説明

反射型表示装置

【課題】低消費電力かつ高反射率のカラー表示可能な視野角の広い反射型表示装置を提供する。
【解決手段】本発明の反射型表示装置は、反射基板10と、前記反射基板の上方に設けられた第1透明基板50と、前記第1透明基板50と対向して設けられた第2透明基板52と、前記第1透明基板50と前記第2透明基板52との間に設けられた電気光学材料部30と、前記第1透明基板50の上方に設けられた第1電極40と、前記第2透明基板52の下方に設けられた第2電極42と、カラーフィルタ20とを含む。そして、前記反射基板10は、その上面に第1透明基板50に向かって凹状の反射面14を有し、前記カラーフィルタ20は、各画素26において、着色部22と透明部24とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高い反射率を有しカラー表示が可能な反射型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子情報ネットワークの普及に伴い、従来の印刷物に代わり、電子書籍等の電子出版が盛んに行われるようになってきた。こうしたネットワークで配信される電子情報を表示させる装置としてはCRTまたはバックライト型液晶ディスプレーが一般的に用いられている。しかしながら、これらを用いた表示は、紙に印刷した慣用の表示に比べ、読む場所が制限され、取り扱いの面においても重量、大きさ、形状、携帯性の点で劣り、その改善が求められている。CRTまたはバックライト型液晶ディスプレーは、いずれも自発光型のディスプレーであり、長時間凝視すると人間工学的理由から高い疲労を招くことがある。また、これらのディスプレーは消費電力も大きいため、電池による駆動であれば表示時間にも制限が生じてしまう。かかる理由から未だ印刷物の代替としてはとうてい不十分な状況であり、例えば低消費電力化を図る目的では反射型の液晶ディスプレーが開発されている。しかし、反射率が低く、表示性能は未だ満足できるものではない。
【0003】
前述の問題点を解決するために、前記反射型液晶ディスプレーを含め、ペーパーライクディスプレー、あるいは電子ペーパーと称するものが多数のメーカー、研究機関によって提案されている。例えば電気泳動により着色粒子を電極間で移動させる方式(電気泳動方式)、二色性の粒子を電場で回転させる方式、電気化学的な作用に基づくエレクトロクロミック表示方式、エレクトロデポジット表示方式、および電子粉流体方式などが挙げられる。なかでも、電気泳動方式は、表示を保持するのための電力が不要、または十分に小さいという性質、いわゆるメモリー性が優れている点で、期待されている。
【0004】
さらに反射型ディスプレーのカラー化という課題がある。この課題には、例えばバックライト型液晶ディスプレーで用いられるカラーフィルタを組み入れることが検討される。しかし、この方法を反射型のディスプレーに適用すると、カラーフィルタ自体が光を吸収するため、反射率は不十分なものとなる。したがって、色彩表現や視認性といった表示性能も不十分となる欠点がある。
【0005】
そして、この反射型表示部分の明るさが低下することを抑えるという課題に対しては、部分反射型の液晶表示装置に関してではあるが、検討がみられる。例えば、特開2001−166289号公報が例示できるが、液晶表示装置の反射型表示部分におけるカラーフィルタの膜厚を透過型表示部分の膜厚の半分とすることによって、反射型表示部分の反射率を改善するとの記載がある。ところが、このような方法では、カラーフィルタの濃度の異なる隣り合う領域が表示光の光路に入ってしまう。そのため、反射型表示における視野角は、狭く制限されてしまう問題を有する。そのうえ、設計通りの光路を採り得た場合でも、表示の色純度すなわちフィルタ性能は、低下してしまうという問題を有する。
【特許文献1】特開2001−166289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、高反射率のカラー表示が可能で、視野角の広い反射型表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる反射型表示装置は、
反射基板と、
前記反射基板の上方に設けられた第1透明基板と、
前記第1透明基板と対向して設けられた第2透明基板と、
前記第1透明基板と前記第2透明基板との間に設けられた電気光学材料部と、
前記第1透明基板の上方に設けられた第1電極と、
前記第2透明基板の下方に設けられた第2電極と、
カラーフィルタと、
を、含み、
前記反射基板は、その上面に前記第1透明基板に向かって凹状の反射面を有し、
前記カラーフィルタは、各画素において、着色部と透明部とを有する。
【0008】
上記構成により、高反射率のカラー表示が可能で、視野角の広い反射型表示装置を提供することができる。
【0009】
本発明において、特定のA部材(以下、「A部材」という。)の上方に設けられた特定のB部材(以下、「B部材」という。)というとき、A部材の上に直接B部材が設けられた場合と、A部材の上に他の部材を介してB部材が設けられた場合とを含む意味である。
【0010】
本発明において、前記カラーフィルタは、前記第1透明基板の下面に設けることができる。
【0011】
本発明において、前記カラーフィルタは、前記第1透明基板の上面に設けることができる。
【0012】
本発明において、前記カラーフィルタは、前記第2透明基板の下面に設けることができる。
【0013】
本発明において、前記カラーフィルタの着色部は、各画素の中央部に設けることができる。
【0014】
本発明において、前記カラーフィルタの着色部は、各画素の端部に設けることができる。
【0015】
本発明において、前記反射面の形状は、曲面とすることができる。
【0016】
本発明において、前記反射面の形状は、平面の組み合わせとすることができる。
【0017】
本発明において、前記反射面の形状は、曲面の組み合わせとすることができる。
【0018】
本発明において、前記反射面の形状は、平面と曲面との組み合わせとすることができる。
【0019】
本発明において、前記反射面は、前記各画素において、一部分に形成することができる。
【0020】
本発明において、前記反射面は、前記各画素において、全体に形成することができる。
【0021】
本発明において、前記反射面の形状は、シリンドリカル状とすることができる。
【0022】
本発明において、前記反射面の形状は、ディンプル状とすることができる。
【0023】
本発明において、前記電気光学材料部は、電気泳動分散体とすることができる。
【0024】
本発明において、前記電気光学材料部は、液晶とすることができる。
【0025】
本発明において、前記電気光学材料部は、エレクトロクロミック物質を含むことができる。
【0026】
本発明において、前記カラーフィルタは、光学機能を有することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0028】
1.第1の実施形態
1.1.反射型表示装置
図1は、本実施形態の反射型表示装置100を模式的に示す断面図である。図2は、本実施形態のカラーフィルタ20の平面図である。図3は、本実施形態の反射型表示装置100の斜視図である。図4は、光路を模式的に示したものである。
【0029】
本実施形態にかかる反射型表示装置100は、反射基板10と、反射基板10の上方に設けられた第1透明基板50と、第1透明基板50と対向して設けられた第2透明基板52と、第1透明基板50と第2透明基板52との間に設けられた電気光学材料部30と、第1透明基板50の上方に設けられた第1電極40と、第2透明基板52の下方に設けられた第2電極42と、カラーフィルタ20と、を含む。反射基板10は、その上面に第1透明基板50に向かって凹状の反射面14を有する。そして、カラーフィルタ20は、各画素26において、着色部22と透明部24とを有し、第2透明基板52の下面に接して設けられる。
【0030】
反射基板10は、その上面に、第1透明基板50の下面に対して凹状の反射面14を有する。この凹状の反射面14は第1透明基板50の下面との間に空隙16を形成する。この空隙16には空気または透明の材料が封入される。
【0031】
反射面14は、反射型表示装置100の各画素26に対応して形成されており、各画素26への入射光を反射する。その反射光は反射面14の形状によって集光または散乱作用を受ける。
【0032】
この作用を持たせるために、反射面14の採りうる形状は、好ましくは凹曲面である。本実施形態では、図3に示すように、反射面14の形状を、その断面形状が放物曲線の一部となる、樋すなわちシリンドリカル状の形状とする。
【0033】
反射面14は以下のような変形例をとることができる。すなわち、反射面14の断面形状としては、放物曲線若しくは双曲線の一部、または、円弧若しくは楕円弧となるものを例示でき、これらの曲線から選ばれる曲線の組み合わせでもよい。また反射面14の断面形状は、直線線分および自由曲線の一部をさらに前記曲線の組み合わせに含むことができる。また、第1透明基板50に向かって凹状の反射面となっておれば、反射面14の断面形状は、複数の直線線分から構成されてもよい。さらに、反射面14は、全体として第1透明基板50に向かって凹状の反射面となっておれば、部分的に凸形状を有してもよい。反射面14は、各画素26の全体または一部分に形成されてもよい。そして、反射面14の形状は、反射基板10の面内すなわち図1の紙面に垂直な方向において、樋すなわちシリンドリカル状に限定されず、器すなわちディンプル状でもよい。
【0034】
反射基板10は、反射面14が鏡面であれば、基材12および反射膜18の材質は任意である。例えば、反射基板10のうち基材12をあらかじめプラスチックを用いて成形したのち、反射面14を、金属蒸着法や金属メッキにて形成した金属膜18によって構成することができる。
【0035】
カラーフィルタ20は、本実施形態において、第2透明基板52の下面に接して形成される。そして、図2に示すように、カラーフィルタ20は着色部22と透明部24とを有する。図2における符号26は画素を示す。
【0036】
着色部22は、それぞれ赤(R)、緑(G)、または青(B)に対応する波長の光を透過させる機能を持つ。本実施形態では、透明部24は、光をそのまま透過する。カラーフィルタ20の着色部22および透明部24の変形例としては、着色部22および/または透明部24に、光学機能を付与することができる。ここでいう光学機能は、たとえば、集光性、指向性、ホログラム等の機能のことを指す。いずれの機能も、公知の技術によって付与することができる。
【0037】
着色部22の形状および配置は、入射光または反射光が、効率よく着色されるように選択される。理想的には、着色部22の形状および配置は、入射光が反射光となって、反射型表示装置100の外部に出るまでの間に1回だけ着色部22を透過するように選択されることが望ましい。着色部22の反射基板10からの距離についても、同様に選択されることが望ましい。また、着色部22は、画素26の端から半分の領域に形成されたストライプ形状とする。
【0038】
着色部22は、その形状および配置を反射面14の形状に合わせて適宜選ぶことができる。例えば、画素26の面積に対する着色部22の面積の割合Xは、反射率が大きく、良好なカラー表示を行うために、0.2≦X≦0.6とすることが望ましい。一方、着色部22の配置は画素26の中心部であっても、画素26の端部に接触していてもよい。さらに画素26内に着色部22が2箇所以上配置されてもよい。
【0039】
カラーフィルタ20は、例えば、着色剤を含む感光樹脂を第2透明基板52に塗布したのち、フォトリソグラフィおよびエッチングの技術を用いて、不要部を除去する方法によって形成される。透明部24は、着色剤を含む樹脂が除去されたままでもよいし、着色剤を含む樹脂が除去された部分に、他の透明樹脂を充填したものとしてもよい。
【0040】
本実施形態では、表示方式としては電気泳動方式を用いる。したがって、電気光学材料部30は、公知のとおり、分散媒と分散粒子からなる分散体で構成される。分散媒としては絶縁性の有機溶媒を用いる。
【0041】
電気光学材料部30は、分散粒子が、入射光または反射光の遮蔽、すなわちシャッターの機能を持つ。この機能のため、分散粒子は黒色のものが望ましく、公知の黒色低次酸化チタンまたはカーボンブラックが選択される。また分散体は、隔壁32を設置したり、カプセル化して用いる等、公知の方法で改良することができる。カプセル化については後述する。
【0042】
電気光学材料部30は、入射光または反射光の遮蔽、すなわちシャッターの機能が発現できれば、電気泳動分散体に限定されない。したがって、選択する表示方式に応じて、種々の材料を適宜選択することができる。たとえば、表示方式に液晶方式を選べば、電気光学材料部30は、各種の液晶材料を選択できる。また、表示方式にエレクトロクロミック方式を選べば、電気光学材料部30は、各種のエレクトロクロミック物質を含むことができる。より具体的には、電気光学材料部30は、東レリサーチセンター編書籍「電子ペーパーとフレキシブルFPD」に記載されている各種の表示システムに対応した変形が可能である。たとえば、電気光学材料部30は、前記書籍87頁、168頁に記載のゲストホスト型システムを構成する物質を含むことができる。また、電気光学材料部30は、前記書籍124頁に記載の摩擦帯電型トナーディスプレー、130頁に記載のIn−Plane型電気泳動システム、151頁に記載の異方性流体/微粒子型ディスプレーを構成するための物質を含むことができる。また、電気光学材料部30は、ビオロゲン、酸化タングステン酸等に代表される、エレクトロクロミック物質を含むことができる。これらの変形例は、偏光板を使用したり、背景体を付加したり、と本実施形態に付加すべき構成を含む場合がある。しかしながら、いずれの場合においても、これらの変形例は、本実施形態で説明している構成と同一の作用効果を奏する構成となり、同一の目的を達成することができる構成となる。また、これらの変形例は、本実施形態で説明している構成に公知技術を付加した構成となる。
【0043】
第1電極40および第2電極42は、電気光学材料部30に接して電気光学材料部30を挟むように形成される。これら2つの電極の形状は、いずれか一方は線状に、他方は帯状に形成される。
【0044】
本実施形態では、下方の第1電極40は線状に形成され、各画素に3本設けられ、かつ、反射面14のシリンドリカル形状に平行に設けられる。第1電極40は電気泳動分散粒子を線状に捕集する機能を有する。したがって電気泳動分散粒子を該電極に捕集するような電圧を印加した場合は、前記シャッターが開放された状態となる。
【0045】
第1電極40は電気泳動分散粒子を捕集した場合に、十分に光路を確保するため、その線幅は、画素26の幅に対して10分の1から100分の1であることが好ましい。第1電極40の本数は、各画素26あたり、1本でも良いし、2本以上形成してもよい。第1電極40の本数は、多すぎると電極自体が表示装置の反射率を低下させるおそれがあるため、各画素26あたり、1本から5本とすることが好ましい。第1電極40の設置方向は、反射面14の形状によらず自由にとることができる。例えば、反射面14がシリンドリカル状である場合、第1電極40は、互いに線方向を交差して設置することもできる。第1電極40の材質としては、白金などの不透明な導電性の金属、またはインジウム錫酸化物(ITO)などの透明な導電性の物質を用いることができる。
【0046】
本実施形態では、上方の第2電極42が帯状すなわちストライプ状に形成される。第2電極42は、透明であり、かつ、対になる第1電極40の線の方向に帯が直交するように設けられる。第2電極42は、電気泳動分散粒子を面状に捕集する機能を有する。したがって電気泳動分散粒子を第2電極42に捕集するような電圧を印加した場合は、前記シャッターが閉じた状態となる。具体的には、第2電極42は、その帯が各画素26あたり1本となるように設けられる。第1電極40と第2電極42の交差している領域が本反射型表示装置100の各画素26に対応する。第2電極42の材質は、公知の透明かつ導電性のものから選択される。この例としては、ITOが挙げられる。
【0047】
本実施形態において、第1透明基板50および第2透明基板52は公知のものを用いることができる。例えば、第1透明基板50および第2透明基板52は、無アルカリガラス等のガラス基板や、ポリマーフィルムが選択される。図示した反射型表示装置100の表示の駆動原理は単純マトリクス駆動方式であるが、アクティブマトリクス方式も選択されうる。
【0048】
1.2.反射型表示装置の製造方法
反射型表示装置100の製造方法は、以下の工程を有することができる。
【0049】
(1)反射基板10は、プラスチックを用いて基材12を成形し、金属メッキまたは金属蒸着法にて反射膜18を形成して製造される。すなわち反射膜18の表面は反射面14となる。あるいは、反射基板10は、基材12をアルミ板とし、反射面14が所望の形状となるように、鏡面仕上げ加工する方法や、さらに銀などのメッキを行って製造される。
【0050】
(2)第1透明基板50は、反射基板10上に設けられる。第1透明基板50は、無アルカリガラス等のガラス基板や、ポリマーフィルムを用いることができる。反射基板10は、第1透明基板50に適当な治具で機械的に押さえて密着させても、接着剤等を用いて接着してもよい。本実施形態では、第1透明基板50上には第1電極40が線状に設けられる。第1電極40は、例えば、スパッタ法などで成膜した後、エッチングにてパターニングして形成される。第1電極40は、白金などの金属、またはITOなどの透明導電物質により形成される。
【0051】
(3)第2透明基板52には、本実施形態では、カラーフィルタ20が設けられ、そのカラーフィルタ20の設けられた面に第2電極42が設けられる。第2透明基板52には、無アルカリガラス等のガラス基板や、ポリマーフィルムを用いることができる。カラーフィルタ20は、RGB各色それぞれ着色剤を含む樹脂を第2透明基板52の片面全体に塗布し、フォトリソグラフィ法およびエッチング法などの技術を用いて、不要部の樹脂を除去するといった公知の方法により設けられる。第2電極42は、本実施形態では帯状に形成される。第2電極42は、公知の方法で設置される。本実施形態では、ITOなどの透明導電性物質を用い、スパッタ法、エッチング法などにより形成される。本実施形態では第2電極42を形成する面にカラーフィルタ20が設けられているため、カラーフィルタ20がダメージを受けないように、適当な保護膜をカラーフィルタ20の上に形成することができる。
【0052】
(4)電気光学材料部30は次のように調製される。本実施形態では、表示方式としては電気泳動方式が用いられる。電気光学材料部30は公知のとおり、分散媒と分散粒子からなる分散体で構成される。分散媒としては絶縁性の有機溶媒を用いる。絶縁性の有機溶媒としては、キシレン、トルエン、ベンゼン、ドデシルベンゼンまたはナフテン系炭化水素などの芳香族系炭化水素類、シクロヘキサン、n−ヘキサンまたはパラフィン系炭化水素等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチルまたは酢酸ブチル等のエステル類、メチルエチルケトンまたはメチルイソブチルケトン等のケトン類、エタノール、イソプロピルアルコール、オクタノールまたはメチルセロソルブ等のアルコール類、トリクロロエチレンまたは四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類、等の単独又は混合物を用いる。電気光学材料部30に用いる分散粒子はとしては、特許文献(特開2001−188269)などに記載の黒色低次酸化チタンまたはカーボンブラック等の黒色微粒子を用いる。本実施形態は特許文献(特許第255173号、特開2001−188269)に示される白、黒2種類の粒子を用いることもできる。
【0053】
上記分散媒と上記分散粒子から分散体が製造されるが、この分散体には荷電制御剤、分散剤等を添加することができる。さらに、分散体はカプセルに封入して用いることができる。カプセルの形成は該分散系をボールミル、サンドミル等で十分に分散した後、界面重合法不溶化反応法、相分離法、界面沈殿法等、公知の方法により行う。
【0054】
(5)最後に(2)および(3)で製造した2つの部材によって、その電極が形成された面を内側にして、(4)で作製した電気光学材料部30が挟み込まれる。具体的には製造した一方または両方の基板の、電極が形成された面に、電気光学材料部30がコーティングされ、さらに電極の形成された面が、互いに向かい合うように貼りあわせられる。コーティングの方法はスクリーン印刷法、ローラー印刷法等の印刷方式、エクストルードコーティング、コンマコーティング等各種のコーティング法、スプレー法などを用いる。基板間の距離は、隔壁等を設けて調整でき、または、適当なスペーサーを用いて調整することができる。電気光学材料部30にカプセル化された分散体を用いた場合、該カプセルは押しつぶされた形状で挟み込まれてもよい。分散体をカプセル化することにより、画素26間の電気泳動分散粒子の移動が抑制される。図1は、分散体をカプセル化した場合の例を示す。符号32は、カプセルの外壁が互いに接して隔壁となっている構造を模式的に示す。なお、隔壁32は、必ずしも各画素に対応して配置される必要はない。
【0055】
1.3.作用効果
第1の実施形態にかかる反射型表示装置100は、以下のような作用効果を有する。
【0056】
反射型表示装置100の表示状態において、光路は、図4に示すように、カラーフィルタ20の着色部22を1回だけ透過する光路64と、2回透過する光路66と、および1回も透過しない光路68と、に分類される。反射型表示装置100は、反射面14の形状が集光作用を有する。しかもカラーフィルタ20の着色部22が画素26の半分の領域を覆う。その結果、1回透過する光路64は、入射角の全範囲を考慮したときに、他の光路に比較して、相対的に多数となる。よって、反射型表示装置100は、従来の反射面が平面である場合、または、カラーフィルタ20の着色部22が画素の全面を覆う場合よりも高い反射率の表示が可能となる。加えて、反射面14が有する集光作用により、画素26の中央付近を透過する光路は、画素26の周辺部を透過する光路に対し、入射角の全範囲にわたり相対的に多数となる。その結果、広範囲な入射角において、画素26の区画外へ外れる光路は少なくなる。さらに、カラーフィルタ20の着色部22は、そのフィルタ能力を従来のバックライト型表示装置に用いるものと同等のものを選択することができるため、表示光の色純度を高くすることができる。
【0057】
以上のことから、反射型表示装置100は、高い反射率を有し、かつ広い視野角を有するカラー表示装置となる。
【0058】
1.4.実験例
本実験例は、オプテンゾ社(ドイツ国)製ソフト「OpTaliX」を用いた二次元光線シミュレーションである。
【0059】
シミュレーションは反射面14の断面形状、カラーフィルタ20の着色部22の幅および位置、入射光60の入射角、を変化させておこなった。
【0060】
シミュレーションの結果は、光が装置へ入射し、装置外へ出るまでの一連の過程において、カラーフィルタ20の着色部22を通過する光の全垂直入射光に対する割合であらわす。この割合は、以下、着色率ということがある。本実験例において、非着色率とは、光が装置へ入射し、装置外へ出るまでの一連の過程において、カラーフィルタ20の着色部22を通過しない光の全垂直入射光に対する割合である。本実験例において、一回通過率とは、光が装置へ入射し、装置外へ出るまでの一連の過程において、カラーフィルタ20の着色部22を1回だけ通過する光の全垂直入射光に対する割合である。
【0061】
本実験例の具体的な方法を以下に記す。本実験例における入射光は、平行光線とし、シミュレーションプログラムへは、画素幅全体におよぶ、一定間隔を持つ、複数の平行な線分として入力される。前記複数とは、反射面14の特徴をあらわすために必要な本数を設定する。前記一定間隔は、光線の入射角に依存しないため、入射角から見込む画素幅が小さいときは本数が少なくなる。上記入力に対して結果は、各線分から連なる折れ線となる。ここでは光が装置へ入射し、装置外へ出るまでの折れ線すなわち線分の連鎖を光路という。着色率は、前記結果において、着色部22を通過する折れ線の個数を、基準となる線分の本数で除したものであり、百分率であらわす。前記基準となる線分の本数とは、前記設定した一定間隔と同一の間隔で、入射角が0度の場合の、前記平行な線分の、画素幅あたりの本数である。同様に、非着色率は、着色部22を通過しない折れ線の個数を、基準となる線分の本数で除したものであり、百分率であらわす。同様に、一回通過率は、着色部22を1回だけ通過する折れ線の個数を、基準となる線分の本数で除したものであり、百分率であらわす。なお、入射角は表示装置の法線からなす角を指す。
【0062】
(1)第1の実験例
本実験例では、反射面14の断面形状は円弧とし、着色部22の幅は画素26の幅の50%とした。そして着色部22と反射面14の距離は、着色部22を、反射基板10の上面から反射面14の最遠部までの距離の1/2だけ反射基板10の上面から離すように設定した。着色部22の位置は画素26の端に接しているものとした。図6は、本実験例の光線図の一例を示す。本実験例で得られた着色率は、入射角0度で82%、入射角10度で80%、入射角20度で74%、入射角50度で54%であった。本実験例で得られた非着色率は、入射角0度で18%、入射角10度で20%、入射角20度で20%、入射角50度で11%であった。本実験例で得られた一回通過率は、入射角0度で82%、入射角10度で72%、入射角20度で73%、入射角50度で32%であった。
【0063】
(2)第1の比較実験例
本比較実験例では着色部22の幅と着色部22の位置を実験例1と同一とし、反射面14の断面形状を直線とした。着色部22と反射基板10との距離は、実験例1と同一とした。本比較実験例で得られた着色率は、入射角0度で50%、入射角10度で52%、入射角20度で50%、入射角50度で41%であった。本比較実験例で得られた非着色率は、入射角0度で50%、入射角10度で48%、入射角20度で40%、入射角50度で19%であった。本比較実験例で得られた一回通過率は、入射角0度で50%、入射角10度で8%、入射角20度で12%、入射角50度で30%であった。
【0064】
実験例および比較実験例の結果は、表1にまとめて示す。
【0065】
【表1】

【0066】
2.第2の実施形態
2.1.反射型表示装置
図5は、本実施形態の反射型表示装置200を模式的に示す断面図である。
【0067】
本実施形態は、カラーフィルタ20を設ける位置および電気光学材料部30が第1の実施形態と異なる以外は、第1実施形態と同様である。本実施形態ではカラーフィルタ20は、第1透明基板50と反射基板10の間に設けられ、電気光学材料部30は、液晶方式を用いる。第1の実施形態における反射型表示装置100の部材と実質的に同一の部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0068】
具体的には、本実施形態にかかる反射型表示装置200は、反射基板10と、反射基板10上に設けられたカラーフィルタ20と、反射基板10の上方に設けられた第1透明基板50と、第1透明基板50と対向して設けられた第2透明基板52と、第1透明基板50と第2透明基板52との間に設けられた電気光学材料部30と、第1透明基板50の上方に設けられた第1電極40と、第2透明基板52の下方に設けられた、第2電極42と、を含む。そして反射基板10は、その上面に第1透明基板50に向かって凹状の反射面14を有する。そしてカラーフィルタ20は、各画素26において、着色部22と透明部24とを有する。
【0069】
2.2.反射型表示装置の製造方法
本実施形態の反射型表示装置200の各部材の製造方法は、第1の実施形態で説明した方法を適宜選択して用いることができる。本実施形態では電気光学材料部30に液晶を用いる。電気光学材料部30の液晶は、公知の物質を用いることができる。これにしたがって、第1電極40および第2電極42の形状または配置は、適宜変形させても良い。
【0070】
2.3.作用効果
第2の実施形態にかかる反射型表示装置200は以下のような作用効果を有する。
【0071】
反射基板10に接してカラーフィルタ20が設けられることで、第1の実施形態で説明した作用効果に加えて、新たに以下の作用効果を生じる。本実施形態における反射型表示装置200は、集光作用を有する反射面14と着色部22が接しているため、1回も着色部22を透過しない光路68(図4参照)を、第1実施形態の反射型表示装置100に比べて、減少させることができる。そのうえ、本実施形態における反射型表示装置200は、着色部22が画素の全面を覆う場合には得ることができない、1回だけ着色部22を通過する光路64を、非着色率を小さく保った状態で得ることができる。その結果、反射型表示装置200は、反射型表示装置100に認められた視野角の広い表示に加え、さらに良好なカラー表示が可能である。また、反射面14の形状とカラーフィルタ20の着色部22の形状と面積を適切に選ぶことで、上記光路68は、広い入射角範囲で極めて少なくすることができる。さらに、反射面14の形状とカラーフィルタ20の着色部22の形状と面積を適切に選ぶことで、上記光路64の割合を大きくすることができる。これにより、広視野角、高反射率のカラー表示が良好な反射型表示装置が得られる。
【0072】
2.4.実験例
本実験例は、第1の実施形態の実験例と同様の方法でおこなった。
【0073】
(1)第2の実験例
本実験例では、反射面14の断面形状は円弧とし、着色部22の幅は画素26の幅の50%とした。そして着色部22と反射基板10の距離は、互いに接しており、着色部22の位置は画素26の端に接しているものとした。本実験例で得られた着色率は、入射角0度で100%、入射角10度で98%、入射角20度で93%、入射角50度で64%であった。本実験例で得られた非着色率は、入射角0度で0%、入射角10度で0%、入射角20度で0%、入射角50度で0%であった。本実験例で得られた一回通過率は、入射角0度で50%、入射角10度で49%、入射角20度で47%、入射角50度で32%であった。
【0074】
(2)第2の比較実験例
本比較実験例では、反射面14の断面形状、着色部22と反射基板10との距離を第3の実験例と同一とし、着色部22の幅を画素26の幅の100%とした。本実験例で得られた着色率は、入射角0度で100%、入射角10度で100%、入射角20度で100%、入射角50度で100%であった。本実験例で得られた非着色率は、入射角0度で0%、入射角10度で0%、入射角20度で0%、入射角50度で0%であった。本比較実験例で得られた一回通過率は、入射角0度で0%、入射角10度で0%、入射角20度で0%、入射角50度で0%であった。
【0075】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらに限定されず、以下のような態様をとることもできる。
【0076】
図7に示すように、カラーフィルタ20は第1透明基板50の上面に設けることができる。
【0077】
図8に示すように、カラーフィルタ20の着色部22は画素の中央部に配置することができる。
【0078】
図9に示すように、反射面14の断面形状は、線分の組み合わせとすることができる。
【0079】
図10に示すように、反射面14の断面形状は、曲線の組み合わせとすることができる。
【0080】
図11に示すように、反射面14の断面形状は、線分と曲線との組み合わせとすることができる。
【0081】
図12に示すように、反射面14は、各画素26において、一部分に形成することができる。
【0082】
図13に示すように、反射基板10は、その反射面14の形状をディンプル状とすることができる。
【0083】
図14に示すように、カラーフィルタ20は、前述したような光学機能を有する、光学機能部28を含むことができる。
【0084】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。たとえば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(たとえば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】第1の実施形態にかかる反射型表示装置を模式的に示す断面図。
【図2】第1の実施形態のカラーフィルタの平面図。
【図3】第1の実施形態の反射型表示装置の斜視図。
【図4】光路を模式的に示した図。
【図5】第2の実施形態にかかる反射型表示装置を模式的に示す断面図。
【図6】第1の実験例にかかる光線図の一例。
【図7】カラーフィルタを第1透明基板の上面に設けた反射型表示装置を模式的に示す断面図。
【図8】着色部を画素の中央部に設けたカラーフィルタの平面図。
【図9】反射面14の断面形状を線分の組み合わせとしたときの一例を示す模式図。
【図10】反射面14の断面形状を曲線の組み合わせとしたときの一例を示す模式図。
【図11】反射面14の断面形状を線分と曲線の組み合わせとしたときの一例を示す模式図。
【図12】反射面14を各画素において一部分に形成したときの一例を示す模式図。
【図13】反射面14の形状をディンプルとした反射基板10の平面図。
【図14】カラーフィルタ20に光学機能部28を設けた反射型表示装置400を模式的に示す断面図。
【符号の説明】
【0086】
10 反射基板、12 反射基板の基材、14 反射面、16 空隙、18 反射膜、20 カラーフィルタ、22 着色部、24 透明部、26 画素、28 光学機能部、30 電気光学材料部、32 隔壁、40 第1電極、42 第2電極、50 第1透明基板、52 第2透明基板、60 入射光、62 反射光、64 1回透過光路、66 2回透過光路、68 0回透過光路、100 反射型表示装置、200 反射型表示装置、300 反射型表示装置、400 反射型表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射基板と、
前記反射基板の上方に設けられた第1透明基板と、
前記第1透明基板と対向して設けられた第2透明基板と、
前記第1透明基板と前記第2透明基板との間に設けられた電気光学材料部と、
前記第1透明基板の上方に設けられた第1電極と、
前記第2透明基板の下方に設けられた第2電極と、
カラーフィルタと、
を、含み、
前記反射基板は、その上面に前記第1透明基板に向かって凹状の反射面を有し、
前記カラーフィルタは、各画素において、着色部と透明部とを有する、反射型表示装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記カラーフィルタは、前記第1透明基板の下面に設けられた、反射型表示装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記カラーフィルタは、前記第1透明基板の上面に設けられた、反射型表示装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記カラーフィルタは、前記第2透明基板の下面に設けられた、反射型表示装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかにおいて、
前記カラーフィルタの着色部は、前記各画素の中央部に設けられた、反射型表示装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4のいずれかにおいて、
前記カラーフィルタの着色部は、前記各画素の端部に設けられた、反射型表示装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかにおいて、
前記反射面の形状は、曲面である、反射型表示装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項6のいずれかにおいて、
前記反射面の形状は、平面の組み合わせである、反射型表示装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項6のいずれかにおいて、
前記反射面の形状は、曲面の組み合わせである、反射型表示装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項6のいずれかにおいて、
前記反射面の形状は、平面と曲面との組み合わせである、反射型表示装置。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれかにおいて、
前記反射面は、前記各画素において、一部分に形成される、反射型表示装置。
【請求項12】
請求項1ないし請求項10のいずれかにおいて、
前記反射面は、前記各画素において、全体に形成される、反射型表示装置。
【請求項13】
請求項1ないし請求項12のいずれかにおいて、
前記反射面の形状は、シリンドリカル状である、反射型表示装置。
【請求項14】
請求項1ないし請求項12のいずれかにおいて、
前記反射面の形状は、ディンプル状である、反射型表示装置。
【請求項15】
請求項1ないし請求項14のいずれかにおいて、
前記電気光学材料部は、電気泳動分散体からなる、反射型表示装置。
【請求項16】
請求項1ないし請求項14のいずれかにおいて、
前記電気光学材料部は、液晶からなる、反射型表示装置。
【請求項17】
請求項1ないし請求項14のいずれかにおいて、
前記電気光学材料部は、エレクトロクロミック物質を含む、反射型表示装置。
【請求項18】
請求項1ないし請求項17のいずれかにおいて、
前記カラーフィルタは、光学機能を有する、反射型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−279641(P2007−279641A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−109568(P2006−109568)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【出願人】(505303059)株式会社船井電機新応用技術研究所 (108)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】