説明

反射体、照明装置、及び反射体の設計方法

【課題】配光等の仕様変更等にも柔軟に対応でき、開発期間を短縮可能にする。
【解決手段】道路灯1の灯具本体2にランプ6とともに収容され、前記ランプ6を包囲し前記ランプ6の放射光を反射して配光を制御する反射面を有した反射鏡10において、板材を折り曲げ加工して複数の平面状の平面反射面27を形成した複数の反射部材DEを備え、前記反射部材DEを組み合わせて前記反射面を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランプの反射体、照明装置、及び反射体の設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、道路灯やトンネル照明装置等の照明装置は、筐体に、HIDランプやハロゲンランプ等のランプと、このランプを包囲し当該ランプの放射光を路面に向けて反射して所定の配光を形成する反射体としての反射鏡とを備えている。
反射鏡は、一般に、量産性や製造性を考慮して、金型によるアルミ板のプレス加工(型押し成形加工)で反射面が立体的に一体に形成されている(例えば、特許文献1、及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−48894号公報
【特許文献2】特開2005−203302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、金型製作には多くの時間がかかり、開発期間の短縮化も困難である。
また照明装置が満足すべき配光性能には、様々な条件が設定されており、設計時には、この条件を満たす配光設計が行われている。かかる条件は、照明装置の照明対象や設置態様等の条件である。道路照明を例示すると、道路照明の目的は、夜間に道路利用者が安全、快適に通行できるように、道路状況・交通状況・障害物の識別などの良好な視覚情報を確保するため、道路照明設置基準に基づき所要の配光性能が道路照明に用いられる例えば道路灯やトンネル照明装置等の照明装置に要求される。また道路照明では、必用な路面輝度を確保する上で照明装置の設置間隔や設置高さが大きく影響し、道路の分類(道路種別や、車線幅、車線数等)によっても必用とされる平均路面輝度および輝度均斉度が異なることから、これらの因子が上記条件として設定される。
かかる配光設計に則して反射鏡を製造する場合、金型を用いた製造においては、金型を製作してから反射鏡を試作し、その配光性能を測定、分析した後、反射鏡の配光パターンの修正、変更する、といった工程を繰り返し行って、配光設計に則した反射鏡を決定することから、反射鏡の試作から配光パターンの修正、変更までに、非常に長い期間を要し、開発期間の短縮化が困難となっていた。
また、道路灯やトンネル照明装置といった、複数が同時に設置される屋外設置型の照明装置では、光害を抑えるために、一部の照明装置の配光のみを変更する必要が度々生じる。金型により反射鏡を製造する従来にあっては、その照明装置に専用の金型を製造することは現実的ではないことから、光害を防止するための遮蔽板を別途に設けて対策を行っており、余計な部品を組み込む必要が生じていた。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、例えば照明環境の違いに対応させるための配光等の仕様変更等にも柔軟に対応でき、開発期間を短縮できる反射体、照明装置、及び反射体の設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、照明装置の装置本体にランプとともに収容され、前記ランプを包囲し前記ランプの放射光を反射して配光を制御する反射面を有した反射体において、板材を折り曲げ加工して複数の平面状の平面反射面を形成した複数の反射部材を備え、前記反射部材を組み合わせて前記反射面を構成したことを特徴とする。
【0007】
また本発明は、上記反射体において、前記反射部材の平面反射面のそれぞれには、前記ランプの発光管の像が映り、なおかつ、当該発光管の像の周囲には、前記反射部材の組付位置の誤差を吸収する大きさの余裕が設けられている、ことを特徴とする。
【0008】
また本発明は、上記反射体において、隣接する前記反射部材を、前記ランプからみて前後にずらし、なおかつ、隣接する端部同士をラップさせて配置した、ことを特徴とする。
【0009】
また本発明は、上記反射体において、前記反射部材を位置決め固定するベースプレートと、前記ベースプレートに一端が位置決め固定され、他端が前記ベースプレートに接していな反射部材に延びて締結され、当該反射部材を位置決め固定する治具と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また上記目的を達成するために、本発明は、装置本体にランプとともに、前記ランプを包囲し前記ランプの放射光を反射して配光を制御する反射面を有した反射体を収容した照明装置において、前記反射体は、板材を折り曲げ加工して複数の平面状の平面反射面を形成した複数の反射部材を備え、前記反射部材を組み合わせて前記反射面を構成した、ことを特徴とする。
【0011】
また上記目的を達成するために、本発明は、照明装置の装置本体にランプとともに収容され、前記ランプを包囲し前記ランプの放射光を反射して配光を制御する反射面を有した反射体の設計方法において、前記反射面を前記配光に基づいて複数の平面状の平面反射面に区画し、前記平面反射面ごとに前記ランプの発光管の像が面内に映るように前記平面反射面の境界を定め、前記平面反射面のそれぞれを、板材の前記境界に沿った折り曲げ加工により成形可能な平面反射面の纏まりごとに分け、平面反射面の纏まりごとに前記板材を前記折り曲げ加工して前記平面反射面が形成された反射部材を形成し各反射部材を組み合わせて前記反射面を構成可能にした、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、板材を折り曲げ加工して複数の平面状の平面反射面を表面に形成した複数の反射部材を組み合わせて反射面を構成するため、プレス加工するための金型が不要となる。これにより、配光等に仕様変更が生じた場合でも、金型を再設計する必要がないため開発期間の延長を抑制できる。このため、一部の照明装置だけ他と異なる配光仕様となっても、遮蔽板や補助反射体等の別途の反射部材を設けることなく、反射部材の平面反射面の形状や材質の変更だけで、柔軟に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る道路灯の構成を示す斜視図である。
【図2】反射体としての反射鏡を先端側からみた斜視図である。
【図3】反射鏡を基端側からみた斜視図である。
【図4】反射鏡の配光パターンの模式図である。
【図5】反射鏡の設計手順を示す図である。
【図6】中央部側反射部と、開口端側反射部とに分割した状態の反射鏡を取付ユニットとともに示す斜視図である。
【図7】中央部側反射部と取付ユニットの分解斜視図である。
【図8】開口端側反射部と取付ユニットの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下では、照明装置の一例として道路灯を例示する。
図1は本実施形態に係る道路灯1の構成を示す斜視図である。
道路灯1は、図1に示すように、道路脇に設けられた支柱(図示略)の上端に固定される灯具本体2を備えている。灯具本体2は、ランプ6と反射体としての反射鏡10とを収める筐体であり、ベース体3と、このベース体3の基端部3Aに上方に向けて開閉自在にヒンジ結合された蓋体4とを備えている。基端部3Aには、支柱先端部が挿入される挿入開口5が開口し、この挿入開口5から挿入れた支柱先端部がベース体3の基端部3Aに配設された支柱固定具(図示略)に固定され、灯具本体2の先端部2Aが道路の路面に張り出すように設置される。
【0015】
ランプ6は、例えばメタルハライドランプや高圧ナトリウムランプ等のHIDランプであり、発光管7を収める外管8が円柱状に形成された略棒形状を成し、ベース体3に取り付けられている。すなわち、ベース体3の内部には、基端部3Aを仕切って当該基端部3A側に部品収納部11を形成する仕切壁9を有し、ベース体3の残余の空間がランプ収納部12として構成されている。部品収納部11には、上述した支柱固定具や支柱を通じて導入された電源線を繋げる端子台(図示略)が配設されている。
一方、ランプ収納部12には、ソケット取付台15が固設され、また、このソケット取付台15に取り付けられ上記端子台に電気配線接続されたソケット16と、このソケット16に装着されたランプ6とが収められている。このランプ収納部12の下面には投光開口17が開口し、この投光開口17には、強化ガラスなどで形成された透光板18が嵌め込まれている。上記ランプ6の装着時には、発光管7が投光開口17を望む位置に配置され、この発光管7を覆うように反射鏡10が配置される。
【0016】
図2は反射鏡10を先端部2Aの側(以下、先端側)からみた斜視図であり、図3は反射鏡10を基端部3Aの側(以下、基端側)からみた斜視図である。
反射鏡10は、図2、及び図3に示すように、略椀状の反射面20を有し、反射面20の基端側には、上記ソケット16に対応してランプ挿入開口21が開口する。前掲図1に示すように、ランプ6は、ランプ挿入開口21から反射鏡10の中に挿入され、反射鏡10の内部に発光管7が配置される。発光管7の放射光のうち、反射鏡10の反射面20に向かう光は、当該反射面20によって反射されて配光が制御され、投光開口17から透光板18を透過して路面25(図4)に照射される。
【0017】
図4は、反射鏡10の配光パターンの模式図である。
道路灯1は、上述の通り、道路脇(路肩25A)に設置されて、正面の道路の路面25を照明し、図4に示すように、設置位置Oからみて道路の交通方向Aについて路面25を左右対称に照射する配光パターンを有している。この配光パターンは、道路灯1の正面路肩25A側近傍に位置する第1照射エリアC1、当該第1照射エリアよりも反対側の路肩25B(或いは対向車線側)に位置する第2照射エリアC2、設置位置Oから交通方向Aの最遠方に位置し車幅方向Bの全体に亘る第3照射エリアC3、第1照射エリアC1、及び第2照射エリアC2と第3照射エリアC3の間に位置する第4照射エリアC4、及び第5照射エリアC5のそれぞれを所定の光量で照射することで、路面25を均斉度良く照明する。
【0018】
反射鏡10は、上記配光パターンに形成するために、図2及び図3に示すように、第1〜第5照射エリアC1〜C5に対応して、第1〜第5反射面D1〜D5を有し、第1〜第5反射面D1〜D5のそれぞれの面積によって、第1〜第5照射エリアC1〜C5の照射光量が照射エリアごとの所定の光量に調整されている。
【0019】
この反射鏡10は、図2及び図3に示すように、アルミ板等の高反射特性を有する金属板材から形成された複数の反射部材D1E1〜D5E1(以下、それぞれを特に区別する必要がないときは反射部材DEと称する)を組み合わせて構成されている。反射部材DEのそれぞれは、金属板材を折り曲げ加工して平面状の複数の平面反射面27を表面に形成して成るものである。図4の第3照射エリアC3に模式的に示すように、各平面反射面27の反射光が縦横に繋がることで、1つの照射エリアが形成される。
換言すれば、各平面反射面27のそれぞれが路面25の所定の位置を照射するため、反射面20を構成した状態においては、各平面反射面27には、ランプ6の発光管7の位置からみると当該発光管7の像7A(図2)が映り、この発光管7の像7Aを路面25の所定の位置に投影するように反射することで、それぞれが所定の位置を照射する。
【0020】
このように、複数の反射部材DEを組み合わせて反射面20を構成することで、反射鏡10をアルミ板のプレス加工により製造する場合に比べ金型が不要となるから、配光等に仕様変更が生じた場合でも、金型を再設計する必要がなく開発期間の延長を抑制できる。
さらに、一部の照明装置だけ他と異なる配光仕様となっても、遮蔽板や補助反射体等の別途の反射部材を設けることなく、反射部材の平面反射面の形状や材質の変更だけで、柔軟に対応できる。例えば、道路灯1の設置側の路肩25Aに向かう光を大きくカットする必要が生じた場合には、第1照射エリアC1を照射する第1反射面D1を構成する反射部材D1E1、D1E2のうち、路肩25A直近を照射する反射部材D1E1の材質に反射率が他よりも小さな板材、或いは、表面に反射率を低下させる加工を施す等して柔軟に対応できる。
【0021】
また、従来のアルミ板のプレス加工により製造した反射体にあっては、プレス加工前のアルミ板に増反射膜を形成した場合、プレス加工による延びによって増反射膜に亀裂等が発生して機能しなくなったりして反射率にムラが生じる。また、プレス加工後の反射面に増反射膜を形成する場合には、反射面が屈曲しているため、反射面の表面全体に均一な膜厚で増反射膜を形成することが非常に困難になる。
これに対して、本実施形態では、折り曲げ加工によって平面反射面27を形成した複数の反射部材DEを組み合わせて反射面20を構成するため、反射部材DEのうち必要なものについて、折り曲げ加工前の板状の状態で増反射膜を形成すれば、折り曲げ加工によって平面反射面27の増反射膜の膜厚が変わることがないため、ムラの無い高い反射率が簡単に得られる。
さらに、保管時には、組み立て前の反射部材DEを保管することで、かさ張らずに保管することができ、保管場所を取ることがない。
【0022】
ここで、上述の通り、この反射鏡10は、反射部材DEを組み合わせて構成しているため、反射部材DEを組み付けて反射鏡10を構成する際に、組付位置の誤差等により、平面反射面27に位置ズレが生じることがある。特に、本実施形態では、反射部材DEの相互の締結にネジ等を用いるのではなく、図2、及び図3に示すように、反射部材DEの端部に設けた突起片35を他の反射部材DEに設けた差込口36に差し込むことで締結することで部品点数の削減等を図った構成としているため、突起片35の差込具合等によって組付時の位置ズレが生じ易くなる。この位置ズレによって、発光管7の像7Aが映り込まない、或いは、発光管7の像7Aが入り切らなくなった平面反射面27が存在すると、当該平面反射面27が照射を受け持つ所定の位置での照射光量が低下し、均斉度が低下してしまう。
【0023】
そこで本実施形態では、各平面反射面27を、図2に模式的に示すように、発光管7の像7Aの周囲に、反射部材DEの加工および組付精度のバラツキによる位置ズレを吸収する大きさの余裕δを有して形成することとしている。これにより、反射部材DEの組み付け時に、多少の位置ズレが生じたとしても、その位置ズレが余裕δの範囲内であれば、路面25の一部の箇所に顕著な光量低下を招くことがなく、均斉度を維持することができる。
【0024】
また、反射鏡10は、反射部材DEを組み合わせて構成しているため、図2、及び図3に示すように、隣接する反射部材D3E2、D3E3をランプ6からみて前後にずらしつつ、これらの端部30同士を互いにラップさせて反射面20を構成することもできる。隣接する反射部材D3E2、D3E3を前後にずらして配置することで、反射部材D3E2の各平面反射面27の基準となる基準曲面と、反射部材D3E3の各平面反射面27の基準となる基準曲面との曲率を各々個別に設定できる。これにより、例えば先端側への突出量を抑えるように反射部材D3E3の基準曲面の曲率を小さくすることで、反射鏡10を小型化することができる。
【0025】
ただし、隣接する反射部材D3E2、D3E3を前後にずらして配置した場合、ランプ6が理想的な点光源であれば、反射部材D3E2、D3E3同士の間への光の侵入は問題にならないが、発光管7が寸法を有するため、単に前後にずらして配置しただけでは反射部材D3E2、D3E3同士の間に光が侵入し、漏れ光等を発生させてしまう。
そこで、隣接する反射部材D3E2、D3E3を更に隣接方向にラップさせて配置することで、反射部材D3E2、D3E3同士の間への光の侵入を防止することとしている。
このような、隣接する反射部材D3E2、D3E3の前後へのずらしとラップとを、従来の連続した反射面で形成されるプレスによる型押し加工で実現することは不可能である。すなわち、本実施形態では、従来の反射体よりも小型で、なおかつ漏れ光の無い反射鏡10が得られることとなる。
【0026】
図5は、係る反射鏡10の設計手順を示す図である。
反射鏡10の設計に際しては、先ず、当該反射鏡10が形成すべき配光パターンを作成、又は入手して決定する(ステップS1)。この配光パターンは、反射鏡10が用いられる照明装置の種類(道路灯やトンネル照明装置など)や仕様等の種々の条件によって決定される。次いで、反射鏡10の反射面20を複数の平面反射面27に、配光パターンを得るに必要な面数(各面の面積も含む)で区画して当該面数の概算を決定し(ステップS2)、各平面反射面27の照射方向情報を決定する(ステップS3)。この照射方向情報は、被照射面で照射すべき照射位置によって規定される情報であり、ランプ6の発光管7の発光を、照射方向情報で規定された照射位置に反射するように各平面反射面27に角度を持たせて配置する(ステップS4)。この配置によって、平面反射面27ごとにランプ6の発光管7の像7Aが面内に映るように平面反射面27の境界が定められ、この境界が折り曲げ加工時の折り曲げ線となる。
【0027】
次いで、各平面反射面27の被照射面での照射範囲を確認しながら各平面反射面27の位置関係を決定し(ステップS5)、各平面反射面27の形状を決定する(ステップS6)。ステップS5における位置関係の決定には、連続する平面反射面27の一部をランプ6からみて前後にずらす等の調整も含まれる。また、ステップS6における形状決定には、余裕δの決定や、前後にずらした平面反射面27同士の隣接方向のラップ量の調整なども含まれる。
【0028】
以上の作業により、各平面反射面27の位置、及び形状を決定した後、かかる平面反射面27の並びを、板材の境界に沿った折り曲げ加工により成形可能な平面反射面27の纏まりごとに分解して製作可能な板金形状にする(ステップS7)。そして、このように決定した形状の板金のそれぞれに対し、上記境界に沿った折り曲げ加工によって平面反射面27を形成した反射部材DEを形成し、かかる反射部材DEを組み合わせて反射鏡10を試作し、試作品による配光特性の測定や分析を行う(ステップS8)。かかる測定、分析の結果、配光等に問題があり修正の必要があれば、平面反射面27の位置関係や照射方向、照射範囲を調整し(ステップS9)、再度、ステップS7に戻って、試作を行う。
【0029】
灯具本体2の蓋体4を開蓋したときに速やかにベース体3に固定したランプ6にアクセスしてメンテナンスできるようにするために、反射鏡10は、一般に、蓋体4の裏側に取付固定され、蓋体4の開蓋とともに反射鏡10が退避してランプ6が露出するように構成される。
しかしながら、道路灯1やトンネル照明装置といった、複数の照明装置を道路脇に一定間隔で配置して路面25を照明する路面照明装置にあっては、隣り合う路面照明装置同士の中間地点は、それぞれの路面照明装置の照射によって所定の照度を得ているため、いずれかの路面照明装置の照度が不足すると照度が低下し易くなる。道路灯1にあっては、上記第3照射エリアC3が道路灯1同士の中間地点を照射しており、この第3照射エリアC3の配光が崩れると、上述の通り、道路灯1同士の中間地点での照度の落ち込みを招くこととなる。
【0030】
そこで本実施形態では、道路灯1の設置位置Oから最遠方の照射エリアである第3照射エリアC3に光を配光する第3反射面D3をベース体3にランプ6とともに固定することで、ランプ6と第3反射面D3の位置関係が一定に維持されるようにしている。
より詳細には、図1に示すように、ベース体3には、椀状の反射鏡10のうち、設置位置Oから交通方向A、及び車幅方向Bのそれぞれの最遠方への光の配光を担う開口端側反射部10Bを固定し、残りの中央部側反射部10Aについては、蓋体4の裏側に固定している。
これにより、道路灯1のメンテナンス等により灯具本体2を開蓋した際に、ランプ6と第3反射面D3の位置関係が崩れることがなく、また中央部側反射部10Aは、開蓋と同時に蓋体4と一緒に退避してランプ6が露出するからメンテナンス性が損なわれることもない。
【0031】
図6は中央部側反射部10Aと、開口端側反射部10Bとに分割した状態の反射鏡10を取付ユニット40、50とともに示す斜視図である。図7は中央部側反射部10Aと取付ユニット40の分解斜視図であり、図8は開口端側反射部10Bと取付ユニット50の分解斜視図である。
図7に示すように、中央部側反射部10Aは、取付ユニット40によって蓋体4の裏面に取り付けられる。この取付ユニット40は、ベースプレート41と、9個の反射部材固定治具42〜48、60、61を備えている。ベースプレート41は、中央部側反射部10Aを蓋体4の裏面に取り付けるための部材として機能し、また中央部側反射部10Aを構成する各反射部材DEの組付ベースとしても機能する。
【0032】
反射部材固定治具42〜48は、いずれも先端部等に反射部材DEにビスやネジ等により締結される締結部49Aを有するアーム部49を有し、なおかつ、当該締結部49Aとは異なる箇所に、ベースプレート41にいずれかの反射部材DEとともに共締めされる共締部49Bを有する。
ベースプレート41には、共締部49Bごとに締結穴41Aが設けられており、この締結穴41Aに反射部材DEと反射部材固定治具42〜48の共締部49Bを共締めすることで反射部材DEが位置決めされる。また、各反射部材固定治具42〜48のアーム部49は、ベースプレート41には直接結合せずに他の反射部材DEとだけ結合している(すなわち、ベースプレート41に接していない)反射部材DEまで延びて締結部49Aで締結される。これにより、ベースプレート41に直接結合していない反射部材DEも含めて反射部材固定治具42〜48でしっかりと固定することができる。さらに、ベースプレート41に直接結合していない反射部材DEの組付位置については、アーム部49の形状、及び締結部49Aの位置によって位置決めされるため、これら反射部材固定治具42〜48によって、ベースプレート41に対して中央部側反射部10Aを構成する全ての反射部材DEが正確な位置に組み付けられることとなる。
【0033】
開口端側反射部10Bは、図8に示すように、取付ユニット50によってベース体3の投光開口17(図1)の周囲に取り付けられる。取付ユニット50は、投光開口17の左右の縁部にそれぞれ取付固定される2つのベースプレート51と、これらベースプレート51のそれぞれの端部同士を連結して補強する2つのベースプレート補強板52と、4個の反射部材固定治具53〜56とを備えている。
2つのベースプレート51と2つのベースプレート補強板52とは相互に連結することで、投光開口17を囲む枠体を形成し、このベースプレート51の縁部に形成された折曲片51Aに、反射鏡10の開口端に位置する各反射部材DEがビスやネジ等で締結される。これにより、反射鏡10の開口端に位置する各反射部材DEは、ベースプレート51を通じてベース体3に固定される。また、上記ランプ6が装着されるソケット16のソケット取付台15が固設されていることから、反射鏡10の開口端に位置する各反射部材DEと、ランプ6との位置関係のズレが防止される。
【0034】
反射部材固定治具53〜56は、ベースプレート51に直接結合していない(すなわち、ベースプレート51に接していない)反射部材DEを固定するものであり、それぞれアーム状を成し、一端にはベースプレート51に締結される第1締結部57を有し、他端には反射部材DEに締結される第2締結部58を有する。各反射部材固定治具53〜56のそれぞれは、ベースプレート51に設けられた所定の締結穴59に締結されることで位置決めされており、これら反射部材固定治具53〜56を通じて、ベースプレート51に直接結合していない反射部材DEのそれぞれも、ベースプレート51に対して位置決めされる。これにより、ベースプレート51には、開口端側反射部10Bを構成する全ての反射部材DEが正確な位置に組み付けられることとなる。
【0035】
このように、蓋体4側の中央部側反射部10Aと、ベース体3側の開口端側反射部10Bとのそれぞれを正確な位置に組み付けることができるので、灯具本体2を閉蓋したときには、中央部側反射部10Aと開口端側反射部10Bとが相対的に正確な位置に配置され、所定の配光パターンが得られることとなる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態によれば、道路灯1の灯具本体2にランプ6とともに収容され、ランプ6を包囲しランプ6の放射光を反射して配光を制御する反射面20を有した反射鏡10において、板材を折り曲げ加工して複数の平面状の平面反射面27を形成した複数の反射部材DEを備え、これらの反射部材DEを組み合わせて上記反射面20を構成した。
これにより、反射鏡10をアルミ板のプレス加工により製造する場合に比べ金型が不要となるから、配光等に仕様変更が生じた場合でも、金型を再設計する必要がなく開発期間の延長を抑制できる。さらに、一部の照明装置だけ他と異なる配光仕様となっても、遮蔽板や補助反射体等の別途の反射部材を設けることなく、反射部材の平面反射面の形状や材質の変更だけで、柔軟に対応できる。
また、本実施形態の構成によれば、反射部材DEのうち必要なものについて、折り曲げ加工前の板状の状態で増反射膜を形成すれば、折り曲げ加工によっても平面反射面27の増反射膜の膜厚が変わることがないため、ムラの無い高い反射率が簡単に得られる。
さらに、保管時には、組み立て前の反射部材DEを保管することで、かさ張らずに保管することができ、保管場所を取ることがない。
【0037】
また本実施形態によれば、反射部材DEの平面反射面27のそれぞれには、ランプ6の発光管7の像7Aが映り、なおかつ、当該発光管7の像7Aの周囲には、反射部材DEの組付位置の誤差を吸収する大きさの余裕δを設ける構成とした。
これにより、反射部材DEの組み付け時に、多少の位置ズレが生じたとしても、その位置ズレが余裕δの範囲内であれば、当該位置ズレを生じた平面反射面27が照射を担う箇所に顕著な光量低下を招くことがなく、均斉度を維持することができる。
【0038】
また本実施形態によれば、隣接する反射部材D3E2、D3E3を、ランプ6からみて前後にずらし、なおかつ、隣接する端部30同士をラップさせて配置する構成とした。
これにより、プレス加工により成形した反射体よりも小型で、なおかつ漏れ光の無い反射鏡10が得られる。
【0039】
また本実施形態によれば、反射部材DEを位置決め固定するベースプレート41、51と、このベースプレート41、51に一端が位置決め固定され、他端がベースプレート41、51に接していな反射部材DEに延びて締結され、当該反射部材DEを位置決め固定する反射部材固定治具42〜48、53〜56とを備える構成とした。
この構成により、ベースプレート41、51には、ベースプレート41、51に接していないものも含めて全ての反射部材DEを正確な位置に組み付けることができ、配光パターンを正確に実現できる。
【0040】
また本実施形態によれば、上記反射鏡10の設計を、反射面20を配光パターンに基づいて複数の平面状の平面反射面27に区画し、平面反射面27ごとにランプ6の発光管7の像7Aが面内に映るように平面反射面27の境界を定め、平面反射面27のそれぞれを、板材の上記境界に沿った折り曲げ加工により成形可能な平面反射面27の纏まりごとに分ける、という工程で行い、平面反射面27の纏まりごとに板材を折り曲げ加工して平面反射面27が形成された反射部材DEを形成し、各反射部材DEを組み合わせて反射面20を構成可能とした。
これにより、反射部材DEを組み合わせて成る反射面20を、正確、かつ容易に設計でき、また設計から反射鏡10の試作までの期間を大幅に短縮できる。
【0041】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。
例えば、上述した実施形態では、照明装置の一例として道路灯1を例示したが、これに限らず、道路の交通方向Aに沿って一定の間隔で配置され、それぞれで路面25を照明する例えばトンネル照明装置等の任意の路面照明装置に本発明を適用することができる。
また路面照明装置に限らず、灯具本体の投光開口17に望むようにランプ6を配置し、当該ランプ6を覆うように反射鏡10を収めた照明装置であれば、当該照明装置、及び反射鏡10に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 道路灯(照明装置)
2 灯具本体(装置本体)
3 ベース体
4 蓋体
6 ランプ
7 発光管
7A 発光管の像
10 反射鏡(反射体)
10A 中央部側反射部
10B 開口端側反射部
17 投光開口
20 反射面
25 路面
25A、25B 路肩
27 平面反射面
30 端部
35 突起片
36 差込口
40、50 取付ユニット
41、51 ベースプレート
42〜48、53〜56 反射部材固定治具
A 交通方向
B 車幅方向
C1〜C5 第1〜第5照射エリア
D1〜D5 第1〜第5反射面
DE 反射部材
O 設置位置
δ 余裕

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明装置の装置本体にランプとともに収容され、前記ランプを包囲し前記ランプの放射光を反射して配光を制御する反射面を有した反射体において、
板材を折り曲げ加工して複数の平面状の平面反射面を形成した複数の反射部材を備え、前記反射部材を組み合わせて前記反射面を構成したことを特徴とする反射体。
【請求項2】
前記反射部材の平面反射面のそれぞれには、前記ランプの発光管の像が映り、なおかつ、当該発光管の像の周囲には、前記反射部材の組付位置の誤差を吸収する大きさの余裕が設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の反射体。
【請求項3】
隣接する前記反射部材を、前記ランプからみて前後にずらし、なおかつ、隣接する端部同士をラップさせて配置した、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の反射体。
【請求項4】
前記反射部材を位置決め固定するベースプレートと、
前記ベースプレートに一端が位置決め固定され、他端が前記ベースプレートに接していな反射部材に延びて締結され、当該反射部材を位置決め固定する治具と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の反射体。
【請求項5】
装置本体にランプとともに、前記ランプを包囲し前記ランプの放射光を反射して配光を制御する反射面を有した反射体を収容した照明装置において、
前記反射体は、板材を折り曲げ加工して複数の平面状の平面反射面を形成した複数の反射部材を備え、前記反射部材を組み合わせて前記反射面を構成した、ことを特徴とする照明装置。
【請求項6】
照明装置の装置本体にランプとともに収容され、前記ランプを包囲し前記ランプの放射光を反射して配光を制御する反射面を有した反射体の設計方法において、
前記反射面を前記配光に基づいて複数の平面状の平面反射面に区画し、
前記平面反射面ごとに前記ランプの発光管の像が面内に映るように前記平面反射面の境界を定め、
前記平面反射面のそれぞれを、板材の前記境界に沿った折り曲げ加工により成形可能な平面反射面の纏まりごとに分け、
平面反射面の纏まりごとに前記板材を前記折り曲げ加工して前記平面反射面が形成された反射部材を形成し各反射部材を組み合わせて前記反射面を構成可能にした
ことを特徴とする反射体の設計方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−20023(P2013−20023A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152237(P2011−152237)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】