説明

即席春雨及びその製造方法

【課題】湯戻しが早く、湯伸びが抑制され、かつ太くて喫食による満足感のある即席春雨及びその製造方法を提供する。
【解決手段】デンプンを主原料とする即席春雨であって、以下の(1)〜(4)の特性を有する即席春雨:
(1)デンプンとして、馬鈴薯でん粉、甘藷デンプン、トウモロコシデンプン、エンドウデンプン、タピオカデンプン及び小麦デンプンからなる群から選ばれる少なくとも1種を70〜90重量%と、緑豆でん粉30〜10重量%を含み、
(2)気泡を含む半透明ないし不透明の外観を有し、
(3)乾燥製品の太さが1.2〜2.4mmであり、
(4)乾燥製品の密度が0.80g/cm3〜1.25g/cm3である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯戻し後に喫食される即席春雨及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カップなどの容器に入った即席春雨は、お湯を入れて3分程度で食されるため、短時間で湯戻しが完全に行われる必要があり、1mm以下の細い春雨が使用されていた。
【0003】
このような細い春雨は、食べ応えがなく、湯伸びしやすいために、実際には湯伸びした春雨を食することが多かった。
【0004】
春雨を太くすると、ラーメンやパスタのような麺を食べることによる満足感が得られるが、太い春雨は、短時間の湯戻しが必要とされない煮込み用では使用できても、即席春雨では使用できなかった。
【0005】
春雨について、幾つかの特許文献が知られている。
【特許文献1】特開2006−141279
【特許文献2】特開2007−14355
【特許文献3】特開2000−23630
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、湯戻しが早く、湯伸びが抑制され、かつ太くて喫食による満足感のある即席春雨及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題に鑑み検討を重ねた結果、即席春雨の生地の製造時に気泡を抱き込ませ、気泡を保持した状態で乾燥して太い即席春雨を製造することで、良好な湯戻しと湯伸びの抑制を両立させ、製造時の即席春雨の破断を防止し、かつ、ラーメンやパスタのような麺を喫食したときと同様な満足感が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
本発明は、以下の即席春雨及びその製造方法を提供するものである。
項1. デンプンを主原料とする即席春雨であって、以下の(1)〜(4)の特性を有する即席春雨:
(1)デンプンとして、馬鈴薯でん粉、甘藷デンプン、トウモロコシデンプン、エンドウデンプン、タピオカデンプン及び小麦デンプンからなる群から選ばれる少なくとも1種を70〜90重量%と、緑豆でん粉30〜10重量%を含み、
(2)気泡を含む半透明ないし不透明の外観を有し、
(3)乾燥製品の太さが1.2〜2.4mmであり、
(4)乾燥製品の密度が0.80g/cm3〜1.25g/cm3である。
項2. 春雨の主原料であるデンプンが、馬鈴薯でん粉70〜90重量%と、緑豆でん粉30〜10重量%から構成される項1に記載の即席春雨。
項3. デンプンとして緑豆でん粉を10〜20重量%含む、項1又は2に記載の即席春雨。
項4. カルシウムをさらに含む、項1〜3のいずれかに記載の即席春雨。
項5. 春雨の断面が円形で、断面の直径が1.2mm〜2.2mmである、項1〜4のいずれかに記載の即席春雨。
項6. さらに吸水性物質を含む、項1〜5のいずれかに記載の即席春雨。
項7. 吸水性物質がパンプキンパウダーである項6に記載の即席春雨。
項8. 馬鈴薯でん粉、甘藷デンプン、トウモロコシデンプン、エンドウデンプン、タピオカデンプン及び小麦デンプンからなる群から選ばれる少なくとも1種を70〜90重量%と、緑豆でん粉30〜10重量%を含むデンプンと水、必要に応じてさらにカルシウム、吸水性物質などの添加剤を添加し、気泡を含むように混練して生地を作成し、乾燥後の製品の太さが1.2〜2.4mmになるように線状に成形することを特徴とする項1〜7のいずれかで定義された即席春雨の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の即席春雨は、3分程度の短時間での湯戻しが可能であり、湯戻し後の歯切れもよい。また、湯戻し後、湯に長時間浸漬しても湯伸びが起こりにくく、パスタのようなぷりぷりした弾力性のある食感が長時間持続する。
【0010】
本発明によれば、ラーメンやパスタなどの生麺に類似したコシがあり、喫食による満足感が得られ、かつ低カロリーの食品が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の特徴は、春雨に気泡を抱き込ませることで、麺を太くしてラーメンやパスタのような満足感が得られるだけでなく、熱湯中で10分以内(例えば1〜5分、特に3分程度)で完全に湯戻しが行われ、かつ、湯伸びが抑制でき、長時間おいしく食べられることを見出した点にある。
【0012】
本発明の即席春雨は、湯戻し前の乾燥時に太さが市販の即席春雨の倍程度である1.2〜2.4mm、好ましくは1.4〜2.2mm程度にしても、短時間で湯戻しが可能であり、かつ、弾力性に富む食感の春雨が得られる。本発明の即席春雨は、春雨組織にエアを抱きこみ、ポーラスな組織とすることで、春雨の表面積が大きくなり、春雨が太くても湯戻ししやすくなると考えられる。また、気泡を抱き込むことで、戻りが良いだけでなく、逆に内部の気泡が邪魔をして、熱湯に浸漬した状態で水分が入りにくくなるために、湯伸びが抑制され、湯戻し後においてもぷりぷりした食感が持続することになる。
【0013】
気泡を抱き込んだ即席春雨が従来の1mm以下の直径を有する細い春雨であると、乾燥後の強度が弱くなり、破断しやすくなり商品化が困難になる。
【0014】
本発明では、即席春雨において、麺の太麺化と気泡の抱き込みを同時に行うことで、食感、湯戻し、湯伸びの3つの条件を全て満足し、かつ、製造も容易な春雨とすることが可能になった。
【0015】
本明細書において、「即席春雨」とは、春雨を含む容器内に熱湯を入れて10分程度以下(例えば1〜5分程度、好ましくは3分程度)で湯戻しが可能な春雨を指す。
【0016】
春雨は、デンプンが主原料の食品である。本発明の春雨は、デンプンとして(1)緑豆澱粉と、(2) その他の澱粉(馬鈴薯でん粉、甘藷デンプン、トウモロコシデンプン、エンドウデンプン、タピオカデンプン及び小麦デンプンからなる群から選ばれる少なくとも1種)を使用する。緑豆澱粉以外の澱粉としては、好ましくは馬鈴薯でん粉、甘藷デンプン、トウモロコシデンプン、エンドウデンプンが用いられ、特に馬鈴薯でん粉が好ましく使用される。
【0017】
澱粉中の緑豆澱粉とその他の澱粉の使用割合は、通常30〜10重量%程度(緑豆澱粉):70〜90重量%程度(その他の澱粉)、好ましくは20〜10重量%程度(緑豆澱粉):80〜90重量%程度(その他の澱粉)である。本発明では、緑豆澱粉が多すぎると(例えば50重量%以上)歯切れが悪くなり、湯戻しにも時間がかかるようになるため好ましくない。一方、緑豆澱粉が少なすぎると(例えば5重量%以下)製造時に線状に成形したときに破断しやすくなり、工業的な生産ができなくなる。
【0018】
春雨は、通常製造時に脱気することにより透明な外観を有するが、本発明の即席春雨は、積極的に気泡を抱き込ませる点に特徴を有し、従来の脱気工程は行わない。気泡を含むために、本発明の即席春雨は半透明ないし不透明な外観を呈する。なお、この外観は、カルシウムや吸水性物質などの添加剤によっても影響を受ける。
【0019】
即席春雨の気泡の大きさは、特に制限されないが、通常の脱気工程を有する春雨の乾燥製品の密度は、1.43g/cm3〜1.70g/cm3程度である。本発明の即席春雨の密度は、通常
0.80g/cm3〜1.25g/cm3程度、好ましくは0.91g/cm3〜1.18g/cm3程度である。
【0020】
密度が大きすぎると湯戻しや湯伸びについての本発明の十分な効果が得られなくなり、密度が小さすぎると製造時に破断しやすくなり、コシのある食感が得られにくくなる。
【0021】
本発明に用いる春雨の密度は、下記の方法によって測定した値である。
密度の測定法
乾燥春雨10gを精秤(Xg)し、これを水を入れた200ml容メスシリンダーに入れて完全に沈ませその時の目盛りの増加量(Ycm3)を測定し、下記式により密度を求める。
密度=X/Yg/cm3
春雨の太さは、1.2〜2.4mm、好ましくは1.3〜2.3mm程度、より好ましくは1.4〜2.2mm程度、特に1.4〜1.8mm程度である。春雨の太さは、食感、乾燥春雨の強度(製造の容易さ)、湯戻しと湯伸びの時間の全てに影響する。春雨の麺の太さは、例えばマイクロメーターにより測定できる。
【0022】
本発明の即席春雨は、固形分として澱粉のみから構成されていてもよいが、カルシウム、吸水性物質、かんすい、着色剤、香料、酸化防止剤、アミノ酸、無機塩、有機酸などの種々の添加剤が添加できる。吸水性物質としてはパンプキンパウダー、コーンパウダー、キャロットパウダー、ほうれんそうパウダー、サツマイモパウダー等の野菜類および、コンブパウダー、ワカメパウダー、ヒジキパウダー等の海藻類などが挙げられる。吸水性物質は、食感がやわらかくなるために、緑豆澱粉とともに配合量を調整することで、春雨の物性を調整することができる。カルシウムは、湯戻し後の春雨の食感を弾力性のあるぷりぷりしたものにするために役立つ。カルシウムとしては、炭酸カルシウム、未焼成カルシウム、焼成カルシウムなどが挙げられる。
【0023】
カルシウムの配合量は、3%以下、好ましくは1〜2%程度であり、パンプキンパウダーなどの吸水性物質の配合量は、3%以下、好ましくは1〜2%程度である。
【0024】
即席春雨の製造は、緑豆澱粉と、その他の澱粉(馬鈴薯澱粉、甘藷デンプン、トウモロコシデンプン、エンドウデンプン、タピオカデンプン及び小麦デンプンなど、好ましくは馬鈴薯澱粉)を所定量配合し、これに必要に応じてカルシウム、吸水性物質などの添加剤を水とともに混合して混練する。このとき、混練した生地に気泡が抱き込まれるように(得られた春雨が半透明ないし不透明になるように)混練する必要がある。得られた生地は、パンチングメタル(孔径5〜30mm)などの適当な大きさの孔を通して熱湯に突き出し凝固させ、水冷後表面に付着する糊を除去し、麺を凍結し、天日乾燥などにより乾燥して製品とすることができる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例に基づきより詳細に説明する。
実施例1〜6および比較例1〜7
以下の表1に示す配合量で緑豆澱粉と馬鈴薯澱粉、添加剤としてのカルシウムとパンプキンパウダーを用い、常法に従い春雨を製造した。
【0026】
湯戻しは、熱湯に3分間浸漬し、湯切り後の官能評価で行った。
【0027】
また、湯伸びは、熱湯に10分間浸漬し、湯切り後の官能評価で行った。
【0028】
麺の太さは、乾燥後の麺線の断面の太さをマイクロメーターで測定した値であり、表2における記号(◎◎、◎、○、△、×)は、以下の意味を有する。
◎◎・・・湯戻り後の食感は、極めて良好。
◎・・・・ 〃 は良好。
○・・・・ 〃 は、普通。
△・・・・ 〃 は、やや芯が残りあまりよくない。
×・・・・ 〃 は、固く芯が残り良くない。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
なお、外観は、全ての春雨が白濁し、かつ、パンプキンパウダーに由来して黄色に着色していた。
【0032】
また、湯戻し後の食感は、本発明の春雨はパスタに近く、10分間熱湯に浸漬しても湯伸びはほとんど感じられなかった。実施例1〜5、特に実施例2〜5の春雨は歯切れがよくぷりぷりした良好な食感を有し、実施例5の春雨の食感が最もよかった。一方、比較例1〜7の春雨は弾力が強すぎ、熱湯に10分間浸漬しても良好な食感は得られなかった。また、比較例8〜10の春雨は、緑豆澱粉が9%以下になったことで製造できなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デンプンを主原料とする即席春雨であって、以下の(1)〜(4)の特性を有する即席春雨:
(1)デンプンとして、馬鈴薯でん粉、甘藷デンプン、トウモロコシデンプン、エンドウデンプン、タピオカデンプン及び小麦デンプンからなる群から選ばれる少なくとも1種を70〜90重量%と、緑豆でん粉30〜10重量%を含み、
(2)気泡を含む半透明ないし不透明の外観を有し、
(3)乾燥製品の太さが1.2〜2.4mmであり、
(4)乾燥製品の密度が0.80g/cm3〜1.25g/cm3である。
【請求項2】
春雨の主原料であるデンプンが、馬鈴薯でん粉70〜90重量%と、緑豆でん粉30〜10重量%から構成される請求項1に記載の即席春雨。
【請求項3】
デンプンとして緑豆でん粉を10〜20重量%含む、請求項1又は2に記載の即席春雨。
【請求項4】
カルシウムをさらに含む、請求項1〜3のいずれかに記載の即席春雨。
【請求項5】
春雨の断面が円形で、断面の直径が1.2mm〜2.2mmである、請求項1〜4のいずれかに記載の即席春雨。
【請求項6】
さらに吸水性物質を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の即席春雨。
【請求項7】
吸水性物質がパンプキンパウダーである請求項6に記載の即席春雨。
【請求項8】
馬鈴薯でん粉、甘藷デンプン、トウモロコシデンプン、エンドウデンプン、タピオカデンプン及び小麦デンプンからなる群から選ばれる少なくとも1種を70〜90重量%と、緑豆でん粉30〜10重量%を含むデンプンと水、必要に応じてさらにカルシウム、吸水性物質などの添加剤を添加し、気泡を含むように混練して生地を作成し、乾燥後の製品の太さが1.2〜2.4mmになるように線状に成形することを特徴とする請求項1〜7のいずれかで定義された即席春雨の製造方法。