説明

吸収冷凍機

【目的】 モリブデン酸塩等の溶解度の低い腐蝕抑制剤を水溶液として自動的に添加でき、腐食抑制剤の濃度を適正範囲に保持できる吸収冷凍機を提供する。
【構成】 再生器G、吸収器A、蒸発器E、凝縮器C、及びそれらを連絡する溶液通路1〜4及び冷媒通路7〜9と溶液ポンプ5及び冷媒ポンプ6を有し、水を冷媒の主成分とし、吸収溶液に塩水溶液を用い、溶解度の低い腐蝕抑制剤を用いる吸収冷凍機において、腐蝕抑制剤の水溶液を保有する抑制剤タンク10を設け、該タンク10と溶液ポンプ吸込側の溶液通路1とを溶液弁12を有する溶液配管11で結び、前記腐食抑制剤の添加量又は添加速度を調整する機構13を設けたものであり、前記調整機構は、腐蝕抑制剤の単位時間当たりの添加量を設定し、その設定値に基づいて溶液配管中の溶液弁の開閉時間を制御するのがよい。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、吸収冷凍機に係り、特に、溶解度の低い腐蝕抑制剤を自動的に溶解して添加できる吸収冷凍機に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から吸収溶液にリチウム塩水溶液を用いる吸収冷凍機においては、装置の腐蝕が激しいため腐蝕抑制剤を添加して腐蝕防止をしていた。このような方法においては、腐蝕抑制剤を適正範囲に保持する必要がある。
【0003】腐蝕抑制剤として、モリブデン酸リウチムを用いた場合、吸収溶液への溶解度は200ppm程度であり、直接吸収溶液に溶かすのは大量の溶液に少量ずつ溶かすので多大な時間がかかり、困難である。また、吸収器の低部に直接腐蝕抑制剤を定置する方法が提案されているが(特開昭52−140049号公報)、この方法では、腐蝕抑制剤の濃度を制御することができず、停止時には沈殿が生成する恐れや、なくなった場合の検出ができなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来技術に鑑み、モリブデン酸塩等の溶解度の低い腐蝕抑制剤を水溶液として自動的に添加でき腐蝕抑制剤の濃度を適正範囲に保持できる吸収冷凍機を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明では、再生器、吸収器、蒸発器、凝縮器、及びそれらを連絡する溶液通路及び冷媒通路と溶液ポンプ及び冷媒ポンプを有し、水を冷媒の主成分とし、吸収溶液に塩水溶液を用い、溶解度の低い腐蝕抑制剤を用いる吸収冷凍機において、腐蝕抑制剤の水溶液を保有する抑制剤タンクを設け、該タンクと溶液ポンプ吸込側の溶液通路とを溶液弁を有する溶液配管で結び、前記腐蝕抑制剤の添加量又は添加速度を調整する機構を設けたものである。
【0006】前記吸収冷凍機において、腐蝕抑制剤の添加量又は添加速度の調整機構は、腐蝕抑制剤の単位時間当たりの添加量を設定し、その設定値に基づいて、溶液配管中の溶液弁の開閉時間を、例えば1sec開/分のように制御する機構であるのがよい。また、前記溶液配管中の溶液弁は、冷凍機運転中で溶液ポンプが運転中のみ開閉し、それ以外は閉とする機構を有するのがよい。
【0007】さらに、運転開始する場合で防蝕皮膜ができていない状態から運転する場合は、当初添加速度を大きくして運転時間と共に順次低下するような制御機構、例えば、熱源を再生器に加えている運転時間と共に、添加速度を順次低下、又は再生器温度が所定の温度を越えている運転時間と共に、添加速度を順次低下のように制御するのがよい。
【0008】このように、本発明では、冷凍機内の腐蝕抑制剤の減少に従って、腐蝕抑制剤を追加するために水溶液で添加して冷凍機内の腐蝕抑制剤の濃度を所定の範囲に保持するものである。そして、このように所定の範囲に腐蝕抑制剤を保持するために、冷凍機の操作盤のROMに、添加速度あるいは添加速度に相当するスケジュール値又は設定値を記憶する領域を設け、これに基づいて添加速度を制御することもできる。また、本発明は、吸収冷凍機として説明したが、冷凍機以外にも、水を冷媒として、吸収溶液に塩水溶液を用いて冷熱を得る方式の吸収式の冷暖房機、冷温水機等にも適用でき、これらも本発明に含まれることは当然のことである。
【0009】
【作用】腐蝕抑制剤のモリブデン酸リチウムは、水に対して、常温では、300g/リットル以上の溶解度があるので、モリブデン酸リチウム水溶液としておき、これを冷凍機の溶液に注入する方法により容易に添加できる。ただし、一度に大量に加えると、モリブデン酸リチウムが沈殿してくるので、少量ずつ加えるのが好ましい。本発明では、少量ずつ、長時間かけて加えている。
【0010】また、基本的には、溶液が流動しているときでないと、長時間かけても析出、沈殿してしまうので、溶液ポンプ運転中に添加する。温度が高い方が、溶解度が高いので、熱源を加えながら運転しているときに、添加し、よく拡散させるのがよい。図2に、運転時間とモリブデン酸リチウム減少率の関係を示す。このように、冷凍機は、初期運転時の鋼材表面に四三酸化鉄の皮膜ができるまでは、多量の腐蝕抑制剤を消耗する。その後、次第に消耗量がすくなくなっていく。しかし、腐蝕抑制剤の溶解度が小さいため、最初に大量に抑制剤を入れておくことができないので、この消耗量に見合うように腐蝕抑制剤を添加していくのが望ましい。
【0011】そして、ある程度時間がたつと、四三酸化鉄皮膜の補修に消耗される程度になり、ほぼ一定量の消耗量となってくるのであるが、冷凍機の経歴、例えば空気が入ったことがあるかどうか、極端に、腐蝕抑制剤の無い状態で運転したか、吸収剤の結晶事故をおこしたことがあるかどうかによって、同一設計、同一サイズの冷凍機であっても消耗量にはバラツキがある。そこで、機械毎に、その後の消耗量の概略消耗量を設定しておくと、抑制剤濃度を所定濃度からあまり離さずに、運転することができる。このように、概略設定でほぼ一定濃度として、過不足は、1年に一回程度、マニュアルで調整するのがよい。
【0012】
【実施例】以下、本発明を図面を用いて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1図1は本発明の吸収冷凍機の一例を示す概略構成図である。図1において、Eは蒸発器、Aは吸収器、Gは再生器、Cは凝縮器、Hsは溶液熱交換器、1〜4は溶液通路、5は溶液ポンプ、6は冷媒ポンプ、7〜9は冷媒通路である。
【0013】そして、本発明においては、腐蝕抑制剤の水溶液を入れる抑制剤タンク10を設け、該タンク10と溶液通路1とを溶液弁12を有する溶液配管11で接続し、溶液弁12は制御盤13で抑制され、添加速度が調整される構成となっている。また、抑制剤タンク10の上部と蒸発器Eとを弁15を有するバランス管14で接続して、該タンク内の圧力を調整するのがよい。さらに、図1において、蒸発器Eには、冷水配管16が、吸収器A、凝縮器Cには、冷却水配管18が通っており、再生器Gには蒸気加熱配管19が、また、再生器Gから吸収器Aにはオーバーフロー管17が設けられている。
【0014】そして、この吸収冷凍機の運転において、冷媒を吸収した希溶液は、吸収器Aから管1を通り、ポンプ5により、溶液熱交換器Hsの被加熱側を通り、再生器Gに導入される。再生器Gでは加熱蒸気19により加熱され、希溶液から冷媒が蒸発して濃縮された溶液が管3を通って、溶液熱交換器の加熱側を通り、吸収器Aに戻され、冷媒を吸収する。
【0015】一方、蒸発した冷媒は、凝縮器Cで冷却水により冷却されて凝縮され、管7から蒸発器Eに入る。蒸発器Eでは冷媒が冷媒ポンプ6により管8と9を通り循環されて蒸発し、その際に蒸発熱を負荷側の冷水16から奪い、冷水16を冷却し、冷房に供される。このような冷房運転において、本発明では、制御盤13からの指令により、溶液弁12を開閉させることにより、抑制剤タンク10から腐蝕抑制剤の水溶液を溶液通路1から溶液中に添加し補充している。
【0016】
【発明の効果】本発明によれば、溶解度の低い腐蝕抑制剤を水溶液として、継続的に添加でき、その添加量又は添加速度を制御する調整機構により、冷凍機内の腐蝕抑制剤の濃度を一定濃度に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の吸収冷凍機の一例を示す概略構成図。
【図2】運転時間とモリブデン酸リチウムの減少率の関係を示すグラフ。
【符号の説明】
E:蒸発器、A:吸収器、G:再生器、C:凝縮器、Hs:溶液熱交換器、1〜4:溶液通路、5:溶液ポンプ、6:冷媒ポンプ、7〜9:冷媒通路、10:抑制剤タンク、11:溶液配管、12:溶液弁、13:制御盤、14:バランス管、15:バランス弁、16:冷水配管、17:オーバーフロー管、18:冷却水配管、19:蒸気加熱管

【特許請求の範囲】
【請求項1】 再生器、吸収器、蒸発器、凝縮器、及びそれらを連絡する溶液通路及び冷媒通路と溶液ポンプ及び冷媒ポンプを有し、水を冷媒の主成分とし、吸収溶液に塩水溶液を用い、溶解度の低い腐蝕抑制剤を用いる吸収冷凍機において、腐蝕抑制剤の水溶液を保有する抑制剤タンクを設け、該タンクと溶液ポンプ吸込側の溶液通路とを溶液弁を有する溶液配管で結び、該腐蝕抑制剤の添加量又は添加速度を調整する機構を設けたことを特徴とする吸収冷凍機。
【請求項2】 前記腐蝕抑制剤の添加量又は添加速度の調整機構は、腐蝕抑制剤の単位時間当たりの添加量を設定し、その設定値に基づいて溶液配管中の溶液弁の開閉時間を制御する機構であることを特徴とする請求項1記載の吸収冷凍機。
【請求項3】 前記溶液配管中の溶液弁は、冷凍機運転中で溶液ポンプが運転中以外は閉とする機構を有することを特徴とする請求項1又は2記載の吸収冷凍機。
【請求項4】 前記腐蝕抑制剤の添加量又は添加速度の調整機構は、運転時間と共に順次低下するように制御する機構であることを特徴とする請求項1又は2記載の吸収冷凍機。
【請求項5】 前記腐蝕抑制剤の添加量又は添加速度の制御機構は、再生器溶液温度が所定の温度を超えている運転時間と共に順次低下するように制御する機構であることを特徴とする請求項1又は2記載の吸収冷凍機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開平7−139841
【公開日】平成7年(1995)6月2日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−307101
【出願日】平成5年(1993)11月15日
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)