説明

卵スプレッドの製造方法及びその実施に使用する卵スプレッドの製造装置

【課題】卵風味を低下させることなく日持ちを向上できるようにした卵スプレッドおよびその製造装置の提供。
【解決手段】ホール生卵を加熱して凝固させることにより略板状加熱凝固卵を得る加熱工程と、この加熱工程で得られた略板状加熱凝固卵とマヨネーズとポリ袋に詰めて密封する容器詰め工程と、マヨネーズ及び略板状加熱凝固卵を詰められたポリ袋に対してポリ袋の外部から力を加えることにより略板状加熱凝固卵を賽の目状に壊砕する壊砕工程と、略板状加熱凝固卵を賽の目状に壊砕されたポリ袋に対してポリ袋を揉んだり振ったりすることにより上記加熱凝固卵とマヨネーズとを混合する混合工程により、卵スプレッドを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵スプレッドの製造方法及びその実施に使用する卵スプレッドの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食パン等に塗り広げて使用することを始めとして、サンドウィッチ用のフィリングや、コロッケ等の具材や、料理のトッピング等の各種用途に使用される卵スプレッドは、従来、殻付生卵をボイル槽等で茹でた後に冷却して脱殻装置で殻剥きすることにより茹で卵を製し、これを截断機で截断した茹で卵の截断物とマヨネーズ等の酸性水中油型乳化状調味料とを和えて製造するようにしていた。
【0003】
工業的に茹で卵を製造する際は、殻剥き効率を向上させるために固茹でにしたり、茹でた後に殻の混入を防ぐために水で洗い流す等の工程を行っている。このように製された茹で卵を用いた卵スプレッドは、ソフトな食感や卵風味が損なわれてしまっていた。
【0004】
そこで、例えば、下記特許文献1等においては、殻付生鶏卵を割卵して殻を取り除いたままの状態で濾過していない生の全卵、すなわち、卵黄膜に包まれた状態の生卵黄(黄身)と生卵白(白身)とからなるホール生卵を70〜100℃で加熱処理して凝固させた加熱凝固卵を用い、当該加熱凝固卵を截断した品温50℃以上の截断物と、酸性水中油型乳化状調味料とを混合処理した後、混合処理を開始してから60分以内に品温30℃以下にすることにより、卵白部分がソフトな食感になると共に、優れた卵風味となる製造方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−143444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したような卵スプレッドにおいては、できる限り日持ちの長いものが強く望まれていることから、例えば、静菌剤を添加することや、マヨネーズ等の酸性水中油型乳化状調味料の配合量を多くしてpH値を低くすること等により、菌の繁殖を抑えるようにしている。
【0007】
しかしながら、卵スプレッドに静菌剤を添加すると、静菌剤特有のエグ味が強くなってしまう場合を生じたり、マヨネーズ等の酸性水中油型乳化状調味料の配合量を多くしてpH値を低くすると、当該調味料のツンとした食味が強くなってしまう場合を生じたりして、卵スプレッドの卵風味の低下を招いてしまう場合があった。
【0008】
このため、卵スプレッドの卵風味を低下させることなく日持ちを向上できるようにすることが強く求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した課題を解決するためになされた本発明は、ホール生卵を加熱して凝固させることにより略板状加熱凝固卵を得る加熱工程と、酸性水中油型乳化状調味料と前記加熱工程で得られた前記略板状加熱凝固卵とを変形可能な容器に詰めて密封する容器詰め工程と、前記容器詰め工程で前記酸性水中油型乳化状調味料及び前記略板状加熱凝固卵を詰められた前記容器に対して当該容器の外部から力を加えることにより当該略板状加熱凝固卵を壊砕する壊砕工程と、前記壊砕工程で前記略板状加熱凝固卵を壊砕された前記容器に対して当該容器の外部から力を加えることにより上記加熱凝固卵と前記酸性水中油型乳化状調味料とを混合する混合工程とを行うことを特徴とする卵スプレッドの製造方法である。
【0010】
また、本発明は、上述した卵スプレッドの製造方法の実施に使用する卵スプレッドの製造装置であって、前記酸性水中油型乳化状調味料及び前記略板状加熱凝固卵を詰められた前記容器を上面に載置されるテーブルと、前記テーブルの上面と対向するように配設されて当該テーブルと対向する端面に丸みを形成された壊砕ブレードと、前記破砕ブレードを昇降させる壊砕ブレード昇降手段とを備えていることを特徴とする卵スプレッドの製造装置である。
【0011】
さらに、本発明は、上述した卵スプレッドの製造装置において、前記テーブルと前記壊砕ブレードとを当該壊砕ブレードの厚さ方向に沿って相対的に移動させる移動手段を備えていることを特徴とする卵スプレッドの製造装置である。
【0012】
さらに、本発明は、上述した卵スプレッドの製造装置において、前記テーブル上に載置された前記容器を当該テーブル上に保持する保持手段を備えていることを特徴とする卵スプレッドの製造装置である。
【0013】
さらに、本発明は、上述した卵スプレッドの製造装置において、前記保持手段が、前記壊砕ブレードを厚さ方向で間に挟むように対をなして配設される第一,第二の押さえ板と、前記第一,第二の押さえ板をそれぞれ独立して昇降させる押さえ板昇降手段とを備えていることを特徴とする卵スプレッドの製造装置である。
【0014】
さらに、本発明は、上述した卵スプレッドの製造装置において、前記テーブルと前記壊砕ブレードとを当該壊砕ブレードの厚さ方向に沿って相対的に移動させるように前記移動手段を制御すると共に、前記壊砕ブレードよりも上記移動方向上流側に位置する前記押さえ板のみを下降させるように前記押さえ板昇降手段を制御することにより前記テーブル上の前記容器の上記壊砕ブレードよりも上記移動方向上流側を押さえてから、前記壊砕ブレードを昇降させるように前記壊砕ブレード昇降手段を制御することにより前記容器内の前記加熱凝固卵を壊砕した後、前記容器を押さえている前記押さえ板を上昇させるように前記押さえ板昇降手段を制御すると共に、前記テーブルと前記壊砕ブレードとを当該壊砕ブレードの厚さ方向に沿って相対的に移動させるように前記移動手段を再び制御することを繰り返し行う制御手段を備えていることを特徴とする卵スプレッドの製造装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、卵スプレッドの卵風味を低下させることなく日持ちを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る卵スプレッドの製造装置の主な実施形態の概略構造側面図である。
【図2】図1のII−II線断面矢線視図である。
【図3】図1の III−III 線断面矢線視図である。
【図4】図1の卵スプレッドの製造装置の主な制御系統のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る卵スプレッドの製造方法及びその実施に使用する卵スプレッドの製造装置の主な実施形態を図1〜4に基づいて説明するが、本発明は以下に説明する実施形態のみに限定されるものではない。
【0018】
本実施形態に係る卵スプレッドの製造方法は、(1)ホール生卵を加熱して凝固させることにより略板状加熱凝固卵を得る加熱工程と、(2)酸性水中油型乳化状調味料と前記加熱工程で得られた前記略板状加熱凝固卵とを変形可能な容器に詰めて密封する容器詰め工程と、(3)前記容器詰め工程で前記酸性水中油型乳化状調味料及び前記略板状加熱凝固卵を詰められた前記容器に対して当該容器の外部から力を加えることにより当該略板状加熱凝固卵を壊砕する壊砕工程と、(4)前記壊砕工程で前記略板状加熱凝固卵を壊砕された前記容器に対して当該容器の外部から力を加えることにより上記加熱凝固卵と前記酸性水中油型乳化状調味料とを混合する混合工程とを行うものである。
【0019】
前記卵スプレッドは、食パン等に塗り広げて使用することを始めとして、サンドウィッチ用のフィリングや、コロッケ等の具材や、料理のトッピング等の各種用途に使用されるものであり、必要に応じて、野菜の截断物等が混合される場合もある。
【0020】
前記ホール生卵は、殻付生鶏卵を割卵して殻を取り除いたままの状態で濾過していない生の全卵であり、例えば、卵黄膜に包まれた状態の生卵黄(黄身)と生卵白(白身)とからなる状態のものや、割卵時の物理的な衝撃等によって卵黄膜が破れてしまった状態のもの等が挙げられる。
【0021】
ここで、卵黄膜に包まれた状態の生卵黄(黄身)と生卵白(白身)とからなる状態のホール生卵を全体に対する割合で70%以上使用すると、製造された略板状加熱凝固卵において、茹で卵の黄身のようなホクホクとした食感を得ることができ、大変好ましくなる。
【0022】
前記(1)の加熱工程は、前記ホール生卵を一個分ずつ又は複数個分ずつ容器に入れて加熱装置等で加熱処理することにより、略板状加熱凝固卵を得る工程である。加熱処理条件は、前記ホール生卵を加熱凝固させることができる条件であれば特に限定されるものではないが、加熱時間は5〜90分程度であり、好ましくは、加熱温度を70℃以上(特には80℃以上)にすることにより、前記ホール生卵を短時間で効率よく凝固させることができる。
【0023】
このようにして製造される上記加熱凝固卵は、加熱凝固卵白の表面部分に略球状の加熱凝固卵黄が存在して表面に凹凸を若干有する形状や、加熱凝固卵白の内部部分に包含されるように略球状の加熱凝固卵黄が存在して表面に凹凸のほとんどない形状や、卵黄膜が破れて凹凸のほとんどない形状となる。本発明に係る略板状加熱凝固卵は、上述したいずれの形状であってもよいが、茹で卵の黄身のような食感を得られるようにすることを考慮すると、略球状の加熱凝固卵黄が存在する形状であると好ましい。なお、上記略板状加熱凝固卵は、卵黄部が半熟状態であってもよい。
【0024】
また、他にも、例えば、前記ホール生卵を高分子材料製の耐熱性パウチやケーシング等に入れて、ボイルやスチーマ等で加熱して凝固させることによっても、略板状加熱凝固卵を簡単に得ることができる。
【0025】
前記(2)の容器詰め工程は、マヨネーズ等の前記酸性水中油型乳化状調味料と前記加熱工程で得られた前記略板状加熱凝固卵とを例えばポリ袋に詰めて密封する工程である。ここで、製造された前記略板状加熱凝固卵を前記バット等から前記ポリ袋にすぐに入れて密封することにより、製造された前記略板状加熱凝固卵が他の物品と接触してしまう頻度を非常に少なくでき、菌の混入が抑制され、日持ちの向上が可能となる。
【0026】
特に、55℃以上(特には60℃以上)の温度を有するまだ熱いうちに前記略板状加熱凝固卵を前記ポリ袋に入れて密封すると、卵風味をより向上させることができると共に、日持ちのさらなる向上を図ることができるので、非常に好ましい。
【0027】
なお、マヨネーズ等の前記酸性水中油型乳化状調味料は、前記ポリ袋内に前記略板状加熱凝固卵を入れる前に当該ポリ袋内に所定量で先に入れておいても、前記ポリ袋内に前記略板状加熱凝固卵を入れてから当該ポリ袋内に所定量で後から入れてもよいが、作業性を考慮すると、前者の方が好ましい。
【0028】
前記(3)の壊砕工程は、前記容器詰め工程でマヨネーズ等の前記酸性水中油型乳化状調味料及び前記略板状加熱凝固卵を詰められたポリ袋を台上に置いて、当該ポリ袋の外部から壊砕ブレード等で当該ポリ袋を押圧することにより、上記略板状加熱凝固卵を賽の目状に壊砕する工程である。
【0029】
具体的には、図1〜4に示すような装置を使用する。
図1〜3に示すように、支持台111上には、山形をなすガイドレール112が対をなして配設されている。対をなす前記ガイドレール112上には、シリコン樹脂等の弾性を有するマット115aを上面に設けたテーブル115が、対をなす当該ガイドレール112間を橋渡すようにして配設されている。前記テーブル115の下面には、山形の前記ガイドレール112にそれぞれ対応して係合する鼓形をなす車輪113(本実施形態では、各ガイドレール112に2つで計4つ)がブラケット114を介してそれぞれ回転可能に取り付けられており、当該テーブル115は、上記車輪113を介して上記ガイドレール112の長手方向に沿って走行移動することができるようになっている。
【0030】
前記支持台111上の対をなす前記ガイドレール112間には、当該ガイドレール112の長手方向に沿って軸方向を向けたねじ軸118が配設されており、当該ねじ軸118は、両端側が前記支持台111にブラケット117を介して回転可能に支持されている。前記ねじ軸118には、前記テーブル115の下面に固着されたナットブロック116が螺合している。図1に示すように、前記ねじ軸118の一端側(図1中、左側)には、前記支持台111に固定支持されたステッピングモータ119が連結されている。
【0031】
つまり、前記ステッピングモータ119を作動させて前記ねじ軸118を回転させると、前記ナットブロック116が当該ねじ軸118の軸方向に沿って移動することにより、前記テーブル115を前記ガイドレール112に沿って移動させることができるようになっているのである。
【0032】
前記支持台111上の、前記ガイドレール112の長手方向中程の、対をなす当該ガイドレール112の対向方向両端側には、支持コラム121が対をなすようにしてそれぞれ立設されている。
【0033】
図1,2に示すように、対をなす前記支持コラム121間の上方側には、支持ステー122が当該間を橋渡すようにして取り付けられている。前記支持ステー122には、エアシリンダ123がロッド123aの先端側を下方に向けるようにして取り付けられている。前記エアシリンダ123の前記ロッド123aの先端には、対向する前記支持コラム121間を結ぶ方向に長手方向を向けた、言い換えれば、前記テーブル115の移動方向へ厚さ方向を向けた壊砕ブレード124が取り付けられている。前記壊砕ブレード124の先端、すなわち、前記テーブル115の上面の前記マット115aと対向する端面は、断面U字形をなすように丸みが形成されている。
【0034】
つまり、前記エアシリンダ123のロッド123aを伸縮させることにより、前記壊砕ブレード124の前記先端を前記テーブル115の前記マット115aに対して押圧するように当該壊砕ブレード124を昇降移動させることができるようになっているのである。
【0035】
図1,3に示すように、対をなす前記支持コラム121間の上下方向中程の、前記テーブル115の移動方向両端側には、前記壊砕ブレード124を厚さ方向で間に挟むように対をなす支持ステー125が当該支持コラム121間を橋渡すようにして取り付けられている。前記支持ステー125には、エアシリンダ126A,126Bがロッド126Aa,126Baの先端側を下方に向けるようにしてそれぞれ取り付けられている。前記エアシリンダ126A,126Bの前記ロッド126Aa,126Baの先端には、前記テーブル115と対面するように配向された第一,第二の押さえ板127A,127Bがそれぞれ取り付けられている。
【0036】
つまり、前記エアシリンダ126A,126Bのロッド126Aa,126Baをそれぞれ独立して伸縮させることにより、前記押さえ板127A,127Bを前記テーブル115の上面に対して押し付けるように当該押さえ板127A,127Bをそれぞれ独立して昇降移動させることができるようになっているのである。
【0037】
図4に示すように、前記ステッピングモータ119及び前記エアシリンダ123,126A,126Bは、制御手段である制御装置130の出力部にそれぞれ電気的に接続されている。前記制御装置130の入力部には、各種情報を入力する入力手段である入力器131が電気的に接続されており、当該制御装置130は、前記入力器131からの情報に基づいて、前記ステッピングモータ119及び前記エアシリンダ123,126A,126Bの作動を制御することができるようになっている(詳細は後述する)。
【0038】
このような本実施形態においては、前記ガイドレール112、前記車輪113、前記ブラケット114、前記ナットブロック116、前記ブラケット117、前記ねじ軸118、前記ステッピングモータ119等により、移動手段を構成し、前記エアシリンダ123等により、壊砕ブレード昇降手段を構成し、前記エアシリンダ126A,126B等により、押さえ板昇降手段を構成し、前記第一,第二の押さえ板127A,127B、前記押さえ板昇降手段等により、保持手段を構成している。
【0039】
このような本実施形態に係る製造装置100を使用して前記壊砕工程を実施するには、まず、前記容器詰め工程でマヨネーズ及び前記略板状加熱凝固卵を詰められたポリ袋を前記テーブル115の前記マット115a上の規定位置に載置する。
【0040】
そして、前記入力器131に壊砕サイズ(例えば10mm)等の各種情報を入力すると、前記制御装置130は、前記テーブル115を規定の位置にまで移動(例えば、図1中、右から左方向(往動))させるように前記ステッピングモータ119を作動制御して上記ポリ袋を前記壊砕ブレード124の下方の規定位置にまで移動させる。
【0041】
続いて、前記制御装置130は、前記壊砕ブレード124よりも上記移動方向上流側(例えば、図1中、右側)に位置する前記第一の押さえ板127Aのみを下降させるように前記エアシリンダ126Aの前記ロッド126Aaを伸長制御して、前記テーブル115上の前記ポリ袋の上記壊砕ブレード124よりも上記移動方向上流側(例えば、図1中、右側)のみを当該テーブル115の前記マット115aに対して押さえ付けて保持する。
【0042】
次に、前記制御装置130は、前記壊砕ブレード124を下降させるように前記エアシリンダ123の前記ロッド123aを伸長制御する。これにより、前記壊砕ブレード124は、前記ポリ袋を截断することなく当該ポリ袋内の前記略板状加熱凝固卵を壊砕(押し切り)する。
【0043】
このとき、前記加熱凝固卵が略板状をなしているので、前記押さえ板127Aでの押さえ付け及び前記壊砕ブレード124での壊砕を容易に行うことができる。また、前記テーブル115の上面に前記マット115aが敷設されているので、当該テーブル115に対する前記ポリ袋の位置ずれを防止することができる。
【0044】
さらに、前記ポリ袋が、前記壊砕ブレード124よりも前記移動方向上流側(例えば、図1中、右側)のみを押さえ付けられて保持されているので、当該ポリ袋内の前記略板状加熱凝固卵をふらつかせることなく安定して壊砕(押し切り)することができると共に、当該壊砕ブレード124による当該略板状加熱凝固卵の壊砕(押し切り)に伴う当該ポリ袋及び当該加熱凝固卵の変形の際の動きを許容することができ、当該ポリ袋の破損を防止することができる。
【0045】
このようにして前記ポリ袋内の前記略板状加熱凝固卵を壊砕(押し切り)すると、前記制御装置130は、前記壊砕ブレード124を上昇させるように前記エアシリンダ123の前記ロッド123aを収縮制御すると共に、前記押さえ板127Aを上昇させるように前記エアシリンダ126Aの前記ロッド126Aaを伸長制御する。
【0046】
そして、前記制御装置130は、前記入力器131から入力された前記壊砕サイズ(例えば10mm)に対応して前記テーブル115をさらに移動させるように前記ステッピングモータ119を作動制御する。以下、上述した作動を繰り返すことにより、前記ポリ袋内の前記略板状加熱凝固卵は、全長にわたって短冊状(幅10mm)に壊砕(押し切り)される。
【0047】
このようにして前記ポリ袋内の前記加熱凝固卵を短冊状に壊砕(押し切り)したら、前記テーブル115の前記マット115a上の当該ポリ袋を水平方向に90°回転させて当該テーブル115の当該マット115a上の規定位置に再び載置する。
【0048】
そして、前記制御装置130を再び作動させると、当該制御装置130は、前記テーブル115を規定の位置にまで移動(例えば、図1中、左から右方向(復動))させるように前記ステッピングモータ119を作動制御して上記ポリ袋を前記壊砕ブレード124の下方の規定位置にまで移動させる。
【0049】
続いて、前記制御装置130は、前記壊砕ブレード124よりも上記移動方向上流側(例えば、図1中、左側)に位置する前記第二の押さえ板127Bのみを下降させるように前記エアシリンダ126Bの前記ロッド126Baを伸長制御して、前記テーブル115上の前記ポリ袋の上記壊砕ブレード124よりも上記移動方向上流側(例えば、図1中、左側)のみを当該テーブル115の前記マット115aに対して押さえ付けて保持する。
【0050】
次に、前記制御装置130は、前記壊砕ブレード124を下降させるように前記エアシリンダ123の前記ロッド123aを伸長制御する。これにより、前記壊砕ブレード124は、前記ポリ袋を截断することなく当該ポリ袋内の短冊状の前記加熱凝固卵を壊砕(押し切り)する。
【0051】
このとき、前記ポリ袋が、前記壊砕ブレード124よりも前記移動方向上流側(例えば、図1中、左側)のみを押さえ付けられて保持されているので、当該ポリ袋内の前記加熱凝固卵をふらつかせることなく安定して壊砕(押し切り)することができると共に、当該壊砕ブレード124による当該加熱凝固卵の壊砕(押し切り)に伴う当該ポリ袋及び当該加熱凝固卵の変形の際の動きを許容することができ、当該ポリ袋の破損を防止することができる。
【0052】
このようにして前記ポリ袋内の短冊状の前記加熱凝固卵を壊砕(押し切り)すると、前記制御装置130は、前記壊砕ブレード124を上昇させるように前記エアシリンダ123の前記ロッド123aを収縮制御すると共に、前記押さえ板127Bを上昇させるように前記エアシリンダ126Bの前記ロッド126Baを伸長制御する。
【0053】
そして、前記制御装置130は、前記入力器131から入力された前記壊砕サイズ(例えば10mm)に対応して前記テーブル115をさらに移動させるように前記ステッピングモータ119を作動制御する。以下、上述した作動を繰り返すことにより、前記ポリ袋内の短冊状の前記加熱凝固卵は、全体にわたって賽の目状(幅10mm)に壊砕(押し切り)される。
【0054】
前記(4)の混合工程は、前記壊砕工程で賽の目状に壊砕された前記加熱凝固卵とマヨネーズ等の前記酸性水中油型乳化状調味料とを前記ポリ袋内で混合するように当該ポリ袋に対して当該ポリ袋の外部から力を加える工程である。具体的には、例えば、前記ポリ袋を揉んだり振ったりすることにより、前記加熱凝固卵とマヨネーズ等の前記酸性水中油型乳化状調味料とを前記ポリ袋内で均一に混ぜ合わせる。
【0055】
つまり、従来は、ホール生卵をバットに入れてスチーマ等で加熱処理して得られた略板状加熱凝固卵を当該バットから取り出してダイサ等で截断した後、ミキサ等でマヨネーズ等の酸性水中油型乳化状調味料と混合してから、パウチ等の容器に充填するようにしていたが、本実施形態においては、ホール生卵をバットに入れてスチーマ等で加熱処理して得られた略板状加熱凝固卵を当該バットから他の物品に接触させることなくすぐにポリ袋に入れて密封した後、当該ポリ袋に対して当該ポリ袋の外部から力を加え、すなわち、前記製造装置100で前記壊砕ブレード124により当該ポリ袋内の前記加熱凝固卵を賽の目状に押し切ってから、当該ポリ袋に対して当該ポリ袋の外部から力を加え、すなわち、当該ポリ袋を揉んだり振ったりして、当該ポリ袋内に入れたマヨネーズ等の前記酸性水中油型乳化状調味料と上記加熱凝固卵とを混ぜ合わせるようにしたのである。
【0056】
このため、本実施形態においては、製造された前記略板状加熱凝固卵が他の物品と接触してしまう頻度を非常に少なくすることができるので、菌の混入を抑制して、日持ちの向上を図ることができる。
【0057】
したがって、本実施形態によれば、静菌剤を添加したり、マヨネーズ等の酸性水中油型乳化状調味料の配合量を多くしてpH値を低くしたりしなくても、卵スプレッドの卵風味を低下させることなく日持ちを向上させることができる。
【0058】
また、55℃以上(特には60℃以上)の温度を有するまだ熱いうちに前記略板状加熱凝固卵を前記ポリ袋に入れて密封すれば、卵風味をより向上させることができると共に、日持ちのさらなる向上を図ることができる。
【0059】
なお、前記略板状加熱凝固卵は、最大厚さが25mm以下であれば、前記装置100で壊砕(押し切り)しやすくなるので、非常に好ましい。また、前記加熱凝固卵を、0.1〜5cm3(好ましくは0.5〜3cm3)の体積とするように、5〜25mm(好ましくは5〜15mm)のサイズ(幅)で壊砕(押し切り)すると、卵スプレッドとして好ましいサイズとなる。
【0060】
また、本実施形態においては、前記テーブル115を前記ガイドレール112に沿って走行移動させることにより、当該テーブル115と前記壊砕ブレード124とを当該壊砕ブレード124の厚さ方向に沿って相対的に移動させるようにしたが、他の実施形態として、例えば、前記支持コラム121を前記支持台111上でスライド移動できるようにすることにより、前記テーブル115と前記壊砕ブレード124とを当該壊砕ブレード124の厚さ方向に沿って相対的に移動できるようにすることや、前記テーブル115を前記ガイドレール112に沿って走行移動させると共に前記支持コラム121を前記支持台111上でスライド移動させることにより、当該テーブル115と当該壊砕ブレード124とを当該壊砕ブレード124の厚さ方向に沿って相対的に移動させるようにすること等によっても、本実施形態の場合と同様な作用効果を得ることができる。
【実施例】
【0061】
本発明に係る実施例を以下に説明するが、本発明は以下に説明する実施例のみに限定されるものではない。
【0062】
[試験体及び比較体の製造]
〈試験体1〉
殻付生鶏卵を割卵して殻を取り除いたホール生卵(600g)をステンレス製のバット(幅200mm、奥行き300mm、高さ30mm)に入れ、当該バットをスチーマ内に載置して加熱(90℃×60分間)することにより、略板状加熱凝固卵を得る。
【0063】
次に、前記スチーマ内から前記バットを取り出して、当該バット内の前記略板状加熱凝固卵(厚さ10mm、温度55℃)を、マヨネーズ(257g(卵スプレッド全体重量に対する割合で30%))を入れたポリ袋内に移し入れて密封した後、前述した実施形態で説明した製造装置100を前述した実施形態で説明したように使用することにより、当該ポリ袋を截断することなく上記略板状加熱凝固卵をマス目状(10mm四方)に押し分けて賽の目状に壊砕(押し切り)する。
【0064】
続いて、前記ポリ袋の内部を攪拌するように当該ポリ袋を揉んで前記略板状加熱凝固卵とマヨネーズとを混合して、卵スプレッド(pH6.5)を製造した(試験体1)。
【0065】
〈試験体2〉
上述した試験体1の場合において、前記スチーマ内から取り出した前記バット内の前記略板状加熱凝固卵に対して上記試験体1の場合よりも迅速に対応することにより、当該略板状加熱凝固卵を上記試験体1の場合よりも高い温度(70℃)で前記ポリ袋に入れるようにする以外は、上記試験体1の場合と同一の条件で製造することにより、卵スプレッドを製造した(試験体2)。
【0066】
〈比較体〉
上述した試験体1の場合において、前記スチーマ内から取り出した前記バット内の前記略板状加熱凝固卵を刃で賽の目状(10mm四方)に截断してから、当該加熱凝固卵(20℃)を前記ポリ袋に入れて当該ポリ袋を密封した後、当該記ポリ袋の内部を攪拌するように当該ポリ袋を揉んで上記加熱凝固卵と前記マヨネーズとを混合する以外は、上記試験体1の場合と同一の条件で製造することにより、卵スプレッドを製造した(比較体)。
【0067】
[試験方法]
〈卵風味〉
上記試験体1,2及び上記比較体を5名のパネラでそれぞれ官能試験してその卵風味の評価平均を求めた。
【0068】
〈菌繁殖性〉
まず、上記試験体1,2及び比較体にLeuconostoc mesentroides菌液をそれぞれ30cfu/gとなるように添加して混合し、それぞれポリ袋に入れて保管(0℃×24時間)することにより菌液をなじませた後、クリーンベンチで無菌的にシャーレに小分けして各々保管(15℃×4日間及び15℃×8日間)する。
【0069】
保管終了後、それぞれを滅菌生理食塩水で希釈(10倍)し、その希釈液(1mL)をMRS培地(20mL)に分散混釈して嫌気培養器で培養(30℃×3日間)した後、コロニーを検出して、添加した上記菌と一致するコロニー数をカウントした。
【0070】
[試験結果]
上述した卵風味及び菌繁殖性の試験結果を下記の表1に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
上記表1の記載からわかるように、卵風味は、試験体1が比較体よりも良い結果となり、試験体2が比較体よりも非常に良い結果となった。また、菌繁殖性は、4日後では比較体及び試験体1,2共に大きな増加がみられなかったものの、8日後では比較体において著しく増加してしまったものの、試験体1,2においては大きな増加がみられなかった。
【0073】
このことから、試験体1,2は、卵スプレッドの卵風味を向上させると同時に、菌の増殖を抑制して、日持ちを向上できると認められた。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明に係る卵スプレッドの製造方法及びその実施に使用する卵スプレッドの製造装置は、食品産業等において、極めて有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0075】
100 卵スプレッドの製造装置
111 支持台
112 ガイドレール
113 車輪
114 ブラケット
115 テーブル
115a マット
116 ナットブロック
117 ブラケット
118 ねじ軸
119 ステッピングモータ
121 支持コラム
122 支持ステー
123 エアシリンダ
123a ロッド
124 壊砕ブレード
125 支持ステー
126A,126B エアシリンダ
126Aa,126Ba ロッド
127A 第一の押さえ板
127B 第二の押さえ板
130 制御装置
131 入力器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホール生卵を加熱して凝固させることにより略板状加熱凝固卵を得る加熱工程と、
酸性水中油型乳化状調味料と前記加熱工程で得られた前記略板状加熱凝固卵とを変形可能な容器に詰めて密封する容器詰め工程と、
前記容器詰め工程で前記酸性水中油型乳化状調味料及び前記略板状加熱凝固卵を詰められた前記容器に対して当該容器の外部から力を加えることにより当該略板状加熱凝固卵を壊砕する壊砕工程と、
前記壊砕工程で前記略板状加熱凝固卵を壊砕された前記容器に対して当該容器の外部から力を加えることにより上記加熱凝固卵と前記酸性水中油型乳化状調味料とを混合する混合工程と
を行うことを特徴とする卵スプレッドの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の卵スプレッドの製造方法の実施に使用する卵スプレッドの製造装置であって、
前記酸性水中油型乳化状調味料及び前記略板状加熱凝固卵を詰められた前記容器を上面に載置されるテーブルと、
前記テーブルの上面と対向するように配設されて当該テーブルと対向する端面に丸みを形成された壊砕ブレードと、
前記破砕ブレードを昇降させる壊砕ブレード昇降手段と
を備えていることを特徴とする卵スプレッドの製造装置。
【請求項3】
請求項2に記載の卵スプレッドの製造装置において、
前記テーブルと前記壊砕ブレードとを当該壊砕ブレードの厚さ方向に沿って相対的に移動させる移動手段を備えている
ことを特徴とする卵スプレッドの製造装置。
【請求項4】
請求項3に記載の卵スプレッドの製造装置において、
前記テーブル上に載置された前記容器を当該テーブル上に保持する保持手段を備えている
ことを特徴とする卵スプレッドの製造装置。
【請求項5】
請求項4に記載の卵スプレッドの製造装置において、
前記保持手段が、
前記壊砕ブレードを厚さ方向で間に挟むように対をなして配設される第一,第二の押さえ板と、
前記第一,第二の押さえ板をそれぞれ独立して昇降させる押さえ板昇降手段と
を備えていることを特徴とする卵スプレッドの製造装置。
【請求項6】
請求項5に記載の卵スプレッドの製造装置において、
前記テーブルと前記壊砕ブレードとを当該壊砕ブレードの厚さ方向に沿って相対的に移動させるように前記移動手段を制御すると共に、前記壊砕ブレードよりも上記移動方向上流側に位置する前記押さえ板のみを下降させるように前記押さえ板昇降手段を制御することにより前記テーブル上の前記容器の上記壊砕ブレードよりも上記移動方向上流側を押さえてから、前記壊砕ブレードを昇降させるように前記壊砕ブレード昇降手段を制御することにより前記容器内の前記加熱凝固卵を壊砕した後、前記容器を押さえている前記押さえ板を上昇させるように前記押さえ板昇降手段を制御すると共に、前記テーブルと前記壊砕ブレードとを当該壊砕ブレードの厚さ方向に沿って相対的に移動させるように前記移動手段を再び制御することを繰り返し行う制御手段を備えている
ことを特徴とする卵スプレッドの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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