説明

半自動定水量水田バルブ

【課題】設定された給水量が給水されると自動的に給水を停止し、給水圧が低い時でも、開弁度を大きく弁体の開閉を確実に行う。
【解決手段】水田バルブにおいて、シリンダ室4が、ダイヤフラム体42によりダイヤフラム室45と補助室46とに分割されて、該ダイヤフラム体42は一方の室内に膨張変位可能に配設され、前記ダイヤフラム室45と補助室46はそれぞれ給水流量積算計6に連係される切替バルブ8を介して大気とバルブ室3の給水口30側と連通可能とされ、給水流量が設定量未満の場合、切替バルブ8により補助室46と給水口30側が連通され、ダイヤフラム室45が大気に連通されるように切替られ、ダイヤフラム体42の変位により弁体40を開け、給水流量が設定量に達した場合、切替バルブ8によりダイヤフラム室45と給水口30側とが連通され、補助室46が大気に連通され、ダイヤフラム体42の変位により弁体40を閉じるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水田へ給水時に用いられる水田バルブの技術に関する。特に、低圧で開閉できる半自動定水量水田バルブの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、河川・湖沼・ダム等の水は農業用用水として給水路を通じて水田に給水可能とされている。水を給水路から取り込むための水田の取水口には水田バルブが設けられ、このバルブの開閉を行うことで水田への給水量が調整可能とされていた。バルブの開閉は、目視による水田の水位に応じて手動にて行われる場合や、水位センサーにより検出された水田の水位に応じて自動で行われる場合があった。
【0003】
このようなバルブとしては、例えば、特許文献1に記載されるバルブが公知となっている。このバルブは、水田の水位を電気的に検出する水位検出器と、前記水位検出器から出力される現在水位と設定水位との比較処理を行う制御部と、前記制御部から出力されてくる処理内容により水の自動給水、停止を行う給水部とで構成され、水田に自動で給水を行うようになっている。
【0004】
また、特許文献2に記載されるバルブも公知となっている。このバルブは、本体の弁室にダイヤフラム体に連結された弁体を設け、ダイヤフラム体の弁体と反対側に一次圧室を形成する。入口流路と一次圧室とを大気開放弁を介して導水管で連結し、大気開放弁は水位センサーにより制御されるようにする。そして、水位センサーが水位の上限を検知すると大気開放弁を閉じ、水を一次圧室に入れてその圧力で弁体を閉じ、給水を止めるようになっている。つまりバルブ外部に取り付けられたフロート式の水位センサーによって水圧をコントロールし、弁の開閉を行うようになっている。
【特許文献1】特開平8−280276号公報
【特許文献2】特開平6−280243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のバルブにおいては、特許文献1に記載されるバルブのように、水田の水位を基準に自動的にバルブの開閉が行われるため、実際の給水量を確認することができない。よって、例えば水田へ給水が行われる際、漏水等が発生している場合であっても、水田へ給水が継続されることから、水位が殆ど変化せず、また、作業者が水田に行くことがなくこの漏水等の発生を見逃すおそれがあるとともに、節水意識を喚起することができなかった。漏水等を見逃した場合には、水田への給水が長時間行われるため、節水を実現することができない。
【0006】
また、水位センサー等を用いて水田の水位を検出し、その検出結果に応じてバルブの開閉を行うようなバルブは、電気配線等を必要とし、その設置が大掛かりになってしまうことがあった。たとえ電気配線等を必要としないようなバルブであっても、構造が大掛かりになり、広い設置場所が必要となっていた。さらに、風の影響で水位が大きく変動し、正確な水位が得られない事があり、正確な給水が行われない場合がある。
【0007】
また、特許文献1および特許文献2に記載されるバルブのように、ダイヤフラム体を用いて流通口を閉じる構成において、給水路側からダイヤフラム体の閉弁圧力室に水を直接流入させる構造の場合、上方へ流れる水の水圧があるとダイヤフラム体は下降し難く閉まり難いという不具合があった。さらに、ダイヤフラム室の圧力を大気開放し、弁体に加わる開方向の力のみで開弁させる構成において、弁体に加わる開方向の力、すなわち、給水圧が低い場合、弁体と直接連動しているダイヤフラム体を上昇させ難く開き難いという不具合があった。このため、給水圧が0.03乃至0.05Mpa程度ないとバルブが開閉弁されなかった。
【0008】
本発明は以上の状況に鑑み、水田の状況を確認の上、給水量を予め設定できる半自動給水栓とし、作業者が毎日水田の状況を確認することにより、畦畔よりの漏水等をいち早く発見することができ、年間・時期ごとの用水量の管理に役立つ節水型の水田用水管理を目的とする。なおかつ、電気的な装置を用いず、コンパクトで、かつ、給水圧が低い場合(0.015Mpa乃至0.03Mpa)でも正常に弁を開けられ、なおかつ、閉じさせることができるバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
即ち、請求項1においては、給水路から給水するために水田の取水口に配置して、給水流量を検知して設定量給水されると弁体を閉じるように構成した水田バルブにおいて、給水口から吐水口への給水を開閉する弁体を収納するバルブ室と、該弁体と連結されるダイヤフラム体を収納するシリンダ室と、給水流量積算計を収納する制御室と、を有するバルブケースを備え、前記シリンダ室は、ダイヤフラム体によりダイヤフラム室と補助室とに分割されて、該ダイヤフラム体は一方の室内に変位可能に配設され、前記ダイヤフラム室と補助室はそれぞれ前記給水流量積算計に連係される切替バルブを介して大気とバルブ室の給水口側と連通可能とされ、給水流量が設定量未満の場合は、切替バルブにより補助室と給水口側が連通され、ダイヤフラム室が大気に連通されるように切替られて、ダイヤフラム体の変位により弁体を開け、給水流量が設定量に達した場合は、切替バルブによりダイヤフラム室と給水口側とが連通され、補助室が大気に連通されて、ダイヤフラム体の変位により弁体を閉じるように構成したものである。
【0011】
請求項2においては、前記シリンダ室をダイヤフラム体で上下分割し、ダイヤフラム体における、給水圧による閉方向への受圧面積が、前記の弁体の開方向への受圧面積よりも広く構成されていて、開弁時は給水圧を補助室に給水することにより、開方向の受圧面積を増やすことを可能に構成したものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
請求項1においては、給水流量積算計により給水量を手動設定するが、設定された給水量が給水されると自動的に給水を停止し、無駄な垂れ流しを防止することができる。給水流量積算計が設けられることで作業者が所望する給水量を数値として確認することができ、節水意識を高める事ができる。また、面積の決まった水田では、漏水等無ければ必要な水量は決まってくるが、必要な水量を供給しても水位が著しく少ない場合には、漏水等が発生していることを発見できる。さらに、電気的な装置を用いず、コンパクトに構成することができる。
加え、給水圧が低い場合(0.015Mpa乃至0.03Mpa)であっても、弁体の開弁度を大きくすることができ、弁体の開閉作動を確実に行うことができる。
【0014】
請求項2においては、水田かんがい特有の給水圧の低い(0.015乃至0.03Mpa)水田でも、開弁時に給水圧を補助室に給水することにより、開方向の受圧面積を増やすことが可能となり、弁体の開閉作動を確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係る水田バルブの給水停止時の構成を示した部分断面図、図2は本発明の一実施例に係る水田バルブの給水時の構成を示した部分断面図、図3(a)は給水停止時の切替バルブの構成を示した部分断面図、図3(b)は給水時の切替バルブの構成を示した部分断面図、図4は本発明の他の実施例に係る水田バルブの全体的な構成を示した図である。
【0016】
水田バルブ1は水を給水路などから取り込むための水田の取水口に設置される。図1、図2に示すように、水田バルブ1においては、バルブケース2内に仕切壁44と仕切壁49とが上下方向に所定間隔をとって設けられ、その空間が仕切壁44および仕切壁49により上下方向に並ぶ三つの空間に仕切られている。これらの空間のうち、下側の空間がバルブ室3とされ、上側の空間が制御室5とされ、上下間の空間がシリンダ室4とされている。
【0017】
バルブ室3は、バルブケース2の下部内に位置し、バルブケース2の底部に設けられた開口部からなる給水口30と、バルブケース2の側部に設けられた開口部からなる吐水口31と連通されている。バルブ室3においては、円筒形状の弁座32が上下方向に延設されて、その下側開口部が給水口30と連通接続されている。そして、上側開口部がバルブ室3と連通され、給水口30、弁座32の内部空間、バルブ室3、吐水口31の順に続く水の流路が形成されている。
【0018】
弁座32の上側開口部の上方には円錐台形状の弁体40が上下方向に移動可能に配設されている。弁体40の上方への移動時に、弁体40の底部が弁座32の上側開口部から離間し、この上側開口部を開くことができるようになっている。弁体40の下方への移動時に、弁体40の底部が弁座32の上側開口部に密接し、この上側開口部を閉じることができるようになっている。
【0019】
こうして、弁体40が弁座32の上側開口部から離間した状態となった場合、給水口30から流入した水が弁座32の上側開口部からバルブ室3を通って吐水口31まで流れるようになっている。また、弁体40が弁座32の上側開口部に密接した状態となった場合、給水口30から流入した水が弁座32の上側開口部で弁体40によりバルブ室3への流れることを阻止されるようになっている。
【0020】
シリンダ室4は、バルブケース2の上下中途部内に位置し、ダイヤフラム体42により上側の空間となるダイヤフラム室45と、下側の空間となる補助室46とに仕切られている。ダイヤフラム体42は伸縮可能な弾性膜で構成され、その外周縁部がシリンダ室4を形成するバルブケース2の側部に密着された状態で固定されている。
【0021】
そして、ダイヤフラム体42は、シリンダ室4において、ダイヤフラム室45側から受ける圧力により下方に変位してダイヤフラム室45を膨張させ補助室46を収縮させる、もしくは補助室46側から受ける圧力により上方に変位してダイヤフラム室45を収縮させ補助室46を膨張させることが可能となっている。ここで、ダイヤフラム体42のダイヤフラム室45側から圧力を受ける面積は、弁体40の弁座32内側から圧力を受ける面積よりも大きくなるように設定されている。逆に開弁時は、補助室46に給水圧をかけるため、弁体40の弁座32内側の面積に、ダイヤフラム体42の補助室46側の面積を加算することができるよう設定されている。
【0022】
ダイヤフラム体42にはピストン41が固設されている。ピストン41は円盤状の固定板41aと、上端部に固定板41aと略同径の受部を有する筒状の支持体41bとで構成されており、固体板41aおよび支持体41bの受部はシリンダ室4に配置されている。支持体41bの受部下側はシリンダ室4から仕切壁44を貫通し、弁座32と同軸心上にバルブ室3まで延設されている。バルブ室3では、支持体41bの下端部に弁体40の上端部が固定されている。これにより、ダイヤフラム体42と弁体40とがピストン41を介して一体的に固定されている。ただし、弁体40は柔軟に動くようにピストン41に固定されている。
【0023】
シリンダ室4では、固定板41aと支持体41bの受部との間にダイヤフラム体42の中央部が挟まれた状態で、固定板41aと支持体41bの受部とが固定されている。これにより、ダイヤフラム体42とピストン41とが固定されている。また、支持パイプ43が仕切壁49からピストン41に向かってその支持体41bと同軸心上に延設され、ピストン41及びダイヤフラム体42の中心部に嵌入されている。こうして、ピストン41及びダイヤフラム体42が支持パイプ43に外嵌された状態で、当該支持パイプ43に沿って上下方向に摺動可能とされている。
【0024】
シリンダ室4では、ダイヤフラム室45がバルブケース2の側部に設けられた第一ポート47と連通されている。補助室46がバルブケース2の側部に設けられた第二ポート48と連通されている。第一ポート47および第二ポート48にはそれぞれ切替バルブ8から延設された配管86b・86cの一端部が接続されている。こうして、切替バルブ8の切替動作によりダイヤフラム室45の連通先と、補助室46の連通先とが切替可能とされている。
【0025】
制御室5はバルブケース2の上部内に位置し、給水流量積算計6の主要部分を備えるとともに、バルブケース2の側部に設けられた切替バルブ8の一端部と連接されている。給水流量積算計6は、流量検出部と、流量積算部と、給水量設定部とを備え、流量検出部をバルブ室3の弁座32の内部に配置し、積算部を制御室5の下側に配置し、給水量設定部を制御室5の上側および外側に配置して構成されている。
【0026】
流量検出部は給水流量を検出するためのものであり、プロペラ状のインペラー51と、インペラーシャフト52とで構成されている。インペラーシャフト52は弁座32、弁体40、ピストン41の支持体41b、支持パイプ43を貫通するように、これらと同軸心上に上下方向に延設され、下端部で弁座32の内部に設けられた軸受71により回転自在に支持され、上部でトランスミッションレジスター53の内部設けられた軸受72に回転自在に支持されている。また、前記軸受71はシャフト74を介して給水口近傍の固定部75で固設されている。
インペラーシャフト52の回転は、制御室5内に配設された遊星歯車等で構成されたトランスミッションレジスター53を介し、積算部レジスター55に接続される。
【0027】
インペラー51は弁座32内に配置されて、インペラーシャフト52と固定され、インペラーシャフト52を回転軸として回転可能とされている。こうして、開弁状態となり、給水口30から流入する水がバルブ室3に流れる際に、この水の流れによりインペラー51とともにインペラーシャフト52が回転されるようになっている。
【0028】
流量積算部は流量検出部で検出された結果を積算して給水量を得るためのものであり、トランスミッションレジスター53と、レジスター55とで構成される。トランスミッションレジスター53は遊星歯車で構成される減速ギヤ機構からなり、インペラーシャフト52の上端部がサンギヤと接続されている。レジスター55は減速ギヤ機構とカム機構からなり、下端部でトランスミッションレジスター53と接続されている。すなわち、レジスター55はトランスミッションレジスター53を介してインペラーシャフト52と連結されている。
【0029】
給水量設定部は給水量を予め設定するためのものであり、ダイヤル59と、カム57とで構成される。ダイヤル59はバルブケース2の上部に配置され、レジスター55の上端部と接続されている。カム57は制御室5に配置され、レジスター55の上下中途部に固定されて、ダイヤル59の回転にともなって回転されるようになっている。カム57は、またレジスター55を中心として略楕円形状または偏心円形状に形成され、その外周部で切替バルブ8から突出されるスプール88の一端部と当接されている。
【0030】
こうして、給水流量積算計6では、給水が行われる場合、給水口30から流入する水がバルブ室3に流れる際に、インペラー51が回転され、その回転がインペラーシャフト52を介してトランスミッションレジスター53へと伝達される。インペラー51の回転はトランスミッションレジスター53で減速されて、レジスター(カム軸)55を介してカム57に伝達され、これによりカム57が回転される。前記トランスミッションレジスター53で減速された回転はピニオンギヤ73を介してレジスター55に伝えられ、再度減速し、給水流量積算計6のダイヤル59近傍の積算表示部(図示省略)に積算表示される。
【0031】
このときのカム57の回転量が、給水流量を積算して得られた給水量となるように構成されている。そして、給水量が設定量に達すると、カム57のスプール88との当接位置が、半径の短くなる位置となって、スプール88が摺動されることにより、切替バルブ8が後述のように作用して、水田バルブ1による給水が停止されるようになっている。
【0032】
図3に示すように、切替バルブ8は制御室5の側方に位置し、長手方向端部が開口された箱状の切替バルブケース87と、棒状のスプール88とを備えて、5ポート2位置切替のバルブとして構成されている。切替バルブケース87はその開口部で軸心方向がレジスター55の軸心方向と直交するようにバルブケース2の上部に固定されており、切替バルブケース87内と制御室5とが連通されている。
【0033】
前記スプール88は2つの部品から成り、シリンダ室側をスプール突出部88a、バルブケース2に嵌入される側をスプール嵌入部88bとする。
前記スプール88はバルブケース2にその軸心方向に沿って摺動可能に嵌入され、その先端部が切替バルブケース87から開口部を通じて突出して制御室5に位置するように配置されている。スプール嵌入部88bの基端部には切替バルブケース87の底部側に開放する凹部からなるバネ室89が形成され、バネ室89に弾性体であるバネ105が収容されている。このバネ105の付勢力により、スプール突出部88aが切替バルブケース87側からシリンダ室4側へ突出するように付勢され、その先端部でカム57の外周部に圧接されている。
【0034】
スプール嵌入部88bの外周には、三つの環状の溝が切替バルブケース87の軸心方向に所定間隔をとって円周方向に形成され、それぞれ第一バイパス通路102a、第二バイパス通路102b、第三バイパス通路102cとされている。また、四つのリング状のシール体101が、第一バイパス通路102aの切替バルブ8の開口部側、第一バイパス通路102aと第二バイパス通路102bとの間、第二バイパス通路102bと第三バイパス通路102cとの間、第三バイパス通路102cの切替バルブ8の底部側において、円周方向に設けられ、各バイパス通路102a・102b・102cでの圧力漏れの防止が図られている。
【0035】
そして、スプール嵌入部88bと接する切替バルブケース87の側部に、複数のポートが切替バルブケース87の内部空間を外部空間と連通させるように設けられ、それぞれ第一排水ポート81、第二排水ポート82、一次圧力ポート83、第一作用ポート84、第二作用ポート85とされている。第一排水ポート81は第三バイパス通路102cと連通とされ、かつ大気開放されている。第二排水ポート82は第一バイパス通路102aと連通とされ、かつ大気開放されている。
【0036】
一次圧力ポート83は第二バイパス通路102bと連通され、かつバルブケース2の下部に設けられ、バルブ室3と給水口30付近で連通された一次ポート33と配管86bを介して連通されている。第一作用ポート84は第一バイパス通路102aまたは第二バイパス通路102bと連通可能とされるとともに、ダイヤフラム室45と連通された第一ポート47と配管86bを介して連通されている。第二作用ポート85は第二バイパス通路102bまたは第三バイパス通路102cと連通可能とされ、補助室46と連通された第二ポート48と配管86cを介して連通されている。
【0037】
このような構成において、水田バルブ1による給水が行われる場合、ダイヤル59を所望の給水量、即ち設定量に該当する位置まで回動操作すると、レジスター55が回動され、これにともなってカム57が回動される。このカム57の回転により、その外周部に当接したスプール88がバネ105の付勢力に抗して摺動し、切替バルブ8で第一作用ポート84と第二作用ポート85とがそれぞれ連通するバイパスポートが切り替えられる。
【0038】
このとき、図2および図3(b)に示すように、第一作用ポート84が第一バイパス通路102aと連通され、第二作用ポート85は第二バイパス通路102bと接続される。つまり、シリンダ室4のダイヤフラム室45が大気と連通され、補助室46がバルブ室3と給水口30付近で連通される。これにより、バルブ室3に給水口30から流入した水が、一次ポート33、配管86b、一次圧力ポート83、第二バイパス通路102bと、第二作用ポート85、配管86c、第二ポート48の順に流れて補助室46に流入する。
【0039】
このように補助室46に流入した水が、ダイヤフラム体42を押し上げてシリンダ室4にて上方に変位させ、補助室46を膨張させ、ダイヤフラム室45を収縮させる。このダイヤフラム室45の収縮によって、当該ダイヤフラム室45に貯溜されていた水が、第一ポート47、配管86b、第一作用ポート84、第一バイパス通路102a、第二排水ポート82の順に流れて、バルブケース2外に流出する。
【0040】
同時に、シリンダ室4におけるダイヤフラム体42の上方への変位にともなって、ピストン41が上昇するとともに、これと一体的に弁体40が上昇する。この上昇により、弁体40が弁座32の上側開口部から離間した状態、すなわち水田バルブ1が開弁状態となり、給水口30から流入した水が弁座32の上側開口部からバルブ室3を通って吐水口31まで流れ、続いて吐水口31から水田等に向かって流出する。こうして、水田等への給水が水田バルブ1を介して行われる。
【0041】
また、前述のように水田バルブ1が開弁状態となり、給水が行われている際には、給水口30から流入する水の流れによりインペラー51が回転され、その回転がインペラーシャフト52を介してトランスミッションレジスター53に伝達される。そして、トランスミッションレジスター53による減速後の回転がレジスター55に伝達され、レジスター55内のカム57が回転される。
【0042】
この状態で、給水流量積算計6により給水流量に基づいて得られた給水量が設定量に達した場合、もしくは、給水が停止されている場合、カム57の回転によりスプルール88が半径の短くなる位置でカム57の外周部に圧接する、すなわちバルブケース2内をシリンダ室4側に摺動し、切替バルブ8で第一作用ポート84と第二作用ポート85とがそれぞれ連通するバイパスポートが切り替えられる。
【0043】
このとき、図1および図3(a)に示すように、第一作用ポート84が第二バイパス通路102bと連通され、第二作用ポート85は第三バイパス通路102cと接続される。つまり、シリンダ室4のダイヤフラム室45とバルブ室3と給水口30付近で連通され、補助室46が大気と連通される。これにより、バルブ室3に給水口30から流入した水が、一次ポート33、配管86a、一次圧力ポート83、第二バイパス通路102bと、第一作用ポート84、配管86b、第一ポート47の順に流れてダイヤフラム室45に流入する。
【0044】
このようにダイヤフラム室45に流入した水が、ダイヤフラム体42を押し下げてシリンダ室4にて下方に変位させ、ダイヤフラム室45を膨張させ、補助室46を収縮させる。この補助室46の収縮によって、当該補助室46に貯溜されていた水が、第二ポート48、配管86c、第二作用ポート85、第三バイパス通路102c、第一排水ポート81の順に流れて、バルブケース2外に流出する。
【0045】
同時に、シリンダ室4におけるダイヤフラム体42の下方への変位にともなって、ピストン41が下降するとともに、これと一体的に弁体40が下降する。この下降により、弁体40が弁座32の上側開口部から密接した状態、すなわち水田バルブ1が閉弁状態となり、給水口30から流入した水が弁座32の上側開口部で弁体40によりバルブ室3への流れを阻止される。こうして、水田等への給水が水田バルブ1にて停止される。
【0046】
以上のように、本発明では、給水路から給水するために水田の取水口に配置して、給水流量を検知して設定量給水されると弁体40を閉じるように構成した水田バルブ1において、給水口30から吐水口31への給水を開閉する弁体40を収納するバルブ室3と、該弁体40と連結されるダイヤフラム体42を収納するシリンダ室4と、給水流量積算計6を収納する制御室5とを有するバルブケース2を備え、前記シリンダ室4は、ダイヤフラム体42によりダイヤフラム室45と補助室46とに分割されて、該ダイヤフラム体42は一方の室内に変位可能に配設され、前記ダイヤフラム室45と補助室46はそれぞれ前記給水流量積算計6に連係される切替バルブ8を介して大気とバルブ室3の給水口30側(一次圧力側)と連通可能とされ、給水流量が設定量未満の場合は、切替バルブ8により補助室46と給水口30側が連通され、ダイヤフラム室45が大気に連通されるように切替られて、ダイヤフラム体42の変位により弁体40を開け、給水流量が設定量に達した場合は、切替バルブ8によりダイヤフラム室45と給水口30側とが連通され、補助室46が大気に連通されて、ダイヤフラム体42の変位により弁体40が閉じられるように構成されている。
【0047】
したがって、給水流量積算計6を用いて、給水量設定部で予め給水量を設定し、流量検出部で給水流量を検出し、流量積算部で流量検出部の検出結果を積算して給水量を得ることが可能となり、流量積算部にて得られた給水量が、設定部にて設定された給水量に達したとき、水田バルブ1を開弁状態から閉弁状態に切り替えて、給水を自動的に停止することができる。
【0048】
そのため、水田への給水時に、無駄な垂れ流しを防止することができる。さらに、面積の決まった水田では、必要となる給水量が定まることから、給水の停止時に水田の水位が著しく低い場合は、漏水などの問題が発生していることを認識しやすくなる。
【0049】
また、給水流量積算計6の給水量設定部で所望する給水量を数値として把握することになるため、節水意識を高めることができる。加えて、前述の給水の停止を機械的に行うことができるため、電気的な装置を用いず、コンパクトに構成することが可能となり、設置スペースの縮小も図ることができる。加えて、給水圧が低い場合(0.015Mpa乃至0.03Mpa)であっても、弁体40の開弁度を大きくすることができ、弁体40の開閉作動を確実に行うことができる。
【0050】
本発明では、また、前記ダイヤフラム体42における、給水圧による閉方向への受圧面積が、前記弁体40の開方向への受圧面積よりも広く構成されている。すなわち、ダイヤフラム体42と弁体40は一体的に昇降するものであって、ダイヤフラム体42の上側にかかり弁体40を押し下げて閉じさせようとする単位面積当たりの圧力と、弁体40を押し上げる方向にかかる単位面積当たりの圧力が同じであっても、平面視におけるダイヤフラム体42の面積は弁体40の面積よりも大きく構成している。
また、逆に開弁時は、補助室46に給水圧をかけるため、弁体40の弁座32内側の面積に、ダイヤフラム体42の補助室46側の面積を加算することができるよう構成している。
【0051】
したがって、給水口30から切替バルブ8を介して、ダイヤフラム室45に水を導き、補助室46を大気開放することにより、給水圧が低い場合であっても、弁体40を下降させて閉じることができ、弁体40の作動を確実に行うことができる。なお、開弁する場合には、給水口30から切替バルブ8を介して、補助室46に水を導き、ダイヤフラム室45を大気開放することにより、給水圧が低い(0.015Mpa乃至0.03Mpa)場合であっても、ダイヤフラム体42及び弁体40には上昇方向に水圧が加算されるため、容易に開弁することができる。
【0052】
言い換えると、閉弁時は、給水口30側の一次圧力がダイヤフラム室45と給水口30にかかるが、受圧面積の広いダイヤフラム室45側の力が受圧面積の狭い弁体40側の力よりも大きくなる、このため、弁体40と弁座32をより確実に圧着させ水田バルブ1の閉弁を確実に行うことができる。よって、給水圧が低くなった場合であっても確実に水田バルブ1を閉じることができる。
なお、開弁時は、給水口30側の一次圧力を弁体40にかけるだけでなく、受圧面積の広い補助室46側のダイヤフラム体42下側に加えることで、受圧面積はより大きくなる。このため、給水圧が低い(0.015Mpa乃至0.03Mpa)場合であっても、確実に水田バルブ1を開くことができる。
【0053】
また、本発明に係る水田バルブは次の別実施例に示すように構成することもできる。なお、別実施例の水田バルブ1は前記実施例の水田バルブ1と同様の構成であり、同一部分には同一符号を付し、異なる部分を中心に説明する。
【0054】
別実施例の水田バルブ1は、前記実施例の水田バルブ1に対し、切替バルブ8とダイヤフラム室45および補助室46との間に介設される配管86b・86cの途中に手動切替バルブ10を設けて構成されている。手動切替バルブ10は、切替バルブ8と同様に切替バルブケース87と、スプール88とを備え、5ポート2位置切替の弁で構成される。但し、切替バルブ8に対しスプール88を付勢するバネ105は有さず、スプール88の一端部に連結してバルブケース87外に配置される把手110を有する。
【0055】
こうして、把手110が押し引きされることにより、その押した位置、または、引いた位置に対応する切替位置のいずれかに択一的にスプール88を移動させることができるようになっている。つまり、手動で把手110の押引操作を行うことで、配管を流れる水の経路を切り替えることができるようになっている。
【0056】
例えば、給水を行う際に、ダイヤル59で設定できる給水量の単位を大きくすると、代掻きなどのために大量の水を給水するときには都合が良いが、田植え後に補給する場合など大量に給水しない場合には、設定が難しくなる。そこで、ダイヤル59で設定できる給水量の単位を小さくし、大量に給水する場合には手動切替バルブ10を使用し、通常の補給の場合にはダイヤル59で設定した量の補給を行うようにするのである。
【0057】
具体的には、水田バルブ1を閉じた状態では、切替バルブ8は図3(a)の状態、手動切替バルブ10も同様の状態となっている。この状態で、大量に給水したい場合には、手動切替バルブ10の把手110を押し下げて切り替える。すると、手動切替バルブ10は切替バルブ8が図3(b)となるような状態となって、補助室46に給水されることになり、開弁することができる。水田バルブ1を閉じるときは把手110を持ち上げると元の状態に戻り、給水を停止できる。
【0058】
また、前記把手110にモーターまたはソレノイド等のアクチュエーターを連結することで、スイッチと接続して、スイッチの操作で開閉するように構成することもできる。更に、該アクチュエーターをコントローラと接続し、該コントローラには水位センサーを接続することで、設定した水位に達すると手動切替バルブ10を閉じるように構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施例に係る水田バルブの給水停止時の構成を示した部分断面図。
【図2】本発明の一実施例に係る水田バルブの給水時の構成を示した部分断面図。
【図3】(a)は給水停止時の切替バルブの構成を示した部分断面図、(b)は給水時の切替バルブの構成を示した部分断面図。
【図4】本発明の他の実施例に係る水田バルブの全体的な構成を示した図。
【符号の説明】
【0060】
1 水田バルブ
6 給水流量積算計
8 切替バルブ
10 手動切替バルブ
30 給水口
31 吐水口
32 弁座
40 弁体
41 ピストン
42 ダイヤフラム体
45 ダイヤフラム室
46 補助室
57 カム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水路から給水するために水田の取水口に配置して、給水流量を検知して設定量給水されると弁体を閉じるように構成した水田バルブにおいて、
給水口から吐水口への給水を開閉する弁体を収納するバルブ室と、
該弁体と連結されるダイヤフラム体を収納するシリンダ室と、
給水流量積算計を収納する制御室と、を有するバルブケースを備え、
前記シリンダ室は、ダイヤフラム体によりダイヤフラム室と補助室とに分割されて、該ダイヤフラム体は一方の室内に変位可能に配設され、
前記ダイヤフラム室と補助室はそれぞれ前記給水流量積算計に連係される切替バルブを介して大気とバルブ室の給水口側と連通可能とされ、
給水流量が設定量未満の場合は、切替バルブにより補助室と給水口側が連通され、ダイヤフラム室が大気に連通されるように切替られて、ダイヤフラム体の変位により弁体を開け、
給水流量が設定量に達した場合は、切替バルブによりダイヤフラム室と給水口側とが連通され、補助室が大気に連通されて、ダイヤフラム体の変位により弁体を閉じるように構成したことを特徴とする半自動定水量水田バルブ。
【請求項2】
前記シリンダ室をダイヤフラム体で上下分割し、ダイヤフラム体における、給水圧による閉方向への受圧面積が、前記の弁体の開方向への受圧面積よりも広く構成されていて、開弁時は給水圧を補助室に給水することにより、開方向の受圧面積を増やすことを可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載の半自動定水量水田バルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−213374(P2009−213374A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58210(P2008−58210)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000006851)ヤンマー農機株式会社 (132)
【出願人】(593043347)共立金属工業株式会社 (4)