説明

合成繊維用耐久吸水帯電防止剤及び機能性繊維製品

【課題】優れた帯電防止性と吸水性およびそれらの洗濯耐久性を兼ね備えた合成繊維用耐久吸水帯電防止剤および耐久吸水帯電防止性を付与した機能性繊維製品を提供する。
【解決手段】所定の非イオン性ポリマー(A)と、所定のカチオン性化合物(B)および/または所定のカチオン性ポリマー(C)とを、(A):(B)、(A):(C)または(A):〔(B)+(C)〕=30:70〜80:20の配合比率(質量基準)で含む合成繊維用耐久吸水帯電防止剤およびこの合成繊維用耐久吸水帯電防止剤で処理してなる機能性繊維製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の非イオン性ポリマーと特定のカチオン性化合物および/またはカチオン性ポリマーとを特定の比率で含む合成繊維用耐久吸水帯電防止剤および該合成繊維用耐久吸水帯電防止剤で処理してなる耐久吸水帯電防止性が付与された機能性繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルやアクリルなどの合成繊維は優れた特性を持つために産業用、インテリア用、衣料用などの多くの分野で使用されているが、合成繊維は綿や麻などの天然繊維に比べて吸湿性や吸水性が劣るため、衣料用として使用した場合、着脱時に不快な静電気が発生するという問題や吸水性(吸汗性)が不足しているという問題がある。
【0003】
このような静電気や吸水性の問題を解決するために、カチオン界面活性剤、カチオン性ポリマー、アルコールやアミンのポリエチレングリコール誘導体などが帯電防止剤(静電気防止剤)や吸水剤(吸汗剤)として合成繊維に処理されている。しかし、これらの化合物は親水性で水に溶けやすいため洗濯耐久性に劣っている。
【0004】
洗濯耐久性を向上させる目的で、例えば、特許文献1には、アクリロニトリル、分子内に共重合性の二重結合とポリオキシエチレン基を持つ不飽和単量体、共重合性の二重結合とエポキシ基を持つ不飽和単量体を、炭素数8以下の低級アルコールの存在下に、水系媒体中で重合させて得られた平均分子量5万以上の共重合体を用い、繊維上で熱処理することで三次元構造化して使用する方法が開示されている。特許文献2には、アクリロニトリルとアルコキシポリテトラメチレングリコールメタクリレートとの共重合体を帯電防止剤として使用する方法が開示されている。しかし、特許文献1、特許文献2にあるような非イオン性ポリマーは、カチオン界面活性剤、カチオン性ポリマー、アルコールやアミンのポリエチレングリコール誘導体などと比較した場合、洗濯耐久性は良好であるものの、洗濯前の帯電防止性は十分ではない。
【0005】
上記のような化合物が持つ欠点を解消するために、カチオン界面活性剤及び/又はカチオン性ポリマーと非イオン性ポリマーとを併用する試みも行われているが、中庸な性能となり良好な帯電防止性と吸水性およびそれらの洗濯耐久性を実現することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−183474号公報
【特許文献2】特開2001−295181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、優れた帯電防止性と吸水性およびそれらの洗濯耐久性を兼ね備えた合成繊維用耐久吸水帯電防止剤と、該合成繊維用耐久吸水帯電防止剤で処理してなる耐久吸水帯電防止性を付与した機能性繊維製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の単量体を特定の割合で共重合させた特定の非イオン性ポリマーと特定のカチオン性化合物および/または特定のカチオン性ポリマーとを特定の比率で含む合成繊維用耐久吸水帯電防止剤を合成繊維に処理することにより、優れた帯電防止性と吸水性及びそれらの洗濯耐久性が付与された機能性繊維製品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、アクリロニトリル10〜40質量%、下記一般式[1]で表される化合物55〜89質量%および下記一般式[2]で表される化合物1〜5質量%を含む単量体組成物を水溶液中で共重合させて得られる非イオン性ポリマー(A)と、下記一般式[3]で表されるカチオン性化合物(B)および/または下記一般式[4]で表される化合物および一般式[5]で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む単量体組成物を重合して得られるカチオン性ポリマー(C)とを、(A):(B)、(A):(C)または(A):〔(B)+(C)〕=30:70〜80:20の配合比率(質量基準)で含む合成繊維用耐久吸水帯電防止剤を提供する。
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、Rは水素またはメチル基を表し、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、nは(OR)で表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数であって10〜50の整数を表し、Rは炭素数1〜3のアルキル基またはフェニル基を表す)
【0011】
M−O−(RO)x−M ・・・・・[2]
【0012】
(式中、Rは炭素数2〜4のアルキレン基、炭素数2〜4のヒドロキシアルキレン基またはジメチルシリレン基を表し、xは1〜30の整数を表し、Mはアクリロイル基またはメタクリロイル基を表す)
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、Rは炭素数8〜18の直鎖もしくは分岐を有するアルキル基、アルケニル基、ヒドロキシアルキル基またはヒドロキシアルケニル基を表し、Rは同一であっても相異なっていてもよく、炭素数1〜4のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基または炭素数2〜4のアルケニル基もしくはヒドロキシアルケニル基を表し、Xm−はm価のアニオンを表す)
【0015】
【化3】

【0016】
(式中、Rは水素またはメチル基を表し、Rは炭素数1〜4のアルキレン基またはヒドロキシアルキレン基を表し、Rは同一であっても相異なっていてもよく、炭素数1〜4のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基または炭素数2〜4のアルケニル基を表し、−Y−は−O−又は−N(H)−を表し、Xm−はm価のアニオンを表す)
【0017】
【化4】

【0018】
(式中、R10は同一であっても相異なっていてもよく、水素、炭素数1〜4のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基または炭素数2〜4のアルケニル基を表し、Xm−はm価のアニオンを表す)
本発明は、また、上記の合成繊維用耐久吸水帯電防止剤で処理してなる耐久吸水帯電防止性が付与された機能性繊維製品を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の合成繊維用耐久吸水帯電防止剤を用いることにより、合成繊維に優れた帯電防止性、吸水性とそれらの洗濯耐久性という、相反する性能を付与することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明において、非イオン性ポリマー(A)の構成成分である一般式[1]で表される化合物中のRは、水素またはメチル基であるが、洗濯耐久性の観点からメチル基であることが好ましい。
【0021】
で表される炭素数2〜4のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基を挙げることができる。なかでも、機能性繊維製品の帯電防止性と吸水性の観点からエチレン基、プロピレン基であることが好ましく、エチレン基であることがさらに好ましい。
【0022】
nは(OR)で表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数であって10〜50の整数を表すが、20〜50であるのが好ましく、20〜30であるのがさらに好ましい。nが10未満の場合は機能性繊維製品の洗濯耐久性が劣る傾向があるとともに、非イオン性ポリマー(A)が増粘し、取り扱いが困難になる傾向がある。また、nが50を超える場合は非イオン性ポリマー(A)の親水性が高くなり、機能性繊維製品の洗濯耐久性が低下する傾向にあり、また得られる機能性繊維製品の摩擦堅牢度が低下する傾向にある。
【0023】
一般式[1]で表される化合物としては、nが10〜50以外の一般式[1]で表される化合物を2種以上組み合わせて、nの平均が10〜50の範囲となるようにしても構わない。
【0024】
は炭素数1〜3のアルキル基またはフェニル基であり、炭素数1〜3のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基を挙げることができる。これらのうちでは機能性繊維製品の帯電防止性の観点からメチル基であることが好ましい。
【0025】
一般式[1]で表される化合物としては市販品を用いることができ、例えば、NKエステルM−90G(新中村化学工業株式会社製)(メトキシポリエチレングリコール(8モル)メタクリレート)、NKエステルM−230G(新中村化学工業株式会社製)(メトキシポリエチレングリコール(23モル)メタクリレート)、NKエステルAM−90G(新中村化学工業株式会社製)(メトキシポリエチレングリコール(8モル)アクリレート)、NKエステルAM−130G(新中村化学工業株式会社製)(メトキシポリエチレングリコール(13モル)アクリレート)、ブレンマーPME−1000(日油株式会社製)(メトキシポリエチレングリコール(23モル)メタクリレート)、ブレンマーPME−4000(日油株式会社製)(メトキシポリエチレングリコール(90モル)メタクリレートなどが挙げられる。
【0026】
一般式[1]で表される化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
一般式[2]において、Rで表される炭素数2〜4のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などを挙げることができる。炭素数2〜4のヒドロキシアルキレン基としては、例えば、ヒドロキシエチレン基、ヒドロキシプロピレン基、ヒドロキシブチレン基などを挙げることができる。なかでも、機能性繊維製品の帯電防止性と吸水性の観点からエチレン基、プロピレン基、ヒドロキシエチレン基、ヒドロキシプロピレン基であることが好ましく、エチレン基、ヒドロキシエチレン基であることがさらに好ましい。
【0028】
xは1〜30の整数であるが、機能性繊維製品の帯電防止性、吸水性とそれらの洗濯耐久性の観点から、Rが炭素数2〜4のアルキレン基または炭素数2〜4のヒドロキシアルキレン基である場合、xは5〜30であることが好ましく、5〜20であることがさらに好ましい。同様の観点から、Rがジメチルシリレン基である場合、xは5〜30であることが好ましく、10〜20であることがさらに好ましい。
【0029】
は、機能性繊維製品の柔軟性の観点からは、ジメチルシリレン基であることが好ましい。
【0030】
Mはアクリロイル基またはメタクリロイル基であるが、機能性繊維製品の洗濯耐久性の観点からメタクリロイル基であることが好ましい。
【0031】
一般式[2]で表される化合物としては市販品を用いることができ、例えば、NKエステルA−400(ポリエチレングリコール(n=9)ジアクレート)、NKエステルA−600(ポリエチレングリコール(n=14)ジアクレート)、NKエステルA−1000(ポリエチレングリコール(n=23)ジアクレート)、NKエステル9G(ポリエチレングリコール(n=9)ジメタクレート)、NKエステル14G(ポリエチレングリコール(n=14)ジメタクレート)、NKエステル23G(ポリエチレングリコール(n=23)ジメタクレート)(以上、新中村化学工業株式会社製)、X−22−164(ポリジメチルシロキサンジメタクリレート、官能基当量190g/mol)、X−22−164AS(ポリジメチルシロキサンジメタクリレート、官能基当量450g/mol)、X−22−164A(ポリジメチルシロキサンジメタクリレート、官能基当量860g/mol)(以上、信越化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0032】
一般式[2]で表される化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
非イオン性ポリマー(A)は、アクリロニトリル10〜40質量%と、一般式[1]で表される化合物55〜89質量%と、一般式[2]で表される化合物1〜5質量%と、を含む単量体組成物を、水溶液中で、重合開始剤を用いて50〜95℃で30分〜24時間ラジカル重合反応させることによって合成することができる。
【0034】
単量体組成物中のアクリロニトリルの配合量は10〜40質量%であるが、20〜40質量%であることが好ましく、25〜40質量%であることがさらに好ましい。10質量%未満の場合は非イオン性ポリマー(A)が増粘し、取り扱いが困難となる傾向にあることに加え、機能性繊維製品の洗濯耐久性が低下する傾向にある。40質量%を超える場合はアクリロニトリルのホモポリマーが多量に発生し、得られる非イオン性ポリマー(A)が不均一となり、製品化が困難になることに加え、機能性繊維製品の帯電防止性と吸水性およびそれらの洗濯耐久性が劣る傾向にある。
【0035】
単量体組成物中の一般式[1]で表される化合物の配合量は55〜89質量%であるが、59〜79質量%であることが好ましく、59〜74質量%であることがさらに好ましい。55質量%未満の場合はアクリロニトリルのホモポリマーが多量に発生して得られる非イオン性ポリマー(A)が不均一となり、製品化が困難になることに加え、機能性繊維製品の帯電防止性と吸水性およびそれらの洗濯耐久性が劣る傾向にある。89質量%を超える場合は非イオン性ポリマー(A)が増粘し、取り扱いが困難となる傾向にあることに加え、機能性繊維製品の洗濯耐久性が低下する傾向にある。
【0036】
単量体組成物中の一般式[2]で表される化合物の配合量は1〜5質量%であるが、1〜3質量%であることが好ましい。1質量%未満の場合は機能性繊維製品の洗濯耐久性が低下する傾向があり、5質量%を超える場合は非イオン性ポリマー(A)が増粘し、取り扱いが困難となる傾向にある。
【0037】
非イオン性ポリマー(A)の重合時に、水溶液中に含まれる単量体の総量は5〜20質量%であることが好ましい。5質量%未満であると非イオン性ポリマー(A)の反応率が下がる傾向にあり、20質量%を超えると非イオン性ポリマー(A)が増粘し、製品化が困難となる傾向にある。
【0038】
非イオン性ポリマー(A)の重合時においては、反応を制御するために水溶液中に親水性溶剤が含まれていてもよい。
【0039】
親水性溶剤の使用量は、重合後の非イオン性ポリマー(A)の反応率を向上させ、未反応アクリロニトリルを減少させるという観点から、単量体の総量に対して20質量%以下であるのが好ましく、少なければ少ないほどより好ましく、水のみを媒体とした場合が最も好ましい。
【0040】
特許文献1、特許文献2のような非イオン性ポリマーでは、洗濯耐久性を向上させるためにアクリロニトリルの併用が不可欠である。しかしながら、アクリロニトリルは毒物および劇物取締法や労働安全衛生法など各種法規制のある化合物であるため、反応後に未反応のアクリロニトリルが多量に残存する場合は、長時間の脱アクリロニトリル工程が必要となる。
【0041】
特許文献1では、水溶性低級アルコールの存在下で重合を行うことを必須の要件としており、単量体の総量に対して20質量%を超える低級アルコールの存在下では初期の重合反応が十分ではなく、低級アルコールが5質量%より少ない場合は重合反応の制御が困難になるとしている。本発明者らが検討を行ったところ、この傾向は特許文献2においても同様であった。
【0042】
非イオン性ポリマー(A)の重合時においては、反応を制御するために水溶液中に単量体の総量に対して20質量%以下の低級アルコールが含まれていれば、反応終了後の反応率は十分に高く、脱アクリロニトリル工程を短時間で終了することができる。また、低級アルコールを全く使用しない場合であっても、重合反応を十分に制御することが可能であり、極端な増粘やゲル状生成物の発生がなく、反応終了後の反応率が向上した非イオン性ポリマーを得ることができる。
【0043】
非イオン性ポリマー(A)の重合時に使用することができる親水性溶剤としては、炭素数1〜8の飽和脂肪族アルコールや炭素数1〜8のエーテル類を挙げることができる。炭素数1〜8の飽和脂肪族アルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、へキシレングリコール、グリセリン、ブチルグリコールなどや、エーテル結合を含むソルフィットなどを挙げることができる。
【0044】
炭素数1〜8のエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどを挙げることができる。
これらの親水性溶剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
非イオン性ポリマー(A)の重合時に使用することができる重合開始剤としては、一般にラジカル重合で使用される重合開始剤を使用することができ、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、4,4´−アゾビスシアノ吉草酸、2,2´−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)二塩酸塩などのアゾ化合物などのラジカル重合開始剤を使用することができる。これらの重合開始剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、反応のコントロールのし易さという観点からは、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、4,4´−アゾビスシアノ吉草酸、2,2´−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)二塩酸塩が好ましい。
【0046】
これらの重合開始剤は、単量体の総量に対して0.1〜1質量%の量で使用することが好ましい。例えば、有機過酸化物の場合、単量体の総量に対して0.1〜0.3質量%の量で使用することが好ましい。0.1質量%未満の場合は、機能性繊維製品の吸水性と帯電防止性およびそれらの洗濯耐久性が劣る傾向にある。0.3質量%以上では非イオン性ポリマー(A)が増粘し、取り扱いが困難になる傾向にある。
【0047】
また、例えば、アゾ化合物の場合、単量体の総量に対して0.3〜1質量%の量で使用することが好ましい。この範囲を超える場合には、機能性繊維製品の帯電防止性と吸水性およびそれらの洗濯耐久性が劣る傾向にある。
【0048】
非イオン性ポリマー(A)の重合時の温度は50〜80℃であることが好ましく、60〜75℃であることがさらに好ましい。50℃未満の場合は反応率が低下する傾向にあり、80℃を超える場合はアクリロニトリルのホモポリマーが多量に発生して非イオン性ポリマー(A)が不均一となり、製品化が困難になることに加え、機能性繊維製品の帯電防止性と吸水性およびそれらの洗濯耐久性が劣る傾向にある。
【0049】
非イオン性ポリマー(A)の重合反応終了後に未反応の単量体が残存する場合には、必要に応じて、減圧蒸留などの方法で除去することが望ましい。
【0050】
非イオン性ポリマー(A)においては、単量体(構造単位)の配列には特に制限はなく、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であっても、交互共重合体であってもかまわない。
【0051】
非イオン性ポリマー(A)に対しては、構造単位として、アクリルアミド、ビニルアミン塩、ビニルピロリドン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、ダイアセトンアクリルアミド、メタアクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキル(C1〜18)、ポリジメチルシロキサンモノメタクリレートなどの共重合可能な他の単量体をも、本発明の効果を阻害しない範囲で使用可能である。
【0052】
非イオン性ポリマー(A)は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
一般式[3]で表されるカチオン性化合物(B)において、Rで表される炭素数8〜18の直鎖もしくは分岐を有するアルキル基としては、例えば、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ウンデシル基、イソウンデシル基、n−ドデシル基、イソドデシル基、n−トリデシル基、イソトリデシル基、n−テトラデシル基、イソテトラデシル基、n−ペンタデシル基、イソペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、イソヘプタデシル基、n−オクタデシル基、イソオクタデシル基などを挙げることができる。
【0054】
炭素数8〜18の直鎖もしくは分岐を有するアルケニル基としては、例えば、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基などを挙げることができる。
【0055】
炭素数8〜18の直鎖もしくは分岐を有するアルキルアリール基としては、例えば、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基、ブチルナフチル基、ヘキシルナフチル基、オクチルナフチル基若しくはそれらのスチレン類(スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン)付加物、またはベンジルクロライド反応物などを挙げることができる。
【0056】
なかでも、機能性繊維製品の帯電防止性、吸水性とそれらの洗濯耐久性の観点から、炭素数10〜18のアルキル基が好ましく、炭素数10〜16のアルキル基がより好ましく、炭素数12のアルキル基がさらに好ましい。
【0057】
で表される炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などを挙げることができる。炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、1−メチル−1−ヒドロキシエチル基、1−メチル−2−ヒドロキシエチル基などを挙げることができる。炭素数2〜4のアルケニル基としては、例えば、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基などを挙げることができる。炭素数2〜4のヒドロキシアルケニル基としては、例えば、ヒドロキシエテニル基、ヒドロキシプロペニル基、ヒドロキシブテニル基などを挙げることができる。なかでも、機能性繊維製品の帯電防止性、吸水性とそれらの洗濯耐久性の観点から、炭素数1〜2のアルキル基およびヒドロキシアルキル基が好ましい。
【0058】
m−で表されるアニオンとしては、第四級アンモニウム化合物と対イオンを形成することができるアニオンであれば特に制限はなく、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グルコン酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸などの一価または多価カルボン酸イオン、アルキルリン酸イオン、アルキル硫酸イオン、ハロゲンイオン、硫酸水素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸2水素イオン、リン酸1水素イオンなどを挙げることができる。なかでも、機能性繊維製品の帯電防止性の点から、ハロゲンイオン、炭素数が1〜2のアルキル硫酸イオン、カルボン酸イオン、アルキルリン酸イオン、硝酸イオンが好ましい。Xm−で表されるアニオンにおいて、mは1〜3の整数であるのが好ましく、より好ましくは1または2であり、さらに好ましくは1である。
【0059】
一般式[3]で表されるカチオン性化合物(B)は、機能性繊維製品の洗濯耐久性の観点からは20℃で固形であることが好ましい。ここで、20℃で固形であるとは、50gのカチオン化合物(B)を加熱溶融して200mLのガラス瓶に入れ、20℃で24時間放置したのち、この200mLのガラス瓶を90度傾けたときに、1分後に瓶の口からカチオン化合物(B)が流れ出ない状態をいう。
【0060】
一般式[3]で表される化合物としては、市販品を用いることができ、例えば、エレガン264−WAX(メチルエチルヤシアルキルアンモニウムエチルサルフェート)(日油株式会社製)、アーカードC−50(トリメチルヤシアルキルアンモニウムクロライド)、アーカード16−29(トリメチルセチルアルキルアンモニウムクロライド)(以上、花王株式会社製)などが挙げられる。
【0061】
また、一般式[3]で表される化合物は、定法に従って3級アミンとジメチル硫酸もしくはジエチル硫酸とを反応させることにより、またはカルボン酸イオン、アルキルリン酸イオン、アルキル硫酸イオン、硝酸イオンなどを対イオンとして3級アミンにエチレンオキサイドを反応させることにより得ることができる。
【0062】
一般式[3]で表される化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
カチオン性ポリマー(C)の構成成分である一般式[4]で表される化合物において、Rは水素またはメチル基であるが、機能性繊維製品の洗濯耐久性の観点からメチル基であることが好ましい。
【0064】
で表される炭素数1〜4のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などを挙げることができる。炭素数1〜4のヒドロキシアルキレン基としては、例えば、ヒドロキシメチレン基、ヒドロキシエチレン基、ヒドロキシプロピレン基、ヒドロキシブチレン基などを挙げることができる。なかでも、機能性繊維製品の帯電防止性と吸水性の観点から炭素数1〜2のアルキレン基およびヒドロキシアルキレン基が好ましい。
【0065】
で表される炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基を挙げることができる。炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、1−メチル−1−ヒドロキシエチル基、1−メチル−2−ヒドロキシエチル基などを挙げることができる。炭素数2〜4のアルケニル基としては、例えば、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基を挙げることができる。なかでも、機能性繊維製品の帯電防止性と吸水性の観点から、炭素数1〜2のアルキル基およびヒドロキシアルキル基が好ましい。
【0066】
m−で表されるアニオンとしては、前述と同じものを挙げることができる。
【0067】
一般式[4]で表される化合物としては、市販品を用いることができ、例えば、DMAEA−Q(N,N,N―トリメチル−N−(2−メタクリロイルオキシエチル)−アンモニウムクロライド)、DMAPAA−Q(N,N,N―トリメチル−N−(3−メタクリロイルアミノプロピル)−アンモニウムクロライド)(以上、興人株式会社製)、ブレンマーQA(N,N,N,−トリメチル−N−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)アンモニウムクロライド)(日油株式会社製)などが挙げられる。
【0068】
一般式[4]で表される化合物は、定法に従って下記一般式[6]で表される3級アミンとジアルキル硫酸(例えば、ジメチル硫酸やジエチル硫酸)とを反応させることにより、またはカルボン酸イオン、アルキルリン酸イオン、アルキル硫酸イオン、硝酸イオンなどを対イオンとして一般式[6]で表される3級アミンにエチレンオキサイドを反応させることにより得ることができる。
【0069】
【化5】

【0070】
(式中、Rは水素またはメチル基を表し、Rは炭素数1〜4のアルキレン基またはヒドロキシアルキレン基を表し、Rは同一であっても相異なっていてもよく、炭素数1〜4のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基または炭素数2〜4のアルケニル基を表し、−Y−は−O−または−N(H)−を表す)
【0071】
一般式[4]で表される化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
一般式[5]で表される化合物において、R10で表される炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などを挙げることができる。炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、1−メチル−1−ヒドロキシエチル基、1−メチル−2−ヒドロキシエチル基などを挙げることができる。炭素数2〜4のアルケニル基としては、例えば、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基などを挙げることができる。なかでも、機能性繊維製品の帯電防止性と吸水性の観点から、炭素数1〜2のアルキル基およびヒドロキシアルキル基が好ましい。
【0073】
m−で表されるアニオンとしては、前述と同じものを挙げることができる。
【0074】
一般式[5]で表される化合物としては、市販品を用いることができ、例えば、DADMAC(ダイソー株式会社製)などが挙げられる。
【0075】
一般式[5]で表される化合物は、定法に従って、例えば、ジアリルアミンもしくはジアリルアルキルアミンと、ハロゲン化アルキルとを反応させることにより、または苛性ソーダの存在下に、ジアルキルアミンとアリルハライドとを反応させることにより得ることができる。
【0076】
一般式[5]で表される化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0077】
カチオン性ポリマー(C)は、一般式[4]で表される化合物および一般式[5]で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含む単量体組成物を、水性媒体中で、重合開始剤を用いて50〜95℃で30分〜24時間ラジカル重合反応させることによって合成することができる。
【0078】
カチオン性ポリマー(C)の重合時に、親水性溶剤を含む水溶液中に含まれる一般式[4]で表される化合物および一般式[5]で表される化合物の総量は5〜20質量%であることが好ましい。5質量%未満であるとカチオン性ポリマー(C)の反応率が下がる傾向にあり、20質量%を超えるとカチオン性ポリマー(C)が増粘し、製品化が困難となる傾向にある。
【0079】
カチオン性ポリマー(C)の重合時に使用することができる水性媒体としては、非イオン性ポリマー(A)の重合時に使用したものと同じものを挙げることができる。
【0080】
カチオン性ポリマー(C)の重合時に使用することができる重合開始剤としては、非イオン性ポリマー(A)の重合時に使用したものと同じものを挙げることができる。重合開始剤は、一般式[4]で表される化合物および一般式[5]で表される化合物の総量に対して0.1〜2質量%の量で使用することが好ましく、より好ましくは0.5〜1.0質量%である。0.1質量%未満の場合は、機能性繊維製品の帯電防止性と吸水性およびそれらの洗濯耐久性が劣る傾向にある。2.0質量%以上では、機能性繊維製品の洗濯耐久性が劣る傾向にある。
【0081】
カチオン性ポリマー(C)の重合時の温度は50〜95℃が好ましく、70〜90℃であるのがさらに好ましい。50℃以下では反応が進行しにくい傾向にあり、95℃を超える場合は重合反応を制御することが困難になる傾向にある。
【0082】
カチオン性ポリマー(C)においては、単量体(構造単位)の配列には特に制限はなく、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であっても、交互共重合体であってもかまわない。
【0083】
カチオン性ポリマー(C)に対しては、構造単位として、アクリルアミド、ビニルアミン塩、ビニルピロリドン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、ダイアセトンアクリルアミド、メタアクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキル(C1〜18)、ポリジメチルシロキサンモノメタクリレートなどの共重合可能な他の単量体をも、本発明の効果を阻害しない範囲で使用可能である。
【0084】
本発明のカチオン性ポリマー(C)は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0085】
本発明の合成繊維用耐久吸水帯電防止剤において、非イオン性ポリマー(A)とカチオン性化合物(B)および/またはカチオン性ポリマー(C)との配合比率(質量基準)は、(A):(B)、(A):(C)または(A):〔(B)+(C)〕=30:70〜80:20であるが、40:60〜70:30である場合がより好ましい。非イオン性ポリマー(A)が(カチオン性化合物(B)および/またはカチオン性ポリマー(C))に対して30:70未満の場合は、洗濯耐久性が低下する傾向がある。80:20を超える場合は、帯電防止性が低下する傾向がある。
【0086】
本発明の合成繊維用耐久吸水帯電防止剤は、非イオン性ポリマー(A)とカチオン性化合物(B)および/またはカチオン性ポリマー(C)とを含む1液型の形態となっていてもよく、また、例えば、非イオン性ポリマー(A)を含む第1の組成物と、カチオン性化合物(B)および/またはカチオン性ポリマー(C)を含む第2の組成物との2液型であってもよい。
【0087】
本発明の合成繊維用耐久吸水帯電防止剤あるいは本発明の合成繊維用耐久吸水帯電防止剤を含む処理液を作製する場合、非イオン性ポリマー(A)とカチオン性化合物(B)および/またはカチオン性ポリマー(C)の添加順や添加法などは、どのような順番や方法であってもかまわない。
【0088】
本発明の合成繊維用耐久吸水帯電防止剤は、本発明の効果を損なわない範囲において、本発明以外の帯電防止剤、非イオン活性剤、アニオン活性剤、カチオン活性剤、両性界面活性剤、柔軟剤、抗菌剤、紫外線防止剤、平滑剤、浸透剤、均染剤、制電剤、キレート剤、酸化防止剤、消泡剤、溶剤、合成樹脂、架橋剤、安定剤、増粘剤などの通常用いられる他の各種成分を組み合わせて、併用または配合することができる。
【0089】
本発明によれば、本発明の合成繊維用耐久吸水帯電防止剤を種々の合成繊維に対して付与することで、良好な耐久吸水帯電防止性を発現することができ、良好な耐久吸水帯電防止性が付与された機能性繊維製品を得ることができる。
【0090】
本発明の合成繊維用耐久吸水帯電防止剤を用いて合成繊維を処理し機能性繊維製品を得る方法に制限はなく、従来公知の方法、例えば、浸漬処理法、パディング法(マングル−パッド法)、スプレー法、グラビア法、コーティング法などを採用することができる。
【0091】
コーティングの場合、例えば、本発明の合成繊維用耐久吸水帯電防止剤をバインダーに混合したものを使用することができる。この場合、バインダー中に非イオン性ポリマー(A)とカチオン性化合物(B)および/またはカチオン性ポリマー(C)との合計の濃度が、例えば、0.1〜10質量%の範囲であることが好ましい。
【0092】
スプレーの場合は、非イオン性ポリマー(A)とカチオン性化合物(B)および/またはカチオン性ポリマー(C)との合計の濃度が、例えば、1〜10質量%の範囲の溶液を使用してスプレー処理することが好ましい。
【0093】
合成繊維にコーティング、スプレーにて塗布する場合、非イオン性ポリマー(A)とカチオン性化合物(B)および/またはカチオン性ポリマー(C)との合計が0.1〜20g/mとなるように付与して使用することができる。0.1g/m未満では十分な耐久吸水帯電防止効果が発揮され難く、20g/mを超えて使用しても効果の向上は少なく、経済的ではない。
【0094】
浸漬処理の場合は、処理浴の濃度は、非イオン性ポリマー(A)とカチオン性化合物(B)および/またはカチオン性ポリマー(C)との合計の濃度が、例えば、0.01〜10%o.w.f.の範囲であることが好ましく、パディング処理の場合は、処理浴の濃度は、非イオン性ポリマー(A)とカチオン性化合物(B)および/またはカチオン性ポリマー(C)との合計の濃度が、例えば、0.01〜10質量%の範囲であることが好ましい。
【0095】
合成繊維に浸漬処理、パディング処理で付与する場合、繊維質量に対して非イオン性ポリマー(A)とカチオン性化合物(B)および/またはカチオン性ポリマー(C)との合計が0.1〜5質量%となるように付与して使用することができる。0.1質量%未満では十分な耐久吸水帯電防止効果が発揮され難く、5質量%を超えて使用しても効果の向上は少なく、経済的ではない。
【0096】
浸漬処理法による場合、例えば、合成繊維を浴比1〜100倍の処理浴に浸漬し、70〜150℃で10〜90分間処理することが好ましい。浴比が1倍未満であると、合成繊維に本発明の合成繊維用耐久吸水帯電防止剤を均一に付与することができず、付着斑が生じるおそれがある。浴比が100倍を超える場合、処理温度が70℃未満の場合やあるいは処理時間が10分未満の場合、耐久吸水帯電防止効果を発現するのに必要な量の合繊用耐久吸水帯電防止剤を効率的に合成繊維に付与できないおそれがある。処理温度が150℃を超え、あるいは90分を超えて処理しても、吸水性、帯電防止性は頭打ちとなり、過剰に処理するばかりで、エネルギーおよびコストなどの面から好ましくない。より好ましい処理条件は、浴比5〜30倍、処理温度70〜140℃、処理時間15〜60分である。染色と同時に処理を行う場合は、染色性を考慮し、適宜条件を設定することができる。なお、処理浴が強アルカリの場合、非イオン性ポリマー(A)が加水分解し、十分な耐久吸水帯電防止効果が得られなくなるおそれがあることから、処理浴はpH7以下の中性〜酸性であることが望ましい。
【0097】
パディング法(マングル−パッド法)による処理の場合、その具体的な方法は特に制限されるものではないが、処理浴に合成繊維を浸漬後、マングルで絞り、乾燥させる方法が挙げられる。
【0098】
本発明の合成繊維用耐久吸水帯電防止剤においては、非イオン性ポリマー(A)を含む処理液で浴中処理したあとに、非イオン性ポリマー(A)とカチオン性化合物(B)および/またはカチオン性ポリマー(C)とを併用した処理浴をパディングして付着させる方法が最も性能が発現する方法である。
【0099】
乾燥方法としては、特に制限はなく、乾熱法、湿熱法のいずれであってもよい。乾燥温度も特に制限されないが、例えば、10〜200℃で10秒〜数日間乾燥させればよい。必要に応じて、乾燥後に100〜180℃の温度で10秒〜5分間程度加熱処理(キュアリング)してもよい。
【0100】
本発明の合成繊維用耐久吸水帯電防止剤組成物は、ポリエステル、アクリル、ナイロン、ウレタンなどの合成繊維に使用することができ、特にアクリル系の合成繊維に使用することが好ましい。
【0101】
アクリル系の合成繊維としては、アクリロニトリルを50質量%以上含有する共重合体からなるポリアクリロニトリル繊維、モダアクリル繊維、もしくはこれらの繊維と他の繊維との複合繊維からなる繊維製品が挙げられる。アクリル系繊維と組み合わせることができるアクリル系繊維以外の繊維としては、特に制限はなく、合成繊維、半合成繊維、再生繊維、天然繊維などを挙げることができ、これらが2種類以上組み合わされていてもよい。また、アクリル系繊維とアクリル系繊維以外の繊維の比率についても特に制限はないが、アクリル系繊維以外の繊維は、アクリル系繊維に起因する繊維製品の物性を損なわない範囲であることが好ましく、繊維製品の60質量%を超えない範囲であることが好ましい。また、アクリル系の合成繊維の形態に特に制限はなく、例えば、短繊維、長繊維、糸、織物、編物、わた、スライバー、トップ、不織布などのいずれの形態での繊維製品であってもよい。
【0102】
本発明の合成繊維用耐久吸水帯電防止剤が付与された合成繊維が良好な帯電防止性と吸水性およびそれらの洗濯耐久性帯を持つ理由は定かではないが、処理された合成繊維表面において、三次元構造の特定の非イオン性ポリマー中に特定のカチオン性化合物および/またはカチオン性ポリマーが点在するような構造となり、非イオン性ポリマーとカチオン性化合物および/またはカチオン性ポリマーとを特定の比率で使用した相乗効果で帯電防止性と吸水性およびそれらの洗濯耐久性という、相反する性能を両立することが可能になったものと考えられる。
【実施例】
【0103】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0104】
評価試験
吸水性の評価
JIS L 1907:2010 7.1.1滴下法に従って評価を行った。
【0105】
帯電防止性
JIS L 1094:1997 5.2摩擦帯電圧測定法に従って評価を行った。
【0106】
臭気
合成例1〜12および比較合成例4、5、7、8で得られた非イオンポリマー(500g)を、70℃×700mmHgの条件で脱アクリロニトリル処理を行い、下記の基準に従って臭気を評価した。
【0107】
○:10分でアクリロニトリル臭が全くしない。
△:15分でアクリロニトリル臭が全くしない。
×:20分でアクリロニトリル臭が全くしない。
【0108】
合成例1
攪拌機、温度計、冷却管を備えた4つ口フラスコに、アクリロニトリル(15質量部)、一般式[1]の化合物としてポリエチレングリコール(n=23)メチルエーテルメタクリレート(商品名:ブレンマーPME−1000、日油株式会社製)(以下「PME1000」と略記する)(133.5質量部)、一般式[2]の化合物としてポリエチレングリコール(n=13)ジメタクリレート(商品名:ブレンマーPDE−600、日油株式会社製)(以下「PDE600」と略記する)(1.5質量部)、イオン交換水(849.25質量部)を仕込み、窒素ガス存在下で混合しながら昇温した。70℃に到達後、重合開始剤として2,2‘−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(商品名:V−50、和光純薬工業株式会社製)(以下「V50」と略す)(0.75質量部)仕込み、70℃×6時間反応し、非イオン性ポリマー(A)成分を14質量%含む黄色透明液状の非イオン性ポリマー水性組成物を得た。反応率は93%であった。
【0109】
反応率は下記の式より求めた。
反応率(%)=(α/β)×100
α:非イオン性ポリマー水性組成物の不揮発分(非イオン性ポリマー水性組成物中の非イオン性ポリマー成分の割合)
β:全仕込量中の単量体の使用割合
【0110】
非イオン性ポリマー水性組成物の不揮発分は、非イオン性ポリマー水性組成物(5g)を105℃×4時間乾燥させた後の残量から下記の式によって計算した。
非イオン性ポリマー水性組成物の不揮発分=〔105℃×4時間乾燥させた後の残量(g)/5〕×100
本発明において、各組成物や溶液の不揮発分は上記と同様にして求めた。
【0111】
合成例2
アクリロニトリル(30質量部)、PME1000(118.5質量部)にした以外は合成例1と同様に合成を行い、非イオン性ポリマー(A)成分を13.8質量%含む黄色透明液状の非イオン性ポリマー水性組成物を得た。反応率は92%であった。
【0112】
合成例3
アクリロニトリル(43.5質量部)、PME1000(105質量部)にした以外は合成例1と同様に合成を行い、非イオン性ポリマー(A)成分を14質量%含む黄色透明液状の非イオン性ポリマー水性組成物を得た。反応率は93%であった。
【0113】
合成例4
アクリロニトリル(60質量部)、PME1000(88.5質量部)にした以外は合成例1と同様に合成を行い、非イオン性ポリマー(A)成分を13.8質量%含む黄色透明液状の非イオン性ポリマー水性組成物を得た。反応率は92%であった。
【0114】
合成例5
アクリロニトリル(45質量部)、PME1000(100.5質量部)、PDE600(4.5質量部)にした以外は合成例1と同様に合成を行い、非イオン性ポリマー(A)成分を13.6質量%含む黄色透明粘液状の非イオン性ポリマー水性組成物を得た。反応率は91%であった。
【0115】
合成例6
アクリロニトリル(52.5質量部)、PME1000(113.75質量部)、PDE600(8.75質量部)、親水性溶剤としてイソプロピルアルコール(8.75質量部)、イオン交換水(815.725質量部)、V50(0.525質量部)にした以外は合成例1と同様に合成を行い、非イオン性ポリマー(A)成分を15.4質量%含む黄色透明粘液状の非イオン性ポリマー水性組成物を得た。反応率は88%であった。
【0116】
合成例7
アクリロニトリル(45質量部)、PME1000(102質量部)、一般式[2]の化合物として両末端メタクリル変性シリコーン(商品名:X−22−164AS、官能基当量860g/mol、信越化学工業株式会社製)(以下「164AS」と略記する)の10%水溶液(界面活性剤としてソフタノール70を3%使用して乳化)(30質量部)、イオン交換水(822.25質量部)にした以外は合成例1と同様に合成を行い、非イオン性ポリマー(A)成分を13.5質量%含む黄色濁液状の非イオン性ポリマー水性組成物を得た。反応率は90%であった。
【0117】
合成例8
アクリロニトリル(45質量部)、一般式[1]の化合物としてポリエチレングリコール(n=45)メチルエーテルメタクリレート(定法によりメトキシ PEG−2000(東邦化学工業株式会社製、ポリエチレングリコール(n=45)モノメチルエーテル)とアクリル酸メチルとのエステル交換反応により製造)(以下「PME2000」と略記する)(103.5質量部)にした以外は合成例1と同様に合成を行い、非イオン性ポリマー(A)成分を13.8質量%含む黄色透明液状の非イオン性ポリマー水性組成物を得た。反応率は92%であった。
【0118】
合成例9
アクリロニトリル(45質量部)、一般式[1]の化合物としてポリエチレングリコール(n=90)メチルエーテルメタクリレート(商品名:ブレンマーPME−4000、日油株式会社製)(以下「PME4000」と略記する)(35.1質量部)とPME1000(68.4質量部)を併用した以外は合成例1と同様に合成を行い、非イオン性ポリマー(A)成分を13.6質量%含む黄色透明液状の非イオン性ポリマー水性組成物を得た。反応率は91%であった。
【0119】
PME4000はオキシエチレン基の付加モル数が90(PME4000中のポリオキシエチレンの分子量が3960(約4000))であり、PME1000はオキシエチレン基の付加モル数が23(PME1000中のポリオキシエチレンの分子量が1012(約1000))であるため、加重平均を行いポリオキシエチレンの分子量を2000相当とした。
【0120】
PME4000をPME4000とPME1000の合計の34質量%、PME1000をPME4000とPME1000の合計の66質量%使用することで、PME2000を100質量%使用した場合と同等のポリオキシエチレンの分子量とした。
【0121】
合成例10
アクリロニトリル(50.75質量部)、PME1000(122.5質量部)、PDE600(1.75質量部)イソプロピルアルコール(8.75質量部)を溶剤として使用し、イオン交換水(815.725質量部)、重合開始剤としてV50(0.525質量部)にした以外は合成例1と同様に合成を行い、非イオン性ポリマー(A)成分を15.6質量%含む黄色透明液状の非イオン性ポリマー水性組成物を得た。反応率は89%であった。
【0122】
合成例11
アクリロニトリル(50.75質量部)、PME1000(122.5質量部)、PDE600(1.75質量部)、イソプロピルアルコール(17.5質量部)、イオン交換水(806.975質量部)、V50(0.525質量部)にした以外は合成例1と同様に合成を行い、非イオン性ポリマー(A)成分を15.2質量%含む黄色透明液状の非イオン性ポリマー水性組成物を得た。反応率は87%であった。
【0123】
合成例12
アクリロニトリル(50.75質量部)、PME1000(122.5質量部)、PDE600(1.75質量部)、親水性溶剤としてイソプロピルアルコール(26.25質量部)、イオン交換水(798.225質量部)、V50(0.525質量部)にした以外は合成例1と同様に合成を行い、非イオン性ポリマー(A)成分を14.5質量%含む黄色透明液状の非イオン性ポリマー水性組成物を得た。反応率は83%であった。
【0124】
合成例13
アクリロニトリル(50.75質量部)、PME1000(122.5質量部)、PDE600(1.75質量部)、親水性溶剤としてイソプロピルアルコール(35質量部)、イオン交換水(789.475質量部)、V50(0.525質量部)にした以外は合成例1と同様に合成を行い、非イオン性ポリマー(A)成分を14.0質量%含む黄色透明液状の非イオン性ポリマー水性組成物を得た。反応率は80%であった。
【0125】
合成例14
アクリロニトリル(50.75質量部)、PME1000(122.5質量部)、PDE600(1.75質量部)、親水性溶剤としてイソプロピルアルコール(43.75質量部)、イオン交換水(781.075質量部)、V50(0.175質量部)にした以外は合成例1と同様に合成を行い、非イオン性ポリマー(A)成分を12.9質量%含む黄色透明液状の非イオン性ポリマー水性組成物を得た。反応率は74%であった。
【0126】
合成例15
攪拌機、温度計、冷却管を備えた4つ口フラスコに3級アミンとしてジメチルオクチルアミン(商品名:ファーミンDM−0898、花王株式会社製)(101.4質量部)を仕込み、窒素ガス存在下で80〜90℃で4級化剤としてジメチル硫酸(78.6質量部)を6時間かけて滴下後、90〜100℃で1時間反応した。その後、80℃の熱水(720質量部)を仕込み、カチオン性化合物(B)成分を20質量%含む微黄色透明液状のカチオン性水性組成物を得た。
【0127】
合成例16
3級アミンとしてジメチルココナットアミン(商品名:ファーミンDM−24C、花王株式会社製)(108質量部)、4級化剤としてジエチル硫酸(72質量部)にした以外は合成例15と同様に合成を行い、カチオン性化合物(B)成分を20質量%含む無色透明液状のカチオン性水性組成物を得た。
【0128】
合成例17
3級アミンとしてジメチルパルミチルアミン(商品名:ファーミンDM−6098、花王株式会社製)(57.6質量部)、イソプロピルアルコール(10質量部)、4級化剤としてジエチル硫酸(32.4質量部)、80℃の熱水(800質量部)にした以外は合成例15と同様に合成を行い、カチオン性化合物(B)成分を10質量%含む微濁液状のカチオン性水性組成物を得た。
【0129】
合成例18
3級アミンとしてジメチルステアリルアミン(商品名:ファーミンDM−8098、花王株式会社製)(60質量部)、イソプロピルアルコール(10質量部)、4級化剤としてエチル硫酸(30質量部)、80℃の熱水(800質量部)にした以外は合成例15と同様に合成を行い、カチオン性化合物(B)成分を10質量%含む微濁液状のカチオン性水性組成物を得た。
【0130】
合成例19
攪拌機、温度計、冷却管を備えた4つ口フラスコにメタクリル酸ジメチルアミノエチル(商品名:メタクリレートDMA−200、三洋化成工業株式会社製)(110質量部)、イソプロピルアルコール(50質量部)を仕込み、窒素ガス存在下で60〜70℃で4級化剤としてジメチル硫酸(90質量部)を6時間かけて滴下した。その後、60〜70℃で1時間反応させることで、一般式[4]で示される化合物(不揮発分80%)を得た。続いてイオン交換水(750質量部)と重合開始剤として過硫酸カリウム(1.5質量部)仕込み、80〜90℃で3時間反応させ、カチオン性ポリマー(C)成分を20質量%含む淡褐色透明液状のカチオン性水性組成物を得た。
【0131】
合成例20
攪拌機、温度計、冷却管を備えた4つ口フラスコに、一般式[5]で示される化合物としてジアリルジメチルアンモニウムクロライド(商品名:DADMAC、ダイソー株式会社製、不揮発分65質量%)(200質量部)(不揮発分の換算で130質量部)とイオン交換水(798質量部)を仕込み、窒素ガス存在下で昇温し混合した。80℃に到達後、重合開始剤として過硫酸ナトリウム(2質量部)仕込み、80〜90℃で4時間反応させ、カチオン性ポリマー(C)成分を13質量%含む淡褐色透明液状のカチオン性水性組成物を得た。
【0132】
合成例21
攪拌機、温度計、冷却管を備えた4つ口フラスコに、一般式[4]で示される化合物としてN,N,N―トリメチル−N−(2−メタクリロイルオキシエチル)−アンモニウムクロライド)(商品名:DMAEA−Q、興人株式会社製)(200質量部)、イオン交換水(800質量部)を仕込み、窒素ガス存在下で昇温し混合した。80℃に到達後、重合開始剤として過硫酸カリウム(4質量部)仕込み、80〜90℃で4時間反応させ、カチオン性ポリマー(C)成分を20質量%含む淡褐色透明液状のカチオン性水性組成物を得た。
【0133】
比較合成例1
アクリロニトリル(7.5質量部)、PME1000(141質量部)にした以外は合成例1と同様に合成を行った。反応開始直後にゲル状となり、反応の継続は困難であった。また、希釈した場合に均一液状にならなかったため、評価に使用することはできなかった。
【0134】
比較合成例2
アクリロニトリル(67.5質量部)、PME1000(81質量部)にした以外は合成例1と同様に合成を行った。反応後は、透明ゲル状物を多量に含む黄色濁粘液状となり、希釈した場合に均一液状にならなかったため、評価に使用することはできなかった。
【0135】
比較合成例3
アクリロニトリル(45質量部)、PME1000(94.5質量部)、PDE600(10.5質量部)にした以外は合成例1と同様に合成を行った。反応開始直後にゲル状となり、反応の継続は困難であった。また、希釈した場合に均一液状にならなかったため、評価に使用することはできなかった。
【0136】
比較合成例4
アクリロニトリル(45質量部)、PDE600(0質量部)にした以外は合成例1と同様に合成を行い、非イオン性ポリマー成分を13.7質量%含む黄色透明液状の非イオン性ポリマー水性組成物を得た。反応率は91%であった。
【0137】
比較合成例5
一般式[1]の化合物としてPME4000(105質量部)にした以外は合成例1と同様に合成を行い、非イオン性ポリマー成分を13.4質量%含む黄色透明粘液状の非イオン性ポリマー水性組成物を得た。反応率は89%であった。
【0138】
比較合成例6
一般式[1]の化合物としてPME400(105質量部)にした以外は合成例1と同様に合成を行った。反応開始直後にゲル状となり、反応の継続は困難であった。また、希釈した場合に均一液状にならなかったため、評価に使用することはできなかった。
【0139】
比較合成例7
アクリロニトリル(52.5質量部)、PME4000(105質量部)、グリシジルメタクリレート(商品名:ブレンマーG、日油株式会社製)(17.5質量部)、イオン交換水(807.325質量部)、V50(0.175質量部)、イソプロピルアルコール(17.5質量部)とした以外は合成例1と同様に合成を行い、非イオン性ポリマー成分を14.9質量%含む黄色透明液状の非イオン性ポリマー水性組成物を得た。反応率は85%であった。
【0140】
比較合成例8
アクリロニトリル(52.5質量部)、その他の化合物としてポリテトラメチレングリコール(分子量1000)(商品名:PTMG1000(三菱化学株式会社製)1モルに対しエチレンオキサイドを10モル付加させたポリテトラメチレングリコールのエチレンオキサイド付加物とメタクリル酸メチルを定法によりエステル交換して得られたポリテトラメチレングリコールのエチレンオキサイド付加物メタクリレート(以下「化合物1」と略記する)(122.5質量部)、イオン交換水(807.325質量部)、V50(0.175質量部)、イソプロピルアルコール(17.5質量部)とした以外は合成例1と同様に合成を行い、非イオン性ポリマー成分を14.5質量%含む黄色透明液状の非イオン性ポリマー水性組成物を得た。反応率は83%であった。
【0141】
比較合成例9
比較合成例8においてイソプロピルアルコールを使用せずに、イオン交換水(824.825質量部)とした以外は比較合成例8と同様に合成を行った。反応後は、透明ゲル状物を多量に含む黄色濁粘液状となり、希釈した場合に均一液状にならなかったため、評価に使用することはできなかった。
【0142】
比較合成例10
比較合成例9においてイソプロピルアルコールを使用せずに、イオン交換水(824.825質量部)とした以外は比較合成例9と同様に合成を行った。反応後は、透明ゲル状物を多量に含む黄色濁粘液状となり、希釈した場合に均一液状にならなかったため、評価に使用することはできなかった。
【0143】
比較調整例1
攪拌機、温度計、冷却管を備えた4つ口フラスコにトリメチルベヘニルアンモニウムクロライド(以下「VBM」と略記する)(商品名:カチオンVB−Mフレーク、日油株式会社製)(125質量部)とイソプロピルアルコール(50質量部)を仕込み、90〜100℃で1時間混合し、80℃の熱水を(825質量部)仕込み、カチオン性化合物成分を10質量%含む白色粘液状のカチオン性水性組成物を得た。
【0144】
合成例1〜14、合成例15〜21、および比較合成例1〜9および比較調整例1の仕込組成および評価結果をそれぞれ下記の表1、表2および表3に示す。
【0145】
【表1】

【0146】
【表2】

【0147】
【表3】

【0148】
実施例1(パッド処理)
カチオン染料(商品名:AIZEN Cathilon Red K−GLH、保土ヶ谷化学工業株式会社製)(1.0%o.w.f.)、均緩染剤(商品名:サンレタルダーPN、日華化学株式会社製)(1.0%o.w.f.)、酢酸(0.4g/L)を含む染色浴にアクリルジャージ(色染社)を浴比1:20にて浸漬し、撹拌しながら50℃から1℃/分で昇温し、98〜100℃で40分間染色した。その後50℃まで冷却し、水洗、脱水後、熱風乾燥機中で80℃にて1時間乾燥して、アクリルジャージ染色布を得た。
【0149】
非イオン性ポリマー(A)成分として合成例1で得られた組成物(487質量部)(不揮発分の換算で68.2質量部)、カチオン性化合物(B)成分として合成例16で得られた組成物(513質量部)(不揮発分の換算で102.6質量部)を混合容器に仕込み、撹拌均一に混合して、不揮発分17.1質量%で黄色透明液状の合成繊維用耐久吸水帯電防止剤を得た。
【0150】
この合成繊維用耐久吸水帯電防止剤を水で希釈して、不揮発分濃度2.0質量%の処理液を調製した。これに上記で得られたアクリルジャージ染色布を浸漬し、ピックアップ率100%になるようにロールで絞り、120℃で3分間乾燥して機能性繊維製品を得た。
【0151】
この機能性繊維製品の洗濯(JIS L 0217(1995)付表1の103法)前後での吸水性(洗濯0回と10回)、帯電防止性(洗濯0回と5回)の評価を行った。その結果を表4に示す。
【0152】
実施例2〜25および比較例1〜13
非イオン性ポリマー(A)、カチオン性化合物(B)、カチオン性ポリマー(C)を表4〜6に記載のものに代えた以外は実施例1と同様に操作して実施例2〜25および比較例1〜13の機能性繊維製品を得た。
【0153】
この機能性繊維製品の洗濯(JIS L 0217(1995)付表1の103法)前後での吸水性(洗濯0回と10回)、帯電防止性(洗濯0回と5回)の評価を行った。
その結果を表4〜6に示す。
【0154】
実施例26(染色併用→パッド処理:二段処理)
カチオン染料(商品名:AIZEN Cathilon Red K−GLH、保土ヶ谷化学工業株式会社製)(1.0%o.w.f.)、均緩染剤(商品名:サンレタルダーPN、日華化学株式会社製)(1.0%o.w.f.)、酢酸(0.4g/l)、非イオン性ポリマー(A)成分として合成例1で得られた組成物(2.9%o.w.f.)(不揮発分の換算で0.4%o.w.f.)を含む染色浴にアクリルジャージ(色染社)を浴比1:20にて浸漬し、撹拌しながら50℃から1℃/分で昇温し、98〜100℃で40分間染色した。その後50℃まで冷却し、水洗、脱水して、アクリルジャージ染色布(非イオンポリマー併用処理)を得た。
【0155】
非イオン性ポリマー(A)成分として合成例1で得られた組成物(714質量部)(不揮発分の換算で100質量部)、カチオン性化合物(B)成分として合成例16で得られたカチオン性化合物(B)(4級化後希釈する前のものを使用した)を167質量部と水119質量部を混合容器に仕込み、撹拌均一に混合して、不揮発分26.7質量%で黄色透明液状の合成繊維用耐久吸水帯電防止剤を得た。
【0156】
この合成繊維用耐久吸水帯電防止剤を水で希釈して、不揮発分濃度1.6質量%の処理液を調製した。これに上記で得られたアクリルジャージ染色布(非イオンポリマー併用処理)を浸漬し、ピックアップ率100%になるようにロールで絞り、120℃で3分間乾燥して機能性繊維製品を得た。
【0157】
この機能性繊維製品の洗濯(JIS L 0217(1995)付表1の103法)前後での吸水性(洗濯0回と10回)、帯電防止性(洗濯0回と5回)の評価を行った。
その結果を表4に示す。
【0158】
【表4】

【0159】
【表5】

【0160】
【表6】

【0161】
評価試験の結果より、特定の単量体を特定の割合で共重合させた特定の非イオン性ポリマーと特定のカチオン性化合物及び/又は特定のカチオン性ポリマーとを特定の比率で含む本発明の合成繊維用耐久吸水帯電防止剤は、合成繊維に対して優れた帯電防止性と吸水性及びそれらの洗濯耐久性を付与することができることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0162】
本発明により得られる機能性繊維製品は、優れた帯電防止性と吸水性及びそれらの洗濯耐久性を有しているため、衣料用として使用した場合、着脱時に不快な静電気が発生する問題や吸水性(吸汗性)が不足しているという問題を解消することができ、スポーツウエアや直接肌に接する衣料の素材として使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリロニトリル10〜40質量%、下記一般式[1]で表される化合物55〜89質量%および下記一般式[2]で表される化合物1〜5質量%を含む単量体組成物を水溶液中で共重合させて得られる非イオン性ポリマー(A)と、下記一般式[3]で表されるカチオン性化合物(B)および/または下記一般式[4]で表される化合物および一般式[5]で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む単量体組成物を重合させて得られるカチオン性ポリマー(C)とを、(A):(B)、(A):(C)または(A):〔(B)+(C)〕=30:70〜80:20の配合比率(質量基準)で含む合成繊維用耐久吸水帯電防止剤。
【化1】

(式中、Rは水素またはメチル基を表し、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、nは(OR)で表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数であって10〜50の整数を表し、Rは炭素数1〜3のアルキル基またはフェニル基を表す)
M−O−(RO)x−M ・・・・・[2]
(式中、Rは炭素数2〜4のアルキレン基、炭素数2〜4のヒドロキシアルキレン基またはジメチルシリレン基を表し、xは1〜30の整数を表し、Mはアクリロイル基またはメタクリロイル基を表す)
【化2】

(式中、Rは炭素数8〜18の直鎖もしくは分岐を有するアルキル基、アルケニル基、ヒドロキシアルキル基またはヒドロキシアルケニル基を表し、Rは同一であっても相異なっていてもよく、炭素数1〜4のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基または炭素数2〜4のアルケニル基もしくはヒドロキシアルケニル基を表し、Xm−はm価のアニオンを表す)
【化3】

(式中、Rは水素またはメチル基を表し、Rは炭素数1〜4のアルキレン基またはヒドロキシアルキレン基を表し、Rは同一であっても相異なっていてもよく、炭素数1〜4のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基または炭素数2〜4のアルケニル基を表し、−Y−は−O−又は−N(H)−を表し、Xm−はm価のアニオンを表す)
【化4】

(式中、R10は同一であっても相異なっていてもよく、水素、炭素数1〜4のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基または炭素数2〜4のアルケニル基を表し、Xm−はm価のアニオンを表す)
【請求項2】
請求項1に記載の合成繊維用耐久吸水帯電防止剤で処理してなる耐久吸水帯電防止性が付与された機能性繊維製品。

【公開番号】特開2013−83023(P2013−83023A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224771(P2011−224771)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000226161)日華化学株式会社 (208)
【Fターム(参考)】