吸収体製品
【課題】吸収体の全量が十分に使用される漏れのない吸収体製品を提供すること。
【解決手段】おむつ40は、バックシート16と吸収体15とトップシート19からなり、着用時に着用者の腹部に相対する前部11と着用者のクロッチ部に相対するクロッチ相対部10と着用者の背部に相対する後部12において着用者の下半身に着用される。クロッチ相対部には、前部と後部を連絡する所定形状に折りたたみ賦型された空隙部2が成形されているので、尿はクロッチ相対部で止まらずに空隙部を経て前部から後部へスムーズに移動できる。前部および後部の吸収体を残すことなく十分に利用できる。
【解決手段】おむつ40は、バックシート16と吸収体15とトップシート19からなり、着用時に着用者の腹部に相対する前部11と着用者のクロッチ部に相対するクロッチ相対部10と着用者の背部に相対する後部12において着用者の下半身に着用される。クロッチ相対部には、前部と後部を連絡する所定形状に折りたたみ賦型された空隙部2が成形されているので、尿はクロッチ相対部で止まらずに空隙部を経て前部から後部へスムーズに移動できる。前部および後部の吸収体を残すことなく十分に利用できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用時に着用者のクロッチ部(両足の間の股下部)において不規則な変形をせず、所定の形状を維持するために尿が前部から後部に好適な状態で流れて吸収体が有効に利用される吸収体製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
小児用もしくは成人用のオムツのような吸収体製品は、一般に腰部の両脇で分離されて平らに展開でき、装着時に後側腰部と前側腰部とをテープで取り外し可能に連結する形式のテープ型と、ウェストホール部および2つのレッグホールを形成したパンツの形態のテープレス型とに大別される。いずれのタイプの吸収体製品であっても、シート状の防漏体の内面側に吸収体を設けた本体を有しており、この本体が着用者の腹部に相対する前部とクロッチ部に相対するクロッチ相対部と背部に相対する後部とに当てられて前記基本形態を構成し、着用者の下半身に着用されるようになっている点は共通している。
【0003】
上記吸収体製品においては、着用した吸収体製品内に排出された尿を、吸収体を十分に活用して確実に吸収することにより漏出を防ぎ、また排泄された大便が着用者の股間部や臀部に付着しないようにする等、吸収体としての機能を十全に発揮させるとともに吸収体製品としての利便性を一層向上させるため、下記特許文献1乃至5に開示されるように各種の発明が提案されている。
【特許文献1】特開平05−285168号公報
【特許文献2】特開平05−345003号公報
【特許文献3】特開2006−116157号公報
【特許文献4】特開2006−174966号公報
【特許文献5】PCT/JP2006/326272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の吸収体製品には、以下に説明するような問題点があったため、吸収体製品が有している吸収体の全量が必ずしも十分に利用されておらず、このため上記特許文献において開示されている吸収体としての機能を十全に発揮させための構造は、実際には十分に機能を発揮していなかった。
【0005】
図29(a)は、従来のテープ型の吸収体製品の着用前の平面図であり、同図(b)はその着用時の変形状態を示す平面図である。この吸収体製品は、シート状の防漏体の内面側に吸収体を設けたものであり、図29(b)に示すように、その使用前の展開形状は、着用時に着用者の腹部に相対する前部と、クロッチ部に相対するクロッチ相対部と、背部に相対する後部とが連続しており、図29(a)に示すように着用時に脚部に相当する両側部には凹部が設けられている。また、凹部の内側にはレッグギャザーが設けられ、吸収体に沿ってスタンディングギャザーが設けられている。
【0006】
本願発明者の実験に基づく知見によれば、このような吸収体製品を着用した場合、クロッチ相対部は図29(b)に示すように変形して横幅方向で最も狭い部位となるが、この変形は規則的なものではなく、着用者の体型や着用の仕方等、種々の条件によって予測し難い種々の変形を生じるものであって、その形態によっては着用者へのフィッティング状態や、前部から後部への液の移動性に大きく影響し、場合によっては特に横臥位における漏れの原因となる等、吸収体製品の機能発揮に密接な関係があるものと考えられる。
【0007】
子ども用おむつ、大人用おむつ、女性用生理用品等の吸収体製品においては、着用者の尿排出口、膣口、肛門のいずれの部位も、着用された吸収体製品の狭窄部分であるクロッチ相対部およびその付近に集中している。したがって図29(b)に示すように、吸収体製品を着用してクロッチ相対部の製品形状が大きく変わってきた場合には、当該吸収体製品の機能が発揮されるためには、まずこのクロッチ相対部の着用状態における構造・形状が吸収体製品としての機能を損なわないようなものとなっている必要があると考えられる。
【0008】
そこで、本願発明者は、吸収体製品のクロッチ相対部が人体のクロッチ部にスムーズに装着され、クロッチ相対部を挟む前部および後部において吸収体の機能が十分に発揮されるためには、装着時にクロッチ相対部の吸収体自体が、吸収体製品のクロッチ相対部として好ましいある特定の形状に確実に変形できるようにすること(又は特定の形状であること)が必要であると考えるに至った。このようにすれば、受容した液体が、圧縮されて変形したクロッチ相対部でブロックされて止まることがなく、前部から後部にスムーズに移動するので吸収体による液の受容が確実になり、前部および後部の吸収体を残すことなく十分に利用することが可能になると考えられるからである。
【0009】
本発明は、本願発明者が新たに認識した上記課題を解決するためになされたものであり、着用状態において、クロッチ相対部が吸収体製品として好ましいある特定の形状となっており、受容した液体がクロッチ相対部で止まることなく前部から後部にスムーズに移動して吸収されるような吸収体製品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の吸収体製品は、クロッチ相対部における吸収体の構造が、少なくとも着用時において所定の望ましい形状・構造となることにより、吸収体物品の液の受容を確実にするとともに、前部から後部への液の移動をスムーズにするものとされている。そして、クロッチ相対部に対する特定構造の賦与方法については、着用前にあらかじめ所定の構造・形状となるように成形しておいてもよいし、着用前には展開された状態にあるが着用することにより所定の構造・形状に折りたたまれるようにしてもよい。
【0011】
また、吸収体製品のクロッチ相対部に特殊な構造を与えて液の前後移動を確保するには、クロッチ相対部の吸収体が液を吸収して膨張した場合にも上記構造が崩れない必要がある。そのためには、吸水材料である固形高吸水性樹脂が移動しにくい構造とされた吸収体を使用する必要がある。たとえば、不織布基材シート上に固形高吸水性樹脂(固形SAP)の粒子を一部が包持されるとともに一部が露出するように配置して、その上からホットメルト樹脂等からなる繊維状ネットワークを設けて前記粒子を保持した構造の高吸水性複合シート等は、固形SAPの粒子が水分を吸収しても繊維状ネットワークで覆われているために移動しにくいので、本発明に使用する吸収体として適している。
【0012】
以下、本発明の吸収体製品の構造を、各請求項に記載した発明ごとに説明する。
請求項1に記載された吸収体製品は、
シート状の防漏体と前記防漏体の内面側に設けられた吸収体を備え、着用時に着用者の腹部に相対する前部と着用者のクロッチ部に相対するクロッチ相対部と着用者の背部に相対する後部において着用者の下半身に着用される吸収体製品において、
少なくとも着用時において、前記前部と前記後部を連絡する所定形状に折りたたみ賦型されたチャネル状の空隙部が前記クロッチ相対部に構成されることを特徴としている。
【0013】
請求項2に記載された吸収体製品は、請求項1記載の吸収体製品において、
前記空隙部が前記前部と前記後部を連通させる方向に対して交叉する面において前記クロッチ相対部を切断した場合における前記吸収体製品の形状が、
前記吸収体製品の内方に向けて凸形状とされた左右両側部の間において、前記空隙部の少なくとも前記前部側と前記後部側が前記吸収体製品の内方に向けて開放されている所定形状に成形されたことを特徴としている。
【0014】
請求項3に記載された吸収体製品は、請求項2記載の吸収体製品において、
前記吸収体製品の前記クロッチ相対部が、着用前から予め前記所定形状に折りたたまれていることを特徴としている。
【0015】
請求項4に記載された吸収体製品は、請求項3記載の吸収体製品において、
所定形状に折りたたみ賦型されたチャネル状の前記空隙部が、前記前部の前端から前記クロッチ相対部を経て前記後部の後端まで前記吸収体の全長に亘って連続した状態に構成されていることを特徴としている。
【0016】
請求項5に記載された吸収体製品は、請求項2記載の吸収体製品において、
前記吸収体製品の前記クロッチ相対部が、着用前は前記所定形状が展開された状態にあり、着用時に前記所定形状に折りたたまれることを特徴としている。
【0017】
請求項6に記載された吸収体製品は、請求項1乃至5のいずれか一つに記載の吸収体製品において、
前記クロッチ相対部の前記空隙部に、前記前部と前記後部を連通させるガイドスペーサを配したことを特徴としている。
【0018】
請求項7に記載された吸収体製品は、請求項1乃至6のいずれか一つに記載の吸収体製品において、
着用者の尿を前記クロッチ相対部の前記空隙部又は前記ガイドスペーサに導くガイドユニットを前記前部と前記クロッチ相対部の間に設けたことを特徴としている。
【0019】
請求項8に記載された吸収体製品は、請求項7に記載の吸収体製品において、
前記ガイドユニットの前端部が前記前部に結合され、同後端部が前記クロッチ相対部に結合されて前記空隙部に相対していることを特徴としている。
【0020】
請求項9に記載された吸収体製品は、請求項1乃至8のいずれか一つに記載の吸収体製品において、
前記前部と前記クロッチ相対部と前記後部にある前記吸収体の両側部に設けられた一対の液漏れ防止用の側部伸縮帯の間隔が、少なくとも着用時において前記クロッチ相対部の前記空隙部が開口している開口幅と同等に設定されていることを特徴としている。
【0021】
請求項10に記載された吸収体製品は、請求項9記載の吸収体製品において、
前記一対の側部伸縮帯の前記間隔が前記前部に行くほど狭くなり、前記後部に行くほど広くなるように、前記一対の側部伸縮帯が、前記前部を上側とした平面視において前記前部を頂点とする逆V字形となるように配設されたことを特徴としている。
【0022】
請求項11に記載された吸収体製品は、請求項10記載の吸収体製品において、
前記一対の側部伸縮帯の各前端部が前記前部において交叉して配設されることにより、前記一対の側部伸縮帯の各前端部と前記前部にある前記吸収体との間に、着用者の尿が流入するポケットが構成されることを特徴としている。
【0023】
請求項12に記載された吸収体製品は、請求項1乃至11のいずれか一つに記載の吸収体製品において、
前記前部と前記後部の間に、着用者の尿を収容する前記前部と便を収容する前記後部とを分割する分離セパレーターを設けたことを特徴としている。
【0024】
請求項13に記載された吸収体製品は、請求項12記載の吸収体製品において、
前記前部に尿通過専用の開口と前記後部に便通過専用の開口をそれぞれ設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0025】
請求項1に記載された吸収体製品によれば、クロッチ相対部の吸収体が、少なくとも着用時には前記前部と前記後部を空隙部で連絡する形状・構造となるので、着用者が排出した尿等の液体はクロッチ相対部で止まることなく液の通りがよい空隙部を経て前部から後部へスムーズに移動することができる。このため、前部および後部の吸収体を残すことなく十分に利用することが可能になる。
【0026】
請求項2に記載された吸収体製品によれば、着用時のクロッチ相対部には、凸形状の左右両側部によって空隙部が区画され、この空隙部は前部側と後部側が内方に向けて開放されている。
【0027】
請求項3に記載された吸収体製品によれば、吸収体製品のクロッチ相対部は着用前から所定形状に折りたたまれているので、着用すると所定形状でクロッチ部に相対する。
【0028】
請求項4に記載された吸収体製品によれば、所定形状に折りたたみ賦型されたチャネル状の前記空隙部が、前部からクロッチ相対部を経て後部まで吸収体の全長に亘って連続しているので、着用者が前部に排出した尿等の液体は前部で空隙部に入ってクロッチ相対部から後部へスムーズに移動でき、すべての吸収体を残すことなく十分に利用できる効果が一層高まる。
【0029】
請求項5に記載された吸収体製品によれば、吸収体製品のクロッチ相対部は着用前は前所定形状が展開された状態にあるが、着用時には所定形状に折りたたまれてクロッチ部に相対する。
【0030】
請求項6に記載された吸収体製品によれば、クロッチ相対部の空隙部に設けられたガイドスペーサが前部と後部を連通させているので、着用者が前部に排出した尿等の液体はクロッチ相対部で止まることなく確実にガイドスペーサを通過して後部へ移動できる。このため、横方向に尿が漏れることがなく、前部および後部の吸収体を残すことなく十分に利用する作用が一層確実に得られる。
【0031】
請求項7に記載された吸収体製品によれば、前部とクロッチ相対部の間に設けたガイドユニットが、着用者が前部に排出した尿等の液体をクロッチ相対部の空隙部又はガイドスペーサに導くので、着用者が前部に排出した尿等の液体を後部へ移動させる作用が一層確実になり、このため、前部および後部の吸収体を残すことなく十分に利用する作用も一層確実に得られる。
【0032】
請求項8に記載された吸収体製品によれば、ガイドユニットの前端部が前部に結合され、同後端部がクロッチ相対部に結合されて空隙部に相対しているので、着用者が前部に排出した尿等の液体を空隙部を介して後部へ移動させる作用が一層確実になる。
【0033】
請求項9に記載された吸収体製品によれば、前部とクロッチ相対部と後部にある吸収体の両側部に一対の液漏れ防止用の側部伸縮帯を設け、その間隔を着用時のクロッチ相対部の空隙部の開口幅と同等に設定したので、着用時においても、クロッチ相対部に流入した尿等が外に漏れるおそれが少ない。
【0034】
請求項10に記載された吸収体製品によれば、前部には間隔が比較的狭く設定された一対の側部伸縮帯の間に尿が流れ込む空間が構成され、クロッチ相対部は一対の側部伸縮帯によって囲まれて前部の空間から流入した尿等が外に漏れないように区画している。
【0035】
請求項11に記載された吸収体製品によれば、交叉して配設された一対の側部伸縮帯の各前端部と前部の吸収体との間にポケットが構成されているので、着用者の尿が前方側において漏れるおそれが少ない。
【0036】
請求項12に記載された吸収体製品によれば、分離セパレータによって着用者の尿と便を区分して収容することができる。
【0037】
請求項13に記載された吸収体製品によれば、前部に排出された尿は尿通過専用の開口から分離セパレータで分離された前部の吸収体に吸収され、後部に排出された便は便通過専用の開口から分離セパレータで分離された後部の吸収体の上に保持される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
次に、本願発明における最良の実施形態(以下本例とも呼ぶ)を説明する。
なお、実施形態は種々のバリエーションを含んでいるが、図面中に表した実施形態の構成要素に付す符号は、バリエーションの相違に係わらず、発明の構成要素として実質的に同等の場合は原則的として同一の符号を付し、発明の種々の形態を統一的に説明するとともに必要に応じて先にした説明を適宜援用することにより、参照符号の区別による煩雑を避けることとした。
【0039】
1.本願発明者が行った実験について
先に「発明が解決しようとする課題」の項において、吸収体製品を着用した場合、クロッチ相対部が予測し難い不規則な変形を生じ、これが吸収体製品の前部から後部へかけての液の移動性に大きな影響を与えるとの認識を示した。本項においては、本願発明者がかかる認識を得て本願発明の新たな課題に至る契機となり、また吸収体製品のクロッチ相対部に必要とされる形状・構造についての知見を得る契機ともなった実験について簡単に説明する。
【0040】
表1は、従来の吸収体製品を着用した場合に、クロッチ相対部の変形によって影響を受ける吸収体製品の構造要素について検討し、一覧としたものである。ここに列記した吸収体製品の構造要素の中で、特に影響を受けやすく、また吸収体製品としての機能発揮に大きく影響するのは、吸収体の変形と、側部伸縮帯(たとえばスタンディングギャザー、インナーギャザー、レッグギャザー等と呼称される)の位置の偏位である。
【0041】
【表1】
【0042】
以下に説明する実験では、クロッチ相対部の吸収体を実際に着用した場合を模して人為的に変形させ、これを傾斜させた状態に設置して上方から液体を流し、変形したクロッチ相対部での液の移動性を評価するという手法を採用した。
【0043】
(1) 準備するもの
・吸収体製品としてのテープ式おむつ(図1)
・クロッチ相対部固定用バネ止め式クリップ(図2)
・傾斜試料台
中央上部が45度、下部が30度の傾斜に設定された台(図3)
・定量ポンプ
流速7mL/sec、流量50mL/回
・0.9%生理食塩水、ストップウォッチ等
【0044】
(2) 試験手順
1)試料吸収体製品(おむつ)の長手方向中央を基点に、腹部30mmの長さまでをクロッチ相対部と想定し、50mm離れた点を液注入点とする(図1参照)。
2)クロッチ相対部の吸収体が所定の形状になるように、クロッチ相対部をクリップ(図2参照)で挟み、おむつの幅方向を変形させる。
3)おむつの腹部および背部を平らに広げ、スタンディングギャザーは立ち上げた状態でクリップ内に収める。
4)傾斜試料台(図3参照)の45度の上側の傾斜面に液注入点を設置し、傾斜試料台上におむつを設置する。おむつの配置は以下の通りとする。すなわち、おむつの腹部(前部)を上とし、背部(後部)を下とし、30度の下側の傾斜面の最上部にクロッチ相対部が位置するようにおむつを上記傾斜試料台上に上向きに置く。なお腹部、背部は広げた状態にして止める(傾斜試料台のクリップが当たる部分の面はくり抜いておく必要がある。)
5)液注入点の上から0.9%生理食塩水50mLを7mL/secの流速で落下注入する。この時、液注入管の先端(内径2〜6mmφ)は試料表面より10mm程度離す。
6)液の注入開始からおむつに吸収されるまでの時間と、腹部および背部への拡散距離 を計測する。
7)上記5)〜6)の操作を5分間隔で3回繰り返す。
8)クロッチ幅の設定はクリップの先端にストッパーを挟持させることによって図4(a)〜(d)の条件で変化させる。
【0045】
実際に吸収体製品を着用するとクロッチ相対部は種々の変形を見せ、一見ランダムに変形しているようであるが、吸収体の幅、吸収体の厚さ、吸収体が一層の場合、あるいは吸収体が折りたたまれている等、吸収体の変形のし易さや性状によって、たとえば図5に示すようにa〜dの4パターンに分類でき、それを折り込みのある吸収体に応用するとe〜hのような例が得られる。
【0046】
そして、これら種々のパターンで変形するクロッチ相対部を試料をクリップで挟むことにより再現し、備えた各種試料に対して上記実験を行い、実験結果を踏まえてクロッチ相対部に於ける吸収体の望ましい変形状態とその寸法(サイズ)について考察した。その結果、液の注入開始からおむつに吸収されるまでの時間と、腹部および背部への拡散距離の数値等から見て、前部から後部への液の移動を阻害せず、前部および後部の吸収体が有効に使用される望ましい吸収体の変形状態(クロッチ相対部の変形形状)は、図5のパターンにおいては、横幅方向の中央部がバックシート側(着用したおむつの外側)に膨らんで中央に空隙部を持つようなb乃至fのような谷型、あるいはd乃至hのM型であった。
【0047】
ここでは、谷型とM型を異なる類型に属するものとして区別したが、これらは前部から後部への液の移動を阻害しない効果を共通して奏するものであり、その点において共通の形状・構造を有している。すなわち、図6に示すように、両型とも、前部と後部を結ぶ方向に直交する断面で見ると、吸収体製品の内方に向けて凸形状とされた左右両側部(山)1,1と、左右両側部1,1の間に吸収体製品の内方に向けて開口したチャネル状の空隙部2とを有する点において共通している。
【0048】
従って、谷型とM型の相違点は、左右両側部1,1の裾部3の有無あるいは長短の違いであり、いずれも左右両側部1,1の間にチャネル状の空隙部2が区画されている点では共通であり、本発明ではこのチャネル状の空隙部2の存在が重要であると考えられる。
【0049】
以下においては、空隙部2を有するクロッチ相対部の種々の形状・構造例について説明し、さらに係るクロッチ相対部を有する吸収体製品としての具体的実施形態を説明する。
【0050】
2.クロッチ相対部に設ける吸収体の各種形状例(図7および図8)
本発明の吸収体製品は、クロッチ相対部の吸収体が、予め所定の形状・構造に形付けられる(賦型される)ことにより、吸収体物品の液の受容を確実とし、さらに前部から後部への液の移動をスムーズにするものである。図7および図8は、吸収体製品の前部と後部を連通させる空隙部2に直交する面でクロッチ相対部を切断した場合の断面図であり、このようなクロッチ相対部の吸収体に与えられる所定形状の例を示すものである。
【0051】
図7(a)は、吸収体製品の内方に向けて凸形状とされた左右両側部1,1の間に設けられて前部と後部を連通させている空隙部2が、吸収体製品の内方に向けて長手方向に沿って溝状に開放されている例である(開放型)。
【0052】
図7(b)は、吸収体製品の内方に向けて凸形状とされた左右両側部1,1がクロッチ相対部の中央部において接合されており(接合部4)、左右両側部1,1の間に設けられて前部と後部を連通させている空隙部2が、接合部4以外の前部および後部においては吸収体製品の内方に向けて開放されている例である(接合型)。
【0053】
図8(a)は、図7(a)の開放型の空隙部2内にガイドスペーサ5を配置したものであり、図8(b)は、図7(b)の接合型の空隙部2内にガイドスペーサ5を配置したものである。ガイドスペーサ5は、両端が開放されたたとえば樹脂からなる円筒形の部材であり、空隙部2内に配置されて吸収体製品の内部の前部と後部をより確実に連通させるとともに、クロッチ相対部の変形や型くずれを防止する。すなわち、開放型や接合型では空隙部2が何らかの原因によって閉塞されてしまうことも全く考えられないことではないとしても、本例のようにある程度の剛性を有する管状の部材を空隙部2に配しておけば液体が前部から後部へ流通する経路が確保される。
【0054】
なお、本例の吸収体製品のクロッチ相対部に特殊な構造を与えて液の前後移動を確保するには、クロッチ相対部の吸収体が液を吸収して膨張した場合にも、上記構造が崩れない必要がある。そのためには、吸水材料としての固形高吸水性樹脂が移動しにくい構造とされた吸収体を使用する必要がある。たとえば、不織布基材シート上に固形高吸水性樹脂(固形SAP)の粒子を一部が包持されるとともに一部が露出するように配置して、その上からホットメルト樹脂等からなる繊維状ネットワークを設けて前記粒子を保持した構造の高吸水性複合シート、たとえばエアレイド法によるシート状吸収体(王子キノクロス製)、SAPコーティング法によるメガシン吸収体(日本吸収体技術研究所製)等は、固形SAPの粒子が水分を吸収しても繊維状ネットワークで覆われているために移動しにくいので、本発明に使用する吸収体として適している。
【0055】
3.ガイドスペーサ5とその種類(図9)
図9には、クロッチ相対部の空隙部2に設けられる前記ガイドスペーサ5の種々の形態例を示した。図9(a)は折りたたんだ不織布シートである。同図(b)は完全な円筒ではないが、概ね円筒形を呈するチューブ型に成形されたシートである。同図(c)はコイル状に成形したシートである。同図(d)は円筒形に成形したフィルムの外面側に不織布を設けた複合体である。同図(e)は繊維束をさらに集束させて棒状としたトウ状マットである。同図(f)は(b)と同形のシート状吸収体の外面にSAPを設けたもの、同図(g)は(b)と同形のシート状吸収体の内面にSAPを設けたもの、同図(h)は(b)と同形のシート状フィルムの内面に芯材を設けた複合型である。
【0056】
4.着用者のクロッチ部における側部伸縮帯と吸収体との位置関係について(図10および図11)
図10に示すように、着用者の下半身に着用された本例の吸収体製品は、そのクロッチ相対部10の吸収体15が、その外側に設けられた防漏体(バックシート16)と共に前述したM型を維持しており、その左右両側部1,1の上端縁が着用者の股下に接することにより排尿口と肛門が空隙部2の開口チャネルの前後延長位置かあるいは開口チャネルにほぼ接するように位置している。すなわち、空隙部2の開口の横幅をX1とし、着用者のクロッチ部の横幅をX2とすれば、図10および図11に示すように、X2>X1となっており、M型の山部である左右両側部1,1が着用者のクロッチ部に安定して接し、排出される尿や便の移動を妨げないようになっている。また、図10および図11に示すように、空隙部2の開口の両外側にはそれぞれ側部伸縮帯17が設けられ、そのギャザーヘッド18は空隙部2の開口の外側において着用者のクロッチ部に接して液の漏洩を防止している。
【0057】
5.吸収体製品におけるクロッチ相対部とその他の構成要素の配置関係等について(図12および図13)
図12および図13は、図7や図10と同様の切断面における本例吸収体製品のクロッチ相対部10における横断面図である。
図12(a)は前記谷型の吸収体製品であり、同図(b)は前記M型の吸収体製品であり、いずれも、吸収体製品の外面側となるシート状の防漏体であるバックシート16と、吸収体製品の内面側となる液透過性のトップシート19との間に吸収体15が収納された基本構造を有しており、そのクロッチ相対部10が吸収体製品の前部と後部を連通する空隙部2を備えた所定形状に成形されている。また、(a)、(b)いずれの吸収体製品も、バックシート16の側縁にはバックシート16と一体にアウターギャザー20が設けられており、バックシート16の側縁の内側にはインナーギャザー21が上方に立ち上げて設けられており、クロッチ相対部からの液の漏出を防止している。
【0058】
図13(a)は前記谷型の吸収体製品であり、同図(b)は前記M型の吸収体製品であり、いずれも、吸収体製品の外面側となるシート状の防漏体であるバックシート16と、吸収体製品の内面側となる液透過性のトップシート19との間に吸収体15が収納された基本構造を有しており、そのクロッチ相対部10が吸収体製品の前部と後部を連通する空隙部2を備えた所定形状に成形されている。また、(a)、(b)いずれの吸収体製品も、バックシート16の側縁には長手方向に沿って側部伸縮帯17が一体に設けられている。側部伸縮帯17は、バックシート16と共に前記空隙部2の区画する吸収体製品の構造体をなしているが、着用時には着用者の肌に接してクッションとして機能する他、図12に示す吸収体製品における両ギャザー20,21と同様に液漏れ防止の機能も有する。
【0059】
6.クロッチ相対部10における所定形状・構造の賦与態様について(図14および図15)
以上説明した各例はクロッチ相対部10が、前部と後部を連通する空隙部2を備えた所定形状に予め成形されているものであったが、本例の吸収体製品は、着用前のクロッチ相対部10には空隙部2を備えた所定形状はないが、着用することにより前記所定形状になるものである。
図14および図15は、本例の吸収体製品の2つの構造例を示すものであり、図12や図13と同様の切断面におけるクロッチ相対部10の横断面図を示している。
【0060】
図14(a)は第1の構造例における着用前の拡幅状態を示す断面図であり、同図(b)は同着用時の折りたたみ状態を示す断面図である。図14に示した構造例の吸収体製品は、外面側となるシート状の防漏体であるバックシート16と、内面側となる液透過性のトップシート19との間に吸収体15が収納された基本構造を有しており、両側の各縁部にはそれぞれ側部伸縮帯17が立ち上げられている。さらに、着用時にクロッチ相対部10に吸収体製品の前部と後部を連通する空隙部2が形成された前記M型乃至谷型を呈するように、クロッチ相対部10の内面側中央部に変形ガイド板25が取り付けられている。この変形ガイド板25は矩形であり、吸収体製品の前後方向(図中紙面垂直方向)に平行な2本の折り目26により中央部27と右側部28と左側部29の3つの矩形部分に分けられており、その中央部27がトップシート19に接合部30において接合され、左右両側部28,29は2本の折り目26,26において揺動可能とされて内方に向けて折り曲げ可能となっている。
【0061】
従って、図14(a)に示すように、着用前はクロッチ相対部10は横幅が最大の状態に拡幅された平坦状であり、変形ガイド板25は左右両側部28,29が外方に開いた状態にあるが、これを着用すると図14(b)に示すようにクロッチ相対部10の吸収体15が内方へ圧縮されることになる。そして、変形ガイド板25の左右両側部28,29は、吸収体15に内方に押されて略三角形状に閉じた状態となり、変形ガイド板25の左右両側部28,29を押す吸収体15は、吸収体製品の内方に向けて凸形状となった左右両側部1,1となって、その間に変形ガイド板25と協働して前後に連通する空隙部2を区画形成することとなる。この場合、略三角形に折りたたまれた変形ガイド板25の内部空間も空隙部2として前後を連通させる。
【0062】
図15(a)は第2の構造例における着用前の拡幅状態を示す断面図であり、同図(b)は同着用時の折りたたみ状態を示す断面図である。図15に示した構造例の吸収体製品は、外面側となるシート状の防漏体であるバックシート16と、内面側となる液透過性のトップシート19との間に吸収体15が収納された基本構造を有しており、両側の各縁部にはそれぞれ側部伸縮帯17が設けられている。さらに、着用時にクロッチ相対部10に吸収体製品の前部と後部を連通する空隙部2が形成された前記M型乃至谷型を呈するように、クロッチ相対部10の内面側中央部に成形ガイド手段ともなるガイドスペーサ5が取り付けられている。このガイドスペーサ5は図8乃至図9を参照して先に説明したように、クロッチ相対部10に設けられて吸収体製品の前後を連通することにより空隙部2を確保する部材であるとともに、それ自体がクロッチ部に挟まれて圧縮される吸収体15の変形態様をガイドする部材でもある。すなわち、ガイドスペーサ5の中央部はクロッチ相対部10の中央において接合部30にてトップシート19に接合されており、着用時に着用者のクロッチ部に挟まれて圧縮された吸収体15は、ガイドスペーサ5の円周状の外壁に沿って横断面略円形に変形するので、その内部に空隙部2が確保される。
【0063】
すなわち、図15(a)に示すように、着用前はクロッチ相対部10は横幅が最大の状態に拡幅された平坦状であるが、これを着用すると図15(b)に示すようにクロッチ相対部10の吸収体15が内方へ圧縮されることになり、押された吸収体15はガイドスペーサ5の表面に沿って変形し、吸収体製品の内方に向けて凸形状となった左右両側部1,1となって、ガイドスペーサ5との間に前後に連通する空隙部2を区画形成することとなる。この場合、ガイドスペーサ5の内部空間も空隙部2となることは前述した通りである。
【0064】
7.クロッチ相対部10における所定形状・構造の賦与態様について(図16〜図18)
図16〜図18は、図14で示したような変形ガイド板25を有する吸収体製品のクロッチ相対部10の寸法を含む具体的構造例を示す図であり、各図において分図(a),(b)はそれぞれ平面図および横断面図である。
【0065】
図16に示す吸収体製品では、クロッチ相対部10の内面側(トップシート19)に設けられた変形ガイド板25が、吸収体製品の前後方向に平行な2本のスリット31で中央部27と右側部28と左側部29の3つの矩形部分に分けられた板材である点は概ね図14に示したものと同一であるが、その全面においてトップシート19に接合されている点が図14の場合と異なる。本構造によれば、着用時にクロッチ相対部10が着用者のクロッチ部に挟まれて圧縮された場合、変形ガイド板25の左右両側部28,29は中央部27に対して2本のスリット31,31で曲げられ、クロッチ相対部10は前記M型乃至谷型に変形して空隙部2が確保される。
【0066】
図17に示す吸収体製品は、図14の構造と概ね同一であり、変形ガイド板25の中央部27がトップシート19に接合され、右側部28と左側部29は未接合である。本構造によれば、着用時にクロッチ相対部10が着用者のクロッチ部に挟まれて圧縮された場合、変形ガイド板25の左右両側部28,29は中央部27に対して2本のスリット31,31で曲げられ、クロッチ相対部10は前記M型乃至谷型に変形して空隙部2が確保される。
【0067】
図18に示す吸収体製品では、クロッチ相対部10の内面側(トップシート19)に設けられた変形ガイド板25は、図14、図16、および図17に示した一体構造の変形ガイド板25と異なる。この変形ガイド板25は、図16の変形ガイド板25における右側部28と左側部29に相当する寸法形状の2枚からなり、これらが間隔をおいてトップシート19に接合されている。本構造によれば、着用時にクロッチ相対部10が着用者のクロッチ部に挟まれて圧縮された場合、吸収体15と一体に接合された右側部28と左側部29が折れ曲がることはなく、両側部28,29は吸収体15と共に立ち上がる方向に変形し、両側部28,29の間にある吸収体15との間に空隙部2が区画されるのでクロッチ相対部10は前記M型乃至谷型となる。
【0068】
8.吸収体製品としての具体的実施形態(図19〜図22)
本例は、以上説明したような形状・構造のクロッチ相対部10を有する吸収体製品であるテープ型のおむつに関するものであり、図19(a),(b)はクロッチ相対部10に前記M型の構造を賦型する前の平面図およびクロッチ相対部10における横断面図であり、図20(a),(b)は前記M型の構造を賦型した後の平面図およびクロッチ相対部10における横断面図である。図21は、図19および図20に示す工程で製造されたおむつの構造例の展開平面図であり、図22は図21における横断面図である。
【0069】
このおむつ40は、シート状の防漏体である略矩形のバックシート16と、着用者の肌に接する略矩形で液透過性のトップシート19との間に、これら両シートよりも小さい矩形の吸収体15が収納されて外縁が封じられてなる本体から構成されており、着用時に着用者の腹部に相対する前部11と着用者のクロッチ部に相対するクロッチ相対部10と着用者の背部に相対する後部12において着用者の下半身に装着され、着用者の胴体の両側面において着脱可能なテープ41で前部11と後部12が接続されることにより着用されるものである。
【0070】
図19および図20に示すように、前部11からクロッチ相対部10を経て後部12に至る本体の両側縁には、アウターギャザー20が連続して形成されている。また、アウターギャザー20よりも内方において、前部11からクロッチ相対部10を経て後部12に至る本体の吸収体15の内方上部には、側部伸縮帯17が設けられている。側部伸縮帯17は、本体に接続されて内方に向けて立ち上げられた不織布からなる帯体と、その帯体の上端縁に設けられたゴム等の弾性体からなり、アウターギャザー20と共に着用者の肌に密着して液漏れを防ぐものである。
【0071】
図19(a)および図20(a)に示すように、一対の側部伸縮帯17,17は、前部11(図中上部)を頂点とする逆V字形となるように配設されているため、一対の側部伸縮帯17,17の各前端部と前部11の吸収体との間には着用者の尿が流入するポケット42が構成され、また一対の側部伸縮帯17,17の間隔は前部11に行くほど狭く、後部12に行くほど広くなっている。すなわち、図19(a)に示すように、側部伸縮帯17,17の間隔は、ポケット42よりもクロッチ相対部10に近い前部11での値X1 と、クロッチ相対部10における値Xと、後部12における値X2 では、X1 <X<X2 となっており、さらに図20(a)に示すようにクロッチ相対部10の空隙部2が開口している開口幅よりも、クロッチ相対部10における一対の側部伸縮帯17,17の間隔Xの方が大きくなっている。
【0072】
図19に示すように、平坦な吸収体15を用いて上記おむつ40を製造した後、図20に示すようにクロッチ相対部10を左右方向から圧縮し、クロッチ相対部10を横断面にて前記M型に成形すると、図21に示す展開平面図のようなおむつ40が得られる。図21中に示す3箇所の切断線X1 −X1 ’,X2 −X2 ’,X3 −X3 ’における断面図を図22(a),(b),(c)に示す。
【0073】
本例の構造のようなおむつ40によれば、吸収体15に近接して設けられた一対の側部伸縮帯17,17は、前部11にポケット42を構成しつつ、クロッチ相対部10の空隙部2をはさむような適当な間隔で配置されている。従って、着用者の排出する尿は一対の側部伸縮帯17,17で囲われた前部11のポケット42に流入するので前端での漏れは発生しにくく、さらに尿は前部11の吸収体15に吸収される他、ポケット42からクロッチ相対部10の空隙部2を通って後部12に移動し、クロッチ相対部10および後部12の吸収体15にも吸収されるので吸収体15の全量が効率よく液の吸収に供されることとなり、一層漏れが発生しにくくなる。
【0074】
9.吸収体製品としての具体的実施形態(図23および図24)
本例は、前述したような形状・構造のクロッチ相対部10を有する吸収体製品としてのテープレス型のおむつ50に関するものであり、図23は展開した平面図、図24(a)は図23のX−X’切断線における横断面図、図24(b)は図23のY−Y’切断線における縦断面図である。
【0075】
図23に示すおむつ50はテープレス型(パンツタイプ)であり、図はその展開形状を示すものである。このおむつ50は、シート状の防漏体である略矩形のバックシート16の内面側に、バックシート16よりも小さい折りたたんだ吸収体15を配置してなる本体を有している。
【0076】
図24(a)および(b)に示すように、バックシートと吸収体から構成された本体は、クロッチ相対部10だけでなく、前部11からクロッチ相対部10を経て後部12に至る全体にわたって折りたたまれて折り返し部分が連続して形成されており、前部11からクロッチ相対部10を経て後部12に連通するチャネル状の空隙部2を備えた前記M型乃至谷型に成形されている。
【0077】
このような構造は、具体的にはあらかじめシート状に成形されたSAPシート(たとえばメガシンと称される日本吸収体技術研究所製のシート状吸収体)を図24(a)の断面図に示すように全面に亘って折りたたんで構成することができる。
図23および図24(a)に示すように、前部11からクロッチ相対部10を経て後部12に至る連通チャネルを有する本体の両側縁には、着用者の肌に当接する側部伸縮帯17が連続して形成されている。
【0078】
本体の前部11および後部12には、着用時に着用者のウェストに装着される伸縮性のウェストバンド51が、本体の矩形長手方向に直交してそれぞれ一体に取り付けられており、これら一対のウェストバンド51,51の各両端が互いに接合されてパンツ形態を構成する。また、図23および図24(b)に示すように、ウェストバンド51と本体の前部11との間には、前ポケット52が形成され、ウェストバンド51と本体の後部12との間には、後ポケット53が形成される。
【0079】
図23および図24に示すように、このおむつ50は、前部11とクロッチ相対部10の間に着用者の尿をクロッチ相対部10の空隙部2に導く液ガイドユニット54が設けられている。この液ガイドユニット54は、本体の半分ほどの長さであり、本体のクロッチ相対部10の空隙部2の開口幅よりも大きい幅(図示では約3倍)を有する矩形のテープであり、着用者の尿道口に近接して取り付けられ、尿をより後方へとガイドする役割を演ずる。液ガイドユニット54は、その前端部が前ポケット52の内部で前方のウェストバンド51に結合され、その後端部はクロッチ相対部10に結合されて空隙部2に相対するように取り付けられている。
【0080】
着用時には、本体とウェストバンド51の間にあるレッグホールから脚を通し、本体を着用者のクロッチ部を中心として下半身の腹部および背部に装着する。ウェストバンド51が着用者の胴回りに接触するとともに、本体の側部伸縮帯17が着用者の脚の付け根周りの肌に接触し、また着用者の尿道口付近が液ガイドユニット54に接触する。本体の前部11、クロッチ相対部10、後部12は、それぞれ着用者の腹部、クロッチ部、背部に相対する。
【0081】
本例の構造のようなおむつ50によれば、着用者の排出する尿は前部11の吸収体15に吸収され、前部11には前ポケット52があるので前端での漏れは発生しにくい。さらに尿は液ガイドユニット54に案内されて尿排出口からクロッチ相対部10の空隙部2を通って後部12に移動し、吸収体15にも吸収されるので吸収体15の全量が効率よく液の吸収に供されることとなり、一層漏れが発生しにくくなる。なお、着用者の姿勢の変化等により、液ガイドユニット54上に排出された尿が後部12に導かれず、前方に流れたとしても、図23に示すように液ガイドユニット54の前端には三日月状のスリットが戻り口55(リターンゾーン)として形成されているので、尿はこの戻り口55から前部11の吸収体上に落ちて吸収され、前ポケット52からさらに外へと漏れてしまうことはない。
【0082】
10.吸収体製品としての具体的実施形態(図25および図26)
本例は、前述したような形状・構造のクロッチ相対部10を有する吸収体製品としてのテープレス型のおむつ50に関するものであり、図25は展開した平面図、図26(a)は図25のX−X’切断線における横断面図、図26(b)は図25のY−Y’切断線における縦断面図である。
【0083】
図25に示すおむつ50はパンツ形態のテープレス型(パンツタイプ)であり、図はその展開形状を示すものである。このおむつ50は、図23に示すおむつ50と略同様の連通するチャネルと側縁帯を持つ構造であるが、前記液ガイドユニット54はなく、クロッチ相対部10(又は前部11と後部12の間)に、着用者の尿を収容する前部11と便を収容する後部12とを分割するための分離セパレータ56が設けられている。分離セパレータ56は、液不透過性のシートからなり、バックシート16と一体に構成された一対の側部伸縮帯17,17の間を架橋するように取り付けられ、本体に対して略垂直に立ち上がる壁状の構造である。
【0084】
図26に示すように、分離セパレータ56の下端には、便受けシート57が一体に後端部に向かって連続して設けられており、便受けシート57は後部12に引き回されて後部12の吸収体15上に配置され便専用の収容部を形成している。すなわち、便受けシート57は後部12の吸収体15と上下に隔離され、上部の便受けシート上に収容された便が下部の吸収体に吸収される尿とは接触しない配置関係にあり、前部11から移動してきた尿は便受けシート57と後部12の吸収体15との間に拡散・浸透して後部12の吸収体15に吸収される。
【0085】
着用時には、本体とウェストバンド51の間にあるレッグホールから脚を通し、本体を着用者のクロッチ部を中心として下半身の腹部および背部に装着する。ウェストバンド51が着用者の胴回りに接触するとともに、本体の側部伸縮帯17が着用者の脚の付け根周りの肌に接触し、また着用者の会陰付近が分離セパレータ56に接触する。本体の前部11、クロッチ相対部10、後部12は、それぞれ着用者の腹部、クロッチ部、背部に相対する。
【0086】
本例の構造のようなおむつ50によれば、着用者の排出する尿は前部11の吸収体15に吸収され、前部11には前ポケット52があるので前端での漏れは発生しにくい。さらに尿は前部11からクロッチ相対部10の空隙部2を通り、分離セパレータ56の下側を潜って便受けシート57と後部12の吸収体15の間に入り込み、クロッチ相対部10および後部12の吸収体15にも吸収されるので吸収体15の全量が効率よく液の吸収に供されることとなり、一層漏れが発生しにくくなる。
【0087】
11.吸収体製品としての具体的実施形態(図27および図28)
本例は、前述したような形状・構造のクロッチ相対部10を有する吸収体製品としてのテープレス型のおむつ50に関するものであり、図27は展開した平面図、図28(a)は図27のX−X’切断線における横断面図、図28(b)は図27のY−Y’切断線における縦断面図である。
【0088】
図27に示すおむつ50はパンツ形態のテープレス型(パンツタイプ)であり、図はその展開形状を示すものである。このおむつ50は、図25に示す分離セパレータ56および便受けシート57を有するおむつ50と略同様の構造であるが、さらにスキンコンタクトシート58が設けられている点が異なる。
【0089】
図27および図28に示すように、スキンコンタクトシート58は前部11、クロッチ相対部10、後部12にわたって吸収体15およびその空隙部2の開口の上方に設けられたシートであり、分離セパレータ56を境として吸収体15の前方に対応する位置には尿専用通過用開口部59が形成され、吸収体15の後方に対応する位置には便専用通過用開口部60が形成されている。両開口部59,60の周囲の少なくとも一部には開口部伸縮材61が設けられており、着用者の肌に接した両開口部59,60から液等が逆流して着用者の肌を汚損することがないように構成されている。
【0090】
着用時には、本体とウェストバンド51の間にあるレッグホールから脚を通し、本体を着用者のクロッチ部を中心として下半身の腹部および背部に装着する。ウェストバンド51が着用者の胴回りに接触するとともに、本体の側部伸縮帯17が着用者の脚の付け根周りの肌に接触し、またスキンコンタクトシート58は着用者の腹部、クロッチ部、背部に接触する。
【0091】
本例の構造のようなおむつ50によれば、着用者の排出する尿はスキンコンタクトシート58の尿通過用開口部59から前部11の吸収体15に吸収され、前部11には前ポケット52があるので前端での漏れは発生しにくい。さらに尿は前部11からクロッチ相対部10の空隙部2を通り、分離セパレータ56の下側を潜って便受けシート57と後部12の吸収体15の間に入り込み、後部12の吸収体15にも吸収されるので吸収体15の全量が効率よく液の吸収に供されることとなり、一層漏れが発生しにくくなる。もし排出された尿や便の全量が開口に収容されず、その一部がスキンコンタクト上に残留する事態が発生しても、図27および図28(b)に示すように、スキンコンタクトシート58の両側縁に沿って液の透過域が設けられ、さらに前端および後端には長楕円状のスリットが戻り口55(リターンゾーン)として形成されているので、尿はこの戻り口55から前部11又は後部12の吸収体15上に落ちて吸収され、外へと漏れてしまうことはない。着用者の排出する便はスキンコンタクトシート58の便通過用開口部60から後部12の吸収体15上の便受けシート57上に落ち、尿と分離して保持される。
【0092】
なお、以上の説明においては、本発明に係る吸収体製品として特にパンツタイプのおむつ50とテープタイプのおむつ40を例示したが、もちろん本発明の適用範囲はこれに限定されるものではなく、クロッチ部の前後にわたって着用される形態の吸収体製品であれば女性対象製品、ペット対象製品であっても本発明の適用対象となる。
【0093】
以上説明したように、本発明の吸収体製品によれば、着用者の下半身においてクロッチ部の前後にわたって着用される吸収体製品において、クロッチ相対部が着用時に空隙部を有する特殊な形態となるために、吸収体製品内に排出される尿が前部から空隙部を通って後部にも流入することができるので、吸収体製品として有している吸収体の全量を効率的に利用することができ、漏れが生じにくい。このようなクロッチ相対部の特殊な形態とともに、実施形態で説明したように側部伸縮帯、液ガイドユニット、分離セパレータ、便受けシート、スキンコンタクトシート等を設ければ、クロッチ相対部の空隙部による効果と相俟って、さらに漏れが防止され、吸収体による吸収の効率化が一層促進される。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】図1は、本発明の課題および解決手段を得る契機となった本発明者の行った実験で供試体とされた吸収体製品の平面図である。
【図2】図2は、前記実験において使用されたクリップの正面図および側面図である。
【図3】図3は、前記実験において使用された傾斜試験台およびこれを用いた前記実験の実施状況を示す正面図である。
【図4】図4は、前記実験においてクロッチ相対部の幅の設定の態様を示す図である。
【図5】図5は、前記実験において設定したクロッチ相対部の種々の変形パターンを示す横断面図である。
【図6】図6は、前記実験において設定したクロッチ相対部の種々の変形パターンのうち、本発明の課題を解決しうる形態を示す横断面図である。
【図7】図7は、本発明の実施形態に係る吸収体製品のクロッチ相対部の横断面図である。
【図8】図8は、本発明の実施形態に係る吸収体製品のクロッチ相対部の横断面図である。
【図9】図9は、本発明の実施形態に係る吸収体製品のクロッチ相対部に設けられるガイドスペーサ5の横断面図である。
【図10】図10は、本発明の実施形態に係る吸収体製品と着用者のクロッチ部付近との関係を示す正面側から見た部分断面図である。
【図11】図11は、着用者のクロッチ部付近に対する本発明の実施形態に係る吸収体製品の位置関係を示す図である。
【図12】図12は、着用者にとっての前後方向に対して直交する切断面における本例吸収体製品のクロッチ相対部における横断面図である。
【図13】図13は、着用者にとっての前後方向に対して直交する切断面における本例吸収体製品のクロッチ相対部における横断面図である。
【図14】図14は、着用者にとっての前後方向に対して直交する切断面における本例吸収体製品のクロッチ相対部における横断面図であり、(a)は着用前の図、(b)は着用時の図である。
【図15】図15は、着用者にとっての前後方向に対して直交する切断面における本例吸収体製品のクロッチ相対部における横断面図であり、(a)は着用前の図、(b)は着用時の図である。
【図16】図16は、変形ガイド板を有する吸収体製品のクロッチ相対部の寸法を含む具体的構造例を示す図であり、各図において分図(a),(b)はそれぞれ平面図および横断面図である。
【図17】図17は、変形ガイド板を有する吸収体製品のクロッチ相対部の寸法を含む具体的構造例を示す図であり、各図において分図(a),(b)はそれぞれ平面図および横断面図である。
【図18】図18は、変形ガイド板を有する吸収体製品のクロッチ相対部の寸法を含む具体的構造例を示す図であり、各図において分図(a),(b)はそれぞれ平面図および横断面図である。
【図19】図19(a),(b)は、クロッチ相対部に前記M型の構造を賦型する前の平面図およびクロッチ相対部における横断面図である。
【図20】図20(a),(b)は、前記M型の構造を賦型した後の平面図およびクロッチ相対部における横断面図である。
【図21】図21は、図19および図20に示す工程で製造されたおむつの構造例の展開平面図である。
【図22】図22(a),(b),(c)は、それぞれ図21における3箇所の切断線X1 −X1 ’,X2 −X2 ’,X3 −X3 ’における横断面図である。
【図23】図23は、本発明の実施形態に係る吸収体製品としてのテープレス型のおむつを展開した平面図である。
【図24】図24(a)は、図23のX−X’切断線における横断面図、同図(b)は、図23のY−Y’切断線における縦断面図である。
【図25】図25は、本発明の実施形態に係る吸収体製品としてのテープレス型のおむつを展開した平面図である。
【図26】図26(a)は、図25のX−X’切断線における横断面図、同図(b)は、図25のY−Y’切断線における縦断面図である。
【図27】図27は、本発明の実施形態に係る吸収体製品としてのテープレス型のおむつを展開した平面図である。
【図28】図28(a)は、図27のX−X’切断線における横断面図、同図(b)は、図27のY−Y’切断線における縦断面図である。
【図29】図29(a)は、従来のテープレス型の吸収体製品の着用前の平面図であり、同図(b)はその着用時の変形状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0095】
1…側部
2…空隙部
5…ガイドスペーサ
10…クロッチ相対部
11…前部
12…後部
15…吸収体
16…防漏体としてのバックシート
17…側部伸縮帯
19…トップシート
20…アウターギャザー
21…インナーギャザー
25…変形ガイド板
40…吸収体製品としてのおむつ
50…吸収体製品としてのおむつ
54…液ガイドユニット
56…分離セパレータ
57…便受けシート
58…スキンコンタクトシート
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用時に着用者のクロッチ部(両足の間の股下部)において不規則な変形をせず、所定の形状を維持するために尿が前部から後部に好適な状態で流れて吸収体が有効に利用される吸収体製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
小児用もしくは成人用のオムツのような吸収体製品は、一般に腰部の両脇で分離されて平らに展開でき、装着時に後側腰部と前側腰部とをテープで取り外し可能に連結する形式のテープ型と、ウェストホール部および2つのレッグホールを形成したパンツの形態のテープレス型とに大別される。いずれのタイプの吸収体製品であっても、シート状の防漏体の内面側に吸収体を設けた本体を有しており、この本体が着用者の腹部に相対する前部とクロッチ部に相対するクロッチ相対部と背部に相対する後部とに当てられて前記基本形態を構成し、着用者の下半身に着用されるようになっている点は共通している。
【0003】
上記吸収体製品においては、着用した吸収体製品内に排出された尿を、吸収体を十分に活用して確実に吸収することにより漏出を防ぎ、また排泄された大便が着用者の股間部や臀部に付着しないようにする等、吸収体としての機能を十全に発揮させるとともに吸収体製品としての利便性を一層向上させるため、下記特許文献1乃至5に開示されるように各種の発明が提案されている。
【特許文献1】特開平05−285168号公報
【特許文献2】特開平05−345003号公報
【特許文献3】特開2006−116157号公報
【特許文献4】特開2006−174966号公報
【特許文献5】PCT/JP2006/326272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の吸収体製品には、以下に説明するような問題点があったため、吸収体製品が有している吸収体の全量が必ずしも十分に利用されておらず、このため上記特許文献において開示されている吸収体としての機能を十全に発揮させための構造は、実際には十分に機能を発揮していなかった。
【0005】
図29(a)は、従来のテープ型の吸収体製品の着用前の平面図であり、同図(b)はその着用時の変形状態を示す平面図である。この吸収体製品は、シート状の防漏体の内面側に吸収体を設けたものであり、図29(b)に示すように、その使用前の展開形状は、着用時に着用者の腹部に相対する前部と、クロッチ部に相対するクロッチ相対部と、背部に相対する後部とが連続しており、図29(a)に示すように着用時に脚部に相当する両側部には凹部が設けられている。また、凹部の内側にはレッグギャザーが設けられ、吸収体に沿ってスタンディングギャザーが設けられている。
【0006】
本願発明者の実験に基づく知見によれば、このような吸収体製品を着用した場合、クロッチ相対部は図29(b)に示すように変形して横幅方向で最も狭い部位となるが、この変形は規則的なものではなく、着用者の体型や着用の仕方等、種々の条件によって予測し難い種々の変形を生じるものであって、その形態によっては着用者へのフィッティング状態や、前部から後部への液の移動性に大きく影響し、場合によっては特に横臥位における漏れの原因となる等、吸収体製品の機能発揮に密接な関係があるものと考えられる。
【0007】
子ども用おむつ、大人用おむつ、女性用生理用品等の吸収体製品においては、着用者の尿排出口、膣口、肛門のいずれの部位も、着用された吸収体製品の狭窄部分であるクロッチ相対部およびその付近に集中している。したがって図29(b)に示すように、吸収体製品を着用してクロッチ相対部の製品形状が大きく変わってきた場合には、当該吸収体製品の機能が発揮されるためには、まずこのクロッチ相対部の着用状態における構造・形状が吸収体製品としての機能を損なわないようなものとなっている必要があると考えられる。
【0008】
そこで、本願発明者は、吸収体製品のクロッチ相対部が人体のクロッチ部にスムーズに装着され、クロッチ相対部を挟む前部および後部において吸収体の機能が十分に発揮されるためには、装着時にクロッチ相対部の吸収体自体が、吸収体製品のクロッチ相対部として好ましいある特定の形状に確実に変形できるようにすること(又は特定の形状であること)が必要であると考えるに至った。このようにすれば、受容した液体が、圧縮されて変形したクロッチ相対部でブロックされて止まることがなく、前部から後部にスムーズに移動するので吸収体による液の受容が確実になり、前部および後部の吸収体を残すことなく十分に利用することが可能になると考えられるからである。
【0009】
本発明は、本願発明者が新たに認識した上記課題を解決するためになされたものであり、着用状態において、クロッチ相対部が吸収体製品として好ましいある特定の形状となっており、受容した液体がクロッチ相対部で止まることなく前部から後部にスムーズに移動して吸収されるような吸収体製品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の吸収体製品は、クロッチ相対部における吸収体の構造が、少なくとも着用時において所定の望ましい形状・構造となることにより、吸収体物品の液の受容を確実にするとともに、前部から後部への液の移動をスムーズにするものとされている。そして、クロッチ相対部に対する特定構造の賦与方法については、着用前にあらかじめ所定の構造・形状となるように成形しておいてもよいし、着用前には展開された状態にあるが着用することにより所定の構造・形状に折りたたまれるようにしてもよい。
【0011】
また、吸収体製品のクロッチ相対部に特殊な構造を与えて液の前後移動を確保するには、クロッチ相対部の吸収体が液を吸収して膨張した場合にも上記構造が崩れない必要がある。そのためには、吸水材料である固形高吸水性樹脂が移動しにくい構造とされた吸収体を使用する必要がある。たとえば、不織布基材シート上に固形高吸水性樹脂(固形SAP)の粒子を一部が包持されるとともに一部が露出するように配置して、その上からホットメルト樹脂等からなる繊維状ネットワークを設けて前記粒子を保持した構造の高吸水性複合シート等は、固形SAPの粒子が水分を吸収しても繊維状ネットワークで覆われているために移動しにくいので、本発明に使用する吸収体として適している。
【0012】
以下、本発明の吸収体製品の構造を、各請求項に記載した発明ごとに説明する。
請求項1に記載された吸収体製品は、
シート状の防漏体と前記防漏体の内面側に設けられた吸収体を備え、着用時に着用者の腹部に相対する前部と着用者のクロッチ部に相対するクロッチ相対部と着用者の背部に相対する後部において着用者の下半身に着用される吸収体製品において、
少なくとも着用時において、前記前部と前記後部を連絡する所定形状に折りたたみ賦型されたチャネル状の空隙部が前記クロッチ相対部に構成されることを特徴としている。
【0013】
請求項2に記載された吸収体製品は、請求項1記載の吸収体製品において、
前記空隙部が前記前部と前記後部を連通させる方向に対して交叉する面において前記クロッチ相対部を切断した場合における前記吸収体製品の形状が、
前記吸収体製品の内方に向けて凸形状とされた左右両側部の間において、前記空隙部の少なくとも前記前部側と前記後部側が前記吸収体製品の内方に向けて開放されている所定形状に成形されたことを特徴としている。
【0014】
請求項3に記載された吸収体製品は、請求項2記載の吸収体製品において、
前記吸収体製品の前記クロッチ相対部が、着用前から予め前記所定形状に折りたたまれていることを特徴としている。
【0015】
請求項4に記載された吸収体製品は、請求項3記載の吸収体製品において、
所定形状に折りたたみ賦型されたチャネル状の前記空隙部が、前記前部の前端から前記クロッチ相対部を経て前記後部の後端まで前記吸収体の全長に亘って連続した状態に構成されていることを特徴としている。
【0016】
請求項5に記載された吸収体製品は、請求項2記載の吸収体製品において、
前記吸収体製品の前記クロッチ相対部が、着用前は前記所定形状が展開された状態にあり、着用時に前記所定形状に折りたたまれることを特徴としている。
【0017】
請求項6に記載された吸収体製品は、請求項1乃至5のいずれか一つに記載の吸収体製品において、
前記クロッチ相対部の前記空隙部に、前記前部と前記後部を連通させるガイドスペーサを配したことを特徴としている。
【0018】
請求項7に記載された吸収体製品は、請求項1乃至6のいずれか一つに記載の吸収体製品において、
着用者の尿を前記クロッチ相対部の前記空隙部又は前記ガイドスペーサに導くガイドユニットを前記前部と前記クロッチ相対部の間に設けたことを特徴としている。
【0019】
請求項8に記載された吸収体製品は、請求項7に記載の吸収体製品において、
前記ガイドユニットの前端部が前記前部に結合され、同後端部が前記クロッチ相対部に結合されて前記空隙部に相対していることを特徴としている。
【0020】
請求項9に記載された吸収体製品は、請求項1乃至8のいずれか一つに記載の吸収体製品において、
前記前部と前記クロッチ相対部と前記後部にある前記吸収体の両側部に設けられた一対の液漏れ防止用の側部伸縮帯の間隔が、少なくとも着用時において前記クロッチ相対部の前記空隙部が開口している開口幅と同等に設定されていることを特徴としている。
【0021】
請求項10に記載された吸収体製品は、請求項9記載の吸収体製品において、
前記一対の側部伸縮帯の前記間隔が前記前部に行くほど狭くなり、前記後部に行くほど広くなるように、前記一対の側部伸縮帯が、前記前部を上側とした平面視において前記前部を頂点とする逆V字形となるように配設されたことを特徴としている。
【0022】
請求項11に記載された吸収体製品は、請求項10記載の吸収体製品において、
前記一対の側部伸縮帯の各前端部が前記前部において交叉して配設されることにより、前記一対の側部伸縮帯の各前端部と前記前部にある前記吸収体との間に、着用者の尿が流入するポケットが構成されることを特徴としている。
【0023】
請求項12に記載された吸収体製品は、請求項1乃至11のいずれか一つに記載の吸収体製品において、
前記前部と前記後部の間に、着用者の尿を収容する前記前部と便を収容する前記後部とを分割する分離セパレーターを設けたことを特徴としている。
【0024】
請求項13に記載された吸収体製品は、請求項12記載の吸収体製品において、
前記前部に尿通過専用の開口と前記後部に便通過専用の開口をそれぞれ設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0025】
請求項1に記載された吸収体製品によれば、クロッチ相対部の吸収体が、少なくとも着用時には前記前部と前記後部を空隙部で連絡する形状・構造となるので、着用者が排出した尿等の液体はクロッチ相対部で止まることなく液の通りがよい空隙部を経て前部から後部へスムーズに移動することができる。このため、前部および後部の吸収体を残すことなく十分に利用することが可能になる。
【0026】
請求項2に記載された吸収体製品によれば、着用時のクロッチ相対部には、凸形状の左右両側部によって空隙部が区画され、この空隙部は前部側と後部側が内方に向けて開放されている。
【0027】
請求項3に記載された吸収体製品によれば、吸収体製品のクロッチ相対部は着用前から所定形状に折りたたまれているので、着用すると所定形状でクロッチ部に相対する。
【0028】
請求項4に記載された吸収体製品によれば、所定形状に折りたたみ賦型されたチャネル状の前記空隙部が、前部からクロッチ相対部を経て後部まで吸収体の全長に亘って連続しているので、着用者が前部に排出した尿等の液体は前部で空隙部に入ってクロッチ相対部から後部へスムーズに移動でき、すべての吸収体を残すことなく十分に利用できる効果が一層高まる。
【0029】
請求項5に記載された吸収体製品によれば、吸収体製品のクロッチ相対部は着用前は前所定形状が展開された状態にあるが、着用時には所定形状に折りたたまれてクロッチ部に相対する。
【0030】
請求項6に記載された吸収体製品によれば、クロッチ相対部の空隙部に設けられたガイドスペーサが前部と後部を連通させているので、着用者が前部に排出した尿等の液体はクロッチ相対部で止まることなく確実にガイドスペーサを通過して後部へ移動できる。このため、横方向に尿が漏れることがなく、前部および後部の吸収体を残すことなく十分に利用する作用が一層確実に得られる。
【0031】
請求項7に記載された吸収体製品によれば、前部とクロッチ相対部の間に設けたガイドユニットが、着用者が前部に排出した尿等の液体をクロッチ相対部の空隙部又はガイドスペーサに導くので、着用者が前部に排出した尿等の液体を後部へ移動させる作用が一層確実になり、このため、前部および後部の吸収体を残すことなく十分に利用する作用も一層確実に得られる。
【0032】
請求項8に記載された吸収体製品によれば、ガイドユニットの前端部が前部に結合され、同後端部がクロッチ相対部に結合されて空隙部に相対しているので、着用者が前部に排出した尿等の液体を空隙部を介して後部へ移動させる作用が一層確実になる。
【0033】
請求項9に記載された吸収体製品によれば、前部とクロッチ相対部と後部にある吸収体の両側部に一対の液漏れ防止用の側部伸縮帯を設け、その間隔を着用時のクロッチ相対部の空隙部の開口幅と同等に設定したので、着用時においても、クロッチ相対部に流入した尿等が外に漏れるおそれが少ない。
【0034】
請求項10に記載された吸収体製品によれば、前部には間隔が比較的狭く設定された一対の側部伸縮帯の間に尿が流れ込む空間が構成され、クロッチ相対部は一対の側部伸縮帯によって囲まれて前部の空間から流入した尿等が外に漏れないように区画している。
【0035】
請求項11に記載された吸収体製品によれば、交叉して配設された一対の側部伸縮帯の各前端部と前部の吸収体との間にポケットが構成されているので、着用者の尿が前方側において漏れるおそれが少ない。
【0036】
請求項12に記載された吸収体製品によれば、分離セパレータによって着用者の尿と便を区分して収容することができる。
【0037】
請求項13に記載された吸収体製品によれば、前部に排出された尿は尿通過専用の開口から分離セパレータで分離された前部の吸収体に吸収され、後部に排出された便は便通過専用の開口から分離セパレータで分離された後部の吸収体の上に保持される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
次に、本願発明における最良の実施形態(以下本例とも呼ぶ)を説明する。
なお、実施形態は種々のバリエーションを含んでいるが、図面中に表した実施形態の構成要素に付す符号は、バリエーションの相違に係わらず、発明の構成要素として実質的に同等の場合は原則的として同一の符号を付し、発明の種々の形態を統一的に説明するとともに必要に応じて先にした説明を適宜援用することにより、参照符号の区別による煩雑を避けることとした。
【0039】
1.本願発明者が行った実験について
先に「発明が解決しようとする課題」の項において、吸収体製品を着用した場合、クロッチ相対部が予測し難い不規則な変形を生じ、これが吸収体製品の前部から後部へかけての液の移動性に大きな影響を与えるとの認識を示した。本項においては、本願発明者がかかる認識を得て本願発明の新たな課題に至る契機となり、また吸収体製品のクロッチ相対部に必要とされる形状・構造についての知見を得る契機ともなった実験について簡単に説明する。
【0040】
表1は、従来の吸収体製品を着用した場合に、クロッチ相対部の変形によって影響を受ける吸収体製品の構造要素について検討し、一覧としたものである。ここに列記した吸収体製品の構造要素の中で、特に影響を受けやすく、また吸収体製品としての機能発揮に大きく影響するのは、吸収体の変形と、側部伸縮帯(たとえばスタンディングギャザー、インナーギャザー、レッグギャザー等と呼称される)の位置の偏位である。
【0041】
【表1】
【0042】
以下に説明する実験では、クロッチ相対部の吸収体を実際に着用した場合を模して人為的に変形させ、これを傾斜させた状態に設置して上方から液体を流し、変形したクロッチ相対部での液の移動性を評価するという手法を採用した。
【0043】
(1) 準備するもの
・吸収体製品としてのテープ式おむつ(図1)
・クロッチ相対部固定用バネ止め式クリップ(図2)
・傾斜試料台
中央上部が45度、下部が30度の傾斜に設定された台(図3)
・定量ポンプ
流速7mL/sec、流量50mL/回
・0.9%生理食塩水、ストップウォッチ等
【0044】
(2) 試験手順
1)試料吸収体製品(おむつ)の長手方向中央を基点に、腹部30mmの長さまでをクロッチ相対部と想定し、50mm離れた点を液注入点とする(図1参照)。
2)クロッチ相対部の吸収体が所定の形状になるように、クロッチ相対部をクリップ(図2参照)で挟み、おむつの幅方向を変形させる。
3)おむつの腹部および背部を平らに広げ、スタンディングギャザーは立ち上げた状態でクリップ内に収める。
4)傾斜試料台(図3参照)の45度の上側の傾斜面に液注入点を設置し、傾斜試料台上におむつを設置する。おむつの配置は以下の通りとする。すなわち、おむつの腹部(前部)を上とし、背部(後部)を下とし、30度の下側の傾斜面の最上部にクロッチ相対部が位置するようにおむつを上記傾斜試料台上に上向きに置く。なお腹部、背部は広げた状態にして止める(傾斜試料台のクリップが当たる部分の面はくり抜いておく必要がある。)
5)液注入点の上から0.9%生理食塩水50mLを7mL/secの流速で落下注入する。この時、液注入管の先端(内径2〜6mmφ)は試料表面より10mm程度離す。
6)液の注入開始からおむつに吸収されるまでの時間と、腹部および背部への拡散距離 を計測する。
7)上記5)〜6)の操作を5分間隔で3回繰り返す。
8)クロッチ幅の設定はクリップの先端にストッパーを挟持させることによって図4(a)〜(d)の条件で変化させる。
【0045】
実際に吸収体製品を着用するとクロッチ相対部は種々の変形を見せ、一見ランダムに変形しているようであるが、吸収体の幅、吸収体の厚さ、吸収体が一層の場合、あるいは吸収体が折りたたまれている等、吸収体の変形のし易さや性状によって、たとえば図5に示すようにa〜dの4パターンに分類でき、それを折り込みのある吸収体に応用するとe〜hのような例が得られる。
【0046】
そして、これら種々のパターンで変形するクロッチ相対部を試料をクリップで挟むことにより再現し、備えた各種試料に対して上記実験を行い、実験結果を踏まえてクロッチ相対部に於ける吸収体の望ましい変形状態とその寸法(サイズ)について考察した。その結果、液の注入開始からおむつに吸収されるまでの時間と、腹部および背部への拡散距離の数値等から見て、前部から後部への液の移動を阻害せず、前部および後部の吸収体が有効に使用される望ましい吸収体の変形状態(クロッチ相対部の変形形状)は、図5のパターンにおいては、横幅方向の中央部がバックシート側(着用したおむつの外側)に膨らんで中央に空隙部を持つようなb乃至fのような谷型、あるいはd乃至hのM型であった。
【0047】
ここでは、谷型とM型を異なる類型に属するものとして区別したが、これらは前部から後部への液の移動を阻害しない効果を共通して奏するものであり、その点において共通の形状・構造を有している。すなわち、図6に示すように、両型とも、前部と後部を結ぶ方向に直交する断面で見ると、吸収体製品の内方に向けて凸形状とされた左右両側部(山)1,1と、左右両側部1,1の間に吸収体製品の内方に向けて開口したチャネル状の空隙部2とを有する点において共通している。
【0048】
従って、谷型とM型の相違点は、左右両側部1,1の裾部3の有無あるいは長短の違いであり、いずれも左右両側部1,1の間にチャネル状の空隙部2が区画されている点では共通であり、本発明ではこのチャネル状の空隙部2の存在が重要であると考えられる。
【0049】
以下においては、空隙部2を有するクロッチ相対部の種々の形状・構造例について説明し、さらに係るクロッチ相対部を有する吸収体製品としての具体的実施形態を説明する。
【0050】
2.クロッチ相対部に設ける吸収体の各種形状例(図7および図8)
本発明の吸収体製品は、クロッチ相対部の吸収体が、予め所定の形状・構造に形付けられる(賦型される)ことにより、吸収体物品の液の受容を確実とし、さらに前部から後部への液の移動をスムーズにするものである。図7および図8は、吸収体製品の前部と後部を連通させる空隙部2に直交する面でクロッチ相対部を切断した場合の断面図であり、このようなクロッチ相対部の吸収体に与えられる所定形状の例を示すものである。
【0051】
図7(a)は、吸収体製品の内方に向けて凸形状とされた左右両側部1,1の間に設けられて前部と後部を連通させている空隙部2が、吸収体製品の内方に向けて長手方向に沿って溝状に開放されている例である(開放型)。
【0052】
図7(b)は、吸収体製品の内方に向けて凸形状とされた左右両側部1,1がクロッチ相対部の中央部において接合されており(接合部4)、左右両側部1,1の間に設けられて前部と後部を連通させている空隙部2が、接合部4以外の前部および後部においては吸収体製品の内方に向けて開放されている例である(接合型)。
【0053】
図8(a)は、図7(a)の開放型の空隙部2内にガイドスペーサ5を配置したものであり、図8(b)は、図7(b)の接合型の空隙部2内にガイドスペーサ5を配置したものである。ガイドスペーサ5は、両端が開放されたたとえば樹脂からなる円筒形の部材であり、空隙部2内に配置されて吸収体製品の内部の前部と後部をより確実に連通させるとともに、クロッチ相対部の変形や型くずれを防止する。すなわち、開放型や接合型では空隙部2が何らかの原因によって閉塞されてしまうことも全く考えられないことではないとしても、本例のようにある程度の剛性を有する管状の部材を空隙部2に配しておけば液体が前部から後部へ流通する経路が確保される。
【0054】
なお、本例の吸収体製品のクロッチ相対部に特殊な構造を与えて液の前後移動を確保するには、クロッチ相対部の吸収体が液を吸収して膨張した場合にも、上記構造が崩れない必要がある。そのためには、吸水材料としての固形高吸水性樹脂が移動しにくい構造とされた吸収体を使用する必要がある。たとえば、不織布基材シート上に固形高吸水性樹脂(固形SAP)の粒子を一部が包持されるとともに一部が露出するように配置して、その上からホットメルト樹脂等からなる繊維状ネットワークを設けて前記粒子を保持した構造の高吸水性複合シート、たとえばエアレイド法によるシート状吸収体(王子キノクロス製)、SAPコーティング法によるメガシン吸収体(日本吸収体技術研究所製)等は、固形SAPの粒子が水分を吸収しても繊維状ネットワークで覆われているために移動しにくいので、本発明に使用する吸収体として適している。
【0055】
3.ガイドスペーサ5とその種類(図9)
図9には、クロッチ相対部の空隙部2に設けられる前記ガイドスペーサ5の種々の形態例を示した。図9(a)は折りたたんだ不織布シートである。同図(b)は完全な円筒ではないが、概ね円筒形を呈するチューブ型に成形されたシートである。同図(c)はコイル状に成形したシートである。同図(d)は円筒形に成形したフィルムの外面側に不織布を設けた複合体である。同図(e)は繊維束をさらに集束させて棒状としたトウ状マットである。同図(f)は(b)と同形のシート状吸収体の外面にSAPを設けたもの、同図(g)は(b)と同形のシート状吸収体の内面にSAPを設けたもの、同図(h)は(b)と同形のシート状フィルムの内面に芯材を設けた複合型である。
【0056】
4.着用者のクロッチ部における側部伸縮帯と吸収体との位置関係について(図10および図11)
図10に示すように、着用者の下半身に着用された本例の吸収体製品は、そのクロッチ相対部10の吸収体15が、その外側に設けられた防漏体(バックシート16)と共に前述したM型を維持しており、その左右両側部1,1の上端縁が着用者の股下に接することにより排尿口と肛門が空隙部2の開口チャネルの前後延長位置かあるいは開口チャネルにほぼ接するように位置している。すなわち、空隙部2の開口の横幅をX1とし、着用者のクロッチ部の横幅をX2とすれば、図10および図11に示すように、X2>X1となっており、M型の山部である左右両側部1,1が着用者のクロッチ部に安定して接し、排出される尿や便の移動を妨げないようになっている。また、図10および図11に示すように、空隙部2の開口の両外側にはそれぞれ側部伸縮帯17が設けられ、そのギャザーヘッド18は空隙部2の開口の外側において着用者のクロッチ部に接して液の漏洩を防止している。
【0057】
5.吸収体製品におけるクロッチ相対部とその他の構成要素の配置関係等について(図12および図13)
図12および図13は、図7や図10と同様の切断面における本例吸収体製品のクロッチ相対部10における横断面図である。
図12(a)は前記谷型の吸収体製品であり、同図(b)は前記M型の吸収体製品であり、いずれも、吸収体製品の外面側となるシート状の防漏体であるバックシート16と、吸収体製品の内面側となる液透過性のトップシート19との間に吸収体15が収納された基本構造を有しており、そのクロッチ相対部10が吸収体製品の前部と後部を連通する空隙部2を備えた所定形状に成形されている。また、(a)、(b)いずれの吸収体製品も、バックシート16の側縁にはバックシート16と一体にアウターギャザー20が設けられており、バックシート16の側縁の内側にはインナーギャザー21が上方に立ち上げて設けられており、クロッチ相対部からの液の漏出を防止している。
【0058】
図13(a)は前記谷型の吸収体製品であり、同図(b)は前記M型の吸収体製品であり、いずれも、吸収体製品の外面側となるシート状の防漏体であるバックシート16と、吸収体製品の内面側となる液透過性のトップシート19との間に吸収体15が収納された基本構造を有しており、そのクロッチ相対部10が吸収体製品の前部と後部を連通する空隙部2を備えた所定形状に成形されている。また、(a)、(b)いずれの吸収体製品も、バックシート16の側縁には長手方向に沿って側部伸縮帯17が一体に設けられている。側部伸縮帯17は、バックシート16と共に前記空隙部2の区画する吸収体製品の構造体をなしているが、着用時には着用者の肌に接してクッションとして機能する他、図12に示す吸収体製品における両ギャザー20,21と同様に液漏れ防止の機能も有する。
【0059】
6.クロッチ相対部10における所定形状・構造の賦与態様について(図14および図15)
以上説明した各例はクロッチ相対部10が、前部と後部を連通する空隙部2を備えた所定形状に予め成形されているものであったが、本例の吸収体製品は、着用前のクロッチ相対部10には空隙部2を備えた所定形状はないが、着用することにより前記所定形状になるものである。
図14および図15は、本例の吸収体製品の2つの構造例を示すものであり、図12や図13と同様の切断面におけるクロッチ相対部10の横断面図を示している。
【0060】
図14(a)は第1の構造例における着用前の拡幅状態を示す断面図であり、同図(b)は同着用時の折りたたみ状態を示す断面図である。図14に示した構造例の吸収体製品は、外面側となるシート状の防漏体であるバックシート16と、内面側となる液透過性のトップシート19との間に吸収体15が収納された基本構造を有しており、両側の各縁部にはそれぞれ側部伸縮帯17が立ち上げられている。さらに、着用時にクロッチ相対部10に吸収体製品の前部と後部を連通する空隙部2が形成された前記M型乃至谷型を呈するように、クロッチ相対部10の内面側中央部に変形ガイド板25が取り付けられている。この変形ガイド板25は矩形であり、吸収体製品の前後方向(図中紙面垂直方向)に平行な2本の折り目26により中央部27と右側部28と左側部29の3つの矩形部分に分けられており、その中央部27がトップシート19に接合部30において接合され、左右両側部28,29は2本の折り目26,26において揺動可能とされて内方に向けて折り曲げ可能となっている。
【0061】
従って、図14(a)に示すように、着用前はクロッチ相対部10は横幅が最大の状態に拡幅された平坦状であり、変形ガイド板25は左右両側部28,29が外方に開いた状態にあるが、これを着用すると図14(b)に示すようにクロッチ相対部10の吸収体15が内方へ圧縮されることになる。そして、変形ガイド板25の左右両側部28,29は、吸収体15に内方に押されて略三角形状に閉じた状態となり、変形ガイド板25の左右両側部28,29を押す吸収体15は、吸収体製品の内方に向けて凸形状となった左右両側部1,1となって、その間に変形ガイド板25と協働して前後に連通する空隙部2を区画形成することとなる。この場合、略三角形に折りたたまれた変形ガイド板25の内部空間も空隙部2として前後を連通させる。
【0062】
図15(a)は第2の構造例における着用前の拡幅状態を示す断面図であり、同図(b)は同着用時の折りたたみ状態を示す断面図である。図15に示した構造例の吸収体製品は、外面側となるシート状の防漏体であるバックシート16と、内面側となる液透過性のトップシート19との間に吸収体15が収納された基本構造を有しており、両側の各縁部にはそれぞれ側部伸縮帯17が設けられている。さらに、着用時にクロッチ相対部10に吸収体製品の前部と後部を連通する空隙部2が形成された前記M型乃至谷型を呈するように、クロッチ相対部10の内面側中央部に成形ガイド手段ともなるガイドスペーサ5が取り付けられている。このガイドスペーサ5は図8乃至図9を参照して先に説明したように、クロッチ相対部10に設けられて吸収体製品の前後を連通することにより空隙部2を確保する部材であるとともに、それ自体がクロッチ部に挟まれて圧縮される吸収体15の変形態様をガイドする部材でもある。すなわち、ガイドスペーサ5の中央部はクロッチ相対部10の中央において接合部30にてトップシート19に接合されており、着用時に着用者のクロッチ部に挟まれて圧縮された吸収体15は、ガイドスペーサ5の円周状の外壁に沿って横断面略円形に変形するので、その内部に空隙部2が確保される。
【0063】
すなわち、図15(a)に示すように、着用前はクロッチ相対部10は横幅が最大の状態に拡幅された平坦状であるが、これを着用すると図15(b)に示すようにクロッチ相対部10の吸収体15が内方へ圧縮されることになり、押された吸収体15はガイドスペーサ5の表面に沿って変形し、吸収体製品の内方に向けて凸形状となった左右両側部1,1となって、ガイドスペーサ5との間に前後に連通する空隙部2を区画形成することとなる。この場合、ガイドスペーサ5の内部空間も空隙部2となることは前述した通りである。
【0064】
7.クロッチ相対部10における所定形状・構造の賦与態様について(図16〜図18)
図16〜図18は、図14で示したような変形ガイド板25を有する吸収体製品のクロッチ相対部10の寸法を含む具体的構造例を示す図であり、各図において分図(a),(b)はそれぞれ平面図および横断面図である。
【0065】
図16に示す吸収体製品では、クロッチ相対部10の内面側(トップシート19)に設けられた変形ガイド板25が、吸収体製品の前後方向に平行な2本のスリット31で中央部27と右側部28と左側部29の3つの矩形部分に分けられた板材である点は概ね図14に示したものと同一であるが、その全面においてトップシート19に接合されている点が図14の場合と異なる。本構造によれば、着用時にクロッチ相対部10が着用者のクロッチ部に挟まれて圧縮された場合、変形ガイド板25の左右両側部28,29は中央部27に対して2本のスリット31,31で曲げられ、クロッチ相対部10は前記M型乃至谷型に変形して空隙部2が確保される。
【0066】
図17に示す吸収体製品は、図14の構造と概ね同一であり、変形ガイド板25の中央部27がトップシート19に接合され、右側部28と左側部29は未接合である。本構造によれば、着用時にクロッチ相対部10が着用者のクロッチ部に挟まれて圧縮された場合、変形ガイド板25の左右両側部28,29は中央部27に対して2本のスリット31,31で曲げられ、クロッチ相対部10は前記M型乃至谷型に変形して空隙部2が確保される。
【0067】
図18に示す吸収体製品では、クロッチ相対部10の内面側(トップシート19)に設けられた変形ガイド板25は、図14、図16、および図17に示した一体構造の変形ガイド板25と異なる。この変形ガイド板25は、図16の変形ガイド板25における右側部28と左側部29に相当する寸法形状の2枚からなり、これらが間隔をおいてトップシート19に接合されている。本構造によれば、着用時にクロッチ相対部10が着用者のクロッチ部に挟まれて圧縮された場合、吸収体15と一体に接合された右側部28と左側部29が折れ曲がることはなく、両側部28,29は吸収体15と共に立ち上がる方向に変形し、両側部28,29の間にある吸収体15との間に空隙部2が区画されるのでクロッチ相対部10は前記M型乃至谷型となる。
【0068】
8.吸収体製品としての具体的実施形態(図19〜図22)
本例は、以上説明したような形状・構造のクロッチ相対部10を有する吸収体製品であるテープ型のおむつに関するものであり、図19(a),(b)はクロッチ相対部10に前記M型の構造を賦型する前の平面図およびクロッチ相対部10における横断面図であり、図20(a),(b)は前記M型の構造を賦型した後の平面図およびクロッチ相対部10における横断面図である。図21は、図19および図20に示す工程で製造されたおむつの構造例の展開平面図であり、図22は図21における横断面図である。
【0069】
このおむつ40は、シート状の防漏体である略矩形のバックシート16と、着用者の肌に接する略矩形で液透過性のトップシート19との間に、これら両シートよりも小さい矩形の吸収体15が収納されて外縁が封じられてなる本体から構成されており、着用時に着用者の腹部に相対する前部11と着用者のクロッチ部に相対するクロッチ相対部10と着用者の背部に相対する後部12において着用者の下半身に装着され、着用者の胴体の両側面において着脱可能なテープ41で前部11と後部12が接続されることにより着用されるものである。
【0070】
図19および図20に示すように、前部11からクロッチ相対部10を経て後部12に至る本体の両側縁には、アウターギャザー20が連続して形成されている。また、アウターギャザー20よりも内方において、前部11からクロッチ相対部10を経て後部12に至る本体の吸収体15の内方上部には、側部伸縮帯17が設けられている。側部伸縮帯17は、本体に接続されて内方に向けて立ち上げられた不織布からなる帯体と、その帯体の上端縁に設けられたゴム等の弾性体からなり、アウターギャザー20と共に着用者の肌に密着して液漏れを防ぐものである。
【0071】
図19(a)および図20(a)に示すように、一対の側部伸縮帯17,17は、前部11(図中上部)を頂点とする逆V字形となるように配設されているため、一対の側部伸縮帯17,17の各前端部と前部11の吸収体との間には着用者の尿が流入するポケット42が構成され、また一対の側部伸縮帯17,17の間隔は前部11に行くほど狭く、後部12に行くほど広くなっている。すなわち、図19(a)に示すように、側部伸縮帯17,17の間隔は、ポケット42よりもクロッチ相対部10に近い前部11での値X1 と、クロッチ相対部10における値Xと、後部12における値X2 では、X1 <X<X2 となっており、さらに図20(a)に示すようにクロッチ相対部10の空隙部2が開口している開口幅よりも、クロッチ相対部10における一対の側部伸縮帯17,17の間隔Xの方が大きくなっている。
【0072】
図19に示すように、平坦な吸収体15を用いて上記おむつ40を製造した後、図20に示すようにクロッチ相対部10を左右方向から圧縮し、クロッチ相対部10を横断面にて前記M型に成形すると、図21に示す展開平面図のようなおむつ40が得られる。図21中に示す3箇所の切断線X1 −X1 ’,X2 −X2 ’,X3 −X3 ’における断面図を図22(a),(b),(c)に示す。
【0073】
本例の構造のようなおむつ40によれば、吸収体15に近接して設けられた一対の側部伸縮帯17,17は、前部11にポケット42を構成しつつ、クロッチ相対部10の空隙部2をはさむような適当な間隔で配置されている。従って、着用者の排出する尿は一対の側部伸縮帯17,17で囲われた前部11のポケット42に流入するので前端での漏れは発生しにくく、さらに尿は前部11の吸収体15に吸収される他、ポケット42からクロッチ相対部10の空隙部2を通って後部12に移動し、クロッチ相対部10および後部12の吸収体15にも吸収されるので吸収体15の全量が効率よく液の吸収に供されることとなり、一層漏れが発生しにくくなる。
【0074】
9.吸収体製品としての具体的実施形態(図23および図24)
本例は、前述したような形状・構造のクロッチ相対部10を有する吸収体製品としてのテープレス型のおむつ50に関するものであり、図23は展開した平面図、図24(a)は図23のX−X’切断線における横断面図、図24(b)は図23のY−Y’切断線における縦断面図である。
【0075】
図23に示すおむつ50はテープレス型(パンツタイプ)であり、図はその展開形状を示すものである。このおむつ50は、シート状の防漏体である略矩形のバックシート16の内面側に、バックシート16よりも小さい折りたたんだ吸収体15を配置してなる本体を有している。
【0076】
図24(a)および(b)に示すように、バックシートと吸収体から構成された本体は、クロッチ相対部10だけでなく、前部11からクロッチ相対部10を経て後部12に至る全体にわたって折りたたまれて折り返し部分が連続して形成されており、前部11からクロッチ相対部10を経て後部12に連通するチャネル状の空隙部2を備えた前記M型乃至谷型に成形されている。
【0077】
このような構造は、具体的にはあらかじめシート状に成形されたSAPシート(たとえばメガシンと称される日本吸収体技術研究所製のシート状吸収体)を図24(a)の断面図に示すように全面に亘って折りたたんで構成することができる。
図23および図24(a)に示すように、前部11からクロッチ相対部10を経て後部12に至る連通チャネルを有する本体の両側縁には、着用者の肌に当接する側部伸縮帯17が連続して形成されている。
【0078】
本体の前部11および後部12には、着用時に着用者のウェストに装着される伸縮性のウェストバンド51が、本体の矩形長手方向に直交してそれぞれ一体に取り付けられており、これら一対のウェストバンド51,51の各両端が互いに接合されてパンツ形態を構成する。また、図23および図24(b)に示すように、ウェストバンド51と本体の前部11との間には、前ポケット52が形成され、ウェストバンド51と本体の後部12との間には、後ポケット53が形成される。
【0079】
図23および図24に示すように、このおむつ50は、前部11とクロッチ相対部10の間に着用者の尿をクロッチ相対部10の空隙部2に導く液ガイドユニット54が設けられている。この液ガイドユニット54は、本体の半分ほどの長さであり、本体のクロッチ相対部10の空隙部2の開口幅よりも大きい幅(図示では約3倍)を有する矩形のテープであり、着用者の尿道口に近接して取り付けられ、尿をより後方へとガイドする役割を演ずる。液ガイドユニット54は、その前端部が前ポケット52の内部で前方のウェストバンド51に結合され、その後端部はクロッチ相対部10に結合されて空隙部2に相対するように取り付けられている。
【0080】
着用時には、本体とウェストバンド51の間にあるレッグホールから脚を通し、本体を着用者のクロッチ部を中心として下半身の腹部および背部に装着する。ウェストバンド51が着用者の胴回りに接触するとともに、本体の側部伸縮帯17が着用者の脚の付け根周りの肌に接触し、また着用者の尿道口付近が液ガイドユニット54に接触する。本体の前部11、クロッチ相対部10、後部12は、それぞれ着用者の腹部、クロッチ部、背部に相対する。
【0081】
本例の構造のようなおむつ50によれば、着用者の排出する尿は前部11の吸収体15に吸収され、前部11には前ポケット52があるので前端での漏れは発生しにくい。さらに尿は液ガイドユニット54に案内されて尿排出口からクロッチ相対部10の空隙部2を通って後部12に移動し、吸収体15にも吸収されるので吸収体15の全量が効率よく液の吸収に供されることとなり、一層漏れが発生しにくくなる。なお、着用者の姿勢の変化等により、液ガイドユニット54上に排出された尿が後部12に導かれず、前方に流れたとしても、図23に示すように液ガイドユニット54の前端には三日月状のスリットが戻り口55(リターンゾーン)として形成されているので、尿はこの戻り口55から前部11の吸収体上に落ちて吸収され、前ポケット52からさらに外へと漏れてしまうことはない。
【0082】
10.吸収体製品としての具体的実施形態(図25および図26)
本例は、前述したような形状・構造のクロッチ相対部10を有する吸収体製品としてのテープレス型のおむつ50に関するものであり、図25は展開した平面図、図26(a)は図25のX−X’切断線における横断面図、図26(b)は図25のY−Y’切断線における縦断面図である。
【0083】
図25に示すおむつ50はパンツ形態のテープレス型(パンツタイプ)であり、図はその展開形状を示すものである。このおむつ50は、図23に示すおむつ50と略同様の連通するチャネルと側縁帯を持つ構造であるが、前記液ガイドユニット54はなく、クロッチ相対部10(又は前部11と後部12の間)に、着用者の尿を収容する前部11と便を収容する後部12とを分割するための分離セパレータ56が設けられている。分離セパレータ56は、液不透過性のシートからなり、バックシート16と一体に構成された一対の側部伸縮帯17,17の間を架橋するように取り付けられ、本体に対して略垂直に立ち上がる壁状の構造である。
【0084】
図26に示すように、分離セパレータ56の下端には、便受けシート57が一体に後端部に向かって連続して設けられており、便受けシート57は後部12に引き回されて後部12の吸収体15上に配置され便専用の収容部を形成している。すなわち、便受けシート57は後部12の吸収体15と上下に隔離され、上部の便受けシート上に収容された便が下部の吸収体に吸収される尿とは接触しない配置関係にあり、前部11から移動してきた尿は便受けシート57と後部12の吸収体15との間に拡散・浸透して後部12の吸収体15に吸収される。
【0085】
着用時には、本体とウェストバンド51の間にあるレッグホールから脚を通し、本体を着用者のクロッチ部を中心として下半身の腹部および背部に装着する。ウェストバンド51が着用者の胴回りに接触するとともに、本体の側部伸縮帯17が着用者の脚の付け根周りの肌に接触し、また着用者の会陰付近が分離セパレータ56に接触する。本体の前部11、クロッチ相対部10、後部12は、それぞれ着用者の腹部、クロッチ部、背部に相対する。
【0086】
本例の構造のようなおむつ50によれば、着用者の排出する尿は前部11の吸収体15に吸収され、前部11には前ポケット52があるので前端での漏れは発生しにくい。さらに尿は前部11からクロッチ相対部10の空隙部2を通り、分離セパレータ56の下側を潜って便受けシート57と後部12の吸収体15の間に入り込み、クロッチ相対部10および後部12の吸収体15にも吸収されるので吸収体15の全量が効率よく液の吸収に供されることとなり、一層漏れが発生しにくくなる。
【0087】
11.吸収体製品としての具体的実施形態(図27および図28)
本例は、前述したような形状・構造のクロッチ相対部10を有する吸収体製品としてのテープレス型のおむつ50に関するものであり、図27は展開した平面図、図28(a)は図27のX−X’切断線における横断面図、図28(b)は図27のY−Y’切断線における縦断面図である。
【0088】
図27に示すおむつ50はパンツ形態のテープレス型(パンツタイプ)であり、図はその展開形状を示すものである。このおむつ50は、図25に示す分離セパレータ56および便受けシート57を有するおむつ50と略同様の構造であるが、さらにスキンコンタクトシート58が設けられている点が異なる。
【0089】
図27および図28に示すように、スキンコンタクトシート58は前部11、クロッチ相対部10、後部12にわたって吸収体15およびその空隙部2の開口の上方に設けられたシートであり、分離セパレータ56を境として吸収体15の前方に対応する位置には尿専用通過用開口部59が形成され、吸収体15の後方に対応する位置には便専用通過用開口部60が形成されている。両開口部59,60の周囲の少なくとも一部には開口部伸縮材61が設けられており、着用者の肌に接した両開口部59,60から液等が逆流して着用者の肌を汚損することがないように構成されている。
【0090】
着用時には、本体とウェストバンド51の間にあるレッグホールから脚を通し、本体を着用者のクロッチ部を中心として下半身の腹部および背部に装着する。ウェストバンド51が着用者の胴回りに接触するとともに、本体の側部伸縮帯17が着用者の脚の付け根周りの肌に接触し、またスキンコンタクトシート58は着用者の腹部、クロッチ部、背部に接触する。
【0091】
本例の構造のようなおむつ50によれば、着用者の排出する尿はスキンコンタクトシート58の尿通過用開口部59から前部11の吸収体15に吸収され、前部11には前ポケット52があるので前端での漏れは発生しにくい。さらに尿は前部11からクロッチ相対部10の空隙部2を通り、分離セパレータ56の下側を潜って便受けシート57と後部12の吸収体15の間に入り込み、後部12の吸収体15にも吸収されるので吸収体15の全量が効率よく液の吸収に供されることとなり、一層漏れが発生しにくくなる。もし排出された尿や便の全量が開口に収容されず、その一部がスキンコンタクト上に残留する事態が発生しても、図27および図28(b)に示すように、スキンコンタクトシート58の両側縁に沿って液の透過域が設けられ、さらに前端および後端には長楕円状のスリットが戻り口55(リターンゾーン)として形成されているので、尿はこの戻り口55から前部11又は後部12の吸収体15上に落ちて吸収され、外へと漏れてしまうことはない。着用者の排出する便はスキンコンタクトシート58の便通過用開口部60から後部12の吸収体15上の便受けシート57上に落ち、尿と分離して保持される。
【0092】
なお、以上の説明においては、本発明に係る吸収体製品として特にパンツタイプのおむつ50とテープタイプのおむつ40を例示したが、もちろん本発明の適用範囲はこれに限定されるものではなく、クロッチ部の前後にわたって着用される形態の吸収体製品であれば女性対象製品、ペット対象製品であっても本発明の適用対象となる。
【0093】
以上説明したように、本発明の吸収体製品によれば、着用者の下半身においてクロッチ部の前後にわたって着用される吸収体製品において、クロッチ相対部が着用時に空隙部を有する特殊な形態となるために、吸収体製品内に排出される尿が前部から空隙部を通って後部にも流入することができるので、吸収体製品として有している吸収体の全量を効率的に利用することができ、漏れが生じにくい。このようなクロッチ相対部の特殊な形態とともに、実施形態で説明したように側部伸縮帯、液ガイドユニット、分離セパレータ、便受けシート、スキンコンタクトシート等を設ければ、クロッチ相対部の空隙部による効果と相俟って、さらに漏れが防止され、吸収体による吸収の効率化が一層促進される。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】図1は、本発明の課題および解決手段を得る契機となった本発明者の行った実験で供試体とされた吸収体製品の平面図である。
【図2】図2は、前記実験において使用されたクリップの正面図および側面図である。
【図3】図3は、前記実験において使用された傾斜試験台およびこれを用いた前記実験の実施状況を示す正面図である。
【図4】図4は、前記実験においてクロッチ相対部の幅の設定の態様を示す図である。
【図5】図5は、前記実験において設定したクロッチ相対部の種々の変形パターンを示す横断面図である。
【図6】図6は、前記実験において設定したクロッチ相対部の種々の変形パターンのうち、本発明の課題を解決しうる形態を示す横断面図である。
【図7】図7は、本発明の実施形態に係る吸収体製品のクロッチ相対部の横断面図である。
【図8】図8は、本発明の実施形態に係る吸収体製品のクロッチ相対部の横断面図である。
【図9】図9は、本発明の実施形態に係る吸収体製品のクロッチ相対部に設けられるガイドスペーサ5の横断面図である。
【図10】図10は、本発明の実施形態に係る吸収体製品と着用者のクロッチ部付近との関係を示す正面側から見た部分断面図である。
【図11】図11は、着用者のクロッチ部付近に対する本発明の実施形態に係る吸収体製品の位置関係を示す図である。
【図12】図12は、着用者にとっての前後方向に対して直交する切断面における本例吸収体製品のクロッチ相対部における横断面図である。
【図13】図13は、着用者にとっての前後方向に対して直交する切断面における本例吸収体製品のクロッチ相対部における横断面図である。
【図14】図14は、着用者にとっての前後方向に対して直交する切断面における本例吸収体製品のクロッチ相対部における横断面図であり、(a)は着用前の図、(b)は着用時の図である。
【図15】図15は、着用者にとっての前後方向に対して直交する切断面における本例吸収体製品のクロッチ相対部における横断面図であり、(a)は着用前の図、(b)は着用時の図である。
【図16】図16は、変形ガイド板を有する吸収体製品のクロッチ相対部の寸法を含む具体的構造例を示す図であり、各図において分図(a),(b)はそれぞれ平面図および横断面図である。
【図17】図17は、変形ガイド板を有する吸収体製品のクロッチ相対部の寸法を含む具体的構造例を示す図であり、各図において分図(a),(b)はそれぞれ平面図および横断面図である。
【図18】図18は、変形ガイド板を有する吸収体製品のクロッチ相対部の寸法を含む具体的構造例を示す図であり、各図において分図(a),(b)はそれぞれ平面図および横断面図である。
【図19】図19(a),(b)は、クロッチ相対部に前記M型の構造を賦型する前の平面図およびクロッチ相対部における横断面図である。
【図20】図20(a),(b)は、前記M型の構造を賦型した後の平面図およびクロッチ相対部における横断面図である。
【図21】図21は、図19および図20に示す工程で製造されたおむつの構造例の展開平面図である。
【図22】図22(a),(b),(c)は、それぞれ図21における3箇所の切断線X1 −X1 ’,X2 −X2 ’,X3 −X3 ’における横断面図である。
【図23】図23は、本発明の実施形態に係る吸収体製品としてのテープレス型のおむつを展開した平面図である。
【図24】図24(a)は、図23のX−X’切断線における横断面図、同図(b)は、図23のY−Y’切断線における縦断面図である。
【図25】図25は、本発明の実施形態に係る吸収体製品としてのテープレス型のおむつを展開した平面図である。
【図26】図26(a)は、図25のX−X’切断線における横断面図、同図(b)は、図25のY−Y’切断線における縦断面図である。
【図27】図27は、本発明の実施形態に係る吸収体製品としてのテープレス型のおむつを展開した平面図である。
【図28】図28(a)は、図27のX−X’切断線における横断面図、同図(b)は、図27のY−Y’切断線における縦断面図である。
【図29】図29(a)は、従来のテープレス型の吸収体製品の着用前の平面図であり、同図(b)はその着用時の変形状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0095】
1…側部
2…空隙部
5…ガイドスペーサ
10…クロッチ相対部
11…前部
12…後部
15…吸収体
16…防漏体としてのバックシート
17…側部伸縮帯
19…トップシート
20…アウターギャザー
21…インナーギャザー
25…変形ガイド板
40…吸収体製品としてのおむつ
50…吸収体製品としてのおむつ
54…液ガイドユニット
56…分離セパレータ
57…便受けシート
58…スキンコンタクトシート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の防漏体と前記防漏体の内面側に設けられた吸収体を備え、着用時に着用者の腹部に相対する前部と着用者のクロッチ部に相対するクロッチ相対部と着用者の背部に相対する後部において着用者の下半身に着用される吸収体製品において、
少なくとも着用時において、前記前部と前記後部を連絡する所定形状に折りたたみ賦型されたチャネル状の空隙部が前記クロッチ相対部に構成されることを特徴とする吸収体製品。
【請求項2】
前記空隙部が前記前部と前記後部を連通させる方向に対して交叉する面において前記クロッチ相対部を切断した場合における前記吸収体製品の形状が、
前記吸収体製品の内方に向けて凸形状とされた左右両側部の間において、前記空隙部の少なくとも前記前部側と前記後部側が前記吸収体製品の内方に向けて開放されている所定形状に成形されたことを特徴とする請求項1記載の吸収体製品。
【請求項3】
前記吸収体製品の前記クロッチ相対部が、着用前から予め前記所定形状に折りたたまれていることを特徴とする請求項2記載の吸収体製品。
【請求項4】
所定形状に折りたたみ賦型されたチャネル状の前記空隙部が、前記前部の前端から前記クロッチ相対部を経て前記後部の後端まで前記吸収体の全長に亘って連続した状態に構成されていることを特徴とする請求項3記載の吸収体製品。
【請求項5】
前記吸収体製品の前記クロッチ相対部が、着用前は前記所定形状が展開された状態にあり、着用時に前記所定形状に折りたたまれることを特徴とする請求項2記載の吸収体製品。
【請求項6】
前記クロッチ相対部の前記空隙部に、前記前部と前記後部を連通させるガイドスペーサを配してなる請求項1乃至5のいずれか一つに記載の吸収体製品。
【請求項7】
着用者の尿を前記クロッチ相対部の前記空隙部又は前記ガイドスペーサに導くガイドユニットを前記前部と前記クロッチ相対部の間に設けたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載の吸収体製品。
【請求項8】
前記ガイドユニットの前端部が前記前部に結合され、同後端部が前記クロッチ相対部に結合されて前記空隙部に相対していることを特徴とする請求項7に記載の吸収体製品。
【請求項9】
前記前部と前記クロッチ相対部と前記後部にある前記吸収体の両側部に設けられた一対の液漏れ防止用の側部伸縮帯の左右開口部の間隔が、少なくとも着用時において前記クロッチ相対部で折りたたまれた吸収体の横幅とほぼ同等に設定されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一つに記載の吸収体製品。
【請求項10】
前記一対の側部伸縮帯の前記間隔が前記前部に行くほど狭くなり、前記後部に行くほど広くなるように、前記一対の側部伸縮帯が、前記前部を上側とした平面視において前記前部を頂点とする逆V字形となるように配設されたことを特徴とする請求項9記載の吸収体製品。
【請求項11】
前記一対の側部伸縮帯の各前端部が前記前部において交叉して配設されることにより、前記一対の側部伸縮帯の各前端部と前記前部にある前記吸収体との間に、着用者の尿が流入するポケットが構成されることを特徴とする請求項10記載の吸収体製品。
【請求項12】
前記前部と前記後部の間に、着用者の尿を収容する前記前部と便を収容する前記後部とを分割する分離セパレーターを設けたことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一つに記載の吸収体製品。
【請求項13】
前記前部に尿通過専用の開口と前記後部に便通過専用の開口をそれぞれ設けたことを特徴とする請求項12記載の吸収体製品。
【請求項1】
シート状の防漏体と前記防漏体の内面側に設けられた吸収体を備え、着用時に着用者の腹部に相対する前部と着用者のクロッチ部に相対するクロッチ相対部と着用者の背部に相対する後部において着用者の下半身に着用される吸収体製品において、
少なくとも着用時において、前記前部と前記後部を連絡する所定形状に折りたたみ賦型されたチャネル状の空隙部が前記クロッチ相対部に構成されることを特徴とする吸収体製品。
【請求項2】
前記空隙部が前記前部と前記後部を連通させる方向に対して交叉する面において前記クロッチ相対部を切断した場合における前記吸収体製品の形状が、
前記吸収体製品の内方に向けて凸形状とされた左右両側部の間において、前記空隙部の少なくとも前記前部側と前記後部側が前記吸収体製品の内方に向けて開放されている所定形状に成形されたことを特徴とする請求項1記載の吸収体製品。
【請求項3】
前記吸収体製品の前記クロッチ相対部が、着用前から予め前記所定形状に折りたたまれていることを特徴とする請求項2記載の吸収体製品。
【請求項4】
所定形状に折りたたみ賦型されたチャネル状の前記空隙部が、前記前部の前端から前記クロッチ相対部を経て前記後部の後端まで前記吸収体の全長に亘って連続した状態に構成されていることを特徴とする請求項3記載の吸収体製品。
【請求項5】
前記吸収体製品の前記クロッチ相対部が、着用前は前記所定形状が展開された状態にあり、着用時に前記所定形状に折りたたまれることを特徴とする請求項2記載の吸収体製品。
【請求項6】
前記クロッチ相対部の前記空隙部に、前記前部と前記後部を連通させるガイドスペーサを配してなる請求項1乃至5のいずれか一つに記載の吸収体製品。
【請求項7】
着用者の尿を前記クロッチ相対部の前記空隙部又は前記ガイドスペーサに導くガイドユニットを前記前部と前記クロッチ相対部の間に設けたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載の吸収体製品。
【請求項8】
前記ガイドユニットの前端部が前記前部に結合され、同後端部が前記クロッチ相対部に結合されて前記空隙部に相対していることを特徴とする請求項7に記載の吸収体製品。
【請求項9】
前記前部と前記クロッチ相対部と前記後部にある前記吸収体の両側部に設けられた一対の液漏れ防止用の側部伸縮帯の左右開口部の間隔が、少なくとも着用時において前記クロッチ相対部で折りたたまれた吸収体の横幅とほぼ同等に設定されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一つに記載の吸収体製品。
【請求項10】
前記一対の側部伸縮帯の前記間隔が前記前部に行くほど狭くなり、前記後部に行くほど広くなるように、前記一対の側部伸縮帯が、前記前部を上側とした平面視において前記前部を頂点とする逆V字形となるように配設されたことを特徴とする請求項9記載の吸収体製品。
【請求項11】
前記一対の側部伸縮帯の各前端部が前記前部において交叉して配設されることにより、前記一対の側部伸縮帯の各前端部と前記前部にある前記吸収体との間に、着用者の尿が流入するポケットが構成されることを特徴とする請求項10記載の吸収体製品。
【請求項12】
前記前部と前記後部の間に、着用者の尿を収容する前記前部と便を収容する前記後部とを分割する分離セパレーターを設けたことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一つに記載の吸収体製品。
【請求項13】
前記前部に尿通過専用の開口と前記後部に便通過専用の開口をそれぞれ設けたことを特徴とする請求項12記載の吸収体製品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図11】
【図16】
【図17】
【図18】
【図22】
【図24】
【図25】
【図27】
【図29】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図19】
【図20】
【図21】
【図23】
【図26】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図11】
【図16】
【図17】
【図18】
【図22】
【図24】
【図25】
【図27】
【図29】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図19】
【図20】
【図21】
【図23】
【図26】
【図28】
【公開番号】特開2009−11455(P2009−11455A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−174375(P2007−174375)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(592034744)株式会社日本吸収体技術研究所 (28)
【出願人】(390036799)王子ネピア株式会社 (387)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(592034744)株式会社日本吸収体技術研究所 (28)
【出願人】(390036799)王子ネピア株式会社 (387)
【Fターム(参考)】
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