説明

印刷装置及び印刷方法並びに輪転印刷機、印刷機

【課題】印刷装置及び印刷方法並びに輪転印刷機、印刷機において、印刷媒体の種類に拘わらず印刷品質の向上を可能とする。
【解決手段】回転可能な圧胴32と、この圧胴32に対接して同期して回転可能であると共に圧胴32との間に印刷シートSを挟んで搬送可能なブランケット胴31と、ブランケット胴31の表面に水性インキを吹き付けて画像を形成するインクジェットヘッド34と、インクジェットヘッド34によりブランケット胴31の表面に形成された画像に赤外線を照射して乾燥する第1ランプ35と、ブランケット胴31から印刷シートSに転移された画像に紫外線を照射して乾燥する第2ランプ36とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドを用いて印刷を行う印刷装置及び印刷方法、並びに、この印刷装置を備える輪転印刷機、印刷機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドを用いて印刷を行う印刷装置として、下記特許文献1、2に記載されたものがある。この特許文献1に記載された印刷装置は、インクジェットヘッドによりブランケット胴の表面に紫外線硬化性インキを吹き付けて画像を形成し、ブランケット胴の表面に形成された画像の紫外線硬化性インキを第1紫外線照射装置により一次乾燥してから印刷媒体に転移し、その後、印刷媒体に転移された画像の紫外線硬化性インキを第2紫外線照射装置により二次乾燥するものである。また、特許文献2に記載された印刷装置は、インクジェットヘッドによりブランケット胴の表面に水性インキを吹き付けて画像を形成し、ブランケット胴の表面に形成された画像の水性インキを第1加熱装置により一次乾燥してから印刷媒体に転移し、その後、印刷媒体に転移された画像の水性インキを第2加熱装置により二次乾燥するものである。
【0003】
また、特許文献3、4に記載された記録装置は、紫外線照射装置として2つの紫外線光源を設け、印刷ヘッド近傍の印刷用紙上を照射する紫外線光源の紫外線と、印刷ヘッド近傍からキャリッジの移動方向に沿って離れた記録媒体上を照射する紫外線光源の紫外線との波長を変えることで、記録媒体に付着させるインクの膜厚が厚くなる印刷の際に、良好に硬化させることのできるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−149412号公報
【特許文献2】特開2010−221552号公報
【特許文献3】特開2008−188983号公報
【特許文献4】特開2008−188984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載された印刷装置では、インクジェットヘッドより吐出された紫外線硬化性インキは、2つの紫外線照射装置により二段乾燥することで、インキを被印刷媒体に定着させている。また、特許文献2に記載された印刷装置では、インクジェットヘッドより吐出されたヒートセットインキは、2つの加熱装置により二段階乾燥することで、インキを印刷媒体に定着させている。この場合、上記2つの特許文献では、いずれも、2つの紫外線照射装置、或いは2つの加熱装置それぞれの装置の出力を調整することで、インキ半乾燥状態、完全乾燥状態を形成している。しかし、印刷媒体の搬送速度は高速であり、紙へのインキ付着時に最適なインキ粘着力を持った状態にする必要があることから、インクジェットヘッドより吐出されたインキの乾燥状態を半乾燥にするために加熱量やUV照射量を適正に制御するのは困難であり、高精度な印刷精度を確保するのは難しい。
【0006】
また、特許文献3、4に記載された記録装置では、異なる波長の紫外線を記録媒体上のインキに照射することで、膜厚が厚いインクであっても良好に硬化可能としている。しかし、記録装置は、膜厚が厚いインクを良好に硬化させることができるものの、記録媒体上に吹き付けられたインキに対して紫外線を照射するものであり、インキをブランケット胴に吹き付けた後に、このブランケット胴から印刷媒体へ転写するものではなく、二段階乾燥を行う印刷装置に適用することは困難である。
【0007】
本発明は上述した課題を解決するものであり、印刷媒体の種類に拘わらず印刷品質の向上を可能とする印刷装置及び印刷方法並びに輪転印刷機、印刷機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の印刷装置は、熱乾燥または熱硬化する成分と紫外線乾燥または紫外線硬化する成分とを含むインキを吹き付けて画像を形成するインクジェットヘッドと、該インクジェットヘッドから吹き付けられた前記インキを加熱乾燥または加熱硬化する第1乾燥装置と、前記インキに紫外線を照射して紫外線乾燥または紫外線硬化する第2乾燥装置と、を備えることを特徴とするものである。
【0009】
従って、インクジェットヘッドにより吹き付けられたインキは、第1乾燥装置により加熱乾燥または加熱硬化され、続いて、第2乾燥装置により紫外線が照射されて紫外線乾燥または紫外線硬化するため、インキが粘度の高い半乾燥状態で印刷媒体に転移されることとなる。そのため、インキは印刷媒体に浸透せず、且つ、画像が崩れることなく維持されることとなり、印刷品質の向上を図ることができる。具体的には、インキの粘度の向上によるドットゲイン安定性を向上することができると共に、インキのにじみを防止することができる。また、印刷媒体の種類に拘わらず印刷品質を向上することができる。
【0010】
本発明の印刷装置では、前記第2乾燥装置は、加熱乾燥または加熱硬化した前記インキに対して紫外線を照射して紫外線乾燥または紫外線硬化することを特徴としている。
【0011】
従って、先にインキに十分な粘着力を確保してから完全に乾燥または硬化させることとなり、高い印刷品質を確保することができる。
【0012】
本発明の印刷装置では、回転可能な印刷体と、該印刷体に対接して同期移動可能であると共に前記印刷媒体を挟んで搬送可能な転写体とを設け、前記インクジェットヘッドから吹き付けられる前記インキは、前記転写体の表面に吹き付けられることを特徴としている。
【0013】
従って、インクジェットヘッドにより印刷体の表面に形成されたインキの画像は、第1乾燥装置により一次乾燥または硬化されてから印刷媒体に転移されるため、粘度が高い状態でブランケット胴から印刷媒体に転移されることとなり、印刷品質の向上を図ることができる。
【0014】
本発明の印刷装置では、前記第1乾燥装置は、前記転写体の外周面に対向して配設されて前記インクジェットヘッドから前記転写体の外周面に吹き付けられた前記インキを加熱乾燥または加熱硬化することを特徴としている。
【0015】
従って、転写体の外周面に吹き付けられたインキに対して、第1乾燥装置によりインキが加熱乾燥または加熱硬化することができ、理想的な半乾燥状態を確保することができる。
【0016】
また、本発明の印刷装置は、印刷媒体を保持して搬送可能な搬送体と、該搬送体が保持した前記印刷媒体の表面にインキを吹き付けて画像を形成するインクジェットヘッドと、該インクジェットヘッドから吹き出された前記インキを加熱乾燥または加熱硬化する第1乾燥装置と、前記印刷媒体の表面に吹き付けられた前記インキに紫外線を照射して紫外線乾燥または紫外線硬化する第2乾燥装置と、を備えることを特徴とするものである。
【0017】
従って、インクジェットヘッドにより印刷媒体の表面に形成された画像は、第1乾燥装置により加熱乾燥または加熱硬化されてから、第2乾燥装置からの紫外線により紫外線乾燥または紫外線硬化するため、粘度が高い状態で印刷媒体に保持されることとなる。そのため、インキは印刷媒体に浸透せず、且つ、画像が崩れることなく維持されることとなり、印刷品質の向上を図ることができる。具体的には、インキの粘度の向上によるドットゲイン安定性を向上することができると共に、インキのにじみを防止することができる。また、印刷媒体の種類に拘わらず印刷品質を向上することができる。
【0018】
また、本発明の印刷方法は、移動する転写体の表面にインキを吹き付けて画像を形成し、前記転写体に吹き付けられた前記インキを加熱乾燥または加熱硬化し、前記転写体と同期移動する印刷体との間に印刷媒体を挟んで搬送するときに前記転写体の前記インキを前記印刷媒体に転写し、該印刷媒体に転写された前記インキに紫外線を照射して紫外線乾燥または紫外線硬化させる、ことを特徴とするものである。
【0019】
従って、インキは、高い粘度の状態で印刷媒体に保持されることとなり、インキは印刷媒体に浸透せず、且つ、画像が崩れることなく、印刷媒体の種類に拘わらず、印刷品質を向上することができる。
【0020】
また、本発明の印刷方法は、搬送される印刷媒体の表面に向けてインキを吹き出し、吹き出された前記インキを加熱乾燥または加熱硬化し、前記印刷媒体の表面に吹き付けられた前記インキに紫外線を照射して紫外線乾燥または紫外線硬化させる、ことを特徴とするものである。
【0021】
従って、インキは、高い粘度の状態で印刷媒体に保持されることとなり、インキは印刷媒体に浸透せず、且つ、画像が崩れることなく、印刷媒体の種類に拘わらず、印刷品質を向上することができる。
【0022】
また、本発明の印刷機は、給紙台上に積み重ねられた枚葉紙を吸引して送り出す給紙装置と、該給紙装置から送り出された枚葉紙を圧胴とブランケット胴との間に挟んで搬送すると共に前記ブランケット胴に形成された画像を枚葉紙に転写して印刷を行う印刷装置と、該印刷装置で印刷が施された枚葉紙を排紙台に積み重ねて排紙する排紙装置と、を備える枚葉印刷機において、前記印刷装置は、前記ブランケット胴の表面にインキを吹き付けて画像を形成するインクジェットヘッドと、該インクジェットヘッドから吹き付けられた前記インキを加熱乾燥または加熱硬化する第1乾燥装置と、前記ブランケット胴から前記印刷媒体に転写されたインキに紫外線を照射して紫外線乾燥または紫外線硬化する第2乾燥装置と、を有することを特徴とするものである。
【0023】
従って、インクジェットヘッドによりブランケット胴の表面に形成されたインキは、第1乾燥装置により加熱乾燥または加熱硬化してから枚葉紙に転移されるため、粘度が高い状態でブランケット胴から枚葉紙に転移されることとなり、インキは枚葉紙に浸透せず、且つ、画像が崩れることなく維持されることとなり、印刷媒体の種類に拘わらず印刷品質を向上することができる。
【0024】
また、本発明の輪転印刷機は、巻取紙からウェブを供給する給紙装置と、該給紙装置から繰り出されたウェブを圧胴とブランケット胴との間に挟んで搬送すると共に前記ブランケット胴に形成された画像をウェブに転写して印刷を行う印刷装置と、該印刷装置により印刷されたウェブを裁断して折り曲げることで折帖を形成する折り装置と、該折り装置により形成された折帖を排紙する排紙装置と、を備える輪転印刷機において、前記印刷装置は、前記ブランケット胴の表面にインキを吹き付けて画像を形成するインクジェットヘッドと、該インクジェットヘッドから吹き付けられた前記インキを加熱乾燥または加熱硬化する第1乾燥装置と、前記ブランケット胴からウェブに転写された前記インキに紫外線を照射して紫外線乾燥または紫外線硬化する第2乾燥装置と、を有することを特徴とするものである。
【0025】
従って、インクジェットヘッドによりブランケット胴の表面に形成されたインキは、第1乾燥装置により加熱乾燥または加熱硬化してからウェブに転移されるため、粘度が高い状態でブランケット胴からウェブに転移されることとなり、インキはウェブに浸透せず、且つ、画像が崩れることなく維持されることとなり、ウェブの種類に拘わらず印刷品質を向上することができる。
【0026】
また、本発明の印刷機は、印刷媒体を供給する給紙装置と、該給紙装置から繰り出された印刷媒体を圧胴とブランケット胴との間に挟んで搬送すると共に前記ブランケット胴に形成された画像を印刷媒体に転写して印刷を行う複数の印刷装置と、該印刷装置により印刷された印刷媒体を排紙する排紙装置と、を備える印刷機において、前記印刷装置は、刷版を用いて印刷を行う第1印刷装置と、インクジェットヘッドを用いて印刷を行う第2印刷装置を有し、該第2印刷装置は、前記インクジェットヘッドから前記ブランケット胴の表面に吹き付けられた前記インキを加熱乾燥または加熱硬化する第1乾燥装置と、前記ブランケット胴から前記印刷媒体に転写されたインキに紫外線を照射して紫外線乾燥または紫外線硬化する第2乾燥装置と、を有することを特徴とするものである。
【0027】
従って、インクジェットヘッドによりブランケット胴の表面に形成されたインキは、第1乾燥装置により加熱乾燥または加熱硬化してから印刷媒体に転移されるため、粘度が高い状態でブランケット胴から印刷媒体に転移されることとなり、印刷媒体が既に印刷済であったとしても、インキは印刷媒体に浸透せず、且つ、画像が崩れることなく維持されることとなり、印刷品質を向上することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の印刷装置及び印刷方法並びに輪転印刷機、印刷機によれば、印刷媒体に転移する前にインキに赤外線を照射して一次乾燥し、その後、印刷媒体に転移したインキに紫外線を照射して二次乾燥させるので、印刷媒体の種類に拘わらず印刷品質の向上を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の実施例1に係る印刷装置を備えた枚葉印刷機を表す概略構成図である。
【図2】図2は、実施例1の印刷装置の要部を表す概略図である。
【図3−1】図3−1は、実施例1の印刷装置による印刷方法を表す概略図である。
【図3−2】図3−2は、実施例1の印刷装置による印刷方法を表す概略図である。
【図4】図4は、本発明の実施例2に係る印刷装置を備えた枚葉印刷機を表す概略構成図である。
【図5】図5は、本発明の実施例3に係る印刷装置を備えた枚葉印刷機を表す概略構成図である。
【図6】図6は、本発明の実施例4に係る印刷装置を備えた枚葉印刷機の要部を表す概略図である。
【図7】図7は、本発明の実施例5に係る印刷装置を備えた枚葉印刷機を表す概略構成図である。
【図8】図8は、本発明の実施例6に係る印刷装置を備えた枚葉印刷機を表す概略構成図である。
【図9】図9は、本発明の実施例7に係る印刷装置を備えた輪転印刷機を表す概略構成図である。
【図10】図10は、本発明の実施例8に係る印刷装置を備えた輪転印刷機を表す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る印刷装置及び印刷方法並びに輪転印刷機、印刷機の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
【実施例1】
【0031】
図1は、本発明の実施例1に係る印刷装置を備えた枚葉印刷機を表す概略構成図、図2は、実施例1の印刷装置の要部を表す概略図、図3−1及び図3−2は、実施例1の印刷装置による印刷方法を表す概略図である。
【0032】
実施例1のオフセット枚葉印刷機は、図1に示すように、給紙装置11と搬送装置12と印刷装置13と排紙装置14とから構成されている。なお、本実施例にて、給紙装置11に積み重ねて載置される枚葉紙としての印刷シート(印刷媒体)Sは、図示しない多色刷り枚葉印刷機で所定領域を除く部分が印刷されたものであり、印刷装置13により白紙の所定領域に対して印刷が行われる。なお、多色刷り枚葉印刷機は、例えば、黒(Black)、藍(Cyan)、紅(Magenta)、黄(Yellow)の4色に対応する4台の印刷ユニットを有している。この各印刷ユニットは、ほぼ同様の構成をなし、インキ装置と版胴とブランケット胴と圧胴とを備え、印刷シートSがブランケット胴と圧胴との間を通過するときに、ブランケット胴から印刷シートSにインキ(印刷画像)が転写されて印刷が行われる。
【0033】
上述した給紙装置11は、給紙台21と給紙機構としてのセパレータ装置22を有している。給紙台21は、印刷シートSを積み重ねて載置するものであり、セパレータ装置22は、給紙台21上に積み重ねられた多数の印刷シートSを上から順に1枚ずつ取り上げて送り出すものである。この場合、給紙台21は、セパレータ装置22が印刷シートSとほぼ一定の高さの位置関係を維持できるように、印刷シートSの供給に対応して上下に移動可能となっている。
【0034】
搬送装置12は、給紙装置11から送り出された印刷シートSを搬送して所定の位置に位置決めすると共に、印刷装置13に供給するものである。この搬送装置12にて、給紙装置11に隣接してフィードローラ23と咥えローラ24が上下に対接して配置されると共に、複数のガイドローラ25に掛け回された搬送ベルト26が配置され、印刷装置13に隣接して前当て27が配置されている。
【0035】
印刷装置13は、ブランケット胴31と圧胴(印刷胴)32が上下に対接して回転自在に支持されると共に、圧胴32に対接すると共に前当て27に隣接して中間胴33が回転自在に支持されている。このブランケット胴31と圧胴32と中間胴33は、矢印方向に沿って同期回転できるようにギア連結されており、図示しない一つのモータにより回転可能となっている。この場合、ブランケット胴31は、画像の離形性を考慮して、表面がシリコンにより形成されたブランケットを巻き付けている。また、圧胴32と中間胴33は、それぞれ咥え爪32a,33a(図2参照)を有している。中間胴33の咥え爪33aは、搬送装置12の前当て27に位置決めされた印刷シートSの先端部(搬送方向における前端部)をつかんで搬送し、続いて、圧胴32の咥え爪32aは、中間胴33の咥え爪33aが放した印刷シートSの先端部をつかんで搬送する。
【0036】
ブランケット胴31の外周辺には、このブランケット胴31の表面に水性インキを吹き付けて画像を形成するインクジェットヘッド34が設けられている。このインクジェットヘッド34は、ブランケット胴31の軸方向に沿って並んだ複数のノズル(図示略)を有しており、印刷シートSの幅方向の全域に水性インキを吹き付けることができる。
【0037】
本実施例のインクジェットヘッド34で使用する水性インキは、着色料としての顔料、紫外線硬化性樹脂、ビヒクル成分(溶媒として、例えば、アクリル酸のプレポリマー、オリゴマー、アクリル酸モノマー)、インキを固化させるために触媒(開始剤、増感剤)、添加剤、水溶性溶媒などから成分構成されている。なお、水性インキは、この成分構成に限らず、水溶性溶媒に代えてアルコールや熱硬化性樹脂などとしてもよい。
【0038】
また、ブランケット胴31の外周辺には、インクジェットヘッド34よりブランケット胴31の回転方向の下流側に位置して、ブランケット胴31に形成された画像(水性インキ)を加熱乾燥または加熱硬化する第1乾燥装置としての第1ランプ35が設けられている。また、圧胴32の外周辺には、この圧胴32とブランケット胴31との対接位置より圧胴32の回転方向の下流側に位置して、ブランケット胴31から印刷シートSの印刷面に転写された画像(水性インキ)を紫外線乾燥または紫外線硬化する第2乾燥装置としての第2ランプ36が設けられている。この場合、第1ランプ35は、赤外線(Infrared)を照射可能な赤外線ランプであり、第2ランプ36は、紫外線(Ultraviolet)を照射可能な紫外線ランプである。
【0039】
また、ブランケット胴31の外周辺には、圧胴32との対接位置よりブランケット胴31の回転方向下流側で、且つ、インクジェットヘッド34よりブランケット胴31の回転方向上流側に位置して、ブランケット胴31の表面に形成された画像が印刷シートSに転写された後に、ブランケット胴31の表面に残留するインキを除去して洗浄する洗浄装置としてのクリーニングローラ37が設けられている。このクリーニングローラ37は、ブランケット胴31と連れ回りしたり、逆方向に駆動回転したりすることで、ブランケット胴31の表面に残留した水性インキを除去するものである。
【0040】
排紙装置14は、印刷装置13で印刷された印刷シートSを搬送し、整列した状態で上下に積み重ねるものである。この排紙装置14は、印刷シートSを搬送するチェーングリッパ28と、印刷された印刷シートSが積層される排紙台29と、印刷シートSを揃える紙当て30を有している。チェーングリッパ28は、印刷シートSの先端部を咥える複数の咥え爪28aを有し、印刷装置13の圧胴32から印刷シートSを受け取って排紙台29の上方位置の所定位置まで搬送する。排紙台29は、印刷シートSが積層されるに従って最上段の上面部高さが上昇した場合に、印刷シートSの落下距離がほぼ一定となるように連続的、あるいは、段階的に下降可能となっている。紙当て30は、印刷シートSの進行方向における先端位置を規制するものである。
【0041】
ここで、このように構成された実施例1のオフセット枚葉印刷機による印刷方法について説明する。
【0042】
まず、給紙装置11の給紙台21に積載された印刷シートSは、セパレータ装置22により最上部から1枚ずつ取り出されて搬送装置12に送り出され、次に、この搬送装置12は、印刷シートSを前当て27で位置決めした後、順次、印刷装置13に供給する。
【0043】
続いて、印刷装置13にて、インクジェットヘッド34は、複数のノズルから水性インキをブランケット胴31に向けて吹き付けることで、このブランケット胴31の表面に所定の画像を形成する。水性インキがブランケット胴31に付着してから印刷シートSに転写される間、ブランケット胴31に形成された画像(水性インキ)は、第1ランプ35からの赤外線(熱)により加熱乾燥される。
【0044】
一方、中間胴33は、搬送装置12から送り出された印刷シートSを受取り、圧胴32に受け渡し、圧胴32により印刷シートSがブランケット胴31との対接位置に搬送される。そして、この印刷シートSが圧胴32により搬送されてブランケット胴31との対接位置に至ると、各胴31,32の間を加圧されながら通過するとき、ブランケット胴31の画像が印刷シートSに転写される。この場合、印刷シートSの画像(水性インキ)は、第1ランプ35からの赤外線により一次乾燥、つまり、半乾燥されることとなり、理想的な半乾燥状態を実現することができる。その後、圧胴32の回転に伴って移動する画像は、第2ランプ36からの紫外線により二次乾燥、つまり、本乾燥される。
【0045】
なお、表面の画像が印刷シートSに転写したブランケット胴31は、クリーニングローラ37に接触することで、表面に残留した水性インキが除去される。
【0046】
上述した画像(水性インキ)の乾燥について詳細に説明する。図2に示すように、インクジェットヘッド34からブランケット胴31の表面に吹き付けられ、このブランケット胴31の表面に形成された画像の水性インキ(白抜き)は、領域T1で低粘度状態にある。ブランケット胴31が回転して移動した低粘度状態の画像の水性インキは、第1ランプ35からの赤外線により加熱されることで、領域T2で半乾燥状態の水性インキ(斜線)となる。ブランケット胴31の表面にある半乾燥状態の水性インキは、ブランケット胴31と圧胴32により搬送された印刷シートSとの間に所定のニップが作用することで、この印刷シートSの表面に転写される。そして、圧胴32が回転して印刷シートSが移動すると、この印刷シートSと共に移動した半乾燥状態の画像の水性インキは、第2ランプ36からの紫外線により領域T3で完全乾燥状態の水性インキ(黒塗り)となる。
【0047】
このとき、第1ランプ35は赤外線を照射可能であり、第2ランプ36は紫外線を照射可能である一方、水性インキは、顔料、紫外線硬化性樹脂、ビヒクル成分、触媒、添加剤、水溶性溶媒などを成分として含むものであることから、一次乾燥と二次乾燥では、硬化(乾燥)する成分が異なる。即ち、図3−1に示すように、ブランケット胴31の表面に形成された画像の水性インキは、主に、顔料A、紫外線硬化性樹脂(ビヒクル成分、触媒、添加剤を含む)B、水溶性溶媒Cとから構成される。なお、図中では、顔料Aと紫外線硬化性樹脂Bと水溶性溶媒Cが分離状態で表されているが、実際には、混合された状態である。
【0048】
この状態で、まず、第1ランプ35がブランケット胴31上の水性インキに向けて赤外線を照射すると、水性インキ中の水溶性溶媒Cが加熱されて蒸発することから、ブランケット胴31の表面の水性インキは、顔料Aと紫外線硬化性樹脂Bのみとなる。そして、この顔料Aと紫外線硬化性樹脂Bからなる水性インキは、ブランケット胴31から圧胴32により搬送された印刷シートSに転写される。次に、図3−2に示すように、第2ランプ36が圧胴32に支持された印刷シートS上の水性インキに向けて紫外線を照射すると、水性インキ中の紫外線硬化性樹脂Bが硬化して硬化性樹脂Dとなり、顔料Aを定着させる。
【0049】
この場合、第1ランプ35から照射される赤外線は、0.7μm〜1.0mm(1000μm)の波長であり、水性インキ中の水溶性溶媒Cを加熱して蒸発させることができる。一方、第2ランプ36から照射される紫外線は、10nm〜400nmの波長であり、水性インキ中の紫外線硬化性樹脂Bを硬化させることができる。詳細に説明すると、水性インキに紫外線が照射されると、触媒としての開始剤が活性化されて反応開始点ができ、反応開始点がアクリル酸プレポリマーの二重結合を活性化させ、アクリル酸プレポリマー同士が化学的に結合(架橋)する。最終的に、アクリル酸プレポリマーが網目状に連結することにより分子が自由に動くことができなくなり、水性インキは、液体から固体に変化して硬化皮膜となる。
【0050】
その後、図1に戻り、印刷装置13で印刷が施された印刷シートSは、この印刷装置13から排紙装置14に送り出され、チェーングリッパ28は印刷シートSの先端部を咥えながら搬送し、排紙台29上に積み上げていく。
【0051】
このように実施例1のオフセット枚葉印刷機にあっては、回転可能な圧胴32と、この圧胴32に対接して同期して回転可能であると共に圧胴32との間に印刷シートSを挟んで搬送可能なブランケット胴31と、ブランケット胴31の表面に水性インキを吹き付けて画像を形成するインクジェットヘッド34と、インクジェットヘッド34によりブランケット胴31の表面に形成された画像に赤外線を照射して乾燥する第1ランプ35と、ブランケット胴31から印刷シートSに転移された画像に紫外線を照射して乾燥する第2ランプ36とを設けている。
【0052】
従って、インクジェットヘッド34によりブランケット胴31の表面に形成された画像は、第1ランプ35からの赤外線により一次乾燥されてから印刷シートSに転移されるため、粘度が高い状態でブランケット胴31から印刷シートSに転移されることとなる。そのため、水性インキは印刷シートSに浸透せず、且つ、画像が崩れることなく維持されることとなり、印刷精度の向上を図ることができる。具体的には、インキの粘度の向上によるドットゲイン安定性を向上することができると共に、インキのにじみを防止することができる。また、紙種による印刷精度の差異を抑制することができる。
【0053】
この場合、水性インキが、顔料、紫外線硬化性樹脂、ビヒクル成分、触媒、添加剤、水溶性溶媒などを含むものとし、第1ランプ35が赤外線を照射可能であり、第2ランプ36が紫外線を照射可能としている。従って、波長が異なる2種類の電磁波を用いて水性インキ(画像)を順次乾燥させることで、この水性インキの確実な乾燥が可能となる。
【実施例2】
【0054】
図4は、本発明の実施例2に係る印刷装置を備えた枚葉印刷機を表す概略構成図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0055】
実施例2のオフセット枚葉印刷機は、図4に示すように、給紙装置11と搬送装置12と印刷装置13と排紙装置14とから構成されている。ここで、給紙装置11と搬送装置12と排紙装置14は、上述した実施例1の構成と同様であり、印刷装置13の構成のみ相違している。
【0056】
即ち、印刷装置13にて、ブランケット胴31の外周辺には、このブランケット胴31の表面に水性インキを吹き付けて画像を形成するインクジェットヘッド34が設けられている。また、ブランケット胴31の外周辺には、インクジェットヘッド34よりブランケット胴31の回転方向上流側に位置して、このブランケット胴31の表面を加熱する予熱装置としての予熱ランプ38が設けられている。そして、ブランケット胴31の外周辺には、インクジェットヘッド34よりブランケット胴31の回転方向の下流側に位置して、ブランケット胴31に形成された画像(水性インキ)を乾燥する第1ランプ35が設けられている。また、圧胴32の外周辺には、この圧胴32とブランケット胴31との対接位置より圧胴32の回転方向下流側に位置して、ブランケット胴31から印刷シートSの印刷面に転写された画像(水性インキ)を乾燥する第2ランプ36が設けられている。この場合、予熱ランプ38は、ハロゲンランプや赤外線ランプである。
【0057】
ここで、このように構成された実施例2のオフセット枚葉印刷機による印刷方法について説明する。
【0058】
まず、給紙装置11の給紙台21に積載された印刷シートSは、セパレータ装置22により最上部から1枚ずつ取り出されて搬送装置12に送り出され、次に、この搬送装置12は、印刷シートSを前当て27で位置決めした後、順次、印刷装置13に供給する。
【0059】
続いて、印刷装置13にて、ブランケット胴31は、予熱ランプ38の光熱によりその表面が予熱され、インクジェットヘッド34は、複数のノズルから水性インキを予熱されたブランケット胴31に向けて吹き付けることで、このブランケット胴31の表面に所定の画像を形成する。このとき、ブランケット胴31に付着した水性インキは、高温のブランケット胴31から熱が付与されることで、乾燥される。そして、このブランケット胴31に形成された画像(水性インキ)は、第1ランプ35からの赤外線(熱)により加熱乾燥される。
【0060】
一方、中間胴33は、搬送装置12から送り出された印刷シートSを受取り、圧胴32に受け渡し、圧胴32により印刷シートSがブランケット胴31との対接位置に搬送される。そして、この印刷シートSが圧胴32により搬送されてブランケット胴31との対接位置に至ると、各胴31,32の間を加圧されながら通過するとき、ブランケット胴31の画像が印刷シートSに転写される。そして、圧胴32の回転に伴って移動する画像は、第2ランプ36からの紫外線により二次乾燥、つまり、本乾燥される。
【0061】
具体的に説明すると、ブランケット胴31の表面に形成された画像の水性インキは、第1ランプ35から赤外線が照射されることで、水性インキ中の水溶性溶媒Cが加熱されて蒸発し、ブランケット胴31の表面の水性インキは、顔料Aと紫外線硬化性樹脂Bのみとなる。そして、この顔料Aと紫外線硬化性樹脂Bからなる水性インキが印刷シートSに転写された後、印刷シートSに形成された画像の水性インキは、第2ランプ36から紫外線が照射されることで、水性インキ中の紫外線硬化性樹脂Bが硬化して硬化性樹脂Dとなり、顔料Aを定着させる。
【0062】
その後、印刷装置13で印刷が施された印刷シートSは、この印刷装置13から排紙装置14に送り出され、チェーングリッパ28は印刷シートSの先端部を咥えながら搬送し、排紙台29上に積み上げていく。
【0063】
このように実施例2のオフセット枚葉印刷機にあっては、回転可能な圧胴32と、この圧胴32に対接して同期して回転可能であると共に圧胴32との間に印刷シートSを挟んで搬送可能なブランケット胴31と、ブランケット胴31の表面に水性インキを吹き付けて画像を形成するインクジェットヘッド34と、ブランケット胴31を加熱する予熱ランプ38と、ブランケット胴31の画像に赤外線を照射して乾燥する第1ランプ35と、印刷シートSの画像に紫外線を照射して乾燥する第2ランプ36とを設けている。
【0064】
従って、予熱ランプ38により事前にブランケット胴31が加熱されることで、インクジェットヘッド34によりブランケット胴31の表面に形成された画像の水性インキは、高温のブランケットにより乾燥が補助され、その後、第1ランプ35により一次乾燥されることで、水性インキ中の水分を蒸発させて理想的な半乾燥状態を形成することができる。この場合、予熱ランプ38を用いることで、第1ランプ35の出力を低減することが可能となる。
【実施例3】
【0065】
図5は、本発明の実施例3に係る印刷装置を備えた枚葉印刷機を表す概略構成図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0066】
実施例3のオフセット枚葉印刷機は、図5に示すように、給紙装置11と搬送装置12と印刷装置13と排紙装置14とから構成されている。ここで、給紙装置11と搬送装置12と排紙装置14は、上述した実施例1の構成と同様であり、印刷装置13の構成のみ相違している。
【0067】
即ち、印刷装置13にて、ブランケット胴31の外周辺には、このブランケット胴31の表面に水性インキを吹き付けて画像を形成するインクジェットヘッド34が設けられている。そして、ブランケット胴31の内部には、ブランケット胴31に形成された画像(水性インキ)を乾燥する第1乾燥装置としての第1ランプ39が設けられている。また、圧胴32の外周辺には、この圧胴32とブランケット胴31との対接位置より圧胴32の回転方向下流側に位置して、ブランケット胴31から印刷シートSの印刷面に転写された画像(水性インキ)を乾燥する第2ランプ36が設けられている。ここで、第1ランプ39は、赤外線を照射可能となっている。
【0068】
ここで、このように構成された実施例3のオフセット枚葉印刷機による印刷方法について説明する。
【0069】
まず、給紙装置11の給紙台21に積載された印刷シートSは、セパレータ装置22により最上部から1枚ずつ取り出されて搬送装置12に送り出され、次に、この搬送装置12は、印刷シートSを前当て27で位置決めした後、順次、印刷装置13に供給する。
【0070】
続いて、印刷装置13にて、インクジェットヘッド34は、複数のノズルから水性インキをブランケット胴31に向けて吹き付けることで、このブランケット胴31の表面に所定の画像を形成する。このとき、ブランケット胴31に形成された画像(水性インキ)は、内部の第1ランプ39からの赤外線(熱)により加熱乾燥される。
【0071】
一方、中間胴33は、搬送装置12から送り出された印刷シートSを受取り、圧胴32に受け渡し、圧胴32により印刷シートSがブランケット胴31との対接位置に搬送される。そして、この印刷シートSが圧胴32により搬送されてブランケット胴31との対接位置に至ると、各胴31,32の間を加圧されながら通過するとき、ブランケット胴31の画像が印刷シートSに転写される。そして、圧胴32の回転に伴って移動する印刷シートS上の画像は、第2ランプ36からの紫外線により二次乾燥、つまり、本乾燥される。
【0072】
その後、印刷装置13で印刷が施された印刷シートSは、この印刷装置13から排紙装置14に送り出され、チェーングリッパ28は印刷シートSの先端部を咥えながら搬送し、排紙台29上に積み上げていく。
【0073】
このように実施例3のオフセット枚葉印刷機にあっては、回転可能な圧胴32と、この圧胴32に対接して同期して回転可能であると共に圧胴32との間に印刷シートSを挟んで搬送可能なブランケット胴31と、ブランケット胴31の表面に水性インキを吹き付けて画像を形成するインクジェットヘッド34と、ブランケット胴31の内部に設けられて表面の画像に赤外線を照射して乾燥する第1ランプ39と、印刷シートSの画像に紫外線を照射して乾燥する第2ランプ36とを設けている。
【0074】
従って、インクジェットヘッド34によりブランケット胴31の表面に形成された画像は、第1ランプ39からの赤外線により裏側から一次乾燥されて印刷シートSに転移されるため、粘度が高い状態でブランケット胴31から印刷シートSに転移されることとなり、インキの粘度の向上によるドットゲイン安定性を向上することができると共に、インキのにじみを防止することができ、紙種による印刷精度の差異を抑制することができる。
【実施例4】
【0075】
図6は、本発明の実施例4に係る印刷装置を備えた枚葉印刷機の要部を表す概略図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0076】
実施例4の枚葉印刷機の印刷装置において、図6に示すように、搬送体としての圧胴32の外周辺には、この圧胴32により搬送される印刷シートSの印刷面に水性インキを吹き付けて画像を形成するインクジェットヘッド34が設けられている。そして、圧胴32の外周辺には、インクジェットヘッド34から吹き出されて印刷シートSに到達する前の水性インキを乾燥する第1乾燥装置としての第1ランプ40が設けられている。また、圧胴32の外周辺には、インクジェットヘッド34より圧胴32の回転方向下流側に位置して、印刷シートSの印刷面に形成された画像(水性インキ)を乾燥する第2ランプ36が設けられている。ここで、第1ランプ40は、赤外線を照射可能となっている。
【0077】
ここで、このように構成された実施例4のオフセット枚葉印刷機による印刷方法について説明する。
【0078】
中間胴33は、印刷シートSを圧胴32に受け渡し、圧胴32により印刷シートSが搬送され、この印刷シートSがインクジェットヘッド34との対向位置に至る。ここで、インクジェットヘッド34は、複数のノズルから水性インキを圧胴32により搬送される印刷シートSの印刷面に向けて吹き付けることで、この印刷シートSの印刷面に所定の画像を形成する。このとき、第1ランプ40は、インクジェットヘッド34から吹き出されて印刷シートSに到達する前の水性インキに赤外線を照射することで、この水性インキを加熱乾燥する。
【0079】
その後、圧胴32の回転に伴って移動する印刷シートS上の画像は、第2ランプ36からの紫外線により二次乾燥、つまり、本乾燥される。
【0080】
このように実施例4の枚葉印刷機にあっては、印刷シートSを搬送可能な圧胴32と、圧胴32に保持された印刷シートSに水性インキを吹き付けて画像を形成するインクジェットヘッド34と、インクジェットヘッド34から印刷シートSに吹き付けられる前の水性インキを乾燥する第1ランプ40と、印刷シートSの画像に紫外線を照射して乾燥する第2ランプ36とを設けている。
【0081】
従って、インクジェットヘッド34により印刷シートSに形成された画像は、吹きつけられる前に第1ランプ40からの赤外線により一次乾燥されることで、印刷シートSの表面に高精度な水性インキの画像を形成することができ、インキの粘度の向上によるドットゲイン安定性を向上することができると共に、インキのにじみを防止することができ、紙種による印刷精度の差異を抑制することができる。
【実施例5】
【0082】
図7は、本発明の実施例5に係る印刷装置を備えた枚葉印刷機を表す概略構成図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0083】
実施例5のオフセット枚葉印刷機は、図7に示すように、給紙装置41と搬送装置42と印刷装置43と排紙装置44とから構成されている。
【0084】
給紙装置41は、給紙台51と給紙機構としてのセパレータ装置52を有している。給紙台51は、印刷シートSを積み重ねて載置するものであり、また、セパレータ装置52は、給紙台51上に積み重ねられた多数の印刷シートSを上から順に1枚ずつ取り上げて送り出すものである。この場合、給紙台51は、セパレータ装置52が印刷シートSとほぼ一定の高さの位置関係を維持できるように、印刷シートSの供給に対応して上下に移動可能となっている。
【0085】
搬送装置42は、給紙装置41から送り出された印刷シートSを搬送して所定の位置に位置決めすると共に、印刷装置43に供給するものである。この搬送装置42にて、給紙装置41に隣接してフィードローラ53及び咥えローラ54が対接して配置されると共に、複数のガイドローラ55に掛け回された搬送ベルト56が配置され、印刷装置43に隣接して前当て57が配置されている。
【0086】
印刷装置43は、カラー印刷を実現できるように、黒(Black)、藍(Cyan)、紅(Magenta)、黄(Yellow)の4色に対応して4台の印刷ユニット61,62,63,64と、後述するインクジェットヘッドを用いた印刷を行う印刷ユニット65を有している。各印刷ユニット61,62,63,64は、ほぼ同様の構成をなし、インキ装置(図示略)と、版胴61a,62a,63a,64aとブランケット胴61b,62b,63b,64bと圧胴61c,62c,63c,64cとを備えている。この版胴61a,62a,63a,64aとブランケット胴61b,62b,63b,64bと圧胴61c,62c,63c,64cは、上下方向に沿って上側から下側にこの順で相互に接するように配置されており、インキ装置により版胴61a,62a,63a,64aを介してブランケット胴61b,62b,63b,64bにインキが供給され、ブランケット胴61b,62b,63b,64bと圧胴61c,62c,63c,64cとの間に印刷シートSが通過するときに、ブランケット胴61b,62b,63b,64bから印刷シートSにインキ(印刷画像)が転写される。なお、各圧胴61c,62c,63c,64cの間には、中間胴66が設けられている。
【0087】
また、印刷ユニット65は、上述した実施例1で説明した印刷装置13とほぼ同様の構成となっている。即ち、ブランケット胴31と圧胴32が上下に対接して回転自在に支持されると共に、圧胴32に対接して中間胴66が回転自在に支持されている。圧胴32と中間胴66は、それぞれ咥え爪(図示略)を有しており、中間胴66の咥え爪が印刷シートSの先端部をつかんで搬送し、続いて、圧胴32の咥え爪が中間胴66の咥え爪が放した印刷シートSの先端部をつかんで搬送する。
【0088】
ブランケット胴31の外周辺には、ブランケット胴31の表面に水性インキを吹き付けて画像を形成するインクジェットヘッド34が設けられている。ブランケット胴31の外周辺には、インクジェットヘッド34よりブランケット胴31の回転方向の下流側に位置して、ブランケット胴31に形成された画像(水性インキ)を乾燥する第1ランプ35が設けられている。また、圧胴32の外周辺には、この圧胴32とブランケット胴31との対接位置より圧胴32の回転方向の下流側に位置して、ブランケット胴31から印刷シートSの印刷面に転写された画像(水性インキ)を乾燥する第2ランプ36が設けられている。また、ブランケット胴31の外周辺には、ブランケット胴31の表面を洗浄するクリーニングローラ37が設けられている。
【0089】
排紙装置44は、印刷装置43で印刷された印刷シートSを搬送し、整列した状態で上下に積み重ねるものである。この排紙装置44は、印刷シートSを搬送するチェーングリッパ71と、印刷された印刷シートSが積層される排紙台72と、印刷シートSを揃える紙当て73を有している。チェーングリッパ71は、印刷シートSの先端部を咥える複数の咥え爪71aを有し、印刷装置43の圧胴32から印刷シートSを受け取って排紙台72の上方位置の所定位置まで搬送する。排紙台72は、印刷シートSが積層されるに従って最上段の上面部高さが上昇した場合に、印刷シートSの落下距離がほぼ一定となるように連続的、あるいは、段階的に下降可能となっている。紙当て73は、印刷シートSの進行方向における先端位置を規制するものである。
【0090】
ここで、このように構成された実施例5のオフセット枚葉印刷機による印刷方法について説明する。
【0091】
まず、給紙装置41の給紙台51に積載された印刷シートSは、セパレータ装置52により最上部から1枚ずつ取り出されて搬送装置42に送り出され、次に、この搬送装置42は、印刷シートSを前当て57で位置決めした後、順次、印刷装置43に供給する。
【0092】
続いて、印刷装置43にて、4台の印刷ユニット61,62,63,64により印刷シートSに対して、黒、藍、紅、黄の4色の印刷が施される。このとき、各印刷ユニット61,62,63,64は、所定領域を除く部分に対して印刷を行い、印刷ユニット65は、この白紙の所定領域に対して印刷を行う。
【0093】
即ち、印刷ユニット65にて、インクジェットヘッド34は、複数のノズルから水性インキをブランケット胴31に向けて吹き付けることで、このブランケット胴31の表面に所定の画像を形成する。水性インキがブランケット胴31に付着してから印刷シートSに転写される間、ブランケット胴31に形成された画像(水性インキ)は、第1ランプ35からの赤外線(熱)により加熱乾燥される。
【0094】
一方、中間胴33は、印刷シートSを圧胴32に受け渡し、圧胴32により印刷シートSがブランケット胴31との対接位置に搬送される。そして、この印刷シートSが圧胴32により搬送されてブランケット胴31との対接位置に至ると、各胴31,32の間を加圧されながら通過するとき、ブランケット胴31の画像が印刷シートSに転写される。この場合、印刷シートSの画像(水性インキ)は、第1ランプ35からの赤外線により一次乾燥、つまり、半乾燥されることとなり、理想的な半乾燥状態を実現することができる。その後、圧胴32の回転に伴って移動する画像は、第2ランプ36からの紫外線により二次乾燥、つまり、本乾燥される。
【0095】
具体的に説明すると、ブランケット胴31の表面に形成された画像の水性インキは、第1ランプ35から赤外線が照射されることで、水性インキ中の水溶性溶媒が加熱されて蒸発し、ブランケット胴31の表面の水性インキは、顔料と紫外線硬化性樹脂のみとなる。そして、この顔料と紫外線硬化性樹脂からなる水性インキが印刷シートSに転写された後、印刷シートSに形成された画像の水性インキは、第2ランプ36から紫外線が照射されることで、水性インキ中の紫外線硬化性樹脂が硬化して硬化性樹脂となり、顔料を定着させる。
【0096】
なお、表面に画像が印刷シートSに転写したブランケット胴31は、クリーニングローラ37に接触することで、表面に残留した水性インキが除去される。
【0097】
その後、印刷装置43で印刷が施された印刷シートSは、この印刷装置43から排紙装置44に送り出され、チェーングリッパ71は印刷シートSの先端部を咥えながら搬送し、排紙台72上に積み上げていく。
【0098】
このように実施例5のオフセット枚葉印刷機にあっては、4色刷りのための各印刷ユニット61,62,63,64の下流側に印刷ユニット65を配設し、この印刷ユニット65として、回転可能な圧胴32と、この圧胴32に対接して同期して回転可能であると共に圧胴32との間に印刷シートSを挟んで搬送可能なブランケット胴31と、ブランケット胴31の表面に水性インキを吹き付けて画像を形成するインクジェットヘッド34と、インクジェットヘッド34によりブランケット胴31の表面に形成された画像に赤外線を照射して乾燥する第1ランプ35と、ブランケット胴31から印刷シートSに転移された画像に紫外線を照射して乾燥する第2ランプ36とを設けている。
【0099】
従って、インクジェットヘッド34によりブランケット胴31の表面に形成された画像は、第1ランプ35からの赤外線により一次乾燥されて印刷シートSに転移されるため、粘度が高い状態でブランケット胴31から印刷シートSに転移されることとなり、インキの粘度の向上によるドットゲイン安定性を向上することができると共に、インキのにじみを防止することができ、紙種による印刷精度の差異を抑制することができる。
【実施例6】
【0100】
図8は、本発明の実施例6に係る印刷装置を備えた枚葉印刷機を表す概略構成図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0101】
実施例6のオフセット枚葉印刷機は、図8に示すように、給紙装置41と搬送装置42と印刷装置43と排紙装置44とから構成されている。ここで、給紙装置41と搬送装置42と排紙装置44は、上述した実施例5と同様であり、印刷装置43のみ相違している。
【0102】
即ち、印刷装置43は、カラー印刷を実現できるように、黒(Black)、藍(Cyan)、紅(Magenta)、黄(Yellow)の4色に対応して4台の印刷ユニット61,62,63,64を有している。各印刷ユニット61,62,63,64は、ほぼ同様の構成をなし、且つ、上述した実施例5で説明した印刷装置43とほぼ同様の構成となっている。即ち、ブランケット胴61b,62b,63b,64bと圧胴61c,62c,63c,64cとを備えている。
【0103】
そして、各ブランケット胴61b,62b,63b,64bの外周辺には、4色に対応したインクジェットヘッド34a,34b,34c,34dが設けられている。ブランケット胴61b,62b,63b,64bには、第1ランプ35a,35b,35c,35dが設けられている。圧胴61c,62c,63c,64cの外周辺には、第2ランプ36a,36b,36c,36dが設けられている。
【0104】
従って、まず、給紙装置41の印刷シートSが搬送装置42を介して印刷装置43に供給されると、この印刷装置43にて、4台の印刷ユニット61,62,63,64により印刷シートSに対して、黒、藍、紅、黄の4色の印刷が施される。
【0105】
即ち、印刷ユニット61にて、インクジェットヘッド34aは、黒の水性インキをブランケット胴61bに向けて吹き付けることで、このブランケット胴61bの表面に所定の画像を形成する。水性インキがブランケット胴61bに付着してから印刷シートSに転写される間、ブランケット胴61bに形成された画像(水性インキ)は、第1ランプ35aからの赤外線(熱)により加熱乾燥される。
【0106】
一方、中間胴33は、印刷シートSを圧胴61cに受け渡し、圧胴61cにより印刷シートSがブランケット胴61bとの対接位置に搬送される。そして、この印刷シートSが圧胴61cに搬送されてブランケット胴61bとの対接位置に至ると、各胴61b,61cの間を加圧されながら通過するとき、ブランケット胴61bの画像が印刷シートSに転写される。その後、圧胴61cの回転に伴って移動する画像は、第2ランプ36aからの紫外線により二次乾燥、つまり、本乾燥され、黒色印刷が終了する。
【0107】
同様に、残り3台の印刷ユニット62,63,64により、藍、紅、黄の印刷が行われる。その後、印刷装置43で印刷が施された印刷シートSは、排紙装置44に送り出され、排紙台72上に積み上げられていく。
【0108】
このように実施例6のオフセット枚葉印刷機にあっては、4色刷りのための各印刷ユニット61,62,63,64として、圧胴61c,62c,63c,64cとブランケット胴61b,62b,63b,64bを対接可能に設け、ブランケット胴61b,62b,63b,64bの表面に水性インキを吹き付けて画像を形成するインクジェットヘッド34a,34b,34c,34dと、ブランケット胴61b,62b,63b,64bの表面の画像に赤外線を照射して乾燥する第1ランプ35a,35b,35c,35dと、印刷シートSの画像に紫外線を照射して乾燥する第2ランプ36a,36b,36c,36dとを設けている。
【0109】
従って、印刷ユニット61,62,63,64にて、インクジェットヘッド34a,34b,34c,34dによりブランケット胴61a,62b,63b,64bの表面に形成された画像は、第1ランプ35a,35b,35c,35dからの赤外線により一次乾燥されて印刷シートSに転移されるため、粘度が高い状態でブランケット胴61a,62b,63b,64bから印刷シートSに転移されることとなり、インキの粘度の向上によるドットゲイン安定性を向上することができると共に、インキのにじみを防止することができ、紙種による印刷精度の差異を抑制することができる。
【実施例7】
【0110】
図9は、本発明の実施例7に係る印刷装置を備えた輪転印刷機を表す概略構成図である。
【0111】
実施例7のオフセット輪転印刷機は、水性インキを用いた輪転印刷機であって、図9に示すように、給紙装置81と、インフィード装置82と、印刷装置83と、乾燥装置84と、冷却装置85と、ウェブパス装置86と、折り装置87と、排紙装置88とから構成されている。
【0112】
給紙装置81は、2つの巻取体(ウェブロール)が装着されるリールスタンドを有しており、一方の巻取体から引き出されて走行しているウェブ(印刷媒体)Wを、他方の巻取体のウェブWに接続することで、連続的にウェブを供給可能な紙継装置を有している。インフィード装置82は、給紙装置81のウェブWを印刷装置83側に供給するものである。
【0113】
印刷装置83は、4色のインキ(黒、藍、紅、黄)ごとの4個の印刷ユニット91,92,93,94と、後述するインクジェットヘッドを用いた印刷を行う印刷ユニット95がウェブ走行方向に沿って並設されて構成されている。各印刷ユニット91,92,93,94は、ウェブWの表面及び裏面に同時に印刷する両面印刷機であって、使用するインキの色(黒、藍、紅、黄)が相違するだけで、その構成はほぼ同様のものとなっている。即ち、各印刷ユニット91,92,93,94は、インキつぼとインキ元ローラと受渡しローラと練ローラと往復ローラとインキ着ローラと版胴とブランケット胴とが直列に対接して回転自在に支持される構成が、上下対称に配設されている。そして、対向するブランケット胴の間にウェブWが通過するときに、各ブランケット胴からウェブWの表裏にインキ(印刷画像)が転写される。
【0114】
また、印刷ユニット95は、上述した実施例1で説明した印刷装置13とほぼ同様の構成となっている。即ち、上ブランケット胴101と下ブランケット胴102が上下に対接して回転自在に支持されており、各ブランケット胴101,102の間にウェブWが挟持されて搬送される。なお、本実施例では、印刷ユニット95が両面印刷機であることから、ブランケット胴101にとってブランケット胴102が本発明の印刷体であり、ブランケット胴102にとってブランケット胴101が本発明の印刷体として機能する。
【0115】
ブランケット胴101,102の外周辺には、ブランケット胴101,102の表面に水性インキを吹き付けて画像を形成するインクジェットヘッド103,104が設けられている。そして、ブランケット胴101,102の外周辺には、ブランケット胴101,102に形成された画像(水性インキ)を乾燥する第1乾燥装置としての第1ランプ105,106が設けられている。ブランケット胴101,102の対接部より下流側には、ブランケット胴101,102からウェブWの印刷面に転写された画像(水性インキ)を乾燥する第2乾燥装置としての第2ランプ107,108が設けられている。また、ブランケット胴101,102の外周辺には、ブランケット胴101,102の表面を洗浄するクリーニングローラ(洗浄装置)109,110が設けられている。
【0116】
乾燥装置84は、印刷装置83により印刷が施されたウェブW上のインキを乾燥させるためのものであり、冷却装置85は、乾燥装置84での乾燥後の過剰な熱を蓄えるウェブWを適当な温度まで冷却するものである。ウェブパス装置86は、乾燥されて冷却されたウェブWを搬送するものであり、折り装置87は、ウェブWを縦折りされた後に裁断し、所定の大きさに折り畳んで折帖を形成するものであり、排紙装置88は、折り畳まれた折帖を機外へ搬出するものである。
【0117】
ここで、このように構成された実施例7のオフセット輪転印刷機による印刷方法について説明する。
【0118】
まず、給紙装置81により巻取体からロール状のウェブWが引き出され、インフィード装置82により印刷装置83に供給される。続いて、印刷装置83にて、4台の印刷ユニット91,92,93,94によりウェブWに対して、黒、藍、紅、黄の4色の印刷が施される。このとき、各印刷ユニット91,92,93,94は、所定領域を除く部分に対して印刷を行い、印刷ユニット95は、この白紙の所定領域に対して印刷を行う。
【0119】
即ち、印刷ユニット95にて、インクジェットヘッド103,104は、水性インキをブランケット胴101,102に向けて吹き付けることで、このブランケット胴101,102の表面に所定の画像を形成する。水性インキがブランケット胴101,102に付着してからウェブWに転写される間、ブランケット胴101,102に形成された画像(水性インキ)は、第1ランプ105,106からの赤外線(熱)により加熱乾燥される。
【0120】
一方、搬送されるウェブWは、上下のブランケット胴101,102の対接位置に搬送されると、各胴101,102の間を加圧されながら通過するとき、各ブランケット胴101,102の画像がウェブWに転写される。このとき、ウェブWに転写された画像(水性インキ)は、第1ランプ105,106からの赤外線により乾燥(一次乾燥、半乾燥)されている。その後、ウェブWの搬送に伴って移動する画像は、第2ランプ107,108からの紫外線により二次乾燥、つまり、本乾燥される。
【0121】
なお、表面に画像がウェブWに転写した各ブランケット胴101,102は、クリーニングローラ109,110に接触することで、表面に残留した水性インキが除去される。
【0122】
その後、印刷装置83で印刷が施されたウェブWは、この印刷装置83から乾燥装置84に送られ、ここでインキが乾燥され、冷却装置85で冷却され、ウェブパス装置86を経て搬送された折り装置87により折帖が作成され、排紙装置88により搬出される。
【0123】
このように実施例7のオフセット輪転印刷機にあっては、4色刷りのための各印刷ユニット91,92,93,94の下流側に印刷ユニット95を配設し、この印刷ユニット95として、互いに対接して同期して回転可能であると共に間にウェブWを挟んで搬送可能なブランケット胴101,102と、ブランケット胴101,102の表面に水性インキを吹き付けて画像を形成するインクジェットヘッド103,104と、ブランケット胴101,102の表面の画像に赤外線を照射して乾燥する第1ランプ105,106と、ウェブWの画像に紫外線を照射して乾燥する第2ランプ107,108とを設けている。
【0124】
従って、印刷ユニット95にて、インクジェットヘッド103,104によりブランケット胴101,102の表面に形成された画像の水性インキは、第1ランプ105,106からの赤外線により一次乾燥されてウェブWに転移されるため、粘度が高い状態でブランケット胴101,102からウェブWに転移されることとなり、インキの粘度の向上によるドットゲイン安定性を向上することができると共に、インキのにじみを防止することができ、紙種による印刷精度の差異を抑制することができる。
【実施例8】
【0125】
図10は、本発明の実施例8に係る印刷装置を備えた輪転印刷機を表す概略構成図である。なお、前述した実施例7で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0126】
実施例8のオフセット輪転印刷機は、水性インキを用いた輪転印刷機であって、図10に示すように、給紙装置81と、インフィード装置82と、印刷装置83と、乾燥装置84と、冷却装置85と、ウェブパス装置86と、シーター89とから構成されている。即ち、実施例8のオフセット輪転印刷機は、実施例7のオフセット輪転印刷機における折り装置87及び排紙装置88に代えて、シーター89を設けており、その他の構成は同様となっている。この場合、シーター89は、ウェブWを所定の長さで裁断し、積み重ねて排紙するものである。
【0127】
なお、実施例8のオフセット輪転印刷機による印刷方法は、シーター89による印刷後のウェブWの処理が異なるだけで、給紙装置81、インフィード装置82、印刷装置83、乾燥装置84、冷却装置85、ウェブパス装置86により処理は同様であるため、説明は省略する。また、印刷装置83(印刷ユニット95)による作用効果も同様であることから、この説明も省略する。
【0128】
なお、上述した実施例7、8にて、乾燥装置84は、ウェブWを加熱して乾燥するものであることから、この乾燥装置84に第2乾燥装置(第2ランプ107,108)の機能を代用させることで、第2ランプ107,108をなくしてもよい。また、上述した実施例5〜8では、本発明の印刷装置を、オフセット枚葉印刷機やオフセット輪転印刷機における印刷装置の一部または全部として構成したが、その構成に限定されるものではなく、印刷形態に応じて適宜設定すればよいものである。また、上述した各実施例では、両面印刷機または片面印刷機として構成したが、いずれの印刷機でもよい。
【0129】
また、上述した各実施例では、転写体としてブランケット胴を適用し、印刷体及び搬送体として圧胴を適用したが、これらの構成に限定されるものではなく、各胴に代えて無端ベルトを適用してもよい。
【0130】
また、上述した各実施例では、水性インキを、顔料、紫外線硬化性樹脂、ビヒクル成分、触媒、添加剤、水溶性溶媒などから成分構成し、第1ランプからの赤外線により水溶性溶媒を加熱蒸発して乾燥させるようにしたが、この構成に限定されるものではない。例えば、水性インキの成分として、水溶性溶媒に代えて熱硬化性樹脂を適用し、第1ランプからの赤外線により熱硬化性樹脂を加熱硬化して乾燥させるようにしてもよい。
【0131】
このインキの組成例としては、水を主成分とし、顔料等の着色成分と、有機成分やグリセロール類などの助剤などから構成されている。UV硬化インキの組成例としては、光重合性樹脂を主成分とし、光重合開始剤、着色料、助剤などから構成されている。即ち、本発明で使用するインキは、熱乾燥または熱硬化インキの乾燥または硬化するための成分と、UV乾燥またはUV硬化するための成分が含まれていればよい。また、第1の加熱乾燥により、第1の加熱乾燥により水分だけが乾燥し、UV硬化成分は硬化せずに残り適度な粘着力を有し、印刷媒体に付着後、第2の紫外線照射装置で完全に硬化することができるよう調整されているインキであることが好ましい。本発明で使用するインキは、これらの機能を満たすよう、公知の熱乾燥または熱硬化インキと、公知のUV乾燥またはUV硬化インキの成分から、適宜、選択すればよい。
【0132】
なお、以下にインキの組成として一例を示す。なお、ここで、「部」は、質量基準である。
(顔料分散液の調製)
顔料15部に対して、樹脂ワニスを15部、水を69部及びトリエチレンジアミンを1部加え、十分にミキサーで攪拌混合を行なった後、ビーズミルを使用し、平均粒子径が0.2μm以下になるまで分散した。その後、平均粒径が5μm以上の粗粒子をろ過して取り除き、顔料分散液を得た。顔料には、カラー・インデックス・ナンバーのPigmentYellow74、PigmentRed122、PigmentBlue15:3、PigmentBlack7を使用した。なお、樹脂ワニスは、JONCRYL 67(BASF社製。JONCRYLは登録商標)30部、トリエチレンジアミン10部、水60部の組成である。
(インクの調製)
上記の顔料分散液を用いて、下記組成で常法に従って、インクジェット用のインキを調製した。処方中のポリエチレングリコールジアクリレートは紫外線硬化化合物であり、nの数はグリコールの繰り返しの数である。IRGACURE 2959(BASF社製。IRGACUREは登録商標。「IRGACURE 2959」は、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシー2―メチルー1―プロパンー1―オン)は紫外線硬化開始剤である。なお、紫外線硬化開始剤と、pH調整剤として用いたトリエチレンジアミンは他の成分を予め混ぜた後に添加した。
[インク組成]
・上記顔料分散液 20部
・JONCRYL 67 5部
・水 50部
・プロピレングリコール 20部
・トリエチレンジアミン 0.5部
・ポリエチレングリコールジアクリレート(n=4) 5部
・IRGACURE 2959 0.5部
【0133】
また、上述した各実施例では、印刷媒体を、枚葉紙としての印刷シートS、連続紙としてのウェブWとしたが、印刷用紙に限らず、樹脂フィルム、鋼板シートなどであってもよい。
【0134】
また、本発明に係る印刷装置は、インキを転写体を介して印刷媒体に転写してもよいし、インキを直接印刷媒体に吹き付けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明に係る印刷装置及び印刷方法並びに輪転印刷機、印刷機は、インキに赤外線を照射して乾燥する第1乾燥装置と、インキに紫外線を照射して乾燥する第2乾燥装置とを設けることで、印刷媒体の種類に拘わらず印刷精度の向上を可能とするものであり、オフセット、グラビア、フレキソなどいずれの印刷機にも適用することができる。
【符号の説明】
【0136】
11,41 給紙装置
12,42 搬送装置
13,43 印刷装置
14,44 排紙装置
31 ブランケット胴(転写体)
32 圧胴(印刷体、搬送体)
34,34a,34b,34c,34d インクジェットヘッド
35,35a,35b,35c,35d,39,40 第1ランプ(第1乾燥装置)
36,36a,36b,36c,36d 第2ランプ(第2乾燥装置)
37 クリーニングローラ(洗浄装置)
38 予熱ランプ(予熱装置)
61,62,63,64,65 印刷ユニット(印刷装置)
81 給紙装置
82 インフィード装置
83 印刷装置
84 乾燥装置
85 冷却装置
86 ウェブパス装置
87 折り装置
88 排紙装置
89 シーター
95 印刷ユニット(印刷装置)
101,102 ブランケット胴(印刷胴)
103,104 インクジェットヘッド
105,106 第1ランプ(第1乾燥装置)
107,108 第2ランプ(第2乾燥装置)
S 印刷シート(印刷媒体)
W ウェブ(印刷媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱乾燥または熱硬化する成分と紫外線乾燥または紫外線硬化する成分とを含むインキを吹き付けて画像を形成するインクジェットヘッドと、
該インクジェットヘッドから吹き付けられた前記インキを加熱乾燥または加熱硬化する第1乾燥装置と、
前記インキに紫外線を照射して紫外線乾燥または紫外線硬化する第2乾燥装置と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記第2乾燥装置は、加熱乾燥または加熱硬化した前記インキに対して紫外線を照射して紫外線乾燥または紫外線硬化することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
回転可能な印刷体と、該印刷体に対接して同期移動可能であると共に前記印刷媒体を挟んで搬送可能な転写体とを設け、前記インクジェットヘッドから吹き付けられる前記インキは、前記転写体の表面に吹き付けられることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記第1乾燥装置は、前記転写体の外周面に対向して配設されて前記インクジェットヘッドから前記転写体の外周面に吹き付けられた前記インキを加熱乾燥または加熱硬化することを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
印刷媒体を保持して搬送可能な搬送体と、
該搬送体が保持した前記印刷媒体の表面にインキを吹き付けて画像を形成するインクジェットヘッドと、
該インクジェットヘッドから吹き出された前記インキを加熱乾燥または加熱硬化する第1乾燥装置と、
前記印刷媒体の表面に吹き付けられた前記インキに紫外線を照射して紫外線乾燥または紫外線硬化する第2乾燥装置と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
移動する転写体の表面にインキを吹き付けて画像を形成し、
前記転写体に吹き付けられた前記インキを加熱乾燥または加熱硬化し、
前記転写体と同期移動する印刷体との間に印刷媒体を挟んで搬送するときに前記転写体の前記インキを前記印刷媒体に転写し、
該印刷媒体に転写された前記インキに紫外線を照射して紫外線乾燥または紫外線硬化させる、
ことを特徴とする印刷方法。
【請求項7】
搬送される印刷媒体の表面に向けてインキを吹き出し、
吹き出された前記インキを加熱乾燥または加熱硬化し、
前記印刷媒体の表面に吹き付けられた前記インキに紫外線を照射して紫外線乾燥または紫外線硬化させる、
ことを特徴とする印刷方法。
【請求項8】
給紙台上に積み重ねられた枚葉紙を吸引して送り出す給紙装置と、
該給紙装置から送り出された枚葉紙を圧胴とブランケット胴との間に挟んで搬送すると共に前記ブランケット胴に形成された画像を枚葉紙に転写して印刷を行う印刷装置と、
該印刷装置で印刷が施された枚葉紙を排紙台に積み重ねて排紙する排紙装置と、
を備える枚葉印刷機において、
前記印刷装置は、
前記ブランケット胴の表面にインキを吹き付けて画像を形成するインクジェットヘッドと、
該インクジェットヘッドから吹き付けられた前記インキを加熱乾燥または加熱硬化する第1乾燥装置と、
前記ブランケット胴からウェブに転写された前記インキに紫外線を照射して紫外線乾燥または紫外線硬化する第2乾燥装置と、
を有することを特徴とする印刷機。
【請求項9】
巻取紙からウェブを供給する給紙装置と、
該給紙装置から繰り出されたウェブを圧胴とブランケット胴との間に挟んで搬送すると共に前記ブランケット胴に形成された画像をウェブに転写して印刷を行う印刷装置と、
該印刷装置により印刷されたウェブを裁断して折り曲げることで折帖を形成する折り装置と、
該折り装置により形成された折帖を排紙する排紙装置と、
を備える輪転印刷機において、
前記印刷装置は、
前記ブランケット胴の表面にインキを吹き付けて画像を形成するインクジェットヘッドと、
該インクジェットヘッドから吹き付けられた前記インキを加熱乾燥または加熱硬化する第1乾燥装置と、
前記ブランケット胴から前記印刷媒体に転写された前記インキに紫外線を照射して紫外線乾燥または紫外線硬化する第2乾燥装置と、
を有することを特徴とする輪転印刷機。
【請求項10】
印刷媒体を供給する給紙装置と、
該給紙装置から繰り出された印刷媒体を圧胴とブランケット胴との間に挟んで搬送すると共に前記ブランケット胴に形成された画像を印刷媒体に転写して印刷を行う複数の印刷装置と、
該印刷装置により印刷された印刷媒体を排紙する排紙装置と、
を備える印刷機において、
前記印刷装置は、刷版を用いて印刷を行う第1印刷装置と、インクジェットヘッドを用いて印刷を行う第2印刷装置を有し、
該第2印刷装置は、前記インクジェットヘッドから前記ブランケット胴の表面に吹き付けられた前記インキを加熱乾燥または加熱硬化する第1乾燥装置と、
前記ブランケット胴から前記印刷媒体に転写された前記インキに紫外線を照射して紫外線乾燥または紫外線硬化する第2乾燥装置と、
を有することを特徴とする印刷機。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−111123(P2012−111123A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261842(P2010−261842)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(310016522)三菱重工印刷紙工機械株式会社 (75)
【Fターム(参考)】