説明

半導体装置

【課題】自己インダクタンスの低減性能を向上させた半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置は、相隔てて配置される正電極材11および負電極材13と、正電極材11と負電極材13の間において、正電極材11と負電極材13を結ぶ直線SLと平行となる平行部(凹部15a)、または正電極材と負電極材とを結ぶ曲線の接線と平行となる平行部を有する導電層(第1の導電材15)とを備える。これにより、主電流による磁束が集中する箇所に導電層の一部が配置されることになる。よって、導電層に磁束が集中し易くなり、誘導電流を効率的に発生可能となり、電極材11、13に生じる自己インダクタンスの低減性能を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相隔てて配置される正電極材および負電極材を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、相隔てて配置される正電極材および負電極材を有し、例えば電力変換用スイッチングに用いられる半導体装置が知られている。このような半導体装置では、電極材に生じる自己インダクタンスを低減するために、両電極材に対向して導電層(導電材)が設けられる。例えば特開平9−172139号公報には、両電極材に対向して設けられた平板状の導電材が開示されている。
【0003】
このような半導体装置では、両電極材に主電流が流れると、主電流の回りに磁界が形成され、導電層のうち各電極材に対向する部分に主電流とは逆向きの誘導電流が流れる。すると、誘導電流の回りに反抗磁界が形成され、反抗磁界によって主電流による磁界が弱められ、よって電極材に生じる自己インダクタンスが低減することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−172139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、自己インダクタンスを十分に低減するためには、誘導電流を効率的に発生させる必要がある。誘導電流は、主電流による磁束が集中する箇所、つまり両電極材の間に導電層を配置することで効率的に発生する。しかし、従来技術に係る半導体装置では、平板状の導電材を両電極材に対向して配置するにすぎないので、導電層(導電材)は、両電極材の間に位置せず、両電極材から離れて位置することになる。よって、導電層に磁束が集中せず、誘導電流が効率的に発生しないので、電極材に生じる自己インダクタンスを十分に低減できない。
【0006】
そこで、本発明は、電極材に生じる自己インダクタンスの低減性能を向上させた半導体装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様によれば、相隔てて配置される正電極材および負電極材と、正電極材と負電極材の間において、正電極材と負電極材を結ぶ直線と平行となる平行部、または正電極材と負電極材を結ぶ曲線の接線と平行となる平行部を有する導電層とを備えた半導体装置が提供される。
【0008】
かかる構成によれば、導電層が、正電極材と負電極材の間において、正電極材と負電極材を結ぶ直線と平行となる平行部、または正電極材と負電極材を結ぶ曲線の接線と平行となる平行部を有するので、主電流による磁束が集中する箇所に導電層の一部が配置されることになる。よって、従来技術に係る半導体装置と比べて、導電層に磁束が集中し、誘導電流を効率的に発生可能となり、電極材に生じる自己インダクタンスの低減性能を向上させることができる。
【0009】
ここで、正電極材と負電極材の間とは、両電極材の上面同士を両電極材の形状に沿って結ぶ直線(または曲線)と下面同士を同様に結ぶ直線(または曲線)の間の領域を意味する。また、正電極材と負電極材を結ぶ直線(または曲線)とは、両電極材の上面同士、下面同士、または軸心同士を両電極材の形状に沿って結ぶ直線(または曲線)を意味する。
【0010】
また、導電層は、正電極材と負電極材の上部を覆い、正電極材と負電極材の間に連なって設けられ、平行部は、導電層を正電極材と負電極材の上部の位置よりも正電極材と負電極材の下部の側に窪ませて形成されてもよい。かかる構成によれば、導電層を正電極材と負電極材の上部の位置よりも下部の側に窪ませて平行部が形成されているので、導電層の組立性に優れた半導体装置を提供できる。
【0011】
また、半導体装置は、正電極材と負電極材の上部を覆い、正電極材と負電極材の間に連なって設けられる第2の導電層をさらに備えてもよい。かかる構成によれば、平行部を有する導電層とは別に第2の導電層が設けられているので、導電層の加工性に優れた半導体装置を提供できる。
【0012】
また、半導体装置が、正電極材と負電極材の下部に配され、正電極材および負電極材の位置から正電極材と負電極材の間に連なって設けられている第2の導電層をさらに備えてもよい。かかる構成によれば、正電極材と負電極材の下部に配され、正電極材および負電極材の位置から正電極材と負電極材の間に連なって第2の導電層をさらに備えるので、第2の導電層により発生する追加的な誘導電流によって、電極材に生じる自己インダクタンスの低減性能に優れた半導体装置を提供できる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明によれば、電極材に生じる自己インダクタンスの低減性能を向上させた半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【図2】図1に示した半導体装置について、主電流による磁界と導電層との位置関係を示す図である。
【図3】図1に示した半導体装置の第1の変形例を示す断面図である。
【図4】図1に示した半導体装置の第2の変形例を示す断面図である。
【図5】図1に示した半導体装置の第3の変形例を示す断面図である。
【図6】図1に示した半導体装置の第4の変形例を示す断面図である。
【図7】従来技術に係る半導体装置を示す断面図である。
【図8】図7に示した半導体装置について、主電流による磁界と導電層との位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
まず、図1および図2を参照して、本発明の実施形態に係る半導体装置について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。図2は、図1に示した半導体装置について、主電流による磁界と導電層との位置関係を示す図である。
【0016】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る半導体装置では、相隔てて配置された正電極材11および負電極材13に対向して、凹部15aを有する単一の導電材15が設けられる。ここで、電力変換用スイッチングに用いる半導体装置では、両電極材11、13がバスバーとして構成されうる。
【0017】
導電材15は、両電極材11、13の上部を覆い、両電極材11、13の間に連なって設けられる。凹部15aは、導電材15を両電極材11、13の上部の位置よりも両電極材11、13の下部の側に窪ませて形成される。ここで、凹部15aは、両電極材11、13の間において、両電極材11、13を結ぶ直線SLと平行となる平行部に相当しており、または両電極材11、13の上下面と平行となる平行部であってもよい。結果的に、両電極材11、13は、直線SL上に相隔てて配置される。また、凹部15aを含む導電材15は、導電層を構成する。
【0018】
なお、両電極材11、13の間とは、両電極材11、13の上面同士を両電極材11、13の形状に沿って、つまり直線状に結ぶ直線と下面同士を同様に結ぶ直線の間の領域を意味する。具体的には、負電極材13に対する正電極材11の側面(図1では左側面)と正電極材11に対する負電極材13の側面(図1では右側面)との間の領域であって、かつ正電極材11および負電極材13の上面と下面との間の領域を意味する。また、両電極材11、13を結ぶ直線SLとは、両電極材11、13の上面同士、下面同士、または軸心(図1では各電極材11、13の中心)同士を結ぶ直線を意味する。
【0019】
あるいは、凹部15aは、導電材15のうち両電極材11、13の中間に位置する部分(窪み部)を、両電極材11、13に対向する部分よりも両電極材11、13の下部の側に窪めて形成される。つまり、導電材15は、両電極材11、13の中間部分の上面が、両電極材11、13に対向する部分の上面よりも両電極材11、13の下部の側に位置するように形成される。また、導電材15は、両電極材11、13の中間部分の上面が、両電極材11、13の上面よりも両電極材11、13の下部の側に位置するように形成されてもよい。
【0020】
より詳しくは、両電極材11、13上には、両電極材11、13を連続して覆う絶縁材17が設けられ、さらに絶縁材17上に導電材15が積層される。ここで、導電材15および絶縁材17は、両電極材11、13の中間に位置する部分を、両電極材11、13を結ぶ直線SLと略平行にすると共に、両電極材11、13の下部の側に窪めて形成される。そして、凹部15aは、導電材15のうち両電極材11、13の中間に位置する部分を、両電極材11、13の上部の位置よりも両電極材11、13の下部の側に窪ませて形成される。半導体装置では、これらの部材がモールドされ、ケース(不図示)に収納される。
【0021】
なお、両電極材11、13は、銅などの導電性材料からなり、凹部15aを含む導電材15は、例えば銅、アルミニウムなど、透磁率μ=1の導電性材料からなることが好ましく、絶縁材17は、ガラスエポキシなどの絶縁性材料からなる。
【0022】
半導体装置では、両電極材11、13に主電流が流れると、主電流の回りに磁界が形成され、導電材15のうち各電極材11、13に対向する部分に主電流とは逆向きの誘導電流が流れる。すると、誘導電流の回りに反抗磁界が形成され、反抗磁界によって主電流による磁界が弱められ、よって電極材11、13に生じる自己インダクタンスが低減する。
【0023】
図2には、本発明の実施形態に係る半導体装置について、主電流による磁界と、導電層(凹部15aを含む導電材15)(図中では太い破線で示されている)との位置関係が示されている。図2には、両電極材11、13に、紙面に垂直方向で互いに逆向きに流れる主電流によって、両電極材11、13を取り巻くように形成された磁束ベクトルが示されている。
【0024】
図2に示すように、本発明の実施形態に係る半導体装置では、凹部15a(平行部)は、主電流による磁束が集中する箇所に、磁束の向きに対して略垂直をなすように配置されている。よって、導電層に磁束が集中し、誘導電流が効率的に発生するので、後述するように従来技術に係る半導体装置と比べて、電極材11、13に生じる自己インダクタンスの低減性能を向上できる。
【0025】
そして、図1に示した構成によれば、両電極材11、13の間において、両電極材11、13を結ぶ直線SLと平行をなし、導電材15(導電層)を両電極材11、13の上部の位置よりも両電極材11、13の下部の側に窪ませて凹部15a(平行部)が形成されているので、単一の導電材15により、電極材11、13の自己インダクタンスの低減性能を向上可能な、導電層の組立性に優れた半導体装置を提供できる。
【0026】
ここで、図7および図8を参照して、従来技術に係る半導体装置について説明する。図7は、従来技術に係る半導体装置を示す断面図である。図8は、図7に示した半導体装置について、主電流による磁界と導電層との位置関係を示す図である。
【0027】
図7に示すように、従来技術に係る半導体装置では、同一直線上に相隔てて配置された正電極材101および負電極材103に対向して、平板状の単一の導電材105が設けられる。より詳しくは、両電極材101、103上には、両電極材101、103を連続して覆う平板状の絶縁材107が設けられ、さらに絶縁材107上に平板状の導電材105が積層される。よって、導電材105は、両電極材101、103の上面から絶縁材107の厚さだけ離れた(図7では上方向に離れた)平面上に配置されることになる。
【0028】
図8には、従来技術に係る半導体装置について、主電流による磁界と、導電層(導電材105)(図中では太い破線で示されている)との位置関係が示されている。図8には、両電極材101、103に、紙面に垂直方向で互いに逆向きに流れる主電流によって、両電極材101、103を取り巻くように形成された磁束ベクトルが示されている。
【0029】
図8に示すように、従来技術に係る半導体装置では、導電材105は、主電流による磁束が集中する箇所から離れて(図8では下方向に離れて)、磁束の向きに対して略垂直をなさないように配置されている。よって、導電層に磁束が集中せず、誘導電流が効率的に発生しないので、後述するように電極材101、103に生じる自己インダクタンスを十分に低減できない。
【0030】
つぎに、図3〜図6を参照して、図1に示した半導体装置の変形例について説明する。図3〜図6は、それぞれに図1に示した半導体装置の第1から第4の変形例を示す断面図である。なお、以下では、図1に示した半導体装置と重複する説明を省略する。
【0031】
図3に示すように、半導体装置の第1の変形例では、図1に示した半導体装置の構成に加えて、両電極材11、13の下部に配され、両電極材11、13の位置から両電極材11、13の間に連なって第2の導電材21が設けられる。第2の導電材21は、第2の導電層に相当する。
【0032】
より詳しくは、両電極材11、13下には、両電極材11、13を連続して覆う絶縁材17が設けられ、さらに絶縁材17下に導電材15が積層される。なお、第2の導電材21は、平板状の導電材として示されているが、導電材15と同様に、両電極材11、13の中間に位置する部分を、両電極材11、13を結ぶ直線SLと略平行にすると共に、両電極材11、13の上部の側(図3では上側)に窪めて形成されてもよい。
【0033】
そして、図3に示した構成によれば、両電極材11、13の下部に配され、両電極材11、13の位置から両電極材11、13の間に連なって設けられた第2の導電材21(第2の導電層)をさらに備えるので、第2の導電材21(第2の導電層)により追加的な誘導電流を発生させて、電極材11、13に生じる自己インダクタンスの低減性能をさらに向上可能な半導体装置を提供できる。
【0034】
図4に示すように、半導体装置の第2の変形例では、相隔てて配置された正電極材11および負電極材13に対向して、平板状の単一の導電材15が設けられるとともに、導電材15から独立した単一の補助導電材23が設けられる。補助導電材23は、独立した部材として、両電極材11、13の上部の位置よりも両電極材11、13の下部の側に設けられる。ここで、導電材15は、両電極材11、13の上部を覆い、両電極材11、13の間に連なって設けられる第2の導電層に相当し、補助導電材23は、両電極材11、13の間において、両電極材11、13を結ぶ直線SLと平行となる平行部に相当する。補助導電材23は、図4では平板状であるが、多少湾曲していてもよい。
【0035】
あるいは、補助導電材23は、導電材15のうち両電極材11、13に対向する部分よりも両電極材11、13の下部の側に配置される。つまり、補助導電材23は、その上面が、導電材15のうち両電極材11、13に対向する部分の上面よりも両電極材11、13の下部の側に位置するように形成される。また、補助導電材23は、その上面が、両電極材11、13の上面よりも両電極材11、13の下部の側に位置するように形成されてもよい。
【0036】
より詳しくは、両電極材11、13上には、両電極材11、13を連続して覆う絶縁材17が設けられ、さらに絶縁材17上に導電材15が積層されるとともに、両電極材11、13の間で絶縁材17下に補助導電材23が設けられる。ここで、導電材15、絶縁材17、および補助導電材23は、平板状に構成される。
【0037】
そして、図4に示した構成によれば、両電極材11、13の間で両電極材11、13を結ぶ直線SLと平行をなす補助導電材23(平行部)とは別に、両電極材11、13の上部を覆い、両電極材11、13の間に連なって設けられた導電材15(第2の導電層)が設けられているので、図1に示した実施形態のように導電材15(および絶縁材17)を折曲げ加工しなくても、補助導電材23(平行部)によって、電極材11、13に生じる自己インダクタンスの低減性能を向上可能な、導電層の加工性に優れた半導体装置を提供できる。
【0038】
図5に示すように、半導体装置の第3の変形例では、図5に示した半導体装置の構成において、単一の補助導電材23に代えて、複数の補助導電材23、25が設けられる。複数の補助導電材23、25は、両電極材11、13の上部の位置よりも両電極材11、13の下部の側に設けられる。
【0039】
より詳しくは、両電極材11、13上には、両電極材11、13を連続して覆う絶縁材17が設けられ、さらに絶縁材17上に導電材15が積層されるとともに、両電極材11、13の間で絶縁材17下に補助導電材23が設けられる。また、補助導電材23下に絶縁材17を介してさらに補助導電材25が設けられる。補助導電材23、25は、図5では平板状であるが、多少湾曲していてもよい。
【0040】
図6に示すように、半導体装置の第4の変形例では、図4に示した第2の変形例の構成において、相隔てて配置された弧状の正電極材31および負電極材33に対向して、導電材35および絶縁材37が設けられるとともに、導電材35から独立した単一の補助導電材43が設けられる。
【0041】
導電材35および絶縁材37は、両電極材31、33の上部を覆い、両電極材31、33の形状に沿って、つまり弧状に両電極材31、33の間に連なって設けられる。補助導電材43は、両電極材31、33の間において、両電極材31、33を結ぶ曲線CLの接線TLと平行となる平行部に相当する。結果的に、両電極材31、33は、曲線CL上に相隔てて配置される。補助導電材43は、図6では平板状に形成されるが、弧状に形成されてもよい。
【0042】
なお、両電極材31、33の間とは、両電極材31、33の上面同士を両電極材31、33の形状に沿って、つまり弧状に結ぶ曲線と下面同士を同様に結ぶ曲線の間の領域を意味する。また、両電極材31、33を結ぶ曲線CLの接線TLとは、両電極材31、33の上面同士、下面同士、または軸心(図6では各電極材31、33の中心)同士を両電極材31、33の形状に沿って結ぶ曲線の接線を意味する。ここで、接線TLは、曲線CL上の任意位置に設定されるが、図6に示すように曲線CLの中心位置に設定されることが好ましい。
【0043】
そして、図6に示した構成によれば、両電極材31、33に、紙面に垂直方向で互いに逆向きに流れる主電流によって、弧状の両電極材31、33を取り巻くように磁束ベクトルが形成される。そして、補助導電材43は、両電極材31、33の間において、主電流による磁束が集中する箇所に、磁束の向きに対して略垂直をなすように配置されることになる。よって、図1に示した半導体装置と同様の効果を奏することになる。なお、平板状の両電極材11、13に代えて弧状の両電極材31、33を設ける構成は、第1または第3の変形例に係る半導体装置にも同様に適用できる。
【0044】
最後に、本発明の実施形態に係る半導体装置と他の半導体装置について、自己インダクタンスの低減率を対比して示す。表には、前述したような異なる導電層の構成を有する半導体装置を対象として行われた磁場解析の結果が示されている。
【0045】
解析結果として示されている実施例1は、図1に示した半導体装置に相当し、実施例2は、図3に示した半導体装置に相当し、比較例1は、図7に示した半導体装置に相当し、比較例2は、図1に示した半導体装置において、導電材15の凹部15aの中央部にスリットを設けて、導電材15を非連続にした構成に相当する。
【0046】
【表1】



【0047】
表に示す以外の解析条件として、電極材11、13、101、103には銅材C1100(厚さ1mm×幅10mm×長さ100mm)、絶縁材17、107にはガラスエポキシ材(厚さ1mm×幅40mm×長さ90mm)、導電材15および補助導電材21には銅箔(厚さ0.07mm×幅40mm×長さ90mm)をそれぞれ用いた。周波数は、1MHzとした。ここで、自己インダクタンス低減率(%)は、{1−(導電層があるときのインダクタンス)/(導電層がないときのインダクタンス)}×100として定義される。
【0048】
表に示すように、実施例1では、60%の解析値が得られ、実施例2では、62%の解析値が得られた一方、比較例1では、50%の解析値が得られ、比較例2では、35%の解析値が得られた。このことから、本発明の実施形態に係る半導体装置(実施例1)では、従来技術に係る半導体装置(比較例1)と比べて自己インダクタンスの低減率が10%程度向上することが明らかにされた。また、導電材15および第2の導電材21からなる2つの導電層を設けた半導体装置(実施例2)では、さらに自己インダクタンスの低減率が2%程度向上することも認められた。なお、導電材15を非連続にした半導体装置(比較例2)では、導電材15の非連続部分から磁束が漏れてしまうので、自己インダクタンスの低減率が大幅に低下することも認められた。
【0049】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る半導体装置によれば、導電層が、正電極材11、31と負電極材13、33の間において、正電極材11と負電極材13を結ぶ直線SLと平行となる平行部(凹部15a、補助導電材23、25)、または正電極材31と負電極材33を結ぶ曲線CLの接線TLと平行となる平行部(補助導電材43)を有するので、主電流による磁束が集中する箇所に導電層の一部が配置されることになる。よって、従来技術に係る半導体装置と比べて、導電層に磁束が集中し、誘導電流を効率的に発生可能となり、電極材11、31、13、33に生じる自己インダクタンスの低減性能を向上させることができる。
【0050】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は、前述した実施形態に係る半導体装置に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0051】
例えば、前述した本発明の実施形態に係る半導体装置は、両電極材11、13、31、33の上部に導電層15、35および絶縁層17、37が設けられた構造を基本構造としているが、両電極材11、13、31、33の下部に導電層15、35および絶縁層17、37が設けられてもよい。また、本発明の実施形態に係る半導体装置は、上下に反転させた状態または横転させた状態でも使用される。また、両電極材11、13の形状は、平板状ではなく丸状(○)であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
11、31、101…正電極材、13、33、103…負電極材、15、35、105…導電材、17、37、107…絶縁材、15a…凹部、21…第2の導電材、23、25、43…補助導電材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相隔てて配置される正電極材および負電極材と、
前記正電極材と前記負電極材の間において、前記正電極材と前記負電極材を結ぶ直線と平行となる平行部、または前記正電極材と前記負電極材を結ぶ曲線の接線と平行となる平行部を有する導電層と、
を備えた半導体装置。
【請求項2】
前記導電層は、前記正電極材と前記負電極材の上部を覆い、前記正電極材と前記負電極材の間に連なって設けられ、
前記平行部は、前記導電層を前記正電極材と前記負電極材の上部の位置よりも前記正電極材と前記負電極材の下部の側に窪ませて形成されている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記正電極材と前記負電極材の上部を覆い、前記正電極材と前記負電極材の間に連なって設けられる第2の導電層をさらに備える、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記正電極材と前記負電極材の下部に配され、前記正電極材および前記負電極材の位置から前記正電極材と前記負電極材の間に連なって設けられている第2の導電層をさらに備える、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記正電極材および前記負電極材はバスバーである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−93532(P2013−93532A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236343(P2011−236343)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000001203)新神戸電機株式会社 (518)