説明

吸収体物品

【課題】個包装に用いられる材料を廃棄せずに、着用時に機能させる吸収体物品であって、漏れが生じにくい吸収体物品の提供。
【解決手段】液不透過性の個包装用シートと、前記個包装用シートの上側に配置される、高吸水性樹脂を含有し水性液を吸収しうる吸収体と、前記個包装用シートと前記吸収体との間に配置される、水性液を保持しうるバックアップシートとを具備し、前記個包装用シートが、後部に、上側に内部空間を形成する袋状の液貯留部を有し、前記吸収体の後端部が、前記液貯留部の前記内部空間に存在する、吸収体物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収体物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸収体物品の分野において、衛生的管理が特に重要な生理用ナプキン、失禁用パッド等は、個々の吸収体物品が独立に包装された状態で、消費者に提供されることが多い。このような個包装がされた吸収体物品は、衛生面では優れているが、個包装に用いられた袋は開封後に廃棄され、ごみとなる。
このようなごみの発生を防止するべく、個包装に用いられる材料を廃棄せずに、着用時に機能させる試みがなされている。例えば、特許文献1には、個包装用シートと、この個包装用シートに重ねられる吸収体と、この吸収体の少なくとも一端部が収容される可撓性のトラップ部を前記個包装用シートとの間に形成するトラップシートと、このトラップシートおよび前記個包装用シートの他端部の少なくとも一方に設けられ、前記個包装用シートの他端側が前記トラップシートに重なるように前記個包装用シートの他端部とこの個包装用シートの一端部または前記トラップシートとを剥離可能に接合する接合テープとを具えたことを特徴とする吸収体製品が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−180722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の吸収体製品は、体液が短時間に大量に排出され、体液の排出速度が吸収体による体液の吸収速度を上回った場合に、吸収されない体液を一時的に貯留するためにトラップ部を設けたものである。
しかしながら、実際には、吸収体に吸収されない体液がすべてトラップ部に貯留されるわけではない。個包装用シートの内側には、トラップ部以外においても、吸収されない体液が存在し、着用者の身体が動いたりする場合に、漏れの原因となっていた。特に、高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、以下「SAP」ともいう。)の含有率が高い吸収体を用いた場合に、SAPの体液の吸収速度が遅いという特性から、このような漏れの問題が大きかった。
したがって、本発明は、個包装に用いられる材料を廃棄せずに、着用時に機能させる吸収体物品であって、漏れが生じにくい吸収体物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、新規構造を有する吸収体物品を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(17)を提供する。
(1)液不透過性の個包装用シートと、
前記個包装用シートの上側に配置される、高吸水性樹脂を含有し水性液を吸収しうる吸収体と、
前記個包装用シートと前記吸収体との間に配置される、水性液を保持しうるバックアップシートと
を具備し、
前記個包装用シートが、後部に、上側に内部空間を形成する袋状の液貯留部を有し、
前記吸収体の後端部が、前記液貯留部の前記内部空間に存在する、吸収体物品。
(2)前記バックアップシートの後端部が前記液貯留部の前記内部空間に存在する、上記(1)に記載の吸収体物品。
(3)前記バックアップシートが前記吸収体の後端部の後側で折り返され、前記バックアップシートの後端部が前記吸収体の上側に存在する、上記(1)に記載の吸収体物品。
(4)前記バックアップシートが前記吸収体の後端部の後側で折り返され、かつ、前記個包装用シートの前記液貯留部の前端部の前側で折り返され、前記バックアップシートの後端部が前記液貯留部の上側に存在する、上記(1)に記載の吸収体物品。
(5)前記バックアップシートが前記吸収体の後端部の後側で折り返され、かつ、前記個包装用シートの前記液貯留部の前端部の前側で折り返され、前記バックアップシートの後端部が前記液貯留部の後側に存在する、上記(1)に記載の吸収体物品。
(6)更に、前記吸収体の上側に、一部が前記液貯留部の前記内部空間に存在し、他の一部が前記液貯留部の前記内部空間から露出している、水性液を保持しうる伝い漏れ防止シートを具備する、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の吸収体物品。
(7)前記伝い漏れ防止シートが前記液貯留部の前端部の前側で折り返されている、上記(6)に記載の吸収体物品。
(8)前記個包装用シートが、液不透過性シートと疎水性不織布との積層体により構成され、
前記液不透過性シートの上側及び/又は下側に前記疎水性不織布が存在する、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の吸収体物品。
(9)前記個包装用シートの少なくとも内面が液不透過性シートにより構成され、
前記バックアップシートが親水性不織布により構成され、
前記液不透過性シートと前記親水性不織布とが一体的に形成された積層体である、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の吸収体物品。
(10)前記個包装用シートが、個包装用シート本体部と、前記個包装用シート本体部の左右両側に存在する一対のウイング部とを有し、
前記一対のウイング部が、前記個包装用シート本体部の上側及び下側のいずれにおいても互いに結合しうる、上記(1)〜(9)のいずれかに記載の吸収体物品。
(11)前記一対のウイング部が、それぞれ粘着剤を有することにより、互いに結合しうる状態となっている、上記(10)に記載の吸収体物品。
(12)前記一対のウイング部が、一方が雄型部材、他方が雌型部材を有し、前記雄型部材と前記雌型部材とが嵌合することにより、互いに結合しうる状態となっている、上記(10)に記載の吸収体物品。
(13)前記個包装用シートが、下側面に、着用時に着用者の下着の内面と付着しうる粘着剤を有する、上記(1)〜(12)のいずれかに記載の吸収体物品。
(14)前記個包装用シートが、下側面に、着用時に着用者の下着の内面と滑りにくくする滑り止め部材を有する、上記(1)〜(13)のいずれかに記載の吸収体物品。
(15)前記個包装用シートが、上側面において、上側に立ち上がる一対のサイドバリヤ部を左右両側に有する、上記(1)〜(14)のいずれかに記載の吸収体物品。
(16)失禁用パッドである、上記(1)〜(15)のいずれかに記載の吸収体物品。
(17)生理用ナプキンである、上記(1)〜(15)のいずれかに記載の吸収体物品。
【発明の効果】
【0007】
本発明の吸収体物品は、個包装に用いられる材料を廃棄せずに、着用時に機能させることができ、かつ、漏れが生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の吸収体物品の例を示す模式図である。
【図2】本発明の吸収体物品の別の例を示す模式図である。
【図3】本発明の吸収体物品の更に別の例を示す模式的な平面図である。
【図4】本発明の吸収体物品の更に別の例を示す模式図である。
【図5】本発明の吸収体物品の更に別の例を示す模式図である。
【図6】本発明の吸収体物品の更に別の例を示す模式図である。
【図7】本発明の吸収体物品の種々の例を示す模式的な縦端面図である。
【図8】本発明の吸収体物品の更に別の例を示す模式的な斜視図である。
【図9】本発明の吸収体物品の更に別の例を示す模式的な斜視図である。
【図10】個包装用シートの更に別の例を示す模式的な平面図である。
【図11】個包装用シートの更に別の例を示す模式的な平面図である。
【図12】個包装用シートの更に別の例を示す模式的な平面図である。
【図13】個包装用シートの更に別の例を示す模式的な平面図である。
【図14】個包装用シートの種々の例を示す模式的な平面図である。
【図15】個包装用シートの種々の例を示す模式的な平面図である。
【図16】個包装用シートの更に別の例を示す模式図である。
【図17】個包装用シートの更に別の例を示す模式図である。
【図18】個包装用シートの更に別の例を示す模式図である。
【図19】本発明の吸収体物品の更に別の例を示す模式図である。
【図20】本発明の吸収体物品の実施例を示す模式図である。
【図21】本発明の吸収体物品の別の実施例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の吸収体物品を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、本明細書においては、本発明の吸収体物品を実際に着用した場合に、着用者の肌に近い側を「上」といい、遠い側を「下」という。また、本発明の吸収体物品を実際に着用した場合に、着用者の体の前側に対応する側を「前」といい、後側に対応する側を「後」という。また、各図中、理解を容易にするために、実際には接触している部材を離間させて示すことがある。
【0010】
図1は、本発明の吸収体物品の例を示す模式図である。図1(A)は平面図であり、図1(B)は図1(A)中のIB−IB線に沿った縦端面図である。なお、添付した図面中の各平面図においては、図の上側に吸収体物品等の前側が位置するように図示してある。また、添付した図面中の各縦端面図においては、図の左側に吸収体物品等の前側が位置するように図示してある。
【0011】
本発明の吸収体物品100は、基本的に、液不透過性の個包装用シート10と、個包装用シート10の上側に配置される、高吸水性樹脂を含有し水性液を吸収しうる吸収体12と、個包装用シート10と吸収体12との間に配置される、水性液を保持しうるバックアップシート14とを具備する。
個包装用シート10は、液不透過性であれば、特に材料、構成等を限定されない。例えば、液不透過性シート、液不透過性シートと疎水性不織布(例えば、高耐水性不織布)との積層体、液不透過性シートと親水性不織布との積層体が挙げられる。
液不透過性シートとしては、例えば、PE、PP、PET、EVA等の樹脂のフィルム;前記樹脂の発泡シート;高耐水性不織布が挙げられる。液不透過性シートは、通気性フィルム等の通気性を有するものも好適に用いられる。
【0012】
個包装用シートが、液不透過性シートと疎水性不織布との積層体により構成され、前記液不透過性シートの上側及び/又は下側に前記疎水性不織布が存在するのは、本発明の好ましい態様の一つである。
個包装用シートが液不透過性シートと疎水性不織布との積層体により構成され、前記液不透過性シートの上側に前記疎水性不織布が存在する態様は、疎水性不織布が防水効果を有する上、疎水性不織布の多孔質構造により、疎水性不織布の表面に凹凸が形成され、体液が集まって一方向に向かって流れることを防止するという効果も奏する点で好ましい。
個包装用シートが液不透過性シートと疎水性不織布との積層体により構成され、前記液不透過性シートの下側に前記疎水性不織布が存在する態様は、吸収体物品の外観や感触が優れたものになる点で好ましい。
個包装用シートが、液不透過性シートと疎水性不織布との積層体により構成され、前記液不透過性シートの上側及び下側に前記疎水性不織布が存在する態様は、上述した二つの態様の両方の利点がある。
【0013】
吸収体物品100においては、個包装用シート10とバックアップシート14とが独立した部材であるが、本発明の吸収体物品はこれに限定されず、例えば、個包装用シートとバックアップシートとが一体的に形成されるなど、各部材の二つ以上が一体的に形成されていてもよい。
具体的には、例えば、個包装用シートの少なくとも内面が液不透過性シートにより構成され、バックアップシートが親水性不織布により構成され、前記液不透過性シートと前記親水性不織布とが一体的に形成された積層体であるのは、本発明の好ましい態様の一つである。この態様においては、液不透過性シートと親水性不織布とが一体的に形成された積層体を、親水性不織布が上側になるように配置することにより、親水性不織布の部分がバックアップシートとして機能し、液不透過性シートの部分が個包装用シートとして機能するようにすることができる。
【0014】
個包装用シート10は、後部に、上側に内部空間Sを形成する袋状の液貯留部16を有している。
液貯留部16は、例えば、1枚の液不透過性シートを前後方向に折り重ね、その周縁部を加熱融着してヒートシールすることにより、形成することができる。
【0015】
個包装用シート10は、複数の部材から構成されていてもよい。
【0016】
吸収体12は、高吸水性樹脂を含有し水性液を吸収しうるものであれば特に限定されず、例えば、粉末状の木材パルプ、無加工のSAP等の粉体状吸収体を用いることもできるが、形態安定性、脱落の可能性等を考慮すると、シート状吸収体が好ましい。中でも、不織布上に前記高吸水性樹脂をコーティングしてなるシート状吸収体が好ましい。
【0017】
シート状吸収体の中でも、SAPを50質量%以上、好ましくは60〜95質量%含有する高吸水性シートであるのが好ましい態様の一つである。
高吸水性シートは、SAPを主成分とする極薄のシート状吸収体である。高吸水性シートは、SAPの含有量が極めて高いため、厚さが極めて薄い。高吸水性シートの厚さは、1.5mm以下であるのが好ましく、1mm以下であるのがより好ましい。
高吸水性シートは、SAPを主成分とする極薄のシート状吸収体であれば、構成や製造方法を特に限定されない。
例えば、Air Laid法で得られる高吸水性シートが挙げられる。Air Laid法は、粉砕した木材パルプとSAPとを混合し、結合剤を添加してシート状に成形して高吸水性シートを得る方法である。この方法で得られる高吸水性シートとしては、例えば、米国レオニヤ(Rayonier)社製のNOVATHIN(米国登録商標)、王子キノクロス社製のB−SAPが知られている。
また、SAPの分散スラリーを不織布等の体液透過性シートの上にコーティングする方法で得られる高吸水性シート(SAPシート)も挙げられる。ここで、SAPの分散スラリーは、SAPとミクロフィブリル化セルロース(MFC)とを、水とエタノールとの混合溶媒に分散させたものであるのが好ましい。この方法で得られる高吸水性シートとしては、例えば、(株)日本吸収体技術研究所製のMegaThin(登録商標)が知られている。
そのほかに、例えば、起毛状不織布にSAPを大量に担持させ、ホットメルトバインダー、エマルションバインダー、水性繊維等で固定する方法で得られる高吸水性シート、繊維状SAPをPET(ポリエチレンテレフタレート)繊維と混合してウェブ状に成形する方法で得られる高吸水性シート、SAP層の上下をティッシュで挟んだSAPシートが挙げられる。
吸収体は、トップシート、サイドバリヤ等の他の部材と結合させてもよい。また、後述するように、吸収体と結合する他の部材に、更にウイング等の他の部材を結合させてもよい。
【0018】
吸収体12は、個包装用シート10の上側に配置され、その後端部が、液貯留部16の内部空間Sに存在する。このような構造により、個包装用シート10の上側に尿、血液等の体液が排出された場合に、吸収体12により直接吸収される。また、体液が短時間に大量に排出され、体液の排出速度が吸収体12による体液の吸収速度を上回った場合には、吸収されない体液が一時的に液貯留部16に貯留された後に、吸収体12にその後端部から吸収されうるようになっている。
一般に、着用者から排出される体液の量は一定でなく大きく変動するため、大量に体液が排出される場合がある。また、例えば、切迫性失禁のように、排出される尿の全量が多くない場合でも初期に排出される尿の量が多いときがある。また、例えば、夜用ナプキンのように、生理の経血量が多い時のみに使用される場合もある。
液貯留部16は、このように、短時間に大量に体液が排出された場合において、体液を貯留する役割を果たすのである。
なお、液貯留部16は、使用後、吸収体物品100を脱着する際に、体液の滴りを受容して周囲を汚さない役割も果たす。以下、体液の例として尿を用いて説明する。
【0019】
バックアップシート14は、個包装用シート10と吸収体12との間に配置され、尿が短時間に大量に排出され、吸収体12に吸収されない尿が個包装用シート10の上側において液貯留部16以外にも存在する場合、例えば、サイドギャザーを乗り越えて側方に流れ出したり、前後から滲み出したりして、尿が吸収体物品の外に漏れるのを防止するため、尿を保持する機能を奏する。
本発明者は、尿の漏れの発生原因について鋭意研究を続けてきた。その結果、伝い漏れが相当程度の頻度で生じることが明らかになった。
ここで、伝い漏れとは、着用者の肌を伝わって漏れたり、吸収体物品の各部材の表面や周縁部(例えば、両側部、前端部、後端部)を伝わって漏れ、又は滲み出したりすることをいう。伝い漏れは、吸収体物品の吸収体の容量が十分であっても生じる漏れであり、一般的に漏れの量が少なく、滲み出すようにして漏れる。このような伝い漏れは、吸収体物品の内部で吸収されないで存在する尿が着用者の体位や動きによって左右や前後に移動することにより、生じやすくなる。
【0020】
バックアップシート14の材料は、水性液を保持しうるものであれば特に限定されず、例えば、コットンガーゼ;セルロース製不織布(例えば、フタムラ化学社製のTCF、旭化成社のベンリーゼ)等の親水性不織布;レーヨンスパンレース、コットンスパンレース等のスパンレース;上述した吸収体12として用いられる材料(例えば、Air Laid法で得られる高吸水性シート;SAPの分散スラリーを不織布等の液透過性シートの上にコーティングする方法で得られる高吸水性シート)が挙げられるが、上記機能を奏するため、吸収体12に用いられる材料よりも尿の吸収速度や拡散速度が速い材料が用いられる。バックアップシート14の材料は、吸収体12に用いられる材料よりも単位体積あたりの尿の吸収量が少なくてもよい。具体的には、例えば、吸収体12及びバックアップシート14のいずれにもSAPの分散スラリーを不織布等の液透過性シートの上にコーティングする方法で得られる高吸水性シートを用いる場合、バックアップシート14のSAP含有率を吸収体12におけるSAP含有率より低くする。
【0021】
バックアップシート14は、その一部が個包装用シート10と吸収体12との間に配置されていれば、配置、構造等を限定されない。
図1に示されるバックアップシート14は、前端部及び後端部以外が個包装用シート10と吸収体12との間に存在し、前端部及び後端部がそれぞれ吸収体12よりも前側及び後側に延在している。バックアップシート14は、左右方向においては、吸収体12の両側部よりも内側に存在している。
バックアップシート14の後端部は、液貯留部16の内部空間Sに存在している。この態様においては、液貯留部16の尿貯留機能とバックアップシート14の尿保持機能とが連携して漏れを効果的に防止することができる。具体的には、尿が排出される部分の近隣において、吸収体12に吸収されない尿が多くなった場合には、尿はバックアップシート14により速やかに保持され、バックアップシート14の表面又は内部を移動して液貯留部16へと到達する。他方、液貯留部16に一時的に貯留される尿が多くなった場合には、液貯留部16に一時的に貯留された尿の一部がバックアップシート14の後端部からバックアップシート14に移動して保持されるため、液貯留部16から尿がオーバーフローすることを防止することできるので、着用者の動き等による漏れを効果的に防止することができる。
【0022】
本発明の吸収体物品100は、更に、シールテープ18を具備する。
シールテープ18は、その一端が個包装用シート10の前端部の中央に接合されており、上側面に粘着剤が塗布されている。これにより、個包装用シート10を前後方向の中央付近で二つに折り曲げて、シールテープ18の粘着剤塗布面を液貯留部16又は個包装用シート10の下側面に着脱させることができるようになっている。したがって、吸収体物品100を製造してから着用者が使用するまでの間は、個包装用シート10を折り返した状態で、密閉し、衛生状態を維持することができ、また、吸収体物品100を使用後に廃棄する際に、別に、吸収体物品100を包装する袋等を必要とすることなく、衛生的に廃棄することができる。
シールテープ18の先端部には、粘着剤が塗布されていないのが好ましい。この場合、この部分を指でつまんでシールテープ18の着脱の操作を容易に行うことができる。
【0023】
図2は、本発明の吸収体物品の別の例を示す模式図である。図2(A)は平面図であり、図2(B)は図2(A)中のIIB−IIB線に沿った縦端面図である。
図2に示される吸収体物品100aは、基本的に、吸収体物品100と同様であるが、バックアップシート14aが前側のみに存在している点(すなわち、バックアップシート14の後端部が液貯留部16の内部空間Sに存在していない点)で異なる。この態様においては、尿が排出される位置の近隣でのバックアップシート14aによる尿の保持が可能となる。したがって、伝い漏れの原因となる尿の左右や前後の移動を防止することができる。
【0024】
図3は、本発明の吸収体物品の更に別の例を示す模式的な平面図である。
図3に示される吸収体物品100bは、基本的に、吸収体物品100aと同様であるが、バックアップシート14bが左右方向に吸収体12の両側より外側に延在し、かつ、その前端が吸収体12の前端より後側にある点で異なる。この態様においては、吸収体物品100aよりも、更に、効率的に、尿が排出される位置の近隣での尿の保持が可能となる。
【0025】
図4は、本発明の吸収体物品の更に別の例を示す模式図である。図4(A)は平面図であり、図4(B)は図4(A)中のIVB−IVB線に沿った縦端面図である。
図4に示される吸収体物品100cは、基本的に、吸収体物品100と同様であるが、バックアップシート14cが吸収体12の後端部の後側で折り返され、バックアップシート14cの後端部が吸収体12の上側に存在している点で異なる。この態様においては、バックアップシート14cの液貯留部16の内部空間Sに存在する部分の量が多く、両者の連携が強いので、上述した吸収体物品100の漏れ防止効果が、より強く発揮される。
【0026】
図5は、本発明の吸収体物品の更に別の例を示す模式図である。図5(A)は平面図であり、図5(B)は図5(A)中のVB−VB線に沿った縦端面図である。
図5に示される吸収体物品100dは、基本的に、吸収体物品100cと同様であるが、バックアップシート14dが吸収体12の後端部の後側で折り返されるのみならず、個包装用シート10の液貯留部16の前端部の前側でも折り返され、バックアップシート14dの後端部が液貯留部16の上側に存在している点で異なる。この態様においては、上述した吸収体物品100cの漏れ防止効果に加え、着用者の肌を伝って吸収体物品100dの外部へと移動しようとする尿を、バックアップシート14dの液貯留部16の上側に存在する部分が保持するため、伝い漏れ防止効果を奏する。特に、バックアップシート14dの後端部の形状を、着用者の臀部の溝に沿うように形成すると、伝い漏れ防止効果が大きくなる。
中でも、本発明の吸収体物品が女性用の失禁用パッドである場合には、尿が女性特有の体形により溝を伝わって後ろ側(背部)に向かって流れやすいので、伝い漏れの防止が重要となる。特に、女性用の失禁用パッドは、サイズの小型化が求められており、小型化した失禁用パッドでは、従来、後ろ側への尿の伝い漏れを防止することが困難であった。吸収体物品100dにおいては、バックアップシート14dにより、後ろ側への尿の伝い漏れを極めて効果的に防止することができる。
バックアップシート14dは、主に液貯留部16の内部空間Sにおいて、吸収体12と接触しているため、バックアップシート14dが保持した尿は、毛細管現象等により、バックアップシート14dの表面又は内部を伝って移動し、その一部が最終的には吸収体12に吸収される。
バックアップシート14dの材料としては、上述した各種材料のうち、コットンガーゼ、親水性不織布、スパンレースが、毛細管現象により尿の移動が生じやすい点で好ましい。
【0027】
図6は、本発明の吸収体物品の更に別の例を示す模式図である。図6(A)は平面図であり、図6(B)は図6(A)中のVIB−VIB線に沿った縦端面図である。
図6に示される吸収体物品100eは、基本的に、吸収体物品100dと同様であるが、バックアップシート14eの後端部が液貯留部16の後側に存在する点で異なる。この態様においては、バックアップシート14eの液貯留部16上に露出している部分の面積が大きいため、漏れが生じた場合にも、その部分で尿を捕捉することができる。特に、バックアップシート14eの後端部の形状を、着用者の臀部の溝に沿うように形成すると、伝い漏れ防止効果が大きくなる。
【0028】
図7は、本発明の吸収体物品の種々の例を示す模式的な縦端面図である。
図7(A)に示される吸収体物品100fは、基本的に、吸収体物品100と同様であるが、更に、吸収体12の上側に、伝い漏れ防止シート20を具備している点で異なる。
伝い漏れ防止シート20は、水性液を保持しうるものであれば特に限定されず、例えば、上述したバックアップシート14に用いられる材料と同様の材料を用いることができる。中でも、コットンガーゼ、親水性不織布、スパンレースが、毛細管現象により尿の移動が生じやすい点で好ましい。また、そのほかに、束状に集束されたスライバー、親水化処理された合成繊維のトウ、連続気孔を有する親水性スポンジ類を用いることもできる。
伝い漏れ防止シート20は、一部が液貯留部16の内部空間Sに存在し、他の一部が液貯留部16の内部空間Sから露出している。
伝い漏れ防止シート20は、液貯留部16の内部空間Sから露出した部分が、着用者wの肌と接触して着用者wの肌を伝う尿を捕捉する。そして、伝い漏れ防止シート20は、主に液貯留部16の内部空間Sにおいて、吸収体12と接触しているため、伝い漏れ防止シート20が保持した尿は、毛細管現象等により、伝い漏れ防止シート20の表面又は内部を伝って移動し、その一部が最終的には吸収体12に吸収される。このようにして、伝い漏れ防止シート20により、伝い漏れが防止される。
【0029】
図7(B)に示される吸収体物品100gは、基本的に、吸収体物品100fと同様であるが、伝い漏れ防止シート20aがその前端部分が上側に持ち上がっている点で異なる。この態様においては、伝い漏れ防止シート20aと着用者wの肌との接触が、伝い漏れ防止シート20の場合と比べてより確実になり、伝い漏れ防止効果がより大きくなる。
図7(C)に示される吸収体物品100hは、基本的に、吸収体物品100fと同様であるが、伝い漏れ防止シート20bが液貯留部16の前端部の前側で折り返されている点で異なる。この態様においては、伝い漏れ防止シート20bと着用者wの肌との接触面積が、伝い漏れ防止シート20の場合と比べて大きくなり、伝い漏れ防止効果がより大きくなる。伝い漏れ防止効果を優れたものにするためには、特に、伝い漏れ防止シート20bと着用者wの肌との接触状態が重要であり、伝い漏れ防止シート20bの後端部の形状を、着用者の臀部の溝に沿うように形成すると、伝い漏れ防止効果がより大きくなる。
図7(D)に示される吸収体物品100iは、基本的に、吸収体物品100hと同様であるが、伝い漏れ防止シート20cの液貯留部16の上側に存在する部分の後端部が液貯留部16の後側に存在する点で異なる。この態様においては、伝い漏れ防止シート20cの液貯留部16上に露出している部分の面積が大きいため、漏れが生じた場合にも、その部分で尿を捕捉することができる。特に、伝い漏れ防止シート20cの後端部の形状を、着用者の臀部の溝に沿うように形成すると、伝い漏れ防止効果が大きくなる。
伝い漏れ防止シートの横幅は、一部が液貯留部の内部空間に存在することができるものであれば特に限定されない。
伝い漏れ防止シートは、液貯留部の上面との間が接着剤等により接合されていてもよい。接合するか否かは、伝い漏れ防止シートの材質、形状、大きさ等に応じて適宜選択することができる。
例えば、伝い漏れ防止シートが、横幅20mm程度のテープ状のポリウレタンフォームのように、細くて嵩高いものである場合には、伝い漏れ防止シートが液貯留部の上面の左右方向の中央に位置するように液貯留部の上面に固定しておくのが好ましい。
また、伝い漏れ防止シートが、横幅40mm程度のコットンスパンレース(例えば、目付量40g/m2)のように、比較的嵩高い不織布である場合には、伝い漏れ防止シートが濡れたときに着用者の肌に密着しやすいので、その性質を利用して伝い漏れ防止シートを着用者の身体の動きに追従するようにするため、液貯留部に固定しないのが好ましい。
さらに、伝い漏れ防止シートが、横幅50mm程度以上のTCF不織布(例えば、目付量25g/m2)のように、比較的幅広く薄い不織布である場合には、伝い漏れ防止シートの位置がずれないように、伝い漏れ防止シートの左右両縁部を液貯留部の上面に固定しておくのが好ましい。
【0030】
図8は、本発明の吸収体物品の更に別の例を示す模式的な斜視図である。図8(A)は三つに折りたたまれた状態の図であり、図8(B)は開いた状態の図である。なお、図8においては、バックアップシートが省略されている。
図8に示される吸収体物品100jは、基本的に、吸収体物品100と同様であるが、個包装用シート11が個包装用シート本体部22と個包装用シート本体部22の左右両側に存在する一対のウイング部24とを有し、一対のウイング部24が、個包装用シート本体部22の上側及び下側のいずれにおいても互いに結合しうるようになっている点で異なる。また、吸収体物品100jは、シールテープを有しない。
図8(B)に示されるように、吸収体物品100jにおいては、右側のウイング部24の下側に雄型部材26、左側のウイング部24の上側に雌型部材28を有しており、個包装用シート本体部22の上側において、右側のウイング部24を折り込んだ後、左側のウイング部24を折り込むことにより、右側のウイング部24の雄型部材26の上に左側のウイング部24の雌型部材28が接触し、雄型部材26と雌型部材28とが嵌合することにより、互いに結合しうるようになっている。
【0031】
吸収体物品100jは、製造されてから使用直前まで、図8(A)に示されるように、一対のウイング部24の両側で前後方向に三つに折りたたまれた状態にあり、一対のウイング部24が、個包装用シート本体部22の上側において互いに結合している。これにより、個包装用シート本体部22の内側に存在する吸収体12等の衛生状態が良好に維持されるようになっている。このように、一対のウイング部24を有していることにより、シールテープを有していなくても、衛生状態が良好に維持することができる。
使用直前に、一対のウイング部24の結合を解き、三つ折りになっていた個包装用シート本体部22を開くと、ウイング部24の結合する中央部と、液貯留部16を有する後部と、吸収体12が露出している前部とが現れる(図8(B)参照。)。
使用時には、一般の生理用ナプキンを装着する際と同様に、下着の内側に配置し、下着の股下部を包むように、個包装用シート本体部22の下側において、左側のウイング部24を折り込んだ後、右側のウイング部24を折り込むことにより、左側のウイング部24の雌型部材28と右側のウイング部24の雌型部材26とを嵌合させて、互いに結合させる。これにより、下着と吸収体物品100jとのずれを抑制することができる。
使用後には、吸収体物品100jを下着から外して、図8(A)に示されるように、一対のウイング部24の両側で前後方向に三つに折りたたむ。これにより、尿が外部に接触しない状態で、吸収体物品100jを廃棄することができる。
【0032】
本発明においては、吸収体物品100jのように、個包装用シートが、個包装用シート本体部と、前記個包装用シート本体部の左右両側に存在する一対のウイング部とを有し、前記一対のウイング部が、前記個包装用シート本体部の上側及び下側のいずれにおいても互いに結合しうるのが好ましい態様の一つである。
一対のウイング部が、互いに結合しうる状態となる態様は、特に限定されない。例えば、前記一対のウイング部が、それぞれ粘着剤を有することにより、互いに結合しうる状態となっていてもよい。また、吸収体物品100jのように、前記一対のウイング部が、一方が雄型部材、他方が雌型部材を有し、前記雄型部材と前記雌型部材とが嵌合することにより、互いに結合しうる状態となっていてもよい。
【0033】
図9は、本発明の吸収体物品の更に別の例を示す模式的な斜視図である。図9(A)は使用前の二つに折りたたまれた状態の図であり、図9(B)及び図9(C)はいずれも使用直前に開いた状態の図であり、図9(D)は使用後の三つに折りたたまれた状態の図である。なお、図9においては、バックアップシートが省略されている。
図9に示される吸収体物品100kは、基本的に、吸収体物品100jと同様であるが、吸収体物品100と同様にシールテープ18を有している点で異なる。
【0034】
吸収体物品100kは、製造されてから使用直前まで、図9(A)に示されるように、一対のウイング部24の前側で前後方向に二つに折りたたまれた状態にあり、シールテープ18が個包装用シート11の液貯留部16に付着して、個包装用シート本体部22の内側に存在する吸収体12等の衛生状態が良好に維持されるようになっている。
使用直前に、シールテープ18を個包装用シート11の液貯留部16から脱着させて、二つ折りになっていた個包装用シート本体部22を開く(図9(B)参照。)。ついで、一対のウイング部24の結合を解き、二つ折りになっていた個包装用シート本体部22を開く(図9(C)参照。)。
使用時には、下着の内側に配置し、下着の股下部を包むように、個包装用シート本体部22の下側において、左側のウイング部24を折り込んだ後、右側のウイング部24を折り込むことにより、左側のウイング部24の雌型部材28と右側のウイング部24の雌型部材26とを嵌合させて、互いに結合させる。これにより、下着と吸収体物品100kとのずれを抑制することができる。
使用後には、吸収体物品100kを下着から外して、図9(D)に示されるように、一対のウイング部24の両側で前後方向に三つに折りたたみ、シールテープ18を個包装用シート11の液貯留部16に付着させるとともに、一対のウイング部24を三つ折りの個包装用シート本体部22の上側で結合させる。これにより、尿が外部に接触しない状態で、吸収体物品100jを廃棄することができる。また、2箇所の結合により、三つ折りの状態が保たれているから、吸収体物品100jの場合に比べて、廃棄時に乱暴に扱っても三つ折りの状態が維持されやすい。
【0035】
以下、本発明の吸収体物品に用いられる個包装用シートの種々の態様について、詳細に説明する。
図10は、個包装用シートの更に別の例を示す模式的な平面図である。図10(A)は一対のウイング部を開いた状態の図であり、図10(B)は一対のウイング部を折りたたんだ状態の図である。
図10に示される個包装用シート11aにおいては、長方形状の個包装用シート材料に4箇所の切り込みcを入れることにより、個包装用シート本体部22aと一対のウイング部24aとが形成されている。個包装用シート11aは、このように長方形状の個包装用シート材料に切り込みcを入れて形成されるので、製造時に、個包装用シートとして使用されない無駄な部分が発生することを抑制することができる。
個包装用シート11aは、製造から使用直前まで、図10(A)の点線に沿って一対のウイング部24aが内側に折り曲げられている。使用時には、図10(B)に示されるように、下着uwの股下部を包むように、一対のウイング部24aを反対側に折り曲げて互いに結合させる。
【0036】
図11は、個包装用シートの更に別の例を示す模式的な平面図である。図11(A)は一対のウイング部を開いた状態の図であり、図11(B)は一対のウイング部を折りたたんだ状態の図である。
図11に示される個包装用シート11bは、基本的には、個包装用シート11aと同様であるが、切り込みcの形状が異なることにより、形成される個包装用シート本体部22bと一対のウイング部24bの形状が異なる。
個包装用シート11bは、製造から使用直前まで、図11(A)の点線に沿って一対のウイング部24bが内側に折り曲げられている。使用時には、図11(B)に示されるように、下着uwの股下部を包むように、一対のウイング部24bを反対側に折り曲げて互いに結合させる。
【0037】
図12は、個包装用シートの更に別の例を示す模式的な平面図である。図12(A)は二対のウイング部を開いた状態の図であり、図12(B)は二対のウイング部を折りたたんだ状態の図である。
図12に示される個包装用シート11cは、個包装用シート本体部22cを有し、また、個包装用シート本体部22cの両側において、前後に二対のウイング部24cを有する。
個包装用シート11cは、製造から使用直前まで、図12(A)の点線に沿って二対のウイング部24cが内側に折り曲げられている。使用時には、図12(B)に示されるように、下着uwの股下部を包むように、二対のウイング部24cを反対側に折り曲げてそれぞれ互いに結合させる。このように、個包装用シート本体部22cは、二対のウイング部24cを有することにより、下着uwとのずれをより効果的に抑制することができる。
また、個包装用シート11cは、個包装用シート本体部22cの形状が中央部から前側及び後側にそれぞれ広がるようになっている。これにより、個包装用シート本体部22cが下着uwの股下部の形状に一致しやすくなり、下着uwとのずれがより効果的に抑制される。
使用後は、二対のウイング部24cのうち、前側の一対を内側に折り込み、二つ折りの状態にした後、後側の一対を二つ折りの状態の個包装用シート本体部22cの上側で結合させて、廃棄することができる。
【0038】
図13は、個包装用シートの更に別の例を示す模式的な平面図である。図13(A)は一対のウイング部を開いた状態の図であり、図13(B)は一対のウイング部を折りたたんだ状態の図である。
図13に示される個包装用シート11dは、個包装用シート本体部22dと一対のウイング部24dを有する。
個包装用シート11dは、製造から使用直前まで、図13(A)の点線に沿って一対のウイング部24dが内側に折り曲げられている。使用時には、図13(B)に示されるように、下着uwの股下部を包むように、一対のウイング部24cを反対側に折り曲げて互いに結合させる。
個包装用シート11dは、個包装用シート本体部22dと一対のウイング部24dとの結合部の前後にスリットが形成されるような形状となっている。これにより、個包装用シート本体部22dと一対のウイング部24dとの間のスリットに下着uwの股下部の縁部がくい込みやすくなっており、下着uwとのずれがより効果的に抑制される。このスリットを形成する部分を、下着uwとの間で滑りにくくなる材料(例えば、合成ゴム)で補強(例えば、貼り付け、塗布による補強)をすると、ずれが更に効果的に抑制される。
【0039】
図14は、個包装用シートの種々の例を示す模式的な平面図である。
図14(A)に示される個包装用シート11eは、個包装用シート本体部22eと一対のウイング部24eを有し、個包装用シート本体部22eの左右方向の幅が、一対のウイング部24eの前より後で広くなっている。この態様においては、液貯留部16の幅が広くなり、液貯留部16が形成する内部空間の容積が大きくなるという利点がある。また、液貯留部16の幅が広くなるため、液貯留部16の前後方向の長さが短くなるように設計することもできる。
図14(B)に示される個包装用シート11fは、個包装用シート本体部22fと一対のウイング部24fを有し、個包装用シート本体部22fの左右方向の幅が、一対のウイング部24eの前より後で狭くなっている。この態様においては、個包装用シート11fの上側に配置するバックアップシート(図示せず。)の左右方向の幅を広くして一時的に吸収しうる尿の量を多くしておくことにより、液貯留部16をよりコンパクトにすることができる。
【0040】
図15は、個包装用シートの種々の例を示す模式的な平面図である。
図15(A)に示される個包装用シート11gは、個包装用シート本体部22gと一対のウイング部24gを有しており、液貯留部16は、前端部の形状が左右方向に直線となっている。
図15(B)に示される個包装用シート11hは、個包装用シート本体部22hと一対のウイング部24hを有しており、液貯留部16aは、前端部の形状が左右方向の中央部が短く、左右両側に向かって長くなっている。この態様においては、図15(A)に示される個包装用シート11gの態様に比べて、中央部における吸収体(図示せず。)の露出する面積が大きくなる。
図15(C)に示される個包装用シート11iは、個包装用シート本体部22iと一対のウイング部24iを有しており、液貯留部16bは、前端部の形状が左右方向の中央部が長く、左右両側に向かって短くなっている。この態様においては、図15(A)に示される個包装用シート11gの態様に比べて、中央部における吸収体(図示せず。)の露出する面積が小さくなり、後方への尿の漏れが生じにくくなっている。
【0041】
図16は、個包装用シートの更に別の例を示す模式図である。図16(A)は平面図であり、図16(B)は図16(A)中のXVIB−XVIB線に沿った横端面図である。
図16に示される個包装用シート11jは、個包装用シート本体部22jと一対のウイング部24jを有するとともに、下側面に、着用時に着用者の下着の内面と付着しうる粘着剤30を有する。これにより、下着uwとのずれがより効果的に抑制される。
粘着剤30の種類は、着用時に着用者の下着の内面と付着しうるものであれば、特に限定されない。
粘着剤30は、個包装用シート本体部22jの下側面の前後方向のほぼ全長にわたり存在しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、前側部分のみに存在していたり、後側部分のみに存在していたり、複数箇所(例えば、左右両側(2箇所)に前後方向に延在するような配置)に存在していたりしてもよい。
【0042】
図17は、個包装用シートの更に別の例を示す模式図である。図17(A)は平面図であり、図17(B)は図17(A)中のXVIIB−XVIIB線に沿った横端面図である。
図17に示される個包装用シート11kは、個包装用シート本体部22kと一対のウイング部24kを有するとともに、下側面に、着用時に着用者の下着の内面と滑りにくくする滑り止め部材32を有する。これにより、下着uwとのずれがより効果的に抑制される。
滑り止め部材32の材料は、着用時に着用者の下着の内面と滑りにくくする材料であれば、特に限定されない。例えば、ウレタンフォームが挙げられる。
滑り止め部材32は、個包装用シート本体部22kの下側面の前側部分のみに存在しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、前後方向のほぼ全長にわたり存在していたり、後側部分のみに存在していたり、複数箇所(例えば、左右両側(2箇所)に前後方向に延在するような配置)に存在していたりしてもよい。
【0043】
図18は、個包装用シートの更に別の例を示す模式図である。図18(A)は平面図であり、図18(B)は図18(A)中のXVIIIB−XVIIIB線に沿った横端面図である。
図18に示される個包装用シート11lは、個包装用シート本体部22lと一対のウイング部24lを有するとともに、上側面において、上側に立ち上がる一対のサイドバリヤ部34を左右両側に有する。
サイドバリヤ部34は、不織布の内部にゴムを挿通して伸縮可能としたひだ状の部材であり、個包装用シート11lの個包装用シート本体部22lの上側面において、左右両側に、前後方向に延在している。
本発明において、サイドバリヤ部の形状、構造等は、この態様に限定されず、例えば、従来のインナーギャザー、アウターギャザーと同様のものを用いることができる。
また、サイドバリヤ部34は、個包装用シート11lの前端及び後端まで延在していないが、本発明においては個包装用シートの前端及び/又は後端までサイドバリヤ部が延在していてもよい。
サイドバリヤ部34は、伝い漏れの原因となる尿の左右方向への移動を抑制することができる。
【0044】
図19は、本発明の吸収体物品の更に別の例を示す模式図である。図19(A)は平面図であり、図19(B)は図19(A)中のXIXB−XIXB線に沿った横端面図である。
図19に示される吸収体物品100lは、基本的に、吸収体物品100と同様であるが、吸収体12がその下側を疎水性不織布により被覆されている点、前記疎水性不織布が吸収体12の左右両側から上側に立ち上がって形成する一対のサイドバリヤ部34aを有する点、及び、前記疎水性不織布の左右両側に一対のウイング部24mを有する点で異なる。この態様においては、ウイング部やサイドバリヤ部が吸収体と一体となっているため、個包装用シートの形状を極めて単純な形状(例えば、個包装用シート22のような長方形)とすることができる。
【0045】
以上、本発明の吸収体物品を図示の各実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、例えば、各部の構成は、同様の機能を発揮しうる任意の構成と置換することができる。
また、各実施形態における各部の構成を任意に組み合わせて、別の実施形態とすることもできる。
【0046】
本発明の吸収体物品は、成人男性用、成人女性用および子供用のいずれの用途にも好適に用いられる。中でも、女性用の失禁用パッド、生理用ナプキンとして好適に用いられる。
【実施例】
【0047】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限られるものではない。
【0048】
図20は、本発明の吸収体物品の実施例を示す模式図である。図20(A)は平面図であり、図20(B)は図20(A)中のXXB−XXB線に沿った横端面図である。
図20に示される吸収体物品100mは、基本的に、吸収体物品100jと同様であるが、バックアップシート14fが吸収体12aの後端部の後側で折り返され、個包装用シート11mの液貯留部16の前端部の前側でも折り返され、バックアップシート14fの後端部が液貯留部16の上側に存在している点、吸収体12aがその下側をサイドシート部材36により被覆されている点、サイドシート部材36が吸収体12aの左右両側から上側に立ち上がって形成する一対のサイドバリヤ部34bを有する点、サイドバリヤ部34bにおいてサイドシート部材36の左右両縁部38が更に外側に折れ曲がっている点、吸収体12aが図示されるように中央部で折りたたまれ、かつ、左右両側で上側に立ち上がっている点、吸収体12bの上側にアクイジション層40が配置されている点、及び、更にアクイジション層40の上側にトップシート42が配置され、トップシート42が吸収体12aの立ち上がっている左右両縁部の上側まで被覆している点で異なる。
サイドバリヤ部34bにおいてサイドシート部材36の左右両縁部38が更に外側に折れ曲がっているため、サイドバリヤ部34bの開口幅を広くすることができる。
吸収体12aは、図示されるように中央部で折りたたまれているため、吸収体の吸収能力を大きくすることができ、また、吸収された尿の前後方向への拡散をより促進することができる。また、吸収体12aは、左右両側で上側に立ち上がっているため、尿の左右両縁部への流れ出しを抑制し、また、着用時にサイドバリヤ部34bを支え、そのへたりを少なくするので、左右両側における漏れが生じにくくなっている。
吸収体12bの上側にアクイジション層40、更にその上側にトップシート42が配置されているため、排出された尿の吸収・拡散状態がより安定し、また、着用者が着用感が優れたものになる。
【0049】
個包装用シート11mは、不織布と透湿性PEフィルムの積層体(目付量37g/m2、大化工業社製)により構成されている。
吸収体12aは、SAPシート(目付量200g/m2、MegaThin(登録商標)、(株)日本吸収体技術研究所製)により構成されている。
バックアップシート14fは、TCF不織布(目付量20g/m2、フタムラ化学社製)により構成されている。
雄型部材26と雌型部材28とは、メカニカル結合部材(住友スリーエム社製)により構成されている。
サイドバリヤ部34bのサイドシート部材36は、SMS不織布(目付量15g/m2、Avgol社製)により構成されている。
サイドバリヤ部34bの左右両縁部38は、170%伸度の弾性材(ライクラ620Dtex、東レ・デュポン社製)により構成されている。
アクイジション層40は、嵩高エアースルー不織布(目付量40g/m2、クラレ社製)により構成されている。
トップシート42は、エアースルー不織布(目付量20g/m2、クラレ社製)により構成されている。
また、図20中、数値は寸法を示すものであり、単位は「mm」である。本発明はこの大きさに限定されない。
【0050】
図21は、本発明の吸収体物品の別の実施例を示す模式図である。図21(A)は平面図であり、図21(B)は図21(A)中のXXIB−XXIB線に沿った横端面図である。
図21に示される吸収体物品100nは、基本的に、吸収体物品100mと同様であるが、バックアップシート14gが吸収体12bの後端部の後側等で折り返されていない点、液貯留部16の前端部の前側で折り返されている伝い漏れ防止シート20dを有する点、吸収体12bが図示されるように左右両側で折りたたまれている点、吸収体12bが左右両側で上側に立ち上がっていない点、及び、吸収体12bの下側かつバックアップシート14gの上側において液不透過性のバックシート44を有する点で異なる。
吸収体12bが図示されるように左右両側で折りたたまれているため、吸収体の吸収能力をより大きくすることができ、また、左右方向に流れてきた尿を前後方向に拡散させることができる。
バックアップシート14gと伝い漏れ防止シート20dとは、バックアップシート14fと同様の機能を奏する。
バックシート44を有するため、個包装用シート11mとともに二重の防漏体が形成され、漏れが生じにくくなっている。
なお、バックシート44に代替させて、国際公開第02/090106号パンフレットに記載されている、バッファー効果を有する高通気性・耐水性バリヤシートを用いても、上記と同様の効果を得ることができる。
【0051】
個包装用シート11、吸収体12b、バックアップシート14g、雄型部材26と雌型部材28、サイドバリヤ部34bのサイドシート部材36、サイドバリヤ部34bの左右両縁部38、アクイジション層40及びトップシート42は、吸収体物品100mと同様の材料により構成されている。
伝い漏れ防止シート20dは、コットンスパンレース不織布(目付量45g/m2、ユニチカ社製)により構成されている。
バックシート44は、透湿性PEフィルム(目付量25g/m2、三井化学社製)により構成されている。
また、図21中、数値は寸法を示すものであり、単位は「mm」である。本発明はこの大きさに限定されない。
【符号の説明】
【0052】
10、11、11a、11b、11c、11d、11e、11f、11g、11h、11i、11j、11k、11l、11m 個包装用シート
12、12a、12b 吸収体
14、14a、14b、14c、14d、14e、14f、14g バックアップシート
16、16a、16b 液貯留部
18 シールテープ
20、20a、20b、20c、20d 伝い漏れ防止シート
22、22a、22b、22c、22d、22e、22f、22g、22h、22i、22j、22k、22l 個包装用シート本体部
24、24a、24b、24c、24d、24e、24f、24g、24h、24i、24j、24k、24l、24m ウイング部
26 雄型部材
28 雌型部材
30 粘着剤
32 滑り止め部材
34、34a、34b サイドバリヤ部
36 サイドシート部材
38 左右両縁部
40 アクイジション層
42 トップシート
44 バックシート
100、100a、100b、100c、100d、100e、100f、100g、100h、100i、100j、100k、100l、100m、100n 吸収体物品
S 内部空間
uw 下着
w 着用者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液不透過性の個包装用シートと、
前記個包装用シートの上側に配置される、高吸水性樹脂を含有し水性液を吸収しうる吸収体と、
前記個包装用シートと前記吸収体との間に配置される、水性液を保持しうるバックアップシートと
を具備し、
前記個包装用シートが、後部に、上側に内部空間を形成する袋状の液貯留部を有し、
前記吸収体の後端部が、前記液貯留部の前記内部空間に存在する、吸収体物品。
【請求項2】
前記バックアップシートの後端部が前記液貯留部の前記内部空間に存在する、請求項1に記載の吸収体物品。
【請求項3】
前記バックアップシートが前記吸収体の後端部の後側で折り返され、前記バックアップシートの後端部が前記吸収体の上側に存在する、請求項1に記載の吸収体物品。
【請求項4】
前記バックアップシートが前記吸収体の後端部の後側で折り返され、かつ、前記個包装用シートの前記液貯留部の前端部の前側で折り返され、前記バックアップシートの後端部が前記液貯留部の上側に存在する、請求項1に記載の吸収体物品。
【請求項5】
前記バックアップシートが前記吸収体の後端部の後側で折り返され、かつ、前記個包装用シートの前記液貯留部の前端部の前側で折り返され、前記バックアップシートの後端部が前記液貯留部の後側に存在する、請求項1に記載の吸収体物品。
【請求項6】
更に、前記吸収体の上側に、一部が前記液貯留部の前記内部空間に存在し、他の一部が前記液貯留部の前記内部空間から露出している、水性液を保持しうる伝い漏れ防止シートを具備する、請求項1〜5のいずれかに記載の吸収体物品。
【請求項7】
前記伝い漏れ防止シートが前記液貯留部の前端部の前側で折り返されている、請求項6に記載の吸収体物品。
【請求項8】
前記個包装用シートが、液不透過性シートと疎水性不織布との積層体により構成され、
前記液不透過性シートの上側及び/又は下側に前記疎水性不織布が存在する、請求項1〜7のいずれかに記載の吸収体物品。
【請求項9】
前記個包装用シートの少なくとも内面が液不透過性シートにより構成され、
前記バックアップシートが親水性不織布により構成され、
前記液不透過性シートと前記親水性不織布とが一体的に形成された積層体である、請求項1〜7のいずれかに記載の吸収体物品。
【請求項10】
前記個包装用シートが、個包装用シート本体部と、前記個包装用シート本体部の左右両側に存在する一対のウイング部とを有し、
前記一対のウイング部が、前記個包装用シート本体部の上側及び下側のいずれにおいても互いに結合しうる、請求項1〜9のいずれかに記載の吸収体物品。
【請求項11】
前記一対のウイング部が、それぞれ粘着剤を有することにより、互いに結合しうる状態となっている、請求項10に記載の吸収体物品。
【請求項12】
前記一対のウイング部が、一方が雄型部材、他方が雌型部材を有し、前記雄型部材と前記雌型部材とが嵌合することにより、互いに結合しうる状態となっている、請求項10に記載の吸収体物品。
【請求項13】
前記個包装用シートが、下側面に、着用時に着用者の下着の内面と付着しうる粘着剤を有する、請求項1〜12のいずれかに記載の吸収体物品。
【請求項14】
前記個包装用シートが、下側面に、着用時に着用者の下着の内面と滑りにくくする滑り止め部材を有する、請求項1〜13のいずれかに記載の吸収体物品。
【請求項15】
前記個包装用シートが、上側面において、上側に立ち上がる一対のサイドバリヤ部を左右両側に有する、請求項1〜14のいずれかに記載の吸収体物品。
【請求項16】
失禁用パッドである、請求項1〜15のいずれかに記載の吸収体物品。
【請求項17】
生理用ナプキンである、請求項1〜15のいずれかに記載の吸収体物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−30638(P2011−30638A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177749(P2009−177749)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(592034744)株式会社日本吸収体技術研究所 (28)
【Fターム(参考)】