説明

受信装置

【課題】衛星から受信した信号の精度を早期に推定する技術を提供する。
【解決手段】アンテナ10は、少なくともひとつの衛星から送信された信号を受信する。周波数弁別部28は、受信した信号において発生しうるドップラーシフトの範囲にわたって周波数が変化するローカル信号を発生する。周波数弁別部28は、ローカル信号によって、受信した信号を周波数変換する。周波数弁別部28は、周波数変換した信号をエンベロープ検波する。周波数弁別部28は、エンベロープ検波した信号をしきい値と比較する。CPU20は、比較の結果、しきい値以上の値になっている信号成分の数を計数することによって、受信した信号の送信元になる衛星の数を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信技術に関し、衛星から送信された信号を受信する受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)は、位置情報を即座に取得する「リアルタイムGPS」に使用されている。また、GPSは、GeoTagging(ジオタギング)にも使用される。ジオタギングは、デジタルカメラやカメラ付き携帯電話において、タグによる位置情報を埋め込む技術である。例えば、ユーザが写真を撮影した際、ジオタギングによって、その写真がどこで撮影されたものであるかが記録される。一般的に、ジオタギングの用途であっても、位置情報の測位がリアルタイムになされている。なお、位置情報の取得には、30秒から最大では数分間の時間が必要とされる。取得のための時間が長くなるほど、ユーザにとっての使い勝手が悪化するとともに、電力消費量が増加してしまう。
【0003】
これに対応するために、非特許文献1に開示された技術では、ユーザがデジタルカメラで写真を撮影したときに、リアルタイムGPSと同様に、GPS受信機によって情報取得がなされる。ただし、このときには、GPS衛星のPRN番号とGPS衛星からデジタルカメラまでの擬似距離の情報のみが取得される。これら情報と写真データ、撮影した時間の情報が関連付けられて、デジタルカメラに基本データとして蓄積される。ユーザは帰宅したときに、パソコン(PC)上のクライアント側ソフトウエアを使って、デジタルカメラに格納された基本データを取得する。その上で、インターネット経由でサーバ側ソフトウエアサービスへのアクセスがなされる。その際、各GPS衛星の各時間における詳細情報がダウンロード提供される。その詳細情報と基本データとが使用されて、パソコン上のクライアント側ソフトウエアが位置情報を算出する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】飴本 健、「位置情報は後でわかれば十分」、[online]、2009年9月3日、EDN JAPAN、[2010年3月17日検索]、インターネット<URL:http://ednjapan.rbi-j.com/news/2009/9/5472>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の技術では、撮影時には位置情報が分からず、後にPCやサーバでの演算によって位置情報が分かる。そのため、撮影時には、位置情報を後に算出するためのもとになるデータの精度が高いか低いか不明である。そのため、撮影時にデジタルカメラ内に保存したデータが無駄になるおそれがある。例えば、各GPS衛星からの信号の視線方向の視界が遮られているような環境下での撮影において、収集したデータの精度が低くなりやすい。しかしながら、ユーザにとっては、各GPS衛星の仰角や方位角は不明であるので、利用可能なデータを収集したか否かの判断が困難である。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、衛星から受信した信号の精度を早期に推定する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の受信装置は、少なくともひとつの衛星から送信された信号を受信する受信部と、受信部において受信した信号を周波数変換させるためのローカル信号であって、かつ受信部において受信した信号において発生しうるドップラーシフトの範囲にわたって周波数が変化するローカル信号を発生する発生部と、発生部において発生したローカル信号によって、受信部において受信した信号を周波数変換する変換部と、変換部において周波数変換した信号をエンベロープ検波する検波部と、検波部においてエンベロープ検波した信号をしきい値と比較する比較部と、比較部における比較の結果、しきい値以上の値になっている信号成分の数を計数することによって、受信部において受信した信号の送信元になる衛星の数を推定する推定部と、を備える。
【0008】
この態様によると、受信した信号において発生しうるドップラーシフトの範囲にわたって周波数が変化するローカル信号にて周波数変換した信号において、しきい値以上の値になっている信号成分の数を計数するので、衛星の数を早期に推定できる。
【0009】
受信部において受信した信号を記憶する記憶部をさらに備えてもよい。変換部は、記憶部に記憶した信号を複数回数読み出し、読み出した信号を周波数変換してもよい。この場合、記憶した信号を複数回数読み出すので、処理の期間を短縮できる。
【0010】
発生部は、複数の部分発生部を含み、受信部において受信した信号において発生しうるドップラーシフトの範囲を複数の部分範囲に分割した場合に、各部分発生部は、互いに異なった部分範囲にわたって周波数が変化するローカル信号を発生しており、変換部は、部分発生部の数と同一の数だけの部分変換部を含み、各部分変換部は、互いに異なった部分発生部において発生したローカル信号によって、受信部において受信した信号を周波数変換し、検波部は、複数の部分変換部のそれぞれにおいて周波数変換した信号を結合した信号のエンベロープ検波結果を出力してもよい。この場合、周波数変換処理が並列に実行されるので、処理の期間を短縮できる。
【0011】
本発明の別の態様もまた、受信装置である。この装置は、少なくともひとつの衛星から送信された信号を受信する受信部と、受信部において受信した信号をフーリエ変換することによって、時間領域の信号から周波数領域の信号へ変換する変換部と、変換部において変換した周波数領域の信号をしきい値と比較する比較部と、比較部における比較の結果、しきい値以上の値になっている信号成分の数を計数することによって、受信部において受信した信号の送信元になる衛星の数を推定する推定部と、を備える。
【0012】
この態様によると、フーリエ変換した周波数領域の信号において、しきい値以上の値になっている信号成分の数を計数するので、衛星の数を早期に推定できる。
【0013】
推定部において推定した衛星の数を通知する通知部をさらに備えてもよい。この場合、衛星の数をユーザに知らせることができる。
【0014】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、衛星から受信した信号の精度を早期に推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例に係る受信装置の構成を示す図である。
【図2】図1の逓倍部の構成を示す図である。
【図3】図1の周波数弁別部の構成を示す図である。
【図4】図4(a)−(d)は、図2の周波数弁別部において生成される信号の波形を示す図である。
【図5】本発明の変形例に係る周波数弁別部の構成を示す図である。
【図6】本発明の別の変形例に係る受信装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を具体的に説明する前に、まず概要を述べる。本発明の実施例は、GPS衛星からの信号を受信し、位置情報を測位するGPSの受信装置に関する。特に、受信装置は、受信した信号をA/D変換してから、所定期間にわたって信号を保存する。その後、PCやGPS演算器を備えた装置は、受信装置に保存した信号をもとに位置演算を実行することによって、位置情報を測位する。本発明の前提として、デジタルカメラにGPS受信機が搭載されている。その目的は、ユーザによって撮影された写真に対して、撮影場所のファイル管理や地図との照合に利用することである。しかしながら、前述のごとく、リアルタイムで位置情報を測位する場合、最低30秒程の測位期間が必要になる。そのため、写真撮影が一瞬であっても、位置情報を測位するために、その場所でデジタルカメラを長時間保持しておく不便さがある。また、位置情報を測位するための演算の処理量が多いために、消費電力が大きくなり、電池寿命が短くなってしまう。
【0018】
一方、リアルタイムに位置情報を演算することとは別に、撮影時には、GPS衛星から受信した信号をデータとして収集するだけにとどめることがなされる。その場合、撮影終了後、PCが、インターネット回線を利用して所定のサーバから、GPS衛星の軌道データを取得する。また、PCは、軌道データと収集したデータとによって、位置情報を演算にて取得する。この場合、約200msecで1回のデータが収集可能であるので、ユーザの利便性が向上するとともに、消費電力が少なくなる。しかしながら、ユーザによって収集されたデータが位置情報を導出するために利用可能かどうかを、撮影時に判断できない。ここで、データが位置情報を導出するために利用できない場合とは、送信元となるGPS衛星の数が少ないことによって、データの精度が悪化しているために、位置情報の精度も悪化する場合である。これに対応するために、本実施例に係る受信装置は次の処理を実行する。
【0019】
本実施例に係る受信装置は、複数のGPS衛星からの信号を受信している場合に、GPS衛星ごとにドップラーシフトの量が異なっていることを利用し、データをメモリに記憶する際、データを周波数分析することによって、データの品質を推定する。つまり、ドップラーシフトによって、複数のGPS衛星のそれぞれからの信号の周波数が異なるので、周波数領域での信号の数を計数することによって、送信元になるGPS衛星の数が推定される。さらに、推定したGPS衛星の数が3個以上存在する場合、受信装置は、一定時間にわたってLEDを点灯させることによって、データの品質が高いことを通知する。一方、推定したGPS衛星の数が3個よりも少ない場合、受信装置は、一定時間にわたって別のLEDを点灯させる。
【0020】
図1は、本発明の実施例に係る受信装置100の構成を示す。受信装置100は、アンテナ10、RF増幅部12、ミキサ14、IF増幅部16、A/D変換部18、CPU20、基準発振部22、局部発振部24、逓倍部26、周波数弁別部28、スイッチ部30、インターフェイス部32、フラッシュメモリ34、LED表示部36を含む。スイッチ部30は、ユーザから、起動の指示を受けつける。起動の指示が受けつけられると、図示しないバッテリからの電源が受信装置100全体に供給される。ここで、受信装置100は、図示しないデジタルカメラ内に設けられているとし、以下では、図示しないデジタルカメラにおいて撮像機能が実行される場合における受信装置100の処理を説明する。
【0021】
アンテナ10は、図示しないGPS衛星から送信されたRF信号であって、かつ少なくともひとつのGPS衛星から送信されたRF信号を受信する。なお、GPSの代わりに、ガリレオ(Galileo positioning system)、GLONASS(Global Navigation Satellite System)であってもよい。アンテナ10は、受信したRF信号をRF増幅部12へ出力する。RF増幅部12は、アンテナ10から入力したRF信号を増幅する。RF増幅部12は、増幅したRF信号をミキサ14へ出力する。
【0022】
基準発振部22は、水晶発振器であり、例えば、16.368MHzの信号を局部発振部24へ出力する。局部発振部24は、基準発振部22からの信号に同期した信号、例えば、96倍の周波数である1571.328MHzの信号をミキサ14へ出力する。ミキサ14は、RF増幅部12からのRF信号を入力するとともに、局部発振部24からの信号も入力する。ミキサ14は、局部発振部24からの信号によって、RF信号をIF信号に変換する。IF信号の周波数は、例えば、4.092MHzである。ミキサ14は、IF信号をIF増幅部16へ出力する。IF増幅部16は、ミキサ14からのIF信号を増幅する。IF増幅部16は、IF信号をA/D変換部18へ出力する。A/D変換部18は、IF増幅部16からのIF信号に対してアナログ/デジタル変換を実行することによって、デジタル信号を生成する。A/D変換部18は、デジタル信号をCPU20、逓倍部26へ出力する。
【0023】
CPU20は、受信装置100におけるさまざまな処理を実行する。さまざまな処理のうちのひとつが記憶処理である。CPU20は、A/D変換部18からのデジタル信号を約200msの区間にわたってサンプルし、約1Mbitのデジタル信号をフラッシュメモリ34に記憶させる。その際、CPU20は、図示しないRTC発信器の時計用の水晶発信器で計測した時刻データやID番号も、デジタル信号とともにフラッシュメモリ34に記憶させる。
【0024】
フラッシュメモリ34は、CPU20からの指示にしたがってデジタル信号等を記憶する。フラッシュメモリ34において記憶されるデータには、各GPS衛星のC/Aコードやキャリア信号も含まれている。また、フラッシュメモリ34は、受信装置100から取り外し可能な形式のメモリであってもよい。撮影後にPCで位置情報を演算する場合に、CPU20は、インターフェイス部32を介して、フラッシュメモリ34に記憶したデータをPCへ供給する。
【0025】
逓倍部26は、A/D変換部18からのデジタル信号を入力する。逓倍部26は、デジタル信号に対して逓倍処理を実行する。ここでは、図2をもとに、逓倍部26における逓倍処理を説明する。図2は、逓倍部26の構成を示す。逓倍部26は、遅延部40、EX−OR回路42を含む。図示しないA/D変換部18からの出力の一方は、遅延部40に入力される。デジタル信号の周波数は、4.092MHzであるので、その周期は約240nsecである。遅延部40は、デジタル信号の1/4周期の約60nsecを抵抗およびキャパシタによって遅延させる。EX−OR回路42は、図示しないA/D変換部18からのデジタル信号および遅延部40からのデジタル信号を入力する。EX−OR回路42は、2逓倍の8.184MHzのデジタル信号(以下、これも単に「デジタル信号」という)を生成する。
【0026】
2逓倍前のデジタル信号は、GPS衛星に固有なC/Aコードの拡散信号によってBPSKがなされている。2逓倍されたデジタル信号は、各GPS衛星のC/Aコードがキャンセルされ、キャリア成分のみが残留する。その結果、各GPS衛星と受信装置100間の相対的なドップラー効果によるドップラーシフトの影響が残存する。そのため、各GPS衛星からのRF信号には、ドップラーシフトによってキャリア周波数が約±5kHzの範囲でずれることになる。2逓倍されたデジタル信号では、各GPS衛星のドップラーシフトも2倍となり、約±10kHzの範囲でずれうる。これは、8.174〜8.194MHzの周波数ずれに相当する。一方、基準発振部22の周波数精度によるずれが、上記の周波数ずれに加算される。基準発振部22の周波数精度を±0.5ppmとすると、2逓倍前のデジタル信号では、(16.368×10)×96×(±0.5×10―6)=±785.664Hzの周波数ずれになる。その結果、2逓倍のデジタル信号では約±1.57kHzの周波数ずれになるが、この周波数ずれは、ドップラーシフトの影響に対して小さいので、以下では、周波数ずれを無視する。図1に戻る。
【0027】
周波数弁別部28は、逓倍部26からのデジタル信号を入力する。周波数弁別部28は、デジタル信号に含まれている信号の送信元になるGPS衛星の数を推定する。ここでは、図3をもとに、周波数弁別部28における推定処理を説明する。図3は、周波数弁別部28の構成を示す。周波数弁別部28は、ミキサ50、BPF52、検波部54、比較部56、鋸歯状波発生部58、VCO発振部60を含む。
【0028】
鋸歯状波発生部58は、CPU20から、一定周期Tのトリガー信号を受けつけ、トリガー信号に同期した鋸歯状波を生成する。ここで、周波数弁別部28において生成される信号を説明するために、図4(a)−(d)を使用する。図4(a)−(d)は、周波数弁別部28において生成される信号の波形を示す。図4(a)は、CPU20からのトリガー信号を示す。トリガー信号には、複数のパルス信号が含まれており、隣接したパルス信号の間隔がTである。図4(b)は、周波数弁別部28において生成される鋸歯状波を示す。トリガー信号における所定のパルス信号のタイミングから次のパルス信号のタイミングにわたって、一定の傾斜で値がLからHへ変化する。また、パルス信号のタイミングにおいて、値がHからLに変化する。ここで、H>Lであるとする。図4(c)−(d)の説明は後述する。図3に戻る。
【0029】
VCO発振部60は、鋸歯状波発生部58からの鋸歯状波を受けつける。VCO発振部60は、鋸歯状波に応じて周波数が変化するローカル信号を出力する。ここで、VCO発振部60から出力されるローカル信号の周波数は、例えば、8.164〜8.184MHzの間で変化する。ここで、変化する周波数の幅20kHzは、GPS衛星と受信装置100との間で発生しうるドップラーシフトの最大値である。つまり、VCO発振部60は、逓倍部26からのデジタル信号を周波数変換させるためのローカル信号であって、かつGPS衛星からのRF信号において発生しうるドップラーシフトの範囲にわたって周波数が変化するローカル信号を発生する。
【0030】
ミキサ50は、VCO発振部60からのローカル信号を受けつけるとともに、逓倍部26からのデジタル信号を受けつける。ミキサ50は、ローカル信号によって、デジタル信号を周波数変換する(以下、周波数変換したデジタル信号も「デジタル信号」という)。ローカル信号がとりうる周波数の範囲のうち、デジタル信号に含まれた信号成分に対応した周波数において、デジタル信号の値が大きくなる。ミキサ50は、デジタル信号をBPF52へ出力する。
【0031】
BPF52は、ミキサ50からのデジタル信号を受けつけ、低周波数成分を抽出する。BPF52は、低周波数成分を抽出したデジタル信号(以下、「デジタル信号」という)を検波部54へ出力する。検波部54は、BPF52からのデジタル信号を受けつける。検波部54は、デジタル信号をエンベロープ検波する。BPF52が、中心周波数10kHzで、帯域300Hzであるとすると、検波部54においてエンベロープ検波されたデジタル信号(以下、「デジタル信号」という)では、各GPS衛星のドップラー周波数が10〜30kHzの範囲の周波数に変換されている。図4(c)は、検波部54においてエンベロープ検波されたデジタル信号を示す。図4(c)に示されたa、b、c、d、e、fは、各GPS衛星のドップラー周波数である。それ以外の波形は、背景雑音に相当する。図3に戻る。検波部54は、デジタル信号を比較部56へ出力する。
【0032】
比較部56は、検波部54からのデジタル信号を入力する。比較部56は、デジタル信号をしきい値と比較する。図4(c)には、しきい値も示されており、比較部56は、しきい値以上になっている信号成分を抽出し、それ以外の信号成分を削除する。図4(c)では、受信電力の弱いc、eに対応した信号成分を削除する。ここで、しきい値は、例えば、−140dBmに相当する値に設定されている。−140dBmは、PCにおいて位置情報を導出するための演算に必要な受信電力である。図4(d)は、比較部56での比較結果であり、図4(d)の波形となり、a、b、d、fの4個分の信号成分が選択されている。図3に戻る。
【0033】
CPU20は、比較部56からの比較結果を受けつける。CPU20は、比較結果に含まれた信号成分の数、つまりしきい値以上の値になっている信号成分の数を計数することによって、RF信号の送信元になるGPS衛星の数を推定する。一般的に、GPS衛星の数が3個以上であれば、位置情報の測位が可能になる。そこで、GPS衛星の数が3個以上であれば、CPU20は、LED表示部36を所定の色、例えば緑色に点灯させる。一方、GPS衛星の数が3個未満であれば、CPU20は、LED表示部36を別の色、例えば、赤色に点灯させる。なお、GPS衛星の数が3個以上であれば、LED表示部36は点灯し、GPS衛星の数が3個未満であれば、LED表示部36は点滅してもよい。このように、LED表示部36は、CPU20において推定したGPS衛星の数を通知する。
【0034】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0035】
次に、本発明の変形例を説明する。変形例は、実施例と同様に、受信したRF信号の送信元になるGPS衛星の数を推定する受信装置に関する。実施例に係る受信装置での周波数弁別部では、ひとつのVCO発振部とひとつのミキサが設けられている。しかしながら、変形例に係る受信装置での周波数弁別部は、複数のVCO発振部が並列に設けられており、各VCO発振部に1対1で対応するように、ミキサ50も複数設けられている。変形例に係る受信装置100は、図1と同様のタイプである。ここでは、差異を中心に説明する。
【0036】
図5は、本発明の変形例に係る周波数弁別部28の構成を示す。周波数弁別部28は、ミキサ50と総称される第1ミキサ50a、第2ミキサ50b、第3ミキサ50c、第4ミキサ50d、BPF52と総称される第1BPF52a、第2BPF52b、第3BPF52c、第4BPF52d、検波部54と総称される第1検波部54a、第2検波部54b、第3検波部54c、第4検波部54d、比較部56と総称される第1比較部56a、第2比較部56b、第3比較部56c、第4比較部56d、合成部70、鋸歯状波発生部58、VCO発振部60と総称される第1VCO発振部60a、第2VCO発振部60b、第3VCO発振部60c、第4VCO発振部60dを含む。
【0037】
第1VCO発振部60aから第4VCO発振部60dは、互いに異なった範囲にわたって周波数が変化するローカル信号を発生する。ここで、RF信号において発生しうるドップラーシフトの範囲を複数の部分範囲、例えば4つの部分範囲に分割することを想定する。前述のごとく、RF信号において発生しうるドップラーシフトの範囲は、20kHzであるので、各部分範囲は、5kHzになる。そのため、各VCO発振部60から出力されるローカル信号は、互いに異なった5kHzの部分範囲にわたって周波数が変化する。
【0038】
第1ミキサ50aから第4ミキサ50dは、第1VCO発振部60aから第4VCO発振部60dと1対1で対応するように設けられる。そのため、ミキサ50の数とVCO発振部60の数とは同一である。各ミキサ50は、互いに異なったVCO発振部60において発生したローカル信号によって、デジタル信号を周波数変換する。つまり、各ミキサ50は、周波数変換を並列に実行する。第1BPF52aから第4BPF52dは、第1ミキサ50aから第4ミキサ50dと1対1で対応するように設けられ、第1検波部54aから第4検波部54dは、第1BPF52aから第4BPF52dと1対1で対応するように設けられている。第1検波部54aから第4検波部54dは、複数のミキサ50のそれぞれにおいて周波数変換したデジタル信号をエンベロープ検波する。合成部70は、第1検波部54aから第4検波部54dからのエンベロープ検波結果を合成する。合成部70は、結合したデジタル信号のエンベロープ検波結果を出力する。なお、合成部70の後段に検波部54が設けられてもよい。
【0039】
次に、本発明の別の変形例を説明する。別の変形例は、実施例と同様に、受信したRF信号の送信元になるGPS衛星の数を推定する受信装置に関する。実施例に係る受信装置では、周波数弁別部を使用している。一方、別の変形例に係る受信装置は、周波数弁別部の代わりに、FFTを使用する。別の変形例に係る受信装置100は、図1と同様のタイプである。ここでは、差異を中心に説明する。
【0040】
図6は、本発明の別の変形例に係る受信装置100の構成を示す。図6では、受信装置100のうち、逓倍部26からCPU20へ至る構成のみを示す。図1では、逓倍部26とCPU20との間に、周波数弁別部28が設けられているが、図6では、これらの間に、固定発振部80、ミキサ82、LPF84が設けられている。逓倍部26は、これまでと同様に、2逓倍したデジタル信号を出力する。当該デジタル信号の周波数は8.184MHzである。一方、固定発振部80は、周波数が固定のローカル信号を出力する。ローカル信号の周波数は、8.174MHzに設定される。
【0041】
ミキサ82は、逓倍部26からのデジタル信号を受けつけるとともに、固定発振部80からのローカル信号も受けつける。ミキサ82は、ローカル信号によってデジタル信号を周波数変換する。ミキサ82は、周波数変換したデジタル信号(以下、「デジタル信号」という)をLPF84へ出力する。その結果、周波数変換前に8.174〜8.194MHzの範囲を有したデジタル信号は、周波数変換後に0〜20kHzの範囲を有したデジタル信号になる。LPF84は、デジタル信号の低周波数成分を抽出する。LPF84は、低周波数成分を抽出したデジタル信号(以下、「デジタル信号」という)をCPU20へ出力する。
【0042】
CPU20は、LPF84からのデジタル信号を受けつけ、デジタル信号をフーリエ変換することによって、時間領域の信号から周波数領域の信号へ変換する。CPU20は、周波数領域の信号に対して、比較部56と同様の処理を実行する。さらに、CPU20は、比較の結果、しきい値以上の値になっている信号成分の数を計数することによって、RF信号の送信元になるGPS衛星の数を推定する。
【0043】
本発明の実施例によれば、RF信号において発生しうるドップラーシフトの範囲にわたって周波数が変化するローカル信号にて周波数変換した信号において、しきい値以上の値になっている信号成分の数を計数するので、位置情報を導出するための演算に利用可能なGPS衛星の数を早期に推定できる。また、GPS衛星の数が早期に推定されるので、GPS衛星の数をユーザに早期に通知できる。また、GPS衛星の数がユーザに早期に通知されるので、ユーザの利便性を向上できる。また、GPS衛星の数が早期に推定されるので、消費電力を低減できる。また、周波数変換処理が並列に実行されるので、処理の期間を短縮できる。また、フーリエ変換した周波数領域の信号において、しきい値以上の値になっている信号成分の数を計数するので、GPS衛星の数を早期に推定できる。
【0044】
また、PCとの接続前の撮影時に、GPS衛星から受信したデータの良否判定が可能になり、ユーザが取得したデータが否の場合であっても、データを再度収集できる。また、データを再度収集できるので、ユーザにとって、安心してデータを収集できる。また、不要なデータを保存しないので、ROM容量の制限下の中、有効なデータの収集量を増加できる。また、サンプルデータは約200msecのデータ保存の間にサンプルされるので、消費電力を低減できる。また、受信装置がデジタルカメラに組み込まれる場合、CPUが共通化されるので、回路の簡素化が計れ、小型化や、低コスト化を実現できる。
【0045】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素の組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0046】
本発明の実施例において、逓倍部26は、A/D変換部18からのデジタル信号を入力し、周波数弁別部28は、逓倍部26からのデジタル信号を入力する。しかしながらこれに限らず例えば、A/D変換部18からのデジタル信号は、逓倍部26に出力されずに、フラッシュメモリ34に記憶されてもよい。フラッシュメモリ34に記憶されたデジタル信号が、逓倍部26、周波数弁別部28へ出力されてもよい。その際、デジタル信号は、フラッシュメモリ34から、複数回数読み出されてもよい。周波数弁別部28のミキサ50は、複数回数読み出したデジタル信号を周波数変換する。ここで、図4(a)の周期Tは、1sec程度に設定されているので、受信装置100の動作として約1secが必要になる。例えば、フラッシュメモリ34に記憶されたデジタル信号を5回読み出す場合、受信装置100の動作が約200msecまで短縮される。本変形例によれば、ユーザの利便性をさらに向上できる。また、消費電力をさらに低減できる。
【0047】
本発明の実施例において、CPU20は、LED表示部36を介して、GPS衛星の数を通知している。しかしながらこれに限らず例えば、CPU20は、図示しないスピーカを介して、ブザー音を出力させてもよい。その際、GPS衛星の数に応じてブザーの音色を変えてもよい。また、ブザー音の代わりに、音声を出力してもよい。また、ディスプレイが備えられ、CPU20は、GPS衛星の数をディスプレイに表示してもよい。本変形例によれば、GPS衛星の数をさまざまな形態で通知できる。
【符号の説明】
【0048】
10 アンテナ、 12 RF増幅部、 14 ミキサ、 16 IF増幅部、 18 A/D変換部、 20 CPU、 22 基準発振部、 24 局部発振部、 26 逓倍部、 28 周波数弁別部、 30 スイッチ部、 32 インターフェイス部、 34 フラッシュメモリ、 36 LED表示部、 40 遅延部、 42 EX−OR回路、 50 ミキサ、 52 BPF、 54 検波部、 56 比較部、 58 鋸歯状波発生部、 60 VCO発振部、 100 受信装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともひとつの衛星から送信された信号を受信する受信部と、
前記受信部において受信した信号を周波数変換させるためのローカル信号であって、かつ前記受信部において受信した信号において発生しうるドップラーシフトの範囲にわたって周波数が変化するローカル信号を発生する発生部と、
前記発生部において発生したローカル信号によって、前記受信部において受信した信号を周波数変換する変換部と、
前記変換部において周波数変換した信号をエンベロープ検波する検波部と、
前記検波部においてエンベロープ検波した信号をしきい値と比較する比較部と、
前記比較部における比較の結果、しきい値以上の値になっている信号成分の数を計数することによって、前記受信部において受信した信号の送信元になる衛星の数を推定する推定部と、
を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項2】
前記受信部において受信した信号を記憶する記憶部をさらに備え、
前記変換部は、前記記憶部に記憶した信号を複数回数読み出し、読み出した信号を周波数変換することを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記発生部は、複数の部分発生部を含み、前記受信部において受信した信号において発生しうるドップラーシフトの範囲を複数の部分範囲に分割した場合に、各部分発生部は、互いに異なった部分範囲にわたって周波数が変化するローカル信号を発生しており、
前記変換部は、部分発生部の数と同一の数だけの部分変換部を含み、各部分変換部は、互いに異なった部分発生部において発生したローカル信号によって、前記受信部において受信した信号を周波数変換し、
前記検波部は、複数の部分変換部のそれぞれにおいて周波数変換した信号を結合した信号のエンベロープ検波結果を出力することを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項4】
少なくともひとつの衛星から送信された信号を受信する受信部と、
前記受信部において受信した信号をフーリエ変換することによって、時間領域の信号から周波数領域の信号へ変換する変換部と、
前記変換部において変換した周波数領域の信号をしきい値と比較する比較部と、
前記比較部における比較の結果、しきい値以上の値になっている信号成分の数を計数することによって、前記受信部において受信した信号の送信元になる衛星の数を推定する推定部と、
を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項5】
前記推定部において推定した衛星の数を通知する通知部をさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−220854(P2011−220854A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90710(P2010−90710)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000001177)株式会社光電製作所 (32)
【Fターム(参考)】