55を形成している。
【0007】発光素子51を搭載するリードフレーム56のマウント部56aには、発光素子51に外部から静電気が印加されないようにしてその破壊を防止するために、静電気保護素子としてツェナーダイオード57を設ける。このツェナーダイオード57は、導電性のAgペースト58によってマウント部56aに接着固定され、その上面にはp側及びn側の電極57a,57bをそれぞれ形成したものである。
【0008】発光素子51は、サファイア基板51aが上面を向く姿勢としてツェナーダイオード57の上に搭載され、n側及びp側のマイクロバンプ54,55をそれぞれツェナーダイオード57の電極57a,57bに接合することによって電気的に導通させる。そして、リードフレーム56の上端部を含めて発光素子51の全体がエポキシ樹脂59によって封止され、図示の形状のLEDランプが構成される。
【0009】発光素子51への通電があるときには、半導体積層膜中のInGaN活性層が発光層となり、この発光層からの光がサファイア基板51a及びp側電極53の両方向へ向かう。そして、p側電極53を光透過しない反射型の積層膜としておくことにより、サファイア基板51aの上面からの発光輝度を最大としてこの面を主光取出し面とすることができる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】ところが、マイクロバンプ54,55はいずれも発光素子51のn側及びp側の電極52,53に設けるので、製品歩留りの向上の一つの障害となる。すなわち、マイクロバンプ54,55の両方が正常に機能するようにこれらを形成した製品でなければ合格品とはならず、いずれか一方が欠損したり付着力が不足したりした場合では、不良品として廃棄されることになる。したがって、両方のマイクロバンプ54,55を正常に形成した製品として回収するには不良率が高くなり、製品歩留りの低下の大きな原因となる。
【0011】また、マイクロバンプ54,55はワイヤをn側及びp側の電極52,53にたとえば加熱圧着した後に引きちぎるというスタッドバンプとして形成することが量産化に好適とされている。このため、スタッドによる形成では、マイクロバンプ54,55の高さが不揃いとなりやすい。このようにマイクロバンプ54,55の高さが一様でないと、ツェナーダイオード57の上に搭載して固定したときに発光素子51の姿勢が傾いてしまい、発光層からの発光方向の一様性も損なわれることになる。
【0012】更に、スタッド方式によるマイクロバンプ54,55は、相手の電極57a,57bに対してピンポイント接触の形態となる。このため、マイクロバンプ54,55を出た後の電極側への電流の広がりが小さくなり、電子注入効率にも上限があって発光輝度にも影響する。
【0013】このように従来のフリップチップ型の発光素子51を静電気保護用のツェナーダイオード57にマイクロバンプ54,55によって接合するものでは、製品の歩留り、配光性及び発光輝度の点において改善すべき問題が残っている。
【0014】本発明において解決すべき課題は、発光素子及び静電気保護素子のマイクロバンプによる接合形態の改良により製品歩留り、配光性及び発光輝度をそれぞれ向上し得る半導体発光装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明は、静電気保護素子をリードフレームまたは基板等の基材の搭載面に搭載し、フリップチップ型の半導体発光素子を前記静電気保護素子の上面にp側及びn側の電極を導通させて搭載し、前記半導体発光素子の搭載面側と反対側を主光取出し面とした半導体発光装置において、前記発光素子と静電気保護素子のそれぞれに、両者間を相互に逆極性で導通させるp側とn側のバンプのいずれかを振り分けて形成してなることを特徴とする。
【0016】この構成では、発光素子側と静電気保護素子側のそれぞれに1個ずつのp側またはn側のバンプを形成するので、どちらか一方にp側及びn側のバンプの両方を形成する場合に比べると、バンプを形成する製品についての不良率を減らすことができる。
【0017】
【発明の実施の形態】請求項1に記載の発明は、静電気保護素子をリードフレームまたは基板等の基材の搭載面に搭載し、フリップチップ型の半導体発光素子を前記静電気保護素子の上面にp側及びn側の電極を導通させて搭載し、前記半導体発光素子の搭載面側と反対側を主光取出し面とした半導体発光装置において、前記発光素子と静電気保護素子のそれぞれに、両者間を相互に逆極性で導通させるp側とn側のバンプのいずれかを振り分けて形成してなるものであり、発光素子及び静電気保護素子のいずれについてもバンプ形成に際しての不良率を、2個のバンプを個々に形成する場合に比べて低減するという作用を有する。
【0018】請求項2に記載の発明は、前記発光素子または静電気保護素子のいずれか一方に形成するバンプを1点のスポットとし、他方に形成するバンプは前記スポットをほぼ中心とする円に沿う線分として形成してなる請求項1記載の半導体発光装置であり、点どうしの接触ではなく円弧状のバンプによって点と線との接触を得ることができると同時に、点のバンプがp側及び円弧状のバンプがn側として発光装置側に形成すれば、半導体化合物積層膜内での電流の拡散を促進させるという作用を有する。
【0019】請求項3に記載の発明は、前記発光素子または静電気保護素子のいずれか一方には、電極及びバンプを除く領域を絶縁層で被覆してなる請求項1または2記載の半導体発光装置であり、バンプどうしまたはバンプと電極との短絡を防止するという作用を有する。
【0020】以下に、本発明の実施の形態の具体例を図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施の形態による半導体発光装置であってLEDランプの例を示す概略縦断面図、図2は図1のA−A線矢視位置による要部の縦断面図である。
【0021】図1において、LEDランプは従来例で示したものと同様に、サファイア基板1aの上面を主光取出し面とした発光素子1を静電気保護用のツェナーダイオード2に搭載した複合化素子をリードフレーム10のマウント部10aに載せて接着剤11によって固定し、リードフレーム10の上端を含めてエポキシ樹脂12によって封止したものである。
【0022】発光素子1は、サファイア基板1aの表面に下から順にたとえばGaNバッファ層,n型GaN層,InGaN活性層,p型AlGaN層及びp型GaN層をそれぞれ積層したいわゆるダブルヘテロ構造を構成したものとすることができる。そして、通電によってInGaN活性層が発光層となり、発光層からの光がサファイア基板1aの主光取出し面側及びp側電極3に向かう。
【0023】図3は発光素子1の要部の詳細であって、同図の(a)は図1に示した姿勢の発光素子1の底面図、同図の(b)は同図(a)のB−B線矢視位置での要部の縦断面図である。
【0024】発光素子1がツェナーダイオード2に搭載される面には、金属積層膜によるp側電極3及びn側バンプ4をそれぞれ形成する。p側電極3はパターニングによって図示のように一対の円弧状のスリット3aができるように形成され、n側バンプ4はこれらのスリット3aの中に収まる円弧状の平面形状としたものである。そして、スリット3aの領域にほぼ相当する領域を予めエッチングしておいてn型GaN層を露出させるようにし、このn型層にn側バンプ4を接合する。このn側バンプ4は、図3の(b)に示すようにp側電極3の下端面よりも下に突き出る長さを持つように形成されている。
【0025】図4はツェナーダイオード2の詳細であって、同図の(a)は平面図、同図の(b),(c),(d)はそれぞれ同図(a)のC−C線,D−D線及びE−E線矢視位置での要部の縦断面図である。
【0026】ツェナーダイオード2は、n型シリコン基板を用いたもので、その上面には一部を部分的に除いて一様な膜厚のポリイミド膜5を積層している。すなわち、同図の(a)に示すように、ほぼ円形のポリイミド膜5が形成されていない部分を発光素子1のn側バンプ4が着座する領域とし、この着座領域にp側電極6を積層している。また、右端部分からp側電極6までの部分にかけて、ワイヤボンディングのためのボンディングパッド7a,引き出しリード7b及びn側バンプ7cを形成している。
【0027】ボンディングパッド7aは蒸着法により及びn側バンプ7cはスタッドまたはメッキ方式で形成されたもので、同図の(b)〜(d)に示すようにポリイミド膜5よりも厚い層として形成されている。引き出しリード7bは、図4の(c)に示すように、p側電極6の厚みと同等以下であってその全体がポリイミド膜5によって被覆された厚みはp側電極6と同等以下である。また、引き出しリード7bはp側電極6が形成されている円部分に半径方向に半島状に突き出ていて、その先端はp側電極6の中心まで延び、その先端に形成されているn側バンプ7cはp側電極6の中心に一致した位置に形成されている。
【0028】ツェナーダイオード2の上に発光素子1を搭載するときには、発光素子1の円弧状のn側バンプ4が描く円が円形のp側電極6と同心配置となるようにハンドリングする。このような操作により、n側バンプ4で囲まれたp側電極3の円形部分に対してツェナーダイオード2のn側バンプ7cがほぼ中心に突き当たるとともに、n側バンプ4がp側電極6の領域に含まれた状態で接続される。
【0029】すなわち、図2から明らかなように、発光素子1側に形成したn側バンプ4はツェナーダイオード2の表面に形成したp側電極6と接触し、同時にツェナーダイオード2側のn側バンプ7cは発光素子1のp側電極3に接触する。これにより、発光素子1とツェナーダイオード2のそれぞれの電極が逆極性として接続され、リードフレーム10側からの高電圧が印加されないようにして発光素子1の破壊を防止することができる。
【0030】発光素子1をツェナーダイオード2に搭載した後には、ボンディングパッド7aに対してリードフレーム10との間をワイヤ13をボンディングするとともにエポキシ樹脂12によって全体を封止することで、図1に示したLEDランプが得られる。
【0031】以上の構成において、発光素子1側にはn側バンプ4を及びツェナーダイオード2側にはn側バンプ7cをそれぞれ形成するので、従来例のように発光素子51に2個のバンプ54,55の両方を形成するのに比べると、発光素子1とツェナーダイオード2のそれぞれの製品の不良率の発生が半減される。これにより、発光素子1及びツェナーダイオード2の両方の製品の歩留りの向上が図られるほか、それぞれの製造方法も簡略化が促進される。
【0032】また、ツェナーダイオード2のn側バンプ7cは、発光素子1の円弧状のn側バンプ4が描く円の中心に位置しているので、電流をp側電極3に向けて均一に効率よく拡散させることができる。すなわち、ツェナーダイオード2のn側バンプ7cから発光素子1のn側バンプ4までの電流は、n側バンプ7cから放射状に広がってn側バンプ4に達する。これにより、発光素子1のn型層及びp型層への電子の注入効率を上げることができるので、結果的に発光出力の向上が得られる。
【0033】更に、発光素子1を搭載するときに位置ずれを起こしても、引き出しリード7bはポリイミド膜5によって被覆されているので、n側バンプ4が引き出しリード7bと短絡することもない。
【0034】また、ポリイミド膜5を形成することによって、ツェナーダイオード2の表面の平坦度を上げることができ、発光素子1を正しい姿勢で搭載することができ、配光性を更に向上させることができる。
【0035】
【発明の効果】請求項1の発明では、発光素子及び静電気保護素子のいずれについてもバンプ形成に際しての不良率を、2個のバンプを発光素子または静電気保護素子のいずれか一方に個々に形成する場合に比べて低減できるので、製品の歩留りの向上が可能となる。
【0036】請求項2の発明では、点どうしの接触ではなく円弧状のバンプによって点と線との接触を得ることができるので、発光素子の静電気保護素子への搭載姿勢を安定させることができ、配光性が改善される。また、点のバンプがp側及び円弧状のバンプがn側として発光装置側に形成すれば、半導体化合物積層膜内での電流の拡散が促進されるので、発光輝度も向上する。
【0037】請求項3の発明では、バンプどうしまたはバンプと電極との短絡を防止できるので、発光装置の耐久性の向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態による半導体発光装置の概略縦断面図
【図2】図1のA−A線矢視位置の断面構造を示す要部縦断面図
【図3】(a)はツェナーダイオードへ搭載する搭載面側の発光素子の平面図
(b)は同図(a)のB−B線矢視部の縦断面図
【図4】(a)はツェナーダイオードの平面図
(b)は同図(a)のC−C線矢視部の縦断面図
(c)は同図(a)のD−D線矢視部の縦断面図
(d)は同図(a)のE−E線矢視部の縦断面図
【図5】従来のフリップチップ型の発光素子を備えたLEDランプの概略縦断面図
【符号の説明】
1 発光素子
1a サファイア基板
2 ツェナーダイオード
3 p側電極
3a スリット
4 n側バンプ
5 ポリイミド膜
6 p側電極
7a ボンディングパッド
7b 引き出しリード
7c n側バンプ
10 リードフレーム
10a マウント部
11 接着剤
12 エポキシ樹脂
13 ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 静電気保護素子をリードフレームまたは基板等の基材の搭載面に搭載し、フリップチップ型の半導体発光素子を前記静電気保護素子の上面にp側及びn側の電極を導通させて搭載し、前記半導体発光素子の搭載面側と反対側を主光取出し面とした半導体発光装置において、前記発光素子と静電気保護素子のそれぞれに、両者間を相互に逆極性で導通させるp側とn側のバンプのいずれかを振り分けて形成してなる半導体発光装置。
【請求項2】 前記発光素子または静電気保護素子のいずれか一方に形成するバンプを1点のスポットとし、他方に形成するバンプは前記スポットをほぼ中心とする円に沿う線分として形成してなる請求項1記載の半導体発光装置。
【請求項3】 前記発光素子または静電気保護素子のいずれか一方には、電極及びバンプを除く領域を絶縁層で被覆してなる請求項1または2記載の半導体発光装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【公開番号】特開2000−12898(P2000−12898A)
【公開日】平成12年1月14日(2000.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−169660
【出願日】平成10年6月17日(1998.6.17)
【出願人】(000005843)松下電子工業株式会社 (43)
【Fターム(参考)】