説明

取付け金物付き根太、取付け金物付き床パネル及び取付け金物

【課題】現場での梁への取り付け作業を容易にすることができる取付け金物付き根太、取付け金物付き床パネル及び取付け金物を提供する。
【解決手段】根太4もしくは床板3の下面側に根太4を取り付けた床パネル1を梁22に固定するための取付け金物2付き根太3、取付け金物2付き床パネル1及び取付け金物2であり、取付け金物2は、根太4の下面側に配置され、根太4との協働により梁22を上下方向から挟んだ取付け状態にする金物本体6と、根太4に固定される固定材7と、金物本体6と固定材7を連結し、根太4の下方からの操作が可能で、金物本体6と固定材7を引き寄せ、金物本6と固定材7を一体化させる引寄せ軸材8とを備えたものからなり、金物本体6と固定材7が一体化されていない仮固定状態で、金物本体6は固定材7に対し引寄せ軸材8を回動軸として回動可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付け金物付き根太、取付け金物付き床パネル及び取付け金物に関する。
【背景技術】
【0002】
床板の下面側に内部空洞の金属製根太を設けた床パネルを梁に取り付ける取付け金物として、金物本体と抜止め材とボルトを備え、根太の開口部の円弧状端部の縁部を、金物全体と抜止め材とが挟み込んで該取付け金物を工場等で床パネルの根太に仮固定状態に先付けしておき、現場において金物全体を根太端部側に叩くことで仮固定状態が解除され、ボルトで抜止め材と金物本体を更に引き寄せることで金物本体と抜止め材とが根太の開口部のリップ部を挟み込んで本固定状態が形成されるようになされているものは、従来より提案されている。
【特許文献1】特開2008−150921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記のような取付け金物付き根太では、金物の特性上中空の根太にしか使用できない。建物の施工上、たとえば設備配管の施工のために現場で根太を切断する場合があるが、中空の鋼製根太の場合、現場での加工は困難であるため、必要に応じて別途、中実の木製根太が使用されることが多い。
【0004】
また、床パネルの梁への固定は、床レベルの安定と床衝撃音への配慮が求められ、床パネルを梁に強固に固定すると床衝撃音が悪化し、一方固定強度を緩めると床レベルが安定しないといった問題がある。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑み、現場での梁への取り付け作業を容易にすることができる根太もしくは床板の下面側に根太を取り付けた床パネルを梁に固定するための取付け金物付き根太、取付け金物付き床パネル及び取付け金物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は、根太を梁に取り付ける取付け金物付きの根太であって、
取付け金物は、
根太の下面側に配置され、根太との協働により梁を上下方向から挟んだ取付け状態にする金物本体と、
根太に固定される固定材と、
金物本体と固定材を連結し、根太の下方からの操作が可能で、金物本体と固定材を引き寄せ、金物本体と固定材を一体化させる引寄せ軸材と
を備えたものからなって、
金物本体と固定材が一体化されていない仮固定状態で、金物本体は固定材に対し引寄せ軸材を回動軸として回動可能であることを特徴とする取付け金物付き根太により解決される。
【0007】
この取付け金物付き根太では、金物本体と固定材が一体化されていない仮固定状態で、金物本体は固定材に対し引寄せ軸材を回動軸として回動可能であるので、現場では、根太を梁に支承させた後、金物本体を固定材に対し引寄せ軸材を回動軸として回動させ梁下に移動させ、引き寄せ軸材で金物本体と固定材とを引き寄せるだけで、本固定状態が形成されて根太が梁に取り付けられ、現場での梁に対する根太の取り付け作業を容易にすることができる。
【0008】
特に、梁への固定が金物本体と根太に取付けられる固定材とで実現されているため、根太の種類が限定されず、内部空洞の鋼製根太であってもよいし、中実の木根太であってもよく、根太の断面形状に左右される根太と梁に固定することができる。
【0009】
また、上記の取付け金物付きの根太において、金物本体に、金物本体と固定材の引寄せ時に金物本体の固定材に対する引き寄せ軸材を回動軸とした回動を規制する係止部が設けられているとよい。
【0010】
この場合は、金物本体に金物の回動を規制する係止部が設けられているので、根太を梁に支承させた後、金物本体を固定材に対し引寄せ軸材を回動軸として回動させ梁下に移動させ、引き寄せ軸材で金物本体と固定材とを引き寄せる時に、金物本体が自由に回動し、金物本体の位置が定まらないのを防止することができ、施工時に金物本体を梁下に位置させるために別途手で支持することなどなしに、作業者は、根太の下方から引寄せ軸材を操作するだけで、固定材と金物本体とを引き寄せ、金物本体と固定材を一体化させることができる。
【0011】
また、金物本体と固定材が一体化されていない仮固定状態で、金物本体は固定材に対して、根太長さ方向に移動可能であるとよい。
【0012】
金物本体が固定材に対して、根太長さ方向に移動可能であるため、取付け金物付き根太と梁との位置関係について根太長さ方向に調整をすることができるため、梁と根太との取り合い関係が混在する場合であっても、取付け金物付きの根太を梁と根太の取り合い関係にあわせて複数用意しておく必要がなく、部材管理、生産性について有利に実現することができる。
【0013】
また、上記の課題は、上記の取付け金物付き根太が床板の下面側に取り付けられている取付け金物付き床パネル及び上記の取付け金物付き根太に使用される取付け金物によっても同様に解決される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の取付け金物付き根太、取付け金物付き床パネル及び取付け金物は、以上のとおりであるから、現場での梁への取り付け作業を容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の実施最良形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1及び2に示す本発明の実施形態の取付け金物2付き根太4は、床板3の下面側に予め取り付けられて、床パネル1を構成し、取付け金物2は、該床パネル1を図4に示すような、上下のフランジとこれらフランジをつなぐウェブとを備えたH形鋼からなる床梁22の上フランジ22aに取り付けるのに用いられるものである。
【0017】
根太4は、内部中実の木材からなっていて、平板の床板3の下面側に複数本並行に取り付けられ、床パネル1を構成している。
【0018】
取付け金物2は、金物本体6と、固定材7と、引寄せ軸材としてのボルト8とで構成されている。なお、9はワッシャー、10はゴムリングである。
【0019】
金物本体6は、根太4の下面側に配置され、根太4との協働により床梁22の上フランジ22aを上下方向から挟んだ取付け状態にするもので、11は梁挟込み用の爪部であり、該爪部11と繋がる基端部13にはボルト通孔12が設けられると共に、基端部12の爪部11とは反対側の端部の一方の側には、固定材7との協働により金物本体6の引き寄せ軸材としてのボルト9を回動軸とした回動を規制する係止部14が設けられている。ボルト通孔13は、金物本体6が固定材7に対して、根太長さ方向に移動できるように根太長さ方向に長孔となっている。なお、20はクッション材で爪部11の上面に取り付けられ、取付け金物2と床梁22の上フランジ22aとの間に介設される。
【0020】
固定材7は、ボルト8の螺合が可能なネジ孔15を有すると共にネジ孔15を挟む左右両側に、対の立ち上がり板部16,16が設けられ、各立ち上がり板部16,16の上端部に外方に張り出す水平な対の水平板部17,17が設けられ、各水平板部17,17の外方端部に対の固定用脚板部18,18が上方に突出するように設けられたものからなり、対の固定用脚板部18,18には固定材7を根太4にビスで固定するためのビス孔19,19,19,19があけられている。固定材7は、対の水平板部17,17が、根太4の底面部に当接し、固定用脚板部18,18が根太4の両側面部に当接して配置され、ビス孔19,19,19,19を介してビス21により根太4に固定される。
【0021】
上記の金物本体6と固定材7とは、ボルト9をその頭部を下にして金物本体6の下面側よりボルト通孔13に通し、先端側を固定材7のネジ孔15に螺合することで、取付け金物2を構成する。
【0022】
ボルト8により金物本体6と固定材7とが完全に引寄せられず一体化されていない仮固定状態で、金物本体6は固定材7に対しボルト8を回動軸として回動可能となされている。また、金物本体6の基端部12の爪部11とは反対側の端部の一方の側には、固定材7との協働により金物本体6の引き寄せ軸材としてのボルト9を回動軸とした回動を規制する係止部14が設けられており、ボルト8により金物本体6と固定材7とが引寄せられ一体化された固定状態で、金物本体6は固定材7に対しボルト8を回動軸としての回動が規制され、金物本体6は根太長さ方向に沿って固定される。
【0023】
上記の取付け金物2は、次のようにして床パネル1の根太4に仮固定状態に取り付けられ、取付け金物2付き床パネル1を構成する。即ち、図3(イ)に示すように、ボルト8により金物本体6と固定材7とが完全に引寄せられない一体化されていない仮固定状態で固定材7の水平板部17,17を根太4の底面部、固定材7の固定用脚板部18,18を根太4の両側面部にそれぞれ当接させ、固定用脚板部18,18にあけられたビス孔19,19,19,19を介してビス21・・・で固定する。この工程は工場で行われてもよいし、施工現場で行われてもよい。
【0024】
取付け金物2が根太4に取り付けられた際に、金物本体6は、ボルト8により金物本体6と固定材7とが完全に引寄せられない一体化されていない仮固定状態としておくことで、図3(ロ)に示すように、金物本体6は固定材7に対しボルト8を回動軸として自由に回動することができる。
【0025】
なお、5はクッション材で、根太4の端部下面に取り付けられて根太4と床梁22の上フランジ22aとの間に介設される。
【0026】
上記の床パネル1は、現場においてクレーン等で吊られて、図4(イ)に示すように金物本体6の爪部11が建て込み時に、梁22の上フランジ22aの上面に当たらないように、金物本体6を固定材7と略直交させた状態、つまり金物本体6の爪部11から基端部12へ向かう方向と根太長さ方向を略直交させた状態で、根太4の端部をクッション材5を介して床梁22の上フランジ22aの上面に支承させる。なお、金物本体6は、ボルト8により金物本体6と固定材7とが完全に引寄せられない一体化されていない仮固定状態としておいてもよいし、施工時の金物本体6の自由な回動を防止するため、金物本体6を固定材7と直交させた状態で、ボルト8により金物本体6と固定材7とを引寄せ状態にし、金物本体6の回動を防止してもよい。
【0027】
床パネル1を床梁22の上フランジ22aの上面に支承させた後、金物本体6を回動させ、金物本体6の爪部11を床梁22の上フランジ22aの下面側に位置させ、ボルト9を床パネル1の下方側から操作することによって、金物本体6と固定材7は引寄せられ、金物本体6の爪部11は、根太4との協働により床梁22の上フランジ22aを上下方向から挟んだ取付け状態にする。
【0028】
また、図5に示すように、床パネル1と床梁22の位置関係が異なっている場合であっても、ボルト通孔12は、金物本体6が固定材7に対して、根太長さ方向に移動できるように長孔となっているため、床パネル1の梁22への載置後、金物本体6を床梁22側にスライドさせて、金物本体6を床梁22の固定に適切な位置に調整することができる。
【0029】
この取付け金物付き根太では、金物本体と固定材が一体化されていない仮固定状態で、金物本体は固定材に対し引寄せ軸材を回動軸として回動可能であるので、現場では、根太を梁に支承させた後、金物本体を固定材に対し引寄せ軸材を回動軸として回動させ梁下に移動させ、引き寄せ軸材で金物本体と固定材とを引き寄せるだけで、本固定状態が形成されて根太が梁に取り付けられ、現場での梁に対する根太の取り付け作業を容易にすることができる。
【0030】
特に、梁への固定が金物本体と根太に取付けられる固定材とで実現されているため、根太の種類が限定されず、内部空洞の鋼製根太であってもよいし、中実の木根太であってもよく、根太の断面形状に左右される根太と梁に固定することができる。
【0031】
根太の梁への固定が、梁の上フランジを根太と金物で狭持し、上フランジと金物、上フランジと根太間にはクッション材が介設されて、ボルトで固定されているため、緩衝作用を保持しつつ強固に固定できるため、床衝撃音の低減が図れるとともに、床レベルの安定性も図ることができる。
【0032】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、床板3の下面側に根太4が備えられた床パネル1の根太に取付け金物2を固定した取付け金物2付き床パネル1に構成した場合を示したが、床板無しの根太の端部に取付け金物を固定した取付け金物付き根太として構成されてもよい。
【0033】
また、上記の実施形態では、取付け金物2として、特定形態の金物本体6と、特定形態の固定材7と、ボルト9による引寄せ軸材を用いた場合を示したが、金物本体や抜止め材、引寄せ軸材の具体的形態に制限はなく、各種形態のこれら部品で構成された金物であってよい。
【0034】
また、上記の実施形態では、根太4は中実の木製の根太について適用した場合について示したが、根太は中実である必要はなく、中空空洞であってもよいし、また材質についても特に制限はなく鋼製であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明実施形態の取付け金物付き床パネルを示すもので、床パネルと取付け金物とを分離状態にして示す斜視図である。
【図2】図(イ)は取付け金物の分解斜視図、図(ロ)は取付け金物の斜視図、図(ハ)は図(ロ)の状態から金物本体を90度回転させた状態の取付け金物の斜視図である。
【図3】図(イ)は根太への取付け金物の固定状況を示す斜視図、図(ロ)は、金物本体を90度回転させた状態の根太への取付け金物の固定状況を示す斜視図である。
【図4】図(イ)、(ロ)は取付け金物付き床パネルの梁への取付け状況を示す側面図である。
【図5】図(イ)、(ロ)は図4とは異なる梁への取付け金物付き床パネルの取付け状況を示す側面図である。
【符号の説明】
【0036】
1・・・床パネル
2・・・取付け金物
3・・・床板
4・・・根太
6・・・金物本体
7・・・固定材
8・・・ボルト(引寄せ軸材)
13・・・ボルト通孔
14・・・係止部
15・・・ネジ孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
根太を梁に取り付ける取付け金物付きの根太であって、
取付け金物は、
根太の下面側に配置され、根太との協働により梁を上下方向から挟んだ取付け状態にする金物本体と、
根太に固定される固定材と、
金物本体と固定材を連結し、根太の下方からの操作が可能で、金物本体と固定材を引き寄せ、金物本体と固定材を一体化させる引寄せ軸材と
を備えたものからなって、
金物本体と固定材が一体化されていない仮固定状態で、金物本体は固定材に対し引寄せ軸材を回動軸として回動可能であることを特徴とする取付け金物付き根太。
【請求項2】
金物本体に、金物本体と固定材の引寄せ時に金物本体の固定材に対する引寄せ軸材を回動軸とした回動を規制する係止部が設けられている請求項1に記載の取付け金物付き根太。
【請求項3】
金物本体と固定材が一体化されていない仮固定状態で、金物本体は固定材に対して、根太長さ方向に移動可能である請求項1又は2に記載の取付け金物付き根太。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一に記載の取付け金物付き根太が床板の下面側に取り付けられていることを特徴とする取付け金物付き床パネル。
【請求項5】
請求項1乃至3に記載の取付け金物付き根太で使用される取付け金物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−95921(P2010−95921A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−268089(P2008−268089)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【出願人】(596066530)宇都宮工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】