説明

単相電力変換装置の制御装置

【課題】簡単な構成で単相電力変換装置のdq座標系での制御を可能にする。
【解決手段】系統連系インバータ2の制御装置4は電力系統3に出力される交流電圧vと交流電流iを検出し、複素係数BPF401により基本波成分の複素ベクトル(v1r,v1j)を生成し、複素係数BPF402により基本波成分の複素ベクトル(i1r,i1j)を生成する。位相角演算器403で複素ベクトル(v1r,v1j)を用いて位相角θ1を算出し、位相角θ1を用いてdq変換器405で複素ベクトル(i1r,i1j)をdq座標系のd軸成分idとq軸成分iqに変換した後、加算器406a,406b、PI補償器407a,407bでdq座標系における制御値のdq軸成分vd,vqを生成する。そして、逆dq変換器408でdq座標系の制御値vd,vqを静止直交座標系の制御値vrc,vjcに変換し、PWM信号生成器409で制御値vrcを用いて系統連系インバータ2の駆動を制御するPWM信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単相の電力系統と直流電源若しくは直流負荷との間に設けられ、単相交流電力から直流電力への電力変換若しくはその逆の電力変換を行う単相電力変換装置の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、単相電力変換装置の一つである単相インバータの制御装置において、単相インバータから出力される単相電圧と単相電流をヒルベルト変換して複素ベクトルを求め、その複素ベクトルをdq座標系(回転座標系)の値(dq変換値)に変換し、そのdq変換値を用いて単相インバータの制御信号を生成する制御回路が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1と非特許文献1には、図17に示すブロック構成の制御回路が提案されている。
【0004】
図17に示す制御回路101は、単相インバータ100から出力される単相電圧vの瞬時値を検出し、バンドパスフィルタ101aを通して単相電圧vの基本波成分v1rを抽出した後、ヒルベルト変換器101bにより基本波成分v1rをヒルベルト変換して当該基本波成分v1rの位相をπ/2だけ遅らせた信号v1jを生成する。また、制御回路101は、単相インバータ100から出力される単相電流irの瞬時値を検出し、ヒルベルト変換器101cによりその検出値irをヒルベルト変換して単相電流irの位相をπ/2だけ遅らせた信号ijを生成する。
【0005】
ヒルベルト変換器101bの出力信号v1jは、例えば、ヒルベルト変換器101bの入力信号(基本波成分)v1rをv1r=A1・cos(ω・t)(A1:基本波成分の振幅、ω:基本波成分の角周波数)とすると、v1j=A1・sin(ω・t)で表わされる信号である。従って、基本波成分v1rとヒルベルト変換器101bの出力信号v1jは、それぞれ複素ベクトルである電圧ベクトルV1=v1r+j・v1j(jは虚数単位)の実数部Re[V1]と虚数部Im[V1]に対応する関係になっている。なお、以下の説明では、交流信号と交流信号のベクトルを区別するため、交流信号を小文字で表記し、交流信号のベクトルを大文字で表記することとする。
【0006】
同様に、ヒルベルト変換器101cの出力信号ijは、ヒルベルト変換器101cの入力信号irをir=ΣBn・cos(n・ω・t+δn)(n:次数、n=1,2,…、Bn:n次の周波数成分の振幅、δn:n次の周波数成分の位相差。1次は基本波成分)とすると、ij=ΣBn・sin(n・ω・t+δn)で表わされる信号である。従って、検出値irとヒルベルト変換器101cの出力信号ijは、それぞれ複素ベクトルである電流ベクトルIn=ir+j・ijの実数部Re[In]と虚数部Im[In]に対応する関係になっている。
【0007】
制御回路101は、基本波成分v1rとヒルベルト変換器101bの出力信号v1jを用いて位相角演算器101dにより位相角θ1=ω・tを算出し、その位相角θ1を用いてdq変換器101eにより電流ベクトルInをdq座標系(回転座標系)のd軸成分idとq軸成分iqに変換する。そして、制御回路101は、d軸成分idの目標値id*に対する偏差ed=(id−id*)とq軸成分iqの目標値iq*に対する偏差eq=(iq−iq*)を求め、PI補償器101f,101gにより各偏差ed,eqのPI補償演算をした後、逆dq変換器101hで単相インバータ100の出力電圧の静止直交座標系における制御値vIrを生成し、その制御値vIrを単相インバータ100に入力して単相インバータ100の出力を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平2003−143860号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「ヒルベルト変換を用いた単相系統連系インバータの制御法」 電学論D,121巻10号,平成13年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1と非特許文献1に記載の単相系統連系インバータの制御法は、ヒルベルト変換器101b,101cで単相インバータ100の出力電圧vと出力電流iの検出値にヒルベルト変換処理を行って電圧ベクトルV1の虚数部Im[V1]と電流ベクトルInの虚数部Im[In]を算出している。ヒルベルト変換器101b,101cは、一般にFIR(Finite impulse response)フィルタで構成されるが、理想的なヒルベルト変換器を実現することは困難である。
【0011】
FIRフィルタでは群遅延が生じるので、ヒルベルト変換器101bから出力される電圧ベクトルV1の虚数部Im[V1]は実数部Re[V1]に対して時間遅れが生じ、ヒルベルト変換器101cから出力される電流ベクトルInの虚数部Im[In]は実数部Re[In]に対して時間遅れが生じる。このため、図17には示していないが、実際の処理では、バンドパスフィルタ101aと位相角演算器101dとの間に遅延回路を設け、その遅延回路で基本波成分v1rの位相をヒルベルト変換器101cから出力される信号v1jに合わせる処理と、電流検出器とdq変換器101eとの間に遅延回路を設け、その遅延回路で電流検出値irの位相をヒルベルト変換器101cから出力される信号ijに合わせる処理とが必要になる。
【0012】
特許文献1に記載されるように、ヒルベルト変換器を構成するFIRフィルタは、次数nを大きくして変換帯域を広くすると、ヒルベルト変換器の周波数特性におけるリプルを小さくできる反面、群遅延が大きくなり、複素ベクトルの検出が遅れるという特性があり、逆に次数nを小さくして変換帯域を狭くすると、群遅延は抑制できるが、ヒルベルト変換器の周波数特性におけるリプルが大きくなり、複素ベクトルの検出精度が低下するという特性がある。
【0013】
従って、ヒルベルト変換器を用いた場合は、複素ベクトルの検出速度と検出精度のトレードオフを考慮してヒルベルト変換器を構成するFIRフィルタの次数nを設計しなければならないという煩わしさがある。また、ある程度の検出精度を得ようとすると、ヒルベルト変換器の次数nを高くする必要があり、それによりヒルベルト変換器の構成が大きくなるため、制御回路が大型化するという問題もある。この問題は、単相交流電力を直流電力に変換する単相コンバータの制御回路の場合でも同様である。
【0014】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、簡単な構成で高速かつ高い精度で単相交流電圧と単相交流電流の複素ベクトルを検出し、その複素ベクトルを用いてdq座標系での制御が可能な単相電力変換装置の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載の単相電力変換装置の制御装置は、単相電力系統と直流電源若しくは直流負荷との間に設けられ、単相交流電力から直流電力への電力変換若しくはその逆の電力変換を行う単相電力変換装置の制御装置であって、前記単相電力系統の交流電圧を検出する電圧検出手段と、前記単相電力系統の交流電流を検出する電流検出手段と、前記電圧検出手段で検出された前記交流電圧に含まれる前記単相電力系統の系統周波数の成分を抽出する、複素係数フィルタからなる第1のフィルタ手段と、前記電流検出手段で検出された前記交流電流に含まれる所定の周波数の成分を抽出する、複素係数フィルタからなる第2のフィルタ手段と、前記第1のフィルタ手段から出力される互いに直交する2つの信号を用いて前記交流電圧の位相角を算出する位相角算出手段と、前記第2のフィルタ手段から出力される互いに直交する2つの信号を前記位相角算出手段で算出された位相角を用いた所定の座標変換処理によって前記系統周波数で回転する回転直交座標系の信号に変換する信号変換手段と、前記信号変換手段で変換された前記回転直交座標系の2つの信号について、それぞれ目標値との偏差を算出し、その偏差に基づいて制御値を算出する制御値算出手段と、前記制御値算出手段により算出された前記制御値を前記位相角算出手段で算出された位相角を用いた所定の逆座標変換処理によって静止直交座標系の制御信号に変換する信号逆変換手段と、前記信号逆変換手段で逆変換された前記静止直交座標系の制御信号を用いて前記電力変換装置の駆動を制御するPWM信号を生成するPWM信号生成手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項1に記載の単相電力変換装置の制御装置において、前記第1のフィルタ手段と前記第2のフィルタ手段は、中心周波数が前記系統周波数と同一の周波数に設定されている複素係数バンドパスフィルタで構成され、前記信号変換手段は、前記交流電流に含まれる前記系統周波数の成分だけを前記回転直交座標系の信号に変換して出力するとよい(請求項2)。あるいはまた、前記第1のフィルタ手段は、中心周波数が前記系統周波数と同一の周波数に設定されている複素係数バンドパスフィルタで構成され、前記第2のフィルタ手段は、阻止周波数が前記系統周波数に対して同一の負の周波数成分と所定の次数の正負の高調波成分とに設定された複数係数ノッチフィルタで構成され、前記信号変換手段は、前記交流電流に含まれる前記系統周波数の成分だけを前記回転直交座標系の信号に変換して出力するとよい(請求項3)。
【0017】
また、請求項2又は3に記載の単相電力変換装置の制御装置において、前記第1のフィルタ手段から出力される互いに直交する2つの信号は、前記系統周波数で変化する位相角の余弦波信号と正弦波信号であり、前記位相角算出手段は、前記余弦波信号と前記正弦波信号を用いて所定の逆三角関数の演算式により前記位相角を算出するとよい(請求項4)。
【0018】
また、請求項2又は3に記載の単相電力変換装置の制御装置において、前記第1のフィルタ手段から出力される互いに直交する2つの信号は、前記系統周波数で変化する位相角の余弦波信号と正弦波信号であり、前記位相角算出手段は、前記余弦波信号と前記正弦波信号を用いて乗算式PLLにより前記余弦波信号及び前記正弦波信号の位相角と同一の位相角を有する信号を生成するPLL演算手段で構成されるとよい(請求項5)。
【0019】
また、請求項1乃至5のいずれかに記載の電力変換装置の制御装置において、前記交流電流に含まれる所定の次数の高調波成分を補償する高調波補償手段を更に備え、前記高調波補償手段は、前記電流検出手段で検出された前記交流電流に含まれる前記次数の高調波成分を抽出する、複素係数フィルタからなる第3のフィルタ手段と、前記位相角算出手段で算出される位相角を前記所定の次数倍して前記高調波成分の位相角を算出する第2の位相角算出手段と、前記第3のフィルタ手段から出力される互いに直交する2つの信号を前記第2の位相角算出手段で算出された位相角を用いた所定の座標変換処理によって前記高調波成分の周波数で回転する回転直交座標系の信号に変換する第2の信号変換手段と、前記第2の信号変換手段で変換された前記回転直交座標系の2つの信号について、それぞれ目標値との偏差を算出し、その偏差に基づいて補償値を算出する補償値算出手段と、前記補償値算出手段により算出された前記補償値を前記第2の位相角算出手段で算出された位相角を用いた所定の逆座標変換処理によって静止直交座標系の高調波補償信号に変換する第2の信号逆変換手段と、前記第2の信号逆変換手段で逆変換された前記静止直交座標系の高調波信号を前記信号逆変換手段で逆変換された前記静止直交座標系の制御信号に加算する加算手段と、を備えるとよい(請求項6)
【0020】
また、請求項1乃至6のいずれかに記載の電力変換装置の制御装置において、前記単相交流電力を前記直流電力に変換するインバータ若しくは前記直流電力を前記単相交流電力に逆変換するコンバータであるとよい(請求項7,8)
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る単相電力変換装置の制御装置によれば、単相電力系統の交流電流の検出電流から複素係数バンドパスフィルタにより系統周波数の成分のみを抽出するので、抽出信号として静止直交座標系の互いに直交する2つの信号を簡単に得ることができる。従って、複素係数バンドパスフィルタの出力信号を系統周波数で回転する回転直交座標系の信号に変換することによりその回転直交座標系で単相電力変換装置のフィードバック制御における制御値を簡単に設定することができる。
【0022】
これにより、単相電力変換装置のフィードバック制御を簡単な構成で高速かつ高い精度で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る単相電力変換装置の制御装置の第1実施形態のブロック構成を示す図である。
【図2】フル・ブリッジ回路で構成した単相インバータの回路構成を示す図である。
【図3】複素係数バンドパスフィルタの周波数特性を示す図である。
【図4】複素係数バンドパスフィルタの演算処理を示すブロック図である。
【図5】複素係数バンドパスフィルタの複素演算処理を行う回路構成を示す図である。
【図6】複素係数バンドパスフィルタの入力信号と出力信号のシミュレーション波形の一例を示す図である。
【図7】本発明に係る単相電力変換装置の制御装置の第2実施形態のブロック構成を示す図である。
【図8】複素係数ノッチフィルタの多段構成を示す図である。
【図9】複素係数ノッチフィルタの周波数特性を示す図である。
【図10】複素係数ノッチフィルタの演算処理を示すブロック図である。
【図11】複素係数ノッチフィルタの複素演算を行う具体的な処理回路を示す図である。
【図12】本発明に係る制御装置を単相コンバータに適用した第3実施形態のブロック構成を示す図である。
【図13】本発明に係る制御装置を単相コンバータに適用した第4実施形態のブロック構成を示す図である。
【図14】n次高調波補償回路のブロック構成を示す図である。
【図15】図1に示す単相電力変換装置の制御装置に図12に示すn次高調波補償回路を追加したブロック図である。
【図16】図7に示す単相電力変換装置の制御装置に図12に示すn次高調波補償回路を追加したブロック図である。
【図17】従来の単相系統連系インバータの制御装置のブロック構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して具体的に説明する。
【0025】
図1は、本発明に係る単相電力変換装置の制御装置の第1実施形態のブロック構成を示す図である。
【0026】
第1実施形態は、電力変換装置を図17に示した単相インバータとしたものである。従って、図1に示す電力変換装置2は、図17に示した単相インバータ100に相当し、図1に示す制御装置4は、図17に示した制御装置101に対して、単相インバータ100の出力ライン102と位相角演算器101dとの間に設けられる回路(バンドパスフィルタ101aとヒルベルト変換器101b)を複素係数バンドパスフィルタ401(以下、「複素係数BPF401」と表記する。)に置き換え、単相インバータ100の出力ライン102とdq変換器101eとの間に設けられる回路(ヒルベルト変換器101c)を複素係数バンドパスフィルタ402(以下、「複素係数BPF402」と表記する。)とレベル調整器404に置き換えたものに相当している。
【0027】
単相電力系統3に連系される電力変換装置2(以下、「系統連系インバータ2」という。)は、直流電源1から出力される直流電力を単相の交流電力に変換する周知の電力逆変換装置である。直流電源1は、例えば、太陽光発電、太陽熱発電、風力発電等によって生成される電気エネルギーを直流で出力する電源である。
【0028】
系統連系インバータ2は、例えば、図2に示すように、4個のスイッチング素子Q1〜Q4をブリッジ接続したフル・ブリッジ回路で構成される電圧制御型インバータである。スイッチング素子Q1〜Q4には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が用いられるが、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)やGTO(Gate Turn-Off thyristor)などの他のスイッチング素子を用いることができる。フル・ブリッジ回路は、2個のスイッチング素子を直列に接続した直列回路(アーム)A,Bを並列に一対の電源ラインL+,L-に接続し、各アームA,Bの接続点a,bを出力端子とする回路である。
【0029】
アームAのスイッチング素子Q1,Q2は、制御装置4から入力される1組のパルス幅変調信号(PWM信号)S1,S2によってそれぞれオン・オフ動作が制御され、アームBのスイッチング素子Q3,Q4は、制御装置4から入力される1組のパルス幅変調信号(PWM信号)S3,S4によってそれぞれオン・オフ動作が制御される。PWM信号S1とPWM信号S2は、相互に位相が反転したPWM信号である。PWM信号S3とPWM信号S4も同様である。
【0030】
2組のPWM信号(S1,S2),(S3,S4)によってアームAのスイッチング素子Q1,Q2のオン・オフ状態とアームBのスイッチング素子Q3,Q4のオン・オフ状態は、接続点aから接続点bへの導通状態と接続点bから接続点aへの導通状態とが交互に繰り返されるように制御される。
【0031】
従って、系統連系インバータ2は、制御装置4から入力される2組のPWM信号(S1,S2),(S3,S4)によって直流電源1から入力される直流電力を交流電力に変換し、フル・ブリッジ回路の接続点a,bから出力する。
【0032】
系統連系インバータ2から出力される交流電力は、図示省略のフィルタ回路や変圧器等の回路を介して単相電力系統3に出力されるが、図1では、そのフィルタ回路や変圧器等を抵抗RとインダクタLのインピーダンス回路で表わしている。
【0033】
制御装置4は、系統連系インバータ2を単相電力系統3に連系させるために当該系統連系インバータ2が出力する交流電圧を制御する。制御装置4は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含むマイクロコンピュータを含み、ディジタル演算処理により系統連系インバータ2の出力電圧の制御値を生成し、その制御値を2組のPWM信号(S1,S2),(S3,S4)に変換して系統連系インバータ2に入力する。系統連系インバータ2では制御装置4から入力される2組のPWM信号(S1,S2),(S3,S4)によりアームAとアームBが上述の導通動作を繰り返し、接続点a,bから包絡線波形が出力電圧の制御値の波形と同一になる交流電圧(階段状の波形を有する交流電圧)が出力される。この交流電圧は、図示省略のフィルタ回路によりスイッチングノイズが除去されて綺麗な正弦波波形に整形され、変圧器を介して単相電力系統3に出力される。
【0034】
本実施形態に係る制御装置4は、フィードバック制御により生成する系統連系インバータ2の出力電流(交流電流)iの制御値をdq座標系におけるd軸成分idとq軸成分iqによって生成する。そして、本実施形態に係る制御装置4は、系統連系インバータ2から出力される交流電流i(瞬時値)を検出し、その検出値iを中心周波数foが単相電力系統3の周波数fs(以下、「系統周波数fs」という。)に設定されている複素係数BPF402に通すことによって系統周波数fsと同一の周波数を有する余弦波の信号i1rと正弦波の信号i1jを生成する構成に特徴を有する。
【0035】
複素係数BPF402から出力される信号i1r,i1jは、複素ベクトルである電流ベクトルI1=i1r+j・i1jの実数部Re[I1]=i1rと虚数部Im[I1] =i1jに対応する信号であり、三相交流信号を三相二相変換して得られるαβ座標系(静止直交座標系)のα軸成分とβ軸成分に対応する信号である。従って、制御装置4では、複素係数BPF402から出力される信号i1r,i1jをαβ−dq変換と同様の座標変換をすることによって検出電流iのdq座標系におけるd軸成分idとq軸成分iqを生成し、これらのdq軸成分id,iqを用いて系統連系インバータ2から出力される交流電圧vの制御値のdq座標系におけるd軸成分vdとq軸成分vqを生成している。
【0036】
系統連系インバータ2の出力ライン7に設けられたPT(Potential Transformer)等の交流電圧検出器6と制御装置4内の複素係数BPF401及び位相角演算器403とは、系統連系インバータ2から単相電力系統3に出力される交流電圧vの基本波成分v1の位相角θ1を算出する機能を果たす部分である。位相角θ1は、dq変換器405と逆dq変換器408の座標変換における回転角として利用される。
【0037】
交流電圧検出器6は、交流電圧v(瞬時値)を検出し、ディジタル信号に変換して制御装置4に出力する。交流電圧検出器6で検出される交流電圧vをv=A1・cos(ω・t)+vn(A1:基本波成分の振幅、ω・t:基本波成分の位相角、vn:n次高調波成分(nは2以上の整数))とすると、後述するように複素係数BPF401からは交流電圧vに含まれる基本波成分の余弦波v1r=(A1/2)・cos(ω・t)と、この余弦波v1rに対して直交する(位相角がπ/2だけ遅れた)正弦波v1j=(A1/2)・sin(ω・t)だけが出力される。
【0038】
位相角演算器403は、複素係数BPF401から出力される余弦波v1r=(A1/2)・cos(ω・t)と正弦波v1j=(A1/2)・sin(ω・t)を用いて、
Tan(ω・t)=(v1j/v1r
θ1=(ω・t)=tan-1(v1j/v1r)
の演算を行うことにより基本波成分の位相角θ1を算出する。この位相角θ1は、dq変換器405と逆dq変換器408に入力され、座標変換処理の変換係数に用いられる。
【0039】
なお、θ1=cos-1[v1r/√(v1r2+v1j2)]若しくはθ1=sin-1[v1j/√(v1r2+v1j2)]の演算を行うことにより基本波成分の位相角θ1を算出してもよい。
【0040】
系統連系インバータ2の出力ライン7に設けられたCT(Current transformer)等の交流電流検出器5と、制御装置4内の複素係数BPF402、レベル調整器404及びdq変換器405とは、系統連系インバータ2から単相電力系統3に出力される交流電流iの基本波成分のdq座標系におけるd軸成分idとq軸成分iqを生成する部分である。交流電流検出器5は、交流電流i(瞬時値)を検出し、ディジタル信号に変換して制御装置4に出力する。
【0041】
交流電流検出器5で検出される交流電流iをi=B1・cos(ω・t)+in(B1:基本波成分の振幅、in:n次高調波成分(nは2以上の整数))とすると、複素係数BPF402からは、複素係数BPF401と同様に交流電流iに含まれる基本波成分の余弦波i1r=(B1/2)・cos(ω・t)と、この余弦波i1rに対して直交する(位相角がπ/2だけ遅れた)正弦波i1j=(B1/2)・sin(ω・t)だけが出力される。
【0042】
ここで、複素係数BPF401,402について説明する。複素係数BPF401と複素係数BPF402は同一構成の複素係数バンドパスフィルタであるので、ここでは、複素係数BPF401について説明する。
【0043】
複素係数BPF401は、z変換表現による伝達関数H(z)が下記の(1)式で表される1次のIIRバンドパスフィルタで構成され、図3に示す周波数特性を有している。(1)式において、複素係数a1におけるfd[Hz]は、通過帯域の中心周波数f0をサンプリング周波数で正規化した正規化周波数である。また、Ωd[rad/s]は、正規化角周波数である。例えば、サンプリング周波数を「fsr」とし、中心周波数f0を系統周波数fsに設定すると、fdはfs/fsr、Ωdは2π・fd=2π・(fs/fsr)となる。なお、正規化した角周波数Ωdは、−π<Ωd<πである。また、rは、通過帯域の帯域幅を決めるパラメータ(0<r<1)である。
【0044】
【数1】

【0045】
交流電圧検出器6で検出される交流電圧vの基本波成分v1=A1・cos(ω・t)はオイラーの公式より、
【数2】

で表わされ、正の周波数成分(A1/2)・exp[j・(ω・t)]と負の周波数成分(A1/2)・exp[j・(−ω・t)]の合成波と考えることができる。交流電圧vに含まれるn次高調波成分vn=An・cos(n・ω・t)(n:2以上の整数)についても同様で、正の周波数成分(An/2)・exp[j・(n・ω・t)]と負の周波数成分(An/2)・exp[j・(−n・ω・t)]の合成波と考えることができる。
【0046】
バンドパスフィルタを実係数の2次IIRフィルタで構成した場合、その2次IIRフィルタの伝達関数H(z)(z=exp(j・ω))は、
H(z)=(1-r2+2(r-1)・r・cos(Ωd)・z-1)/(1-2r・cos(Ωd)・z-1+ r2・z-2)
で表わされる。この伝達関数H(z)の振幅特性M(ω)を求めると、M(ω)=(1-2r・cos(Ωd±ω)+r2)=0を満たすωで極が表れるから、2次IIRフィルタはその極の周波数を通過させる特性を有する。r≒1とすると、cos(Ωd±ω)≒1より、2次IIRフィルタを通過させる正規化周波数fdはfd=±Ωd/2πとなるから、正規化角周波数Ωdを系統周波数fsの正規角周波数に設定した実係数の2次IIRフィルタでは、負の周波数成分(−fs=−Ωd・fsr/2πの成分)も通過させることになる。すなわち、図3に示す周波数特性において、2次IIRフィルタでは「−fs」に表れる負の周波数成分も通過させることになる。
【0047】
一方、(1)式に示す伝達関数H(z)の振幅特性M(ω)求めると、M(ω)=(1−r)/√{1−2r・cos(Ωd−ω)+r2}となり、(1−2r・cos(Ωd−ω)+r2)=0を満たすωだけに極が表れるから、正規化角周波数Ωdを系統周波数fsの正規角周波数に設定した複素係数の1次IIRフィルタは、図3に示す周波数特性を有する。従って、複素係数の1次IIRフィルタでは、正の周波数成分(fs=Ωd・fsr/2πの成分。)だけを通過させ、負の周波数成分や高調波成分を通過させることはない。
【0048】
なお、11次よりも大きい奇数次の高調波成分はレベルが小さく、無視し得るから、図3には、周波数検出に影響のある5次、7次、11次の高調波成分のみを描いている。
【0049】
図4は、上記(1)式の演算処理を行う処理回路を示すブロック図である。同図に示すように、複素係数BPF401は、(1)式の分母の演算処理がフィードバック回路で構成され、そのフィードバック回路の出力に分子の係数b0を乗算する回路によって構成される。
【0050】
図4に示すブロック図において、u[k](k:離散時間を表すインデックス番号)は入力データ、x[k]は複素係数BPF401の状態データ、y[k]は複素係数BPF401の出力データである。入力データu[k]、状態データx[k]及び出力データy[k]の間には、
x[k]=r・exp(j・Ωd)・x[k-1]+u[k] …(2)
y[k]=(1−r)・x[k] …(3)
が成立する。
【0051】
複素係数BPF401は、入力データu[k]が複素データか実データ(複素データの虚数部が「0」のデータ)かに関わらず、状態データx[k]及び出力データu[k]が複素信号のデータとなる。従って、入力データu[k]、状態データx[k]及び出力データy[k]をそれぞれu[k]=ur[k]+j・uj[k]、x[k]=xr[k]+j・xj[k]、y[k]=yr[k]+j・yj[k]の複素データ、複素係数a1をa1=r・exp(j・Ωd)=ar+j・aj=r・cos(Ωd)+j・r・sin(Ωd)として(2)式と(3)式に代入し、実数部と虚数部の関係式に分けると、
r[k]=r・cos(Ωd)・xr[k-1]−r・sin(Ωd)・xj[k-1]+ur[k] …(4)
j[k]=r・cos(Ωd)・xj[k-1]+r・sin(Ωd)・xr[k-1]+uj[k] …(5)
r[k]=(1−r)・xr[k] …(6)
j[k]=(1−r)・xj[k] …(7)
となる。
【0052】
図5は、(4)式〜(7)式に基づき複素係数BPF401の複素演算処理を行う回路構成を示す図である。同図において、係数arと係数ajはそれぞれ複素係数a1=r・exp(j・Ωd)の実数部と虚数部であり、ar=r・cos(Ωd)、aj=r・sin(Ωd)である。
【0053】
同図に示すように、複素係数BPF401は、6個の乗算器401a〜401fと、2個の加算器401g,401hと、2個の遅延回路401i,401jで構成される。遅延回路401iは、状態データの実数部xr[k-1]を生成する回路であり、遅延回路401jは、状態データの虚数部xj[k-1]を生成する回路である。乗算器401a,401bはそれぞれ(4)式の第1項と第2項(負の符号を含む)を演算する演算器であり、加算器401gは(4)式の第1項と第2項と第3項を加算する演算器である。従って、加算器401gから(4)式で示す状態データの実数部xr[k]が出力される。
【0054】
一方、乗算器401c,401dはそれぞれ(5)式の第1項と第2項を演算する演算器であり、加算器401hは(5)式の第1項と第2項と第3項を加算する演算器である。従って、加算器401hから(5)式で示す状態データの虚数部xj[k]が出力される。また、乗算器401e,401fはそれぞれ(6)式と(7)式を演算する演算器である。
【0055】
単相の場合は、交流電圧検出器6によって検出される交流電圧は1つしかないので、その検出値vのサンプリングデータが入力データの実数部ur[k]として複素係数BPF401に入力され、入力データの虚数部uj[k]には「0」が入力される。
【0056】
交流電圧検出器6の検出電圧vのサンプリングデータが複素係数BPF401に入力される毎に、遅延回路401i、乗算器401a,401b,401e及び加算器401gで(4)式及び(6)式の演算処理が繰り返され、これにより、乗算器401eからは基本波成分の電圧ベクトルV1の実数部v1rのみの出力データyr[k]が出力される。遅延回路401j、乗算器401c,401d,401f及び加算器401hで(5)式及び(7)式の演算処理が繰り返され、これにより、乗算器401fからは基本波成分の電圧ベクトルV1の虚数部v1jのみの出力データyj[k]が出力される。
【0057】
図6は、複素係数バンドパスフィルタの入力信号と出力信号のシミュレーション波形の一例を示す図である。(a)は実数部ur[k]の入力ポートに入力した60Hzの正規化した余弦波信号vir=cos(ω・t)(ω=2×60×π)の波形を示し、(b)は実数部yr[k]の出力ポートから出力される余弦波信号vor=cos(ω・t)/2と虚数部yj[k]の出力ポートから出力される正弦波信号voj=sin(ω・t)/2の波形を示している。虚数部uj[k]の入力ポートには「0」が入力されるので、図6(a)にはその波形は描いていない。図6(b)の波形(イ)はvor=cos(ω・t)/2の波形であり、波形(ロ)はvoj=sin(ω・t)/2の波形である。
【0058】
余弦波信号vorと正弦波信号vojの振幅が入力した余弦波信号virの振幅の1/2になるのは、複素係数バンドパスフィルタにcos(ω・t)=[exp(j・ω・t)+exp(−j・ω・t)]/2の信号が入力されると、負の周波数の電圧ベクトルexp(−j・ω・t)/2の成分は除去され、正の周波数の電圧ベクトルexp(j・ω・t)/2の成分だけが出力されるからである。正の周波数の電圧ベクトルexp(j・ω・t)/2の大きさは複素係数バンドパスフィルタの入力信号の1/2となるから、複素係数バンドパスフィルタから出力される電圧ベクトルの実数部vorと虚数部vojの振幅は入力された余弦波信号virの振幅の1/2になる。
【0059】
なお、図6(b)の[0.00〜0.04]の期間は、複素係数バンドパスフィルタの基本波成分fsだけを抽出するループ処理が収束するまでの過渡期間である。この例では、過渡期間はほぼ0.04秒であるが、この期間は伝達関数H(z)のパラメータrによって調整することができる。
【0060】
図6に示すように、複素係数BPF401によって交流電圧検出器6の検出電圧vから基本波成分の複素電圧ベクトルV1だけを好適に抽出することができる。複素係数BPF402についても同様で、複素係数BPF402によって交流電流検出器5の検出電流iから基本波成分の複素電流ベクトルI1だけを好適に抽出することができる。
【0061】
図1に戻り、レベル調整器404は、複素係数BPF402から出力される余弦波i1rと正弦波i1jのレベルを2倍に調整する。これは、複素係数BPF402から出力される余弦波i1rと正弦波i1jのレベルが入力レベルの1/2になるため、入力レベルと同一のレベルに調整するための処理である。dq変換器405は、レベル調整器404から出力される余弦波i1r=B1・cos(ω・t)と正弦波i1j=B1・sin(ω・t)を用いて、
【数3】

の演算を行うことにより基本波成分のdq座標系におけるd軸成分idとq軸成分iqを生成する。
【0062】
なお、cos(ω・t)・cos(ω・t)+sin(ω・t)・sin(ω・t)=1より、
d=B1・cos(ω・t)・cos(ω・t)+B1・sin(ω・t)・sin(ω・t)
=B1
q=−B1・sin(ω・t)・cos(ω・t)+B1・cos(ω・t)・sin(ω・t)
=0
となる。これらの演算結果は、交流電流iの基本波成分の振幅B1を大きさとする電流ベクトルがdq座標系のd軸上に静止している状態のd軸成分とq軸成分を表している。
【0063】
上記の説明は、系統連系インバータ2の出力電圧vと出力電流iの位相を同相とし、位相差δ1を「0」とした場合であるが、位相差δが「0」でない一般的な場合(例えば、v=A1・cos(ω・t)、i=B1・sin(ω・t+δ1)の場合)は、
d=B1・cos(ω・t+δ1)・cos(ω・t)+B1・sin(ω・t+δ1)・sin(ω・t)
=B1・cos(δ1)
q=B1・sin(ω・t+δ1)・cos(ω・t)+B1・cos(ω・t+δ1)・sin(ω・t)
=B1・sin(δ1)
となり、上記のdq変換演算により交流電流iの基本波成分の振幅B1を大きさとする電流ベクトルがdq座標系で位相角δ1の位置に静止している状態のd軸成分とq軸成分が得られる。
【0064】
加算器406aは、dq変換器405から出力される交流電流iの基本波成分のd軸成分idの目標値id*に対する偏差edを算出し、PI補償器407aはその偏差edに所定のPI補償演算を行って制御値のd軸成分vdを設定する。また、加算器406bは、dq変換器405から出力される交流電流iの基本波成分のq軸成分iqの目標値iq*に対する偏差eqを算出し、PI補償器407bはその偏差eqに所定のPI補償演算を行って制御値のd軸成分vqを設定する。
【0065】
逆dq変換器408は、PI補償器407aとPI補償器407bから出力されるdq座標系の制御値のd軸成分vdとq軸成分vqを静止直交座標系における制御値のvrcとvjcに逆変換する。逆dq変換器408は、
【数4】

の演算を行うことにより静止直交座標系における制御値vrc,vjcを生成する。
【0066】
PWM信号生成器409は、逆dq変換器408から出力される制御値vrcを用いてPWM信号S1〜S4を生成する。制御値vrcは系統周波数fsを有する余弦波の波形を有する信号であるから、PWM信号生成器409は、例えば、三角波比較法によりPWM信号S1〜S4を生成する。三角波比較法によるPWM信号の生成方法は周知であるので、詳細な説明は省略する。
【0067】
上記のように、本実施形態に係る単相インバータの制御装置4によれば、系統連系インバータ2から単相電力系統3に出力される単相交流電圧と単相交流電流の検出値v,iをそれぞれ系統周波数fsを中心周波数foとする複素係数BPF401,402によってフィルタリングすることにより基本波成分の余弦波v1r,i1rと正弦波v1j,i1jを得るようにしているので、ヒルベルト変換器を用いた場合のように遅延時間を生じることがない。また、複素係数BPF401,402は一次の伝達関数で表現されるフィルタであるので、回路の小型化を容易に実現することができる。従って、本実施形態によれば、従来のヒルベルト変換器を用いる方式に比べて簡単で高速かつ高い精度で基本波成分の余弦波v1r,i1rと正弦波v1j,i1jを得ることができ、系統連系インバータ2の出力制御を高速かつ高精度に行うことができる。
【0068】
なお、上記実施形態では、位相角ω・tの算出をtan-1(v1j/v1r)の演算処理で行うようにしているが、位相角演算器403に代えて、例えば、出願人が出願している特願2010−82170号に記載の位相検出装置を用いてもよい。その位相検出装置は、乗算式PLLにより入力信号の位相と同一の位相を有する信号を生成して出力する装置である。その位相検出装置は、複素係数バンドパスフィルタから出力される互いに直交する一対の入力信号(正弦波信号と余弦波信号)に所定の三角関数演算のループ処理を行って内部で生成する信号の位相を入力信号に収束させ、これにより入力信号の位相と同一の位相を有する信号を出力する。従って、同位相検出装置から位相角の情報を抽出してdq変換器405や逆dq変換器408に入力するようにしてもよい。
【0069】
また、上記実施形態は、複素係数フィルタとして複素係数BPFを用いているが、図7に示すように、複素係数BPF402に代えて複素係数ノッチフィルタ(以下、「複素係数NF」と表記する。)を用いて単相交流電圧と単相交流電流の検出値v,iから基本波の負の周波数成分や5次、7次、11次等の高調波成分を除去するようにしてもよい。
【0070】
図3に示すように、単相電力系統3の交流信号には基本波の正の周波数成分(+fs)以外に負の周波数成分(−fs)や5次、7次、11次の高調波成分(±5fs,±7fs,±11fs)が含まれることが分かっているので、図7に示す制御装置4’内の複素係数NF402’は、それらの周波数毎にz変換表現による伝達関数H(z)が下記の(8)式で表される複素係数ノッチフィルタを設け、図8に示すように、それらを多段に接続することによって図9に示す周波数特性を有する複素係数ノッチフィルタを構成している。
【0071】
【数5】

【0072】
(8)式で、Ωd=2π・(n・fs/fsr)であり、n=−1に設定すると、基本波の負の周波数成分(−fs)を阻止周波数とする複素係数ノッチフィルタとなる。また、n=±5、n=±7、n=±11に設定すると、それぞれ5次、7次、11次の高調波成分を阻止周波数とする複素係数ノッチフィルタとなる。従って、図8に示す複素係数NF402’は、−fs、±5fs、±7fs、±11fsをそれぞれ阻止周波数とする複素係数NF402A,402B,402C,402D,402E,402F,402Gを縦続接続した構成となっている。
【0073】
なお、信号処理のサンプリング周期が固定サンプリング周期の場合、入力信号の基本波成分の周波数がずれると、それに伴い負の周波数成分と高調波成分の周波数もずれるため、複素係数ノッチフィルタの阻止周波数をずらす必要がある。このため、図7に示す複素係数NF402’を用いた第2実施形態では、系統電圧の基本波の角周波数を検出し、サンプリング周波数fsrで正規化して出力する周波数検出器410を設け、その周波数検出器410から正規化角周波数Ωd’を複素係数NF402’内の各複素係数NF402A〜402Gに入力するようにしている。基本波成分の周波数のずれが無視し得るほど微小であれば、複素係数NF402’内の各複素係数NF402A〜402Gの阻止周波数は固定にしてもよい。
【0074】
図10は、(8)式の演算処理を行う処理回路のブロック図であり、図11は、(8)式の複素演算を行う具体的な処理回路である。
【0075】
図10は、図4に示すブロック図に対して、入力データu[k]からデータy[k]を減算し、その減算値を出力データe[k]として出力する回路を追加したものである。また、図11は、図5に示す複素演算処理回路に対して、正規化角周波算出部402aから入力される正規化角周波数Ωd’を用いて複素係数a1の実数部の係数arを演算する係数実数部演算回路402mと虚数部の係数ajを演算する係数虚数部演算回路402kを追加し、実数部の乗算器402eの後段に加算器402nを追加し、虚数部の乗算器402fの後段に加算器402oを追加したものである。
【0076】
係数実数部演算回路402mでは、周波数検出器410から入力される正規化角周波数Ωd’を用いて、
r=r・cos(n・Ωd’) …(9)
但し、nは阻止周波数の次数
の演算式により複素係数a1の実数部の係数arが算出され、その算出値arが乗算器402aと乗算器402dに入力される。
【0077】
また、係数虚数部演算回路402kでは、周波数検出器410から入力される正規化角周波数Ωd’を用いて、
j=r・sin(n・Ωd’) …(10)
の演算式により複素係数a1の虚数部の係数ajが算出され、その算出値ajが乗算器402bと乗算器402cに入力される。
【0078】
図11に示す回路は、図5に示す回路に対して、上述した係数実数部演算回路402m及び係数虚数部演算回路402kの演算内容の他は、加算器402nで入力データの実数部ur[k]からデータy[k]の実数部yr[k]を減算して出力データの実数部er[k]が出力され、加算器402oで入力データの虚数部uj[k]からデータy[k]の虚数部yj[k]を減算して出力データの虚数部ej[k]が出力される点が異なるだけであるから、図11に示す回路の演算処理の詳細説明は省略する。
【0079】
第2実施形態に係る制御装置4’では、複素係数NF402A〜402Gによって基本波の周波数成分(−fsの成分)や高調波成分(±5fs,±7fs,±11fsの成分)のレベルがそれぞれ抑制されるので、これらの成分がdq変換器405に入力されることを好適に阻止することができる。従って、第2実施形態に係る制御装置4’でも高速かつ高い精度で基本波成分の正弦波i1j,i1jを得ることができ、系統連系インバータ2の出力制御を高速かつ高精度に行うことができる。
【0080】
なお、第2実施形態は、第1実施形態の複素係数BPF402だけを複素係数NF402’に変更したが、第1実施形態の複素係数BPF401も複素係数ノッチフィルタに変更してもよく、第1実施形態の複素係数BPF401だけを複素係数ノッチフィルタに変更してもよい。あるいはまた、第1実施形態の複素係数BPF401,402を複素係数バンドパスフィルタと複素係数ノッチフィルタとを組み合わせた構成にしてもよい。
【0081】
図1,図7において、電力変換装置2をナトリウム・イオン(NaS)電池等の充電可能な直流電源1と組み合わせると、電力貯蔵システムを構成することができる。電力貯蔵システムでは、単相電力系統3に余剰電力が生じると、電力変換装置2を交流-直流変換器(コンバータ)として動作させてその余剰電力をNaS電池1に蓄積し、単相電力系統3に不足電力が生じると、電力変換装置2を直流-交流変換器(インバータ)として動作させてNaS電池1に蓄積した電力を単相電力系統3に放出する。以下、直流-交流変換器として動作させる場合の電力変換装置2を「系統連系インバータ2」といい、交流-直流変換器として動作させる場合の電力変換装置2を「PWMインバータ2」という。
【0082】
図1,図7に示すブロック図は、制御装置4が電力変換装置2をインバータとして動作させるように制御する場合の構成を示したものであり、図1に対して、制御装置4が電力変換装置2をコンバータとして動作させる場合のブロック図は、図12に示すようになり、図7に対して、制御装置4が電力変換装置2をコンバータとして動作させる場合のブロック図は、図13に示すようになる。電力変換装置2をコンバータとして動作させる場合、直流電力の供給先はNaS電池等の直流電源に限られないので、図12,図13では、直流電力の供給先を「直流負荷Z」としている。従って、図12,図13は、それぞれ図1,図7に対して実質的に電力変換装置2に接続される直流電源1を直流負荷Zとした点が異なっている。
【0083】
図1,図7に示すインバータシステムでは、系統連系インバータ2を連系させる単相電力系統3の電圧が当該単相電力系統3によって安定化されているので、制御装置4は、電流マイナーループによって系統連系インバータ2から単相電力系統3に出力させる単相交流電流i(抵抗RとインダクタンスLのインピーダンス回路に流れる電流i)を制御することによって系統連系インバータ2の出力電圧(単相交流電圧)vを制御する。
【0084】
制御装置4は、例えば、直流電源1が太陽光発電の場合は、dq座標系で偏差edを求めるための目標値id*を太陽光発電の発電量に応じた値に設定し、dq座標系で偏差eqを求めるための目標値iq*を系統連系インバータ2から単相電力系統3に出力させたい無効電力に応じた値に設定して系統連系インバータ2の出力電流(単相交流電流)iを制御する。また、制御装置4は、直流電源1がNaS電池の場合は、目標値id*をNaS電池が蓄電した量に応じた値に設定し、目標値iq*を単相電力系統3からPWMコンバータ2に出力させたい無効電力に応じた値に設定してPWMコンバータ2への入力電流iを制御する。
【0085】
インバータシステムにおける系統連系インバータ2と電力貯蔵システムにおけるPWMコンバータ2では電力変換装置2における電流の流れる方向が逆になるので、系統連系インバータ2では目標値id*は正の値となるが、PWMコンバータ2では目標値id*は負の値となる。
【0086】
制御装置4は、図12若しくは図13に示すコンバータシステムでもインバータシステムと同様の制御を行う。すなわち、制御装置4は、交流電流検出器6によって検出された単相電力系統3の出力電流iをdq座標系のd軸成分idとq軸成分iqに変換した後、それぞれ所定の目標値id*,iq*との偏差ed,eqを求め、その偏差ed,eqにそれぞれPI補償演算を行って制御値vd,vq(PWMコンバータ2の出力電圧の目標値)を算出する。そして、制御装置4は、その制御値vd,vqを静止直交座標系の信号vrc,vjcに逆変換した後、信号vrcを用いて三角波比較法によりPWMコンバータ2に対するPWWM信号を生成する。
【0087】
コンバータシステムでは、単相電力系統3の出力電圧vに高調波成分が含まれている場合、PWMコンバータ2の出力電圧(直流電圧)が歪んだり、不安定になったりする等の悪影響が生じるが、図12若しくは図13に示すコンバータシステムでは、単相電力系統3の出力電圧vの検出値に含まれる高調波成分が複素係数BPF401によって好適に除去されるので、インバータシステムと同様に、PWMコンバータ2を高速かつ高精度に制御することができる。
【0088】
図1のブロック図における制御装置4内の複素係BPF401から逆dq変換器408までの構成は、系統連系インバータ2の出力電圧の静止直交座標系における制御値のvrcとvjcを生成するための構成であるが、複素係BPF401,402の中心周波数foをn次高調波の周波数fnに設定すれば、静止直交座標系におけるn次高調波のvnrとvnjを生成することができるので、その構成を系統連系インバータ2の出力電流に含まれるn次高調波をキャンセルするための補償回路に適用することができる。
【0089】
すなわち、図14に示すように、図1の複素係BPF402を中心周波数foがn次高調波の周波数fnに設定された複素係BPF402”に置き換え、位相角演算器403の出力段に位相角演算器403から出力される基本波の位相角θ1をn倍するn次位相角演算器411を設け、dq変換器405の出力に対する目標値ind*,inq*をそれぞれ「0」に設定すると、高調波補償回路8を構成することができる。
【0090】
図14に示す高調波補償回路8では、n次位相角演算器411でn×θ1=n・ω・tが演算され、その演算値がdq変換器405と逆dq変換器408に入力されるので、dq変換器405からは交流電流iのn次高調波成分の電流ベクトルがdq座標系で位相角δnの位置に静止している状態のd軸成分indとq軸成分inqが出力される。そして、加算器406a,406bでそれぞれ目標値iq*(=0),iq*(=0)に対する偏差eq(=−ind),eq(=−inq)が算出され、PI補償器407a,407bでそれぞれその偏差eq,eqに所定のPI補償演算が行われた後、逆dq変換器408で静止直交座標系におけるn次高調波成分の補償値vnrc,vnjcが算出される。
【0091】
従って、高調波補償回路8から出力される補償値vnrc,vnjcを図1,図7に示すブロック図の逆dq変換器408から出力される制御値vrc,vjcにそれぞれ加算すれば、PWM信号生成器409に入力される制御値vrc,vjc(PWM変調における変調波)にn次高調波をキャンセルするための成分を注入することができる。
【0092】
図15は、図1に示す電力変換装置の制御装置に図12に示すn次高調波補償回路を追加した場合のブロック図である。また、図16は、図7に示す電力変換装置の制御装置に図12に示すn次高調波補償回路を追加した場合のブロック図である。
【0093】
図15,図16では、制御装置4で位相角θ1が算出されるので、図15,図16に示すn次高調波回路8’は、図14に示すn次高調波回路8から複素係数BPF401と位相角算出器403を除いた回路構成とし、n次位相角演算器411に制御装置4で算出される位相角θ1を入力する構成としている。また、図15,図16では、n次高調波補償回路8を1個しか記載していないが、n次高調波補償回路8は、キャンセルしたい次数の高調波に応じてそれぞれ設けられるので、例えば、単相電力系統3から出力される交流電圧vに5次と7次の高調波成分が混入している場合、図15,図16に記載のn次高調波補償回路8は、5次高調波補償回路81と7次高調波回路82とが並列に設けられた構成となる。
【0094】
図15に示す電力変換装置の制御装置4では、系統連系インバータ2から出力させる交流電圧vにキャンセル用のn次高調波成分を混入しているので、系統連系インバータ2から単相電力系統3に出力される単相電流からn次高調波成分を好適に除去することができる。
【符号の説明】
【0095】
1 直流電源
2 単相系統連系インバータ
3 単相電力系統
4,4’ 制御装置
401 複素係数バンドパスフィルタ(第1のフィルタ手段)
402 複素係数バンドパスフィルタ(第2のフィルタ手段)
402” 複素係数バンドパスフィルタ(第3のフィルタ手段)
402A 正規格化周波数算出部
402’,402B〜402H 複素係数ノッチフィルタ(第2のフィルタ手段)
403 位相角演算器(位相角算出手段)
404 レベル調整器
405 dq変換器(信号変換手段)
405’ dq変換器(信号変換手段)
406a,406a’,406b,406b’ 加算器
407a,407b PI補償器(制御値算出手段)
407a’,407b’ PI補償器(補償値算出手段)
408 逆dq変換器(信号逆変換手段)
408’ 逆dq変換器(第2の信号逆変換手段)
409 PWM信号生成器(PWM信号生成手段)
410 周波数検出器
411 n次位相角演算器(第2の位相角算出手段)
412a,412b 加算器(加算手段)
5 交流電流検出器(電流検出手段)
6 交流電圧検出器(電圧検出手段)
7 出力ライン
8 n次高調波補償回路(高調波補償手段)
Z 直流負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単相電力系統と直流電源若しくは直流負荷との間に設けられ、単相交流電力から直流電力への電力変換若しくはその逆の電力変換を行う単相電力変換装置の制御装置であって、
前記単相電力系統の交流電圧を検出する電圧検出手段と、
前記単相電力系統の交流電流を検出する電流検出手段と、
前記電圧検出手段で検出された前記交流電圧に含まれる前記単相電力系統の系統周波数の成分を抽出する、複素係数フィルタからなる第1のフィルタ手段と、
前記電流検出手段で検出された前記交流電流に含まれる所定の周波数の成分を抽出する、複素係数フィルタからなる第2のフィルタ手段と、
前記第1のフィルタ手段から出力される互いに直交する2つの信号を用いて前記交流電圧の位相角を算出する位相角算出手段と、
前記第2のフィルタ手段から出力される互いに直交する2つの信号を前記位相角算出手段で算出された位相角を用いた所定の座標変換処理によって前記系統周波数で回転する回転直交座標系の信号に変換する信号変換手段と、
前記信号変換手段で変換された前記回転直交座標系の2つの信号について、それぞれ目標値との偏差を算出し、その偏差に基づいて制御値を算出する制御値算出手段と、
前記制御値算出手段により算出された前記制御値を前記位相角算出手段で算出された位相角を用いた所定の逆座標変換処理によって静止直交座標系の制御信号に変換する信号逆変換手段と、
前記信号逆変換手段で逆変換された前記静止直交座標系の制御信号を用いて前記電力変換装置の駆動を制御するPWM信号を生成するPWM信号生成手段と、
を備えたことを特徴とする、単相電力変換装置の制御装置。
【請求項2】
前記第1のフィルタ手段と前記第2のフィルタ手段は、中心周波数が前記系統周波数と同一の周波数に設定されている複素係数バンドパスフィルタで構成され、
前記信号変換手段は、前記交流電流に含まれる前記系統周波数の成分だけを前記回転直交座標系の信号に変換して出力する、請求項1に記載の単相電力変換装置の制御装置。
【請求項3】
前記第1のフィルタ手段は、中心周波数が前記系統周波数と同一の周波数に設定されている複素係数バンドパスフィルタで構成され、
前記第2のフィルタ手段は、阻止周波数が前記系統周波数に対して同一の負の周波数成分と所定の次数の正負の高調波成分とに設定された複数係数ノッチフィルタで構成され、
前記信号変換手段は、前記交流電流に含まれる前記系統周波数の成分だけを前記回転直交座標系の信号に変換して出力する、請求項1に記載の単相電力変換装置の制御装置。
【請求項4】
前記第1のフィルタ手段から出力される互いに直交する2つの信号は、前記系統周波数で変化する位相角の余弦波信号と正弦波信号であり、
前記位相角算出手段は、前記余弦波信号と前記正弦波信号を用いて所定の逆三角関数の演算式により前記位相角を算出する、請求項2又は3に記載の単相電力変換装置の制御装置。
【請求項5】
前記第1のフィルタ手段から出力される互いに直交する2つの信号は、前記系統周波数で変化する位相角の余弦波信号と正弦波信号であり、
前記位相角算出手段は、前記余弦波信号と前記正弦波信号を用いて乗算式PLLにより前記余弦波信号及び前記正弦波信号の位相角と同一の位相角を有する信号を生成するPLL演算手段で構成される、請求項2又は3に記載の単相電力変換装置の制御装置。
【請求項6】
前記交流電流に含まれる所定の次数の高調波成分を補償する高調波補償手段を更に備え、
前記高調波補償手段は、
前記電流検出手段で検出された前記交流電流に含まれる前記次数の高調波成分を抽出する、複素係数フィルタからなる第3のフィルタ手段と、
前記位相角算出手段で算出される位相角を前記所定の次数倍して前記高調波成分の位相角を算出する第2の位相角算出手段と、
前記第3のフィルタ手段から出力される互いに直交する2つの信号を前記第2の位相角算出手段で算出された位相角を用いた所定の座標変換処理によって前記高調波成分の周波数で回転する回転直交座標系の信号に変換する第2の信号変換手段と、
前記第2の信号変換手段で変換された前記回転直交座標系の2つの信号について、それぞれ目標値との偏差を算出し、その偏差に基づいて補償値を算出する補償値算出手段と、
前記補償値算出手段により算出された前記補償値を前記第2の位相角算出手段で算出された位相角を用いた所定の逆座標変換処理によって静止直交座標系の高調波補償信号に変換する第2の信号逆変換手段と、
前記第2の信号逆変換手段で逆変換された前記静止直交座標系の高調波信号を前記信号逆変換手段で逆変換された前記静止直交座標系の制御信号に加算する加算手段と、
を備える、請求項1乃至5のいずれかに記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項7】
前記単相電力変換装置は、前記単相交流電力を前記直流電力に変換するインバータである、請求項1乃至6のいずれかに記載の単相電力変換装置の制御装置。
【請求項8】
前記単相電力変換装置は、前記直流電力を前記単相交流電力に逆変換するコンバータである、請求項1乃至6のいずれかに記載の単相電力変換装置の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−102670(P2013−102670A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−182618(P2012−182618)
【出願日】平成24年8月21日(2012.8.21)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】