説明

合成樹脂製ペン先

【課題】 ペン先の向き及びインク色を容易に識別でき、安価に製造可能で、高耐久性を有するが筆記感も良好で、デザイン性も優れている合成樹脂製ペン先を提供する。
【解決手段】 インク流路2を有する異形断面の中芯部材3の外周を、被覆部材4で被覆して棒状の合成樹脂製のペン先主体1を構成し、前記ペン先主体1における先端部の被覆部材4の一部を、前記インク流路2に沿って後方に、インク流路2内のインクの色が識別できる厚さまで切削してインク視認部7を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、装飾文字などを書くことのできるカリグラフィーペン、ラインマーカ、多色マーカ、マーキングペンなどの筆記具に使用される合成樹脂製ペン先に関するもので、より詳しくは、ペン先の向きやインク色を容易に識別できるデザイン性の優れた合成樹脂製ペン先に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂製ペン先(プラスチックペン先)は、一般的に直径が1.5mm以下の中芯を使用するとともに、ペン先の先端をクサビ状にすることによって、あるいはペン先の先端部の筆記面を、多角形や楕円などの形状に加工することで、複数の線幅を筆記できる筆記面を有するペン先としている。
【0003】
しかしながら、ペン先の先端部は非常に細いので、ペン先から直接インクの色を識別することは難しく、色の識別を確実にするためには、尾栓やペン軸、キャップなどの部品をインクと同色に着色しておくか、それとも実際に試し書きをしなければならない。一方、ペン先本体にインク通路を有するカリグラフィーやラインマーカは、筆記面の形状を容易に識別することは難しく、ペン先の方向を正しく紙面にセットし難い。
【0004】
そこで、特開平8−118871号公報(特許文献1)においては、ペン先本体の左右に横断面湾曲状の羽根部を設け、万年筆タイプの外観にすることでペン先の方向を容易に識別でき、ペン先本体の材質を透明のナイロン製にすることで、インクの色の識別を容易にする技術が開示されている。
【0005】
この特許文献1に記載の発明は、中芯と被覆材を同一体に押出成型することで、中芯と被覆材の軸がずれてしまうことを防止でき、筆感の向上を促すことができるというものであって、ペン先本体の材質を透明のナイロン製に、インク誘導溝は普通の大きさの横断面積比に形成することで、外観が透明であるため、インクの色を確認し易くできることも併せて開示されている。
【0006】
また、実公昭57−42712号公報(特許文献2)においては、ペン先部分のインク通路より上方の前方部分の合成樹脂層と、インク通路より下方の前方部分の合成樹脂層の、抉られ方を異にして先端に至るまで漸次抉るという構成とすることによって、どちらの面を筆記面とするかで、撓み方を硬軟二様に変えられ、筆記時の感触も二様のものが得られるだけでなく、撓み方が比較的硬いと細い線が、反対に撓み方が比較的軟らかいと太い線が得られるので、筆記線の太さを二様に変えることができるという樹脂ペン体が開示されている。
【0007】
すなわち、特許文献2に記載の樹脂ペン体は、インキ流通路を挟んで対向する合成樹脂層の先端部の、抉り方を変えて切削することによって、形状の相違するペン先外周部を目印にペン先の方向を識別可能とし、併せて撓み方によって、線の太さを調節するというものである。
【0008】
また、合成樹脂製ペン先は、筆記の度合いに従って磨耗し、短くなるとインキ通路にゴミなどが詰まって筆記能力が落ちるので、特開平9−150595号公報(特許文献3)においては、ペン先にスリットを設けることで、インク通路にゴミや屑が入り込み、筆記不能になることを制御し、インクを充分使い切り筆記距離を長くするペン先が開示されている。さらに、同文献3においては、ペン先をインクと同色に着色しておくことで、インクの色を容易に識別できる、という技術が併せて開示されている。
【0009】
さらに、実開昭51−49135号公報(特許文献4)においては、ペン先本体の両端を除く表面に、インクの色と同色の外装を設けることで、インクの色を容易に識別できるペン先が開示されている。このペン先は、消費する資材が僅かで足り、成型も機械化で大量生産可能であるとされている。
【0010】
また、ペン先本体が毛細多孔質体製であるときは、上記識別効果に加えて、外装によって均圧な緊締力が作用するため、ペン先本体がインクで膨潤するおそれを解消することができる。また、ペン先本体が、表面にインク流路を備えたペンのときは、上記識別効果に加えて、外装を設けたことにより、該流路内におけるインクの乾燥を防ぎ、毛細管現象の確実な発現を期待することができる、というものである。
【0011】
さらにまた、実開昭58−3281号公報(特許文献5)においては、ペン先用芯材を異色の着色合成樹脂にて、二層あるいはそれ以上の多層にコーティングし、切削加工した合成樹脂製ペン先が開示されている。このペン先は、異色の合成樹脂で多層コーティングし、これを公知の切削加工技術にて加工しているので、色彩豊かなペン先を得ることができる。加えて、中芯を剥き出しにして、根元の全周を円筒状に細く研磨した形状のペン先も記載されている。
【特許文献1】特開平 8−118871号公報(特許請求の範囲、段落0021、0037)
【特許文献2】実公昭57−42712号公報(実用新案登録請求の範囲)
【特許文献3】特開平 9−150595号公報(特許請求の範囲、段落0010)
【特許文献4】実開昭51−49135号公報(実用新案登録請求の範囲)
【特許文献5】実開昭58− 3281号公報(実用新案登録請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ペン先本体は、ペン先の向きやインクの色を容易に識別できること、高耐久性等を有することは勿論のこと、安価に製造でき、かつデザイン性も要求されているが、特許文献1に記載の技術では、万年筆タイプにより近い外観となってしまい、デザイン上の制約を受ける。また、ペン先本体に、更に羽根部を設けることは、羽根部を設けないペン先と比較して、製造における工程数や必要な部材の数が増えるため、製造コストが高くなる可能性も有している。
【0013】
また、インクの色を容易に識別することを可能とするために、ペン先の素材に透明なナイロンを用いているが、一般にナイロンは、耐衝撃性、耐摩擦、摩耗性、耐油性に優れるが、化学構造上、吸水性が高いため、剛性低下、寸法変化を起こし易い。
【0014】
特許文献2に記載されている、二様の筆記線の太さを得るために、ペン先の合成樹脂層を、軸の向きに対して異にして先端に至るまで漸次えぐり取ったペン先は、撓み方によって線幅が変化するので、万年筆とカリグラフィーペンの長所を併せ持つようなものであるが、インクの色を、ペン先を見ただけで容易に識別することはきわめて困難であって、試し書きなどをして、色の確認を行わないといけない。
【0015】
また、特許文献3に記載されている、インクの色を識別し易くするために、ペン先自体に顔料等を混ぜて着色する技術によって製造されたペン先は、当該着色された色のペンにしか使用することは出来ないので、部品の共有化効率が悪く、よって在庫管理が煩わしくなり、色毎に被覆成型時に材料の切り替えの手間があるので、結果的にコストアップに繋がるおそれがある。
【0016】
特許文献4に記載されている、ペン先本体の両端を除く表面に、インクの色と同色の外装を設けることで、インクの色を容易に識別できるようにした技術は、特許文献3に記載のものと同様にコストアップに繋がる。
【0017】
特許文献5に記載されている、中芯を剥き出した根元の全周を円筒状に細く研磨したペン先は、被覆部材の色や円筒部の寸法によっては、インクの色が透けて見える可能性があるが、円筒部が長くなるにつれ強度面に課題が生じ、かつ、デザイン上の制約を受ける。
【0018】
この発明はかかる現状に鑑み、ペン先の向き及びインク色を容易に識別でき、安価に製造可能で、高耐久性を有するが筆記感も良好で、デザイン性も優れているペン先を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記の目的を達成するため、この発明の請求項1に記載の発明は、
インク流路を有する異形断面の中芯部材の外周を、被覆部材で被覆して棒状のペン先主体を構成し、
前記ペン先主体における先端部の被覆部材の一部を、インク流路内のインクの色が識別できる厚さまで切削してインク視認部を形成したこと
を特徴とする合成樹脂製ペン先である。
【0020】
また、この発明の請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の合成樹脂製ペン先において、
前記インク視認部は、
前記ペン先主体の先端部から後方に、中芯部材に沿って平行に被覆部材の一部をインク流路内のインクの色が識別できる厚さまで切削して形成したこと
を特徴とするものである。
【0021】
また、この発明の請求項3に記載の発明は、
請求項1に記載の合成樹脂製ペン先において、
前記インク視認部は、
前記中芯部材に沿って、ペン先主体の先端部から後方に至るに従って傾斜状もしくは階段状に高くしながら被覆部材の一部を、インク流路内のインクの色が識別できる厚さまで切削して形成したこと
を特徴とするものである。
【0022】
また、この発明の請求項4に記載の発明は、
請求項1に記載の合成樹脂製ペン先において、
前記インク視認部は、
前記ペン先主体の先端部から後方に、中芯部材に沿って平行に被覆部材の一部を、インク流路内のインクの色が識別できる厚さまで凹状に切削して形成されていること
を特徴とするものである。
【0023】
また、この発明の請求項5に記載の発明は、
請求項1又は2に記載の合成樹脂製ペン先において、
前記インク視認部は、
前記ペン先主体の先端部に形成された筆記面の一端から、中芯部材に沿って後方に、前記先端部の被覆部材の一部を平面状に切削して形成されていること
を特徴とするものである。
【0024】
また、この発明の請求項6に記載の発明は、
請求項1〜5のいずれかに記載の合成樹脂製ペン先において、
前記ペン先主体は、
中芯部材および被覆部材が合成樹脂製で、その先端部が砲弾状又はクサビ状に、後端部が截頭円錐状に形成されていること
を特徴とするものである。
【0025】
また、この発明の請求項7に記載の発明は、
請求項1〜6のいずれかに記載の合成樹脂製ペン先において、
前記ペン先主体は、
ポリアセタール樹脂で成形されたものであること
を特徴とするものである。
【0026】
また、この発明の請求項8記載の発明は、
請求項1〜7のいずれかに記載の合成樹脂製ペン先において、
前記被覆部材は、
顔料を含むポリアセタール樹脂で成形されたものであること
を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0027】
この発明にかかる合成樹脂製ペン先は、インク流路を有する中芯部材と、この中芯部材を被覆する被覆部材とでペン先主体を構成するに際し、このペン先主体における先端部の被覆部材の一部を、中芯部材に沿ってインクの色が識別できる厚さまで切削してインク視認部を形成しているので、このインク視認部の範囲を広げることによって広範囲においてインクの色を視認できるので、他の部分に着色処理を施さなくても、ペン先において容易に色の識別が可能となる。したがって、従来のように、ペン本体、尾栓、キャップやペン先を、使用するインクの色に着色するなどの二次加工を必要としない。
【0028】
特に、この発明においては、インク流路を被覆する被覆部材を切削し、インク流路内を流れるインクそのものによって色の識別を可能としているので、ペン先自体を着色しなくてもインクの色の識別を容易とし、どのインクの色にも対応できるので、従来は色違いであれば、ペン先を共有化することはできなかったが、この発明にかかる合成樹脂製ペン先は、インクの色に関係なく共有化が可能となるので、製造コストおよび管理コストの抑制に繋がる。
【0029】
加えて、ペン先主体の先端部の被覆部材を削ったことで、ペン先が柔軟になり、書き味が向上し、さらに、被覆部材がペン先の先端付近まで補強しているため、折れ難いペン先を得ることができる。
【0030】
また、ペン先主体の先端部に平らなインク視認部を形成することによって、インク視認部を目印として、特定の筆記面の方向を容易に識別をすることができ、カリグラフィーペンやラインマーカなどの複数の線幅を使い分けるペンでは、紙面に正しくペン先をセットすることができる。
【0031】
また、ペン先主体に合成樹脂を使用することで、加工が容易となるので、製造コスト抑制に繋がり、安価に製造することが可能となる。また、ポリアセタール樹脂を使用すれば、特に耐久性等が向上した合成樹脂製ペン先を提供することが可能となる。
【0032】
その際、被覆部材を透明なものとすると、横方向からもインクを視認することが可能となるので、紙面に正しくペン先をセットできない懸念が生じ、半透明なものとすると、インクの色が乱反射し、拡散して見えるので、ペン先全体が汚れたように見えるおそれがある。また、有色の場合、同色のインクが視認しづらくなるとともに、混色して別の色に見えて誤解し易いので、白色の顔料を含むポリアセタール樹脂で被覆部材を成形することによって、全ての色に対応して視認し易く、綺麗にインクが見えるので好ましい。
【0033】
また、軸方向に段部を設けることによって、ペン先を筆記具に装着するとき、後端部の位置を、インク溜めに確実に接触させ、所定の位置に確実にセットすることが可能となるので、ペン先を取替え自在にすることができ、このことは、例えば、予備のペン先主体を用意しておけば、ゴミや屑などが入り込んで詰まった場合でも、容易にペン先の交換を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、この発明にかかる合成樹脂製ペン先の実施の一例を、添付の図面を参照しながら詳細に説明するが、この発明は図示した実施例に限定されるものではなく、この発明の要旨を変更しない範囲内において種々変更を加えることが可能なものである。
【0035】
この発明の合成樹脂製ペン先1は、インク流路2を有する所要長さと径を有する異形断面を有する中芯部材3と、この中芯部材3を一定厚みで被覆する被覆部材4とからなるペン先主体からなるものである。なお、ペン先主体は合成樹脂製ペン先1と実質的におなじのため、以下、符号も同じにして説明する。
【0036】
このペン先主体1を構成する中芯部材3と被覆部材4とは、いずれも合成樹脂材料によって成形されたもので、合成樹脂であればその素材については特段の制限はない。
具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABSなどの汎用プラスチックが使用できるが、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂などに代表されるエンジニアリングプラスチックや、ポリフェニレン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶ポリマー樹脂、ポリテトラフロロエチレン樹脂などのフッ素樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂などに代表されるスーパーエンジニアリングプラスチックを使用することが好ましい。
【0037】
前記エンジニアリングプラスチックの中でも、ペン先の素材として要求されている、機械的強度、剛性、耐疲労度や寸法安定性等の各物性に優れた、結晶性エンジニアリングプラスチックである、ポリアセタールを用いることが特に好ましい。
【0038】
なお、ペン先主体1に用いる素材の種類は一種類である必要はなく、二種類以上の合成樹脂を用いることも当然可能で、例えば、部材ごとに異なる素材の材料を用いてもよい。
【0039】
前記ペン先主体1は、ナチュラル(半透明)なポリアセタールを加熱溶融して押出し、異型断面の隙間からなるインク流路2を有する中芯部材3を成形したのち、この中芯部材3の外周に白色の顔料を配したポリアセタール樹脂を加熱溶融して押出しにて被覆して被覆部材4を形成したものである。
このペン先主体1のインク流路内径はφ0.72mm、中芯径はφ1.0mm、被覆部材4の外径はφ2.5mmで、得た長尺のペン先主体を所要長さに切断して丸棒状のペン先素材を形成する。
【0040】
かくして得た丸棒状のペン先素材の先端部4aと後端部4cとを、それぞれ截頭円錐状になるように研磨するとともに、中間部4bは、先端部4aとの境界部にリング状の突条部5が形成されるよう、外周部を円柱状にさらに細く研磨する。ついで、截頭円錐状に形成した先端部4aの側面部の一部をさらにクサビ状に研磨して、端面がほぼ矩形状の筆記面6を形成したのち、インク流路2の先端部が顕出した筆記面6の外周の一部から、中芯部材3に沿って先端部4aの後方に向かって、中芯部材3と平行に被覆部材4の一部外周面を厚さ0.65mm、中芯部材3の外径との距離が0.1mmとなるよう、すなわち、中芯部材3と0.1mmの間隔を存して削り落として平らなインク視認部7を形成して合成樹脂製ペン先1としたものである。
【0041】
なお、前記突条部5は、図4に示すように、ペン先主体1を後述する筆記具9に装着する場合、ペン先主体1の筆記具9への挿入深さを制御するためのものであるで、必ずしも図示のようにリング状の突条部でなく、先端部4aの径に対し、中間部4bの径を小さくして段部を形成し、この段部によって挿入深さを制御してもよい。
【0042】
かくして得たペン先主体1を、図4に示すように、内部に紫色のインクを貯留したインク溜り8を有する筆記具9の先端開口部に、ペン先主体1の截頭円錐状の後端部4cが前記インク溜り8と連通するようにして装着してペン先としたところ、インク溜り8のインクは毛管現象によってインク流路2を介して先端部4a側に流れ、インク視認部7の中央部に紫色が顕出し、インクの色が紫色であることを容易に視認することができた。
【0043】
上記と同様に、インクの色を、青、緑、黄色、橙、赤の5色において、それぞれ試みると、各色について、インクの色の識別をすることができた。
【0044】
その際、上記インクの色を識別できるインク視認部7は、矩形状である筆記面の方向を確実にするための目印にもなり、例えば、インク視認部7を上向きにしてペン先を紙面にセットすれば、矩形状である筆記面6の長手方向を用いて筆記することができる。
【0045】
図5は、この発明にかかる合成樹脂製ペン先の他の実施例を示すもので、前記実施例と同様に、インク流路12を有する所要長さと径を有する異形断面の中芯部材13と、この中芯部材13を一定厚みで被覆する被覆部材14とからなる丸棒状のペン先主体11である。
前記実施例で得た丸棒状のペン先主体11の、先端部14aおよび後端部14cをそれぞれ截頭円錐状に、中間部14bを、先端部14a側に環状の突条部15が形成されるよう円柱状に細かく研磨し、前記先端部14aの相対する側面部をさらにクサビ状に研磨して、図6に示すように、端面がほぼ矩形状の筆記面16を形成する。
ついで、インク流路12が顕出した筆記面16の外周の一部から、中芯部材13に沿って先端部14aの後方に向かって、被覆部材14の相対する外周面の一部を、中芯部材13の外径との距離が、例えば、厚さ0.2mm、0.3mm、0.4mmと階段状に離しながらインク流路12内のインクの色が識別できる厚さまで切削し、インク視認部17を形成して合成樹脂製ペン先11としたものである。
【0046】
前記の構成の合成樹脂製ペン先11を、先に示した筆記具に装着し、インクを吸わせると、前記インク視認部17の中心部にインクを含んだ中芯部材13が透けて見え、インクの色を明瞭に視認することができた。また、インクの透けて見えるインク視認部17を目印として、クサビ形状の筆記面の方向を識別することができ、かつ、ペン先を紙面に正しくセットすることができた。
【0047】
図7は、この発明にかかる合成樹脂製ペン先の他の実施例を示すもので、ペン先主体21は、前記2つの実施例と同様に、インク流路22を有する所要長さと径を有する異形断面の中芯部材23と、この中芯部材23を一定厚みで被覆する被覆部材24とからなる丸棒状のものである。
得た丸棒状のペン先主体21の先端部24aを砲弾状に、また、後端部24cを截頭円錐状に、中間部24bを先端部24a側に環状の突条部25が形成されるよう円柱状に細かく研磨したのち、インク流路22の先端部が顕出した円形な筆記面26の外周の一部から先端部24aの後方に向かって、中芯部材23に沿って被覆部材24の一部外周面を厚さ0.55mm、中芯部材23の外径との距離が0.2mmとなるように、0.7mm幅で凹状に切削してインク視認部27を形成して合成樹脂製ペン先21としたものである。
【0048】
前記構成の合成樹脂製ペン先21を、先に示した筆記具に装着しインクを吸わせると、前記凹状のインク視認部27の中心部にインクを含んだ中芯部材23が透けて見え、インクの色を明瞭に視認することができた。
【0049】
前記した各実施例の合成樹脂製ペン先と、従来の切削加工を施していないペン先とを比較すると、明らかに色を視認できる範囲が拡大し、容易にインクの色を判断できることが分かった。
【0050】
前記3つの実施例において、図5に示す実施例では、インク視認部17をペン先主体1の相対する側面部に形成しているが、図1に示す実施例と同様に一方の側面部にのみ形成してもよく、同様に図1に示す実施例の相対する側面部にインク視認部7を形成してもよい。また、図8および図9に示す実施例では、筆記面26が円形であるので、その円周上に複数を均等に配置形成してもよいことは当然である。
【0051】
また、被覆部材4の切削に際し、中芯部材の外径との距離は、0.05〜0.4mmの範囲内であれば、中芯部材と平行であっても、階段状もしくは傾斜状であっても、インク流路内を流れるインクの色を十分に視認することができる。さらに、インク視認部7の長さは、ペン先の大きさとの関係から約2〜10mm程度とすることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
この発明にかかる合成樹脂製ペン先は、ペン先の先端部を見ただけでインクの色や筆記方向の識別が可能であるとともに、安価に製造でき、ペン先の交換も容易であるので、装飾文字を書く用途のカリグラフィーペン、ラインマーカ、多色マーカ、マーキングペン等の筆記具に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】この発明にかかる合成樹脂製ペン先の一例を示す一部切り欠き平面図である。
【図2】図1に示す合成樹脂製ペン先の側面図である。
【図3】図1に示す合成樹脂製ペン先の拡大正面図である。
【図4】使用状態を示す説明図である。
【図5】この発明にかかる合成樹脂製ペン先の他の例を示す一部切り欠き側面図である。
【図6】図5に示す合成樹脂製ペン先の拡大正面図である。
【図7】この発明にかかる合成樹脂製ペン先のさらに他の例を示す平面図である。
【図8】図7に示す合成樹脂製ペン先の側面図である。
【図9】図7に示す合成樹脂製ペン先の拡大正面図である。
【符号の説明】
【0054】
1,11,21 合成樹脂製ペン先
2,12,22 インク流路
3,13,23 中芯部材
4,14,24 被覆部材
5,15,25 突条部
6,16,26 筆記面
7,17,27 インク視認部
8 インク溜り
9 筆記具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク流路を有する異形断面の中芯部材の外周を、被覆部材で被覆して棒状のペン先主体を構成し、
前記ペン先主体における先端部の被覆部材の一部を、インク流路内のインクの色が識別できる厚さまで切削してインク視認部を形成したこと
を特徴とする合成樹脂製ペン先。
【請求項2】
前記インク視認部は、
前記ペン先主体の先端部から後方に、中芯部材に沿って平行に被覆部材の一部をインク流路内のインクの色が識別できる厚さまで切削して形成したこと
を特徴とする請求項1に記載の合成樹脂製ペン先。
【請求項3】
前記インク視認部は、
前記中芯部材に沿って、ペン先主体の先端部から後方に至るに従って傾斜状もしくは階段状に高くしながら被覆部材の一部を、インク流路内のインクの色が識別できる厚さまで切削して形成したこと
を特徴とする請求項1に記載の合成樹脂製ペン先。
【請求項4】
前記インク視認部は、
前記ペン先主体の先端部から後方に、中芯部材に沿って平行に被覆部材の一部を、インク流路内のインクの色が識別できる厚さまで凹状に切削して形成されていること
を特徴とする請求項1に記載の合成樹脂製ペン先。
【請求項5】
前記インク視認部は、
前記ペン先主体の先端部に形成された塗布面の一端から、中芯部材に沿って後方に、前記先端部の被覆部材の一部を平面状に切削して形成されていること
を特徴とする請求項1又は2に記載の合成樹脂製ペン先。
【請求項6】
前記ペン先主体は、
中芯部材および被覆部材が合成樹脂製で、その先端部が砲弾状又はクサビ状に、後端部が截頭円錐状に形成されていること
を特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の合成樹脂製ペン先。
【請求項7】
前記ペン先主体は、
ポリアセタール樹脂で成形されたものであること
を特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の合成樹脂製ペン先。
【請求項8】
前記被覆部材は、
顔料を含むポリアセタール樹脂で成形されたものであること
を特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の合成樹脂製ペン先。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−261056(P2007−261056A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−88389(P2006−88389)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000103600)オーベクス株式会社 (12)
【Fターム(参考)】