合成床版橋用の埋め込み型枠構造
【課題】打設されるコンクリートによる埋め込み型枠自体のたわみを抑え、安定して設置できるとともに、型枠自体の使用量を抑えることができる合成床版橋用の埋め込み型枠構造を提供すること。
【解決手段】頂部開口部９の間隔に対応した天板型枠部材１１の下部に下部突出部１１ａを形成して脚型部材１３上の中間型枠部材１２の段差部１２ｂ上面より下方に突き出すようにするとともに、段差部１２ｂの先端面１２ｃ，１２ｃ間に位置させる。
これにより、中間型枠部材１２の内側へのたおれを防止すると同時に、天板型枠部材１１自体の厚みを下部突出部１１ａの分だけ厚くして、たわみ量を少なくし、埋め込み型枠の沈下量を抑える。
【解決手段】頂部開口部９の間隔に対応した天板型枠部材１１の下部に下部突出部１１ａを形成して脚型部材１３上の中間型枠部材１２の段差部１２ｂ上面より下方に突き出すようにするとともに、段差部１２ｂの先端面１２ｃ，１２ｃ間に位置させる。
これにより、中間型枠部材１２の内側へのたおれを防止すると同時に、天板型枠部材１１自体の厚みを下部突出部１１ａの分だけ厚くして、たわみ量を少なくし、埋め込み型枠の沈下量を抑える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は合成床版橋用の埋め込み型枠構造に関し、打設されるコンクリートによるたわみを抑え、安定して設置できるとともに、型枠自体の使用量を抑えることができるようにしたものである。
【背景技術】
【０００２】
鋼桁部と、この鋼桁部上に一体化して設けられる鉄筋コンクリート床版部とからなる合成床版橋では、打設するコンクリートの使用量を低減し、鋼桁部にかかる荷重や橋自体の軽量化を測るため、発泡樹脂製の埋め込み型枠を用いることが行われている。
【０００３】
このような合成床版橋としては、例えば特許文献1に開示されたものがあり、図６に示すように、鋼桁部Ａがフランジ１ａとウエブ１ｂとを備えたＴ型鋼１を所定の間隔で並列に配置して橋軸方向に延びるようにするとともに、Ｔ型鋼１の下端部のウエブ１ｂ，１ｂ間に底部鋼板２を溶接して構成され、鉄筋コンクリート床版部Ｃが、鋼桁部Ａの上部に補強用の鉄筋３を直交して配筋し、これら鉄筋３を埋設するようにコンクリート４を打設して構成されるが、コンクリート４の打設用の下部型枠として発泡樹脂製の埋め込み型枠５が用いられ、鋼桁部ＡのＴ型鋼１と底部鋼板２とで仕切られる空間部６に埋め込み型枠５としての発泡合成樹脂板を充填装着することで、コンクリート４の使用量を低減するようにしている。
【０００４】
また、特許文献２に開示された合成床版橋では、図７に示すように、下部型枠となる発泡樹脂製の埋め込み型枠５である発泡合成樹脂板の使用量を低減するとともに、鋼桁部Ａの高さの変化に容易に対応できるようにするため、発泡樹脂製の埋め込み型枠５を構成する発泡合成樹脂板を一対の脚部材５ａ，５ａと、脚部材５ａ，５ａ上に配置される一対の第１の支持部材５ｂ，５ｂと、これら第１の支持部材５ｂ，５ｂ間に水平に配置されるもう１つの第２の支持部材５ｃとで構成し、これらの発泡樹脂製の埋め込み型枠５で空間７を形成することで、埋め込み型枠５としての合成樹脂板自体の使用量を低減するようにし、脚部材５ａ，５ａの高さを切断するなどで変更することで、鋼桁部Ａの高さの変化に対応できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００５】
【特許文献１】実公平７−３９９２７ 号公報
【特許文献２】特開２００６−３１６５５７号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
このような発泡樹脂製の埋め込み型枠５では、床版コンクリート４を打設した際の埋め込み型枠５全体の沈下量（たわみ量）をできるだけ小さくすることが好ましく、１０ｍｍ以下にすることが望まれている。
この埋め込み型枠５の沈下量が１０ｍｍを超えて大きくなると、打設するコンクリート量の増加となるとともに、橋梁全体の重量増大を招いてしまうという問題がある。
また、埋め込み型枠５の設置時や補強用の鉄筋３の配筋時には、作業者が埋め込み型枠５の上に乗って作業する場合があり、沈下（たわみ）によって安定して作業ができなくなるという問題がある。
そこで、埋め込み型枠の沈下量を１０ｍｍ以下にするためには、脚部材５ａ，５ａの上に配置される一対の第１の支持部材５ｂ，５ｂの内側へのたおれを防止する必要があり、このため脚部材５ａ，５ａを厚くすると、発泡樹脂製の埋め込み型枠５の使用量が増大するという問題がある。
また、脚部材５ａ，５ａの厚さ自体も鋼桁部Ａの連結板を介して溶接する溶接部８の配置などの構造上の制約もあり、脚部材５ａ，５ａを厚く出来ない場合には、水平に配置する第２の支持部材５ｃの厚みを厚くして対応する必要があり、同様に、発泡樹脂製の埋め込み型枠５の使用量が増大するという問題がある。
【０００７】
本発明は、かかる従来技術における課題を解決するためなされたものであり、打設されるコンクリートによる埋め込み型枠自体のたわみを抑え、安定して設置できるとともに、型枠自体の使用量を抑えることができる合成床版橋用の埋め込み型枠構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
上記課題を解決するため、本発明の請求項１記載の合成床版橋用埋め込み型枠構造は、鋼桁部と、この鋼桁部上に設けられる鉄筋コンクリート床版部とからなる合成床版橋の鋼桁部に設置され打設されるコンクリートの下部型枠部となる発泡樹脂製の埋め込み型枠構造であって、鋼桁部の橋軸方向に延び底部および両側部が閉じられるとともに、両側部より狭い頂部開口部が形成された空間部に、前記頂部開口部の間隔に対応した天板型枠部材と、この天板型枠部材の両端部に配置され垂直部とこの下端から突き出す段差部を備え相対向して前記天板型枠部材を支持する一対の中間型枠部材と、これら中間型枠部材を前記底部上に支持するとともに、前記空間部の両側部に配置される一対の脚型枠部材とからなり、前記天板型枠部材に、前記相対向する中間型枠部材の段差部上面より下方に突き出して段差部先端面間に位置する下部突出部を形成する一方、前記脚型枠部材を、前記空間部に対応した高さに形成して設置して構成したことを特徴とするものである。
【０００９】
また、本発明の請求項２記載の合成床版橋用埋め込み型枠構造は、請求項１記載の構成に加え、前記天板型枠部材の上面に曲面状または平面状の上部突出部を形成してなることを特徴とするものである。
【００１０】
さらに、本発明の請求項３記載の合成床版橋用埋め込み型枠構造は、請求項１または２記載の構成に加え、前記天板型枠部材の下部突出部を、前記中間型枠部材の段差部下面と一平面をなすよう構成したことを特徴とするものである。
【００１１】
また、本発明の請求項４記載の合成床版橋用埋め込み型枠構造は、請求項１〜３のいずれかに記載の構成に加え、前記中間型枠部材の前記垂直部の幅ｂに対する段差部の突出幅Ｂを、０．２５ｂ〜１．０ｂの範囲とし、対応する前記天板型枠部材の前記下部突出部を広幅に形成して構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【００１２】
本発明の請求項１記載の合成床版橋用埋め込み型枠構造によれば、鋼桁部と、この鋼桁部上に設けられる鉄筋コンクリート床版部とからなる合成床版橋の鋼桁部に設置され打設されるコンクリートの下部型枠部となる発泡樹脂製の埋め込み型枠構造で、鋼桁部の橋軸方向に延び底部および両側部が閉じられるとともに、両側部より狭い頂部開口部が形成された空間部に、前記頂部開口部の間隔に対応した天板型枠部材と、この天板型枠部材の両端部に配置され垂直部とこの下端から突き出す段差部を備え相対向して前記天板型枠部材を支持する一対の中間型枠部材と、これら中間型枠部材を前記底部上に支持するとともに、前記空間部の両側部に配置される一対の脚型枠部材とからなり、前記天板型枠部材に、前記相対向する中間型枠部材の段差部上面より下方に突き出して段差部先端面間に位置する下部突出部を形成する一方、前記脚型枠部材を、前記空間部に対応した高さに形成して設置して構成したので、頂部開口部の間隔に対応した天板型枠部材の下部に下部突出部を形成して脚型部材上の中間型枠部材の段差部上面より下方に突き出すようにするとともに、段差部先端面間に位置させることで、中間型枠部材の内側へのたおれを防止することができると同時に、天板型枠部材自体の厚みが下部突出部の分だけ厚くなることで、たわみ量を少なくでき、埋め込み型枠の沈下量を抑えることができる。
【００１３】
また、本発明の請求項２記載の合成床版橋用埋め込み型枠構造によれば、前記天板型枠部材の上面に曲面状または平面状の上部突出部を形成したので、天板型枠部材自体の厚みが上部突出部の分だけ厚くなることで、一層天板型枠部材のたわみを抑えることができ、埋め込み型枠の沈下量を抑えることができる。
【００１４】
さらに、本発明の請求項３記載の合成床版橋用埋め込み型枠構造によれば、前記天板型枠部材の下部突出部を、前記中間型枠部材の段差部下面と一平面をなすよう構成したので、中間型枠部材の段差部の先端面間が下部突出部で完全に塞がれ、一層確実に中間型枠部材の内側へのたおれを防止して埋め込み型枠の沈下量を抑えることができる。
【００１５】
また、本発明の請求項４記載の合成床版橋用埋め込み型枠構造によれば、前記中間型枠部材の前記垂直部の幅ｂに対する段差部の突出幅Ｂを、０．２５ｂ〜１．０ｂの範囲とし、対応する前記天板型枠部材の前記下部突出部を広幅に形成して構成したので、このような範囲の中間型枠部材の垂直部の幅ｂに対する段差部の突出幅Ｂを確保することで、確実に中間型枠部材の段差部で天板型枠部材を支持することができると同時に、下部突出部の幅を広くすることで、一層たわみを抑えて沈下量を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【００１６】
【図１】本発明の合成床版橋用埋め込み型枠構造の一実施の形態にかかる橋軸直角方向の部分断面図および埋め込み型枠の拡大断面図である。
【図２】本発明の合成床版橋用埋め込み型枠構造の他の一実施の形態にかかる埋め込み型枠の拡大断面図である。
【図３】本発明の合成床版橋用埋め込み型枠構造の一実施の形態にかかり、それぞれ埋め込み型枠の拡大断面図である。
【図４】本発明の合成床版橋用埋め込み型枠構造の他の一実施の形態にかかり、それぞれ埋め込み型枠の拡大断面図である。
【図５】本発明の合成床版橋用埋め込み型枠構造の実施例および比較例にかかり、（ａ）はモデルの寸法および測定点の説明図、（ｂ）は天板型枠部材の説明図、（ｃ）は中間型枠部材の説明図である。
【図６】従来の合成床版橋用埋め込み型枠構造の橋軸直角方向の部分断面図である。
【図７】従来の合成床版橋用埋め込み型枠構造の橋軸直角方向の部分断面図および埋め込み型枠の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【００１７】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細を説明する。
本発明における合成床版橋用の埋め込み型枠構造が適用される合成床版橋は、鋼桁部Ａと、この鋼桁部Ａ上に一体化して設けられる鉄筋コンクリート床版部Ｃとから構成されるものであり、例えば図１に示すように、鋼桁部Ａがフランジ１ａとウエブ１ｂとを備えた橋軸方向に延びるＴ型鋼１を所定の間隔で並列に配置するとともに、Ｔ型鋼１の下端部のウエブ１ｂ，１ｂ間に底部鋼板２を溶接して構成され、鉄筋コンクリート床版部Ｃが、鋼桁部Ａの上部に補強用の鉄筋３を直交して配筋し、これら鉄筋３を埋設するようにコンクリート４を打設して構成される。
【００１８】
このような合成床版橋では、コンクリート４を打設する場合の使用量を削減し、鋼桁部Ａへの荷重の低減を図り、橋梁自体の軽量化のため、鋼桁部ＡのＴ型鋼１、１と底部鋼板２とで仕切られる空間部６ごとに埋め込み型枠としての発泡合成樹脂板を充填装着するようにしている。
【００１９】
この発明は、このような合成床版橋で用いられるコンクリートの打設用の下部型枠として鋼桁部Ａの空間部６ごとに充填装着される発泡合成樹脂板の構造（形状及び配置）が合成床版橋用の埋め込み型枠構造１０であり、鉄筋コンクリート床版部Ｃは、上記の鉄筋の配筋構造に限らず、他の配筋構造やコンクリートの補強構造であっても良い。
【００２０】
この合成床版橋用の埋め込み型枠構造１０では、コンクリートの下部型枠となる発泡樹脂製の埋め込み型枠として発泡合成樹脂板が用いられ、形状の異なる３種類のものを５個組合わせて空間部６の横断面上（図１における紙面上）に配置され、コンクリートと接する上面がコンクリートが流下しないよう連続するように構成される。
すなわち、鋼桁部Ａの空間部６の横断面上の頂部開口部９の間隔に対応した幅の天板型枠部材１１と、この天板型枠部材１１の両端部に配置され垂直部１２ａとこの下端から突き出す段差部１２ｂを備え相対向して天板型枠部材１１を支持する一対の中間型枠部材１２，１２と、これら中間型枠部材１２，１２を底部鋼板２上に支持するとともに、空間部６の両側部に配置される一対の脚型枠部材１３，１３との３種類５個からなる。
【００２１】
そして、この天板型枠部材１１には、下部突出部１１ａが形成され、相対向する中間型枠部材１２，１２の段差部１２ｂの上面より下方に突き出して段差部１２ｂの先端面１２ｃ，１２ｃ間に位置するとともに、この下部突出部１１ａが段差部１２ｂの下面と一平面をなすように形成してある。
したがって、天板型枠部材１１と両側部を支持する一対のＬ字状の中間型枠部材１２,１２とで、中間型枠部材１２の垂直部１２ａの高さ（天板型枠部材１１の下部突出部を備えた部分の全高さ）で、天板型枠部材１１の幅と２つの垂直部の幅を加えた全幅（鋼桁部Ａの空間部６の幅）の矩形に組み合わされた発泡合成樹脂板が構成されることになる。
【００２２】
なお、天板型枠部材１１に設ける下部突出部１１ａは、図１に示したように、中間型枠部材１２の段差部１２ｂの下面まで突出すように形成する場合のほか、図２に示すように、段差部１２ｂの中間部までの任意の突出量に形成したものであっても良い。
【００２３】
そして、これら天板型枠部材１１および両側部の中間型枠部材１２,１２を空間部６の所定高さに設置するため一対の脚型枠部材１３，１３が用いられ、空間部６の内側面に配置される。
なお、これら一対の脚型枠部材１３，１３は空間部６に配置する場合に内側面に接するように配置しても良く、こうすることで、脚型枠部材１３，１３の倒れなどを防止して安定して配置することができる。
これら脚型枠部材１３,１３は、鋼桁部Ａの空間部６の高さが橋梁の湾曲形状に対応して橋軸方向に変化しているのが一般的であり、この高さの変化に対応して切断することで、天板型枠部材１１の上面が所定の位置となるようにする。
【００２４】
なお、これら天板型枠部材１１、一対の中間型枠部材１２,１２および一対の脚型枠部材１３，１３の橋軸方向（図１の紙面直角方向）の長さは、作業に支障がなく、成形にも支障のないようにすれば良く、特に限定するものでない。
また、これら天板型枠部材１１、一対の中間型枠部材１２,１２および一対の脚型枠部材１３，１３は、例えば発泡スチロールで形成されるが、これ以外の発泡合成樹脂を用いても良く、打設時のコンクリートの荷重を支持できるものであれば良い。
【００２５】
このような埋め込み型枠構造１０では、鋼桁部Ａの空間部６の底部鋼板２上に脚型枠部材１３,１３を空間部６の両側の内側面に配置した後、これら脚型枠部材１３,１３上に中間型枠部材１２,１２をそれぞれ載せるようにし、さらに、１対の中間型枠部材１２,１２の垂直部１２ａの間の段差部１２ｂ上およびその先端面１２ｃ，１２ｃ間に天板型枠部材１１を装着する。
【００２６】
この場合、天板型枠部材１１を空間部６の頂部開口部９の開口幅に対応した幅としてあることから、頂部開口部９から天板型枠部材１１を中間型枠部材１２,１２の間に鋼桁部Ａと何ら干渉することなく落とし込むようにして充填装着することができる。
これにより、鋼桁部Ａの空間部６の上部のコンクリートと接する上面が天板型枠部材１１および一対の中間型枠部材１２,１２で連続し、コンクリートが流下しないようにすることができる。
【００２７】
このような合成床版橋用の埋め込み型枠構造１０によれば、天板型枠部材１１に下面から下方に突出した下部突出部１１ａを形成したので、埋め込み型枠自体の総高さを変えずに、中間型枠部材１２の段差部１２ｂの先端面１２ｃ間の隙間を利用して天板型枠部材１１を厚くすることができ、これによって天板型枠部材１１のたわみを減少することができるとともに、脚型枠部材１３にかかる荷重を分散することで、埋め込み型枠全体の沈下量を減少することができる。
これにより、埋め込み型枠自体の発泡合成樹脂の使用量の増大を極力抑えることができるとともに、たわみを抑えて安定した埋め込み型枠構造とすることができ、この埋め込み型枠上で作業者が作業することもできる。
【００２８】
このような合成床版橋用の埋め込み型枠構造１０での天板型枠部材１１のたわみを一層防止するために、次のようにすることもできる。
すなわち、天板型枠部材１１の上面に、図３（ａ）に示すように、上方に突き出す曲面状の上部突出部１１ｂを形成することで中央を厚くしてたわみを一層確実に抑えるとともに、打設するコンクリートを両側隅部に流入し易くすることができる。
【００２９】
なお、上部突出部１１ｂは、図３（ｂ）に示すように、矩形の断面形状として構成するようにしても良く、上部突出部１１ｂによる厚さの増大によりたわみを減少することができ、例えば高さを１０〜５０ｍｍ程度とすれば良い。
なお、天板型枠部材１１と中間型枠部材１２とが接する接触部上面を養生テープでシールして打設するコンクリートのノロが接触部に浸入しないようする必要から、この上部突出部１１ｂを設ける場合には、上部突出部１１ｂの両側に１０〜３０ｍｍの平坦部を形成するようにすることが好ましい。
また、このような上部突出部１１ｂを設ける場合にも下部突出部１１ａの突出量は、大きい方が厚くなりたわみを抑えることができるものの、大きくても小さくても良い。
【００３０】
さらに、このような合成床版橋用の埋め込み型枠構造１０での天板型枠部材１１のたわみを一層防止するために、次のようにすることもできる。
すなわち、天板型枠部材１１の下部突出部１１ａの幅を広くすることで、たわみを一層抑えるようにすることができ、図４（ａ），（ｂ）に示すように、中間型枠部材１２の垂直部１２ａから突出する段差部１２ｂの突出量を小さくして短くする一方、短くした段差部１２ｂの先端面１２ｃ，１２ｃ間の隙間を広くしてこの広くした隙間に対応する下部突出部１１ａを形成するようにして幅を広くする。
このような中間型枠部材１２の垂直部１２ａからの段差部１２ｂの突出量は、垂直部１２ａの幅をｂとし、この垂直部１２ａからの突出幅をＢとした場合に、
０．２５ｂ≦Ｂ≦１．０ｂの範囲とすれば良く、垂直部１２ａの幅ｂの１／４の突出幅Ｂから垂直部１２ａの幅と同一の突出幅Ｂの範囲とすることで、段差部１２ｂ，１２ｂ間に天板型枠部材１１を確実に支持することができ、しかも天板型枠部材１１の下部突出部１１ａの幅を広げると同時に厚くしてたわみを抑えることができる。
【実施例】
【００３１】
以下、本発明の実施例を、基準とした比較例とともに、具体的に説明するが、本願発明は実施例に限定されるものでない。
ここでは、図５（ａ）に示すように、実物大の埋め込み型枠のモデルを作成し、打設するコンクリートに代えておもりを載せることで等分布荷重を加え、埋め込み型枠の沈下量を測定した。
埋め込み型枠を充填装着する鋼桁部として鋼桁の内寸を９００ｍｍ、コンクリートの打設面を底部鋼板から１２５５ｍｍ、脚型枠部材の高さを底部鋼板から１０００ｍｍとした。また、鋼桁部の頂部開口部の幅を５８０ｍｍとし、これにより、天板型枠部材の幅を５８０ｍｍとした。
埋め込み型枠の沈下量は、天板型枠部材の下面の幅方向中央で測定し、基準となる比較例の沈下量を１００とし、これに対する比（％）で沈下量の減少を表した（結果は表１参照）。
また、脚部型枠部材の外観の変形を目視し、次の３つに分類して評価した（結果は表１参照）。
×：角部が圧縮され変形した状態、
○：角部が若干圧縮され変形したが通常の使用では問題とならない状態、
◎：変形がほとんどない状態
【００３２】
（基準となる比較例１）
天板型枠部材の厚さを１２０ｍｍとした。これにより、中間型枠部材の垂直部の幅ｂは１６０ｍｍとなり、段差部の突出幅Ｂを１６０ｍｍとし、これを基準寸法の中間型枠部材とした（図５（ｂ）の１段目および同図（ｃ）の上段参照）。
この基準となる比較例１の沈下量を測定し、表１に示すように、その値を１００とした。
脚部型枠部材の外観は、×であり、角部が圧縮され変形した状態であった。
【００３３】
（実施例１）
実施例１では、天板型枠部材に下部突出部を形成し、その厚さを１３５ｍｍとし、その幅は中間型枠部材の段差部の突出幅Ｂを１６０ｍｍとしてあるの対応して２６０ｍｍとした（図５（ｂ）の２段目参照）。
この実施例１では、表１に示すように、埋め込み型枠の沈下量が−２４％（基準に比べ）であり、脚部型枠部材の外観は、○であり、角部が若干圧縮され変形したが通常の使用では問題とならない状態であった。
【００３４】
（実施例２）
実施例２では、実施例１の天板型枠部材の上面に曲面状の上部突出部を追加した以外、実施例１と同一とした（図５（ｂ）の３段目参照）。
この実施例２では、表１に示すように、埋め込み型枠の沈下量が−２６％（基準に比べ）であり、脚部型枠部材の外観は、○であり、角部が若干圧縮され変形したが通常の使用では問題とならない状態であった。
【００３５】
（実施例３）
実施例３では、実施例１の天板型枠部材の上面に矩形の上部突出部を追加し、その高さを２５ｍｍ、両側の平坦部を１５ｍｍ（幅は５５０ｍｍとなる）とした以外、実施例１と同一とした（図５（ｂ）の４段目参照）。
この実施例３では、表１に示すように、埋め込み型枠の沈下量が−２６％（基準に比べ）であり、脚部型枠部材の外観は、○であり、角部が若干圧縮され変形したが通常の使用では問題とならない状態であった。
【００３６】
（実施例４）
実施例４では、実施例１の中間型枠部材の段差部の突出幅Ｂを垂直部の幅ｂの０．５倍（０．５ｂ）と短くすることで、天板型枠部材の下部突出部の幅を１６０ｍｍ広くして４２０ｍｍの幅とした以外、実施例１と同一とした（図５（ｃ）の下段参照）。
この実施例４では、表１に示すように、埋め込み型枠の沈下量が−２９％（基準に比べ）であり、脚部型枠部材の外観は、○であり、角部が若干圧縮され変形したが通常の使用では問題とならない状態であった。
【００３７】
（実施例５）
実施例５では、実施例１の中間型枠部材の段差部の突出幅Ｂを垂直部の幅ｂの０．２５倍（０．２５ｂ）と短くすることで、天板型枠部材の下部突出部の幅を２４０ｍｍ広くして５００ｍｍの幅とした以外、実施例１と同一とした（図５（ｃ）の下段参照）。
この実施例５では、表１に示すように、埋め込み型枠の沈下量が−４３％（基準に比べ）であり、脚部型枠部材の外観は、◎であり、変形がほとんどない状態であった。
【００３８】
【表１】
【符号の説明】
【００３９】
Ａ 鋼桁部
Ｃ 鉄筋コンクリート床版部
１ Ｔ型鋼
１ａ フランジ
１ｂ ウエブ
２ 底部鋼板
３ 鉄筋
４ コンクリート
５ 埋め込み型枠
６ 空間部（鋼桁部の埋め込み型枠の装着部）
７ 空間（埋め込み型枠の中空部）
８ 溶接部
９ 頂部開口部
１０ 埋め込み型枠構造
１１ 天板型枠部材
１１ａ 下部突出部
１１ｂ 上部突出部
１２ 中間型枠部材
１２ａ 垂直部
１２ｂ 段差部
１２ｃ 先端面（段差部）
１３ 脚型枠部材
Ｂ 突出幅（段差部）
ｂ 垂直部の幅
【技術分野】
【０００１】
本発明は合成床版橋用の埋め込み型枠構造に関し、打設されるコンクリートによるたわみを抑え、安定して設置できるとともに、型枠自体の使用量を抑えることができるようにしたものである。
【背景技術】
【０００２】
鋼桁部と、この鋼桁部上に一体化して設けられる鉄筋コンクリート床版部とからなる合成床版橋では、打設するコンクリートの使用量を低減し、鋼桁部にかかる荷重や橋自体の軽量化を測るため、発泡樹脂製の埋め込み型枠を用いることが行われている。
【０００３】
このような合成床版橋としては、例えば特許文献1に開示されたものがあり、図６に示すように、鋼桁部Ａがフランジ１ａとウエブ１ｂとを備えたＴ型鋼１を所定の間隔で並列に配置して橋軸方向に延びるようにするとともに、Ｔ型鋼１の下端部のウエブ１ｂ，１ｂ間に底部鋼板２を溶接して構成され、鉄筋コンクリート床版部Ｃが、鋼桁部Ａの上部に補強用の鉄筋３を直交して配筋し、これら鉄筋３を埋設するようにコンクリート４を打設して構成されるが、コンクリート４の打設用の下部型枠として発泡樹脂製の埋め込み型枠５が用いられ、鋼桁部ＡのＴ型鋼１と底部鋼板２とで仕切られる空間部６に埋め込み型枠５としての発泡合成樹脂板を充填装着することで、コンクリート４の使用量を低減するようにしている。
【０００４】
また、特許文献２に開示された合成床版橋では、図７に示すように、下部型枠となる発泡樹脂製の埋め込み型枠５である発泡合成樹脂板の使用量を低減するとともに、鋼桁部Ａの高さの変化に容易に対応できるようにするため、発泡樹脂製の埋め込み型枠５を構成する発泡合成樹脂板を一対の脚部材５ａ，５ａと、脚部材５ａ，５ａ上に配置される一対の第１の支持部材５ｂ，５ｂと、これら第１の支持部材５ｂ，５ｂ間に水平に配置されるもう１つの第２の支持部材５ｃとで構成し、これらの発泡樹脂製の埋め込み型枠５で空間７を形成することで、埋め込み型枠５としての合成樹脂板自体の使用量を低減するようにし、脚部材５ａ，５ａの高さを切断するなどで変更することで、鋼桁部Ａの高さの変化に対応できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００５】
【特許文献１】実公平７−３９９２７ 号公報
【特許文献２】特開２００６−３１６５５７号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
このような発泡樹脂製の埋め込み型枠５では、床版コンクリート４を打設した際の埋め込み型枠５全体の沈下量（たわみ量）をできるだけ小さくすることが好ましく、１０ｍｍ以下にすることが望まれている。
この埋め込み型枠５の沈下量が１０ｍｍを超えて大きくなると、打設するコンクリート量の増加となるとともに、橋梁全体の重量増大を招いてしまうという問題がある。
また、埋め込み型枠５の設置時や補強用の鉄筋３の配筋時には、作業者が埋め込み型枠５の上に乗って作業する場合があり、沈下（たわみ）によって安定して作業ができなくなるという問題がある。
そこで、埋め込み型枠の沈下量を１０ｍｍ以下にするためには、脚部材５ａ，５ａの上に配置される一対の第１の支持部材５ｂ，５ｂの内側へのたおれを防止する必要があり、このため脚部材５ａ，５ａを厚くすると、発泡樹脂製の埋め込み型枠５の使用量が増大するという問題がある。
また、脚部材５ａ，５ａの厚さ自体も鋼桁部Ａの連結板を介して溶接する溶接部８の配置などの構造上の制約もあり、脚部材５ａ，５ａを厚く出来ない場合には、水平に配置する第２の支持部材５ｃの厚みを厚くして対応する必要があり、同様に、発泡樹脂製の埋め込み型枠５の使用量が増大するという問題がある。
【０００７】
本発明は、かかる従来技術における課題を解決するためなされたものであり、打設されるコンクリートによる埋め込み型枠自体のたわみを抑え、安定して設置できるとともに、型枠自体の使用量を抑えることができる合成床版橋用の埋め込み型枠構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
上記課題を解決するため、本発明の請求項１記載の合成床版橋用埋め込み型枠構造は、鋼桁部と、この鋼桁部上に設けられる鉄筋コンクリート床版部とからなる合成床版橋の鋼桁部に設置され打設されるコンクリートの下部型枠部となる発泡樹脂製の埋め込み型枠構造であって、鋼桁部の橋軸方向に延び底部および両側部が閉じられるとともに、両側部より狭い頂部開口部が形成された空間部に、前記頂部開口部の間隔に対応した天板型枠部材と、この天板型枠部材の両端部に配置され垂直部とこの下端から突き出す段差部を備え相対向して前記天板型枠部材を支持する一対の中間型枠部材と、これら中間型枠部材を前記底部上に支持するとともに、前記空間部の両側部に配置される一対の脚型枠部材とからなり、前記天板型枠部材に、前記相対向する中間型枠部材の段差部上面より下方に突き出して段差部先端面間に位置する下部突出部を形成する一方、前記脚型枠部材を、前記空間部に対応した高さに形成して設置して構成したことを特徴とするものである。
【０００９】
また、本発明の請求項２記載の合成床版橋用埋め込み型枠構造は、請求項１記載の構成に加え、前記天板型枠部材の上面に曲面状または平面状の上部突出部を形成してなることを特徴とするものである。
【００１０】
さらに、本発明の請求項３記載の合成床版橋用埋め込み型枠構造は、請求項１または２記載の構成に加え、前記天板型枠部材の下部突出部を、前記中間型枠部材の段差部下面と一平面をなすよう構成したことを特徴とするものである。
【００１１】
また、本発明の請求項４記載の合成床版橋用埋め込み型枠構造は、請求項１〜３のいずれかに記載の構成に加え、前記中間型枠部材の前記垂直部の幅ｂに対する段差部の突出幅Ｂを、０．２５ｂ〜１．０ｂの範囲とし、対応する前記天板型枠部材の前記下部突出部を広幅に形成して構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【００１２】
本発明の請求項１記載の合成床版橋用埋め込み型枠構造によれば、鋼桁部と、この鋼桁部上に設けられる鉄筋コンクリート床版部とからなる合成床版橋の鋼桁部に設置され打設されるコンクリートの下部型枠部となる発泡樹脂製の埋め込み型枠構造で、鋼桁部の橋軸方向に延び底部および両側部が閉じられるとともに、両側部より狭い頂部開口部が形成された空間部に、前記頂部開口部の間隔に対応した天板型枠部材と、この天板型枠部材の両端部に配置され垂直部とこの下端から突き出す段差部を備え相対向して前記天板型枠部材を支持する一対の中間型枠部材と、これら中間型枠部材を前記底部上に支持するとともに、前記空間部の両側部に配置される一対の脚型枠部材とからなり、前記天板型枠部材に、前記相対向する中間型枠部材の段差部上面より下方に突き出して段差部先端面間に位置する下部突出部を形成する一方、前記脚型枠部材を、前記空間部に対応した高さに形成して設置して構成したので、頂部開口部の間隔に対応した天板型枠部材の下部に下部突出部を形成して脚型部材上の中間型枠部材の段差部上面より下方に突き出すようにするとともに、段差部先端面間に位置させることで、中間型枠部材の内側へのたおれを防止することができると同時に、天板型枠部材自体の厚みが下部突出部の分だけ厚くなることで、たわみ量を少なくでき、埋め込み型枠の沈下量を抑えることができる。
【００１３】
また、本発明の請求項２記載の合成床版橋用埋め込み型枠構造によれば、前記天板型枠部材の上面に曲面状または平面状の上部突出部を形成したので、天板型枠部材自体の厚みが上部突出部の分だけ厚くなることで、一層天板型枠部材のたわみを抑えることができ、埋め込み型枠の沈下量を抑えることができる。
【００１４】
さらに、本発明の請求項３記載の合成床版橋用埋め込み型枠構造によれば、前記天板型枠部材の下部突出部を、前記中間型枠部材の段差部下面と一平面をなすよう構成したので、中間型枠部材の段差部の先端面間が下部突出部で完全に塞がれ、一層確実に中間型枠部材の内側へのたおれを防止して埋め込み型枠の沈下量を抑えることができる。
【００１５】
また、本発明の請求項４記載の合成床版橋用埋め込み型枠構造によれば、前記中間型枠部材の前記垂直部の幅ｂに対する段差部の突出幅Ｂを、０．２５ｂ〜１．０ｂの範囲とし、対応する前記天板型枠部材の前記下部突出部を広幅に形成して構成したので、このような範囲の中間型枠部材の垂直部の幅ｂに対する段差部の突出幅Ｂを確保することで、確実に中間型枠部材の段差部で天板型枠部材を支持することができると同時に、下部突出部の幅を広くすることで、一層たわみを抑えて沈下量を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【００１６】
【図１】本発明の合成床版橋用埋め込み型枠構造の一実施の形態にかかる橋軸直角方向の部分断面図および埋め込み型枠の拡大断面図である。
【図２】本発明の合成床版橋用埋め込み型枠構造の他の一実施の形態にかかる埋め込み型枠の拡大断面図である。
【図３】本発明の合成床版橋用埋め込み型枠構造の一実施の形態にかかり、それぞれ埋め込み型枠の拡大断面図である。
【図４】本発明の合成床版橋用埋め込み型枠構造の他の一実施の形態にかかり、それぞれ埋め込み型枠の拡大断面図である。
【図５】本発明の合成床版橋用埋め込み型枠構造の実施例および比較例にかかり、（ａ）はモデルの寸法および測定点の説明図、（ｂ）は天板型枠部材の説明図、（ｃ）は中間型枠部材の説明図である。
【図６】従来の合成床版橋用埋め込み型枠構造の橋軸直角方向の部分断面図である。
【図７】従来の合成床版橋用埋め込み型枠構造の橋軸直角方向の部分断面図および埋め込み型枠の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【００１７】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細を説明する。
本発明における合成床版橋用の埋め込み型枠構造が適用される合成床版橋は、鋼桁部Ａと、この鋼桁部Ａ上に一体化して設けられる鉄筋コンクリート床版部Ｃとから構成されるものであり、例えば図１に示すように、鋼桁部Ａがフランジ１ａとウエブ１ｂとを備えた橋軸方向に延びるＴ型鋼１を所定の間隔で並列に配置するとともに、Ｔ型鋼１の下端部のウエブ１ｂ，１ｂ間に底部鋼板２を溶接して構成され、鉄筋コンクリート床版部Ｃが、鋼桁部Ａの上部に補強用の鉄筋３を直交して配筋し、これら鉄筋３を埋設するようにコンクリート４を打設して構成される。
【００１８】
このような合成床版橋では、コンクリート４を打設する場合の使用量を削減し、鋼桁部Ａへの荷重の低減を図り、橋梁自体の軽量化のため、鋼桁部ＡのＴ型鋼１、１と底部鋼板２とで仕切られる空間部６ごとに埋め込み型枠としての発泡合成樹脂板を充填装着するようにしている。
【００１９】
この発明は、このような合成床版橋で用いられるコンクリートの打設用の下部型枠として鋼桁部Ａの空間部６ごとに充填装着される発泡合成樹脂板の構造（形状及び配置）が合成床版橋用の埋め込み型枠構造１０であり、鉄筋コンクリート床版部Ｃは、上記の鉄筋の配筋構造に限らず、他の配筋構造やコンクリートの補強構造であっても良い。
【００２０】
この合成床版橋用の埋め込み型枠構造１０では、コンクリートの下部型枠となる発泡樹脂製の埋め込み型枠として発泡合成樹脂板が用いられ、形状の異なる３種類のものを５個組合わせて空間部６の横断面上（図１における紙面上）に配置され、コンクリートと接する上面がコンクリートが流下しないよう連続するように構成される。
すなわち、鋼桁部Ａの空間部６の横断面上の頂部開口部９の間隔に対応した幅の天板型枠部材１１と、この天板型枠部材１１の両端部に配置され垂直部１２ａとこの下端から突き出す段差部１２ｂを備え相対向して天板型枠部材１１を支持する一対の中間型枠部材１２，１２と、これら中間型枠部材１２，１２を底部鋼板２上に支持するとともに、空間部６の両側部に配置される一対の脚型枠部材１３，１３との３種類５個からなる。
【００２１】
そして、この天板型枠部材１１には、下部突出部１１ａが形成され、相対向する中間型枠部材１２，１２の段差部１２ｂの上面より下方に突き出して段差部１２ｂの先端面１２ｃ，１２ｃ間に位置するとともに、この下部突出部１１ａが段差部１２ｂの下面と一平面をなすように形成してある。
したがって、天板型枠部材１１と両側部を支持する一対のＬ字状の中間型枠部材１２,１２とで、中間型枠部材１２の垂直部１２ａの高さ（天板型枠部材１１の下部突出部を備えた部分の全高さ）で、天板型枠部材１１の幅と２つの垂直部の幅を加えた全幅（鋼桁部Ａの空間部６の幅）の矩形に組み合わされた発泡合成樹脂板が構成されることになる。
【００２２】
なお、天板型枠部材１１に設ける下部突出部１１ａは、図１に示したように、中間型枠部材１２の段差部１２ｂの下面まで突出すように形成する場合のほか、図２に示すように、段差部１２ｂの中間部までの任意の突出量に形成したものであっても良い。
【００２３】
そして、これら天板型枠部材１１および両側部の中間型枠部材１２,１２を空間部６の所定高さに設置するため一対の脚型枠部材１３，１３が用いられ、空間部６の内側面に配置される。
なお、これら一対の脚型枠部材１３，１３は空間部６に配置する場合に内側面に接するように配置しても良く、こうすることで、脚型枠部材１３，１３の倒れなどを防止して安定して配置することができる。
これら脚型枠部材１３,１３は、鋼桁部Ａの空間部６の高さが橋梁の湾曲形状に対応して橋軸方向に変化しているのが一般的であり、この高さの変化に対応して切断することで、天板型枠部材１１の上面が所定の位置となるようにする。
【００２４】
なお、これら天板型枠部材１１、一対の中間型枠部材１２,１２および一対の脚型枠部材１３，１３の橋軸方向（図１の紙面直角方向）の長さは、作業に支障がなく、成形にも支障のないようにすれば良く、特に限定するものでない。
また、これら天板型枠部材１１、一対の中間型枠部材１２,１２および一対の脚型枠部材１３，１３は、例えば発泡スチロールで形成されるが、これ以外の発泡合成樹脂を用いても良く、打設時のコンクリートの荷重を支持できるものであれば良い。
【００２５】
このような埋め込み型枠構造１０では、鋼桁部Ａの空間部６の底部鋼板２上に脚型枠部材１３,１３を空間部６の両側の内側面に配置した後、これら脚型枠部材１３,１３上に中間型枠部材１２,１２をそれぞれ載せるようにし、さらに、１対の中間型枠部材１２,１２の垂直部１２ａの間の段差部１２ｂ上およびその先端面１２ｃ，１２ｃ間に天板型枠部材１１を装着する。
【００２６】
この場合、天板型枠部材１１を空間部６の頂部開口部９の開口幅に対応した幅としてあることから、頂部開口部９から天板型枠部材１１を中間型枠部材１２,１２の間に鋼桁部Ａと何ら干渉することなく落とし込むようにして充填装着することができる。
これにより、鋼桁部Ａの空間部６の上部のコンクリートと接する上面が天板型枠部材１１および一対の中間型枠部材１２,１２で連続し、コンクリートが流下しないようにすることができる。
【００２７】
このような合成床版橋用の埋め込み型枠構造１０によれば、天板型枠部材１１に下面から下方に突出した下部突出部１１ａを形成したので、埋め込み型枠自体の総高さを変えずに、中間型枠部材１２の段差部１２ｂの先端面１２ｃ間の隙間を利用して天板型枠部材１１を厚くすることができ、これによって天板型枠部材１１のたわみを減少することができるとともに、脚型枠部材１３にかかる荷重を分散することで、埋め込み型枠全体の沈下量を減少することができる。
これにより、埋め込み型枠自体の発泡合成樹脂の使用量の増大を極力抑えることができるとともに、たわみを抑えて安定した埋め込み型枠構造とすることができ、この埋め込み型枠上で作業者が作業することもできる。
【００２８】
このような合成床版橋用の埋め込み型枠構造１０での天板型枠部材１１のたわみを一層防止するために、次のようにすることもできる。
すなわち、天板型枠部材１１の上面に、図３（ａ）に示すように、上方に突き出す曲面状の上部突出部１１ｂを形成することで中央を厚くしてたわみを一層確実に抑えるとともに、打設するコンクリートを両側隅部に流入し易くすることができる。
【００２９】
なお、上部突出部１１ｂは、図３（ｂ）に示すように、矩形の断面形状として構成するようにしても良く、上部突出部１１ｂによる厚さの増大によりたわみを減少することができ、例えば高さを１０〜５０ｍｍ程度とすれば良い。
なお、天板型枠部材１１と中間型枠部材１２とが接する接触部上面を養生テープでシールして打設するコンクリートのノロが接触部に浸入しないようする必要から、この上部突出部１１ｂを設ける場合には、上部突出部１１ｂの両側に１０〜３０ｍｍの平坦部を形成するようにすることが好ましい。
また、このような上部突出部１１ｂを設ける場合にも下部突出部１１ａの突出量は、大きい方が厚くなりたわみを抑えることができるものの、大きくても小さくても良い。
【００３０】
さらに、このような合成床版橋用の埋め込み型枠構造１０での天板型枠部材１１のたわみを一層防止するために、次のようにすることもできる。
すなわち、天板型枠部材１１の下部突出部１１ａの幅を広くすることで、たわみを一層抑えるようにすることができ、図４（ａ），（ｂ）に示すように、中間型枠部材１２の垂直部１２ａから突出する段差部１２ｂの突出量を小さくして短くする一方、短くした段差部１２ｂの先端面１２ｃ，１２ｃ間の隙間を広くしてこの広くした隙間に対応する下部突出部１１ａを形成するようにして幅を広くする。
このような中間型枠部材１２の垂直部１２ａからの段差部１２ｂの突出量は、垂直部１２ａの幅をｂとし、この垂直部１２ａからの突出幅をＢとした場合に、
０．２５ｂ≦Ｂ≦１．０ｂの範囲とすれば良く、垂直部１２ａの幅ｂの１／４の突出幅Ｂから垂直部１２ａの幅と同一の突出幅Ｂの範囲とすることで、段差部１２ｂ，１２ｂ間に天板型枠部材１１を確実に支持することができ、しかも天板型枠部材１１の下部突出部１１ａの幅を広げると同時に厚くしてたわみを抑えることができる。
【実施例】
【００３１】
以下、本発明の実施例を、基準とした比較例とともに、具体的に説明するが、本願発明は実施例に限定されるものでない。
ここでは、図５（ａ）に示すように、実物大の埋め込み型枠のモデルを作成し、打設するコンクリートに代えておもりを載せることで等分布荷重を加え、埋め込み型枠の沈下量を測定した。
埋め込み型枠を充填装着する鋼桁部として鋼桁の内寸を９００ｍｍ、コンクリートの打設面を底部鋼板から１２５５ｍｍ、脚型枠部材の高さを底部鋼板から１０００ｍｍとした。また、鋼桁部の頂部開口部の幅を５８０ｍｍとし、これにより、天板型枠部材の幅を５８０ｍｍとした。
埋め込み型枠の沈下量は、天板型枠部材の下面の幅方向中央で測定し、基準となる比較例の沈下量を１００とし、これに対する比（％）で沈下量の減少を表した（結果は表１参照）。
また、脚部型枠部材の外観の変形を目視し、次の３つに分類して評価した（結果は表１参照）。
×：角部が圧縮され変形した状態、
○：角部が若干圧縮され変形したが通常の使用では問題とならない状態、
◎：変形がほとんどない状態
【００３２】
（基準となる比較例１）
天板型枠部材の厚さを１２０ｍｍとした。これにより、中間型枠部材の垂直部の幅ｂは１６０ｍｍとなり、段差部の突出幅Ｂを１６０ｍｍとし、これを基準寸法の中間型枠部材とした（図５（ｂ）の１段目および同図（ｃ）の上段参照）。
この基準となる比較例１の沈下量を測定し、表１に示すように、その値を１００とした。
脚部型枠部材の外観は、×であり、角部が圧縮され変形した状態であった。
【００３３】
（実施例１）
実施例１では、天板型枠部材に下部突出部を形成し、その厚さを１３５ｍｍとし、その幅は中間型枠部材の段差部の突出幅Ｂを１６０ｍｍとしてあるの対応して２６０ｍｍとした（図５（ｂ）の２段目参照）。
この実施例１では、表１に示すように、埋め込み型枠の沈下量が−２４％（基準に比べ）であり、脚部型枠部材の外観は、○であり、角部が若干圧縮され変形したが通常の使用では問題とならない状態であった。
【００３４】
（実施例２）
実施例２では、実施例１の天板型枠部材の上面に曲面状の上部突出部を追加した以外、実施例１と同一とした（図５（ｂ）の３段目参照）。
この実施例２では、表１に示すように、埋め込み型枠の沈下量が−２６％（基準に比べ）であり、脚部型枠部材の外観は、○であり、角部が若干圧縮され変形したが通常の使用では問題とならない状態であった。
【００３５】
（実施例３）
実施例３では、実施例１の天板型枠部材の上面に矩形の上部突出部を追加し、その高さを２５ｍｍ、両側の平坦部を１５ｍｍ（幅は５５０ｍｍとなる）とした以外、実施例１と同一とした（図５（ｂ）の４段目参照）。
この実施例３では、表１に示すように、埋め込み型枠の沈下量が−２６％（基準に比べ）であり、脚部型枠部材の外観は、○であり、角部が若干圧縮され変形したが通常の使用では問題とならない状態であった。
【００３６】
（実施例４）
実施例４では、実施例１の中間型枠部材の段差部の突出幅Ｂを垂直部の幅ｂの０．５倍（０．５ｂ）と短くすることで、天板型枠部材の下部突出部の幅を１６０ｍｍ広くして４２０ｍｍの幅とした以外、実施例１と同一とした（図５（ｃ）の下段参照）。
この実施例４では、表１に示すように、埋め込み型枠の沈下量が−２９％（基準に比べ）であり、脚部型枠部材の外観は、○であり、角部が若干圧縮され変形したが通常の使用では問題とならない状態であった。
【００３７】
（実施例５）
実施例５では、実施例１の中間型枠部材の段差部の突出幅Ｂを垂直部の幅ｂの０．２５倍（０．２５ｂ）と短くすることで、天板型枠部材の下部突出部の幅を２４０ｍｍ広くして５００ｍｍの幅とした以外、実施例１と同一とした（図５（ｃ）の下段参照）。
この実施例５では、表１に示すように、埋め込み型枠の沈下量が−４３％（基準に比べ）であり、脚部型枠部材の外観は、◎であり、変形がほとんどない状態であった。
【００３８】
【表１】
【符号の説明】
【００３９】
Ａ 鋼桁部
Ｃ 鉄筋コンクリート床版部
１ Ｔ型鋼
１ａ フランジ
１ｂ ウエブ
２ 底部鋼板
３ 鉄筋
４ コンクリート
５ 埋め込み型枠
６ 空間部（鋼桁部の埋め込み型枠の装着部）
７ 空間（埋め込み型枠の中空部）
８ 溶接部
９ 頂部開口部
１０ 埋め込み型枠構造
１１ 天板型枠部材
１１ａ 下部突出部
１１ｂ 上部突出部
１２ 中間型枠部材
１２ａ 垂直部
１２ｂ 段差部
１２ｃ 先端面（段差部）
１３ 脚型枠部材
Ｂ 突出幅（段差部）
ｂ 垂直部の幅
【特許請求の範囲】
【請求項１】
鋼桁部と、この鋼桁部上に設けられる鉄筋コンクリート床版部とからなる合成床版橋の鋼桁部に設置され打設されるコンクリートの下部型枠部となる発泡樹脂製の埋め込み型枠構造であって、
鋼桁部の橋軸方向に延び底部および両側部が閉じられるとともに、両側部より狭い頂部開口部が形成された空間部に、前記頂部開口部の間隔に対応した天板型枠部材と、この天板型枠部材の両端部に配置され垂直部とこの下端から突き出す段差部を備え相対向して前記天板型枠部材を支持する一対の中間型枠部材と、これら中間型枠部材を前記底部上に支持するとともに、前記空間部の両側部に配置される一対の脚型枠部材とからなり、
前記天板型枠部材に、前記相対向する中間型枠部材の段差部上面より下方に突き出して段差部先端面間に位置する下部突出部を形成する一方、
前記脚型枠部材を、前記空間部に対応した高さに形成して設置して構成したことを特徴とする合成床版橋用の埋め込み型枠構造。
【請求項２】
前記天板型枠部材の上面に曲面状または平面状の上部突出部を形成してなることを特徴とする請求項１記載の合成床版橋用の埋め込み型枠構造。
【請求項３】
前記天板型枠部材の下部突出部を、前記中間型枠部材の段差部下面と一平面をなすよう構成したことを請求項１または２記載の合成床版橋用の埋め込み型枠構造。
【請求項４】
前記中間型枠部材の前記垂直部の幅ｂに対する段差部の突出幅Ｂを、０．２５ｂ〜１．０ｂの範囲とし、対応する前記天板型枠部材の前記下部突出部を広幅に形成して構成したことを特徴とする請求項１〜３のいずれかに記載の合成床版橋用の埋め込み型枠構造。
【請求項１】
鋼桁部と、この鋼桁部上に設けられる鉄筋コンクリート床版部とからなる合成床版橋の鋼桁部に設置され打設されるコンクリートの下部型枠部となる発泡樹脂製の埋め込み型枠構造であって、
鋼桁部の橋軸方向に延び底部および両側部が閉じられるとともに、両側部より狭い頂部開口部が形成された空間部に、前記頂部開口部の間隔に対応した天板型枠部材と、この天板型枠部材の両端部に配置され垂直部とこの下端から突き出す段差部を備え相対向して前記天板型枠部材を支持する一対の中間型枠部材と、これら中間型枠部材を前記底部上に支持するとともに、前記空間部の両側部に配置される一対の脚型枠部材とからなり、
前記天板型枠部材に、前記相対向する中間型枠部材の段差部上面より下方に突き出して段差部先端面間に位置する下部突出部を形成する一方、
前記脚型枠部材を、前記空間部に対応した高さに形成して設置して構成したことを特徴とする合成床版橋用の埋め込み型枠構造。
【請求項２】
前記天板型枠部材の上面に曲面状または平面状の上部突出部を形成してなることを特徴とする請求項１記載の合成床版橋用の埋め込み型枠構造。
【請求項３】
前記天板型枠部材の下部突出部を、前記中間型枠部材の段差部下面と一平面をなすよう構成したことを請求項１または２記載の合成床版橋用の埋め込み型枠構造。
【請求項４】
前記中間型枠部材の前記垂直部の幅ｂに対する段差部の突出幅Ｂを、０．２５ｂ〜１．０ｂの範囲とし、対応する前記天板型枠部材の前記下部突出部を広幅に形成して構成したことを特徴とする請求項１〜３のいずれかに記載の合成床版橋用の埋め込み型枠構造。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【公開番号】特開２０１２−１２８４９（Ｐ２０１２−１２８４９Ａ）
【公開日】平成２４年１月１９日（２０１２．１．１９）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１０−１５０９７０（Ｐ２０１０−１５０９７０）
【出願日】平成２２年７月１日（２０１０．７．１）
【出願人】（０００００００７７）アキレス株式会社 (402)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２４年１月１９日（２０１２．１．１９）
【国際特許分類】
【出願日】平成２２年７月１日（２０１０．７．１）
【出願人】（０００００００７７）アキレス株式会社 (402)
【Ｆターム（参考）】
[ Back to top ]