説明

収穫判定基準付果実袋および果実傘

【課題】
果物の収穫時期の判定を容易に行うことができる果実袋又は果実傘を提供する。
【解決手段】
果実袋又は果実傘に、その果実の収穫時期の色を判定する判定基準のカラーチャートと同じ色彩の、耐候性の色材の、着色部を設けることにより、果実の色が収穫基準色と同じ程度になるかどうかを確認することが可能となる。
【効果】
本発明の、果実袋又は果実傘は、その着色部が、果実に隣接して配置されるので、果実の色と着色部の色とを比色することにより、瞬時に収穫時期が判定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収穫判定基準付果実袋および果実傘に関する。
【背景技術】
【0002】
果実を、病害虫の防除や,さびの発生を防止したり、着色をよくしたり、殺虫剤が付着したりしないように、収穫前に果実袋が被せられる。また、果実を雨から保護するとともに鳥類の侵入を阻止するために果実傘が使用される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
果実の収穫時期の判定は、果実の成熟につれて、果皮の葉緑素が分解して、果皮の地色が緑から黄に変化し、また、品種独特の着色が起こるので、その程度をカラーチャートを利用して、肉眼で判定することにより、行われている。
【0004】
近年、夏の夜温が高いため、ブドウ、モモ等の果実の着色が遅れるという問題があり、そのために収穫時に一房一房の着色をチェックしながら収穫しなければならないため多くの時間を要する。また、何度も着色をチェックしているうちに、色の識別が難しくなることがある。
【0005】
本発明の目的は、果実の収穫時期の判定を簡易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
果実袋又は果実傘に、その果実の判定基準のカラーチャートと同じ色彩の、耐候性の色材の、着色部を設けることにより、果実の色が収穫基準色と同じ程度になるかどうかを確認することで、直ちに果物の収穫時期の判定を行うことができる。
【0007】
着色部を形成する、果実袋は、従来、果実を病害虫の防除や,さびの発生を防止したり、着色をよくしたり、殺虫剤が付着したりしないように、使用されているものでよい。この果実袋としては、袋中の果実を外から見ることができるように、透明の窓が形成されているものでもよい。
【0008】
着色部を形成する、果実傘は、従来、果実を雨から保護するとともに鳥類の侵入を阻止するために果実傘でよい。
【0009】
着色部の色彩は、その果実の収穫時期を判定するためのものである。その果実の収穫時期判定基準のカラーチャートと同じ色彩の色材で形成される。
【0010】
その果実袋又は果実傘には、果実名を表示して、その着色部の色彩がどの果実の収穫時期を示すのかを表すことができる。
【0011】
着色部の色材は、袋掛けしてから収穫時期まで、着色部は風雨に数ヶ月さらされるので、耐候性が要求される。本明細書では、色材とは、染料、顔料、インキ、塗料など、色に関する材料をいう。顔料には、有機顔料と無機顔料があり、本発明の色材として用いることができる。本発明の場合、色材を耐候性にするためには、染料、顔料自体が耐候性であることが望ましい。
【0012】
無機顔料は、一般的に耐候性であるので、本発明の色材の着色剤として望ましい。無機顔料には、白色顔料、体質顔料、有彩無機顔料、黒色顔料がある。
【0013】
有彩無機顔料としては、酸化鉄、クロム酸鉛、モリブデン酸鉛オレンジ、カドミウム、合成金属酸化物混合物、紺青がある。
【0014】
酸化鉄は小さい彩度(クローマ)と優れた耐光性をもち毒性もなく安価である。酸化鉄は赤鉄鉱(ヘマタイト)、褐鉄鉱(リモナイト)、菱鉄鉱(シデライト)、磁鉄鉱(マグネタイト)などを処理して得られ、赤、黄、紫、茶、黒などの色を示す。ロウシェナーは暗い黄色であるが焼成すると赤褐色に変わる(バーントシェナー)。黄土(しゃ土)は黄色の酸化鉄で、シェナーより明るい色である。合成酸化鉄には、赤、黄、茶、黒がある。
【0015】
クロム酸鉛、および、モリブデン酸鉛オレンジ顔料は、緑味がかった黄からオレンジ、そして明るい赤までの全範囲の色調を呈する。メディウムクロムイエローは本来純粋なPbCrO4で、非常に赤みがかった黄色である。プリムローズクロムイエローやライトクロムイエローは、クロム酸鉛と硫酸鉛の固溶体である。クロムオレンジはPbCrO4・PbOであり、粒径の変化に応じて明るい橙色から暗い橙色まで変化する。モリブデン酸オレンジはクロム酸鉛と硫酸鉛の固溶体であり、橙色から赤色を呈する。
【0016】
カドミウム顔料は、緑色がかったプリムローズイエローから橙、赤、えび茶色までの鮮明な色調を呈する。メルカドミウム顔料は、硫化カドミウムと硫化水銀の固溶体を基にしており、化学組成を変えることによってセレニドオレンジ、赤、えび茶に似た色彩が得られる。
【0017】
合成金属酸化物混合物顔料は、結晶構造によって、混合層ルチル型や混合層スピネル型などと分類される。これらは高温での固相反応(か焼)でつくられる。
【0018】
初期の紺青は、硬くて粉砕が困難であった。最近のものはフェリシアン化アンモニウムである。
【0019】
天然の硫化水銀HgSは、しん砂からつくられる。しん砂は朱顔料として赤色結晶か黒色非結晶の形で存在する。アンチモン朱Sb2S3は橙色から赤までの色がある。ヴァンダイクブラウンは天然の顔料で、92wt%の有機物と水と痕跡の酸化鉄、アルミナ、アルカリ金属酸化物を含んでいる。
【0020】
白色顔料には、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、リトポン、鉛白、酸化アンチモン、などがある。
【0021】
黒色顔料には、カーボンブラックがある。
【0022】
有機顔料も、本発明の色材の着色剤として使用することができる。耐光性の高い有機顔料としては、パラクロルレッド、パーマネントレッド2B、イエローボンマルーン、ピラゾロンレッド、アリザリンレッドB、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、アントラキノン顔料などが、知られている。
【0023】
耐候性の色材の着色部は、耐候性の顔料を使用したインキにより印刷することで、形成することができる。または、顔料の耐候性が十分でない場合、着色インキ層表面に、紫外線吸収剤を含有させた透明合成樹脂層を形成することにより、着色インキ層を耐候性にすることができる。また、さらに、着色インキ層自体にも紫外線吸収剤を含有させることにより耐候性を高めることもできる。
【0024】
その果実の収穫時期判定基準のカラーチャートと同じ色彩が、十分な耐候性の顔料により形成できないときには、その着色インキ層の表面に紫外線遮断の一時保護膜を粘着剤などにより一時被覆しておくことができる。収穫時期が近づいたときにその一時保護膜を剥離して、着色部を直接目に見えるようにすることができる。
【0025】
着色部の形成部分は、果実袋又は果実傘の表面のどの位置に形成してもよい。収穫時に果実が着色部とより近接した位置に形成されるのが好ましい。着色部は、収穫基準ラインとして形成されるのが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の、果実袋又は果実傘は、収穫時期の1個1個の果実に近接しているものであるから、その着色部は、果実に隣接して配置されることになる。収穫者により、果実の色と着色部の色とを比色することにより、瞬時に収穫時期が判定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(実施例)
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0028】
第1図は、本発明の果実袋1で、上部の一方の端縁に止め針金4が糊代の合わせ面に挟入固着されている。その止め針金4に平行に切り口5が形成されている。袋底の側部には、水排出用切り口6が形成されている。袋の開口縁部及び袋底部には、その果実の収穫基準ライン7が耐候性の顔料インキの印刷層で形成される。果実袋1には、その果実名が表示されている。
【実施例2】
【0029】
第2図は、本発明の果実袋2で、上部の一方の端縁に止め針金4が糊代の合わせ面に挟入固着されている。その止め針金4に平行に切り口5が形成されている。袋底の側部には、水排出用切り口6が形成されている。果実袋2には、透明合成樹脂による窓8が形成されており、袋を開けなくても袋内部の果実の色が見えるようになっている。この窓8の周囲には、その果実の収穫基準ライン7が耐候性の顔料インキの印刷層で形成される。果実袋2には、その果実名が表示されている。
【実施例3】
【0030】
第3図は、本発明の果実傘3で、正方形のシートの一辺の中央部からシートの中心部に向かう切り込み5が形成されている。このシートの4辺に、その果実の収穫基準ライン7が耐候性の顔料インキの印刷層で形成される。果実傘3には、その果実名が表示されている。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】果実袋1
【図2】果実袋2
【図3】果実傘3
【符号の説明】
【0032】
4・・・止め針金
5・・・切り口
6・・・水排出用切り口
7・・・果実の収穫基準ライン
8・・・窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収穫判定基準色の色彩の、耐候性の、色材で着色部を表面に形成した果実袋。
【請求項2】
収穫判定基準色の色彩の、耐候性の、色材で着色部を表面に形成した果実傘。
【請求項3】
収穫判定基準色の色彩の色材で着色部を表面に形成し、紫外線遮断性の一時保護膜をその表面に設けた、果実袋。
【請求項4】
収穫判定基準色の色彩の色材で着色部を表面に形成し、紫外線遮断性の一時保護膜をその表面に設けた、果実傘。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−252268(P2007−252268A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−80467(P2006−80467)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(304020177)国立大学法人山口大学 (579)
【Fターム(参考)】