説明

協定世界時(UTC)同期信号転送機能を有する小型無線基地局用のメタル線アクセス装置

【課題】メタル線を経由して時刻精度ナノ秒オーダーの時刻情報を伝送できる時刻情報伝送装置を提供する。
【解決手段】GPS(Global Positioning System)受信装置3、集線装置4、CPE(Customer Premises Equipment)から構成され、協定世界時(UTC)同期信号転送機能を有する小型無線基地局用のアクセス装置において、メタル線伝送に起因する時刻同期信号の遅延時間、ジッタを測定する機能と測定した結果に応じて遅延量を補償する機能を該GPS受信装置と集線装置間、および該集線装置とCPE間に設けることによって遅延およびジッタの調整を可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内(ビル内、地下街等)に配置された小型無線基地局の時間同期に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋内に配置された小型無線基地局の時間同期信号を行うために、屋外に設置されたGPS受信機から、あるいはNTPサーバーからの時刻同期信号をイーサーネット上を伝送することによって時刻同期を行う装置もある。

【非特許文献1】「時刻同期ソリューション総合カタログ2009」丸文株式会社
【0003】
以下図7により従来の時刻同期システムの動作について説明する。図において、源時刻を供給するNTPサーバー81、インターネット網82、構内システム83であり、構内システム83はDNS(Domain Name System)サーバー84、イントラネット85、クライアント端末86a〜86nから構成される。
時刻同期信号は、NTPサーバー81から供給され、インターネット網82を経由して構内システム83に供給される。構内システム83ではDNSサーバー84が時刻同期をとり、さらにイントラネット85を介してクライアント端末86a〜86nの同期を取る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、屋内にイーサーネットを設置していないビル、地下街などは、通常メタル線による電話回線が一般的であり、以上に述べた従来の時刻同期装置では、時刻同期信号伝送することが困難であった。また、NTPサーバーから得られる時刻精度は1μ秒程度でありナノ秒オーダーを必要とする小型無線基地局には十分な時刻精度が取れない問題があった。
【0005】
本発明は、イーサーネットを設置していないビル、集合住宅などにも、通常の電話回線(メタル線)を使って時刻同期を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、GPS(Global Positioning System)受信装置、集線装置、CPE(Customer Premises Equipment)から構成され、屋内ビル等で利用される協定世界時(UTC)同期信号転送機能を有する小型無線基地局用のメタル線アクセス装置である。メタル線を使用した時刻同期信号の同期には、メタル線長に起因する遅延と遅延のゆらぎの問題が生じる。そのため、該時刻同期信号の遅延時間、ジッタを測定する機能と測定した結果に応じて遅延量を補償する機能を該GPS受信装置と集線装置間、および該集線装置とCPE間に設けることによって遅延およびジッタの調整を可能とした。更に多段接続での同期精度劣化も抑制できるようにした。

【0007】
遅延時間の測定方法として、一定のフレーム時間内を下り回線の伝送、上り時間の伝送に時間分ける時分割伝送を特徴とする。


【発明の効果】
【0008】
上述したように、本発明によりメタル線を使用して時刻同期信号の伝送を可能とし、経済的なシステムを構成できる
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の形態を図1~図5を用いて説明する。
【0010】
図1は、本発明によるシステム全体概要図である。該システムは、GPS受信アンテナ1、GPS受信装置3、集線装置4、CPE5a〜5n、小型基地局(BTS)8a〜8bから構成され、GPS受信装置3、集線装置4、CPE5a〜5n、小型基地局(BTS)8a〜8b は屋内ビル等2に収容されている。GPS受信機3と集線装置4および集線装置4とCPE5間はメタル線6および7a〜7bで接続されている。GPS受信アンテナ1で受信した信号は屋内ビル2に転送されGPS受信装置3に接続される。またBTS8a〜8bへのユーザーデータはバックボーンNW9から集線装置4内のVDSL装置によりメタル線7a〜7bを通じて転送される。GPS受信装置3と集線装置4間のメタル線区間6にはToDと1PPSの時刻情報のみが転送され、一方集線装置4とCPE5a〜5n間のメタル線区間7a〜7bは時刻情報に加えてVDSL方式を用いてユーザーデータが転送される。
【0011】
図2は、GPS受信装置3の構成を示す。本装置は、GPSアンテナ1の直下に配置される装置であって、GPS信号を受信して、時刻同期信号(1 PPS15=1Pulse per second、ToD14=Time of Day)をメタル線6経由で集線装置4に転送する。
GPS RX10から出力される10MHz正弦波信号16を時刻情報転送部12の内部クロックと同期させる。また、10MHz正弦波信号16に同期した1PPS15を時刻情報転送部12へ入力する。
GPS Rx10の出力データToD14は、フォーマット変換部11で適当なフォーマットと変換を行い、時刻情報転送部12へ入力する。1PPS15およびToDデータ14が時刻転送部12からコネクター13を通してメタル線6へと送出される。
【0012】
図3は集線装置4の構成図である。一般的に集線装置4は屋内の通信設備室に設置する装置であって、各CPE5に対する時刻同期信号の転送と、データ信号の転送を行う。
集線装置4は、時刻情報受信部22(詳細は図6)、時刻情報転送部23(詳細は図5)、バックボーンNW9からのユーザーデーダー28を各CPE(BTS)に分配処理するSW部22、該出力をメタル線上で伝送するための処理を行うVDSL送信部25a〜25n、該VDSL送信部25a〜25nの出力と時刻情報信号29を重畳する加算部26a〜26n、CPE5に伝送するメタル線7a〜7nとの接続コネクタ−部27a〜27nとから構成される。GPS受信装置3からメタル線6経由で転送された時刻情報信号(1PPSとToD)は、時刻情報受信部22でタイミング同期、遅延調整が行われる。該時刻情報受信部22で時間調整された時刻情報信号(1PPSとToD)は、時刻情報転送部23でタイミング検出のヘッダーを付加し、一定時間のフレーム信号29に変換される。一方、バックボーンNW9からのユーザデータ28はSW部24により各ユーザーデータに分配される。該分配されたユーザーデータは、加算部26a〜26nで時刻情報信号29と重畳されCPEに向けてメタル線7a〜7n上を伝送される。

【0013】
図4はCPE5の構成を示す。CPE部は、ユーザーデータと時刻情報信号分離部32、時刻情報受信部33、VDSL受信部34、BTSとのインタフェース部38とから成る。
時刻情報受信部33により1PPS35、ToD36をとりだす。此の時1PPSはGPS Rxから時刻情報受信部までの転送遅延時間を考慮し、これを補正した状態で取り出される。ToDについては、1PPSパルス周期内で転送されている必要がある。
BTS側へのインタフェース38に関しては、インタフェースとしてユーザーデータ37、1PPS35、ToD36信号をBTSに送出する。

【0014】
図5は、時刻情報転送部の構成を示し、GPS受信装置(図2)および集線装置(図3)における機能として含まれる。時刻情報転送部は、ToDと遅延情報を多重化する多重化部41、変調部42、ハイブリッド回路44、1PPS判定信号発生部43、タイミング発生部45、遅延測定部46、1PPSタイミング判定部47、1PPS判定信号抜取部48とから構成される。
多重化部41において時刻情報ToD49と遅延情報53が多重化され変調部42で位相変調される。該位相変調された信号は、1PPS判定信号54をヘッダーとして付加し、2線−4線変換するハイブリッド回路44を通して線52に送出される。一方、ハイブリッド回路44からの信号55は、1PPS判定信号抜取部48においてヘッダーの1PPS判定信号が抜き取られ、該1PPS判定信号は1PPSタイミング判定部47においてタイミング判定が行われる。タイミング発生部45においてGPS受信装置から供給された10MHz信号50と1PPS信号51の同期が取られ、該1PPS信号57は遅延測定部において受信された1PPS信号56の遅延測定の基準信号として使用され、測定結果の遅延情報は受信側に転送するため多重化部41に供給される。また該1PPS信号57は1PPS判定信号発生部43に供給され、送信側のヘッダー54としてハイブリッド回路44に供給される。
【0015】
図6は時刻情報受信部の構成を示し、集線装置(図3)およびCPE(図4)における機能として含まれる。時刻情報受信部は、ハイブリッド回路60、復調部61、分離部62、1PPS判定信号抜取部63、1PPS判定信号発生部64、1PPSタイミング判定部65、タイミング発生部66から構成される。
送られてきた時刻情報信号68はハイブリッド回路60にて2線−4線変換され復調部61および1PPS判定信号抜取部63に供給される。復調部61ではベースバンドデータに復調し、分離部62において時刻情報信号は、ToD69と遅延情報72に分離する。遅延情報72はタイミング発生部66において遅延情報72に基づいてタイミング修正を行い、1PPS判定信号発生部64にて上り回線(時刻情報転送部)への1PPS判定信号を発生する。一方、時刻情報転送部から送られてきた時刻情報信号73は、1PPS判定信号抜取部63でヘッダー部を抜き取り1PPSタイミング判定部65で下り回線のタイミング判定がおこなわれ、タイミング発生部66に供給される。
【産業上の利用可能性】
【0016】
今後サービスの拡大が予測される移動無線方式であるWiMax、宅内小型基地局(Femto
Cell)などの時刻同期のために導入の機会が予測される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明によるシステム全体概要図
【図2】GPS受信装置
【図3】集線装置
【図4】CPE
【図5】時刻情報転送部
【図6】時刻情報受信部
【図7】従来の時刻同期システム
【符号の説明】
【0018】
1 GPSアンテナ
2 屋内ビル
3 GPS受信装置
4 集線装置
5a CPE
5n CPE
6 第一のメタル線
7a 第二のメタル線
7n 第二のメタル線
8a 小型基地局
8n 小型基地局
10 GPS Rx
11 フォーマット変換部
12 時刻情報転送部
13 コネクタ−
14 ToDデータ信号
15 1PPS信号
16 10MHz信号
20 ユーザーデータ信号接続コネクタ−
21 第一のメタル線接続コネクタ−
22 時刻情報受信部
23 時刻情報転送部
24 SW部
25a VDSL送信部
25n VDSL送信部
26a 加算器
26n 加算器
27a 接続コネクタ−
27n 接続コネクタ−
31 メタル線接続コネクタ−
32 信号分離部
33 時刻情報分離部
34 VDSL受信部
35 1PPS信号
36 ToD信号
37 データ信号
38 BTSインタフェース
41 多重化部
42 変調部
43 1PPS判定信号発生部
44 ハイブリッド回路
45 タイミング発生部
46 遅延測定部
47 1PPSタイミング判定部
48 1PPS判定信号抜取部
49 ToD信号
50 10MHz信号
51 1PPS信号
52 時刻情報信号
53 遅延情報
54 ヘッダー
55 信号
56 受信1PPS信号
57 1PPS信号
60 ハイブリッド回路
61 復調部
62 分離部
63 1PPS判定信号抜取部
64 1PPS判定信号発生部
65 1PPSタイミング判定部
66 タイミング発生部
68 時刻情報信号
69 ToD信号
70 1PPS信号
71 10MHz信号
72 遅延情報
81 NTPサーバー
82 インターネット網
83 構内システム
84 DNSサーバー
85 イントラネット
86a クライアント端末
86n クライアント端末




【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPS受信装置、集線装置、CPEから構成され、屋内ビル等で利用される協定世界時(UTC)同期信号転送機能を有する小型無線基地局用のメタル線アクセス装置において、該GPS受信装置と集線装置間、および該集線装置とCPE間の伝送線路がメタル線であって、該時刻同期信号の遅延時間、ジッタを測定する機能と測定した結果に応じて遅延量を補償する機能とを有する協定世界時(UTC)同期信号転送機能を有する小型無線基地局用のメタル線アクセス装置
【請求項2】
請求項1において、遅延時間の測定方法として、一定のフレーム時間内を下り回線の伝送、上り時間の伝送に時間分ける時分割伝送を特徴とする協定世界時(UTC)同期信号転送機能を有する小型無線基地局用のメタル線アクセス装置





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−4032(P2011−4032A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143935(P2009−143935)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(300092655)株式会社NIE (2)
【Fターム(参考)】