説明

吐水照明装置及び洋風水洗式便器

【課題】イルミネーションの効果を際立たせることができる吐水照明装置及び洋風水洗式便器を提供する。
【解決手段】吐水口15aまで延びる水路15bが内部に形成され、水路15bを流れる水を吐水口15aから吐水流Wとして吐出する吐水具15と、光を照射可能であり、この光を吐水流W内に入射可能な光源16とを備えた水洗装置10を用いた洋風水洗式便器1である。光源16の光が一端面17aから入射され、可及的に直線状に伸び、光を自己の延びる方向に案内する導光材17と、導光材17の他端側17bに形成され、光を反射させて導光材17の出射部17cから光を出射する反射板18とを備え、出射部17cは、少なくとも水路15bに露出し、出射した光が吐水口15aに向くようにされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐水照明装置と、この吐水照明装置を用いた洋風水洗式便器とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1の図4に示すように、吐水口まで延びる水路が内部に形成され、この水路を流れる水を吐水口から吐水流として吐出する吐水具と、光を照射可能であり、この光を吐水流内に入射可能な光源とを備えた吐水照明装置が知られている。
【0003】
上記従来の吐水照明装置では、光源で照射された光を光ファイバの一端から入射して光ファイバーで導き、その光を他端から吐水流内に出射している。また、この吐水照明装置では、吐水流の水温、流量、水圧等が検出され、それらに応じた色の光が光源から照射される。そのため、この吐水照明装置によれば、室内のイルミネーションとなるとともに吐水流の色により吐水流の水温、流量、水圧等を知ることができる。
【0004】
【特許文献1】特開平3−176519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の吐水照明装置では、吐水具の形状に合わせて、特に吐水口の付近で、光ファイバーが大きく曲げられている。これにより、曲がりによる放射損失が発生し、光損失が起こり得る。こうして、従来の吐水照明装置では、室内のイルミネーションの効果が減殺されてしまう。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、イルミネーションの効果を際立たせることができる吐水照明装置及び洋風水洗式便器を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の吐水照明装置は、吐水口まで延びる水路が内部に形成され、該水路を流れる水を該吐水口から吐水流として吐出する吐水具と、光を照射可能であり、該光を該吐水流内に入射可能な光源とを備えた吐水照明装置において、
前記光源の前記光が一端面から入射され、該光を全反射しつつ自己の延びる方向に案内する導光材と、該導光材の他端側に形成され、該光を反射させて該導光材の出射部から該光を出射する反射板とを備え、該出射部は、少なくとも前記水路に露出し、出射した該光が前記吐水口に向くようにされていることを特徴とする。
【0008】
本発明の吐水照明装置では、導光材が光を全反射しつつ自己の延びる方向に案内し、導光材の他端側に形成された反射板が光を反射させて導光材の出射部から光を出射する。そして、出射部は、少なくとも水路に露出し、出射した光が吐水口に向くようにされている。そのため、曲がりによる放射損失が発生し難く、多量の光を吐水流内に直接入射することができる。こうして、吐水流自体が発光するように見え、くっきりしたいわゆる切れの良い照明になる。特に、暗闇の中では、吐水流自体が発光するように見える上、手をかざすと吐水が当った部分が光り、驚きを演出する効果が大きい。
【0009】
したがって、本発明の吐水照明装置によれば、イルミネーションの効果を際立たせることができる。
【0010】
本発明において、導光材は、光を全反射しつつ自己の延びる方向に案内するものであり、ほとんどの光が外に漏れないものである。このため、導光材は、完全な直線状のものであるか、またわずかに湾曲しているものである。
【0011】
本発明の吐水照明装置では、出射部は吐水口に対向していることが好ましい。これにより、光を確実に吐水流内に出射することができる。
【0012】
また、光源と導光材とが分離可能に対向していることが好ましい。こうであれば、光源の導線について必要な防水対策を導光材に対して行う必要性を全く無くすことができるため、水洗式便器等の水回り製品であっても、安心して使用することができる上、メインテナンス性に優れる。また、導光材が光源の導線から独立することから、導光材の位置によって光源の導線の引き回しを行う必要がなく、優れた組み付け性も発揮することができる。
【0013】
さらに、光源は、砲弾型LEDと、LEDと対向して集光可能なレンズとを有していることが好ましい。これにより、光源と導光材の一端面との距離が多少離れても、又は光源の光軸と導光材の中心軸とが多少ずれたとしても、光源から照射された光を確実に導光材に入射することができる。このため、光源と導光材との結合損失を少なくすることができ、この部分での光損失を減少させることができる。
【0014】
また、導光材は軸直角方向の断面が多角形であることが好ましく、特に四角形であることが好ましい。導光材の軸直角方向の断面が多角形であれば、反射板の位置決めが容易だからである。また、特に四角形であれば、確実に反射板の位置決めができる上、光量も多い。
【0015】
さらに、導光材は無色透明であることが好ましい。これにより、光源の光の色で照明することができる。特に、光源として3原色LEDを用いれば、任意の色で照明することができる。
【0016】
また、導光材は有色透明であることも好ましい。これにより、光源として白色LEDを用いた場合でも、導光材の色で照明することができる。
【0017】
さらに、出射部に有色透明のフィルタが設けられていることも好ましい。これにより、光源の光の色を変更可能である。また、光源として白色LEDを用いた場合でも、フィルタの色で照明することができる。
【0018】
また、吐水口には有色透明の整流板が設けられていることも好ましい。これにより、簡易に光源の光の色を変更可能である。また、光源として白色LEDを用いた場合でも、整流板の色で照明することができる。
【0019】
本発明の吐水照明装置は、ロータンクと、ロータンクを内蔵するタンクカバーとを備えた洋風水洗式便器において、ロータンクカバーに設けることにより、イルミネーションの効果を際立たせることができる。特に、タンクカバーの上部に設けられ、受けた水をロータンクに導く鉢面が凹設された鉢本体を備えた洋風水洗式便器において、吐水照明装置の導光材を鉢本体に固定されて鉢面に水を吐出する吐水具に設けるとともに、吐水照明装置の光源をタンクカバー側に設けることができる。これにより、光源と導光材とを容易に分離可能に対向させることができるとともに、イルミネーションの効果を際立たせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0021】
図1に示すように、実施例1の吐水照明装置としての水洗装置10は、洋風水洗式便器1に用いられる。洋風水洗式便器1は、陶磁器製の洋風便器本体2、便座3、便蓋4、タンクカバー5及び水洗装置10を備えている。タンクカバー5は、ロータンク6を内蔵し、水洗装置10を上部に配置している。
【0022】
水洗装置10は、図2に示すように、鉢本体11と吐水具15とを備えている。鉢本体11はタンクカバー5の上部に嵌着され、鉢本体11には吐水流Wを受ける手洗いのための鉢面12が凹設されている。鉢面12の底部には、吐水流Wを鉢面12から排出するとともにロータンク6内に導く排水口12aが設けられている。
【0023】
また、鉢本体11の後方には、図3に示すように、吐水口15aまで延びる水路15bが内部に形成され、水路15bを流れる水を吐水口15aから吐水流Wとして吐出する吐水具15が固定されている。この吐水口15aには、有色透明の整流板19が設けられている。また、水路15b内には、導光材17が水路15bに沿ってわずかに湾曲して設けられている。導光材17は無色透明のアクリルからなり、軸直角方向の断面が四角形である。また、導光材17の他端側17bには長方形の平面が形成され、その平面には銀が蒸着されて反射板18とされている。さらに、導光材17の他端側17bの外面が出射部17cとされている。この出射部17cと反射板18とは鋭角をなし、出射部17cは、吐水口15aに対向、すなわち吐水流Wの方向に向いている。また、図2に示すように、導光材17の一端面17aに対向して、光源16がタンクカバー5内に設けられている。
【0024】
次に、光源16と導光材17との接続部分について、図4により説明する。図4は、水洗装置10の鉢本体11がタンクカバー5の上部に嵌着された状態における、光源16と導光材17との接続部分の拡大断面図である。光源16は、第1レンズ16bをもつ白色の砲弾型LED16aと、第1レンズ16bと対向して集光可能な第2レンズ16cを有している。そして、LED16aと第2レンズ16cとは、チューブ35内に整列されて収納されている。この光源16がタンクカバー5に固定され、導光材17が水洗装置10の鉢本体11に固定されていることから、光源16と導光材17とが分離可能に対向している。また、水道管36は、吐水具15の水路15b内に嵌着されている。
【0025】
以上の構成をした水洗装置10では、光源16のLED16aから照射された光は、第1レンズ16b及び第2レンズ16cにより集光され、導光材17の一端面17aから入射されて導光材17内を伝搬する。そして、図3の矢印で示すように、光は導光材17の他端側17bに設けられた反射板18により反射された後、出射部17cから出射される。こうして、この水洗装置10では、光を吐水流W内に入射することができる。
【0026】
本実施例の水洗装置10では、導光材17を大きく曲げることなく光を吐水流W内に入射することができるため、曲がりによる放射損失が発生し難く、導光材17の光損失が起こり難い。また、導光材17は軸直角方向の断面が四角形であるため、確実に反射板18の位置決めができる上、伝搬する光量も多い。さらに、出射部17cは吐水口15aに対向、すなわち吐水流Wの方向に向いていることから、光を確実に吐水流W内に入射することができる。このように、この水洗装置10では、多量の光を吐水流W内に直接入射することができる。そして、吐水流W内に入射された光は、水流の光導波路効果により光が吐水流W内を全反射して下方に伝播しつつ、少しづつ拡散されて吐水流Wから漏れ出てくる。こうして、この水洗装置10では、光が不必要な部分を照明することが少なくなるため、吐水流W自体が発光するように見え、くっきりした、いわゆる切れのよい照明になる。特に、暗闇の中では、吐水流W自体が発光するように見える上、手をかざすと吐水が当った部分が光り、驚きを演出する効果が大きい。また、この水洗装置10では、吐水口15aには有色透明の整流板19が設けられているため、簡易に光源16のLED16aから照射された光の色を変更することができる。
【0027】
また、この水洗装置10では、図5(A)に示すように、光源16と導光材17とを入射位置前後調整可能範囲L1、入射位置径方向調整可能範囲Φ1内において調整すれば、光源16から照射された光を確実に導光材17に導くことができる。これに対し、光源16の代わりに第2レンズ16cを有していない光源30の場合を図5(B)に示す。光源30では、光源30と導光材17とを入射位置前後調整可能範囲L2、入射位置径方向調整可能範囲Φ2内において調整すれば、光源30から照射された光を確実に導光材17に導くことができるものとする。この水洗装置10では、L1がL2より大きいため、光源16と導光材17の一端面17aとの距離が多少離れても、導光材17への入射光量が減衰し難い。また、Φ1がΦ2より大きいため、光源16の光軸と導光材17の中心軸とが多少ずれたとしても、導光材17への入射光量が減衰し難い。そのため、この水洗装置10では、光源16と導光材17との結合損失を少なくすることができ、この部分での光損失を減少させることができる。
【0028】
したがって、実施例1の水洗装置10によれば、イルミネーションの効果を際立たせることができる。また、この水洗装置10を用いた洋風水洗式便器1においてもイルミネーションの効果を際立たせることができる。
【0029】
また、この水洗装置10では、光源16と導光材17とが分離可能に対向してため、光源16の導線について必要な防水対策を導光材17に対して行う必要性を全く無くすことができるため、安心して使用することができる上、メインテナンス性に優れる。また、導光材17が光源16の導線から独立することから、導光材17の位置によって光源16の導線の引き回しを行う必要がなく、優れた組み付け性も発揮することができる。
【0030】
なお、導光材17の軸直角方向の断面を光源30の軸直角方向の断面よりも大きくするとよい。これにより、導光材17と光源30との位置ずれに対応することができ、確実に光損失を減少させることができる。特に、ロータンク6の幅方向(正面向かって左右方向)における導光材17と光源30との位置ずれが起こりやすいため、導光材17の軸直角方向の断面をロータンク6の幅方向が長辺となる長方形とすることも有効である。これにより、導光材17と光源30との位置ずれに対応することができるのみならず、導光材17を減少させることができる。また、本実施例では、導光材17として無色透明のアクリルを用いたが、ポリカーボネート、ガラス等を用いてもよく、有色透明としてもよい。また、出射部17cに有色透明のフィルタを設けてもよい。さらに、本実施例では、導光材17の他端側17bに銀が蒸着されて反射板18とされているが、インサート成形により反射板18を取り付けてもよい。また、本実施例では、光源16として白色LED16aを用いたが、他の色のLEDを用いることもできる。特に、光源16として三原色LEDを用いれば、任意の色で照明することができる。さらに、光源16としてレーザーダイオード(LD)を用いることもできる。
【実施例2】
【0031】
図2に示す実施例2の吐水照明装置としての水洗装置20も、実施例1と同様、図1に示す洋風水洗式便器1に用いられる。以下、実施例1の水洗装置10と異なる部分のみを説明する。
【0032】
鉢本体11の後方には、図6に示すように、吐水口25aまで延びる水路25bが内部に形成され、水路25bを流れる水を吐水口25aから吐水流Wとして吐出する吐水具25が固定されている。また、吐水具25の内部には水路25bに沿ってわずかに湾曲して収納路25cが形成されており、水路25bと収納路25cとは各々の先端部分で連通している。この収納路25cには導光材27が収納されている。導光材27の他端側27bには長方形の平面が形成され、その平面には銀が蒸着されて反射板28とされている。さらに、導光材27の他端側27bの外面が出射部27cとされている。この出射部27cと反射板28とは鋭角をなし、出射部27cは吐水口25aに対向、すなわち吐水流Wの方向に向いている。また、図5(A)に示すように、導光材27の一端面27aに対向して、光源16がタンクカバー5内に設けられている。その他の構成は実施例1と同様である。
【0033】
以上の構成をした水洗装置20では、吐水具25の内部に収納路25cが形成されているため、導光材27を吐水具25に容易に取り付けることができる。その他の作用・効果は実施例1と同様である。
【0034】
以上において、本発明を実施例1、2に即して説明したが、本発明は上記実施例1、2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の吐水照明装置は、洋風水洗式便器等の水回り製品に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例1、2に係り、洋風水洗式便器の斜視図である。
【図2】実施例1、2の水洗装置の断面図である。
【図3】実施例1の水洗装置に係り、吐水具の拡大断面図である。
【図4】実施例1、2に係り、光源と導光材との接続部分の拡大断面図である。
【図5】実施例1、2に係り、光源と導光材と位置関係を示す図である。
【図6】実施例2の水洗装置に係り、吐水具の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1…洋風水洗式便器
10、20…吐水照明装置(水洗装置)
15a、25a…吐水口
15b、25b…水路
W…吐水流
15、25…吐水具
17、27…導光材
17a、27a…一端面
17b、27b…他端側
17c、27c…出射部
18、28…反射板
19…整流板
16…光源
16a…LED
16c…レンズ(第2レンズ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐水口まで延びる水路が内部に形成され、該水路を流れる水を該吐水口から吐水流として吐出する吐水具と、光を照射可能であり、該光を該吐水流内に入射可能な光源とを備えた吐水照明装置において、
前記光源の前記光が一端面から入射され、該光を全反射しつつ自己の延びる方向に案内する導光材と、該導光材の他端側に形成され、該光を反射させて該導光材の出射部から該光を出射する反射板とを備え、該出射部は、少なくとも前記水路に露出し、出射した該光が前記吐水口に向くようにされていることを特徴とする吐水照明装置。
【請求項2】
前記出射部は前記吐水口に対向している請求項1記載の吐水照明装置。
【請求項3】
前記光源と前記導光材とが分離可能に対向している請求項1又は2記載の吐水照明装置。
【請求項4】
前記光源は、砲弾型LEDと、該LEDと対向して集光可能なレンズとを有している請求項1乃至3のいずれか1項記載の吐水照明装置。
【請求項5】
前記導光材は軸直角方向の断面が多角形である請求項1乃至4のいずれか1項記載の吐水照明装置。
【請求項6】
前記多角形は四角形である請求項5記載の吐水照明装置。
【請求項7】
前記導光材は無色透明である請求項1乃至6のいずれか1項記載の吐水照明装置。
【請求項8】
前記導光材は有色透明である請求項1乃至6のいずれか1項記載の吐水照明装置。
【請求項9】
前記出射部に有色透明のフィルタが設けられている請求項1乃至6のいずれか1項記載の吐水照明装置。
【請求項10】
前記吐水口には整流板が設けられ、該整流板が有色透明である請求項1乃至6のいずれか1項記載の吐水照明装置。
【請求項11】
ロータンクと、該ロータンクを内蔵するタンクカバーとを備えた洋風水洗式便器において、
請求項1乃至10のいずれか1項記載の吐水照明装置が該タンクカバーに設けられていることを特徴とする洋風水洗式便器。
【請求項12】
前記洋風水洗式便器は、前記タンクカバーの上部に設けられ、受けた水を前記ロータンクに導く鉢面が凹設された鉢本体を備え、
前記吐水照明装置の前記導光材は、該鉢本体に固定されて該鉢面に水を吐出する前記吐水具に設けられ、該吐水照明装置の前記光源は該タンクカバー側に設けられている請求項11記載の洋風水洗式便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−46298(P2007−46298A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−230813(P2005−230813)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】