説明

原稿押さえ装置及びそれを備えた画像形成装置

【課題】
コストアップせずに折れ原稿、カール原稿のプラテンガラスへの押し付け性を向上させ、良好な画像を得るための原稿押さえ装置およびそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】
原稿と当接するシート部材とそのシート部材を保持する原稿圧着板と、両者の間に接着される弾性部材からなる構成の原稿押さえ装置において、原稿圧着板の弾性部材接着面から突出した、弾性部材を弾性変形する凸部を原稿圧着板に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複写機やイメージスキャナなどの画像読取装置におけるコンタクトガラスに原稿を押さえつける原稿押さえ装置およびこれを備えた画像形成装置に関し、特に原稿の浮き防止、画像の鮮明さの向上に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やイメージスキャナなどの画像読取装置は、コンタクトガラス上に載置された原稿を画像読み取り手段によってスキャンして、原稿に記載された情報を光学的に読み取りを行うものである。この画像読取装置では原稿がコンタクトガラスより浮き上がってしまうと、画像読み取り手段の焦点が合わずに鮮明な画像を読み込む事ができないため、原稿をコンタクトガラスに押し付けるための原稿押さえ装置が用いられている。
この原稿押さえ装置は基本構成として一般的に原稿圧着板、原稿と当接しコンタクトガラスに原稿を押し付けるシート部材、原稿圧着板とシート部材を接着して連結し、かつシート部材をコンタクトガラスに押圧するための弾性部材、原稿圧着板をコンタクトガラスに対して開閉するための回動支点で構成されており、その具体的な構成としては特開平11−202425や、特開2001−92044などが知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特開平11−202425に示される従来構成の原稿押さえ装置においては、シート部材を貼り付ける原稿圧着板自体に反りが生じた場合でも、シート部材中央部を原稿圧着板に接着させないことで、シート部材および弾性部材の自重で原稿をコンタクトガラスに押し付ける構成となっているが、シート部材および弾性部材の厚みが薄くなるなどによって質量が軽くなってしまうと、折れた原稿やカールした原稿はシート部材および弾性部材の自重では原稿をコンタクトガラスに押し付けることができずに浮いてしまい、特に読取手段がCIS(コンタクトイメージセンサ)など被写界深度の浅い読取装置では鮮明な画像を得ることができなくなるというケースがあった。
【0004】
この問題を解決するために、特開2001−92044に示されるように原稿圧着板の回転支点と反対側にマグネットを設け、原稿圧着板を閉じた時にマグネットの力によって原稿圧着板の弾性部材貼付け面側に設けられた弾性部材を押し込ことで、折れた原稿やカールした原稿をプラテンガラスに強く押し付ける構成などが考案されている。
【0005】
あるいは、特開2001−22010に示されるように弾性部材を端部周辺のみに接着し、原稿圧着板を上部から押さえて折れた原稿やカールした原稿をプラテンガラスに強く押し付ける構成がある。
しかしながら、前者の方法ではマグネット等の吸着部材を別に設ける必要があるため、コストアップが避けられない構成となっていた。また後者の方法では原稿圧着板を上部から強い力で押さえる必要があった。
【0006】
【特許文献1】特開平11−202425号公報
【特許文献2】特開2001−92044号公報
【特許文献3】特開2001−22010号公報 本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、コストアップせずに折れ原稿、カール原稿のプラテンガラスへの押し付け性を向上させ、良好な画像を得るための原稿押さえ装置およびそれを備えた画像形成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明にかかる原稿押さえ装置およびそれを備えた画像形成装置では、原稿と当接するシート部材と、シート部材を保持する原稿圧着板と、原稿圧着板とシート部材の間に接着される弾性部材とを備え、原稿圧着板は回動自在であって、原稿圧着板の閉じた位置で、原稿を押圧する原稿押さえ装置において、原稿圧着板の弾性部材接着面から突出し、弾性部材を弾性変形する凸部を原稿圧着板に設けられている。
【0008】
このような構成を有する本発明によれば、原稿圧着板が上方向に反った場合に原稿を押さえる力が弾性部材およびシート部材の自重押圧力だけでなく、原稿圧着板の凸部による弾性部材の反発力を加えた押圧力で原稿を押さえることができるようになっている。
【発明の効果】
【0009】
以上述べたように本発明にかかる原稿押さえ装置およびそれを備えた画像形成装置では、
原稿圧着板の弾性部材接着面から突出し、弾性部材を弾性変形する凸部を原稿圧着板に設けたことによって、原稿圧着板が上方向に反った場合に原稿を押さえる力が弾性部材およびシート部材の自重押圧力だけでなく、原稿圧着板の凸部による弾性部材の反発力を加えた押圧力で原稿を押さえることができるように構成したものであるから、カール原稿や折れ原稿を押圧する力が増え、より安定した原稿押さえ性能を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図を参照して説明する。
図1は画像読取装置をあらわす。読み取り面をコンタクトガラス10面側に向け載置された原稿11は原稿圧着板20に取り付けられた弾性部材21の作用でシート部材23を原稿11およびコンタクトガラス10に押圧し原稿11をコンタクトガラスに密着させる。前記コンタクトガラス面に押圧された原稿11は、コンタクトイメージセンサ(CIS)などの読み取り手段12によって原稿画像等の原稿記載情報が読み取られる。
具体的には図2の画像読み取り部の部分概略図のように、原稿11はLEDなどの光源13によって線状に照射され、原稿反射光はレンズ14を経て光電変換素子15に結像される。上記の光源13、レンズ14、光電変換素子15はユニットとして読み取り手段12を構成し、図1のモータ17を駆動することにより、読み取り手段12に固定された駆動ベルト16を介して読み取り手段12に駆動力を伝達し、ガイドレール18に沿って光電変換素子15の長手方向と直交方向に原稿に対し相対的に移動(スキャン)してコンタクトガラス10上の原稿11の画像を光学的に読み取る構成となっている。
【0011】
次に原稿押さえ装置の構成について図3により具体的に説明する。原稿圧着板20は読み取り装置本体1に対して回動支点24を介してコンタクトガラス10面上に載置された原稿11を押圧する閉位置(図3鎖線)と、押圧を解除する開位置(図3実線)とに回動可能にとりつけられている。本実施形態における原稿圧着板20はABS樹脂で成形されたもので、弾性部材21にはモルトプレン等のスポンジ部材を使用している。シート部材23は白色のシートであり、厚みが1.0mm以下の薄手のシートを使用する。
弾性部材21は原稿圧着板20とシート部材23の間に配置され、それぞれの接合は図4に示すように、原稿圧着板20と弾性部材21の接合は弾性部材周辺4辺付近に貼られた両面テープ30により行われ、弾性部材21とシート部材23の接合も両面テープ31により行われる構成となっている。これにより原稿圧着板20と弾性部材21、シート部材23の中央部は原稿圧着板20に対して固定されず、弾性部材21の厚み方向に対してフレキシブルな状態となっている。
ここで原稿圧着板20のような大きい型ものの平板は平面度を確保することが難しく、少なくとも反りが無い状態から凸ないし凹方向のどちらか一方に反ることが多い。前述のような構成の原稿押さえ装置では図5に示すように、少なくとも上方向に反るよう(原稿圧着板20中央部が弾性部材21から離れる方向の反り)成形されるのが一般的であるが、弾性部材21を貼り付ける原稿圧着板20に上方向の反り生じた場合、原稿11をコンタクトガラス10に押さえつける力は、弾性部材21およびシート部材23の自重のみとなる。ここでコンタクトガラス10に押さえつける原稿11が、カールしている、もしくは折れている原稿であると、原稿11をコンタクトガラス10に押さえつける力は弾性部材21とシート部材23の自重だけとなるため、弾性部材21やシート部材23が軽い場合には、自重のみで押さえつけることが難しい場合があり、図5中Z部の破線部内に示すように、コンタクトガラス10より原稿11が離れてしまう事がある。コンタクトイメージセンサに代表される被写界深度の短い読取手段(不図示)においては、原稿11がコンタクトガラス10より少しでも離れてしまうと鮮明な画像を得ることができない。
そこで、本発明の実施形態では、原稿圧着板20に上反りが生じ、押さえつける原稿11にカールや折れがある場合でも、原稿11がコンタクトガラス10より浮くことを防ぐ構成として、図6に示すように、原稿圧着板20と弾性部材21の接着を弾性部材21の前述した周囲4辺に貼られた両面テープ30で行い、それ以外の原稿圧着板20と弾性部材21が接着されていない領域には、原稿圧着板20側に弾性部材貼り付け面よりも突出し、高さが原稿圧着板20の反り量、つまり原稿圧着板20をコンタクトガラス10に対して閉じた場合に弾性部材21の中央部と原稿圧着板20の間に形成される隙間分以上の突出高さをもつ凸部dを設ける。
このような構成とすることにより、原稿圧着板20が上に反った場合で且つ、コンタクトガラス10に押さえつけるべき原稿にカールや折れがあったとしても、弾性部材21の原稿圧着板20に接着されていない部分が原稿圧着板20に設けられた凸部dにより常に圧縮されて弾性変形しているため、原稿を押さえつける力を、(自重)+(突起部dでの弾性部材反発力)とすることができ、カールや折れのある原稿11のコンタクトガラス10への押さえ性を向上させ、原稿11がコンタクトガラス10より浮いてしまうことを防ぐことが可能となりより鮮明な画像を得ることができる。
また、原稿圧着板20に設ける凸部は1つに限らず、図7に示すように複数箇所に設けることにより、凸部を設けた各部分での原稿押さえ性を同様に向上させることが可能となる。
一方、原稿圧着板20に反りがない状態においては、図8に示す凸部dは弾性部材21を多く弾性変形させることになるが、この場合は弾性部材21の弾性力を原稿圧着板20の自重で圧縮することになり反発力が大きくなるが、この反発力は原稿1枚のカールや折れをコンタクトガラス10に押さえるための反発力しか発生しない為、原稿圧着板20の自重に較べて十分小さく、必ず原稿圧着板20の接着面と同じ高さの面と弾性部材21が接触する位置まで押し込まれることになり、凸部による弾性部材21の押し込み量増加に伴う反発力増加によって原稿圧着板20が浮くことは無くシート部材23、弾性部材21もコンタクトガラス10と原稿11から離れることはない。
【0012】
図9は画像読取装置を搭載した画像形成装置の構成の説明図、図10は原稿搬送装置(ADF)を備えた画像読取装置の構成の説明図である。本実施形態の複写機Cは、画像読取手段である例えば画像読取装置Aと、画像形成手段である装置本体Bとを備えた画像形成装置の一例である。
【0013】
図9に示すように、本実施形態の複写機Cは、装置本体Bの上部に画像読取装置Aを搭載し、画像読取装置Aで読み取った原稿11の画像を装置本体BでシートPに画像形成する。装置本体Bは、画像の電気信号や画像データに基づいて露光部123を作動させて、回転する感光体ドラム121の表面に静電潜像を形成する。静電潜像は、現像器124で現像(トナーを供給)されてトナー像となる。その後、搬送ローラ131によってタイミングを合わせて感光体ドラム121と転写帯電器125の間にシートPが供給され、シートPが感光体ドラム121に接触して分離帯電器126を通過することにより、感光体ドラム121からシートPにトナー像が転写される。クリーナ127は、トナー像を転写した感光体ドラム121の表面をクリーニングし、帯電器122は、次の露光に備えて感光体ドラム121の表面を帯電させる。一方、トナー像を転写されたシートPは、搬送部128によって定着器129へ搬送され、定着器129で加熱と加圧を受けてシートPの表面にトナー像が定着される。そして、トナー像が定着されたシートPは、排出トレイ130へ排出される。
【0014】
画像形成装置Bの下部には、各種サイズのシートPを装填したシート収容部119a、119b、119c、119dが配置される。シート収容部119a、119b、119c、119dのシートPは、それぞれ給送ローラ120a、120b、120c、120dによって1枚ずつ取り出され、搬送ローラ131へ受け渡される。
【0015】
図10に示すように、画像読取装置Aは、画像読取部1の上部に原稿搬送装置(ADF)102が搭載され、流し読み方式とブック読み方式の両方で原稿の画像を読み取ることができる。ブック読み方式は、原稿の形態の自由度が高く、ブック状の原稿や立体物等も読み取り可能であるという利点を持つ。これに対して、流し読み方式は、大量のシート状の原稿を、短時間で自動的に処理できるという利点を持つ。
【0016】
画像読取部1の上面には、最大サイズの原稿を載置可能なブック読み用の原稿台ガラス103が設けられ、原稿台ガラス103に隣接させて流し読み用の原稿の原稿面を支持する流し読みガラス104が設けられている。流し読みガラス104の下方には、原稿面の画像を読み取る読取ユニット105が配置され、読取ユニット105は、原稿台ガラス103の下へ移動して、原稿台ガラス103に載置された原稿を走査可能である。
【0017】
原稿搬送装置102は、画像読取部101の上部に蝶番等で取り付けられ、画像読取部101に対して回動して上下に開閉可能である。原稿搬送装置102は、原稿載置部110に積載載置された原稿を搬送ローラ111aで1枚ずつ取り込み、搬送ローラ111b、111c、111d、111eで搬送して、読取ユニット105の上方を通過させ、画像読取が済んだ原稿を搬送ローラ111fから原稿排出部113へ排出する。
【0018】
一方、ブック読み方式で画像を読み取る場合には、原稿搬送装置102を上方へ持ち上げた状態で、図1に示すコンタクトガラス10と同様に配置された原稿台ガラス103の上に原稿が載置され、原稿搬送装置102を元の位置へ下ろして原稿を原稿台ガラス103に押し付ける。その後、スタートスイッチが操作されると、読取ユニット105が原稿台ガラス103下を移動して原稿面の画像を走査読み取りする。
【0019】
原稿搬送装置102の底面には、図1に示す原稿圧着板20と同様に、原稿台ガラス103とほぼ同一サイズのシート部材(不図示)が取り付けてある。シート部材は、図1に示すシート部材23と同様に、原稿搬送装置102の底面に貼り付けた弾性部材に貼り付けられている。
【0020】
従って、図1〜図8を参照して説明した原稿押さえ装置と同様な効果が実現される。
【産業上の利用可能性】
【0021】
以上述べたように本発明は、イメージスキャナなどの画像読取装置や原稿を自動搬送する自動原稿給排装置あるいは複写機などの画像形成装置その他の多種多様な装置に採用される原稿押さえ装置に対して広く適用することが可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の原稿押さえ装置を備えた画像読取装置の外観図である。
【図2】画像読取部の部分概略図である。
【図3】原稿押圧状態と開放状態の説明図である。
【図4】原稿押さえ装置の各部組みつけに関する説明図である。
【図5】原稿のカールによりコンタクトガラスから原稿が離れる状態の説明図である。
【図6】原稿圧着板の凸部によりカール原稿を押さえた状態の説明図である。
【図7】さらに別の実施形態の原稿押さえ装置の説明図である。
【図8】原稿圧着板に反りの無い状態で原稿を押さえた状態の説明図である。
【図9】画像読取装置を搭載した画像形成装置の構成の説明図である。
【図10】原稿搬送装置(ADF)を備えた画像読取装置の構成の説明図である。
【符号の説明】
【0023】
A、G 画像読取装置
B 装置本体(画像形成手段)
1 装置本体
10 コンタクトガラス(透明部材)
11 原稿
12 読取ユニット(読取手段)
20 原稿圧着板(支持部材)
21 弾性部材
23 シート部材(接触部材)
24 回転支点(回動の軸)
d 原稿圧着板貼り付け面と高さの異なる凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿と当接するシート部材と、該シート部材を保持する原稿圧着板と、該原稿圧着板と前記シート部材の間に接着される弾性部材と、を備え
前記原稿圧着板は回動自在であって、該原稿圧着板の閉じた位置で、原稿を押圧する原稿押さえ装置において、
前記原稿圧着板の弾性部材接着面から突出し、前記弾性部材を弾性変形する凸部を前記原稿圧着板に設けたことを特徴とする原稿押さえ装置。
【請求項2】
前記原稿圧着板の凸部は、該原稿圧着板が閉じたときに前記弾性部材を弾性変形することを特徴とする請求項1記載の原稿押さえ装置。
【請求項3】
前記原稿圧着板の凸部周辺の領域は、前記弾性部材と接着されていないことを特徴とする請求項1又は2記載の原稿押さえ装置。
【請求項4】
前記原稿圧着板の凸部の接着面からの突出高さは、前記原稿圧着板の反り量以上の高さを有することを特徴とする請求項1乃至3記載の原稿押さえ装置。
【請求項5】
前記原稿圧着板の凸部は、複数箇所あることを特徴とする請求項1乃至4記載の原稿押さえ装置。
【請求項6】
請求項1乃至5記載の原稿押さえ装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−70593(P2008−70593A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−249146(P2006−249146)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】