説明

合成ゴム溶液移送方法及び合成ゴム溶液移送装置

【課題】移送に用いる配管にて生じる圧力損失が大きくならず、移送に要する動力が過大とならず、設備コスト、工事コストも高くならず、安定して、高粘度の合成ゴム溶液を移送可能な手段を提供すること。
【解決手段】高粘度の合成ゴム溶液を、配管を通して移送する方法であって、高粘度の合成ゴム溶液に対し相対的に低粘度の液体を、配管の内面近傍へ注入する合成ゴム溶液移送方法の提供による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高粘度の合成ゴム溶液を、より小さな動力によって、移送する手段に関する。
【背景技術】
【0002】
合成ゴム製品の製造過程では、例えば配管を用いて、合成ゴム溶液が移送される。そして、この合成ゴム溶液は、高粘度である場合が多い。
【0003】
例えば、ポリブタジエン(ブタジエンゴム、BR)製品は、次のような溶液重合を含む過程を経て、作製される(非特許文献1の335〜343ページを参照)。先ず、ブタジエンモノマーを精製し、その精製されたブタジエンモノマーを、例えば、トルエン等の溶媒(溶剤)と混合させ、更に例えばニッケル系の触媒を添加して、(重合器で)重合し、ブタジエン重合体を含むブタジエン重合溶液を得る。その後、(ストリッパで)蒸気を作用させ、そのブタジエン重合溶液から溶媒を除去し(脱溶、ストリッピング)、更に、固液分離し、脱水し、乾燥させて、ブタジエン重合体のみを取り出す。更に、それを所定の形状に成形して、BR素材(中間製品)を得る。そして、この中間製品を加工すれば、タイヤ等の合成ゴム製品(最終製品)が得られる。このような製造過程における、重合する工程(重合器)以降、脱溶する工程(ストリッパ)までの、上記ブタジエン重合溶液が、高粘度の合成ゴム溶液の一例である。
【0004】
このような重合工程を経て作製される高粘度の合成ゴム溶液の、配管による移送は、従来、行われているが、この移送にかかり改良を提案する先行文献は、見出せない。但し、汚泥の移送に関し、特許文献1,2を確認することが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−105100号公報
【特許文献2】特開2005−320886号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】新ポリマー製造プロセス、佐伯康治・尾見信三編著、株式会社工業調査会、1994年6月10日初版第1刷発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ブタジエン重合溶液のような高粘度の合成ゴム溶液を移送しようとすると、低粘度の合成ゴム溶液と比べて、移送に用いる配管にて生じる圧力損失が大きくなる上、合成ゴム溶液が配管の内壁に付着し易い。そのため、この高粘度の合成ゴム溶液を、安定して移送すること自体が、かなり難しい。又、移送出来たとしても、移送に要する動力(運転コスト)が大きくなるため、省エネルギーの観点から好ましくない。
【0008】
これに対し、配管の内径を大きくしたり、移送ポンプの能力(揚程、モーター出力)を高める等の対策が考えられる。しかしながら、移送ポンプの能力を上げると、安定移送には寄与するが、移送に要する動力は小さくならない。一方、配管の内径を大きくすれば、移送時の圧力損失は低下して動力は下がるが、新たな合成ゴム製品製造にかかる設備コストを増大させる。仮に既設設備を利用するとしても、改良工事コストが高くなる。設備コスト、工事コストが高くなる問題は、移送ポンプの能力を上げる場合にも、同様に生じる。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、移送に用いる配管にて生じる圧力損失が大きくならず(小さくなり)、移送に要する動力(運転コスト)が過大とならず(小さくなり)、設備コスト、工事コストも高くならず(安価であり)、安定して、高粘度の合成ゴム溶液を移送可能な手段を提供することである。研究が重ねられた結果、以下の手段によって、この課題が解決されることが見出され、本発明の完成に至った。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、先ず、本発明によれば、高粘度の合成ゴム溶液を、配管を通して移送する方法であって、高粘度の合成ゴム溶液に対し相対的に低粘度の液体を、上記配管の内面近傍へ注入する合成ゴム溶液移送方法が提供される。
【0011】
本発明に係る合成ゴム溶液移送方法においては、上記低粘度の液体が、合成ゴムの製造過程において使用される液体であることが好ましい。
【0012】
本発明に係る合成ゴム溶液移送方法においては、上記低粘度の液体が、合成ゴム溶液と相溶性を有するとともに、上記高粘度の合成ゴム溶液が、重合工程を経て作製され、低粘度の液体が、その重合工程で使用される有機溶剤であることが好ましい。この場合において、その有機溶剤を、冷却して用いることが好ましい。更に、その有機溶剤の凝固点が0℃以下である場合に、その有機溶剤を、0℃以下に冷却して用いることが好ましい。
【0013】
本発明に係る合成ゴム溶液移送方法においては、上記高粘度の合成ゴム溶液が、脱溶工程を経てゴム素材になるものであり、上記低粘度の液体が、その脱溶工程で使用される蒸気と同じ成分である水であることが好ましい。
【0014】
本発明に係る合成ゴム溶液移送方法は、上記合成ゴム溶液が、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、スチレン・イソプレンゴム、エチレン・α−オレフィン共重合ゴム、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合ゴム、ブチルゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、及び水素添加スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体からなる重合体群から選ばれる重合体を含む重合溶液である場合に、好適に用いられる。
【0015】
次に、本発明によれば、溶媒と混合されたモノマーを重合して、重合体を含む重合溶液を得る重合工程、蒸気を作用させて、上記重合溶液から溶媒を除去する脱溶工程、(その溶媒が除去された固液混合物から、)更に蒸気が液化した熱湯を分離して、重合体を得る分離工程、その熱湯を分離した重合体の水分を、更に除去する脱水工程及び乾燥工程、及び、水分が除去された重合体を、所定の形状に成形する成形工程、を有し、上記重合溶液の移送手段として、上記した何れかの合成ゴム溶液移送方法を用いるゴム素材の製造方法が提供される。
【0016】
次に、本発明によれば、高粘度の合成ゴム溶液を移送する、移送用の配管と、その移送用の配管に設けられた、1以上のノズルと、高粘度の合成ゴム溶液に対し、相対的に低粘度の液体のための貯槽と、その低粘度の液体の貯槽と、ノズルと、を接続する注入用の配管と、を有する合成ゴム溶液移送装置が提供される。
【0017】
本発明に係る合成ゴム溶液移送装置において、移送用の配管は、高粘度の合成ゴム溶液の移送元及び移送先を接続するものである。移送元及び移送先として、貯槽(液槽)、重合器やその他の反応器、反応塔、あるいは脱溶器等を挙げることが出来る。又、本発明に係る合成ゴム溶液移送装置では、移送に圧力を要する場合には、(例えば移送元に)ポンプが設けられる。限定されるものではないが、合成ゴム(ゴム素材)の量産設備に適用される本発明に係る合成ゴム溶液移送装置において、移送用の配管のサイズは、4B(インチ)〜12B程度であり、それに対する好適な注入用の配管のサイズは移送用の配管サイズよりも小さく、1/8B〜2B程度である。
【0018】
本発明に係る合成ゴム溶液移送装置においては、上記低粘度の液体が、合成ゴムの製造過程において使用される液体であることが好ましい。
【0019】
本発明に係る合成ゴム溶液移送装置においては、上記低粘度の液体が、合成ゴム溶液と相溶性を有するとともに、上記高粘度の合成ゴム溶液が、重合工程を経て作製され、低粘度の液体が、その重合工程で使用される有機溶剤であることが好ましい。この場合において、その有機溶剤を、冷却して用いることが好ましい。更に、その有機溶剤の凝固点が0℃以下である場合に、その有機溶剤を、0℃以下に冷却して用いることが好ましい。
【0020】
本発明に係る合成ゴム溶液移送装置においては、上記高粘度の合成ゴム溶液が、脱溶工程を経てゴム素材になるものであり、上記低粘度の液体が、その脱溶工程で使用される蒸気と同じ成分である水であることが好ましい。
【0021】
本発明に係る合成ゴム溶液移送装置は、(移送対象である)合成ゴム溶液が、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、スチレン・イソプレンゴム、エチレン・α−オレフィン共重合ゴム、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合ゴム、ブチルゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、及び水素添加スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体からなる重合体群から選ばれる重合体を含む重合溶液である場合に、好適に用いられる。
【0022】
本発明に係る合成ゴム溶液移送装置においては、上記ノズルが、低粘度の液体を配管の外部から管内面近傍へ注入可能なものであることが好ましい。
【0023】
本発明に係る合成ゴム溶液移送装置において、上記ノズルは、移送用の配管における任意の箇所に、任意の個数を、設置することが出来る。注入した直後に、低粘度の液体が、高粘度の合成ゴム溶液と、互いに溶解し合うことを防止するため、ノズルは、攪拌が起こり得る装置の出口側に設けることが望ましい。攪拌が起こり得る装置とは、例えば、重合器(反応器、反応塔)、移送装置(ポンプ等)、混合装置ないしそれが付帯する貯槽等である。
【0024】
本発明に係る合成ゴム溶液移送装置において、上記ノズルは、上記移送用の配管の屈曲部や分岐部等、配管抵抗に起因して圧力損失が多く発生する部位の直前に、設けることが望ましい。
【0025】
本発明に係る合成ゴム溶液移送装置において、上記1以上のノズルは、移送用の配管の1箇所につき、少なくとも1つ必要である。又、移送用の配管の概ね同一箇所に、複数のノズルを設けることも出来、この場合には、例えば、移送用の配管の長さ方向(高粘度の合成ゴム溶液(流体)の流れ方向)に垂直な断面における位置が概ね同一であっても、管面上の位置を、その断面において例えば45°、90°〜180°ずらして、複数のノズルを取り付ければよい。
【0026】
本発明に係る合成ゴム溶液移送装置において、上記ノズルは、移送用の配管の長さ方向に対して、直角に、又は斜めに、設けることが出来る。直角とは、ノズルの長さ方向(低粘度の液体(流体)の流れ方向)と移送用の配管の長さ方向とがなす角度が90°の場合である(後述する図2を参照)。斜めとは、ノズルの長さ方向と移送用の配管の長さ方向とがなす角度が、例えば移送用の配管ノズル取付位置の上流側を基準として、0°超〜90°未満、90°超〜180°未満の場合である(45°の場合として後述する図3を参照)。
【0027】
本発明に係る合成ゴム溶液移送装置において、上記ノズルは、移送用の配管の内壁と、移送用の配管内を流れる高粘度の合成ゴム溶液と、の間に、低粘度の液体を注入することが出来るように、設ける。即ち、ノズルの先を移送用の配管内に深く挿入しないことが望ましい。その注入が可能であれば、ノズルの長さ方向に垂直な断面の形状は、円、長円であってよいが、それらに限定されない。
【0028】
本発明に係る合成ゴム溶液移送装置及び本発明に係る合成ゴム溶液移送装置では、合成ゴム溶液は、低粘度の液体に対し相対的に高粘度であれば、後述する効果を発現する。本発明に係る合成ゴム溶液移送装置及び本発明に係る合成ゴム溶液移送装置が適用される好ましい高粘度の合成ゴム溶液の粘度は、その温度における粘度として、7000〜35000CP(センチポアズ)程度であり、より好ましい高粘度の合成ゴム溶液の粘度は、15000〜35000CP程度である。
【0029】
本発明に係る合成ゴム溶液移送装置及び本発明に係る合成ゴム溶液移送装置では、低粘度の液体は、高粘度の合成ゴム溶液に対し相対的に低粘度であれば、後述する効果を発現する。本発明に係る合成ゴム溶液移送装置及び本発明に係る合成ゴム溶液移送装置が適用される好ましい低粘度の液体の粘度は、その低粘度の液体が合成ゴムの製造過程において使用される液体である場合に、常温において、0.500〜1.700CP(センチポアズ)程度であり、より好ましい低粘度の液体の粘度は、0.700〜1.700CP(センチポアズ)程度である。
【0030】
本発明に係る合成ゴム溶液移送装置及び本発明に係る合成ゴム溶液移送装置では、低粘度の液体の注入は、その量が特定の値になるように制御して、行ってもよい。しかし、得るべき効果は、後述するスリップ効果(圧力損失の低減)であるので、高粘度の合成ゴム溶液が流れる移送用の配管の圧力損失を監視しつつ、それに基づいて注入することが、より好ましい。従って、低粘度の液体の注入量を調節するために、ノズルの近傍に、低粘度の液体の注入量調節手段を設けることが好ましい。注入量調節手段は、例えば、弁である。スリップ効果が得られる好ましい低粘度の液体の注入量は、50〜2000L/H程度である。
【0031】
本発明に係る合成ゴム溶液移送装置及び本発明に係る合成ゴム溶液移送装置は、合成ゴムの製造過程に含まれる重合工程が、連続重合である場合に、好適に用いられる。連続重合とは、途切れなく重合溶液が、更にはゴム製品が、産出される生産方式のことである。連続重合では、1基以上の重合器(反応器)の中を、その重合にかかる液体(溶液等)が、常に流れるように重合器が使用される。これに対し、回分式(バッチ式)重合とは、不連続で、重合溶液が、更にはゴム製品が、産出される生産方式のことである。バッチ式重合では、重合器(反応器)にて、重合にかかる液体(溶液等)が、一旦、貯められて、仕込から反応までが、行われる。
【0032】
尚、本明細書にいう合成ゴム溶液とは、合成ゴムの製造過程のうち、重合工程(溶液重合工程)以降における、合成ゴムが溶剤に溶解した状態(溶液)をいう。重合反応の進行により、合成ゴム溶液の粘度は上昇する。又、溶剤の比率が低下すると、合成ゴム溶液の粘度が上昇する。
【0033】
本明細書にいう有機溶剤とは、固体、液体、又は気体を溶かす液体のうち、有機物であるものをいう。本来は、(有機)溶媒というべきであるが、工業的には(有機)溶剤と呼ばれることが多い。
【0034】
本明細書にいう相溶性とは、2以上の流体が互いに溶解し合う性質のことをいう。
【0035】
本明細書にいう配管抵抗とは、流体が配管中を流動する際に発生する抵抗のことをいう。又、本明細書にいう圧力損失(圧損とも表現する)とは、流体が配管中を流動する際に発生する抵抗によって低下する圧力のことをいう。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る合成ゴム溶液移送方法では、高粘度の合成ゴム溶液に対し相対的に低粘度の液体を、(移送用の)配管の内面近傍へ注入する。そうすると、移送用の配管の内壁と、移送用の配管内を流れる高粘度の合成ゴム溶液と、の間に、低粘度の液体が注入される(換言すれば、そのように注入する)。そして、高粘度の合成ゴム溶液は、配管中で滑らかに移送され、移送用の配管に生じる圧力損失が低減されるとともに、移送に要する動力(運転コスト)が低減される(スリップ効果と呼ぶ)。従って、配管の内径を大きくしたり、移送ポンプ等の移送装置の能力を高める必要がなく、合成ゴム溶液の移送を行う装置にかかる設備コストないし工事コストも抑制される。
【0037】
本発明に係る合成ゴム溶液移送方法は、既設の合成ゴム製造設備内の、合成ゴム溶液の移送を行う装置に適用可能である。本発明に係る合成ゴム溶液移送方法によれば、上記の通り、移送用の配管に生じる圧力損失が低減されるとともに、移送に要する動力が低減されるのであるから、既設の合成ゴム溶液の移送を行う装置(配管や移送装置(ポンプ)等を変更しないもの)によって、より多量の、又は、より高粘度の、若しくは、より多量で且つより高粘度の、合成ゴム溶液を移送することが可能になる。従って、既設の合成ゴム製造設備を利用した、合成ゴムの増産に寄与する。
【0038】
本発明に係る合成ゴム溶液移送方法によれば、(移送用の)配管内壁へのゲル状物質の付着(これが配管抵抗を増大させる)が抑制されるとともに、配管流路の狭窄及び閉塞が抑止される。従って、長期間にわたり、安定して、高粘度の合成ゴム溶液の移送を実現することが出来る。
【0039】
本発明に係る合成ゴム溶液移送方法では、その好ましい態様において、低粘度の液体が、合成ゴムの製造過程において使用される液体である。従って、合成ゴムの製造過程に悪影響を与えず、最終製品であるタイヤ等の合成ゴム製品の品質を低下させることがない。
【0040】
具体的には、例えば、高粘度の合成ゴム溶液が、重合工程を経て作製され、低粘度の液体が、その重合工程で使用される有機溶剤であって、合成ゴム溶液と相溶性を有するものである場合が挙げられる。この場合、有機溶剤(低粘度の液体)は、元々、重合工程で使用されるものであるから、合成ゴムの製造過程に悪影響を与えない。そして、有機溶剤(低粘度の液体)を、重合工程の直後に注入すれば、その後の脱溶工程で除去される。従って、新たに低粘度の液体(有機溶剤)を除去する手段を設ける必要がない。有機溶剤(低粘度の液体)は、重合工程の後、脱溶工程まで、高粘度の合成ゴム溶液(重合溶液)に対し、スリップ効果を発揮する。
【0041】
低粘度の液体として有機溶剤を用いる場合に、これを冷却して用いると、高粘度の合成ゴム溶液との相溶性が低下し、スリップ効果が、より確実に発揮される。即ち、両者が直ぐに溶け合わないので、移送用の配管の内壁と、移送用の配管内を流れる高粘度の合成ゴム溶液と、の間に、低粘度の液体が、いわば膜状に存在し続け、スリップ効果が持続されるのである。例えば、有機溶剤の凝固点が0℃以下である場合に、その有機溶剤を、0℃以下に冷却して用いると、相溶性は確実に低下するので、スリップ効果も確実に持続される。
【0042】
又、例えば、高粘度の合成ゴム溶液が、脱溶工程を経てゴム素材になるものであり、低粘度の液体が、水の場合が挙げられる。この場合、水(低粘度の液体)は、元々、脱溶工程で使用される蒸気と同じ成分であるから、合成ゴムの製造過程に悪影響を与えない。そして、水(低粘度の液体)を、脱溶工程の前に注入すれば、その後の(固液)分離工程、脱水工程で除去される。従って、新たに低粘度の液体(水)を除去する手段を設ける必要がない。尚、低粘度の液体が水の場合とは、水が蒸気と同じ成分(HO)であることを示しているのであって、水が厳密に蒸気と同じ成分である必要はない。又、脱溶工程で使用される蒸気が冷やされた水を、有効に再利用することが出来るが、そうしなくてもよい。再利用すれば、節水、省資源に寄与する。
【0043】
本発明に係る合成ゴム溶液移送方法は、合成ゴム溶液が、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、スチレン・イソプレンゴム、エチレン・α−オレフィン共重合ゴム、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合ゴム、ブチルゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、及び水素添加スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体からなる重合体群から選ばれる重合体を含む重合溶液である場合に好適に使用される。即ち、本発明に係る合成ゴム溶液移送方法は、種々の合成ゴム製造過程において、広範囲に利用することが出来る。
【0044】
本発明に係るゴム素材の製造方法は、重合溶液の移送手段として、本発明に係る合成ゴム溶液移送方法を用いるので、既述の通り、運転コストが低減される。又、既設の合成ゴム製造設備を利用して、合成ゴムの増産を図れる。
【0045】
本発明に係る合成ゴム溶液移送装置は、本発明に係る合成ゴム溶液移送方法を現に行い得る装置であり、その実施を通じて、スリップ効果を得るところに、効果が認められる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る合成ゴム溶液移送装置の一実施形態を含む、合成ゴム製造設備の一例の一部分を示す流れ図である。
【図2】図1における丸囲いA部分に相当する図であり、本発明に係る合成ゴム溶液移送装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図3】図1における丸囲いB部分に相当する図であり、本発明に係る合成ゴム溶液移送装置の一実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参酌しながら説明するが、本発明はこれらに限定されて解釈されるべきものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。例えば、図面は、好適な本発明の実施の形態を表すものであるが、本発明は図面に表される態様や図面に示される情報により制限されない。本発明を実施し又は検証する上では、本明細書中に記述されたものと同様の手段若しくは均等な手段が適用され得るが、好適な手段は以下に記述される手段である。
【0048】
先ず、図1〜図3を参照して、合成ゴム製造設備の一例、及びそれに含まれる本発明に係る合成ゴム溶液移送装置の一の実施形態について、説明する。図1の例は、合成ゴムがポリブタジエン(ブタジエンゴム、BR)の場合の、製造設備の一部分である(ブタジエンゴムの製造設備ないし製造過程の全体については、非特許文献1の335〜343ページ、特に343ページを参照)。尚、図1〜図3中の矢印は、配管における流体の流れ方向を示している。
【0049】
図1に示される合成ゴム製造設備1は、重合器11、貯槽12、脱溶器13、貯槽14、モノマー貯槽15、有機溶剤貯槽16、貯水槽21を有する。モノマー貯槽15の前段はモノマー精製器17であり、貯槽14の後段は固液分離機19である。又、有機溶剤貯槽16の前段は有機溶剤精製器18である。
【0050】
重合器11(反応器)は、合成ゴムの重合反応を行う容器である。ブタジエンゴムの重合を行う重合器11は、冷却機構11aを持ち、例えばアンモニアを冷媒として、容器の外側から冷却を行うことが出来る。脱溶器13(ストリッパ)は、それに供給される蒸気54を作用させて、重合で得られたブタジエン重合溶液4(合成ゴム溶液)から、それに含まれる有機溶剤3(溶媒)を、除去し回収する容器である。
【0051】
貯槽12及び貯槽14は、緩衝槽(タンク)である。貯槽12は、重合反応が完了したブタジエン重合溶液4を、一時的に貯めておく貯槽である。貯槽12によって、重合反応処理と、次の脱溶器13で行われる脱溶(有機溶剤除去回収)処理と、の処理量の差を、吸収することが出来る。又、ブタジエン重合溶液4の組成が乱れた際に、一時的に保管したり、混合によって物性を均一化することが可能である。貯槽14は、脱溶が完了したブタジエン重合溶液4を、一時的に貯めておく貯槽である。貯槽14によって、脱溶処理と、次の(図示しない)固液分離機で行われる固液分離処理と、の処理量の差を、吸収することが出来る。
【0052】
重合器11、貯槽12、脱溶器13、貯槽14は、混合装置を備える。混合装置は、例えば、電動機(M)と、撹拌羽根(螺旋部材(ヘリカルリボン)を含む)と、それらをつなぐシャフトで構成される。重合器11の混合装置は、重合反応のための触媒51と、ブタジエンモノマー2及び有機溶剤3を、混合する。貯槽12の混合装置は、ブタジエン重合溶液4と、重合停止剤52及び老化防止剤53を、混合する。又、合成ゴム製造設備1には、適宜、移送装置(ポンプ(P))が備わる。ブタジエンゴムを製造する合成ゴム製造設備1では、ポンプによって、ブタジエンモノマー2及び有機溶剤3が、重合器11へ、送り込まれる。重合器11の出口側には、ポンプはなく、そのまま貯槽12(緩衝容器)へ送られる。
【0053】
この合成ゴム製造設備1には、2つの本発明に係る合成ゴム溶液移送装置が含まれている。先ず、重合器11と貯槽12の間を接続する移送用配管31(高粘度の合成ゴム溶液を移送する移送用の配管)と、その移送用配管31に設けられた、1つのノズル41と、有機溶剤貯槽16(高粘度の合成ゴム溶液に対し相対的に低粘度の液体のための貯槽)と、この有機溶剤貯槽16とノズル41とを接続する注入用配管32とで、本発明に係る一の合成ゴム溶液移送装置が構成される。ノズル41の近傍(移送用配管31に入る前の注入用配管32)には、弁が設けられる。この弁によって、低粘度の液体(有機溶剤3)の注入量を調節することが可能である。
【0054】
有機溶剤3は、低粘度の液体であり、且つ、ブタジエンゴム(合成ゴム)の製造過程において使用される液体(溶媒)である。そして、有機溶剤貯槽16は、重合工程に使用される溶媒(有機溶剤3)の貯槽と、低粘度の液体(有機溶剤3)のための貯槽と、を兼ねている。ノズル41は、(例えば)移送用配管31が概ね水平に設置されたところで、(例えば)下方から移送用配管31に対し90°の角度で、移送用配管31に取り付けられている。
【0055】
又、貯槽12と脱溶器13の間を接続する移送用配管33(高粘度の合成ゴム溶液を移送する移送用の配管)と、その移送用配管33に設けられた、2つのノズル42と、貯水槽21(高粘度の合成ゴム溶液に対し相対的に低粘度の液体のための貯槽)と、この貯水槽21と(2つの)ノズル42とを接続する(分岐した)注入用配管34とで、本発明に係る他の合成ゴム溶液移送装置が構成される。ノズル42のそれぞれの近傍(移送用配管33に入る前の注入用配管34)には、弁が設けられる。この弁によって、低粘度の液体(水5)の注入量を調節することが可能である。
【0056】
ブタジエン重合溶液4は、脱溶工程を経てゴム素材になる高粘度の合成ゴム溶液である。水5は、低粘度の液体であり、且つ、脱溶工程(脱溶器13)で使用される蒸気54と同じ成分である。貯水槽21には、(例えば)上水道20から水5が送られ貯められるが、その代わりに、脱溶器13で使用された蒸気54を冷やして、水5として貯水槽21に貯めてもよい。2つのノズル42は、(例えば)移送用配管33が概ね垂直に設置されたところで、それぞれ(例えば)斜め下方から移送用配管33に対し45°の角度で、移送用配管31に取り付けられている。2つのノズル42の設置位置は、移送用配管33の長さ方向(ブタジエン重合溶液4の流れ方向)に垂直な断面における位置は概ね同一であり、且つ、移送用配管33の断面において(例えば)180°ずれている。
【0057】
次に、本発明に係る合成ゴム溶液移送装置を製造する方法について、合成ゴム製造設備1に含まれる、上記の2つの合成ゴム溶液移送装置を例にして、説明する。本発明に係る合成ゴム溶液移送装置は、市販されている部材・配管を購入し又は加工して、組み立てて、得ることが出来る。合成ゴム製造設備1が、新規に建設される場合の他、既設であっても改造して、本発明に係る合成ゴム溶液移送装置を組み込むことが可能である。
【0058】
移送用配管31,33としては、炭素鋼管(SGP、STPG(日本工業規格))、ステンレス管(SUS304、SUS316(日本工業規格))を、好適に用いることが出来る。注入用配管32,34としては、炭素鋼管(SGP、STPG、STPL(日本工業規格)、ステンレス管(SUS304、SUS316(日本工業規格))を、好適に用いることが出来る。ノズル41,42の材料としては、炭素鋼管(SGP、STPG(日本工業規格)やステンレス管(SUS304、SUS316(日本工業規格)を、好適に用いることが出来る。移送用配管31,33とノズル41,42とは、異種金属溶接をさけるため、同じ材料を用いることが好ましい。
【0059】
次に、本発明に係るゴム素材の製造方法について、ブタジエンゴムの場合を例にして、説明する。又、この説明を通じて、本発明に係る合成ゴム溶液装置が含まれる、上記合成ゴム製造設備1を使用する場合を例にして、本発明に係る合成ゴム溶液移送方法についても、説明する。
【0060】
(図示しない)モノマー精製器17で精製されたブタジエンモノマー2(1,3−ブタジエン)を、モノマー貯槽15へ貯める。ブタジエンモノマー2は、一般に原油から取り出されるナフサの熱分解によって(副産物として)生産される他、エチレンから製造される。又、(図示しない)有機溶剤精製器18で精製された有機溶剤3(トルエン、ベンゼン、キシレン等)を、有機溶剤貯槽16へ貯める。そして、ブタジエンモノマー2、有機溶剤3、更には、触媒51(ニッケル系、チタン系、コバルト系、ネオオジウム系、リチウム系等の触媒)を、重合器11へ送り、混合し、重合(反応)を行う。そうすると、ブタジエン重合体を含むブタジエン重合溶液4(高粘度の合成ゴム溶液)が生成される(重合工程)。
【0061】
次に、ブタジエン重合溶液4を、移送用配管31を介して、貯槽12へ送る。このとき、重合(反応)のためとは別に、ブタジエン重合溶液4に対し相対的に低粘度の有機溶剤3を、有機溶剤貯槽16から注入用配管32、ノズル41を介して、移送用配管31の内面近傍へ、注入する。そうすると、移送用配管31の内壁と、ブタジエン重合溶液4と、の間に、低粘度の有機溶剤3が、膜状に存在することとなり、スリップ効果が発現される。その後、貯槽12の前で、更に、重合停止剤52(メタノール等)及び老化防止剤53を注入し、混合する。
【0062】
次に、(安定した)ブタジエン重合溶液4を、移送用配管33を介して、貯槽12から、脱溶器13へ送る。このとき、ブタジエン重合溶液4に対し相対的に低粘度の水5を、貯水槽21から注入用配管34、ノズル42を介して、移送用配管33の内面近傍へ、注入する。そうすると、移送用配管33の内壁と、ブタジエン重合溶液4と、の間に、低粘度の水5が、膜状に存在することとなり、スリップ効果が発現される。その後、脱溶器13において、105〜200℃の蒸気54を作用させる。このとき、水5の一部も蒸気となる。この作用により、ブタジエン重合溶液4から、余剰の有機溶剤3(溶媒、低粘度の液体)を除去し、回収する(脱溶工程)。
【0063】
有機溶剤3が除去されると、蒸気54(水5を含む)が液化した熱湯中に、クラム状のブタジエン重合体が存在する、固液混合物となる。その後、その固液混合物から、熱湯を分離して、ブタジエン重合体を得る(分離工程)。そして、そのブタジエン重合体を、脱水機で更に脱水した後(脱水工程)、乾燥装置で乾燥させ(乾燥工程)、(例えば)プレス成形装置で、所定のブロック形状に成形し、必要なラッピングを施せば、ゴム素材(中間製品)が得られる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0065】
(実施例1)図1に示される合成ゴム製造設備1と同様の、ブタジエンゴムの製造設備において、重合器の出口の移送用配管中を、ブタジエン重合溶液が、任意の流量Qで移送されていた。このとき、重合器の出口における圧力損失は、0.470MPa(絶対圧、以下の圧力損失において同じ)であった。
【0066】
そして、重合器の出口直後の、移送用配管の水平部分に、図2の態様と同様にして、下方から移送用配管に対し90°の角度で、ノズルを設け、そのノズルから、移送用配管へ、重合工程にて用いる有機溶剤を、300L/Hの流量で、注入した。このとき、重合器の出口における圧力損失は、0.441MPaとなり、有機溶剤を注入する前に比較して、圧力損失が、0.029MPa低下した。
【0067】
(実施例2)有機溶剤注入前の条件は、実施例1と同じである。そして、重合器の出口直後の、移送用配管の水平部分に、図2の態様とは異なり、上方から移送用配管に対し90°の角度で、ノズルを設け、そのノズルから、移送用配管へ、重合工程にて用いる有機溶剤を、300L/Hの流量で、注入した。このとき、重合器の出口における圧力損失は、0.440MPaとなり、有機溶剤を注入する前に比較して、圧力損失が、ゲージ圧で、0.030MPa低下した。
【0068】
(実施例3)有機溶剤注入前の条件は、実施例1と同じである。そして、重合器の出口直後の、移送用配管の水平部分に、図2の態様とは異なり、ブタジエン重合溶液が移送方向に対し右横から移送用配管に対し90°の角度で、ノズルを設け、そのノズルから、移送用配管へ、重合工程にて用いる有機溶剤を、300L/Hの流量で、注入した。このとき、重合器の出口における圧力損失は、0.440MPaとなり、有機溶剤を注入する前に比較して、圧力損失が、0.030MPa低下した。
【0069】
(実施例4)有機溶剤注入前の条件は、実施例1と同じである。そして、重合器の出口直後の、移送用配管の水平部分に、図2の態様とは異なり、ブタジエン重合溶液が移送方向に対し左横から移送用配管に対し90°の角度で、ノズルを設け、そのノズルから、移送用配管へ、重合工程にて用いる有機溶剤を、300L/Hの流量で、注入した。このとき、重合器の出口における圧力損失は、0.441MPaとなり、有機溶剤を注入する前に比較して、圧力損失が、ゲージ圧で、0.029MPa低下した。
【0070】
(実施例5)実施例1〜4と同じブタジエンゴムの製造設備において、重合器の出口の移送用配管におけるブタジエン重合溶液の流量を、上記流量Qの1.05倍に調節した。このとき、重合器の出口における圧力損失は、0.495MPaであった。実施例1と同じ条件で、重合工程にて用いる有機溶剤を注入したところ、重合器の出口における圧力損失は、0.465MPaとなり、有機溶剤を注入する前に比較して、圧力損失が、ゲージ圧で、0.030MPa低下した。
【0071】
(実施例6)実施例1〜4と同じブタジエンゴムの製造設備において、重合器の出口の移送用配管におけるブタジエン重合溶液の流量を、上記流量Qの1.1倍に調節した。このとき、重合器の出口における圧力損失は、0.518MPaであった。そして、実施例1と同じ条件で、重合工程に用いる有機溶剤を注入したところ、重合器の出口における圧力損失は、0.488MPaとなり、有機溶剤を注入する前に比較して、圧力損失が、0.030MPa低下した。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明に係る合成ゴム溶液移送方法及び合成ゴム溶液移送装置は、種々の(合成)ゴム製品の製造過程において、合成ゴム溶液(重合溶液)の移送を行う手段として、好適に利用される。
【符号の説明】
【0073】
1:合成ゴム製造設備、2:ブタジエンモノマー、3:有機溶剤、4:ブタジエン重合溶液、5:水、11:重合器、11a:冷却機構、12:貯槽、13:脱溶器、14:貯槽、15:モノマー貯槽、16:有機溶剤貯槽、17:モノマー精製器、18:有機溶剤精製器、19:固液分離機、20:上水道、21:貯水槽、31:移送用配管、32:注入用配管、33:移送用配管、34:注入用配管、41:ノズル、42:ノズル、51:触媒、52:重合停止剤、53:老化防止剤、54:蒸気。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高粘度の合成ゴム溶液を、配管を通して移送する方法であって、
前記高粘度の合成ゴム溶液に対し相対的に低粘度の液体を、前記配管の内面近傍へ注入する合成ゴム溶液移送方法。
【請求項2】
前記低粘度の液体が、前記合成ゴムの製造過程において使用される液体である請求項1に記載の合成ゴム溶液移送方法。
【請求項3】
前記低粘度の液体が、前記合成ゴム溶液と相溶性を有するとともに、
前記高粘度の合成ゴム溶液が、重合工程を経て作製され、前記低粘度の液体が、その重合工程で使用される有機溶剤である請求項2に記載の合成ゴム溶液移送方法。
【請求項4】
前記有機溶剤を、冷却して用いる請求項3に記載の合成ゴム溶液移送方法。
【請求項5】
前記有機溶剤の凝固点が0℃以下である場合に、その有機溶剤を、0℃以下に冷却して用いる請求項3又は4に記載の合成ゴム溶液移送方法。
【請求項6】
前記高粘度の合成ゴム溶液が、脱溶工程を経てゴム素材になるものであり、前記低粘度の液体が、その脱溶工程で使用される蒸気と同じ成分である水である請求項2に記載の合成ゴム溶液移送方法。
【請求項7】
前記合成ゴム溶液が、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、スチレン・イソプレンゴム、エチレン・α−オレフィン共重合ゴム、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合ゴム、ブチルゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、及び水素添加スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体からなる重合体群から選ばれる重合体を含む重合溶液である請求項1〜6の何れか一項に記載の合成ゴム溶液移送方法。
【請求項8】
溶媒と混合されたモノマーを重合して、重合体を含む重合溶液を得る重合工程、
蒸気を作用させて、前記重合溶液から前記溶媒を除去する脱溶工程、
更に前記蒸気が液化した熱湯を分離して、重合体を得る分離工程、
前記熱湯を分離した重合体の水分を、更に除去する脱水工程及び乾燥工程、
及び、前記水分が除去された重合体を、所定の形状に成形する成形工程、
を有し、
前記重合溶液の移送手段として、請求項1〜7の何れか一項に記載の合成ゴム溶液移送方法を用いるゴム素材の製造方法。
【請求項9】
高粘度の合成ゴム溶液を移送する、移送用の配管と、
その移送用の配管に設けられた、1以上のノズルと、
前記高粘度の合成ゴム溶液に対し、相対的に低粘度の液体のための貯槽と、
その低粘度の液体の貯槽と、前記ノズルと、を接続する注入用の配管と、
を有する合成ゴム溶液移送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−107939(P2013−107939A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251959(P2011−251959)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】