説明

印字ヘッド機構

【課題】フラップ4により媒体9を押し付け、印字ヘッド2により印字する印字ヘッド機構において、装置の長寿命化を可能とするとともに、印字処理時間を短縮し、装置を小型化できるようにする。
【解決手段】ローラ2aを備えた印字ヘッド部2と、前記印字ヘッド部2に対向する位置に配置したプラテン3と、前記ローラ2aを乗り上げさせて媒体9をプラテン3側に押し付けるフラップ4と、を備え、前記印字ヘッド部2により前記媒体9に印字する印字ヘッド機構において、前記フラップ4は、搬送幅方向の端部に前記プラテン3側に曲げた曲げ部4cを備え、前記プラテン3は、前記曲げ部4cに対向する位置に溝部3xを設けるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラップにて媒体を押さえて印字する印字ヘッド機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、伝票や通帳などの媒体に印字処理を行う印字ヘッド機構では、インクリボンと媒体との接触により媒体が汚れることを防止するために印字ヘッドと媒体間に所定のギャップを確保して印字するようになっている。そして、印字ヘッドに衝撃が加わらないようにするために、媒体ガイドとして印字ヘッドローラを備え、印字ヘッドローラにより媒体を上から押さえながら印字する技術はあった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
或いは、上記のように印字ヘッドローラにより媒体を直接押し付けるのではなく、図4に示したようにフラップ94を設け、媒体9を吸入するために必要な所定の隙間が確保されるようにし、一方、印字等の際に、印字ヘッド2hの退避位置から矢印Bのように移動する印字ヘッド部2に備えた印字ヘッドローラ2aをフラップ94上に乗り上げさせて媒体9を上から押さえて印字ヘッド2hと媒体9間に所定のギャップを確保して印字する技術はあった。
【0004】
そして、フラップ94の材料としては、搬送幅方向端部(破線x部)にて印字ヘッド部2の印字ヘッドローラ2aをフラップ94上にスムーズに乗り上げさせるとともに、搬送幅方向端部(破線x部)のフラップ94上に印字ヘッド部2がある場合でも媒体9が矢印Aのように吸入されたときに同図(b)のようにフラップ94の傾斜部94aにガイドされフラップ94を持上げて媒体9を吸入できるようにするために、マイラフィルム等の柔軟性のある材料が用いられていた。
【0005】
ところが、マイラフィルム等の柔軟性のある材料は寿命が短く、頻繁に交換するための作業が発生するため、長寿命化が可能なステンレス等の材料を用いたフラップ94の採用が検討され、印字ヘッド部2をフラップ94に乗り上げさせる際にフラップ94の端部(x部)に印字ヘッドローラ2aが引っ掛からないように、また、印字ヘッド部2がフラップ94上にある状態でも媒体9を吸入させるための間隔を確保できるようにするために、図5の矢印Cのように印字ヘッド部2が徐々にフラップ94に乗り上げるようなフラップ形状を採用していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−271398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記長寿命化が可能なステンレス等の材料を用いたフラップ94を用いた従来の印字ヘッド機構では、印字ヘッド部2をフラップ94上に乗り上げさせるための移動距離Lx(図5(c))が必要となり、装置の小型化の妨げとなるとともに、移動距離Lxを印字ヘッド部2が移動する時間が余分な処理時間として発生してしまうという問題が発生していた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前述の課題を解決するために次の構成を採用する。すなわち、媒体ガイドを備えた印字ヘッド部と、前記印字ヘッド部に対向する位置に配置したプラテンと、前記媒体ガイドを乗り上げさせて媒体をプラテン側に押し付けるフラップと、を備え、前記印字ヘッド部により前記媒体に印字する印字ヘッド機構において、前記フラップは、搬送幅方向の端部に前記プラテン側に曲げた曲げ部を備え、前記プラテンは、前記曲げ部に対向する位置に溝部を設けるようにした。
【発明の効果】
【0009】
本発明の印字ヘッド機構によれば、以上のように構成したので、装置の長寿命化が可能であるとともに、印字ヘッド部を乗り上げさせるための余分な長さが不要となり、印字処理時間を短縮でき、装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1の印字ヘッド機構の構成図である。
【図2】実施例1の印字ヘッド機構のa部拡大図である。
【図3】実施例1の印字ヘッド機構の動作説明図(前面図)である。
【図4】従来の印字ヘッド機構の構成および動作説明図である。
【図5】従来の印字ヘッド機構の構成および動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて本発明に係わる実施の形態例を説明する。図面に共通する要素には同一の符号を付す。
【実施例1】
【0012】
(構成)
図1は実施例1の印字ヘッド機構の構成図であり、図2は図1のa部拡大図である。同図に示したように、実施例1の印字ヘッド機構部は、フラップ4の両端部(a部、b部)に、印字ヘッド部2が引っ掛かることを防止するための曲げ部4cを設け、矢印Bのように移動する印字ヘッド部2の媒体ガイドとして印字ヘッドローラ2aによってフラップ4が矢印Dのように移動可能とし、フラップ4が矢印Dのように押し下げられたときに曲げ部4cがプラテン3にぶつからないようにプラテン3に溝部3xを設けた構成となっている。なお、本実施例における曲げ部4cの溝部3xに入り込む終端部分は、フラップ4の媒体9を押さえる並行部分に対して垂直となるまで曲げて構成するものとしているが、印字ヘッドローラ2aがフラップ4に乗り上げ可能な曲げ部4cとなるようにすればよいため、曲げ部4cの終端部分はフラップ4の並行部分に対して垂直でなくともよい。また、曲げ部4cはフラップ4のa部、b部いずれかの端部のみに設けるようにしてもよい。
【0013】
その他の構成は、従来の印字ヘッド機構の構成と同様であるので、簡略化のためにその詳細な説明は省略する。
【0014】
(動作)
以上の構成にて実施例1の印字ヘッド機構は、以下のように動作する。この動作を前出の図1、図2および図3の動作説明図を用いて以下詳細に説明する。
【0015】
まず、媒体9を吸入するときは、フラップ4は、媒体9を容易に吸入できるように下側から図示しない持上機構により持ち上げ、媒体9と所定の隙間が設けられて配置される。そして、媒体9が吸入され、印字が開始されるときは、フラップ4は、前記持上機構が解除され、図示しない付勢手段により下側に付勢されて図3(a)に示した状態となる。
【0016】
そして、図3(b)に示したように、印字ヘッド部2が矢印B方向に移動し、フラップ4の曲げ部4cに当接すると、フラップ4は、矢印Dのように下側に押し下げられ、媒体9を押さえる。このとき、曲げ部4cは、プラテン3に設けられた溝部3xに入り込み、プラテン3にぶつからない。
【0017】
さらに、図3(c)のように、印字ヘッド部2が矢印B方向に移動すると、印字ヘッド部2は、曲げ部4cにより、引っ掛ることなくスムーズにフラップ4に乗り上げる。
【0018】
なお、図示していないが、印字ヘッド部2が図1のb部側にあるときも同様に、フラップ4の端部に備えた曲げ部4cによって印字ヘッド部2が引っ掛ることなくフラップ4に乗り上げる。
【0019】
以上の実施例1の印字ヘッド機構の説明では、フラップ4の両端部の曲げを逃がすために、プラテン3に溝部3xを設けるように説明したが、フラップ4の曲げ部4cに対向する位置周辺をゴムのような柔軟性のある材料とし、曲げ部4cの矢印D方向への移動を吸収できるようにしてもよい。
【0020】
また、以上の実施例1の印字ヘッド機構の説明では、印字ヘッド部2に媒体ガイドとして印字ヘッドローラ2aを備え印字ヘッド2hと媒体9間に所定のギャップを確保した印字ヘッド機構として説明したが、媒体ガイドとしてヘッドプロテクタのような固定部材を備えた構成の印字ヘッド機構にも本発明を提供することができる。
【0021】
(実施例1の効果)
以上のように実施例1の印字ヘッド機構によれば、フラップの端部に印字ヘッド部が引っ掛かることを防止するための曲げ部を設け、プラテンの前記曲げ部に対向する位置に溝部を設けるようにしたので、装置の長寿命化が可能であるとともに、印字ヘッド部を乗り上げさせるための余分な長さが不要となり、印字処理時間を短縮でき、装置を小型化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
以上述べたように、本発明は、フラップにて媒体を押さえて印字する印字ヘッド機構に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0023】
2 印字ヘッド部
2a 印字ヘッドローラ
2h 印字ヘッド
3 プラテン
3x 溝部
4、94 フラップ
4c 曲げ部
5 搬送路
9 媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体ガイドを備えた印字ヘッド部と、前記印字ヘッド部に対向する位置に配置したプラテンと、前記媒体ガイドを乗り上げさせて前記印字ヘッド部とプラテン間に吸入した媒体をプラテン側に押し付けるフラップと、を備え、前記印字ヘッド部により前記媒体に印字する印字ヘッド機構において、
前記フラップは、搬送幅方向の端部に前記プラテン側に曲げた曲げ部を備え、
前記プラテンは、前記曲げ部に対向する位置に溝部を設けるようにしたことを特徴とする印字ヘッド機構。
【請求項2】
前記媒体ガイドは印字ヘッド近傍に備えた印字ヘッドローラであることを特徴とする請求項1記載の印字ヘッド機構。
【請求項3】
前記曲げ部は、前記フラップの搬送幅方向の両端部に設けるようにしたことを特徴とする請求項1記載の印字ヘッド機構。
【請求項4】
前記プラテンは、前記曲げ部に対向する位置の材料を柔軟性のある材料としたことを特徴とする請求項1記載の印字ヘッド機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−107290(P2013−107290A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254264(P2011−254264)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】