説明

吸収ヒートポンプ

【課題】冷媒液を蒸発部に移送する冷媒液の流れと、蒸発部から冷媒液を取り出した後に再び蒸発部に戻して循環させる冷媒液の流れとを同一冷媒ポンプによりにより発生させ、単純な構成とした吸収ヒートポンプを提供する。
【解決手段】冷媒蒸気CSを凝縮して冷媒液CLとする凝縮部C、5Aと、凝縮部から供給される冷媒液を単一の圧力下で蒸発させて冷媒蒸気を発生させ、蒸発しない余剰の冷媒液を凝縮部に戻す蒸発部Eと、凝縮部で凝縮した冷媒液を昇圧し蒸発部へ供給する冷媒昇圧手段4とを備える吸収ヒートポンプとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排熱エネルギーを熱源とし、その熱源により高温の流体を得る吸収ヒートポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の吸収ヒートポンプでは、凝縮器に冷媒ポンプを設け、凝縮器で凝縮された冷媒液を蒸発器に移送し、蒸発器の加熱器に冷媒液を散布し、冷媒液から冷媒蒸気が発生するよう構成していた。さらに蒸発器に専用の冷媒ポンプを設けて、蒸発器の下部に蓄積した冷媒液を蒸発器から取り出し再び蒸発器に供給して加熱器に循環散布し、蒸発器に供給される冷媒液の流量を増加させ、蒸発器で供給された冷媒液から冷媒蒸気を発生させるよう構成していた(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、2段昇温の場合には、低圧凝縮器に冷媒ポンプを設け、低圧凝縮器で凝縮された冷媒液を低圧蒸発器に移送し、低圧蒸発器の加熱器に冷媒液を散布し、冷媒液から冷媒蒸気が発生するよう構成し、高圧凝縮器に冷媒ポンプを設け、高圧凝縮器で凝縮された冷媒液を高圧蒸発器に移送し、高圧蒸発器の加熱器に冷媒液を散布し、冷媒液から冷媒蒸気が発生するように構成していた。さらに低圧、高圧蒸発器のそれぞれに専用の冷媒ポンプを設けて、低圧、高圧蒸発器の下部に蓄積した冷媒液を取り出し再び低圧、高圧蒸発器に供給して加熱器にそれぞれ循環散布し、蒸発器に供給される冷媒液の流量を増加させ、蒸発器で冷媒液から冷媒蒸気を発生させていた(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭58−49780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような吸収ヒートポンプは、凝縮器から冷媒液を蒸発器に移送し、さらに蒸発器から冷媒液を取り出し再び蒸発器に戻して蒸発器の加熱部に対して循環させていた。したがって、蒸発器に移送する冷媒液の流れと、蒸発器に戻す冷媒液の別の流れとを別々の冷媒ポンプにより発生させていたが、これらの流れを同一の冷媒ポンプで発生させ、単純な構成とした吸収ヒートポンプとすることが望まれていた。
【0006】
そこで本発明は、冷媒液を蒸発部に移送する冷媒液の流れと、蒸発部から冷媒液を取り出した後に再び蒸発部に戻して循環させる冷媒液の流れとを同一冷媒ポンプによりにより発生させ、単純な構成とした吸収ヒートポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために第1の態様に係る発明に係る吸収ヒートポンプ101は、例えば図1に示すように、冷媒蒸気CSを凝縮して冷媒液CLとする凝縮部C、5Aと;凝縮部C、5Aから供給される冷媒液CLを単一の圧力下で蒸発させて冷媒蒸気CSを発生させ、蒸発しない余剰の冷媒液CLを凝縮部C、5Aに戻す蒸発部Eと;凝縮部C、5Aで凝縮した冷媒液CLを昇圧し蒸発部Eへ供給する冷媒昇圧手段4とを備える。
【0008】
このように構成すると、冷媒液は冷媒昇圧手段によって昇圧され凝縮部から蒸発部に供給されるので、蒸発部の圧力を凝縮部の圧力より高くすることができる。よって、蒸発部と凝縮部との圧力差により、蒸発しない余剰の冷媒液を蒸発部から凝縮部に戻すことができ、凝縮部に戻った冷媒液は冷媒昇圧手段によって蒸発部に供給されるので、冷媒昇圧手段によって蒸発部と凝縮部の間を循環する冷媒液の流れを発生させることができる。なお、冷媒液は蒸発部で単一の圧力下で蒸発するので、冷媒液は蒸発部で単一の温度下で蒸発する。吸収ヒートポンプの蒸発部は単一の圧力下で冷媒液を蒸発するとは、吸収ヒートポンプの蒸発部は多段昇圧でないことを意味する。冷媒昇圧手段は、典型的には、冷媒ポンプである。
【0009】
さらに、吸収ヒートポンプ101は、例えば図1に示すように、凝縮部C、5Aから蒸発部Eに供給される冷媒液CLと、蒸発部Eから凝縮部C、5Aに戻される冷媒液CLとの間で熱交換を行う冷媒熱交換器X11とを備えてもよい。
このように構成すると、凝縮部から蒸発部に供給される冷媒液と、蒸発部から凝縮部に戻される冷媒液との間で熱交換を行うので、凝縮部に戻される冷媒液の温度を下げることができ、蒸気発生を抑えて熱損失を防ぎ、また冷媒昇圧手段が冷媒ポンプである場合、冷媒ポンプのキャビテーション防止に役立つ。
【0010】
上記目的を達成するために第2の態様に係る発明に係る吸収ヒートポンプ102は、例えば図3に示すように、冷媒蒸気CSを凝縮して冷媒液CLとする凝縮部C、5Aと;供給された冷媒液CLを蒸発させて冷媒蒸気CSを発生させる蒸発部ELと;凝縮部C、5Aで凝縮した冷媒液CLを昇圧し蒸発部ELへ供給する冷媒昇圧手段4とを備え;凝縮部C、5Aが、凝縮した冷媒液CLを冷媒昇圧手段4に供給する冷媒供給管路5Aを有し;蒸発部ELが、蒸発しない余剰の冷媒液CLを冷媒供給管路5Aに戻すよう構成される。
【0011】
このように構成すると、冷媒液は冷媒昇圧手段によって昇圧され凝縮部から圧力の高い蒸発部に供給されるので、蒸発部の圧力を凝縮部の圧力より高くすることができる。よって、蒸発部と凝縮部の圧力差により、蒸発しない余剰の冷媒液を蒸発部から凝縮部の冷媒供給管路に戻すことができ、冷媒供給管路に戻った冷媒液は冷媒昇圧手段によって蒸発部に供給されるので、冷媒昇圧手段によって蒸発部と冷媒供給管路の間を循環する冷媒液の流れを発生させることができる。
【0012】
上記目的を達成するために第3の態様に係る発明に係る吸収ヒートポンプ103は、例えば図5に示すように、冷媒蒸気CSを凝縮して冷媒液CLとする凝縮部C、5Aと;凝縮部C、5Aから供給される冷媒液CLを蒸発させて冷媒蒸気CSを発生させる高圧蒸発部EHと;凝縮部C、5Aから供給される冷媒液CL、及び高圧蒸発部EHで蒸発しない余剰の冷媒液CLであって高圧蒸発部EHから戻される冷媒液CLを、高圧蒸発部EHより低圧下で蒸発し、冷媒蒸気CSを発生させ、蒸発しない余剰の冷媒液CLを凝縮部C、5Aに戻す低圧蒸発部ELと;凝縮部C、5Aで凝縮した冷媒液CLを昇圧し高圧蒸発部EHと低圧蒸発部ELとへ供給する冷媒昇圧手段4とを備える。
【0013】
このように構成すると、冷媒液は冷媒昇圧手段によって昇圧され凝縮部から高圧蒸発部と低圧蒸発部とへ供給され、低圧蒸発部では、冷媒液を高圧蒸発部より低圧下で蒸発させるので、圧力を高圧蒸発部、低圧蒸発部、凝縮部の順に大きくすることができる。よって、高圧蒸発部と低圧蒸発部の圧力差により、蒸発しない余剰の冷媒液を高圧蒸発部から低圧蒸発部に戻すことができ、低圧蒸発部と凝縮部の圧力差により、蒸発しない余剰の冷媒液を低圧蒸発部から凝縮部に戻すことができ、凝縮部に戻った冷媒液は冷媒昇圧手段によって高圧蒸発部と低圧蒸発部に供給されるので、冷媒昇圧手段によって高圧蒸発部から低圧蒸発部、低圧蒸発部から凝縮部、凝縮部から高圧蒸発部と低圧蒸発部へと循環する冷媒液の流れを発生させることができる。
【0014】
さらに、吸収ヒートポンプ103は、例えば図5に示すように、凝縮部C、5Aから供給される冷媒液CLであって低圧蒸発部ELには供給されず高圧蒸発部EHに供給される冷媒液と、高圧蒸発部EHから低圧蒸発部ELに戻される冷媒液CLとの間で熱交換を行う高温冷媒熱交換器X12と;凝縮部Cから高圧蒸発部EHと低圧蒸発部ELとに供給される冷媒液CLと、低圧蒸発部EHから凝縮部Cに戻される冷媒液CLとの間で熱交換を行う低温冷媒熱交換器X11との少なくとも一方を備えるようにしてもよい。
【0015】
このように構成すると、凝縮部から高圧蒸発部に供給される冷媒液と、高圧蒸発部から低圧蒸発部に戻される冷媒液との間の熱交換と、凝縮部から高圧蒸発部と低圧蒸発部とに供給される冷媒液と、低圧蒸発部から凝縮部に戻される冷媒液との間の熱交換のうち少なくとも一方を行うので、高圧蒸発部からの冷媒液の保有熱が低圧蒸発部に逃げるのを防ぐこと、あるいは低圧蒸発部からの冷媒液の保有熱が凝縮部に逃げるのを防ぐことのうち少なくとも一方を達成することができ、熱損失を減らすことができる。
【0016】
上記目的を達成するために第4の態様に係る発明に係る吸収ヒートポンプ104は、例えば図6に示すように、冷媒蒸気CSを凝縮して冷媒液CLとする凝縮部C、5Aと;凝縮部C、5Aから供給される冷媒液CLを蒸発させて冷媒蒸気CSを発生させ、蒸発しない余剰の冷媒液CLを凝縮部C、5Aに戻す高圧蒸発部EHと;凝縮部C、5Aから供給される冷媒液CLを、高圧蒸発部EHより低圧下で蒸発し、冷媒蒸気CSを発生させ、蒸発しない余剰の冷媒液を前記凝縮部に戻す低圧蒸発部ELと;凝縮部C、5Aで凝縮した冷媒液CLを昇圧し高圧蒸発部EHと低圧蒸発部ELとへ供給する冷媒昇圧手段4とを備える。
【0017】
このように構成すると、冷媒液は冷媒昇圧手段によって昇圧され凝縮部から高圧蒸発部と低圧蒸発部とへ供給され、低圧蒸発部では、冷媒液を高圧蒸発部より低圧下で蒸発させるので、圧力を高圧蒸発部、低圧蒸発部、凝縮部の順に大きくすることができる。よって、高圧蒸発部と凝縮部の圧力差により、蒸発しない余剰の冷媒液を高圧蒸発部から凝縮部に戻すことができ、低圧蒸発部と凝縮部の圧力差により、蒸発しない余剰の冷媒液を低圧蒸発部から凝縮部に戻すことができ、凝縮部に戻った冷媒液は冷媒昇圧手段によって高圧蒸発部と低圧蒸発部に供給されるので、冷媒昇圧手段によって高圧蒸発部と凝縮部の間を循環する冷媒液の流れ、低圧蒸発部と凝縮部の間を循環する冷媒液の流れを発生させることができる。
【0018】
さらに、吸収ヒートポンプ104は、例えば図6に示すように、凝縮部C、5Aから高圧蒸発部EHに供給される冷媒液CLと、高圧蒸発部EHから凝縮部C、5Aに戻される冷媒液CLとの間で熱交換を行う高温冷媒熱交換器X12と;凝縮部C、5Aから低圧蒸発部ELに供給される冷媒液CLと、低圧蒸発部ELから凝縮部C、5Aに戻される冷媒液との間で熱交換を行う低温冷媒熱交換器X13との少なくとも一方を備えるようにしてもよい。
【0019】
このように構成すると、凝縮部から高圧蒸発部に供給される冷媒液と、高圧蒸発部から凝縮部に戻される冷媒液との間の熱交換と、凝縮部から低圧蒸発部に供給される冷媒液と、低圧蒸発部から凝縮部に戻される冷媒液との間の熱交換のうち少なくとも一方を行うので、高圧蒸発部からの冷媒液の保有熱が凝縮部に逃げるのを防ぐこと、あるいは低圧蒸発部からの冷媒液の保有熱が凝縮部に逃げるのを防ぐことのうち少なくとも一方を達成することができ、熱損失を減らすことができる。
【0020】
上記目的を達成するために第5の態様に係る発明に係る吸収ヒートポンプ105は、例えば図7に示すように、冷媒液CLを昇圧する冷媒昇圧手段47と;供給された冷媒液CLを蒸発させて冷媒蒸気CSを発生させ、蒸発しない余剰の冷媒液CLが冷媒昇圧手段47により取り出される低圧蒸発部ELと;供給された冷媒液CLを、低圧蒸発部ELより高圧下で蒸発し、冷媒蒸気CSを発生させ、蒸発しない余剰の冷媒液CLを低圧蒸発部ELに供給する高圧蒸発部EHとを備え;低圧蒸発部ELから取り出された冷媒液CLが、冷媒昇圧手段47により高圧蒸気部EHに供給され、または高圧蒸発部EHと低圧蒸発部ELとに供給される。
【0021】
このように構成すると、高圧蒸発部では冷媒液が低圧蒸発部より高圧下で蒸発するので、高圧蒸発部と低圧蒸発部との間には圧力差があり、この圧力差により、高圧蒸発部で蒸発しない余剰の冷媒液CLを低圧蒸発部ELに供給することができ、低圧蒸発部ELから取り出された冷媒液CLは、冷媒昇圧手段4により高圧蒸気部EHへ、または高圧蒸発部EHと低圧蒸発部ELへ供給することができる。よって、冷媒昇圧手段によって高圧蒸発部と低圧蒸発部の間を循環する冷媒液の流れ、低圧蒸発部から取り出され低圧蒸発部に戻る冷媒液の流れを発生させることができる。
【0022】
さらに、吸収ヒートポンプ105は、例えば図7に示すように、低圧蒸発部ELから取り出されて高圧蒸発部EHに供給される冷媒液と、高圧蒸発部EHから取り出されて低圧蒸発部ELに供給される冷媒液との間で熱交換を行う高温冷媒熱交換器X15を備えるようにしてもよい。
【0023】
このように構成すると、上述のように熱交換を行うので、高圧蒸発部からの冷媒液の保有熱が低圧蒸発部に逃げるのを防ぐことができ、熱損失を減らすことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の吸収ヒートポンプによれば、前述のように凝縮部と、蒸発部と、冷媒昇圧手段とを設けたので、冷媒液は冷媒昇圧手段によって昇圧され凝縮部から蒸発部に供給されるので、蒸発部の圧力を凝縮部の圧力より高くすることができ、蒸発部と凝縮部との圧力差により、蒸発しない余剰の冷媒液を蒸発部から取り出し凝縮部に戻すことができ、凝縮部に戻った冷媒液は冷媒昇圧手段によって蒸発部に供給されるので、冷媒昇圧手段によって蒸発部と凝縮部の間を循環する冷媒液の流れを発生させることができる。よって、冷媒液を蒸発部に供給する冷媒液の流れと、蒸発部から冷媒液を取り出した後に再び蒸発部に戻して循環させる冷媒液の流れとを同一の冷媒昇圧手段によりにより発生させ、単純な構成とした吸収ヒートポンプとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る吸収ヒートポンプの構成を示すフローシートである。
【図2】図1のフローシート上の吸収液の状態を示す線図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る吸収ヒートポンプの構成を示すフローシートである。
【図4】図3のフローシート上の吸収液の状態を示す線図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係る吸収ヒートポンプの構成を示すフローシートである。
【図6】本発明の第4の実施の形態に係る吸収ヒートポンプの構成を示すフローシートである。
【図7】本発明の第5の実施の形態に係る吸収ヒートポンプの構成を示すフローシートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図において互いに同一あるいは相当する部材には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0027】
図1は、本第1の実施の形態の吸収ヒートポンプ101の構成を示すフローシートである。吸収ヒートポンプ101は、吸収液ALi(例えば、臭化リチウム水溶液)による冷媒蒸気CS(冷媒は例えば水)の吸収が行われる吸収部としての一つの吸収器Aと、吸収液ALiから冷媒蒸気CSを蒸発させ吸収液ALiの再生が行われる再生部としての一つの再生器Gと、冷媒液CLから冷媒蒸気CSを発生させる蒸発部としての一つの蒸発器Eと、冷媒蒸気CSを凝縮させ冷媒液CLとする凝縮部としての一つの凝縮器Cとを備える。吸収器A、再生器G、蒸発器E、凝縮器Cはそれぞれ一つの圧力下にあり、蒸発器Eの圧力と吸収器Aの圧力は実用上等しく、再生器Gの圧力と凝縮器Cの圧力は実用上等しい。
【0028】
吸収器Aは、(1)濃溶液である吸収液ALiが移送(供給)され、移送された吸収液ALiを吸収器Aの内部に散布する吸収液スプレイ22と、(2)補給水W1が移送され、冷媒蒸気CSを吸収した希溶液である吸収液ALiによって、移送された補給水W1が加熱される被加熱管23と、(3)吸収器Aの下部に設置され、吸収器A内に蓄積した吸収液ALiの液面レベルを検出する液面レベルセンサL1とを備える。液面レベルセンサL1は、被加熱管23の鉛直方向下方に設置されている。
【0029】
蒸発器Eは、(1)冷媒液CLが移送され、移送された冷媒液CLを蒸発器Eの内部に散布する冷媒液スプレイ44と、(2)排熱を有する温水WH1が移送され、蒸発器Eに移送された冷媒液CLを加熱する加熱管28と、(3)蒸発器Eの下部に設置され、蒸発器E内に蓄積した冷媒液CLの液面レベルを検出する液面レベルセンサL2とを備える。液面レベルセンサL2は加熱管28の鉛直方向下方に設置されている。吸収ヒートポンプ101では、蒸発器Eで蒸発した冷媒蒸気CSは、吸収器Aに送られるよう構成されている。
【0030】
再生器Gは、(1)希溶液である吸収液ALiが移送され、移送された吸収液ALiを再生器Gの内部に散布する吸収液スプレイ25と、(2)排熱を有する温水WH2が移送され、移送された温水WH2によって散布された吸収液ALiを加熱し、吸収液ALiから冷媒蒸気CSを発生させ、吸収液ALiを濃溶液とする加熱管26とを備える。吸収ヒートポンプ101では、再生器Gで吸収液ALiから分離した冷媒蒸気CSは、凝縮器Cに送られるよう構成されている。
【0031】
凝縮器Cは、冷却水WCが移送され、再生器Gから凝縮器Cに送られた冷媒蒸気CSを冷却する冷却管30を備える。冷却水WCの温度は、例えば冷却管30の入口で32℃、出口で37℃である。
【0032】
吸収ヒートポンプ101は、(1)気液分離器11と、(2)気液分離器11に接続され気液分離器11に補給水W1を移送する補給水移送管路7と、(3)気液分離器11から吸収器Aの被加熱管23に補給水W1を移送する補給水移送管路6と、(4)被加熱管23から気液分離器11に補給水W1を移送して戻す補給水移送管路10と、(5)蒸気ヘッダ(不図示)に接続され、気液分離器11で発生した蒸気S(例えば、175℃)を蒸気ヘッダに供給する蒸気供給管路8とを備える。以下、吸収器Aの被加熱管23、補給水移送管路7,6、10、気液分離器11を含めて、蒸気発生部14と称する。
【0033】
吸収ヒートポンプ101は、さらに、(6)再生器Gと吸収器Aとを繋ぎ、再生器Gで再生された濃溶液である吸収液ALiを吸収器Aの吸収液スプレイ22に移送する吸収液移送管路2と、(7)吸収器Aと再生器Gとを繋ぎ、吸収器Aに蓄積された希溶液である吸収液ALiを再生器Gの吸収液スプレイ25に移送する吸収液移送管路3と、(8)凝縮器Cと蒸発器Eとを繋ぎ、凝縮器Cで凝縮した冷媒液CLを蒸発器Eに移送する冷媒液移送管路5とを備える。
【0034】
冷媒液移送管路5は、後述の冷媒ポンプ4の上流側の冷媒供給管路5Aと、冷媒ポンプ4の下流側の冷媒液移送管路5Bとを含んで構成される。凝縮器Cと冷媒供給管路5Aとを含んで、本発明の凝縮部が構成される。
【0035】
吸収ヒートポンプ101は、さらに、(9)蒸発器Eと冷媒供給管路5Aとを繋ぎ、蒸発器Eに蓄積された余剰の冷媒液CLを冷媒供給管路5Aに移送する冷媒液移送管路51と、(10)吸収液移送管路3(具体的には、吸収液移送管路3の後述の熱交換器X2の
上流側)から分岐して再び吸収液移送管路3(具体的には、吸収液移送管路3の熱交換器X2の下流側)に戻る吸収液移送管路52とを備える。
【0036】
吸収ヒートポンプ101は、さらに、(11)吸収液移送管路2を通って被加熱側に移送される濃溶液である吸収液ALiと、吸収液移送管路52を通って加熱側に移送される希溶液である吸収液ALiとの間で熱交換を行う冷媒熱交換器X1と、(12)補給水移送管路7を通って被加熱側に移送される補給水W1と、吸収液移送管路3を通って加熱側に移送される希溶液である吸収液ALiとの間で熱交換を行う熱交換器X2と、(13)冷媒液移送管路5を通って被加熱側に移送される冷媒液CLと、冷媒液移送配管51を通って加熱側に移送される冷媒液CLとの間で熱交換を行う冷媒熱交換器X11とを備える。
熱交換器X2と冷媒熱交換器X1とは並列に配置されている。また、冷媒液移送管路51の冷媒熱交換器X11の下流側には絞り61が設置されている。
【0037】
吸収ヒートポンプ101は、さらに加熱側に排熱を有する温水WH3が移送され、被加熱側に補給水移送管路7を通って補給水W1が移送され、熱交換が行われる熱交換器X3を備える。
【0038】
吸収液移送管路2には、溶液ポンプ1が設置され、溶液ポンプ1は再生器Gで再生された吸収液ALiを吸収器Aに移送する。溶液ポンプ1は、冷媒熱交換器X1の上流側に設置されている。冷媒液移送管路5には、冷媒昇圧手段としての冷媒ポンプ4が設置され、冷媒ポンプ4は凝縮器Cで凝縮された冷媒液CLを蒸発器Eに移送する。補給水移送管路7には、給水ポンプ12が設置され、給水ポンプ12は補給水W1を蒸気発生部14の気液分離器11に移送する。補給水移送管路7の給水ポンプ12の直下流側には、逆止弁37が設置され、補給水W1が逆流するのを防止している。補給水移送管路6には、給水ポンプ13が設置され、給水ポンプ13は補給水W1を気液分離器11から被加熱管23に移送し、さらに補給水移送管路7を通って被加熱管23から気液分離器11に移送して戻し、補給水W1を循環させる。
【0039】
冷媒液移送管路5の冷媒熱交換器X11の下流側には、蒸発器Eに移送する冷媒液CLの流量を調整する冷媒供給弁V3が設置されている。
【0040】
蒸気発生部14の気液分離器11には、蒸気発生部14の圧力を検出する圧力センサPが設置され、下部に蓄積された補給水W1の液面レベルを検出する液面レベルセンサL3が設置されている。蒸気供給管路8には、供給する蒸気Sの圧力を調節する蒸気弁V1が設置されている。蒸気供給管路8に、図に示すように、蒸気ヘッダ(不図示)からの蒸気の逆流を防止する逆止弁38を設置してもよい。逆止弁38を設置すると、蒸気弁V1の作動に関係なく、確実に蒸気ヘッダからの蒸気の逆流を防止することができる。温水WH1、WH2、WH3の温度は、例えば入口90℃、出口85℃とするとよい。
【0041】
吸収ヒートポンプ101は、制御装置21を備える。液面レベルセンサL1からの、液面レベルを表す液面信号(不図示)は制御装置21に送られ、制御装置21から液面レベルを一定のレベルに保つよう回転数を制御する制御信号(不図示)がVVVFインバータ(不
図示)に送られ、当該インバータが溶液ポンプ1を駆動するモータ(不図示)の電源を制御
し、溶液ポンプ1の回転数を吸収器Aの液面レベルが一定になるよう制御する(但し、図
中、簡略化し制御信号が液面レベルセンサL1から溶液ポンプ1に送られるよう表されている)。
【0042】
液面レベルセンサL2からの、液面レベルを表す液面信号(不図示)は制御装置21に送られ、制御装置21から液面レベルを一定のレベルに保つよう冷媒液CLの流量を制御する制御信号(不図示)が冷媒供給弁V3に送られ、冷媒供給弁V3の開度を蒸発器Eの液面レベルが一定になるよう制御する(図中、簡略化して、液面レベルセンサL2から冷媒供
給弁V3に信号が送られるように記載)。
【0043】
液面レベルセンサL3からの、液面レベルを表す液面信号(不図示)は制御装置21に送られ、制御装置21から液面レベルを一定のレベルに保つよう補給水W1の流量を制御する制御信号(不図示)が給水ポンプ12に送られ(実際には前述のように不図示のインバー
タ)、給水ポンプ12の回転数を気液分離器11の液面レベルが一定になるよう制御する(図中、簡略化して、液面レベルセンサL3から給水ポンプ12に信号が送られるように記載)。
【0044】
圧力センサPからの、圧力を表す圧力信号(図中、破線)は制御装置21に送られ、制御装置21から気液分離器11の圧力が所定の値P1になるよう蒸気Sの供給量を制御する制御信号が(図中、破線)が蒸気弁V1に送られ、蒸気弁V1の開度を気液分離器11の圧力が所定の値P1になるよう制御する。この場合、吸収ヒートポンプ101の蒸気発生能力は、制御装置21により、例えば、定格流量の蒸気Sを発生するように設定されている(例えば、効率が最大の運転点)。また、所定の値P1は、例えば、蒸気ヘッダ圧(絶対圧)が0.8MPaの場合、0.85MPaとするとよい。前述において、温水WH1、温水WH2、温水WH3は、並列に供給されるとして説明したが、直列、あるいは一部並列、一部直列に供給してもよい。
【0045】
次に、本第1の実施の形態の作用を図1、図2を参照して説明する。図2は、吸収液および冷媒の状態を示す線図であり、縦軸が圧力、横軸が温度である。
吸収器Aを出た希溶液である吸収液ALi(状態は、図2中、B2の位置)は、吸収液移送管路3により移送され、一部が熱交換器X2を通過することにより補給水W1により冷却され、残りの一部が吸収液移送管路3から分岐し吸収液移送管路52により移送され冷媒熱交換器X1を通過することにより、吸収液移送配管2を通って再生器Gから吸収器Aに移送される濃溶液である吸収液ALiにより冷却される。分岐した吸収液移送管路52が熱交換器X2の下流側で吸収液移送管路3に再び合流するので、熱交換器X2により冷却された吸収液ALiと冷媒熱交換器X1により冷却された吸収液ALiとは、合流し(
合流した後の吸収液ALiの状態は、図2中、B8の位置)、合流後さらに再生器Gの吸
収液スプレイ25に移送される。
【0046】
吸収液ALiは、吸収液スプレイ25から再生器G内に散布され(吸収液ALiの状態
は、図2中、B5の位置)、散布された吸収液ALiは加熱管26を介して温水WH2に
加熱され、吸収液ALiに吸収されていた冷媒は冷媒蒸気CSとして蒸発し、再生された濃溶液である吸収液ALiは再生器Gの底部に蓄積する。
【0047】
濃溶液となった吸収液ALi(状態は、図2中、B4の位置)は、吸収液移送管路2を通り吸収器Aの吸収液スプレイ22に移送される。吸収液移送管路2を通る間、溶液ポンプ1により昇圧され、その後冷媒熱交換器X1で、吸収器Aから再生器Gに移送される希溶液である吸収液ALiに加熱され(吸収液移送管路2を通る吸収液ALiの状態は、図2
中、B7の位置)、吸収器Aの吸収液スプレイ22に移送される。
【0048】
吸収器Aで、吸収液スプレイ22から吸収器A内に散布された濃溶液である吸収液ALi(吸収液ALiの状態は、図2中、B6の位置)は、蒸発器Eで蒸発した冷媒蒸気CSを吸収し、被加熱管23を通る補給水W1を加熱し、吸収器Aの底部に蓄積する(吸収液A
Liの状態は、図2中、B2の位置)。
【0049】
溶液ポンプ1は、吸収器Aに蓄積する吸収液ALiの液面レベルが一定となるような流量の吸収液ALiを再生器Gから吸収器Aに移送するよう制御装置21によって回転数が制御される。このような制御が行われるのは、吸収器Aと再生器Gの冷媒蒸気圧の差が大きく、吸収液ALiによる液シールで冷媒蒸気CSの混入を防げないためである。吸収器Aから再生器Gに戻る吸収液量に見合う吸収液ALiを送り込み、吸収器Aの液面を保っている(吸収液ALiの液面制御で冷媒蒸気CSの流出を防止)。
【0050】
再生器Gで蒸発した冷媒蒸気CSは凝縮器Cに送られ、冷媒蒸気CSは凝縮器Cで冷却管30を通る冷却水WCにより冷却され凝縮して冷媒液CL(状態は、図2中、D1の位
置)となる。凝縮器Cの冷媒液CLは、冷媒液移送管路5を通り、冷媒ポンプ4の上流側
で(冷媒供給管路5Aで)蒸発器Eから冷媒液移送管路51を通り移送される冷媒液CLと合流し、合流後に冷媒ポンプ4により昇圧され、冷媒熱交換器X11で蒸発器Eから冷媒液移送管路51を通り移送されてくる冷媒液CLにより加熱され、その後冷媒供給弁V3により流量を制御されて、蒸発器Eに送られる。冷媒液CLは、蒸発器Eと冷媒供給管路5A(凝縮器C)との間の圧力差により蒸発器Eから冷媒液移送管路51を通り冷媒供給管路5Aに移送される。
【0051】
蒸発器Eに送られた冷媒液CLは、冷媒液スプレイ44から蒸発器E内部に散布され、加熱管28を介して温水WH1により加熱されて蒸発し、蒸発しない余剰の冷媒液CLは下部に蓄積する(冷媒の状態は、図2中、D2の位置)。蒸発した冷媒蒸気CSは吸収器Aに送られ、吸収器Aで吸収液ALiに吸収される。
【0052】
冷媒供給弁V3は、蒸発器Eに蓄積する冷媒液CLの液面レベルが一定になるような量の冷媒液CLが凝縮器Cから蒸発器Eに移送されるように、制御装置21によって開度が制御される。このような制御が行われるのは、冷媒液の蒸発した量を補給するためであり、冷媒蒸気が冷媒液移送管路51を冷媒液CLで満たされる状態に維持し、冷媒ポンプ4が気体を吸い込まないようにするためであり、また冷媒蒸気CSが凝縮器Cに流出して熱損失が発生するのを防ぐためでもある。なお、蒸発器は図示するものとは相違するが、加熱管が冷媒液に浸漬する浸漬式であってもよい。
【0053】
補給水移送管路7に供給された補給水W1は、給水ポンプ12により昇圧され、蒸気発生部14の気液分離器11に移送される。給水ポンプ12を出た補給水W1は、熱交換器X3で温水WH3により加熱され、さらに熱交換器X2で吸収器Aから再生器Gに移送される吸収液ALiにより加熱され、気液分離器11に移送される。
【0054】
蒸気発生部14に供給される補給水W1の流量は、気液分離器11内に蓄積される補給水W1の液面レベルが一定になるように、制御装置21により給水ポンプ12の回転数を制御することにより調節される。気液分離器11の補給水W1の液面レベルを一定に調節するのは、蒸気Sとして供給され失われた補給水W1に見合う分を気液分離器11に補給するためである。
【0055】
気液分離器11に移送された補給水W1は、補給水移送管路6を通り、給水ポンプ13により昇圧され吸収器Aの被加熱管23に送られ、吸収器Aで冷媒蒸気CSを吸収する吸収液ALiの吸収熱により加熱され、蒸気Sを発生させ、補給水移送管路10を通り、気液分離器11に戻り、蒸気と液を分離する。発生した蒸気Sは、蒸気供給管路8を通り、制御装置21により制御される蒸気弁V1により蒸気発生部14の圧力が第1の所定の圧力P1になるように流量調節されて、蒸気ヘッダ(不図示)に供給される。
【0056】
蒸気発生部14の圧力が所定の圧力P1になるように制御されるのは、蒸気発生部14の圧力が蒸気ヘッダ(不図示)の圧力より高い圧力に制御し、蒸気発生部14の圧力を常に蒸気ヘッダの圧力より一定の圧力だけ高い圧力とし、吸収ヒートポンプ101で発生した蒸気Sが常に蒸気ヘッダに供給されるようにし、負荷(不図示)側に安定して蒸気Sが供給されるようにするためである。
【0057】
制御装置21によって以下の制御が行われる。すなわち、蒸気発生部14の圧力がP1より低くなると蒸気弁V1の開度を小さくして、蒸気発生部14から蒸気ヘッダ(不図示)に供給される蒸気Sの量を減少させて蒸気発生部14の圧力が上昇するようにする。一方、蒸気発生部14の圧力がP1より高くなると蒸気弁V1の開度を大きくして、蒸気発生部14から蒸気ヘッダに供給される蒸気Sの量を増加させて蒸気発生部14の圧力が下降するようにする。
【0058】
本実施の形態の吸収ヒートポンプ101は、冷媒液移送管路5と冷媒ポンプ4とを備えるので、凝縮器Cの冷媒液CLを冷媒液移送管路5を通って蒸発器Eに供給することができ、さらに蒸発器Eと冷媒供給管路5A(冷媒液移送管路5の冷媒ポンプ4の上流側)とを繋ぐ冷媒液移送管路51を備えるので、凝縮器Cから蒸発器Eに移送される冷媒液CLの流れと、蒸発器Eから冷媒液CLを取り出した後に再び蒸発器Eに戻される冷媒液CLの流れとを合流させることができる。よって、冷媒ポンプ4によって冷媒液CLを凝縮器Cから蒸発器Eに移送し、同時に蒸発器Eから冷媒液CLを取り出し再び蒸発器Eに戻して循環させることができ、蒸発器Eから冷媒液CLを取り出し再び蒸発器Eに戻して循環させるためのポンプ(循環ポンプ)を兼ねることができ、循環ポンプを設ける必要をなくすことができる。
【0059】
本実施の形態の吸収ヒートポンプ101は、冷媒ポンプ4によって蒸発器Eに冷媒液CLを供給する流れと蒸発器Eと冷媒供給管路5Aの間を循環する流れを発生させることができるので、蒸発器Eに供給される冷媒液CLの流量を多くすることができる。よって、蒸発器Eの伝熱効率を上昇させることができ、蒸発器Eのコンパクト化を図ることができ、また排熱の利用効率を高めることができる。
【0060】
本実施の形態の吸収ヒートポンプ101は、冷媒液移送管路5を通って凝縮器Cから蒸発器Eに移送される冷媒液CLと、冷媒液移送管路51を通って蒸発器Eから冷媒供給管路5Aに移送される冷媒液CLとの間で熱交換を行うので、蒸発器Eから凝縮器Cに冷媒液CLを戻す際の熱損失を減らすことができ、吸収ヒートポンプ101に供給される排熱をより有効に利用することができる。
【0061】
本吸収ヒートポンプ101において、蒸発器Eで蒸発しない余剰の冷媒液CLを冷媒熱交換器X11で熱回収して、冷媒液移送管路5の冷媒ポンプ4の上流側である冷媒供給管路5Aに戻すので、冷媒液CLが凝縮器Cで冷却されることがなく、熱エネルギを無駄にすることがない。
【0062】
前述において、冷媒液移送管路51は、冷媒液移送管路5の冷媒ポンプ4の上流側である冷媒液供給管路5Aに接続しているが、冷媒液移送管路51を凝縮器Cに接続し、蒸発器Eの冷媒液CLを凝縮器Cに戻すようにしてもよい。このようにしても、蒸発器Eで蒸発しない余剰の冷媒液CLの保有熱を冷媒熱交換器X11で熱回収するので、熱損失を防ぐことができ、吸収ヒートポンプ101に供給される排熱をより有効に利用することができる。
【0063】
図3は、本第2の実施の形態の吸収ヒートポンプ102の構成を示すフローシートである。以下、吸収ヒートポンプ101(図1)との構成の相違について述べ、構成が同じ点については確認的に記載するもの以外説明を省略する。吸収ヒートポンプ101(図1)では、吸収器A(図1)は一つであり、蒸発器E(図1)も一つであり、共に単一の圧力下にある。しかし、吸収ヒートポンプ102では、吸収器は、単一の圧力下にはなく、高圧吸収器AHと、高圧吸収器AHより低圧下にある低圧吸収器ALとを含んで構成され、蒸発器も、単一の圧力下にはなく、高圧蒸発部としての高圧蒸発器EHと、高圧蒸発器EHより低圧下にある低圧蒸発部としての低圧蒸発器ELとを含んで構成される。
【0064】
高圧吸収器AHは、吸収器A(図1)と同様に構成され、吸収液スプレイ22Hと、被加熱管23Hと、液面レベルセンサL1Hとを備える。
低圧吸収器ALは、吸収器Aと同様に構成され、吸収液スプレイ22Lと、液面レベルセンサL1Lとを備え、低圧吸収器ALには被加熱管23Lが設置されている。但し、被加熱管23Lには補給水W1ではなく後述の高圧蒸発器EHの気液分離器15から冷媒液CLが移送され、冷媒液CLは吸収液ALiによって加熱されて冷媒蒸気CSを発生する。すなわち、被加熱管23Lの被加熱側が高圧蒸発器EHの一部を構成する。
【0065】
高圧蒸発器EHは、気液分離器15と、前述のように被加熱管23Lの被加熱側とを含んで構成される。高圧蒸発器EHは、気液分離器15が、液面レベルセンサL2Hを備える点で蒸発器E(図1)と同様の構成であるが、冷媒液スプレイ44(図1)と加熱管28(
図1)とを備えない点、バッフル板39Hを気液分離器15の内部に備える点、高圧蒸発
器EHの気液分離器15から抜き出された冷媒液CLが低圧吸収器ALに設置された被加熱管23Lの内側を通り再び気液分離器15に供給されて循環する点、凝縮器Cから気液分離器15に移送された冷媒液CLがバッフル板39Hの下方から気液分離器15に供給される点で蒸発器Eの構成と相違する。
【0066】
冷媒液CLは、気液分離器15から被加熱管23Lに供給されて、冷媒蒸気CSを発生する。本実施の形態では、低圧蒸発器ELでは、後述の加熱管28Lの外側で冷媒が蒸発し、外側の缶胴が気液分離器の役目も果たしているのに対し、高圧蒸発器EHでは、被加熱管23Lの内側で冷媒蒸気CSが発生し、被加熱管23Lの内容積が小さいため、気液分離器15を被加熱管23Lと別の容器として構成している。
【0067】
低圧蒸発器ELは、蒸発器Eと同様に構成され、冷媒液スプレイ44と、加熱管28Lと、液面レベルセンサL2Lとを備える。
【0068】
本実施の形態の2段式ヒートポンプでは最も高温である高圧吸収器AHから蒸気Sを作り出すように構成している。多段式ヒートポンプの場合は、多段の吸収器のうち最も高温である吸収器から蒸気を取り出すように構成するとよい。
【0069】
吸収ヒートポンプ102の補給水移送管路6と、補給水移送管路10とは、高圧吸収器AHの被加熱管23Hに接続されている。吸収ヒートポンプ102は、(1)再生器Gと高圧吸収器AHとを繋ぎ、再生器Gで再生された濃溶液である吸収液ALiを高圧吸収器AHの吸収液スプレイ22Hに移送する吸収液移送管路2と、(2)高圧吸収器AHと低圧吸収器ALとを繋ぎ、高圧吸収器AHに蓄積された中間濃度溶液である吸収液ALiを低圧吸収器ALの吸収液スプレイ22Lに移送する吸収液移送管路3Hと、(3)吸収液移送管路3H(吸収液移送管路3Hの後述の熱交換器X5の上流側)から分岐して再び吸収液移送管路3H(吸収液移送管路3Hの熱交換器X5の下流側)に戻る吸収液移送管路53と、(4)低圧吸収器ALと再生器Gとを繋ぎ、低圧吸収器ALに蓄積された希溶液である吸収液ALiを再生器Gの吸収液スプレイ25に移送する吸収液移送管路3Lと、(5)吸収液移送管路3L(具体的は、吸収液移送管路3Lの後述の熱交換器X2の上流側)から分岐して再び吸収液移送管路3L(具体的には、吸収液移送管路3Lの熱交換器X2の
下流側)に戻る吸収液移送管路52とを備える。
【0070】
吸収ヒートポンプ102は、さらに、(6)凝縮器Cと気液分離器15とを繋ぎ、凝縮器Cで凝縮した冷媒液CLを気液分離器15に移送する冷媒液移送管路5と、(7)低圧蒸発器ELと冷媒供給管路5A(冷媒液移送管路5の後述の冷媒ポンプ4の上流側)とを繋ぎ、低圧蒸発器ELに蓄積された冷媒液CLを冷媒供給管路5Aに移送する冷媒液移送管路51と、(8)冷媒液移送管路5から(後述のように凝縮器Cで冷媒蒸気CSを冷却し
た後の箇所で)分岐し、凝縮器Cで凝縮した冷媒液CLを低圧蒸発器ELに移送する冷媒
液移送管路5Lと、(9)気液分離器15と、低圧吸収器ALに設置された被加熱管23Lであって被加熱側で冷媒液を加熱し冷媒蒸気CSを発生させる被加熱管23Lとを繋ぎ、気液分離器15に蓄積した冷媒液CLを被加熱管23Lに移送する冷媒液移送管路40と、(10)低圧吸収器ALに設置された被加熱管23Lと気液分離器15とを繋ぎ、被加熱管23Lを出た冷媒液CLを含む冷媒蒸気CSを気液分離器15に戻す冷媒液移送管路41とを備える。冷媒液移送管路51の低温冷媒熱交換器X11の下流側には絞り61が設置されている。
【0071】
冷媒液移送管路5は、冷媒液移送管路5Lが分岐する分岐点の上流側で、冷媒液移送管路5を通る冷媒液CLが、再生器Gから凝縮器Cに送られる冷媒蒸気CSによって加熱されるよう構成されている。再生器Gで加熱された吸収液ALiからは、吸収液ALiと同じ温度の冷媒蒸気CSが発生するが、この温度は凝縮器Cの温度より高温であり、再生器Gの熱源の温度に近い過熱蒸気になっているので、凝縮器Cを出る冷媒液CLを加熱することができる。再生器Gから凝縮器Cに向かう冷媒蒸気CSが冷媒液移送管路5を通る冷媒液CLにより凝縮された場合、凝縮により生じた冷媒液CLは邪魔板43によって再生器Gには流れず凝縮器Cに流れるよう凝縮器Cが構成されている。
【0072】
吸収ヒートポンプ102は、さらに、(1)吸収液移送管路2を通って被加熱側に移送される濃溶液である吸収液ALiと、吸収液移送管路3Lから分岐する吸収液移送管路52を通って加熱側に移送される希溶液である吸収液ALiとの間で熱交換を行う冷媒熱交換器X1と、(2)補給水移送管路7を通って被加熱側に移送される補給水W1と、吸収液移送管路3Lを通って加熱側に移送される希溶液である吸収液ALiとの間で熱交換を行う熱交換器X2と、(3)吸収液移送管路3Hを通って加熱側に移送される中間濃度溶液である吸収液ALiと、熱交換器X2を出た後補給水移送管路7を通って被加熱側に移送される補給水W1との間で熱交換を行う熱交換器X5と、(4)冷媒熱交換器X1を出た後吸収液移送管路2を通って被加熱側に移送される濃溶液である吸収液ALiと、吸収液移送管路3Hから分岐する吸収液移送管路53を通って加熱側に移送される中間濃度溶液である吸収液ALiとの間で熱交換を行う冷媒熱交換器X4と、(5)冷媒液移送管路5を通って被加熱側に移送される冷媒液CLと、冷媒液移送管路51を通って加熱側に移送される冷媒液CLとの間で熱交換を行う低温冷媒熱交換器X11とを備える。
熱交換器X2と冷媒熱交換器X1とは並列に配置され、熱交換器X5と冷媒熱交換器X4とは並列に配置されている。
【0073】
吸収ヒートポンプ102は、さらに(6)加熱側に温水WH3が移送され、被加熱側に補給水移送管路7を通って補給水W1が移送され、熱交換が行われる熱交換器X3と、(7)加熱側に排熱を有する温水WH4が移送され、被加熱側に冷媒液移送管路5を通って高圧蒸発器EHに供給される冷媒液CLが移送され、熱交換が行われる熱交換器X6とを備える。温水WH4の温度は、例えば入口90℃、出口85℃とするとよい。なお、補給水W1は、熱交換器X3の上流側で、凝縮器Cの冷媒蒸気CSなどで加熱してもよい。
【0074】
吸収液移送管路2に設置された溶液ポンプ1は、再生器Gで再生された吸収液ALiを高圧吸収器AHに移送する。冷媒液移送管路5に設置された冷媒ポンプ4は、凝縮器Cで凝縮された冷媒液CLおよび低圧蒸発器ELから冷媒液移送管路5の冷媒ポンプ4の上流側に戻された冷媒液CLを、高圧蒸発器EHおよび低圧蒸発器ELに移送する。補給水移送管路6に設置された給水ポンプ13は、補給水W1を気液分離器11から高圧吸収器AHの被加熱管23Hに移送しさらに被加熱管23Hで蒸気Sを発生させて気液分離器11に移送し、補給水W1を循環させる。
【0075】
吸収液移送管路3H上の熱交換器X5の下流であって、さらに冷媒熱交換器X4が設置されている吸収液移送管路53が吸収液移送管路3Hに合流する箇所の下流には、吸収液スプレイ22Lに移送される吸収液ALiの流量を調節する吸収液供給弁V4が設置されている。
【0076】
液面レベルセンサL1Hからの、液面レベルを表す液面信号(不図示)は制御装置21に送られ、制御装置21から液面レベルを一定のレベルに保つよう回転数を制御する制御信号(不図示)がVVVFインバータ(不図示)に送られ、当該インバータが溶液ポンプ1を駆動するモータ(不図示)の電源を制御し、溶液ポンプ1の回転数を高圧吸収器AHの液面レベルが一定になるよう制御する(但し、図中簡略化し、液面レベルセンサL1Hから制御
信号が溶液ポンプ1に送られるよう記載)。
【0077】
液面レベルセンサL1Lからの、液面レベルを表す液面信号(不図示)は制御装置21に送られ、制御装置21から低圧吸収器ALの吸収液ALiの液面レベルを一定のレベルに保つよう高圧吸収器AHから低圧吸収器ALに移送する吸収液ALiの流量を制御する制御信号(不図示)が吸収液供給弁V4に送られる(図中、簡略化して、液面レベルセンサL
1Lから吸収液供給弁V4に信号が送られるように記載)。
【0078】
液面レベルセンサL2Hからの、液面レベルを表す液面信号(不図示)は制御装置21に送られ、制御装置21から液面レベルを一定のレベルに保つよう冷媒液CLの流量を制御する制御信号(不図示)が冷媒供給弁V3Hに送られ、冷媒供給弁V3Hの開度を気液分離器15の冷媒液CLの液面レベルが一定になるよう制御する(図中、簡略化して、液面レ
ベルセンサL2Hから冷媒供給弁V3Hに信号が送られるように記載)。
【0079】
液面レベルセンサL2Lからの、液面レベルを表す液面信号(不図示)は制御装置21に送られ、制御装置21から液面レベルを一定のレベルに保つよう冷媒液CLの流量を制御する制御信号(不図示)が冷媒供給弁V3Lに送られ、冷媒供給弁V3Lの開度を低圧蒸発器ELの冷媒液CLの液面レベルが一定になるよう制御する(図中、簡略化して、液面レ
ベルセンサL2Lから冷媒供給弁V3Lに信号が送られるように記載)。
【0080】
次に、本第2の実施の形態の作用を図3、図4を参照して説明する。図4は、吸収液および冷媒の状態を示す線図であり、縦軸が圧力、横軸が温度である。
高圧吸収器AHを出た中間溶液である吸収液ALi(状態は、図4中、B2Hの位置)は、吸収液移送管路3Hにより移送され、一部が熱交換器X5を通過し、熱交換器X5で補給水W1により冷却され、残りの一部が吸収液移送管路3Hから分岐する吸収液移送管路53により移送され冷媒熱交換器X4を通過し、冷媒熱交換器X4で、冷媒熱交換器X1を出た、再生器Gから高圧吸収器AHに移送される濃溶液である吸収液ALiにより冷却される。分岐した吸収液移送管路53は、冷媒熱交換器X4の下流側で再び吸収液移送管路3Hに合流するので、熱交換器X5を通過した吸収液ALiと冷媒熱交換器X4を通過した吸収液ALiとは、再び合流し(吸収液移送管路3Hを通る吸収液ALiの合流後の
状態は、図4中、B11の位置)、吸収液供給弁V4により流量が制御され、さらに低圧
吸収器ALの吸収液スプレイ22Lに移送される。吸収液供給弁V4による流量制御は、低圧吸収器ALに一定レベルの吸収液ALiが蓄積するように行われる。
【0081】
吸収液ALiは、吸収液スプレイ22Lから低圧吸収器AL内に散布され(吸収液AL
iの状態は、図4中、B6Lの位置)、散布された吸収液ALiは低圧蒸発器ELで蒸発
した冷媒蒸気CSを吸収し、被加熱管23L(被加熱管23Lの被加熱側は高圧蒸発器E
H)を介して、気液分離器15を出て気液分離器15に戻る冷媒液CLを加熱し、低圧吸
収器ALの底部に蓄積する。
【0082】
低圧吸収器ALを出た希溶液である吸収液ALi(状態は、図4中、B2Lの位置)は、吸収液移送管路3Lにより移送され、一部が熱交換器X2を通過することにより補給水W1により冷却され、残りの一部が吸収液移送管路3Lから分岐する吸収液移送管路52により移送され冷媒熱交換器X1を通過し、再生器Gから高圧吸収器AHに移送される濃溶液である吸収液ALiにより冷却される。分岐した吸収液移送管路52は、冷媒熱交換器X4の下流側で再び吸収液移送管路3Lに合流するので、熱交換器X2を通過した吸収液ALiと冷媒熱交換器X1を通過した吸収液ALiとは、再び合流し(吸収液移送管路3
Lを通る吸収液ALiの状態は、図4中、B13の位置)、さらに再生器Gの吸収液スプ
レイ25に移送される。
【0083】
吸収液ALiは、吸収液スプレイ25から再生器G内に散布され(吸収液ALiの状態は、図4中、B5の位置)、散布された吸収液ALiは加熱管26を介して温水WH2に加
熱され、吸収液ALiに吸収されていた冷媒は冷媒蒸気CSとして蒸発し、再生された濃溶液である吸収液ALiは再生器Gの底部に蓄積する。
【0084】
濃溶液となった吸収液ALi(状態は、図4中、B4の位置)は、吸収液移送管路2を通り高圧吸収器AHの吸収液スプレイ22Hに移送される。吸収液移送管路2を通る間、溶液ポンプ1により昇圧され、その後冷媒熱交換器X1で、低圧吸収器ALから再生器Gに移送される希溶液である吸収液ALiに加熱され(吸収液移送管路2を通る吸収液ALi
の状態は、図4中、B7の位置)、さらに冷媒熱交換器X4で高圧吸収器AHから低圧吸
収器ALに移送される吸収液ALiにより加熱され(吸収液移送管路2を通る吸収液AL
iの状態は、図4中、B10の位置)、高圧吸収器AHの吸収液スプレイ22Hに移送さ
れる。
【0085】
高圧吸収器AHで、吸収液スプレイ22Hから高圧吸収器AH内に散布された濃溶液である吸収液ALi(吸収液ALiの状態は、図4中、B6Hの位置)は、気液分離器15で分離した冷媒蒸気CSを吸収し、被加熱管23Hを通る補給水W1を加熱し、高圧吸収器AHの底部に蓄積する(吸収液ALiの状態は、図4中、B2Hの位置)。
【0086】
溶液ポンプ1は、高圧吸収器AHに蓄積する吸収液ALiの液面レベルが一定となるような流量の吸収液ALiを再生器Gから高圧吸収器AHに移送するよう制御装置21によって回転数が制御される。このような制御が行われるのは、高圧吸収器AHから低圧吸収器ALに送られ、高圧吸収器AHで減少した吸収液ALiの量に見合う量の吸収液ALiを再生器Gから高圧吸収器AHに移送するためである。
【0087】
再生器Gで蒸発した冷媒蒸気CSは凝縮器Cに送られ、冷媒液移送管路5を通る冷媒液CLに冷却され、さらに凝縮器Cで冷却管30を通る冷却水WCにより冷却され凝縮して冷媒液CLとなる(冷媒液CLの状態は、図4中、D1の位置)。凝縮器Cの冷媒液CLは、冷媒液移送管路5を通り、低圧蒸発器ELから冷媒液移送管路51を通って送られた冷媒液CLと混合し、冷媒ポンプ4により昇圧され、低温冷媒熱交換器X11を通り、低圧蒸発器ELから冷媒液移送管路5の冷媒ポンプ4の上流側に戻される冷媒液CLにより加熱され、さらに凝縮器Cの上部に導入され、再生器Gから凝縮器Cに送られる冷媒蒸気CSによって加熱される。冷媒液移送管路5を通る冷媒液CLは、さらに一部が冷媒供給弁V3Hにより流量を制御されて、熱交換器X6を通り温水WH4によって加熱された後に高圧蒸発器EHに送られ、残りの一部が冷媒液移送管路5から分岐し冷媒液移送管路5Lを通り、冷媒供給弁V3Lにより流量を制御されて、低圧蒸発器ELに送られる。冷媒液CLは、低圧蒸発器ELと冷媒供給管路5A(凝縮器C)との間の圧力差により低圧蒸発器ELから冷媒液移送管路51を通り冷媒供給管路5Aに移送される。
【0088】
高圧蒸発器EHに送られる冷媒液CLの流量は、気液分離器15の底部に蓄積する余剰冷媒液CLの液面レベルが一定になるように制御される。このように制御するのは、高圧蒸発器EHで蒸発し高圧吸収器AHに送られた冷媒液CLの量に見合う分の冷媒液CLを気液分離器15に移送するためである。
【0089】
低圧蒸発器ELに送られる冷媒液CLの流量は、低圧蒸発器ELの底部に蓄積する余剰冷媒液CLの液面レベルが一定になるように制御される。このように制御するのは、低圧蒸発器ELで蒸発し低圧吸収器ALに送られた冷媒液CLの量に見合う分の冷媒液CLを低圧蒸発器ELに移送するためであり、また低圧蒸発器ELの冷媒蒸気CSを凝縮器Cに流出させないためである。
【0090】
気液分離器15に移送された冷媒液CLは、気液分離器15のバッフル板39Hの下側に入り冷媒蒸気CSに同伴されないようにし、底部に蓄積する(冷媒液CLの状態は、図
4中、D2Hの位置)。なお、冷媒液CLを底部に蓄積する冷媒液中に直接供給してもよ
い。蒸発した冷媒蒸気CSは高圧吸収器AHに送られ、高圧吸収器AH内で、吸収液ALiに吸収される。なお、気液分離器15に供給した冷媒液CLは、熱交換器X6で温水WH4により加熱されたものであって、冷媒蒸気CSからみれば過冷却状態になっている。供給された冷媒液CLは、過冷却のまま低圧吸収器ALに設置された被加熱管23Lに送られるのを防ぐため、冷媒蒸気に暴気して飽和状態にしてから被加熱管23Lに送られる。
【0091】
低圧蒸発器ELに移送された冷媒液CLは、加熱管28Lを通る温水WH1に加熱され、余剰分が低圧蒸発器ELの底部に蓄積する(冷媒液CLの状態は、図4中、D2Lの位
置)。加熱された冷媒液CLは、蒸発し、蒸発した冷媒蒸気CSは低圧吸収器ALに送ら
れ、低圧吸収器AL内で、吸収液ALiに吸収される。
【0092】
補給水移送管路7に供給された補給水W1は、給水ポンプ12により昇圧され、気液分離器11に移送される。給水ポンプ12を出た補給水W1は、熱交換器X3で温水WH3により加熱され、さらに熱交換器X2で低圧吸収器ALから再生器Gに移送される吸収液ALiの一部により加熱され、さらに熱交換器X5で高圧吸収器AHから低圧吸収器ALに移送される吸収液ALiの一部により加熱され、気液分離器11に移送される。
【0093】
本実施の形態の吸収ヒートポンプ102は、冷媒液移送管路5、5Lと冷媒ポンプ4とを備えるので、凝縮器Cの冷媒液CLを冷媒液移送管路5、5Lを通って冷媒液CLを低圧蒸発器ELに供給することができ、さらに低圧蒸発器ELと冷媒供給管路5A(冷媒液
移送管路5の冷媒ポンプ4の上流側)とを繋ぐ冷媒液移送管路51を備えるので、凝縮器
Cから低圧蒸発器ELに移送される冷媒液CLの流れと、低圧蒸発器ELから冷媒液CLを取り出した後に再び低圧蒸発器ELに戻される冷媒液CLの流れとを合流させることができる。よって、冷媒ポンプ4によって冷媒液CLを凝縮器Cから低圧蒸発器ELに移送し、同時に低圧蒸発器ELから冷媒液CLを取り出し再び低圧蒸発器ELに戻して循環させることができ、低圧蒸発器ELから冷媒液CLを取り出し再び低圧蒸発器ELに戻して循環させるためのポンプ(循環ポンプ)を兼ねることができ、循環ポンプを設ける必要をなくすことができる。
【0094】
本実施の形態の吸収ヒートポンプ101は、冷媒ポンプ4によって低圧蒸発器ELに冷媒液CLを供給する流れと低圧蒸発器ELと冷媒供給管路5Aの間を循環する流れを発生させることができるので、低圧蒸発器ELに供給される冷媒液CLの流量を多くすることができる。よって、低圧蒸発器ELの伝熱効率を上昇させることができ、低圧蒸発器ELのコンパクト化を図ることができ、また排熱の利用効率を高めることができる。
【0095】
本実施の形態の吸収ヒートポンプ102では、吸収ヒートポンプ101(図1)の効果に加え、吸収器は高圧吸収器AHと低圧吸収器ALとを含んで構成され、蒸発器は高圧蒸発器EHと低圧蒸発器ELとを含んで構成されるので、吸収ヒートポンプ101(図1)と比較して、より高温の蒸気Sを発生することができるという効果を有する。
【0096】
本実施の形態の吸収ヒートポンプ102は、低温冷媒熱交換器X11を備え、凝縮器Cを出た冷媒液CLであって、冷媒ポンプ4に昇圧されて高圧蒸発器EHおよび低圧蒸発器ELに移送される冷媒液CLと、低圧蒸発器ELから冷媒ポンプ4の上流側に戻される冷媒液CLとの間で熱交換を行うので、凝縮器Cから高圧蒸発器EHおよび低圧蒸発器ELに送られる冷媒液CLの温度を上げることができ、吸収ヒートポンプ102に供給される排熱をより有効に利用することができる。
【0097】
前述において、冷媒液移送管路51は、冷媒供給管路5Aに接続しているが、冷媒液移送管路51を凝縮器Cに接続し、低圧蒸発器ELの冷媒液CLを凝縮器Cに戻すようにしてもよい。このようにしても、同様に、凝縮器Cから高圧蒸発器EHおよび低圧蒸発器ELに送られる冷媒液CLの温度を上げることができ、吸収ヒートポンプ102に供給される排熱をより有効に利用することができる。
【0098】
図5は、本第3の実施の形態の吸収ヒートポンプ103の構成を示すフローシートである。以下、吸収ヒートポンプ102(図3)との構成の相違について述べ、構成が同じ点については確認的に記載するもの以外説明を省略する。
吸収ヒートポンプ103は、後述の高温冷媒熱交換器X12を追加で備える点、冷媒液移送管路の構成の点で、吸収ヒートポンプ102と相違する。以下具体的に説明する。
【0099】
吸収ヒートポンプ103は、高圧蒸発器EHの気液分離器15の下部に蓄積した冷媒液CLを被加熱管23Lに移送していない。この代わりに、冷媒液移送管路5は熱交換器X6の下流側以降は、吸収ヒートポンプ102の冷媒液移送管路5(図3)とルートが相違する。すなわち、熱交換器X6の下流側の冷媒液移送管路5は、直接気液分離器15に接続することはせず、被加熱管23Lに接続し、被加熱管23Lを介して低圧吸収器ALでの吸収熱により冷媒液移送管路5を通る冷媒液CLが加熱されるようにし、その先の冷媒液移送管路5は、被加熱管23Lと気液分離器15とを繋ぎ、加熱された冷媒液CLを気液分離器15に移送する。
【0100】
吸収ヒートポンプ103は、気液分離器15と冷媒液移送管路5Lの冷媒供給弁V3Lの下流側とを繋ぎ、気液分離器15に蓄積した余剰の冷媒液CLを、凝縮器Cから冷媒液移送管路5および冷媒液移送管路5Lを経て移送されてきた冷媒液CLと混合させ、混合後に低圧蒸発器ELに移送する冷媒液移送管路45を備える。
【0101】
吸収ヒートポンプ103は、冷媒液移送管路45を通って加熱側に移送される冷媒液CLと、冷媒液移送管路5を通る冷媒液CLであって、熱交換器X6を出た後に被加熱管23Lに向かい被加熱側に移送される冷媒液CLとの間で熱交換を行う高温冷媒熱交換器X12をさらに備える。
【0102】
次に、本実施の形態の吸収ヒートポンプ103の作用について述べる。吸収ヒートポンプ102(図3)の作用との相違点を説明し、同じ点は確認的に記載するもの以外説明を省略する。
凝縮器Cを出て冷媒液移送管路5を通る冷媒液CLは、熱交換器X6を出た後に、高温冷媒熱交換器X12を通り、高温冷媒熱交換器X12で高圧蒸発器EHの気液分離器15から低圧蒸発器ELへ移送される冷媒液CLによって加熱され、さらに被加熱管23Lを通り、被加熱管23Lを介して低圧吸収器ELにおいて吸収液ALiが冷媒蒸気CSを吸収する吸収熱により加熱され、その後気液分離器15に移送される。
【0103】
気液分離器15の底部に蓄積した余剰の冷媒液CLは、気液分離器15を出て冷媒液移送管路45を通り、高温冷媒熱交換器X12に移送され、高温冷媒熱交換器X12で、凝縮器Cから気液分離器15に移送される冷媒液CLに冷却され、冷媒液移送管路5Lの冷媒供給弁V3Lの下流側に移送され、凝縮器Cから低圧蒸発器ELに移送される冷媒液CLと混合し、さらに低圧蒸発器ELに移送される。冷媒液CLは、気液分離器15と冷媒液移送管路5L(低圧蒸発器EL)との間の圧力差により気液分離器15から冷媒液移送管路45を通り冷媒液移送管路5Lに移送される。
【0104】
低圧吸収器ALにおいて、吸収液ALiは、吸収液スプレイ22Lから低圧吸収器AL内に散布され、散布された吸収液ALiは低圧蒸発器ELで蒸発した冷媒蒸気CSを吸収し、被加熱管23Lを介して、凝縮器Cを出て気液分離器15に移送される冷媒液CLを加熱し、低圧吸収器ALの底部に蓄積する。
【0105】
凝縮器Cを出た冷媒液CLに、低圧蒸発器ELから冷媒ポンプ4の上流側に戻された冷媒液CLが合流し、合流後に冷媒ポンプ4に昇圧され、低温冷媒熱交換器X11、冷媒供給弁V3Lを通過した後、気液分離器15を出て高温冷媒熱交換器X12を通過した冷媒液CLがさらに合流し、低圧蒸発器ELに移送される。
【0106】
本実施の形態の吸収ヒートポンプ103は、冷媒液移送管路5、5Lと冷媒ポンプ4とを備えるので、凝縮器Cの冷媒液CLを冷媒液移送管路5、5Lを通って冷媒液CLを低圧蒸発器ELに供給することができ、さらに低圧蒸発器ELと冷媒供給管路5A(冷媒液
移送管路5の冷媒ポンプ4の上流側)とを繋ぐ冷媒液移送管路51を備えるので、凝縮器
Cから低圧蒸発器ELに移送される冷媒液CLの流れと、低圧蒸発器ELから冷媒液CLを取り出した後に再び低圧蒸発器ELに戻される冷媒液CLの流れとを合流させることができる。よって、冷媒ポンプ4によって冷媒液CLを凝縮器Cから低圧蒸発器ELに移送し、同時に低圧蒸発器ELから冷媒液CLを取り出し再び低圧蒸発器ELに戻して循環させることができ、低圧蒸発器ELから冷媒液CLを取り出し再び低圧蒸発器ELに戻して循環させるためのポンプ(循環ポンプ)を兼ねることができ、循環ポンプを設ける必要をなくすことができる。
【0107】
本実施の形態の吸収ヒートポンプ103は、冷媒液移送管路5と冷媒ポンプ4とを備えるので、凝縮器Cの冷媒液CLを冷媒液移送管路5を通って高圧蒸発器EH(気液分離器
15)に供給することができ、さらに高圧蒸発器EHと冷媒液移送管路5Lとを繋ぐ冷媒
液移送管路45を備えるので、凝縮器Cから高圧蒸発器EHに移送される冷媒液CLの流れと、高圧蒸発器EHから冷媒液CLを取り出した後に低圧蒸発器ELに移送し、低圧蒸発器ELから再び高圧蒸発器EHに戻される冷媒液CLの流れとを合流させることができる。よって、冷媒ポンプ4によって冷媒液CLを凝縮器Cから高圧蒸発器EHに移送し、同時に高圧蒸発器ELから冷媒液CLを取り出し低圧蒸発器ELに移送しさらに低圧蒸発
器ELから取り出し再び高圧蒸発器EHに戻して循環させることができ、高圧蒸発器EHから冷媒液CLを取り出し低圧蒸発器ELを経て再び高圧蒸発器EHに戻して循環させるためのポンプ(循環ポンプ)を兼ねることができ、循環ポンプを設ける必要をなくすことができる。
【0108】
本実施の形態の吸収ヒートポンプ103は、冷媒ポンプ4によって低圧蒸発器ELに冷媒液CLを供給する流れと低圧蒸発器ELと冷媒供給管路5Aの間を循環する流れを発生させることができる、さらに、高圧蒸発器EH(気液分離器15)に冷媒液CLを供給する流れと高圧蒸発器EH(気液分離器15)と低圧蒸発器ELを経て冷媒供給管路5Aの間を循環する流れを発生させることができるので、低圧蒸発器ELに供給される冷媒液CLの流量、高圧蒸発器EHに供給される冷媒液CLの流量を多くすることができる。よって、低圧蒸発器ELと高圧蒸発器EHの伝熱効率を上昇させることができ、低圧蒸発器ELと高圧蒸発器EHのコンパクト化を図ることができ、また排熱の利用効率を高めることができる。
【0109】
本実施の形態の吸収ヒートポンプ103は、高温冷媒熱交換器X12を備え、凝縮器Cを出た冷媒液CLであって、冷媒ポンプ4に昇圧された後に高圧蒸発器EH(気液分離器
15)にのみ移送される冷媒液CLと、気液分離器15から低圧蒸発器ELに戻される冷
媒液CLとの間で熱交換を行うので、凝縮器Cから高圧蒸発器EH(気液分離器15)にのみ送られる冷媒液CLの温度を上げることができ、吸収ヒートポンプ103に供給される排熱をより有効に利用することができる。
【0110】
なお、本実施の形態の吸収ヒートポンプ103は、吸収ヒートポンプ102(図5)と同様に、低温冷媒熱交換器X11を備え、凝縮器Cを出た冷媒液CLであって、冷媒ポンプ4に昇圧されて高圧蒸発器EH(気液分離器15)および低圧蒸発器ELに移送される冷媒液CLと、低圧蒸発器ELから冷媒ポンプ4の上流側に戻される冷媒液CLとの間で熱交換を行うので、凝縮器Cから高圧蒸発器EH(気液分離器15)および低圧蒸発器ELに送られる冷媒液CLの温度を上げることができ、吸収ヒートポンプ103に供給される排熱をより有効に利用することができる。
【0111】
図6は、本第4の実施の形態の吸収ヒートポンプ104の構成を示すフローシートである。以下、吸収ヒートポンプ103(図5)との構成の相違について述べ、構成が同じ点については確認的に記載するもの以外説明を省略する。
吸収ヒートポンプ104は、冷媒液移送管路45、低温冷媒熱交換器X11を備えず、後述の冷媒液移送管路48、冷媒熱交換器X13を備える点、冷媒液移送管路5L、冷媒液移送管路51、冷媒液移送管路5の構成の点で、吸収ヒートポンプ103と相違する。以下具体的に説明する。
【0112】
冷媒液移送管路5は、凝縮器Cと高圧蒸発器EHの気液分離器15とを繋ぎ、凝縮器Cで凝縮した冷媒液CLを気液分離器15に移送するが、低温冷媒熱交換器X11は存在しないので、低温冷媒熱交換器X11には接続されていない。冷媒液移送管路51は、低圧蒸発器ELと冷媒供給管路5A(冷媒液移送管路5の後述の冷媒ポンプ4の上流側)とを繋ぎ、低圧蒸発器ELに蓄積された余剰の冷媒液CLを冷媒液移送管路5に移送するが、低温冷媒熱交換器X11は存在しないので、低温冷媒熱交換器X11には接続されていない。
【0113】
吸収ヒートポンプ104は、冷媒液移送管路5から分岐する冷媒液移送管路5Lを通って被加熱側に移送される冷媒液CLと、冷媒液移送配管51を通って加熱側に移送される冷媒液CLとの間で熱交換を行う冷媒熱交換器X13を備える。したがって、冷媒液移送管路5Lの冷媒供給弁V3Lの上流側が冷媒熱交換器X13の被加熱側に接続され、冷媒液移送配管51が冷媒熱交換器X13の加熱側に接続されている。
【0114】
吸収ヒートポンプ104は、吸収ヒートポンプ103(図5)と同様に、冷媒液移送管路48を通って加熱側に移送される冷媒液CLと、冷媒液移送管路5を通る冷媒液CLであって、熱交換器X6を出た後に被加熱管23Lに向かい被加熱側に移送される冷媒液CLとの間で熱交換を行う高温冷媒熱交換器X12をさらに備える。
【0115】
吸収ヒートポンプ104は、高圧蒸発器EHの気液分離器15と冷媒供給管路5Aとを繋ぎ、気液分離器15に蓄積された余剰の冷媒液CLを冷媒供給管路5Aに移送する冷媒液移送管路48を備え、冷媒液移送管路48の高温冷媒熱交換器X12の下流側には絞り62が設置されている。
【0116】
次に、本実施の形態の吸収ヒートポンプ104の作用について述べる。吸収ヒートポンプ103(図5)の作用との相違点を説明し、同じ点は確認的に記載するもの以外説明を省略する。
凝縮器Cの冷媒液CLは、冷媒液移送管路5を通り、低圧蒸発器ELから冷媒液移送管路51を通って送られた冷媒液CLと混合し、冷媒ポンプ4により昇圧され、さらに凝縮器Cの上部に導入され、再生器Gから凝縮器Cに送られる冷媒蒸気CSによって加熱される。
【0117】
冷媒液移送管路5を通る冷媒液CLは、さらに一部が冷媒供給弁V3Hにより流量を制御されて、熱交換器X6を通り、熱交換器X6で温水WH4によって加熱された後に被加熱管23Lに送られ、被加熱管23Lを介して低圧吸収器ALにおいて吸収液ALiが冷媒蒸気CSを吸収する吸収熱により加熱され、その後高圧蒸発器EHの気液分離器15に移送される。
冷媒液移送管路5を通る冷媒液CLは、残りの一部が冷媒液移送管路5から分岐し冷媒液移送管路5Lを通り、冷媒供給弁V3Lの上流側で冷媒熱交換器X13を通り、冷媒熱交換器X13で、低圧蒸発器ELから冷媒供給管路5Aに戻される冷媒液CLにより加熱され、その後に冷媒供給弁V3Lにより流量を制御されて、低圧蒸発器ELに送られる。
【0118】
高圧蒸発器EHの下部に蓄積した冷媒液CLは、冷媒液移送管路48を通り、高温冷媒熱交換器X12を通過する際に、高温冷媒熱交換器X12を介して、凝縮器Cから高圧蒸発器ELの気液分離器15に送られる冷媒液CLであって、凝縮器Cにおいて再生器Gから凝縮器Cに送られる冷媒蒸気CSにより加熱された後の冷媒液CLを加熱し、その後冷媒供給管路5Aに戻される。冷媒液CLは、気液分離器15(高圧蒸発器EH)と冷媒供給管路5A(凝縮器C)との間の圧力差により気液分離器15から冷媒液移送管路48を通り冷媒供給管路5Aに移送される。
【0119】
低圧蒸発器ELの下部に蓄積した冷媒液CLは、冷媒液移送管路51を通り、冷媒熱交換器X13を通過する際に、冷媒熱交換器X13を介して、凝縮器Cから低圧蒸発器ELに送られる冷媒液CLであって、凝縮器Cにおいて再生器Gから凝縮器Cに送られる冷媒蒸気CSにより加熱された後の冷媒液CLを加熱し、その後冷媒供給管路5Aに戻される。冷媒液CLは、低圧蒸発器ELと冷媒供給管路5A(凝縮器C)との間の圧力差により低圧蒸発器ELから冷媒液移送管路51を通り冷媒供給管路5Aに移送される。
【0120】
本実施の形態の吸収ヒートポンプ104は、冷媒液移送管路5、5Lと冷媒ポンプ4とを備えるので、凝縮器Cの冷媒液CLを冷媒液移送管路5、5Lを通って低圧蒸発器ELに供給することができ、さらに低圧蒸発器ELと冷媒供給管路5Aとを繋ぐ冷媒液移送管路51を備えるので、冷媒液CLを凝縮器Cから低圧蒸発器ELに移送される冷媒液CLの流れと、低圧蒸発器ELから冷媒液CLを取り出した後に再び低圧蒸発器ELに戻され
る冷媒液CLの流れとを合流させることができる。よって、冷媒ポンプ4によって冷媒液CLを凝縮器Cから低圧蒸発器ELに移送し、同時に低圧蒸発器ELから冷媒液CLを取り出し再び低圧蒸発器ELに戻して循環させることができ、低圧蒸発器ELから冷媒液CLを取り出し再び低圧蒸発器ELに戻して循環させるためのポンプ(循環ポンプ)を兼ねることができ、循環ポンプを設ける必要をなくすことができる。
【0121】
本実施の形態の吸収ヒートポンプ104は、冷媒液移送管路5と冷媒ポンプ4とを備えるので、凝縮器Cの冷媒液CLを冷媒液移送管路5を通って高圧蒸発器EHに供給することができ、さらに高圧蒸発器EHと冷媒供給管路5Aとを繋ぐ冷媒液移送管路48を備えるので、凝縮器Cから高圧蒸発器EHに移送される冷媒液CLの流れと、高圧蒸発器EHから冷媒液CLを取り出した後に再び高圧蒸発器EHに戻される冷媒液CLの流れとを合流させることができる。よって、冷媒ポンプ4によって冷媒液CLを凝縮器Cから高圧蒸発器EHに移送し、同時に高圧蒸発器EHから冷媒液CLを取り出し再び高圧蒸発器EHに戻して循環させることができ、高圧蒸発器EHから冷媒液CLを取り出し再び高圧蒸発器EHに戻して循環させるためのポンプ(循環ポンプ)を兼ねることができ、循環ポンプを設ける必要をなくすことができる。
【0122】
本実施の形態の吸収ヒートポンプ104は、冷媒ポンプ4によって低圧蒸発器ELに冷媒液CLを供給する流れと低圧蒸発器ELと冷媒供給管路5Aの間を循環する流れを発生させることができるので、低圧蒸発器ELに供給される冷媒液CLの流量を多くすることができる。よって、低圧蒸発器ELの伝熱効率を上昇させることができ、低圧蒸発器ELのコンパクト化を図ることができ、また排熱の利用効率を高めることができる。さらに、吸収ヒートポンプ104は、冷媒ポンプ4によって高圧蒸発器EHに冷媒液CLを供給する流れと高圧蒸発器EHと冷媒供給管路5Aの間を循環する流れを発生させることができるので、高圧蒸発器EHに供給される冷媒液CLの流量を多くすることができる。よって、高圧蒸発器EHの伝熱効率を上昇させることができ、高圧蒸発器EHのコンパクト化を図ることができ、また排熱の利用効率を高めることができる。
【0123】
本実施の形態の吸収ヒートポンプ104は、冷媒熱交換器X13を備え、凝縮器Cを出た冷媒液CLであって、冷媒ポンプ4に昇圧された後に低圧蒸発器ELにのみ移送される冷媒液CLと、低圧蒸発器ELから凝縮器Cに戻される冷媒液CLとの間で熱交換を行うので、凝縮器Cから低圧蒸発器ELにのみ送られる冷媒液CLの温度を上げることができ、吸収ヒートポンプ104に供給される排熱をより有効に利用することができる。
【0124】
本実施の形態の吸収ヒートポンプ104は、吸収ヒートポンプ103(図5)と同様に、高温冷媒熱交換器X12を備え、凝縮器Cを出た冷媒液CLであって、冷媒ポンプ4に昇圧された後に高圧蒸発器EH(気液分離器15)にのみ移送される冷媒液CLと、高圧蒸発器EH(気液分離器15)から低圧蒸発器ELに戻される冷媒液CLとの間で熱交換を行うので、凝縮器Cから高圧蒸発器EH(気液分離器15)にのみ送られる冷媒液CLの温度を上げることができ、吸収ヒートポンプ104に供給される排熱をより有効に利用することができる。
【0125】
図7は、本第5の実施の形態の吸収ヒートポンプ105の構成を示すフローシートである。以下、吸収ヒートポンプ104(図6)との構成の相違について述べ、構成が同じ点については確認的に記載するもの以外説明を省略する。
吸収ヒートポンプ105は、冷媒液移送管路54、冷媒液移送管路55、冷媒液移送管路56、冷媒熱交換器X14、高温冷媒熱交換器X15を備える点、高温冷媒熱交換器X12(図6)、冷媒熱交換器X13(図6)、冷媒液移送管路5(図6)、冷媒液移送管路5L(図6)、冷媒液移送管路51(図6)を備えない点で、吸収ヒートポンプ104と相違する。以下具体的に説明する。
【0126】
吸収ヒートポンプ105は、(1)凝縮器Cと低圧蒸発器ELとを繋ぎ、凝縮器Cで凝縮した冷媒液CLを低圧蒸発器ELに移送する冷媒液移送管路54と、(2)低圧蒸発器ELと高圧蒸発器EHの気液分離器15とを繋ぎ、低圧蒸発器ELの底部に蓄積した余剰の冷媒液CLを気液分離器15に移送する冷媒液移送管路55と、(3)冷媒液移送管路55から分離し、低圧蒸発器ELの冷媒液CLを低圧蒸発器ELに戻して循環させる冷媒液移送管路56とを備える。
【0127】
冷媒液移送管路45は、気液分離器15の底部に蓄積した冷媒液CLを、後述の高温冷媒熱交換器X15を経て冷媒液移送管路56に戻すよう構成されている。冷媒液移送管路54は、さらに、冷媒液移送管路54を通る冷媒液CLが、再生器Gから凝縮器Cに送られる冷媒蒸気CSによって加熱されるよう構成されている。冷媒液移送管路54は、冷媒液CLを低圧蒸発器ELに、底部に蓄積している冷媒液CLの上方から供給するよう構成されている。
【0128】
吸収ヒートポンプ105は、(1)排熱を有する温水WH5が加熱側に移送され、冷媒液移送管路55を通って低圧蒸発器ELから気液分離器15に移送される冷媒液CLが被加熱側に移送され、熱交換が行われる冷媒熱交換器X14と、(2)冷媒液移送管路45を通って気液分離器15から移送される冷媒液CLが加熱側に移送され、冷媒液移送管路55を通る冷媒液CLであって、冷媒熱交換器X14を出た後に被加熱管23Lに向かい移送される冷媒液CLが被加熱側に移送され、熱交換が行われる高温冷媒熱交換器X15とを備える。温水WH5の温度は、例えば入口90℃、出口85℃とするとよい。
【0129】
冷媒液移送管路54には、冷媒ポンプ46が設置され、冷媒ポンプ46は、凝縮器Cで凝縮した冷媒液CLを後述の冷媒供給弁V3Lを経て低圧蒸発器ELに移送する。冷媒液移送管路55には、冷媒ポンプ47が設置され、冷媒ポンプ47は、低圧蒸発器ELの底部に蓄積した冷媒液CLを一部低圧蒸発器ELに戻して循環させ、残った冷媒液CLを後述の冷媒供給弁V3H、冷媒熱交換器X14、高温冷媒熱交換器X15、被加熱管23Lを経て気液分離器15に移送する。
【0130】
冷媒液移送管路55は、冷媒ポンプ46の上流側の冷媒供給管路55Aと、冷媒ポンプ4の下流側の冷媒液移送管路55Bとを含んで構成される。低圧蒸発器ELと冷媒供給管路55Aとを含んで、本発明の低圧蒸発部が構成される。
【0131】
冷媒液移送管路54の、凝縮器Cにおいて再生器Gから凝縮器Cに向かう冷媒蒸気CSによって冷媒液CLが加熱される箇所の下流側に、凝縮器Cから低圧蒸発器ELに移送される冷媒液CLの流量を調節する冷媒供給弁V3Lが設置されている。冷媒液移送管路55の冷媒英移送管路56が分岐する分岐点の下流側であって、冷媒熱交換器X14の上流側に、低圧蒸発器ELから気液分離器15に移送される冷媒液CLの流量を調節する冷媒供給弁V3Hが設置されている。冷媒液移送管路56の冷媒液移送管路45が接続される箇所の上流側には絞り63が設置されている。
【0132】
気液分離器15の液面レベルセンサL2Hからの、冷媒液CLの液面レベルを表す液面信号(不図示)は制御装置21に送られ、制御装置21から液面レベルを一定のレベルに保つよう冷媒液CLの流量を制御する制御信号(不図示)が冷媒供給弁V3Hに送られ、冷媒供給弁V3Hの開度を気液分離器15の冷媒液CLの液面レベルが一定になるよう制御する(図中、簡略化して、液面レベルセンサL2Hから冷媒供給弁V3Hに信号が送られる
ように記載)。
【0133】
低圧蒸発器ELの液面レベルセンサL2Lからの、冷媒液CLの液面レベルを表す液面信号(不図示)は制御装置21に送られ、制御装置21から液面レベルを一定のレベルに保つよう冷媒液CLの流量を制御する制御信号(不図示)が冷媒供給弁V3Lに送られ、冷媒供給弁V3Lの開度を低圧蒸発器ELの冷媒液CLの液面レベルが一定になるよう制御する(図中、簡略化して、液面レベルセンサL2Lから冷媒供給弁V3Lに信号が送られる
ように記載)。
【0134】
冷媒液移送管路45は気液分離器15の底部に蓄積した冷媒液CLを冷媒供給管路55Aに戻すようにしてもよい。
【0135】
次に、本実施の形態の吸収ヒートポンプ105の作用について述べる。吸収ヒートポンプ104(図6)の作用との相違点を説明し、同じ点は確認的に記載するもの以外説明を省略する。
凝縮器Cを出て冷媒液移送配管54を通る冷媒液CLは、冷媒ポンプ46に昇圧され、凝縮器Cにおいて再生器Gから凝縮器Cに向かう冷媒蒸気CSに加熱され、冷媒供給弁V3Lに低圧蒸発器ELの冷媒液レベルが一定になるように流量を調節されて低圧蒸発器ELに移送される。
【0136】
低圧蒸発器ELの底部に蓄積した余剰の冷媒液CLは、低圧蒸発器ELを出て、冷媒液移送管路54を通り冷媒昇圧手段としての冷媒ポンプ47により昇圧され、一部が低圧蒸発器ELに移送されて循環し、残りが冷媒供給弁V3Hにより気液分離器15の冷媒液レベルが一定になるように流量を調節されて、さらに冷媒熱交換器X14を介して温水WH5により加熱され、さらに高温冷媒熱交換器X15を介して気液分離器15から低圧蒸発器ELに戻される冷媒液CLにより加熱され、さらに被加熱管23Lを介して低圧吸収器ALにて発生する吸収熱により加熱され、気液分離器15に供給される。
【0137】
気液分離器15の底部に蓄積した余剰の冷媒液CLは、気液分離器15を出て冷媒液移送管路45を通り、高温冷媒熱交換器X15で低圧蒸発器ELから気液分離器15に移送される冷媒液CLを加熱し、冷媒液移送管路56に到達し低圧蒸発器ELの底部から冷媒液移送管路56を通って循環される冷媒液CLと合流し低圧蒸発器ELに移送される。冷媒液CLは、高圧蒸発器EHと冷媒液移送管路5L(低圧蒸発器EL)との間の圧力差により高圧蒸発器EHから冷媒液移送管路45を通り冷媒液移送管路56(絞り63の下流側)に移送される。
【0138】
本実施の形態の吸収ヒートポンプ105は、冷媒ポンプ47によって、低圧蒸発器ELに冷媒液CLを供給する流れと高圧蒸発器EH(気液分離器15)と低圧蒸発器ELを経て冷媒供給管路55Aの間を循環する流れを発生させることができるので、高圧蒸発器EHおよび低圧蒸発器ELに供給される冷媒液CLの流量を多くすることができる。よって、高圧蒸発器EHおよび低圧蒸発器ELの伝熱効率を上昇させることができ、高圧蒸発器EHおよび低圧蒸発器ELのコンパクト化を図ることができ、また排熱の利用効率を高めることができる。
【0139】
本実施の形態の吸収ヒートポンプ105は、高温冷媒熱交換器X15を備え、低圧蒸発器ELを出た冷媒液CLであって、冷媒ポンプ47に昇圧された後に高圧蒸発器EH(気
液分離器15)にのみ移送される冷媒液CLと、高圧蒸発器EH(気液分離器15)から低
圧蒸発器ELに戻される冷媒液CLとの間で熱交換を行うので、低圧蒸発器ELから高圧蒸発器EL(気液分離器15)に送られる冷媒液CLの温度を上げることができ、吸収ヒートポンプ105に供給される排熱をより有効に利用することができる。
【0140】
前述の第2から第5の実施の形態の吸収ヒートポンプは2段昇温であり、蒸発器は高圧蒸発器(2段目)と低圧蒸発器(1段目)とから構成されているとして説明したが、3段以上の多段昇温とし、N(自然数)段昇温の場合、N段の蒸発器(圧力の低い順に1段、2段・
・とする)から構成されるようにしてもよい。この場合、例えば、3段目以上の蒸発器に
は凝縮器または下位の段(N段目の場合は、N−1段目、N−2段目・・が該当)の蒸発器からそれぞれ冷媒液が供給されるようにし、3段目以上の蒸発器から蒸発しなかった余剰の冷媒液を下位の段(典型的には、直近下位の段とするとよい)の蒸発器および/または凝縮器に戻し、供給される冷媒液と、戻される冷媒液との間で熱交換を行うとよい。このようにすると3段目以上の蒸発器に供給される冷媒液の温度を上げることができ、吸収ヒートポンプ105に供給される排熱をより有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0141】
1、46,47 溶液ポンプ
2、3 吸収液移送管路
4 冷媒ポンプ(冷媒昇圧手段)
5、5B、5L、40、41、45、51、54、55、56 冷媒液移送管路
5A 冷媒供給管路
7 補給水移送管路
8 蒸気供給管路
11 気液分離器
12、13 給水ポンプ
15 気液分離器
21 制御装置
101、102、103、104、105 吸収ヒートポンプ
A 吸収器(吸収部)
AH 高圧吸収器(吸収部)
AL 低圧吸収器(吸収部)
ALi 吸収液
C 凝縮器(凝縮部)
CS 冷媒蒸気
CL 冷媒液
E 蒸発器(蒸発部)
EH 高圧蒸発器(蒸発部)
EL 低圧蒸発器(蒸発部)
G 再生器(再生部)
L1、L2、L3、L1H,L1L、L2H,L2L 液面レベルセンサ
P 圧力センサ
S 蒸気
V1 蒸気弁
V2、V3、V3H、V3L 冷媒供給弁
V4 吸収液供給弁
W1 補給水
WC 冷却水
WH1、WH2、WH3、WH4、WH5 温水
X1、X4、X13、X14 冷媒熱交換器
X11 冷媒熱交換器、低温冷媒熱交換器
X12、X15 高温冷媒熱交換器
X2、X3、X5、X6 熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒蒸気を凝縮して冷媒液とする凝縮部と;
前記凝縮部から供給される冷媒液を蒸発させて冷媒蒸気を発生させる高圧蒸発部と;
前記凝縮部から供給される冷媒液、及び前記高圧蒸発部で蒸発しない余剰の冷媒液であって前記高圧蒸発部から戻される冷媒液を蒸発させる加熱管と、前記供給される冷媒液及び前記戻される冷媒液を前記加熱管に散布する冷媒液スプレイとを有する低圧蒸発部であって、前記高圧蒸発部より低圧下で、前記供給される冷媒液及び前記戻される冷媒液を蒸発し、冷媒蒸気を発生させ、蒸発しない余剰の冷媒液を前記凝縮部に戻す低圧蒸発器と; 前記凝縮部で凝縮した冷媒液を昇圧し前記高圧蒸発部と前記低圧蒸発部の前記冷媒液スプレイとへ前記凝縮部から供給する冷媒昇圧手段とを備える;
吸収ヒートポンプ。
【請求項2】
冷媒蒸気を凝縮して冷媒液とする凝縮部と;
前記凝縮部から供給される冷媒液を蒸発させて冷媒蒸気を発生させ、蒸発しない余剰の冷媒液を前記凝縮部に戻す高圧蒸発部と;
前記凝縮部から供給される冷媒液を蒸発させる加熱管と、前記供給される冷媒液を前記加熱管に散布する冷媒液スプレイとを有する低圧蒸発部であって、記高圧蒸発部より低圧下で、前記供給される冷媒液を蒸発し、冷媒蒸気を発生させ、蒸発しない余剰の冷媒液を前記凝縮部に戻す低圧蒸発器と;
前記凝縮部で凝縮した冷媒液を昇圧し前記高圧蒸発部と前記低圧蒸発部の前記冷媒液スプレイとへ前記凝縮部から供給する冷媒昇圧手段とを備える;
吸収ヒートポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−169586(P2011−169586A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102855(P2011−102855)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【分割の表示】特願2005−18105(P2005−18105)の分割
【原出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)