説明

反射型光磁界センサ

【課題】入射光の偏光状態が楕円光の状態でも検知する光強度が入射光の偏光状態の変化に依存しない偏光無依存性であり、且つ入射光の挿入損失が低減された光磁界センサの提供。
【解決手段】光導波路と、偏光分離素子と、レンズと、非相反性の偏光面回転素子と、反射体を含んで反射型光磁界センサを構成し、光導波路を単芯とし、偏光面回転素子の回転角を90度以上且つ360度以下に設定し、光導波路からの入射光を偏光分離素子で2つの偏光成分に分離後、レンズで収束し、偏光面回転素子でそれぞれの偏光面を回転させて、反射体の反射面の一点で点対称に反射し、再び偏光面回転素子で偏光面を回転後、偏光分離素子で合成して、光導波路に入射させることで、2つの偏光成分をそれぞれ偏光分離素子において異常光線としてシフトさせることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶と云った偏光面回転素子のファラデー効果を利用した、反射型光磁界センサに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、汎用されている工業用装置や民生機器などには、モータ等の回転装置或いは歯車などの回転部分を有しているものが多い。これらの回転装置や回転部分を、より高度にかつ高精度に制御するためには、その回転速度や回転数を、連続的にしかも正確に測定しなければならない。
【0003】
回転速度や回転数を測定する方法としては、磁気光学材料(ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶)のファラデー効果を利用した光磁界センサが提案されている。このようなファラデー効果を利用した光磁界方式によるセンサの計測では、電磁的な雑音の影響が殆ど無く、有機溶剤などの可燃性物質を扱う場所でも防爆対策が不要と云った特長を有する。
【0004】
光磁界センサの型式には、透過型と反射型とがある。透過型はその構成上、光の入射および透過の方向が一直線上となるように構成しなければならないので、設置場所に制約が生ずる。
【0005】
このような透過型光磁界センサの欠点を改善する光磁界センサとして、反射型光磁界センサが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2004−219137号(第4−6頁、図1)
【0007】
図14は、特許文献1記載の反射型光磁界センサ100の一構成例を示す模式図である。反射型光磁界センサ100は、2本の光ファイバ101,102を固着した2芯のフェルールまたはガラスキャピラリ103、複屈折板(偏光分離素子)104、レンズ105、ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶からなるファラデー回転子(偏光面回転素子)106、ミラー(反射体)107の順に構成部品を配置することで構成される。
【0008】
反射型光磁界センサ100の動作は次の通りである。入射側の光ファイバから複屈折板104に入射した光は常光線と異常光線の2つの偏光成分に分離され、レンズ105を透過後にファラデー回転子106に入射される。ファラデー回転子106は外部磁界の有無によって、磁気的に飽和又は未飽和状態となることにより、2つの偏光成分の偏光面が変化される。ファラデー回転子106を透過した2つの偏光成分はミラー107により反射されて、再びファラデー回転子106を透過して、レンズ105により集光された後、複屈折板104で合成されて出射側の光ファイバへ入射される。
【0009】
複屈折板104を透過する際に、ファラデー回転子106の回転角に応じて複屈折板104で2つの偏光成分の光路分離が更に起こるので、出射側の光ファイバに入射する光が減少する。この光強度変化を検知することで、反射型光磁界センサ100が動作する。
【0010】
また最近では、光磁界センサの防爆対策不要との特性を活かして、油田産業用途向けの光磁界センサが考案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【0011】
【特許文献2】特表2008−523401号(第7−10頁、図1)
【0012】
図15は、掘削作業後の一般的な陸上炭化水素杭井場所と、炭化水素地層108、及び表面機器109とを示した概略図である。掘削穴を安定化させるケーシングストリング110は、複数のケーシングジョイント111を備えており、ケーシングジョイント111がケーシングカラー112によって互いに結合される。ボーリング検層作業では、炭化水素地層108の様々なパラメータ(例えば、抵抗、空隙率など)や、掘削穴内の様々なパラメータ(例えば、温度、圧力、流体タイプ、流体流速など)を測定する。そのような測定は、ロギングツール113に備えられた光磁界センサよって行なわれる。
【0013】
図16は、図15の掘削穴の一部の拡大図と、光磁界センサ114の動作原理を示した概略図である。光磁界センサ114は、前記ケーシングストリング110の第1のケーシングジョイント111aと第2のケーシングジョイント111bとの間の、ケーシングカラー112aの存在を検出する。ケーシングカラー112aの検出を、ロギングツール113によって行なわれる他の測定と関連付けることにより、更なる地層測定、及び/又は、開拓対象の前記炭化水素地層108の位置をケーシングジョイント111a,111bの位置(即ち、深さの位置)と関連付けることが出来る。
【0014】
光磁気センサ114は、光ファイバ115に光学的に結合されており、二色性の吸収型偏光子116と、ファラデー回転子(偏光面回転素子)117と、反射素子(反射体)118とを備える。更に、ファラデー回転子117に磁界を印加する永久磁石119を備える。光ファイバ115から光が入射されると、偏光子116により光の偏光状態は直線偏光に変換され、反射素子118で反射される前後で、ファラデー回転子117を2回透過し、所定の回転角の2倍だけ直線偏光の偏光面が回転される。この偏光面の回転角を測定することにより、ケーシングカラーの存在を検出する。
【0015】
更に、特許文献2の他にも、導波路である光ファイバを単芯とすることで、光磁界センサの導波路部分の細経化と、低コスト化を図った光磁界センサが考案されている(例えば、特許文献3または特許文献4を参照)。
【0016】
【特許文献3】特開平02−028574号(第2−3頁、第1図)
【特許文献4】特開昭60−120271号(第2頁、第1図)
【0017】
図17より、特許文献3の光磁界センサ120は、単芯の光ファイバ121、レンズ122、二色性の吸収型偏光子123、ファラデー回転子124、及び反射体125が順に配置されると共に、ファラデー回転子124に磁界を印加する円筒状の永久磁石126を備えて構成される。光ファイバ121から光が入射されると、偏光子123により光の偏光状態が直線偏光に変換され、反射体125で反射される前後で、ファラデー回転子124を2回透過し、所定の回転角の2倍だけ直線偏光の偏光面が回転される。この偏光面の回転角を測定することで光磁界センサ120が動作する。
【0018】
図18より、特許文献4の光磁界センサ127は、単芯の光ファイバ128、偏光ビームスプリッタ129、ファラデー回転子130、22.5度の旋光子131、及び反射膜(反射体)132が順に配置されて構成される。光ファイバ128からLED光源133の光が入射されると、偏光ビームスプリッタ129により光が2つの直線偏光に分離され、一方の直線偏光のみ、反射膜132で反射される前後で、ファラデー回転子130及び旋光子131を2回透過し、直線偏光の偏光面が回転される。この偏光面の回転角を測定することで光磁界センサ127が動作する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
特許文献1の光磁界センサ100の構成は、入射側の光ファイバから光を入射後、その光を複屈折板104に入射させて常光線と異常光線の2つの偏光成分に分離し、ミラー107により反射させた後、再び複屈折板で合成して、出光側の光ファイバへと入射させている。従って、2つの偏光成分のうち一方の偏光成分のみが常に異常光線として複屈折板104内でシフトされると、楕円光のように時間の経過と共に偏光状態が変化する光が入射すると片方の偏光成分の大きさのみ変化するため、出射側の光ファイバに入射する偏光成分の大きさが時間と共に変化する。よって、検知される光強度が、入射側光ファイバに入射する光の偏光状態に伴って変化するため、光磁界センサ100が偏光依存性を持ってしまう。
【0020】
そのため、入射側光ファイバから出射される光を、完全な円偏光に変換しなければならない。ASE光源とデポラライザーを使用することで、光の偏光状態を真円に近づけることは出来るものの、完全な真円状態に変換することは不可能であり、その結果、特許文献1の光磁界センサ100では偏光依存性を解消することは不可能であった。
【0021】
また、特許文献2,3,4記載の光磁界センサ114,120,127は、光の直交する2つの偏光成分のうち、一方の偏光成分を吸収型偏光子又は偏光ビームスプリッタにより吸収もしくは除外しているため、入射光の挿入損失が大きいという課題があった。
【0022】
本発明の反射型光磁界センサは上記課題に基づいて為されたものであり、その目的は入射光の偏光状態が真円ではない楕円光の状態でも、検知する光強度が入射光の偏光状態の変化に依存しない、偏光無依存性の光磁界センサを提供することである。
【0023】
更に、従来の光磁界センサに比べて入射光の挿入損失が低減された光磁界センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の請求項1に記載の反射型光磁界センサは、
光導波路と、偏光分離素子と、レンズと、非相反性の偏光面回転素子と、反射体を含み、
光導波路から順に、偏光分離素子,集光レンズ,偏光面回転素子,反射体と配置され、
光導波路は単芯であり、
更に、偏光面回転素子の周囲には磁界印加手段が配置されて、その磁界印加手段によって偏光面回転素子に磁界が印加され、
偏光面回転素子を透過する光の偏光面の回転角が、90度以上且つ360度以下となるように、偏光面回転素子の回転角が設定され、
光導波路から偏光分離素子に光が入射され、
偏光分離素子に入射された光は、偏光分離素子によって常光線と異常光線の2つの偏光成分に分離され、
次に、2つの偏光成分はレンズに入射されて収束され、
収束された2つの偏光成分は偏光面回転素子に入射されて、前記設定された回転角だけ回転され、
更に、2つの偏光成分は反射体の反射面の一点に収束されて点対称に反射され、
再度、2つの偏光成分は偏光面回転素子に入射されて、偏光面が前記設定された回転角だけ更に回転され、
次に、2つの偏光成分はレンズに入射されて平行光に変換され、
平行光に変換された2つの偏光成分は、更に偏光分離素子に入射され、
光導波路から光が偏光分離素子に入射された時に常光線として偏光分離素子を透過した偏光成分は、反射体で反射された後に偏光分離素子に入射された時は異常光線として透過すると共に、
光導波路から光が偏光分離素子に入射された時に異常光線として偏光分離素子を透過した偏光成分は、反射体で反射された後に偏光分離素子に入射された時は常光線として透過して、2つの偏光成分が合成され、
合成された光が光導波路に入射されることを特徴とする反射型光磁界センサである。
【0025】
更に、本発明の請求項2に記載の反射型光磁界センサは、前記光導波路がシングルモード光ファイバであることを特徴とする請求項1記載の反射型光磁界センサである。
【発明の効果】
【0026】
本発明の請求項1記載の反射型光磁界センサに依れば、光導波路から楕円光が入射されても、2つの偏光成分の大きさがそれぞれ補償された上で合成されて光導波路に入射されるため、検知される光強度が入射光の偏光状態に伴って変化しないため、反射型光磁界センサを偏光無依存性とすることが出来る。
【0027】
又、前記反射型光磁界センサは、直交する2つの偏光成分を合成し、その合成した光を入射させて光強度を検知するため、一方の偏光成分を吸収もしくは除外しないので、入射光の挿入損失が低減可能である。
【0028】
偏光面回転素子を透過する光の偏光面の回転角が90度以上且つ360度以下となるように偏光面回転素子の回転角を設定することにより、反射型光磁界センサの応答性並びに感度を向上させることが出来る。
【0029】
更に、本発明の請求項2記載の反射型光磁界センサに依れば、光導波路にシングルモード光ファイバを使用するので、光導波路を延長しても低コスト化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明に係る反射型光磁界センサ1の最良の実施形態を、図1から図13を参照して詳細に説明する。なお、各図に示してあるX軸,Y軸,及びZ軸は、それぞれの図で対応している。図1と図2に、光の伝搬方向をZ軸、Z軸に直交する面内のそれぞれ水平方向をX軸、垂直方向をY軸としたときの、反射型光磁界センサ1の光導波路2から反射体6までの各光学素子の構成と配置を示す。また、光が各光学素子内部を透過する際の光路は破線で表し、それ以外の光路は実線で表すものとする。
【0031】
本発明の反射型光磁界センサ1(以下、「光磁界センサ1」と記す)は、図1と図2に示すように、偏光分離素子3,レンズ4,偏光面回転素子5a及び5b,とから成る光学素子部を備える。更に、これら光学素子部の一端側に光導波路2が配置され、前記光学素子部を挟んで光導波路2の反対側には、反射体6が配置される。更に、偏光面回転素子5a及び5bの周囲には、偏光面回転素子5a及び5bに磁界を印加するための磁界印加手段である永久磁石7が配置される。
【0032】
光学素子部の各光学素子は、光導波路2からZ軸方向に順に、偏光分離素子3,レンズ4,偏光面回転素子5a及び5b、と配置される。各光学素子のそれぞれの光学面には、SiO/TiO等の反射防止コートを施すことが望ましい。
【0033】
光導波路2は、単芯のシングルモード光ファイバ(Single Mode Fiber:SMF)で構成される(以下、「光ファイバ2」と記載する)。シングルモード光ファイバはコアが石英ガラス、クラッドがGe等を添加した石英ガラスから構成され、波長1550nmの光を伝搬させる。なお、光導波路2及び永久磁石7は、図2,図6,図10では図示を省略している。
【0034】
偏光分離素子3は、光ファイバ2から入射された光を常光線と異常光線の2つの偏光成分に分離、及び後述する反射体6で反射して戻ってくる前記2つの偏光成分の合成を行う光学素子である。偏光分離素子3には、例えば、ルチル(TiO)等の複屈折単結晶が使用される。更に、偏光分離素子3の光学面上の結晶軸X21(図2参照)の方向は、Y軸方向と平行に設定する。一方、光学面に対する結晶軸X22(図2参照)の方向は、最大の分離幅を得られるように光学面の法線に対して42〜50度前後(最も好ましくは47.8度)に設定する。
【0035】
レンズ4は、入射する光の収束又はコリメーションを行う単一レンズであり、平凸レンズを使用する。凸面を偏光分離素子3に対向させると共に、平面を偏光面回転素子5に対向させて配置する。
【0036】
偏光面回転素子5a及び5bは、偏光分離素子3を透過した前記2つの偏光成分の偏光面を回転させる、非相反性の偏光面回転素子であり、使用波長帯域で磁気飽和時にそれぞれで回転角45度を有する、できるだけ薄いものを使用する。例えば、磁性のビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶等が最適である。偏光面回転素子5a及び5bは、一定の間隔でZ軸方向に直列に並べて配置する。更に、偏光面回転素子5a及び5bとZ軸方向とは2度以上4度以下の傾き角度を持たせる。この傾き角度は、原理的に90度未満まで可能であるが、傾き角度が大きくなるにつれて、光磁界センサとしてのSN比が大きくなるため、2度以上4度以下の角度範囲が好ましい。
【0037】
更に、本実施の形態では、偏光面回転素子5a及び5bの回転角の方向を、光ファイバ2からZ軸方向に見たときに、同一方向である時計方向に設定することとする。従って、偏光面回転素子5a及び5bを透過した、前記2つの偏光成分の偏光面の合計回転角は90度に設定される。
【0038】
永久磁石7は、中空円筒型のSm−Co製の永久磁石を使用し、偏光面回転素子5a及び5bに飽和磁界又は所定の回転角を発生するために必要な磁界を印加する。また、磁化方向はZ軸方向と平行となるように、円筒型の端面がそれぞれN,S極となるように着磁される。
【0039】
反射体6は、偏光面回転素子5bを透過した2つの偏光成分を反射する反射鏡で、本実施の形態では、一例として、基板の表面にSiO/TiOをコーティングした全反射鏡を用いる。
【0040】
次に、光磁界センサ1の動作について説明する。図1乃至図4は、例えば磁性体の被測定対象が永久磁石7の近傍に存在せず、永久磁石7の磁界が全て偏光面回転素子5a,5bに印加されて偏光面回転素子5a,5bが磁気飽和されたときの光磁界センサ1の動作を示す。図3及び図4の(A)〜(D)は、図1中の符号(A)〜(D)で示す各光路断面での偏光状態に対応している。図3及び図4では、横方向がX軸、縦方向がy軸、紙面に向かう方向がz軸であり、説明の便宜上、縦,横方向共に6分割して、X軸方向には1から6で、Y軸方向にはa〜fで、各光路断面での偏光成分の伝搬位置を示す。
【0041】
光ファイバ2に光が入射されると、その光は光ファイバ2を伝搬して、光入出射端面から偏光分離素子3へと入射される。
【0042】
光ファイバ2から偏光分離素子3へと入射する光の入射位置は、マトリクスで見ると図3(A)に示すように、X軸方向では3と4の間で、Y軸方向ではbとcの間である。本実施の形態ではこのような位置を(3−4,b−c)と表す。
【0043】
偏光分離素子2に入射された光は、図2及び図3(B)に示すように、偏光分離素子2で結晶軸X21に直交する常光線と、平行な異常光線との、2つの偏光成分に分離される。偏光分離素子2から出射する異常光線の伝搬位置は、図3(B)より(3−4,d−e)へとシフトされる。
【0044】
分離された2つの偏光成分はレンズ4に入射され、図1で示すレンズ4の左側の凸曲面で光軸oaから内側へと屈折され、収束光に変換されてレンズ4から出射される。
【0045】
次に、2つ偏光成分は、偏光面回転素子5a,5bを透過する度に同一方向(時計回り)にそれぞれ45度ずつ偏光面が回転されることで、図3(C)に示すように、時計方向(右回り)に合計90度回転される。
【0046】
偏光面回転素子5a,5bを透過した2つの偏光成分の光は、前記レンズ4の収束作用によって反射体6の反射面の一点Rに収束され、入射角と反対側に一点Rで点対称に反射される(図2,図3(C)及び図4(C)参照)。つまり、レンズ4の後側焦点が点対称の反射点(R点)になる。
【0047】
反射された2つの偏光成分は、再度、偏光面回転素子5b及び5aに入射され、図4(D)に示すように時計方向にそれぞれ45度、合計で90度偏光面が更に回転される。
【0048】
次に、2つの偏光成分はレンズ4に入射され、図1で示すレンズ4の左側の凸曲面で平行光に変換される。
【0049】
そして、平行光に変換された2つの偏光成分は偏光分離素子3に入射、透過することにより、図1、図2、及び図4(A)に示すように結晶軸X21に平行な異常光線がY軸方向にシフトされて光ファイバ2に入射されず、更に常光線となる偏光成分も光ファイバ2には入射されない。従って、前記被測定対象が光磁界センサ1の近傍に存在しない状態では、伝搬光が光ファイバ2に結合されないため伝搬光が検知されず、これにより、被測定対象を検知しないというセンサ動作を呈する。
【0050】
次に、磁性体の被測定対象の存在により、永久磁石7から偏光分離素子5a及び5bに印加される磁界が変化し、偏光分離素子5a及び5bのそれぞれの回転角が磁気飽和時の半分の22.5度の場合における、光磁界センサ1の動作を、図5乃至図8を参照して説明する。
【0051】
図5,図6,及び図7(A)と(B)より、光ファイバ2から偏光分離素子3へと光が入射され、偏光分離素子3で常光線と異常光線に分離されて、レンズ4で収束光に変換されるまでは、光磁界センサ1は前記図1,図2,図3(A)及び(B)と同様の動作を示す。
【0052】
次に、分離された2つの偏光成分は、偏光面回転素子5a,5bを透過する度に同一方向(時計回り)にそれぞれ22.5度ずつ偏光面が回転されることで、図7(C)に示すように時計方向(右回り)に合計45度偏光面が回転される。前記の通り、磁性体の被測定対象が永久磁石7の近傍に接近すると、永久磁石7の磁界の一部が被測定対象に引き寄せられるので、永久磁石7から偏光面回転素子5a,5bに印加される磁界が減少し、偏光面回転素子5a,5bのそれぞれの回転角が22.5度まで減少する。
【0053】
偏光面回転素子5a,5bを透過した2つの偏光成分の光は、反射体6で入射角と反対側に、一点Rで点対称となる様に反射される(図2,図7(C)及び図8(C)参照)。
【0054】
反射された2つの偏光成分は、再度、偏光面回転素子5b及び5aに入射され、図8(D)に示すように時計方向にそれぞれ22.5度、合計で45度偏光面が更に回転される。従って、2つの偏光成分の偏光面は、レンズ7から偏光面回転素子5aに入射する時点から合計で90度回転されたことになる。
【0055】
更に、2つの偏光成分はレンズ4で平行光に変換され、偏光分離素子3に入射、透過される。この際、反射体6によって2つの偏光成分は点対称に反射されているため、光ファイバ2から光が偏光分離素子3に入射された時に、常光線として偏光分離素子3を透過した偏光成分は、反射体6で反射された後に偏光分離素子3に入射される時は異常光線として偏光分離素子3を透過する。
【0056】
一方、光ファイバ2から光が偏光分離素子3に入射された時に、異常光線として偏光分離素子3を透過した偏光成分は、反射体6で反射された後に偏光分離素子3に入射される時は常光線として偏光分離素子3を透過する。
【0057】
図6及び図8(A)に示すように、結晶軸X21に平行な偏光成分が異常光線としてY軸方向にシフトされて(3−4,b−c)の伝搬位置で2つの偏光成分は完全に合成され、光ファイバ2に入射される。
【0058】
従って、被測定対象が光磁界センサ1の近傍に存在する時には、伝搬光が光ファイバ2に結合されるため、伝搬光が検知されることで被測定対象を検知するというセンサ動作を呈する。特に、図5乃至図8で示すように、偏光面回転素子5a,5bに印加される永久磁石7からの磁界が磁気飽和時の半分となり、回転角が22.5度になった場合、最終的に異常光線が完全にシフトされて常光線と結合して光ファイバ2に入射するため、検出される光強度が最大となる。
【0059】
なお、永久磁石7の磁界が全て被測定対象に引き寄せられ、偏光分離素子5a及び5bに永久磁石7から磁界が印加されない場合における、光磁界センサ1の動作を、図9乃至図12を参照して説明する。
【0060】
図9,図10,及び図11(A)と(B)より、光ファイバ2から偏光分離素子3へと光が入射され、偏光分離素子3で常光線と異常光線に分離されて、レンズ4で収束光に変換されるまでは、光磁界センサ1は前記図1,図2,図3(A)及び(B)と同様の動作を示す。
【0061】
次に、分離された2つの偏光成分は、偏光面回転素子5a,5bを透過する際にそれぞれの偏光面は回転されず、そのままの偏光面を保持したまま偏光面回転素子5a,5bを透過する(図11(C)参照)。
【0062】
偏光面回転素子5a,5bを透過した2つの偏光成分の光は、反射体6で入射角と反対側に、一点Rで点対称となる様に反射される(図2,図11(C)及び図12(C)参照)。
【0063】
反射された2つの偏光成分は、再度、偏光面回転素子5b及び5aに入射されるが、やはり偏光面は回転されず、そのままの偏光面を保持したまま偏光面回転素子5b,5aを透過する。
【0064】
更に、2つの偏光成分はレンズ4で平行光に変換され、偏光分離素子3に入射、透過され、図9、図10、及び図12(A)に示すように結晶軸X21に平行な異常光線がY軸方向にシフトされて光ファイバ2に入射されず、更に常光線となる偏光成分も光ファイバ2には入射されない。従って、永久磁石7の磁界が全て被測定対象に引っ張られ、偏光成分の偏光面が回転しない(偏光面回転素子5b及び5aの回転角が0)状態では、伝搬光が光ファイバ2に結合されないため、伝搬光が検知されない。即ち、測定対象を検知しないというセンサ動作を呈する。
【0065】
以上のように、永久磁石7から偏光面回転素子5b,5aに印加される磁界の変化により、光の偏光面を回転させて光の強度を変化させて、被測定対象の有無を検出する。即ち、偏光面回転素子5b,5aの回転角に応じた量だけ、偏光分離素子3によって2つの偏光成分の光路の分離又は合成が起こるので、光ファイバ2に入射する光が減少又は増加する。この光強度の変化を検知することで、被測定対象を検知する光磁界センサとして動作する。このような永久磁石7の磁界の変化に伴う、光の強度の変化を図13にグラフで示す。図13のグラフは、光の強度変化を反射率,永久磁石7の磁界の変化を磁束密度として表したグラフである。
【0066】
図13より、グラフの直線部分上にセンサ動作点を設定するように構成することにより、センサ感度が最適化されることが分かる。
【0067】
また、磁界印加手段を、永久磁石7に換えて電磁石や空芯コイルに変更しても良い。電磁石又は空芯コイルを使用すれば、偏光面回転素子5a,5bにそれぞれ所定の回転角を生じる磁界の調整を、コイルの通電制御によって容易に行うことが出来るため、前記センサ動作点の最適化が容易化される。なお、実際に光磁界センサ1を動作させる際には、偏光面回転素子5a,5bのそれぞれの回転角を40度当たりからスタートさせることが好ましい。
【0068】
以上のように、本発明の光磁界センサ1に依れば、反射体6によって2つの偏光成分を点対称に反射させ、互いの光路を交換するため、2つの偏光成分が偏光分離素子3を透過する時に、どちらの偏光成分も必ず異常光線となる。従って、2つの偏光成分が同一量だけ偏光分離素子3でシフトされて合成され、光ファイバ2に入射される。よって、光ファイバ2から楕円光が光学素子部に入射されても、2つの偏光成分の大きさがそれぞれ補償された上で合成されて光ファイバ2に入射されるため、検知される光強度が光ファイバ2に入射する光の偏光状態に伴って変化しない。以上により、光磁界センサ100を偏光無依存性とすることが出来る。
【0069】
又、光磁界センサ1が光強度を検知する際には、直交する2つの偏光成分を合成し、その合成した光を入射させて光強度を検知しているため、従来の光磁界センサのように一方の偏光成分を吸収もしくは除外していない。従って、入射光の挿入損失が低減可能である。
【0070】
更に、光導波路2にシングルモード光ファイバを使用することによって、光導波路を延長しても低コスト化が可能となる。
【0071】
又、本発明はその技術的思想に基づいて種々変更可能であり、例えば、磁気飽和時に45度の回転角を有する偏光面回転素子を、本実施形態の2枚から、3枚乃至8数に増やして、偏光面回転素子を透過する光の偏光面の回転角を、90度以上から360度以下までの任意の回転角に設定しても良い。図13に、回転角を180度又は270度としたときの、反射率−永久磁石7の磁束密度のグラフをそれぞれ示す。図13より、偏光面回転素子の枚数を増加して総回転角が大きくなるほど、永久磁石7の磁界の変化に対する光の光強度の応答性が急峻になり、光磁界センサ1の応答性並びに感度が向上することが分かる。
【0072】
更に、光導波路2には、本実施形態のようなシングルモード光ファイバに換えて、ガラスや高分子フィルム母材内にパターニングされている光導波路に変更しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に係る光磁界センサは、油田産業用途や、モータ等の回転装置或いは歯車などの回転部分の制御用途などに用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に係る最良の実施形態の反射型磁界センサの構成と、偏光面回転素子が磁気飽和されたときの光の光路を示す側面図。
【図2】図1の反射型磁界センサの斜視図。
【図3】図1の反射型磁界センサにおいて、光ファイバから出射して反射体で反射されるまでの光の偏光状態を示す説明図。
【図4】図1の反射型磁界センサにおいて、反射体で反射されて光ファイバに入射するまでの光の偏光状態を示す説明図。
【図5】本発明に係る最良の実施形態の反射型磁界センサの構成と、偏光面回転素子に印加される永久磁石からの磁界が磁気飽和時の半分となったときの光の光路を示す側面図。
【図6】図5の反射型磁界センサの斜視図。
【図7】図5の反射型磁界センサにおいて、光ファイバから出射して反射体で反射されるまでの光の偏光状態を示す説明図。
【図8】図5の反射型磁界センサにおいて、反射体で反射されて光ファイバに入射するまでの光の偏光状態を示す説明図。
【図9】本発明に係る最良の実施形態の反射型磁界センサの構成と、偏光面回転素子に永久磁石からの磁界が印加されないときの光の光路を示す側面図。
【図10】図9の反射型磁界センサの斜視図。
【図11】図9の反射型磁界センサにおいて、光ファイバから出射して反射体で反射されるまでの光の偏光状態を示す説明図。
【図12】図9の反射型磁界センサにおいて、反射体で反射されて光ファイバに入射するまでの光の偏光状態を示す説明図。
【図13】本発明に係る最良の実施形態の反射型磁界センサの、光の強度変化を反射率,永久磁石の磁界の変化を磁束密度として表したグラフ。
【図14】特許文献1記載の反射型光磁界センサの一構成例を示す模式図。
【図15】掘削作業後の一般的な陸上炭化水素杭井場所と、炭化水素地層及び表面機器を示した概略図。
【図16】図15の掘削穴の一部の拡大図と、光磁界センサの動作原理を示した概略図。
【図17】特許文献3記載の反射型光磁界センサの一構成例を示す模式図。
【図18】特許文献4記載の反射型光磁界センサの一構成例を示す模式図。
【符号の説明】
【0075】
1 光磁界センサ
2 光導波路(光ファイバ)
3 偏光分離素子
4 レンズ
5a,5b 偏光面回転素子
6 反射体
7 永久磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射型光磁界センサは、
光導波路と、偏光分離素子と、レンズと、非相反性の偏光面回転素子と、反射体を含み、
光導波路から順に、偏光分離素子,集光レンズ,偏光面回転素子,反射体と配置され、
光導波路は単芯であり、
更に、偏光面回転素子の周囲には磁界印加手段が配置されて、その磁界印加手段によって偏光面回転素子に磁界が印加され、
偏光面回転素子を透過する光の偏光面の回転角が、90度以上且つ360度以下となるように、偏光面回転素子の回転角が設定され、
光導波路から偏光分離素子に光が入射され、
偏光分離素子に入射された光は、偏光分離素子によって常光線と異常光線の2つの偏光成分に分離され、
次に、2つの偏光成分はレンズに入射されて収束され、
収束された2つの偏光成分は偏光面回転素子に入射されて、前記設定された回転角だけ回転され、
更に、2つの偏光成分は反射体の反射面の一点に収束されて点対称に反射され、
再度、2つの偏光成分は偏光面回転素子に入射されて、偏光面が前記設定された回転角だけ更に回転され、
次に、2つの偏光成分はレンズに入射されて平行光に変換され、
平行光に変換された2つの偏光成分は、更に偏光分離素子に入射され、
光導波路から光が偏光分離素子に入射された時に常光線として偏光分離素子を透過した偏光成分は、反射体で反射された後に偏光分離素子に入射された時は異常光線として透過すると共に、
光導波路から光が偏光分離素子に入射された時に異常光線として偏光分離素子を透過した偏光成分は、反射体で反射された後に偏光分離素子に入射された時は常光線として透過して、2つの偏光成分が合成され、
合成された光が光導波路に入射されることを特徴とする反射型光磁界センサ。
【請求項2】
前記光導波路がシングルモード光ファイバであることを特徴とする請求項1記載の反射型光磁界センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−107490(P2010−107490A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298741(P2008−298741)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000101385)アダマンド工業株式会社 (26)
【Fターム(参考)】