説明

反射シート及びバックライトユニット

【課題】導光板裏面などの重ね合わせた面の傷付きの発生及びスティッキングが防止できるとともに光源からの熱等によって撓みが生じ難い反射シート、及び、かかる反射シートを用いて輝度の向上及び輝度の均一化を図ることができるバックライトユニットの提供する。
【解決手段】光線の放散を低減するバックライトユニット用の反射シート1であって、シート状に形成されたシート本体2と、このシート本体の表面側に配設される繊維集合層4とを備え、上記繊維集合層が、多数の繊維と、多数の繊維間の空隙とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光線の放散を低減するバックライトユニット用の反射シート、及びこの反射シートを用いたバックライトユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、液晶層を背面から照らして発光させるバックライト方式が普及し、液晶層の下面側にエッジライト型、直下型等のバックライトユニットが装備されている。かかるエッジライト型のバックライトユニット30は、一般的には図2に示すように、棒状に配設されたLEDからなる光源31と、この光源31に端部が沿うように配置される方形板状の導光板33と、この導光板33の表面側に積層された複数枚の光学シート32と、導光板33の裏面側に積層された反射シート36とを装備している。この光学シート32は、それぞれ、屈折、拡散等の特定の光学的性質を有するものであり、具体的には、導光板33の表面側に配設される光拡散シート34、光拡散シート34の表面側に配設されるプリズムシート35などが該当する。
【0003】
このバックライトユニット30の機能を説明すると、まず、光源31より導光板33に入射した光線は、導光板33裏面の反射ドット(図示していない)及び各側面で反射され、導光板33表面から出射される。導光板33から出射した光線は光拡散シート34に入射し、拡散され、光拡散シート34表面より出射される。その後、光拡散シート34から出射された光線は、プリズムシート35に入射し、プリズムシート35の表面に形成されたプリズム部35aによって、略法線方向にピークを示す分布の光線として出射される。このように、光源31から出射された光線が、光拡散シート34によって拡散され、またプリズムシート35によって略法線方向にピークを示すように屈折され、さらに上方の図示していない液晶層全面を照明するものである。
【0004】
一方、液晶画面がぎらつかない程度に導光板33裏面から放散される光線を表面側に反射させて輝度の向上を図ること(反射性)、バックライトユニット30の裏面側に配設される装置(フレーム等)が視認されるのを防止すること(隠蔽性)を目的として、導光板33の裏面側には反射シート36が配設されている。
【0005】
かかる反射シート36としては、従来、(a)合成樹脂製のシート中に酸化チタンなどの白色顔料が分散したもの、(b)合成樹脂製のシート中に光を散乱させるためのボイド(気泡)が分散したもの、(c)シート表面がマット状に形成されたものなどが用いられている。
【0006】
しかし、上記従来の反射シート36は、比較的硬質であるため、バックライトユニット30において表面側に積層される導光板33の裏面に傷を付けてしまうおそれがある。特に、裏面に浅い傾斜のプリズム部を有し、出光光線に法線方向への指向性を付与する導光板33や、非晶性オレフィン系樹脂製の比較的軟質の導光板33(例えば日本ゼオン(株)社製「ゼオノア導光板」)の場合、反射シート36によって裏面への傷付き発生のおそれが比較的大きい。このように、導光板33の裏面に傷が付くと、表面側への出光量の低下や輝度ムラを招来する。
【0007】
かかる傷付き発生の問題に鑑みて、反射シートの表面側に、バインダー中にビーズを分散してなる傷付き防止層を設けたものが提案されている(特開2004−85633号公報参照)。
【0008】
しかしながら、上記傷付き防止層を備えた反射シートであっても、ビーズの種類や形状等によっては、ビーズによって導光板にスクラッチ傷が生じてしまうおそれがある。
【0009】
また、反射シートはバックライトユニットの光源に近接する部位ほど温度が高くなるため、この温度によって上述した従来の反射シートは撓みが生じてしまい、この撓みに基づいて輝度ムラが生じるという問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−85633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこれらの不都合に鑑みてなされたものであり、導光板裏面などの重ね合わせた面の傷付きの発生及びスティッキングが防止できるとともに光源からの熱等によって撓みが生じ難い反射シート、及び、かかる反射シートを用いて輝度の向上及び輝度の均一化を図ることができるバックライトユニットの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するためになされた発明は、
光線の放散を低減するバックライトユニット用の反射シートであって、
シート状に形成されたシート本体と、このシート本体の表面側に配設される繊維集合層とを備え、
上記繊維集合層が、多数の繊維と、多数の繊維間の空隙とを有することを特徴としている。
【0013】
当該反射シートの表面には、繊維集合層が配設されているため、バックライトユニットにおいて、当該反射シートの表面側に重ねて配設される導光板に対して繊維集合層で当接するので、導光板の裏面への傷付きを格段に低減することができる。また、当該反射シートの保存、運搬等の際に、巻いたり、重ねたりして当該反射シート同士が擦れ合っても、互いに傷つけ合うことが防止される。
【0014】
さらに、当該反射シートは、バックライトユニットにおいて、表面側の導光板と繊維集合層の繊維によって当接し、この繊維集合層は空隙を有するため、当該反射シートと導光板とのスティッキングが防止される。
【0015】
また、当該反射シートは、多数の繊維が空隙を有するよう配設されているので、この空隙の存在によって光線を屈折することができ、これにより高い反射率を得ることができる。特に、空隙内の空気は屈折率が極めて低いので、他の構成部材との間で高い屈折率差を得ることができ、これにより光線を大きく屈折させることができ、反射性を向上させることができる。
【0016】
しかも、バックライトにおいて、導光板の側面に配置される光源と、当該反射シートのシート本体との間には、当該反射シートの繊維集合層が位置することになるので、光源からの熱は、直接シート本体に伝達されずに繊維集合層によって緩和されてシート本体に伝達されるので、シート本体に熱による撓みが生じ難く、これにより、撓みによる輝度ムラの発生を防止することができる。
【0017】
当該反射シートにあっては、上記繊維集合層を、織物や編物等から構成することも可能であるが、不織布から構成することが好ましい。不織布から繊維集合層を構成することにより、傷付き防止性、スティッキング防止性及び耐熱性に優れるとともに、この繊維集合層の下層(裏面側の層)との接合が容易且つ確実に行い得る。
【0018】
また、当該反射シートにあっては、繊維集合層の繊維が主として白色繊維であることが好ましい。これにより、繊維集合層によって反射性及び隠蔽性を得ることができる。
【0019】
さらに、当該反射シートにあっては、シート本体の表面に上記繊維集合層を接着する接着剤層をさらに備えることが好ましい。これにより、繊維集合層が確実かつ安定的に接着剤層によって接着されることになり、繊維集合層の剥離等を的確に防止できる。
【0020】
上記接着剤層の表面側の一部が、繊維集合層の裏面側の一部に含浸されている構成を採用することが好ましい。これにより、繊維集合層の接着をより強固で安定的なものとすることができる。
【0021】
上記接着剤層としては、白色顔料を含有する樹脂層を採用することが好ましい。これにより接着剤層によって反射性及び隠蔽性を得ることができる。
【0022】
また、当該反射シートにあっては、シート本体が白色合成樹脂製の基材シート層を有することが好ましい。これにより基材シート層によって反射性及び隠蔽性を得ることができる。
【0023】
従って、光源と、この光源の側方に配設される導光板と、この導光板の表面側に配設される光学シートとを備え、光源から発せられる光線を分散させて表面側に導く液晶表示装置用のバックライトユニットにおいて、上記導光板の裏面側に当該反射シートを備えると、前述のように当該反射シートが高い傷付き防止性を奏することから、導光板裏面の傷付きが防止でき、また、当該反射シートのスティッキング防止性により、反射シートと導光板裏面とのスティッキングも防止でき、さらに、光源からの熱による当該反射シートの撓みも防止することができ、このため、輝度の低下及び輝度ムラの発生を防止することができる。また、組み付け等の作業性も良好である。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明の反射シート及びこれを用いたバックライトユニットによれば、繊維集合層によって導光板裏面などの重ね合わせた面の傷付きの発生及びスティッキングが防止できるとともに光源からの熱等による撓みが生じ難く、これによって輝度の向上及び輝度の均一化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る反射シートを示す模式的断面図
【図2】一般的なエッジライト型のバックライトユニットを示す模式的斜視図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参酌しつつ本発明の実施の形態を説明する。
【0027】
図1の反射シート1は、シート本体2、このシート本体2の表面側に積層される繊維集合層4、及びシート本体2と繊維集合層4とを接着する接着剤層5とを備えている。
【0028】
<シート本体2>
上記シート本体2は、多層構造のものも採用できるが、本実施形態のシート本体2は、白色合成樹脂製の基材シート層3から構成されている。この白色合成樹脂は、白色顔料や微小気泡を分散含有する合成樹脂である。この基材シート層3に使用可能な合成樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン、セルロースアセテート、耐候性塩化ビニル樹脂等が挙げられる。中でも、耐熱性に優れるポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0029】
この基材シート層3(シート本体2)の厚みは、特には限定されないが、例えば50μm以上400μm以下とされる。基材シート層3の厚みが上記範囲未満であると、接着剤層5を形成する樹脂組成物を塗工した際等にカールが発生しやすくなってしまうことがある。逆に、基材シート層3の厚みが上記範囲を超えると、バックライトユニットの厚みが大きくなって液晶表示装置の薄型化の要請に反することにもなる。
【0030】
<繊維集合層4>
繊維集合層4は、多数の繊維を有する層である。ここで、繊維同士は他の繊維と少なくとも一部が離間するよう配設され、これにより繊維集合層4には空隙が形成されている。つまり、繊維集合層4は、多数の繊維と、この多数の繊維間の空隙とを有し、クッション性(緩衝性)を備えている。本実施形態の繊維集合層4は、多数の繊維が不規則に絡み合わされてなる不織布から構成されている。
【0031】
この不織布としては、乾式法、湿式法、メルトブロー法によってフリースが形成されるものを用いることも可能であるが、スパンボンド法によりフリースが形成されるスパンポンド不織布を好適に用いることができる。スパンボンド不織布を採用することによって、好適な厚み及び密度を有し耐摩耗性等に優れた不織布を容易且つ確実に製造することができる。
【0032】
また、不織布は、短繊維不織布を用いることも可能であるが、強度及び柔軟性の観点から長繊維不織布を採用することが好ましい。なお、長繊維不織布に短繊維を含有させた不織布を用いることも可能である。
【0033】
さらに、繊維集合層4を構成する繊維は、特に限定されるものではなく、天然繊維及び化学繊維を用いることができる。天然繊維としては、例えば、綿繊維、麻繊維等が挙げられる。化学繊維としては、例えば、アラミド繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等)、ナイロン繊維、ビニロン繊維、セルロース繊維、ガラス繊維等が挙げられる。なお、これらの繊維は、一種又は複数組み合わせて用いることも可能である。
【0034】
本実施形態においては、不織布を構成する繊維としては、耐久性等の観点から化学繊維が好適に用いられ、中でもスパンボンド法によって容易且つ確実に形成でき生産効率の高いポリオレフィン樹脂が好適に用いられる。特に、ポリオレフィン樹脂の中でも汎用性に富むポリエチレン繊維が好適に用いられ、中でも耐熱性が高いことから高密度ポリエチレン繊維を用いることが好ましい。
【0035】
また、不織布を構成する繊維は、透明な繊維から構成することも可能であるが、主として白色繊維から構成されることが好ましい。これにより、繊維集合層4の白色度が高くなり、繊維集合層4において反射性が得られる。
【0036】
上記繊維の太さ等は特に限定されるものではないが、繊維の太さ(及び線密度)の下限としては、0.01デニールが好ましく、0.05デニールがより好ましく、0.1デニールが特に好ましい。一方、繊維の太さ(及び線密度)の上限としては、30デニールが好ましく、20デニールがより好ましく、10デニールが特に好ましい。繊維の太さ(及び線密度)が上記下限よりも細いと、繊維自体に腰がなく、繊維集合層4に十二分な柔軟性が得られないおそれがあり、一方、上記上限を超えると、繊維自体の剛性が強くなり過ぎるおそれがあり、繊維によってスクラッチ傷が発生するおそれが生ずるためである。なお、「デニール」とは繊維の太さ及び線密度を表わす単位であり、9000mの繊維の質量をグラム単位で表わした数値である。
【0037】
また、不織布の厚みも特に限定されるものではないが、不織布(繊維集合層4)の平均厚みの下限としては、50μmが好ましく、100μmがより好ましく、200μmがさらに好ましい。一方、不織布の平均厚みの上限としては、3mmが好ましく、2mmがより好ましく、1mmがさらに好ましい。不織布の平均厚みが上記下限よりも小さいと、繊維集合層4による効果(耐熱性等)が十二分に発揮されないおそれがあるためであり、一方、上記上限を超えると、反射シート1が厚くなり、バックライトユニットの厚みが大きくなって液晶表示装置の薄型化の要請に反するおそれがあるためである。なお、不織布の厚みは、JIS−L−1906に準じて測定し、荷重10kPaの圧力下で厚みを複数点(3カ所)測定してその平均を求めた数値である。
【0038】
また、上記不織布の目付も特に限定されないが、不織布の目付の下限としては、10g/mが好ましく、20g/mがより好ましく、30g/mがさらに好ましい。一方、不織布の目付の上限としては、200g/mが好ましく、150g/mがより好ましく、100g/mがさらに好ましい。不織布の目付が上記下限よりも小さいと、繊維集合層4による効果(耐熱性等)が十二分に発揮されないおそれがあるためであり、一方、上記上限を超えると、不織布が厚くなり過ぎる或いは不織布が硬くなり過ぎるおそれがあるためである。なお、かかる目付(g/m2 )はJIS−L−1906に準じて測定される数値である。
【0039】
さらに、上記不織布の平均見掛け密度も特に限定されないが、不織布の平均見掛け密度の下限としては、0.03g/cmが好ましく、0.05g/cmがより好ましく、0.07g/cmがさらに好ましい。一方、不織布の平均見掛け密度の上限としては、0.6g/cmが好ましく、0.4g/cmがより好ましく、0.2g/cmがさらに好ましい。不織布の平均見掛け密度が上記下限よりも小さいと、繊維集合層4による効果(耐熱性等)が十二分に発揮されないおそれがあるためであり、一方、上記上限を超えると、不織布が硬くなり過ぎるおそれがあるためである。なお、かかる平均見掛け密度は、上記のように測定される目付及び平均厚みの数値を基に算出することができ、具体的には、目付を平均厚みで割った数値である。
【0040】
<接着剤層5>
上記接着剤層5は、繊維集合層4を基材シート層3に接着するための接着剤から構成される層であり、基材シート層3及び/又は繊維集合層4の平面方向全面にわたって配設されている。この接着剤層5の表面側の一部は繊維集合層4の裏面側の一部に含浸されており、具体的には、接着剤層5は、繊維集合層4の表面までは含浸されずに繊維集合層4の一部のみに含浸するよう設けられている。ここで、接着剤層5のうち繊維集合層4に含浸される部分の厚みは、繊維集合層4の平均厚みの3%以上70%以下であることが好ましく、より好ましくは7%以上50%以下であり、特に好ましくは10%以上30%以下である。接着剤層5が含浸される厚みが上記下限未満であると繊維集合層4の接着力が弱くなるおそれがあり、一方、上記上限を超えると、繊維集合層4の柔軟性等に欠け繊維集合層4の所望の機能が十二分に発揮されないおそれがあるためである。
【0041】
上記接着剤層5を構成する接着剤としては、特に限定されないが、ラミネート用接着剤又は溶融押出樹脂が好適に用いられる。このラミネート用接着剤としては、例えばドライラミネート用接着剤、ウェットラミネート用接着剤、ホットメルトラミネート用接着剤、ノンソルベントラミネート用接着剤等が挙げられる。これらのラミネート用接着剤の中でも接着強度、耐久性、耐候性等に優れ、基材シート層3表面の欠陥(例えばキズ、ピンホール、凹部等)を封止及び保護する機能を有するドライラミネート用接着剤が特に好ましい。
【0042】
上記ドライラミネート用接着剤としては、例えばポリ酢酸ビニル系接着剤、アクリル酸のエチル,ブチル,2−エチルヘキシルエステル等のホモポリマーまたはこれらとメタクリル酸メチル,アクリロニトリル,スチレン等との共重合体等からなるポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレンと酢酸ビニル,アクリル酸エチル,アクリル酸,メタクリル酸等のモノマーとの共重合体等からなるエチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、尿素樹脂,メラミン樹脂等からなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤、クロロプレンゴム,ニトリルゴム,スチレン−ブタジエンゴム等からなるゴム系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケート,低融点ガラス等からなる無機系接着剤などが挙げられる。これらのドライラミネート用接着剤の中でも、バックライトとして長期間使用に起因する接着強度低下やデラミネーションが防止され、さらに接着剤層5の黄変等の劣化が低減されるポリウレタン系接着剤、特にポリエステルウレタン系接着剤が好ましい。また硬化剤としては、熱黄変が少ない脂肪族系ポリイソシアネートが好ましい。
【0043】
上記溶融押出樹脂としては、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、酸変性ポリエチレン系樹脂、酸変性ポリプロピレン系樹脂、エチレン−アクリル酸又はメタクリル酸共重合体、サーリン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル系樹脂、エチレン−アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル共重合体、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂の1種又は2種以上を使用することができる。なお、上記溶融押出樹脂を用いた押出ラミネート法を採用する場合、より強固な接着強度を得るために、上記各フィルムの積層対向面に上述のアンカーコート処理等の表面処理を施すとよい。
【0044】
接着剤層5の積層量(固形分換算)の下限としては1g/mが好ましく、3g/mがより好ましく、5g/mが特に好ましい。一方、接着剤層5の積層量の上限としては、25g/mが好ましく、20g/mがより好ましく、15g/mが特に好ましい。接着剤層5の積層量が上記下限より小さいと、接着強度が得られないおそれがある。一方、接着剤層5の積層量が上記上限を超えると、繊維集合層4に接着剤層5が含浸し過ぎてしまい、繊維集合層4の柔軟性等が損なわれるおそれがある。
【0045】
また、接着剤層5には顔料が分散含有されている。具体的には、接着剤層5を構成する接着剤(ラミネート用接着剤や溶融押出樹脂中等)に顔料を混合することにより、接着剤層5に顔料が分散含有されている。
【0046】
この顔料としては白色顔料が好適に用いられる。この白色顔料の種類は、特に限定されるものではなく、例えば、酸化チタン(チタン白)、シリカ、炭酸カルシウム(白亜)、酸化亜鉛(亜鉛華)、炭酸鉛(鉛白)、硫酸バリウム等が挙げられる。中でも、隠蔽性向上効果が大きい酸化チタンが好ましい。また、白色顔料の平均粒子径は、100nm以上30μm以下が好ましく、200nm以上20μm以下が特に好ましい。これは、白色顔料の平均粒子径が上記範囲より小さいと、当該反射シート1に十分な反射性及び隠蔽性を付与できなくなるおそれがあり、逆に、白色顔料の平均粒子径が上記範囲を超えると、当該反射シート1の反射性及び隠蔽性が不均一になるおそれがあることからである。なお、この接着剤層5の白色顔料の構成は、上記基材シート層3の白色顔料においても好適に採用できる。
【0047】
接着剤における白色顔料の含有量(固形分換算)の下限としては、70質量%が好ましく、80質量%が特に好ましい。一方、上記含有量の上限としては、100質量%が好ましく、90質量%が特に好ましい。これは、白色顔料の含有量が上記下限より小さいと、接着剤層5による反射性及び隠蔽性の向上効果が小さくなり、逆に、白色顔料の含有量が上記上限を超えると、接着剤の塗工が困難になることからである。
【0048】
また、接着剤層5を構成する接着剤には、取扱性、耐熱性、耐候性、機械的性質等を改良、改質する目的で、例えば、溶媒、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、充填剤、強化繊維、補強剤、帯電防止剤、難燃剤、耐炎剤、発泡剤、防カビ剤等の種々の添加剤を適宜混合することができる。
【0049】
<製造方法>
次に、当該反射シート1の製造方法について説明する。当該反射シート1は、(a)不織布を形成する不織布形成工程と、(b)シート本体2(基材シート層3)を成形するシート本体形成工程と、(c)不織布形成工程により形成された不織布と、シート本体形成工程により形成されたシート本体2とを積層接着する積層接着工程とを備えている。
【0050】
上記不織布形成工程においては、例えばスパンボンド法によってシート状の不織布を形成する。また、上記シート本体2形成工程においては、例えば押出成形法によってシート状にシート本体2を成形する。さらに、上記積層接着工程においては、不織布とシート本体2とを接着剤を挟んで重ねあわせて、例えばドライラミネート法によって両者を積層接着している。
【0051】
<バックライトユニット30>
当該反射シート1は、図2に示すようなエッジライト型のバックライトユニット30において、反射シート36として使用される。つまり、光源31と、この光源31の側方に配設される導光板33と、この導光板33の表面側に配設される光学シート32とを備える液晶表示装置用のバックライトユニット30において、上記導光板33の裏面側に当該反射シート1が配設される。
【0052】
当該反射シート1は、表面に繊維集合層4が配設されているため、当該反射シート1の表面側に重ねて配設される導光板33に対して繊維集合層4の繊維によって当接し、これにより導光板33の裏面への傷付きを格段に低減することができる。なお、バックライトユニット30に組み込む前において、当該反射シート1の保存、運搬等のために、巻いたり、重ねたりした際に、当該反射シート1同士が擦れ合っても、互いに傷つけ合うことが防止される。
【0053】
さらに、当該反射シート1は、表面側の導光板33と繊維集合層4の繊維によって当接し、この繊維集合層4は空隙を有するため、当該反射シート1と導光板33とのスティッキングが防止される。
【0054】
また、当該反射シート1は、多数の繊維が空隙を有するよう配設されているので、この空隙の存在によって光線を屈折することができ、これにより高い反射率を得ることができる。特に、空隙内の空気は屈折率が極めて低いので、繊維集合層4の繊維や接着剤層5との間で高い屈折率差が生じ、この高い屈折率差に基づいて光線を大きく屈折させることができ、高い反射性を奏することができる。
【0055】
しかも、光源31と、当該反射シート1のシート本体2との間には、当該反射シート1の繊維集合層4が位置することになるので、光源31からの熱は、直接シート本体2に伝達されずに繊維集合層4によって緩和されてシート本体2に伝達されるので、シート本体2に熱による撓みが生じ難く、これにより、撓みによる輝度ムラの発生を防止することができる。
【0056】
さらに、当該反射シート1にあっては、シート本体2の表面に上記繊維集合層4を接着する接着剤層5を備えるので、繊維集合層4が確実かつ安定的に接着剤層5によって接着され、繊維集合層4の剥離等が防止できる。
【0057】
特に、繊維集合層4が不織布から構成されているので、上述の傷付き防止性、スティッキング防止性及び耐熱性に優れ、しかも製造コストの低減を図ることができるとともに、積層接着時に繊維集合層4に接着剤が侵入することによって繊維集合層4と接着剤層5との接合がより確実なものとなる利点を有する。
【0058】
また、当該反射シート1は、繊維集合層4の繊維が主として白色繊維であり、また接着剤層5が白色顔料を分散含有し、さらに基材シート層3が白色合成樹脂製であるので、これらの層によって高い反射性及び隠蔽性を得ることができる。
【0059】
<その他の実施形態>
なお、上記実施形態は上記構成から上記利点を奏するものであったが、本発明は上記実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内において適宜設計変更可能である。
【0060】
つまり、上記実施形態においては、繊維集合層4、接着剤層5及びシート本体2の何れもが白色であるものについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、所望の反射性が得られるものであれば適宜設計変更可能である。具体的には、繊維集合層4の繊維が無色透明であり、接着剤層5に白色顔料が分散含有された反射シート1であっても本願発明の意図する範囲内である。このように接着剤層5に白色顔料を分散含有することにより、繊維の強度を落とすことなく十分な反射性を得ることが可能となる。つまり、仮に繊維に高い反射性を付与すべく繊維形成材料の樹脂中に白色顔料を多く添加した場合には、繊維が脆くなり、繊維集合層4の強度が落ちるおそれがあるが、接着剤に白色顔料を多く添加しても、接着剤層5の強度は比較的維持されやすく、このため十分な強度を有したまま十分な反射性を得ることができることになる。
【0061】
また、上記実施形態においては、不織布から繊維集合層4を構成するものについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。つまり、繊維集合層4として、不織布のほか、一方向(例えばシート本体の一辺方向と平行)に引き揃えられた縦糸と、この一方向に交差(直交)する方向に引き揃えられ縦糸に絡み合うよう配設された横糸とからなる織物等の布帛から構成することができる。なお、繊維集合層を構成する布帛としては、一本(又は数本)の糸により多数のループを形成して、多数のループが絡み合うように編まれた編物等を採用することも可能である。さらには、繊維集合層を、シート本体に多数の繊維が植毛された植毛層から構成することも可能である。なお、織物や編物等の布帛を採用する場合には、この布帛を構成する繊維として、綿糸を好適に用いることができる。また、編物から構成する場合には、生地本体から立ち上がったパイルを有するものも用いることが可能である。
【0062】
さらに、上記実施形態においては接着剤層5を有するため、この接着剤層5を介して繊維集合層4がシート本体2に容易且つ確実に積層接着されるものであったが、接着剤層5は本発明において必須の構成ではない。つまり、例えばシート本体2に直接繊維集合層4が積層されているものも本発明の意図する範囲内であり、シート本体成形時においてガラス軟化点温度以上の状態のシート本体に繊維集合層を圧接することにより、シート本体に繊維集合層を積層することも可能である。
【0063】
また、上記実施形態においてはシート本体2が基材シート層3の一層構造からなるものについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、例えば、基材シート層の裏面(繊維集合層の形成されない側の面)に高隠蔽層を積層したシート本体を採用することも可能である。この高隠蔽層とは、高い隠蔽性及び反射性を有する層であり、具体的には基材シート層の裏面に白色顔料を含有する塗料を塗工することで形成することができる。この高隠蔽層に用いられる塗料の塗膜成形主要素、副要素及び助要素(顔料を除く部分)としては、特に限定されるものではなく、一般的なものが用いられる。なお、この白色顔料としては、上記実施形態で説明した白色顔料と同様のものを用いることができる。
【実施例1】
【0064】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0065】
[実施例1]
シート本体(基材シート層)として白色PET(ポリエチレンテレフタレート)製のシート(東レ(株)社製の「ルミラ−E60L」)を用いた。このシート本体の表面に、不織布(デュポン社製の「タイベック」)をドライラミネートによって積層接着して、実施例1の反射シートを作製した。ここで、不織布を接着する接着剤は、ドライラミネート用接着剤(大日精化株式会社製の「E263」)に酸化チタン90質量%を混合したものを用い、この接着剤層の積層量(固形分換算)は10g/mとした。
【0066】
[実施例2]
ドライラミネート用接着剤に酸化チタンを混合しなかった以外は、実施例1と同様の方法により作成して、実施例2の反射シートを得た。
【0067】
[比較例]
実施例1の白色PET製のシートを、比較例として用いた。
【0068】
[特性の評価1]
上記実施例1、実施例2及び比較例の反射シートの表面に導光板(日本ゼオン(株)社製「ゼオノア導光板」)を載置して、導光板の傷付きと、導光板とのスティッキングの発生を調べた。その結果を表1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
この結果、実施例1及び実施例2の反射シートは、比較例のものに比べて、導光板への傷付き防止性及びスティッキング防止性が高かった。
【0071】
[特性の評価2]
上記実施例1、実施例2及び比較例の反射シートをバックライトユニットに組み込んで、輝度の測定及び分光反射率の測定を行った。反射シートを組み込んだ液晶表示装置のバックライトは、42インチのもの、LG電子製の「42LE8500」の液晶表示装置のバックライトを用いた。具体的には、このバックライトの反射シートを上記実施例1、実施例2及び比較例の反射シートに取り換えて(反射シート以外の構成(導光板、光源等)についてはLG電子製42インチのバックライトのものをそのまま使用して)、輝度の測定及び分光反射率の測定を行った。輝度及び色度の測定は、スガ試験機株式会社製の「多光源分光測色計(MSC−IS−2DH)」を用いて測定した数値の10点平均値である。この測定結果を下記表2に示す。また、分光反射率の測定は、日本分光社製の「紫外可視分光光度計V670」を用いて測定した数値の10点平均値であり、この測定結果を下記表3に示す。
【0072】
【表2】

【0073】
【表3】

【0074】
この結果、実施例1の反射シートは、比較例のものに比べて高輝度であることが判明した。また、実施例1の反射シートは、比較例のものに比べて波長間で反射率が一定であることが判明した。また、実施例2の反射シートは比較例のものと比べて輝度が若干低下するものの、比較例のものと比べて波長間で反射率の差が小さいことが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上のように、本発明は、高い傷付き防止性、スティッキング防止性及び耐熱性を奏する反射シートであるので、バックライトユニットに用いることにより、輝度の向上を図ることができ、このため液晶表示装置において好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0076】
1 反射シート
2 シート本体
3 基材シート層
4 繊維集合層
5 接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光線の放散を低減するバックライトユニット用の反射シートであって、
シート状に形成されたシート本体と、このシート本体の表面側に積層される繊維集合層とを備え、
上記繊維集合層が、多数の繊維と、多数の繊維間の空隙とを有することを特徴とする反射シート。
【請求項2】
上記繊維集合層が不織布である請求項1に記載の反射シート。
【請求項3】
上記繊維集合層の繊維が主として白色繊維である請求項1又は請求項2に記載の反射シート。
【請求項4】
上記シート本体の表面に上記繊維集合層を接着する接着剤層をさらに備える請求項1、請求項2又は請求項3に記載の反射シート。
【請求項5】
上記接着剤層の表面側の一部が、上記繊維集合層の裏面側の一部に含浸されている請求項4に記載の反射シート。
【請求項6】
上記接着剤層に、白色顔料が分散含有されている請求項4又は請求項5に記載の反射シート。
【請求項7】
上記シート本体が、白色合成樹脂製の基材シート層を有する請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の反射シート。
【請求項8】
光源と、この光源の側方に配設される導光板と、この導光板の表面側に配設される光学シートとを備え、光源から発せられる光線を分散させて表面側に導く液晶表示装置用のバックライトユニットにおいて、上記導光板の裏面側に請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の反射シートを備えていることを特徴とする液晶表示装置用のバックライトユニット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−242755(P2012−242755A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115049(P2011−115049)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000165088)恵和株式会社 (63)
【Fターム(参考)】