説明

吊り下げ搬送装置

【目的】 大きさや形状の異なる被搬送物を、荷台に確実に固定して安全に搬送する。
【構成】 荷台Bに載置した被搬送物30を、押え板15と荷台Bとで上下より挾んで搬送するので、被搬送物30の形状や寸法に拘りなく、どのようなものでも落下することなく安全かつ確実に搬送することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、吊り下げ搬送装置により物品を搬送する際、物品を荷台に確実に固定する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】工場等においては、コンベヤで運ばれて来た被搬送物、たとえば多数の部材を収容したコンテナを、加工工程に供給したり、倉庫に収納したり、他のコンベヤに移載する際に、しばしば吊り下げ搬送装置が使用され、このような装置は下記する公報に各種提供されている。
特願平1−130434号公報実願平1−152044号公報実願平1−34004号公報実願昭63−82121号公報実願昭63−117745号公報特願昭63−228356号公報これらの装置には、いずれも搬送中に、荷台上のコンテナが振動や衝撃により横ずれしたり落下したりすることを防止する手段が設けてある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしこれらの装置の横ずれ防止手段は、いずれも被搬送物であるコンテナの高さや横幅が制約されているので、大きさの一定の多数のコンテナ等を搬送する場合は支障ないが、大きさの異なるコンテナや木箱やダンボール箱等を安全に搬送することは困難である。
【0004】本発明は、大きさや形状の異なる被搬送物を、荷台に確実に固定して安全に搬送する装置を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明の吊り下げ搬送装置は、天井等に架設したレールに沿って走行する走行台車に、モータにより昇降する荷台を吊支して、荷台に被搬送物を載置して搬送する吊り下げ搬送装置において、走行台車の直下に押え板を設け、該押え板と荷台との間に被搬送物を挾みつけて被搬送物を搬送するようにしたことを特徴としている。
【0006】押え板は、走行台車の直下に複数の吊支杆をもって昇降自在に吊支するとともに、ばねをもって下方に向けて付勢するのがよい。
【0007】また、走行台車には、押え板がばねに抗して所定限上昇したことを検知して、荷台昇降用モータを停止させる停止センサを設けるのがよい。
【0008】
【作用】本発明の装置は、荷台に載置した被搬送物を、押え板と荷台とで上下より挾んで搬送するので、被搬送物の形状や寸法に拘りなく、どのようなものでも落下することなく安全かつ確実に搬送することができる。
【0009】
【実施例】図面は、本発明の一実施例を示すもので、(1)は天井に架設したレール、(A)はレール(1)に沿って自走する台車、(B)は走行台車(A)に吊支して昇降する荷台である。
【0010】走行台車(A)の水平をなす基板(2)の前部と後部には、それぞれ前後に並んで左右方向を向く1対ずつの支持板(3)が垂設され、対をなす両支持板(3)の中央部には、左右1対の巻取りドラム(4)が枢設され、同じく両端部には、それぞれフランジ付ローラ(5)と、それに近接して平行に並ぶ押えローラ(6)とが枢設されている。
【0011】各巻取りドラム(4)に基端を止着した吊支ベルト(7)の遊端は、フランジ付ローラ(5)と押えローラ(6)の間を通過して、下方の荷台(B)の台枠(8)の4角部に止着されている。
【0012】対をなす両巻取りドラム(4)のドラム軸(4a)の内端には、同歯数のギヤ(9)が嵌設されて互いに噛合し、一方のギヤ(9)には、基板(1)の中央部に左右方向に向けて設けた両軸モータ(10)の駆動ギヤ(11)が噛合して、荷台(B)は、両軸モータ(10)により水平を保持して昇降する。
【0013】対をなす両支持板(3)の下端における両巻取りドラム(4)の両外側方には、吊支杆(12)と近接センサ(13)が垂設され、吊支杆(12)の下端には、係止ピン(14)が横向貫設されている。
【0014】基板(2)の下方において水平をなす、基板(2)より若干小形の押え板(15)の上面4角部には、下向U字形の吊支具(16)が固着され、その上片が吊支杆(12)に下方より遊嵌して、係止ピン(14)により吊支され、押え板(15)は、吊支杆(12)に巻装した圧縮ばね(17)により、下方に向けて付勢されている。
【0015】各吊支具(16)の側面には、押え板(15)が圧縮ばね(17)に抗して上昇すると、近接センサ(13)に近接して、両軸モータ(10)を停止させる感知片(18)が添設されている。
【0016】荷台(B)の台枠(8)には、プーリ(19)に掛け回された左右1対の無端ベルト(20)がモータ(21)により同方向に回走させられるようにしたベルトコンベヤ(22)が配置されている。
【0017】台枠(8)の上部におけるベルトコンベヤ(22)の両外側方に敷設した、横向きL字形に屈曲する両取付板(23)の水平部(23a)には、ベルトコンベヤ(22)とほぼ等長かつ平行をなす案内柵(24)が、側方位置調節可能に立設され、その両端には被搬送物検知用の左右対をなす2組の光電センサ(25)が設けられている。
【0018】両取付板(23)の垂直部(23b)の前後両端には、左右対向する1対ずつの回動板(26)の基部が枢支され、両回動板(26)の遊端部は、アングル形の係合板(27)の基片(27a)をもって連結され常時は外側方を向く遊片(27b)の両端近くには、端縁より係合溝(28)が切設され、両回動板(26)の遊端部間には、係合板(27)に並んで渡りローラ(29)が枢設されている。
【0019】図3と図4に示すように、多数の部材を収容したコンテナ(30)を搬送するローラコンベヤ(31)の端面における上記係合板(27)の係合溝(28)に対応する個所には、係合突起(32)が突設され、係合突起(32)には、係合溝(28)が上方より係合しうる環状溝(32a)が切設されている。
【0020】同側前後の両回動板(26)は、リンク(33)をもって連係されて、両係合板(27)と両渡りローラ(29)は、同期して反対方向に回動する。
【0021】上述の装置は、図1に示すように、係合板(27)を上方に向け、両案内杆(24)を外側方に移動させて、走行台車(A)の近くに上昇している荷台(B)を、両軸モータ(10)により下降させて、図3に示すようにローラコンベヤ(31)と等高とする。
【0022】そして、係合板(27)を外側方に向けて回動させれば、その係合溝(28)はローラコンベヤ(31)の係合突起(32)の環状溝(32a)に係合して、荷台(B)の横振れが防止され、同時に渡りローラ(29)は上外方に回動して、荷台(B)のベルトコンベヤ(22)とローラコンベヤ(31)の中間において両者と等高となって間隔が分割されて狭くなる。
【0023】同時に、案内杆(24)をローラコンベヤ(31)上のコンテナ(30)の横幅に対応して、内側方に移動させて固定する。
【0024】ついで、ローラコンベヤ(31)と荷台(B)のベルトコンベヤ(22)を作動させれば、多数の部材を収容したコンテナ(30)は、渡りローラ(29)を通過し、案内杆(24)に誘導されて、ベルトコンベヤ(22)に移乗する。
【0025】コンテナ(30)が荷台(B)に完全に移乗したことを両光電センサ(25)が検知すると、その信号によりベルトコンベヤ(22)は停止するので、回動板(26)を回動させて、係合板(27)を上方に向けるとともに、渡りローラ(29)を内上方に向けて、両軸モータ(10)により荷台(B)を上昇させる。
【0026】荷台(B)が上限近くまで上昇して、コンテナ(30)が押え板(15)を、圧縮ばね(17)に抗して押し上げると、ともに上昇する感知片(18)が近接センサ(13)に近接して、その信号により両軸モータ(10)は回転を停止し、荷台(B)は上昇を停止する。
【0027】この状態で走行台車(A)を走行させれば、コンテナ(30)は圧縮ばね(17)に下向付勢された押え板(15)により荷台(B)に押し付けられているので、搬送中の振動や衝撃により横ずれすることはなく、その間塵埃等により上面が汚れることもない。
【0028】目的の個所の上方に到達した本装置は、上述と逆に作動させることにより、搬送したコンテナ(30)を搬出することができ、コンテナ(30)は搬送中横ずれしないので、所定の姿勢で所定の個所に正しく搬出される。
【0029】なお上述の実施例においては、被搬送物をコンテナ(30)としたが、たとえばダンボールや木箱や篭等も同様に搬送することができ、ベルトコンベヤに代えて、ローラコンベヤを使用することもできる。
【0030】
【発明の効果】本発明の装置は、荷台に載置した被搬送物を、押え板と荷台とで上下より挾んで搬送するので、被搬送物の形状や寸法に拘りなく、どのようなものでも、振動や衝撃により横ずれしたり落下したりすることなく、安全かつ確実に搬送することができる。
【0031】また、被搬送物の上面が押え板により閉塞されているので、塵埃等により上面が汚れたりすることはない。
【0032】請求項2記載の発明のように、押え板を、走行台車の直下に複数の吊支杆をもって昇降自在に吊支するとともに、ばねをもって下方に向けて付勢すると、被搬送物の保持がより確実となる。
【0033】さらに、請求項3記載の発明のように、押え板がばねに抗して所定限上昇したことを検知して、荷台昇降用モータを停止させる停止センサを走行台車に設けると、被搬送物を載置した荷台が、上限近くまで上昇して押え板を押し上げると、これを停止センサが感知して、自動的に停止させるので、甚だ便利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の正面図である。
【図2】同じく、押え板を取り外して示す走行台車の底面図である。
【図3】同じく、荷台がローラコンベヤと連結した時の状況を示す一部縦断側面図である。
【図4】同じく、トレーを載置した荷台が上昇中の状況を示す一部縦断側面図である。
【図5】同じく、トレーを載置した荷台が上限に上昇した時の状況を示す一部縦断側面図である。
【符号の説明】
(A)走行台車 (B)荷台
(1)レール (2)基板
(3)支持板 (4)巻取りドラム
(4a)ドラム軸 (5)フランジ付ローラ
(6)押えローラ (7)吊支ベルト
(8)台枠 (9)ギヤ
(10)両軸モータ (11)駆動ギヤ
(12)吊支杆 (13)近接センサ
(14)係止ピン (15)押え板
(16)吊支具 (17)圧縮ばね
(18)感知片 (19)無端ベルト
(20)モータ (21)ベルトコンベヤ
(22)光電センサ (23)取付板
(23a)水平部 (23b)垂直部
(24)案内柵 (25)光電センサ
(26)回動板 (27)係合板
(27a)基片 (27b)遊片
(28)係合溝 (29)渡りローラ
(30)コンテナ(被搬送物) (31)ローラコンベヤ
(32)係合突起 (32a)環状溝
(33)リンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】 天井等に架設したレールに沿って走行する走行台車に、モータにより昇降する荷台を吊支して、荷台に被搬送物を載置して搬送する吊り下げ搬送装置において、走行台車の直下に押え板を設け、該押え板と荷台との間に被搬送物を挾みつけて被搬送物を搬送するようにしたことを特徴とする吊り下げ搬送装置。
【請求項2】 押え板を、走行台車の直下に複数の吊支杆をもって昇降自在に吊支するとともに、ばねをもって下方に向けて付勢したことを特徴とする請求項1記載の吊り下げ搬送装置。
【請求項3】 押え板がばねに抗して所定限上昇したことを検知して、荷台昇降用モータを停止させる停止センサを走行台車に設けたことを特徴とする請求項2記載の吊り下げ搬送装置。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平7−2485
【公開日】平成7年(1995)1月6日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−143357
【出願日】平成5年(1993)6月15日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 1993年6月15日発行の日経産業新聞に掲載
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)