説明

可動式ホーム柵

【課題】必要十分な強度を得ながら軽量化を図れる構造を有する扉体を備えた可動式ホーム柵を提供する。
【解決手段】プラットホーム11の側縁に沿って立設される戸袋体12に進退可能に設けられた扉体13は、中空押出形材25を、押出方向を扉体の進退方向に対して平行で、中空押出形材の幅方向を鉛直方向に向けて配置した扉本体23と、扉本体の下部に中空押出形材と平行に設けられた扉支持材24と、扉支持材の戸袋体側の下部に設けられた直動ブロック30とを備え、扉体は、戸袋体内に設けられた直動レール21に沿って移動する直動ブロックにより支持されて片持ち構造で進退可能に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動式ホーム柵に関し、詳しくは、プラットホームに設置されて列車が定位置に停止したときに扉体を戸袋体内に収納して列車への乗降を可能とする可動式ホーム柵に関する。
【背景技術】
【0002】
プラットホームから乗客が線路に転落したり、高速列車通過時の風圧を緩和したりするため、プラットホームの側縁に可動式ホーム柵(ホームドア)を設置することが行われている。この可動式ホーム柵は、一般に、プラットホームの側縁に沿って立設される戸袋体と、該戸袋体に対して進退可能に設けられた扉体とを有している。前記扉体は、乗客からの外力や通過列車の風圧に耐える必要があり、一方でプラットホームへの負担を軽減したり、開閉を円滑に行えるようにするため、十分な強度が求められるとともに、軽量化も求められている。このため、強固に枠組みしたフレームを骨格とし、この骨格の表裏にパネル材を配置し、さらに、パネル材の間にハニカム材を挟んだフレーム構造を採用している例が多い(例えば、特許文献1,2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−82627号公報
【特許文献2】特開2009−234373
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のフレーム構造では、骨格となるフレーム自体の重量が嵩み、さらに、扉体の進退方向長さが長くなると、フレーム内に補強用の桟などを設ける必要があるために更に重量が増加してしまう。扉体の重量が増加すると、扉体を支持するための支持機構や扉体を進退させるための開閉機構の重量も増加し、プラットホームの構造によっては可動式ホーム柵の設置が困難となり、可動式ホーム柵の設置に加えてプラットホームの補強も行う必要があった。また、扉体の重量が増加すると、戸袋内から扉体を片持ち状態で支持することが困難となり、扉体戸先部に戸車を設けるとともに可動式ホーム柵の乗降用開口の床面にガイドレールを設ける必要があった。
【0005】
そこで本発明は、必要十分な強度を得ながら軽量化を図れる構造を有する扉体を備えた可動式ホーム柵を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の可動式ホーム柵は、プラットホームの側縁に沿って立設される戸袋体と、該戸袋体に対して進退可能に設けられた扉体とを備えた可動式ホーム柵において、前記扉体は、中空押出形材を、該中空押出形材の押出方向を扉体の進退方向に対して平行に、かつ、中空押出形材の幅方向を鉛直方向に向けて配置した扉本体と、該扉本体の下部に前記中空押出形材と平行に設けられた扉支持材と、該扉支持材の戸袋体側の下部に設けられた直動ブロックとを備え、前記扉体は、前記戸袋体内に設けられた直動レールに沿って移動する前記直動ブロックにより片持ち状態で支持されて進退可能に形成されていることを特徴としている。
【0007】
さらに、本発明の可動式ホーム柵は、前記扉支持材が、前記扉本体の下部に一体形成して又は別体形成されて接合して設けられた扉下部材と、該扉下部材の前記戸袋体側に設けられたガイド板とを備え、該ガイド板に前記直動ブロックが設けられていること、特に、前記扉下部材が、前記中空押出形材と同じ見込み寸法を有するとともに、前記中空押出形材の肉厚よりも厚肉の中空押出形材からなり、前記ガイド板は、前記扉下部材の見込み寸法より大きな見込み寸法を有し、該ガイド板の見込み方向中間部が前記扉下部材の戸袋体側下半部に形成された切欠部に合わせて固着され、前記戸袋体から前記扉体を突出させて閉じ状態としたときに戸袋体から突出する部分のガイド板は、前記扉下部材の見込み寸法と同じ寸法に切欠加工されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の可動式ホーム柵によれば、扉体の強度を中空押出形材によって得ることができるので、強固な枠体を必要とせず、扉体の軽量化を図ることができる。これにより、扉体の幅寸法が大きくなっても、戸袋体内に設けた直動レール及び直動ブロックからなる直動ガイドによって扉体を片持ち状態で支持することが可能となり、可動式ホーム柵の開口下部にガイドレールを設ける必要もない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の可動式ホーム柵の一形態例を示す縦断面図である。
【図2】可動式ホーム柵の正面図である。
【図3】扉体の正面図である。
【図4】図3のIV−IV断面図である。
【図5】戸袋体の断面側面図である。
【図6】戸袋体の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本形態例に示す可動式ホーム柵10は、プラットホーム11の側縁に沿って立設される戸袋体12と、該戸袋体12に対して進退可能に設けられ、可動式ホーム柵10の乗降用開口10aを開閉する扉体13とを備えている。
【0011】
戸袋体12は、扉体13の全体を収納可能な大きさを有するものであって、基礎部材16に複数の柱部材17を立設し、各柱部材17の外側両面にパネル18をそれぞれ取り付けるとともに、上部に笠木19を取り付けた箱状に形成され、長さ方向の一側には、扉体13が通過するための開口部20が設けられている。また、戸袋体12の下部の見込み方向(ホーム幅方向)の中央部には、基礎部材16に固定された直動レール21が、扉体13の進退方向、すなわち、戸袋体12の長手方向全体にわたって敷設されている。さらに、戸袋体12の内側上部で開口部20の近傍には、扉体13の両側を挟む状態で一対の振止ローラ22が設けられている。
【0012】
前記扉体13は、扉本体23と、該扉本体23の下部に設けられた扉支持材24とで形成されている。扉本体23は、所定間隔で配置した一対の側板の間をV字型リブで連結して三角形断面の中空部を連続して複数形成した閉断面の中空押出形材25、いわゆる、トラス構造を有する中空押出形材25を、該中空押出形材25の押出方向を扉体13の進退方向に対して平行に、かつ、中空押出形材25の幅方向を鉛直方向に向けて配置したものであって、中空押出形材25の幅方向一側には、長方形断面の対角線に補強片25aを有する矩形断面部25bを有しており、扉体13の高さ寸法の約半分の幅寸法を有する2枚の中空押出形材25の矩形断面部25bを有する幅方向一側面と、矩形断面部25bを有していない幅方向他側面とを突き合わせて溶接し、2枚の中空押出形材25を上下に連結して扉本体23を形成している。
【0013】
また、扉体13の全長は、乗降用開口10aの開口幅より大きな寸法を有しており、所定の閉じ位置まで扉体13を戸袋体12から引き出したときに、扉体13の全長に対して1/4〜1/3の長さの基部側部分13aが戸袋体12内に残った状態となるようにしている。また、扉本体23の基部側部分13aの両側には、扉体13を戸袋体12から閉じ位置まで引き出したときに、前記振止ローラ22が当接する振止当接部26がそれぞれ設けられている。
【0014】
前記扉支持材24は、前記扉本体23の下部に、扉本体23の全長にわたって設けられた扉下部材27と、該扉下部材27の戸袋体12側に設けられたガイド板28とを備えている。扉下部材27は、扉本体23及びガイド板28との接合や撓みを考慮した形状、構造を有しており、本形態例では、上下方向中間部に設けた補強片27aの上下にそれぞれ中空部を有する中空押出形材としている。この扉下部材27は、扉下部材27の厚さ寸法(見込み寸法)は、前記扉本体23の中空押出形材25の厚さ(見込み寸法)と同じ寸法に設定されている。この扉下部材27の肉厚は、中空押出形材25の肉厚より厚肉に設定されており、扉下部材27の高さ寸法(中空押出形材の幅寸法)は、扉体13の長さ寸法や高さ寸法、扉本体23を形成する中空押出形材25の幅寸法などの条件によって異なるが、通常は、扉本体23の高さ寸法に対して1/10〜1/5に設定されている。また、扉下部材27の戸袋体12側の下部には、前記ガイド板28の長さ及び高さに合わせた切欠部27bが形成されている。
【0015】
前記ガイド板28は、扉体13の長さ寸法に対して1/3〜1/2の長さ、扉下部材27の見込み寸法に対して3〜5倍の見込み寸法をそれぞれ有し、前記扉下部材27の高さ寸法に対して3/1〜1/2の肉厚を有する厚肉で幅広の板材を、厚み方向を上下方向に向けて配置したものであって、該ガイド板28の見込み方向中央部より僅かにプラットホーム内側部分の上面に、前記扉下部材27の切欠部27bを合わせてガイド板28と扉下部材27を溶接固着して扉支持材24を形成している。さらに、ガイド板28のプラットホーム外側(線路側)上面と扉体13の基部側部分13aにおけるプラットホーム内側外面下部との間には、複数の三角形状の補強板29が設けられている。また、戸袋体12から扉体13を引き出したときに、戸袋体12から突出するガイド板28の両側部28aは、扉下部材27の見込み寸法と同じ寸法になるように切欠加工され、戸袋体12から突出した扉体13の両面が平面となるようにしている。
【0016】
また、ガイド板28の下面には、前記直動レール21にガイドされて直線移動する一対の直動ブロック30が取り付けられている。両直動ブロック30は、扉体13の基部側部分13aの長さ方向両端部にそれぞれ配置されており、一方の直動ブロック30は、扉体13の戸尻に近い位置に設けられ、他方の直動ブロック30は、戸袋体12から扉体13を閉じ位置に引き出したときに、戸袋体12の開口部20から突出しない位置で、かつ、開口部20に近い位置の戸袋体12内に設けられている。
【0017】
前記扉体13は、前記扉本体23と、扉下部材27及びガイド板28からなる扉支持材24と、補強板29とをそれぞれ溶接して一体化され、ガイド板28の下面に直動ブロック30を装着することによって形成され、必要に応じて戸先に戸当たり31が設けられ、両面及び上端面に化粧パネル32が貼られた状態となる。このようにして形成された前記扉体13は、扉本体23を中空押出形材25で形成したことにより、従来のフレーム構造に比べて扉本体23を大幅に軽量化することができるとともに、中空押出形材25のトラス構造によって扉本体23の強度を必要十分なものとすることができる。
【0018】
さらに、扉本体23の下部に全長にわたって扉支持材24を設けることにより、扉体13の下部を補強することができる。特に、中空押出形材25の肉厚に比べて厚肉の中空押出形材からなる扉下部材27と厚肉で幅広の板材からなるガイド板28とで形成した扉支持材24を扉本体23の下部に設けることにより、全長にわたる扉下部材27で扉体13の下部を確実に補強できるとともに、幅広のガイド板28を設けることによって扉体13を片持ち状態で移動可能に保持するのに十分な強度を有する大きさの直動ブロック30を確実に取り付けることができる。
【0019】
また、一側に補強片25aを有する矩形断面部25bを設けた中空押出形材25を使用し、矩形断面部25bを扉体13の最上部と上下方向中間部とに配置し、扉体13の最下部に断面矩形状の扉下部材27を配置することにより、扉体13の上中下の3箇所に全長にわたる矩形断面部が存在することになり、中空押出形材25のトラス構造と合わせて扉体13の強度を効果的に向上させることができる。
【0020】
さらに、ガイド板28と扉体13との間に補強板29を設けることにより、扉体13の強度を更に向上させることができるとともに、ガイド板28の見込み方向中央部よりプラットホーム内側部分に扉下部材27を位置させることにより、見込み方向中央部に扉下部材27を位置させた場合に比べて大きな補強板29を使用することができ、扉体13の強度を更に効果的に向上させることができ、扉体13の両側に補強板29を設ける場合に比べて構造の簡略化や扉体13に対する戸袋体12のプラットホーム内側寸法を小さくすることができる。
【0021】
したがって、乗降用開口10aの開口幅が大きい場合でも、例えば、片開きで3m以上、両開きで7m程度の乗降用開口10aを開閉する扉体13を、戸袋体12の内部に設けた直動レール21及び直動ブロック30からなる直動ガイドによって直線移動に片持ち状態で保持することが可能となり、乗降用開口10aの床面に邪魔なガイドレールを設ける必要がなくなるとともに、頻繁な保守が必要なガイドローラを扉体13の下部に設ける必要もなくなる。また、曲げ強度が大きい中空押出形材25で扉本体23を形成しているので、片持ち状態であっても乗降客の接触などによる外力や高速列車通過時の風圧に耐えることができる。さらに、扉本体23の軽量化によって可動式ホーム柵10全体の軽量化も図ることができるので、線路側下部に作業用通路や退避スペースを設けた構造のプラットホームの場合でも、補強せずに可動式ホーム柵10を設置することが可能となり、プラットホームの補強が必要な場合でも、従来に比べて簡単な補強構造を採用することができる。
【0022】
なお、乗降用開口の開口幅が小さい場合には、扉下部材又はガイド板のみを扉支持材として直動ブロックを取り付けることもでき、補強板を省略することもできる。また、十分な幅寸法を有するトラス構造の中空押出形材が製造可能な場合は、一つの中空押出形材で扉下部材を含む扉本体を形成することもできる。さらに、振止当接部は、扉体の振止ローラが当接する全長にわたって設けてもよい。また、扉体の開閉は、任意の駆動手段を採用することができる。
【符号の説明】
【0023】
10…可動式ホーム柵、10a…乗降用開口、11…プラットホーム、12…戸袋体、13…扉体、13a…基部側部分、16…基礎部材、17…柱部材、18…パネル、19…笠木、20…開口部、21…直動レール、22…振止ローラ、23…扉本体、24…扉支持材、25…中空押出形材、25a…補強片、25b…矩形断面部、26…振止当接部、27…扉下部材、27a…補強片、27b…切欠部、28…ガイド板、28a…両側部、29…補強板、30…直動ブロック、31…戸当たり、32…化粧パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラットホームの側縁に沿って立設される戸袋体と、該戸袋体に対して進退可能に設けられた扉体とを備えた可動式ホーム柵において、前記扉体は、中空押出形材を、該中空押出形材の押出方向を扉体の進退方向に対して平行に、かつ、中空押出形材の幅方向を鉛直方向に向けて配置した扉本体と、該扉本体の下部に前記中空押出形材と平行に設けられた扉支持材と、該扉支持材の戸袋体側の下部に設けられた直動ブロックとを備え、前記扉体は、前記戸袋体内に設けられた直動レールに沿って移動する前記直動ブロックにより片持ち状態で支持されて進退可能に形成されていることを特徴とする可動式ホーム柵。
【請求項2】
前記扉支持材は、前記扉本体の下部に設けられた扉下部材と、該扉下部材の前記戸袋体側に設けられたガイド板とを備え、該ガイド板に前記直動ブロックが設けられていることを特徴とする請求項1記載の可動式ホーム柵。
【請求項3】
前記扉下部材は、前記中空押出形材と同じ見込み寸法を有するとともに、前記中空押出形材の肉厚よりも厚肉の中空押出形材からなり、前記ガイド板は、前記扉下部材の見込み寸法より大きな見込み寸法を有し、該ガイド板の見込み方向中間部が前記扉下部材の戸袋体側下半部に形成された切欠部に合わせて固着され、前記戸袋体から前記扉体を突出させて閉じ状態としたときに戸袋体から突出する部分のガイド板は、前記扉下部材の見込み寸法と同じ寸法に切欠加工されていることを特徴とする請求項2記載の可動式ホーム柵。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−112013(P2013−112013A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257199(P2011−257199)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)