説明

原稿読取装置

【課題】コンタクトガラスの清掃を必要とする汚れを検出したときにのみ清掃を促し、利用性を向上させ、画像品質の良好な画像の出力を行う原稿読取装置を提供する。
【解決手段】色濃度基準板10とコンタクトガラス9とが配置される原稿読取位置Pを通る原稿の画像を読み取る原稿読取手段と、原稿読取位置Pのシェーディングデータを生成するシェーディング処理手段と、該シェーディング処理手段によるシェーディングデータが正常か異常かを判断する判断手段と、該判断手段によってシェーディングデータが異常と判断された場合は、原稿読取手段で読取処理された画像データを出力せずに、その異常なシェーディングデータから得られる色濃度異常個所を、表示部の画面上に図形化して表示する表示手段と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、複写機、ファクシミリ等の画像形成装置において原稿の画像読み取りに使用される原稿読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ、複写機、ファクシミリ等の画像形成装置においては、原稿をコンタクトガラス上に搬送して、コンタクトガラスを通過する原稿を読み取る原稿搬送タイプの画像読取装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3631134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような画像読取装置においては、原稿自身がゴミを搬送し、静電気等の影響によってコンタクトガラス上にゴミや埃を付着させるため読み取り画像の画質を悪化させる。しかしながら、このようなゴミや埃は、原稿の搬送によって、コンタクトガラス上から消え去ることもあるが、原稿に記載されたボールペン等の半乾きのインクや半乾きの修正液等がコンタクトガラスに付着して汚れた場合には、このような汚れは、使用者が積極的にコンタクトガラスを頻繁に清掃しなければ、永久的にコンタクトガラスに異物となって残り、読み取り画像の画質を悪化させる。
【0005】
特に、画像読取装置がファクシミリ装置に適用されている場合には、読み取り画像を送信側のファクシミリ装置の使用者が確認することを行わないため、コンタクトガラスに異物が付着して、悪化した画像を送信していても、送信側の使用者は、当該コンタクトガラスのゴミ、ひいては、画像の悪化に気が付かず、異常画像、すなわち、黒スジ等の入った画像を半永久的に送信し続けるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みて、コンタクトガラスの清掃を必要とする異物による汚れを検出したときにのみコンタクトガラスの清掃を促し、原稿読取装置の利用性を向上させ、画像品質の良好な画像の出力を行うことのできる原稿読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の原稿読取装置は、色濃度基準板とコンタクトガラスとが配置される原稿読取位置を通る原稿の画像を読み取る原稿読取手段と、前記原稿読取位置のシェーディングデータを生成するシェーディング処理手段と、該シェーディング処理手段によるシェーディングデータが正常か異常かを判断する判断手段と、該判断手段によって前記シェーディングデータが異常と判断された場合は、前記原稿読取手段で読取処理された画像データを出力せずに、その異常なシェーディングデータから得られる色濃度異常個所を、表示部の画面上に図形化して表示する表示手段と、を備えたことを特徴としている。
【0008】
上記構成とすることにより、色濃度基準板やコンタクトガラスに汚れが付着している状態が生じていれば、この汚れた個所である色濃度異常個所を表示部の画面上において図形でその位置を確認することができ、使用者での確認を判り易くする。また、この表示時には、読み取られた画像データは出力されないため、色濃度異常個所で発生する黒スジによる画像形成不良を防止できる。特に受信側でしか確認できなかったファクシミリ装置に適用すれば、画像形成不良の画像データは出力されずに、正常な画像データのみが出力されるので、画像品質の良好な送信物を受信側で確実に得ることができる。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の原稿読取装置において、前記シェーディングデータが異常か正常かの前記判断手段による判断は、前記原稿読取手段による前記原稿の読取実施前に、読み取りを実施する当該原稿のサイズの領域内のみで判断されることを特徴とすることにより、読み取られる原稿のサイズの領域内に色濃度異常個所が無ければ(判断手段での正常との判断)、読み取られた原稿の画像データが出力されて、プリントやファクシミリ通信が行われるため、使用者は出力(通信)されれば良品の画質であることが同時に確認でき、このように使用者は通常の読み取り手順で異常を確認できるため、例えば、読取処理時に異常個所を無くすようにデータ処理する手法に比べ、原稿読取装置のシステム設計の開発コストを抑えることができる。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の原稿読取装置において、図形化した前記色濃度異常個所を表示する前記表示部の画面には、当該色濃度異常個所を示す文字情報の表示が付加されていることを特徴とすることにより、図形化されて判りやすく表示される色濃度異常個所に加えて、その図形化された個所がどの個所であるか文字でも明示されるため、扱いなれていない使用者でも、どのような異常がどこで発生しているのかの確認がしやすく利便性の良好な原稿読取装置を提供できる。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の原稿読取装置において、図形化した前記色濃度異常個所を表示する前記表示部の画面には、スケール目盛の表示が付加されていることを特徴とすることにより、色濃度異常個所の位置がスケール目盛で確認できるため、的確に異常個所を把握し清掃が行える原稿読取装置を提供できる。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の原稿読取装置においては、ネットワークと接続されるネットワーク通信機能を備え、該ネットワーク通信機能によって前記表示部の画面上に表示する図形化した色濃度異常個所を、前記ネットワークと接続される保守管理装置にEmailで送信することを特徴とすることにより、使用者が対処方法を知らない場合でも管理者は異常発生の原因を知ることができ、使用者からの聞き取り、異常の再現などを行う必要がなく、素早く対処できることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る原稿読取装置を備えた画像形成装置の概要図。
【図2】原稿読取装置における原稿読取位置の概要図。
【図3】シェーディングデータの波形を示す図。
【図4】原稿読取装置における制御部の電気的ブロック図。
【図5】制御部のフローチャートを示す図。
【図6】制御部の表示部による図形化させた表示内容を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態に係る原稿読取装置を備える画像形成装置の概要図である。図2は原稿読取装置における原稿読取位置の概要図である。図1、図2において、原稿読取装置1は載置された原稿Wを自動で搬送する自動原稿搬送装置(ADF)2を備えており、本例では複写機としての画像形成装置3の上方側に配設される。
【0015】
この原稿読取装置1は自動原稿搬送装置2によって搬送される原稿Wの画像を読み取るための画像読取部4を有している。この画像読取部4は、図2に示すように、自動原稿搬送装置2の一部を構成する搬送駆動ローラ5と搬送従動ローラ6とが配設される搬送経路7中に設けられる原稿読取位置Pに配設される。
【0016】
この原稿読取位置Pの画像読取部4は、原稿の画像を読み取る密着イメージセンサ(CIS)8と、該密着イメージセンサ8の上面には透明なコンタクトガラス9が設けられ、その上方には白基準レベルを補正するための白色基準板として機能するように、下面を白色となした色濃度基準板10が設けられている。
【0017】
この密着イメージセンサ8は、光源であるLED(図示せず)と、レンズ(図示せず)と、直線状配列の複数の光電変換機能を有するセンサ素子(図示せず)とにより構成される。この密着イメージセンサ8は、原稿Wのサイズに対応した有効画素を有している。
【0018】
この原稿読取位置Pの色濃度基準板10とコンタクトガラス9との間に、読み取られる画像面を下にして原稿Wが導かれ、かかる個所を通過する際に、画像が反射光により密着イメージセンサ8にて読み取られて排出される。
【0019】
なお、原稿読取位置Pの画像読取部4において、コンタクトガラス9と色濃度基準板10との間隔は狭く設定されていて、原稿Wはコンタクトガラス9に接した状態で搬送されるため、原稿Wに付着した汚れがコンタクトガラス9に付着することとなる。
【0020】
本発明では、このようなコンタクトガラス9の汚れをシェーディングデータにより判定する。シェーディング補正では、原稿読み取り時に例えば色濃度基準板10の主走査方向濃度を読み取ることにより白基準レベルを補正するものであるが、通常は図3(a)に示すようなシェーディングデータの正常な波形がコンタクトガラス9が汚れていれば、図3(b)に示すような異常な波形になることからコンタクトガラス9の汚れを判定している。このシェーディングデータの波形は縦軸に黒から白を示し、横軸に密着イメージセンサ8の有効画素を示している。
【0021】
次に、画像形成装置3としては、図1に示すように、用紙W1の給紙部11、用紙W1に画像を形成する画像形成部12、画像が形成された用紙W1が排出される排出部13を備えている。
【0022】
この画像形成部12の概要としては、画像形成される用紙W1は、感光体ドラム方向へ搬送され、転写ユニット14により感光体ドラム15上のトナーが用紙に転写される。トナーの転写が終了した用紙W1は、一対のヒートローラからなる定着部16を通過して、熱と圧力が加えられ、用紙W1上の未定着トナーが用紙W1に溶融・固着され、排紙ローラ17により排出部13に排出される。
【0023】
次に、図4に示すように、原稿読取装置1を制御する制御部18の概略構成としては、各種演算処理を実行し、画像形成装置3の各部を統合的に制御する制御回路であるCPU18aと、該CPU18aの動作手順を規定するプログラムやCPU18aが利用するデータが記録されている読み出し専用のメモリであるROM18bと、該ROM18bに記録されているプログラムが読み出されるメモリであると共に、CPU18aの作業領域として用いられるメモリであるRAM18cを有している。
【0024】
また、原稿読取装置1が備える各種アクチュエータ(例えば、搬送駆動ローラ5と搬送従動ローラ6)等への制御信号の出力や、各種センサ(例えば、原稿Wがセットされたことを検知する原稿検知センサ(図示せず))からの検出信号の入力を行い、CPU18aとの間で各信号を中継する入出力インタフェース回路(入力I/O)18dを有している。
【0025】
また、画像形成部12に対して各種情報や指令の入力及び装置状態の表示や利用者へのメッセージ、シェーディングデータから得られる色濃度異常個所を図形化して画面に表示する表示部19を備える液晶タッチパネル等の表示手段として機能する表示操作部18eを有している。この表示操作部18eは液晶ディスプレイ(LCD)上に透明な接触位置センサ(図示せず)を重ねた素子でもある。
【0026】
また、制御部18は、ネットワークインタフェース回路(I/F)18fを有している。このネットワークインタフェース回路18fは、インターネットルータ20、何台かのファイルサーバ21、何台かのコンピュータ22等を含むネットワーク23に接続され、このネットワーク23とのネットワーク通信機能を備えている。
【0027】
このネットワーク23のインターネットルータ20は、各コンピュータ22等をインターネット23に接続するための装置である。また、ファイルサーバ21は、共有フォルダが設定されているコンピュータである。また、コンピュータ22は、原稿読取装置1の保守管理者が使用するコンピュータである。
【0028】
また、制御部18は、密着イメージセンサ8により読み取られたアナログ画像信号をディジタル画像データに変換するAD変換機能、読み取られた画像データなどを記憶し、白基準レベルをシェーディング補正するためのシェーディングデータを生成するシェーディングデータ処理手段として機能する。また、制御部18は生成したシェーディングデータが正常か否かを判断するシェーディングデータの判断手段として機能する。また、制御部18と表示部19はシェーディングデータが異常の時にその旨を通知する異常通知の表示手段として機能する。
【0029】
詳しくは、密着イメージセンサ8からシェーディング信号が出力され、その信号をディジタル化して、複数の画素データからなる、図3に示したようなシェーディングデータを生成して出力されると、制御部18はそのシェーディングデータが異常か否かを判定する。一例としては図3(b)のように、シェーディングデータを構成する画素データが数画素にわたって所定値より小さくなるというような異常値の有無を判断するのである。
【0030】
つぎに、図5に示すように、この実施例の原稿読取装置1では、自動原稿搬送装置2から送り込まれる原稿Wが原稿読取位置Pに達する前に、白色基準板でもある色濃度基準板10からの反射光を読み取るシェーディング動作を開始させる(ステップS1)。続いて、密着イメージセンサ8から複数の画素データからなるシェーディングをもとにシェーディング処理手段によって生成されるシェーディングデータが入力されると、制御部18はそのシェーディングデータをRAM18cに格納し、制御部18はRAM18cからシェーディングデータを順次読み出し、シェーディングデータが異常か否かを判断する(ステップS2)。
【0031】
そして、シェーディングデータに異常であると(ステップS2で「Yes」)、制御部18はその異常個所が読み取る原稿Wのサイズの領域内に存在するか否かを判断する(ステップS3)。そして、異常個所がサイズの領域内であると(ステップS3で「Yes」)、原稿読取位置Pを通過して密着イメジセンサ8によって読み取られた原稿Wの画像データは、画像形成部12(ファクシミリ装置であれば通信装置)には出力されず、この画像データに換えて異常なシェーディングデータをもとにして、それを制御部18によって図形化し、この図形化した異常なシェーディングデータを表示部19で図6に示すように、図形化して表示させる(ステップS4)。その後、異常なシェーディングデータが発生したことを管理者へEmailで通知する(ステップS5)。
【0032】
一方、シェーディングデータが正常であると(ステップS2で「No」)、制御部18は、原稿Wを原稿読取位置Pを通過させながら通常の密着イメジセンサ8による読み取りを実施したり、また、異常個所が読み取る原稿Wのサイズの領域外であれば(ステップS2で「No」)、制御部18は原稿Wを原稿読取位置Pを通過させながら通常の密着イメジセンサ8による読み取りを実施する(ステップS6)。
【0033】
この表示形態としては、図6に示すように、原稿の幅方向に対応したスケール目盛24(0mmを基点として100mm間隔で300mmの終点までの寸法表示を併記)が表示されるとともに、本例では異常個所としての黒スジに対応させた黒線25を約50mmの位置に表示している。また、色濃度異常個所を示す文字情報として例えば、「コンタクトガラス、またシェーディング板(色濃度基準板)が汚れています、清掃して下さい。」、「以下の画像のスジ部分が汚れの個所です。」の表示をしている。
【0034】
このように、コンタクトガラス9の汚れ具合が検知され、汚れていれば、原稿Wを搬送することなく、使用者や管理者に汚れている旨が通知されるので、その時点でコンタクトガラス9を清掃することができる。この実施例の原稿読取装置1では所定枚数(1枚若しくは複数枚)の原稿Wを読み取る前に、コンタクトガラス9(色濃度基準板10も含む)の汚れ具合を判定する。
【0035】
なお、シェーディング動作は、原稿Wの先端が原稿読取位置Pの直前まで来たときに行う場合では、その時点でコンタクトガラス9の汚れが通知されたのでは使い勝手上問題があるので、次に搬送される原稿Wが自動原稿搬送装置2のセット(待機状態も含む)されたときにシェーディング動作を行い、異常があればその時点でその旨を通知するようにすることが好ましい。
【0036】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0037】
4 原稿読取部(原稿読取手段)
9 コンタクトガラス
10 色濃度基準板
19 表示部
22 コンピュータ(保守管理装置)
23 ネットワーク
P 原稿読取位置
W 原稿

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色濃度基準板とコンタクトガラスとが配置される原稿読取位置を通る原稿の画像を読み取る原稿読取手段と、
前記原稿読取位置のシェーディングデータを生成するシェーディング処理手段と、
該シェーディング処理手段によるシェーディングデータが正常か異常かを判断する判断手段と、
該判断手段によって前記シェーディングデータが異常と判断された場合は、前記原稿読取手段で読取処理された画像データを出力せずに、その異常なシェーディングデータから得られる色濃度異常個所を、表示部の画面上に図形化して表示する表示手段と、
を備えたことを特徴とする原稿読取装置。
【請求項2】
前記シェーディングデータが異常か正常かの前記判断手段による判断は、前記原稿読取手段による前記原稿の読取実施前に、読み取りを実施する当該原稿のサイズの領域内のみで判断されることを特徴とする請求項1に記載の原稿読取装置。
【請求項3】
図形化した前記色濃度異常個所を表示する前記表示部の画面には、当該色濃度異常個所を示す文字情報の表示が付加されていることを特徴とする請求項2に記載の原稿読取装置。
【請求項4】
図形化した前記色濃度異常個所を表示する前記表示部の画面には、スケール目盛の表示が付加されていることを特徴とする請求項3に記載の原稿読取装置。
【請求項5】
ネットワークと接続されるネットワーク通信機能を備え、該ネットワーク通信機能によって前記表示部の画面上に表示する図形化した色濃度異常個所を、前記ネットワークと接続される保守管理装置にEmailで送信することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の原稿読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−44918(P2011−44918A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191984(P2009−191984)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000006932)リコーエレメックス株式会社 (708)
【Fターム(参考)】