吸収性物品
【課題】使用時においては、排泄物の肌への液戻りを抑えることにより快適な使用感を有し、使用後においては、吸収性物品の経血等による汚染を視覚的に目立たないように遮蔽しうる吸収性物品を提供する。
【解決手段】表面シート、裏面シート、及び両シートに介在された吸収体を有する吸収性物品であって、前記表面シートは、不織布からなり、該不織布を構成する繊維同士が接触する交点には融着した融着部を有し、前記不織布の融着部付近にインク集合部が形成されており、肌当接面側からの平面視、前記インク集合部が少なくとも排泄部領域に散在している吸収性物品。
【解決手段】表面シート、裏面シート、及び両シートに介在された吸収体を有する吸収性物品であって、前記表面シートは、不織布からなり、該不織布を構成する繊維同士が接触する交点には融着した融着部を有し、前記不織布の融着部付近にインク集合部が形成されており、肌当接面側からの平面視、前記インク集合部が少なくとも排泄部領域に散在している吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキンや使い捨ておむつ、失禁パンツ等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキンは、女性の経血やおりものなどを主に吸収することを目的とした物品であり、種々改良が重ねられている。その一例として生理用ナプキンに圧搾等により図柄を形成することや、特許文献1に示されたような2色以上のインクを使用した印刷によって吸収した排泄物を視覚的に遮蔽することなどの工夫が図られている。他方、生理用ナプキン等はその基本性能である液吸収保持機能はもとより、極めて高い防漏性や穿き心地、さらには快適性までもが求められるようになってきている。かかる生理用ナプキン等の機能と上述したデザインとを同時に満足するものはまだない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005−512682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生理用ナプキン等の吸収性物品において着用者の着用時の快適さはこの種の製品において重要である。前記快適さについては、使用時における快適さが良好であることはもとよりその使用後においても廃棄する際に不快感を感じさせないことが望ましい。例えば一般的に生理用ナプキン等の使用後においては経血やおりものなど(以下、単に経血等という)が前記生理用ナプキンの肌当接面側に付着しており、使用済みの物品を廃棄する際にはこれら経血等による汚染が目につく。
上記の視点から、本発明は、使用時においては、排泄物の肌への液戻りを抑えることにより快適な使用感を有し、使用後においては、吸収性物品の経血等による汚染を視覚的に目立たないように遮蔽しうる吸収性物品の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、肌当接面側に配置される表面シート、非肌当接面側に配置される裏面シート、及び両シートに介在された吸収体を有する吸収性物品であって、前記表面シートは、不織布からなり、該不織布を構成する繊維同士が接触する交点には融着した融着部を有し、前記不織布の融着部付近にインク集合部が形成されており、肌当接面側からの平面視で、前記インク集合部が少なくとも排泄部領域に散在している吸収性物品を提供することにより、前記課題を達成したものである。
【0006】
また本発明は、肌当接面側に液透過性の表面シート、非肌当接面側に裏面シート、両シート間に吸収体が配置され、さらに前記表面シート若しくは前記裏面シートと前記吸収体との間、又は両方のシートそれぞれと前記吸収体との間に不織布からなる中間シートが配置され、該中間シートを構成する繊維同士が接触する交点には融着した融着部を有し、該不織布の融着部付近にインク集合部が形成されており、肌当接面側からの平面視、前記インク集合部が少なくとも排泄部領域に散在している吸収性物品を提供することにより、前記課題を達成したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の吸収性物品は、使用時においては、排泄物の肌への液戻りを抑えることにより快適な使用感を有し、使用後においては、前記吸収性物品に排泄された経血等を視覚的に遮蔽状態で廃棄できるという優れた作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明における生理用ナプキンの一実施形態としての生理用ナプキンを伸長した状態で肌当接面方向から示した一部切欠斜視図である。
【図2】図1に示すII−II線断面の断面図である。
【図3】図3(a)は本実施形態の生理用ナプキンの印刷領域Qに経血等を吸収した直後の状態を説明するためのモデル化した部分拡大断面図であり、(b)及び(c)は、インク集合部が形成される融着部付近の例として示す模式図である。
【図4】本発明における別の実施形態(実施形態2)としての印刷領域と表面シートとの関係を模式的に示した平面図である。
【図5】本発明における別の実施形態(実施形態3)としての印刷領域と表面シートとの関係を模式的に示した平面図である。
【図6】本発明における別の実施形態(実施形態4)としての印刷領域と表面シートとの関係を模式的に示した平面図である。
【図7】本発明における別の実施形態(実施形態5)としての印刷領域と表面シートとの関係を模式的に示した平面図である。
【図8】中間シートを有する生理用ナプキンの、図2に相当する一部拡大断面図である。
【図9】中間シートを有する別の生理用ナプキンの、図2に相当する一部拡大断面図である。
【図10】中間シートを有するさらに別のナプキンの、図2に相当する一部拡大断面図である。
【図11】中間シートを有するさらに別のナプキンの、図2に相当する一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の吸収性物品を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態としての生理用ナプキン100を肌当接面方向から示した一部切欠斜視図である。図2は図1に示すII−II線断面の断面図である。
本実施形態の生理用ナプキン100は、裏面シート2の肌当接面側に、吸収体3が配設されている。さらにその裏面シート2の肌当接面側における前記吸収体3の長手方向両側部外方ではサイドシート8が裏面シート2に当接して接合されている。その裏面シートとサイドシートとが当接した部分では表面シート1が裏面シート2とサイドシート8とで挟持され、さらにその幅方向(X方向)内方向に向け表面シート1が吸収体3よりも肌当接面側に位置されるように配され吸収性本体10を成す。吸収性本体10における裏面シート2が吸収体3の周縁外方で周縁シールgによって表面シート1及びサイドシート8と接合されている。吸収性本体10の長手方向側縁において、ウイングシート4が表面シート1と裏面シート2とで挟持、固定されている。吸収性本体10の肌面側では、サイドシート8の自由端81から周縁シールgに向けてポケットpが形成され、液等の横モレを防ぐ作用を奏する。
【0010】
生理用ナプキン100の肌当接面側には、表面シート1の肌当接面側から吸収体3にかけて圧搾した防漏溝5が施されている。防漏溝5は、吸収体3の長手方向中央部分において、排泄部領域を中心に幅方向左右両側に配置され、前記2本の防漏溝5は吸収体3の前後端に近づくにつれ、徐々に吸収体3の中央方向に向かい湾曲し、前端、後端が一致している。すなわち、防漏溝5は平面視において無端環状に連続した形状である。なお、防漏溝5の形状は特に限定されず、本実施形態において防漏溝5は前端、後端が一致して無端環状に連続しているが、前端、後端で互いに交差していてもよく、用途に合わせ適宜決められることが好ましい。なお、排泄部領域とは膣口からの経血等を受けて吸収する部分及びその近傍である。ショーツの股下部で折り返し固定するためのウイングがついている場合は一般にウイングのある領域に排泄部領域が対応する。この生理用ナプキン100においては、前記排泄部領域は長手方向の中央部Cにあたる。
本発明においては、特に断らない限り、人体に接触する側を肌面側ないし肌当接面側あるいは表面側といい、下着に接する側を非肌面側ないし非肌当接面側あるいは裏面側という。また、装着時に人体の前側に位置する方向を前方といいその端部を前端部とし、後側に位置する方向を後方といいその端部を後端部として説明する。生理用ナプキンの表面又は裏面の法線方向を厚み方向といいその量を厚さという。さらに生理用ナプキンの平面視において相対的に長さのある方向を長手方向といい、この長手方向と直交する方向を幅方向という。前記長手方向は典型的には装着状態において人体の前後方向と一致する。
【0011】
上記表面シート1、裏面シート2、サイドシート8、ウイングシート4及び吸収体3の材料等に関する詳細は後述するが、本実施形態において表面シート1は、経血等を速やかに透過させ、吸収体に吸収する観点と、肌触りのよさの観点から親水性のエアスルー不織布を用いている。この不織布としては、疎水性の繊維素材を親水化処理したものを用いることが好ましい。また、裏面シート2としては、通気性を有した透湿性フィルムを単層で用いている。吸収体3としてはパルプ繊維や吸収性ポリマー等で構成された吸収コア(図示せず)を、ウイングシート4としては透湿性フィルムを単層で用い、また、裏面シート2及びウイングシート4の非肌当接面側には、生理用ナプキン100を着衣に固定するための粘着剤(図示せず)が塗布されている。該粘着剤によって、生理用ナプキン100が使用者の着衣に接着固定される。本実施形態の生理用ナプキン100は、その表面シート側を着用者の肌当接面に向け、かつ、その縦方向を下腹部から臀部にかけて配し、換言すればその幅方向を左右の足をつなぐラインの方向に向けて配して着用する。
【0012】
本実施形態の表面シート1には、その肌当接面側から視認できるよう印刷領域Qが配設されている。印刷領域Qは、その平面視において防漏溝5の内方、かつ、生理用ナプキン100の長手方向において排泄部領域である中央部Cに略楕円形に形成されている。この印刷領域Qは、所望の作用を考慮して適宜物品の形態等に応じて定められればよいが、生理用ナプキンとして機能的に使用することを考慮すると少なくとも着用者の排泄部領域近傍に配されていることが好ましい。このようにすることによって生理用ナプキンの正しい装着位置を認識する印としての機能を持たせることが可能であり、生理用ナプキンをより効果的に使用することができる。
【0013】
本発明において、印刷領域Qは、疎水性または油性の印刷インクが塗工され不織布内部の構成繊維同士の融着部13近傍に付着し乾燥して小さな塊となったインク集合部11を多数含んで構成されている。インク集合部11は、不織布の表面から所定深さまで厚み方向及び平面方向に散在するように立体配置されている。インク集合部11は後述の接触印刷によって形成されることが好ましく、該接触印刷によって形成されるインク集合部11においてインクは、不織布表面上にのみ存在するのでなく、該不織布の深さ方向にも分布している。前記接触印刷の詳細については後述するが、インク集合部11がこのような分布状態になっていると、不織布自体が有する良好な風合いが損なわれにくく、インクの脱落も起こりにくい。
【0014】
上述した印刷領域Qをさらに微視的に見て以下に説明する。インク集合部11は図3(b)及び(c)に示すように繊維12同士の融着部13やその付近に乾燥インクが溜まって存在したり、繊維12同士の微小間隙間を埋めるように乾燥インク溜まりが形成されたりしている。つまり印刷領域Qを構成する印刷したインクは、不織布の構成繊維の表面全体に均一に付着させないで繊維同士の融着部13にインク集合部11として状態で存在している。繊維同士が融着された融着部13においては、交点の動きが制約される為、繊維間の微小な空間が安定して保持される。そのため、この空間にインク集合部が付着した後、該融着部13で交差する繊維は動きが制約されることで、交点付近に形成されたインク集合部11のインクが分散されたりして隠蔽性や視認性がえられないという弊害を防止することができる。また、インク集合体11が他の部位に動いて肌を汚したりすることもない。このようなことから、形成されたあとも、安定してインク集合部11が維持されやすい。インク集合部11は、平面視散在させることで、少ないインク量で隠蔽性や図柄の視認性を確保することができる。インク使用量の抑制でさらにインクの肌への付着防止効果が高まる。
上記不織布を構成する繊維同士が接触する交点には融着した融着部13を有するが、インク集合部11は、融着部がある接合点近傍である融着部付近に形成される。このような構造によって不織布をその肌当接面側から見たときに不織布の厚み方向に沿ってインク集合部11同士の重なりが避けられ平面的に散在するようになる。つまり生理用ナプキン100の表面シート1の印刷領域Q部分を肌当接面側から見ると、表面シート1の下の吸収体3に吸収された経血等の色等の汚れが表面シート1の肌当接面側から見た時に平面的に散在している多数のインク集合部11によって視覚的に遮蔽される。したがって、生理用ナプキン使用後の廃棄時においても、経血等の色等が直接的に視認されることがなくなり、使用前と同じ外観の物品として処理することができる。なお、上述した排泄物の色を視覚的に遮蔽するインク集合部11の色は特に限定されないが、好ましくは経血等の、遮蔽対象とするものに対し同系統の色を用いることが好ましい。
【0015】
インク集合部11が形成される融着部13付近とは、前述のとおり、例えば繊維同士の融着部13付近(図3(b)参照)、複数の融着部13からなる微小隙間部(図3(c)参照)である。通常、これらの繊維同士の融着部13付近はインクに限らず液体が溜りやすい部分である。ナプキン等の吸収性物品においては、前記繊維同士の融着部13付近は、排泄液や粘着剤等の溜る可能性のある部分でもある。通常このような小さな液溜りは、液を透過させ難い撥水性の不織布においても、液を繊維内部に拡散させる基点ともなり得る。本発明においては、この部分を疎水性または油性インクからなるインク集合部11で予め埋めてしまうことで、不織布内部の液残りを生じ難くさせることができ、表面シート1側への液戻りを効果的に抑制することができる。
本発明において、インク集合部11の個々のサイズはインクの粘性などにより異なるが、微細なものである。微細で印象の良い着色や模様、図柄の形成と後述の液残り抑制との両立のために、インク集合部11の平均的な大きさ(平面視における面積の円相当径)としては、50〜500μmが好ましく、100〜300μmがさらに好ましい。このインク集合部11の大きさとは、インク集合部11が配設されている繊維交点等の繊維間の大きさであり、電子顕微鏡(JEOL製JCS−5100使用)の拡大画像(100〜200倍)によりインキ部分の特定(二値化)後に円相当径を求める画像解析処理の方法により測定することができる。また、このインク集合部は表面シート1の上部に存在させるが、好ましくは表面シート1の厚みの15〜60%、より好ましくは20〜50%の範囲である。
【0016】
ここで図3を参照して、インク集合部11と液の移行との関係について説明する。図3(a)は本実施形態の生理用ナプキンの表面シート1の印刷領域Qに経血等の排泄がなされた直後の状態を説明するためのモデル化した断面図であり、(b)及び(c)は、インク集合部が形成される繊維同士の融着部付近の例として示す模式図である。図3(a)においては、表面シート1以外の部材については図の煩雑化を避け図示しておらず、上側が肌当接面側であり、下側が非肌当接面側である。なお、インク集合部の形状については模式化して示しており、本発明の実施において必ずしも図示したものと同一の形状にならなくともよい。
【0017】
生理用ナプキン100において、着用者の身体から排泄された経血等は表面シート1の肌当接面側に当接すると、その毛管力によって生理用ナプキン100の厚み方向、すなわち非肌当接面側に排泄液mが移行方向tに移行する。繊維間同士の多数の交点を融着して形成される表面シート1の不織布は繊維間の微小な隙間が多数存在している。
通常、不織布は様々な隙間を有する構造体であり、この隙間を通って液が拡散・移動するが、400〜500μm以下の微小な繊維間の隙間に排泄液mが入り込むとそこから液を移行させようとしても微小な繊維間による毛管力により液はその隙間に留まった状態(液残り)で維持されやすい。この液残りが表面シート1の肌当接面側に存在すると、その部分において湿度が上昇したり、ムレが発生したりする。これは着用者にとって不快感を与え、過度になれば肌のかぶれや雑菌の増殖などを助長することもあり、衛生的に望ましくない。
これに対し、本実施形態における表面シート1の肌当接面側には接触印刷によって上記のように多数のインク集合部11が形成されている。前記インク集合部11は上述したように繊維12同士の微小間隙間を埋めるようにインク集合部が形成されている。インク集合部11が予め繊維12同士の微小隙間を既に埋めていることによって、インク集合部11の疎水性のインクが作用し排泄液mをその微小隙間に滞留させない。この微小隙間以外の部分の繊維間の毛管力が、排泄液mをt方向へ停滞なく透過させるように働き、経血等を吸収体3へと送る。これにより排泄液mが吸収体3に確実に吸収保持され得るので、表面シート1の液残りが効果的に抑えられ、肌に適度なドライ感を付与することができる。また、インク集合部11が表面シート1の肌面から所定深さのところまで配されているので、例え液残りが生じてもインク集合部11よりも吸収体3側に残ることとなる。これにより、液は表面シート1の肌当接面側より、より遠い位置に留まり液戻りし難くなる。また液残りした液はインク集合部11よりも非肌面側にあることで、表面シート1の肌当接面側からは隠蔽されることとなる。本実施形態の生理用ナプキン100は、上述したように使用時においては、排泄物の肌への液戻りを抑えることにより快適な使用感を有し、使用後においては、印刷領域Qに施されたインク集合部の排泄物を視覚的に遮蔽する効果によって快適に生理用ナプキンを廃棄することができるという優れた作用効果を有する。
【0018】
本実施形態による表面シート1の素材は特に限定されないが、程よい遮蔽性と液戻り防止性とを考慮すると、不織布の坪量及び不織布密度が低く、かつ、圧縮初期のつぶれやすさが良好な不織布を用いることが好ましく、LC値は0.4〜0.8であることが好ましい。また、インク集合部11を形成するためには、不織布の印刷時の一時的な圧縮のつぶれからの厚みの戻りやすさを示すRC値/WC値は0.5〜1が好ましく、0.7〜0.9がさらに好ましい。また、好ましい不織布密度は0.02〜0.1g/cm3が好ましく、0.03〜0.08g/cm3であることがさらに好ましい。なお、本実施形態におけるLC値、WC値、RC値とは、KES(Kawabata Evaluation System)に従い測定された圧縮荷重―圧縮歪み曲線の直線性であるLC値、圧縮仕事量WC値、圧縮レジリエンス値(圧縮解放時の仕事量)RC値を尺度とする。KESにおいて、LC値は、圧縮仕事量WCを、ToとTm間の圧縮変形量と圧縮荷重Pにより得られる三角形の面積で除して計算される無次元数である。
【0019】
LC値、WC値、RC値の測定は、カトーテック社製のKES−G5「ハンディ圧縮試験機」(商標名)のハンディ圧縮計測プログラムを用いて測定される。具体的な測定条件は次のとおりである。すなわち、試料:布・フィルム、SENS:2、力計の種類:1kg、SPEED RANGE:0.02cm/sec、DEF感度:20、加圧面積:2cm2、測定荷重:5.0に設定することで最大圧縮荷重50gf/cm2、標準温湿度条件(23℃/50%RH)にておこなう。
【0020】
印刷領域Qの好ましい寸法は、ナプキンの大きさなどの仕様等によって変わるので一義的に定めることはできないが、通常の生理用ナプキンにおける利用を考慮すると、中央部Cの長手方向における長さは50〜100mmが好ましく、60〜80mmがより好ましい。腹側部Fの長手方向長さは80〜150mmが好ましく、100〜130mmが更に好ましい。背側部Rの長手方向長さは80〜250mmが好ましく、120〜230mmが更に好ましい。また、その長手方向における比率(腹側部F:中央部C:背側部R)は中央部Cを1としたときは、1.0〜1.5:1:1.2〜4が好ましく、1.1〜1.3:1:1.3〜2.5であることが更に好ましい。
【0021】
図4は本発明における別の実施形態(実施形態2)としての印刷領域Qと表面シート1との関係を模式的に示した平面図である。印刷領域Qの配置以外は第1実施形態にて示した形態と同じであり、裏面シート2、防漏溝5、羽根状シート4、吸収体3及びサイドシート8は図示しておらず、印刷領域Qは1点鎖線で示した。本実施形態において印刷領域Qは表面シート1の非肌当接面側に接触印刷が施されている。すなわち、インク集合部11は表面シート1の非肌当接面側に点在しており、このようにすると、吸収体3に吸収された排泄液の肌面への液戻りが効果的に抑えられる。
【0022】
図5は本発明における別の実施形態(実施形態3)としての印刷領域Qと表面シート1との関係を模式的に示した平面図である。印刷領域Qの配置以外は第1実施形態にて示した形態と同じであり、裏面シート2、防漏溝5、羽根状シート4、吸収体3及びサイドシート8は図示していない。本実施形態において印刷領域Qは表面シート1の肌当接面側に接触印刷が施された肌面印刷領域Q1と非肌当接面側に接触印刷が施された非肌面印刷領域Q2とに区画されている。それぞれ肌面印刷領域Q1は1点鎖線で示し、非肌面印刷領域Q2は2点鎖線で示されている。本実施形態において肌面印刷領域Q1と非肌面印刷領域Q2とは平面視において生理用ナプキンの長手方向前後にその領域が配され、このようにすると、液が排泄され直接接触する領域Q1での液の遮蔽性が高くなされ、吸収体で吸収拡散され液戻りにより吸収体側から液が接触する領域Q2での液戻りが抑制され易い。
【0023】
図6は本発明における別の実施形態(実施形態4)としての印刷領域Qと表面シート1との関係を模式的に示した平面図である。印刷領域Qの配置以外は第1実施形態にて示した形態と同じであり、裏面シート2、防漏溝5、羽根状シート4、吸収体3及びサイドシート8は図示していない。本実施形態において印刷領域Qは表面シート1の肌当接面側に接触印刷が施された肌面印刷領域Q1と非肌当接面側に接触印刷が施された非肌面印刷領域Q2とに区画されている。それぞれ肌面印刷領域Q1は1点鎖線で示し、非肌面印刷領域Q2は2点鎖線で示されている。本実施形態において肌面印刷領域Q1と非肌面印刷領域Q2とは生理用ナプキンの中央部分に施され、平面視において肌面印刷領域Q1の内方に非肌面印刷領域Q2が配され、このようにすると、中央での遮蔽性に加え、拡散した液の液戻りを抑え易い。また、領域Q2に防漏溝が形成されていると、(防漏溝によって留められ)防漏溝に沿って広がった液の液戻りを防止し易い。
【0024】
図7は本発明における別の実施形態(実施形態5)としての印刷領域Qと表面シート1との関係を模式的に示した平面図である。印刷領域Qの配置以外は第1実施形態にて示した形態と同じであり、裏面シート2、防漏溝5、羽根状シート4、吸収体3及びサイドシート8は図示していない。本実施形態において印刷領域Qは表面シート1の肌当接面側に接触印刷が施された肌面印刷領域Q1と非肌当接面側に接触印刷が施された非肌面印刷領域Q2とに区画されている。それぞれ肌面印刷領域Q1は1点鎖線で示し、非肌面印刷領域Q2は2点鎖線で示されている。本実施形態において印刷領域Qは、生理用ナプキンの幅方向にみて肌面印刷領域Q1及び非肌面印刷領域Q2、Q2に区分されており、このようにすると、中央での遮蔽性に加え、拡散し側方に達した液のモレを抑え易い。
【0025】
本発明の吸収性物品において、インク集合部からなる印刷領域Qは上記の実施形態に制限されるものではなく、形状やその配置を利用する環境や条件に合わせ適宜定められることが好ましい。印刷領域Qを施す部材は、表面シート1に限らず、表面シート1下に配される不織布からなる液拡散シートであってもよい。液拡散シートとは、表面シート1から透過される液を素早く引き込んで拡散させて吸収体3内部へと導く機能を担う部材を広く含む意味である。例えば、該液拡散シートとして、吸収体3の外表面となってパルプ繊維等の吸収性コアを被覆するコアラップシートや、表面シート1と吸収体3との間又は裏面シート2と吸収体3との間などに介在配置される中間シートなどが挙げられる。
【0026】
上記液拡散シートとしての中間シートは、例えば図8〜9に示されるものが挙げられる。これらの図は、図2に相当するナプキンの厚み断面の一部を拡大して示す一部拡大断面図である。図8に示す生理用ナプキン200においては、中間シート21が吸収体3と表面シート1との間に配されている。中間シート21は、表面シート1及び吸収体3と平面で当接して広い範囲で表面シート1側の液を吸収体3へと引き渡す。この中間シート21にインク集合部11が形成されることで、前述の実施形態で示した表面シート1と同様に液をできるだけ残さずに液戻りを抑制するよう効果的に作用する。なお、中間シート21は単層であってもよく、2層以上の複数層からなってもよい。また、吸収体もこの種の物品に用いられるものを適宜作用することができ、例えは、パルプ繊維と吸収性ポリマーの混合積繊体、シート状の吸収体、ブロック状の小吸収部が平面方向に分散配置された吸収体などが挙げられる。
【0027】
図9、10及び11は、吸収体3が複数の小吸収部30からなる場合の中間シートの配置を示している。図9(a)の生理用ナプキン300では、中間シート22が吸収体3と表面シート1との間に配置され、吸収体3を構成する各小吸収部30と接合されている。中間シート22は、表面シート1にある液を平面で引き込み、空間部40に沿って小吸収部30に吸収保持させる機能を有する。図9(b)の生理用ナプキン400では、中間シート23が吸収体3と裏面シート2との間に配置され、吸収体3を構成する各小吸収部30と接合されている。中間シート23は、経血等の粘性の高い排泄液を小吸収部30間の空間部40から取り込んで表面シート1から遠い位置で平面方向に液を拡散させる機能を有する。図10及び11の生理用ナプキン500〜800の一部拡大断面図においては、図9に示す中間シート22及び23の組合わせ例を示し、この組合わされた複数の中間シートも中間シート22及び23と同様に表面シート1から液を平面で引き込んで拡散させる機能を担う。
上述の中間シート22及び23は、いずれも液を表面シート1から平面で強く引き込んで確実に小吸収部30で吸収保持させる。これらのシートに前述のインク集合部11が配されることで、該シート自体の液残りを抑えて液のより効果的な引き込みや拡散が得られる。また小吸収部30のない空間部40と接する部分で中間シートに経血の赤みなどが残っても、インク集合部11による遮蔽性で表面シート1から見え難くなる。
【0028】
以上のとおり、本発明において、液拡散シートが不織布からなり、不織布の繊維交点の融着部付近にインク集合部11が形成されることで繊維間の微小隙間の液残りが抑制されて、液はこれよりも相対的に大きな繊維間に引き込まれ易くなる。この液拡散シートによって、表面シート1側の液が積極的に厚み方向に引き込まれて素早く拡散し吸収体3へと引き渡たされ得る。また、たとえ液拡散シートに液残りがあったとしても、インク集合部11による遮蔽性で表面シート1からの経血の赤みなど排泄物の視認性が抑えられる。
本発明においては、液残りとそれによる液戻りを効果的に抑制し、排泄物の隠蔽性を高める観点から、表面シート1又は液拡散シートのいずれか、あるいは両方のシート部材にインク集合部11が配設されることが好ましい。インク集合部11を配置する範囲は、排泄部領域のみでもよく、排泄部領域から前後端に及んで前記実施形態2〜5の配置としてもよい。また、表面シート1と液拡散シートとでインク集合部の配置を変えたものとすることもできる。
【0029】
また、本発明における遮蔽性と液戻り防止性については、以下の方法により計測できる。
【0030】
遮蔽性の評価には、日本電色工業(株)の簡易型分光色差計NF−333を使用した。簡易型分光色差計NF333の設定は、ステープラータイプにてφ4mmのND110センサーを取り付けておき、該センサーの先端部にはOリング(小)を用い、光源C/2、視野角2°でL*値を計測する。表面シートの肌当接面側にセンサーを配し、非肌当接面側には2種の標準着色板を配して計測する(3回計測)。白標準板(L値100)による計測値(平均)L*Wと、赤標準板(L値0〜20)による計測値L*Rを計測し、(1)により相対的な遮蔽性を評価する。得られる値が高いほど遮蔽性が高い。
式(1) (L*W−L*R)/(100−L*W)
なお、相対的な遮蔽性は、表面シートによる吸収体の排泄液による色変化(白から赤への変化)の遮蔽性を示すもので、変化量が少ないほど高い値となるため、印刷が施された表面シートはされていない表面シートに比べ値が高く、印刷の有無や印刷濃度、印刷された色調等が異なるものを評価できる。
【0031】
液戻り防止性は、吸収体の液が表面シートの肌当接面にまで達した液量を計測する事で評価する。日本製紙クレシア製ペーパータオル(商品名キムタオルホワイト、4つ折り)を2つ折りとして、約195×80mmの大きさ(重さ約9.5g)で吸収体として用い、イオン交換水 gを(液を10g程度保持できる筒状構造と10mm径の注入孔を有する160×60mmの大きさの)注入プレートより吸収させ、液注入3分後に表面シートと表面シートの肌側面に2つ折とした(上記吸収体と同じ)ペーパータオルを重ねて、一片50mmの正方形プレート(アクリル製)と重りによる20g/cm2の荷重を30秒かけて、ペーパータオルの加重前後の重量差を計測する。重量差が少ないほど液戻り性が良いと判断できる。
【0032】
裏面シート2は、透湿性フィルム単独、非透湿性フィルム単独、又はフィルムと不織布の貼り合わせ、撥水性の不織布(SMSやSMMS等)を用いることができる。コスト面やズレ止め粘着剤とのマッチングなどから、透湿フィルム単独を防漏材として用いることが最も好ましい。この場合のフィルム材としては、熱可塑性樹脂と、これと相溶性のない無機フィラーを溶融混練して押し出したフィルムを所定の寸法に延伸して微細孔をあけたフィルム、または、本質的に水分の相溶性が高く、浸透膜のように水蒸気排出可能な無孔性のフィルムが挙げられる。本発明に関わる湿度排出の性能を十分に発現し、かつ、水分のにじみ出しがない防漏層を具現化するには、透湿度は、0.7〜3.0g/100cm2hrの範囲にあることが好ましく、1.0〜2.5の範囲にあることが更に好ましい。さらっと感を十分に高める観点からは1.5〜2.5にあることが最も好ましい。また、フィルムの破れ等のトラブルなく使用可能であるためには、フィルム坪量は18〜70g/m2、より好ましくは25〜60g/m2である。また好ましい無機フィラー配合量は、フィルム全体の質量に対するフィラーの質量%として30〜65質量%、より好ましくは40〜60質量%である。
【0033】
吸収体3は、フラッフパルプと高吸収性ポリマー粒子との混合物、または、フラッフパルプと高吸収性ポリマー粒子と熱可塑性合成樹脂繊維との混合物であり、所要の厚みに圧縮されている。コア20は、その型崩れやポリマー粒子の脱落を防ぐため、その全体がティッシュペーパーや親水性繊維不織布等の透液性シートに被覆されていることが好ましい。ポリマー粒子としては、デンプン系、セルロース系、合成ポリマー系のものを使用することができる。
【0034】
本発明における表面シート1及び前記中間シートなどの液拡散シートは、例えば不織布の製造方法や、不織布の構成繊維を適切に選択することで得ることができる。不織布の製造方法に関しては、低坪量及び低密度で、かつ、圧縮初期のつぶれやすさが良好な不織布を製造できる方法を採用することが好ましい。そのような製造方法としては、例えばエアスルー法、エアレイド法等が挙げられるが、これらの方法に限定されない。エアスルー法においては、ステープルファイバを原料として用い、これをカード機に供給して繊維の絡み合いによるウエブを形成し、該ウエブに貫通方式で熱風を吹き付けて、構成繊維の交点を熱融着させる。エアレイド法においては、短繊維を空気流に搬送させ、捕集コンベア上に堆積させることでエアレイドウエブを形成し、該ウエブの構成繊維間を熱や接着剤によって結合する。エアレイドで用いる繊維の長さはエアスルー法より短く、不織布構造が剛直になりやすいため、同じ熱風による製法の後に後処理として、金属、ゴム、コットン等のロールによる圧縮処理により、不織布の柔軟化を施す。また、前述の後処理による不織布強度低下を抑えるため、繊維交点における融着にラテックスバインダーを使用することが好ましい。
【0035】
不織布の構成繊維としては、例えば各種の熱可塑性樹脂から構成される単独の又は複合の熱融着性繊維を用いることが好ましい。この場合、繊維の太さは、上述のLC値を容易に満たすようにする観点から、1.5〜5.5dtex、特に2〜4.4dtexに設定することが好ましい。また、該熱融着繊維として、高融点樹脂からなる第1樹脂成分と、低融点樹脂からなる第2樹脂成分とを含み、第2樹脂成分が繊維表面の少なくとも一部を長さ方向に連続して存在している複合繊維を用いることも好ましい。
【0036】
不織布の構成繊維の具体例としては、単一樹脂の繊維として、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、ポリアミド6や、ポリアミド66等のポリアミド繊維、ポリ乳酸系繊維等の疎水性単一合成繊維が挙げられる。多成分系の複合繊維としては、芯鞘構造繊維における鞘側の低融点成分としてポリエチレン樹脂を用い、芯側にポリエチレンデレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド6や、ポリアミド66等のポリアミド樹脂、ポリ乳酸樹脂等の疎水性複合合成繊維を用いた芯鞘構造繊維が挙げられる。
【0037】
不織布は、上記した繊維を一種含む単独繊維から構成されていてもよく、あるいは二種以上の繊維をブレンドしたものであってもよいが、融着交点の形成の点から芯鞘構造繊維を40〜100質量%用いる事が好ましく、不織布の嵩高さの点から芯成分または単独繊維としてのポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂又はポリ乳酸樹脂等の樹脂量が、不織布において20〜60質量%である事が好ましい。また、上述した繊維を一種以上含む繊維層を複数層重ねて一体化したものであってもよい。更に不織布には、熱融着性繊維以外の繊維として、パルプやレーヨン等の天然系繊維を、融着形成を阻害しない程度(例えば不織布の30質量%まで)含めてもよい。
【0038】
不織布の厚みは、該不織布の坪量及び不織布密度が先に述べた範囲内であることを条件として、0.5〜5.0mm、特に0.8〜4.0mmであることが好ましい。これによって、不織布を十分に嵩高にすることが可能になる。なお、不織布の厚みは、(株)キーエンス製のマイクロスコープVHX−1000または先に述べたKES−G5「ハンディ圧縮試験機」を用い、荷重0.5gf/cm2の条件に測定される。
【0039】
本実施形態における接触印刷は、印刷時に不織布を厚み方向に圧縮して一時的な高密度状態を作り出し、その状態下にインクを施している。この状態においては、繊維交点の融着によって作り出される繊維間の隙間以外に、厚み的に異なっている繊維も介在して小さな繊維間の隙間を多く作り出せる。このことに起因して、インクは繊維上及びこの繊維隙間のうち比較的小さな部分を埋めるように付着する。不織布は、繊維交点が融着した繊維によるネットワーク構造を形成していることから上述のLC値を有しているので、低密度状態から高密度状態への変形が容易であり、印刷工程を通して安定した高密度状態を形成する。その後の圧縮状態の開放によって、不織布は略元の繊維構造に戻る。その場合、一時的に作り出された繊維間の隙間では、隙間の消失によって、付着したインクのうち、繊維表面に固定できない量が繊維交点に移動し、インク濃度の高い部分を作り出す。このようにして、インク集合部が、不織布の外面にのみ存在するだけでなく、該不織布の深さ方向にも分布するようになる。
【0040】
上述したように、LC値からは、圧縮における圧縮初期のつぶれやすさ(追従性)が評価でき、不織布がつぶれにくく高密度状態が安定するLC値は0.4以上であり、高密度状態が作り出しやすいLC値は0.8以下となっている。また、LC値がこの数値内であることは、不織布のネットワーク構造が均一的に作り出されていることが分かる等、印刷における総合的な値となっている。一方、同様にKES−G5を用いたKESによる評価からは、圧縮仕事量であるWC値や圧縮レジリエンスであるRC値を得ることができ、接触印刷によって形成された印刷部を有する不織布のWC値が0.8〜2gf・cm/cm2であり、RC値が50〜80%であると、印刷工程における部分的な適応性に優れている。印刷時の加圧によってもインクが不織布を通り抜けてしまわない程度の厚みが得られるのは、前記不織布のWC値が好ましくは0.8gf・cm/cm2以上であり、高密度状態が安定、かつ、容易に得られる前記不織布のWC値は2gf・cm/cm2以下である。インクの(分散による)固定が良好となる前記不織布のRC値は50%以上であり、高密度状態が安定する前記不織布のRC値は80%以下である。WC値はより好ましくは、1〜1.5gfcm/cm2であり、RC値は好ましくは55〜65%である。
【0041】
インク集合部11は単色のインクから構成されていてもよく、あるいは多色のインクから構成されていてもよい。インクが単色及び多色のいずれの場合であっても、一のインクに注目した場合、そのインクが濃淡印刷されていてもよい。上述した不織布の圧縮及びその解放によるインクの移動を好適なものとするためには、使用する印刷インクとしては、例えば水性や油性等の媒体系インク、紫外線硬化型等の硬化型インクなどを用いることができる。また、着色材を含まないクリアインクを着色インク適用前に不織布へ貼着し、繊維の隙間埋めや繊維隙間をより狭くした後に、着色インクの塗布を実施して、インクの固定性を一層向上させることもできる。また、ドット状にインクを点着するスクリーン印刷では、ドットの大きさや位置を制御することで、複数種のインクを塗布することができるので、マルチ印刷に対応することができる。更に、繊維表面に、インクと異なる性質を発現する界面活性剤や油剤を付与し、インクの移動性を制御するようにしてもよい(例えば、油性インクに対して親水性活性剤を繊維表面に付着させて、界面活性剤量によってインクの移動性を制御する等)。
【0042】
上述の各種のインクを用いた接触印刷法としては、例えば凸版印刷、平版印刷、孔版印刷等を採用することができる。これらの印刷法を行う場合には、接触印刷によって形成された印刷部を有する不織布のLC値が上述の範囲内であることを条件として、該不織布における印刷部形成のための不織布へ加えられる圧力(印刷圧力)が、不織布の厚みを30〜60%、特に40〜50%圧縮する条件下に印刷部が形成されるようにすることが、上述した不織布の圧縮及びその解放によるインクの移動を好適なものとする観点から好ましい。
【0043】
本発明の吸収性物品は、上記の実施形態に制限されるものではなく、この種の生理用ナプキン、例えば失禁パッド、失禁ライナ等に本発明を適応することができる。また、経血に限らずその他、尿、オリモノ、軟便等に対しても効果的である。また、表面シート1、吸収体3、裏面シート2及びサイドシート8の他にも用途や機能に合わせ適宜部材を組み込んでもよい。なお、上記実施形態の生理用ナプキンの表面シート1、吸収体3及び裏面シート2の材料、製法における条件や、製品の寸法諸言は特に限定されず、通常の生理用ナプキン等において用いられている各種材料を用いることができる。なお、「羽根」と同義で、「ウイング」や「フラップ」と表現することもある。
【符号の説明】
【0044】
1 表面シート
11 インク集合部
12 繊維
2 裏面シート
3 吸収体
4 羽根状シート
8 サイドシート
10 吸収性本体
100 生理用ナプキン
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキンや使い捨ておむつ、失禁パンツ等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキンは、女性の経血やおりものなどを主に吸収することを目的とした物品であり、種々改良が重ねられている。その一例として生理用ナプキンに圧搾等により図柄を形成することや、特許文献1に示されたような2色以上のインクを使用した印刷によって吸収した排泄物を視覚的に遮蔽することなどの工夫が図られている。他方、生理用ナプキン等はその基本性能である液吸収保持機能はもとより、極めて高い防漏性や穿き心地、さらには快適性までもが求められるようになってきている。かかる生理用ナプキン等の機能と上述したデザインとを同時に満足するものはまだない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005−512682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生理用ナプキン等の吸収性物品において着用者の着用時の快適さはこの種の製品において重要である。前記快適さについては、使用時における快適さが良好であることはもとよりその使用後においても廃棄する際に不快感を感じさせないことが望ましい。例えば一般的に生理用ナプキン等の使用後においては経血やおりものなど(以下、単に経血等という)が前記生理用ナプキンの肌当接面側に付着しており、使用済みの物品を廃棄する際にはこれら経血等による汚染が目につく。
上記の視点から、本発明は、使用時においては、排泄物の肌への液戻りを抑えることにより快適な使用感を有し、使用後においては、吸収性物品の経血等による汚染を視覚的に目立たないように遮蔽しうる吸収性物品の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、肌当接面側に配置される表面シート、非肌当接面側に配置される裏面シート、及び両シートに介在された吸収体を有する吸収性物品であって、前記表面シートは、不織布からなり、該不織布を構成する繊維同士が接触する交点には融着した融着部を有し、前記不織布の融着部付近にインク集合部が形成されており、肌当接面側からの平面視で、前記インク集合部が少なくとも排泄部領域に散在している吸収性物品を提供することにより、前記課題を達成したものである。
【0006】
また本発明は、肌当接面側に液透過性の表面シート、非肌当接面側に裏面シート、両シート間に吸収体が配置され、さらに前記表面シート若しくは前記裏面シートと前記吸収体との間、又は両方のシートそれぞれと前記吸収体との間に不織布からなる中間シートが配置され、該中間シートを構成する繊維同士が接触する交点には融着した融着部を有し、該不織布の融着部付近にインク集合部が形成されており、肌当接面側からの平面視、前記インク集合部が少なくとも排泄部領域に散在している吸収性物品を提供することにより、前記課題を達成したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の吸収性物品は、使用時においては、排泄物の肌への液戻りを抑えることにより快適な使用感を有し、使用後においては、前記吸収性物品に排泄された経血等を視覚的に遮蔽状態で廃棄できるという優れた作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明における生理用ナプキンの一実施形態としての生理用ナプキンを伸長した状態で肌当接面方向から示した一部切欠斜視図である。
【図2】図1に示すII−II線断面の断面図である。
【図3】図3(a)は本実施形態の生理用ナプキンの印刷領域Qに経血等を吸収した直後の状態を説明するためのモデル化した部分拡大断面図であり、(b)及び(c)は、インク集合部が形成される融着部付近の例として示す模式図である。
【図4】本発明における別の実施形態(実施形態2)としての印刷領域と表面シートとの関係を模式的に示した平面図である。
【図5】本発明における別の実施形態(実施形態3)としての印刷領域と表面シートとの関係を模式的に示した平面図である。
【図6】本発明における別の実施形態(実施形態4)としての印刷領域と表面シートとの関係を模式的に示した平面図である。
【図7】本発明における別の実施形態(実施形態5)としての印刷領域と表面シートとの関係を模式的に示した平面図である。
【図8】中間シートを有する生理用ナプキンの、図2に相当する一部拡大断面図である。
【図9】中間シートを有する別の生理用ナプキンの、図2に相当する一部拡大断面図である。
【図10】中間シートを有するさらに別のナプキンの、図2に相当する一部拡大断面図である。
【図11】中間シートを有するさらに別のナプキンの、図2に相当する一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の吸収性物品を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態としての生理用ナプキン100を肌当接面方向から示した一部切欠斜視図である。図2は図1に示すII−II線断面の断面図である。
本実施形態の生理用ナプキン100は、裏面シート2の肌当接面側に、吸収体3が配設されている。さらにその裏面シート2の肌当接面側における前記吸収体3の長手方向両側部外方ではサイドシート8が裏面シート2に当接して接合されている。その裏面シートとサイドシートとが当接した部分では表面シート1が裏面シート2とサイドシート8とで挟持され、さらにその幅方向(X方向)内方向に向け表面シート1が吸収体3よりも肌当接面側に位置されるように配され吸収性本体10を成す。吸収性本体10における裏面シート2が吸収体3の周縁外方で周縁シールgによって表面シート1及びサイドシート8と接合されている。吸収性本体10の長手方向側縁において、ウイングシート4が表面シート1と裏面シート2とで挟持、固定されている。吸収性本体10の肌面側では、サイドシート8の自由端81から周縁シールgに向けてポケットpが形成され、液等の横モレを防ぐ作用を奏する。
【0010】
生理用ナプキン100の肌当接面側には、表面シート1の肌当接面側から吸収体3にかけて圧搾した防漏溝5が施されている。防漏溝5は、吸収体3の長手方向中央部分において、排泄部領域を中心に幅方向左右両側に配置され、前記2本の防漏溝5は吸収体3の前後端に近づくにつれ、徐々に吸収体3の中央方向に向かい湾曲し、前端、後端が一致している。すなわち、防漏溝5は平面視において無端環状に連続した形状である。なお、防漏溝5の形状は特に限定されず、本実施形態において防漏溝5は前端、後端が一致して無端環状に連続しているが、前端、後端で互いに交差していてもよく、用途に合わせ適宜決められることが好ましい。なお、排泄部領域とは膣口からの経血等を受けて吸収する部分及びその近傍である。ショーツの股下部で折り返し固定するためのウイングがついている場合は一般にウイングのある領域に排泄部領域が対応する。この生理用ナプキン100においては、前記排泄部領域は長手方向の中央部Cにあたる。
本発明においては、特に断らない限り、人体に接触する側を肌面側ないし肌当接面側あるいは表面側といい、下着に接する側を非肌面側ないし非肌当接面側あるいは裏面側という。また、装着時に人体の前側に位置する方向を前方といいその端部を前端部とし、後側に位置する方向を後方といいその端部を後端部として説明する。生理用ナプキンの表面又は裏面の法線方向を厚み方向といいその量を厚さという。さらに生理用ナプキンの平面視において相対的に長さのある方向を長手方向といい、この長手方向と直交する方向を幅方向という。前記長手方向は典型的には装着状態において人体の前後方向と一致する。
【0011】
上記表面シート1、裏面シート2、サイドシート8、ウイングシート4及び吸収体3の材料等に関する詳細は後述するが、本実施形態において表面シート1は、経血等を速やかに透過させ、吸収体に吸収する観点と、肌触りのよさの観点から親水性のエアスルー不織布を用いている。この不織布としては、疎水性の繊維素材を親水化処理したものを用いることが好ましい。また、裏面シート2としては、通気性を有した透湿性フィルムを単層で用いている。吸収体3としてはパルプ繊維や吸収性ポリマー等で構成された吸収コア(図示せず)を、ウイングシート4としては透湿性フィルムを単層で用い、また、裏面シート2及びウイングシート4の非肌当接面側には、生理用ナプキン100を着衣に固定するための粘着剤(図示せず)が塗布されている。該粘着剤によって、生理用ナプキン100が使用者の着衣に接着固定される。本実施形態の生理用ナプキン100は、その表面シート側を着用者の肌当接面に向け、かつ、その縦方向を下腹部から臀部にかけて配し、換言すればその幅方向を左右の足をつなぐラインの方向に向けて配して着用する。
【0012】
本実施形態の表面シート1には、その肌当接面側から視認できるよう印刷領域Qが配設されている。印刷領域Qは、その平面視において防漏溝5の内方、かつ、生理用ナプキン100の長手方向において排泄部領域である中央部Cに略楕円形に形成されている。この印刷領域Qは、所望の作用を考慮して適宜物品の形態等に応じて定められればよいが、生理用ナプキンとして機能的に使用することを考慮すると少なくとも着用者の排泄部領域近傍に配されていることが好ましい。このようにすることによって生理用ナプキンの正しい装着位置を認識する印としての機能を持たせることが可能であり、生理用ナプキンをより効果的に使用することができる。
【0013】
本発明において、印刷領域Qは、疎水性または油性の印刷インクが塗工され不織布内部の構成繊維同士の融着部13近傍に付着し乾燥して小さな塊となったインク集合部11を多数含んで構成されている。インク集合部11は、不織布の表面から所定深さまで厚み方向及び平面方向に散在するように立体配置されている。インク集合部11は後述の接触印刷によって形成されることが好ましく、該接触印刷によって形成されるインク集合部11においてインクは、不織布表面上にのみ存在するのでなく、該不織布の深さ方向にも分布している。前記接触印刷の詳細については後述するが、インク集合部11がこのような分布状態になっていると、不織布自体が有する良好な風合いが損なわれにくく、インクの脱落も起こりにくい。
【0014】
上述した印刷領域Qをさらに微視的に見て以下に説明する。インク集合部11は図3(b)及び(c)に示すように繊維12同士の融着部13やその付近に乾燥インクが溜まって存在したり、繊維12同士の微小間隙間を埋めるように乾燥インク溜まりが形成されたりしている。つまり印刷領域Qを構成する印刷したインクは、不織布の構成繊維の表面全体に均一に付着させないで繊維同士の融着部13にインク集合部11として状態で存在している。繊維同士が融着された融着部13においては、交点の動きが制約される為、繊維間の微小な空間が安定して保持される。そのため、この空間にインク集合部が付着した後、該融着部13で交差する繊維は動きが制約されることで、交点付近に形成されたインク集合部11のインクが分散されたりして隠蔽性や視認性がえられないという弊害を防止することができる。また、インク集合体11が他の部位に動いて肌を汚したりすることもない。このようなことから、形成されたあとも、安定してインク集合部11が維持されやすい。インク集合部11は、平面視散在させることで、少ないインク量で隠蔽性や図柄の視認性を確保することができる。インク使用量の抑制でさらにインクの肌への付着防止効果が高まる。
上記不織布を構成する繊維同士が接触する交点には融着した融着部13を有するが、インク集合部11は、融着部がある接合点近傍である融着部付近に形成される。このような構造によって不織布をその肌当接面側から見たときに不織布の厚み方向に沿ってインク集合部11同士の重なりが避けられ平面的に散在するようになる。つまり生理用ナプキン100の表面シート1の印刷領域Q部分を肌当接面側から見ると、表面シート1の下の吸収体3に吸収された経血等の色等の汚れが表面シート1の肌当接面側から見た時に平面的に散在している多数のインク集合部11によって視覚的に遮蔽される。したがって、生理用ナプキン使用後の廃棄時においても、経血等の色等が直接的に視認されることがなくなり、使用前と同じ外観の物品として処理することができる。なお、上述した排泄物の色を視覚的に遮蔽するインク集合部11の色は特に限定されないが、好ましくは経血等の、遮蔽対象とするものに対し同系統の色を用いることが好ましい。
【0015】
インク集合部11が形成される融着部13付近とは、前述のとおり、例えば繊維同士の融着部13付近(図3(b)参照)、複数の融着部13からなる微小隙間部(図3(c)参照)である。通常、これらの繊維同士の融着部13付近はインクに限らず液体が溜りやすい部分である。ナプキン等の吸収性物品においては、前記繊維同士の融着部13付近は、排泄液や粘着剤等の溜る可能性のある部分でもある。通常このような小さな液溜りは、液を透過させ難い撥水性の不織布においても、液を繊維内部に拡散させる基点ともなり得る。本発明においては、この部分を疎水性または油性インクからなるインク集合部11で予め埋めてしまうことで、不織布内部の液残りを生じ難くさせることができ、表面シート1側への液戻りを効果的に抑制することができる。
本発明において、インク集合部11の個々のサイズはインクの粘性などにより異なるが、微細なものである。微細で印象の良い着色や模様、図柄の形成と後述の液残り抑制との両立のために、インク集合部11の平均的な大きさ(平面視における面積の円相当径)としては、50〜500μmが好ましく、100〜300μmがさらに好ましい。このインク集合部11の大きさとは、インク集合部11が配設されている繊維交点等の繊維間の大きさであり、電子顕微鏡(JEOL製JCS−5100使用)の拡大画像(100〜200倍)によりインキ部分の特定(二値化)後に円相当径を求める画像解析処理の方法により測定することができる。また、このインク集合部は表面シート1の上部に存在させるが、好ましくは表面シート1の厚みの15〜60%、より好ましくは20〜50%の範囲である。
【0016】
ここで図3を参照して、インク集合部11と液の移行との関係について説明する。図3(a)は本実施形態の生理用ナプキンの表面シート1の印刷領域Qに経血等の排泄がなされた直後の状態を説明するためのモデル化した断面図であり、(b)及び(c)は、インク集合部が形成される繊維同士の融着部付近の例として示す模式図である。図3(a)においては、表面シート1以外の部材については図の煩雑化を避け図示しておらず、上側が肌当接面側であり、下側が非肌当接面側である。なお、インク集合部の形状については模式化して示しており、本発明の実施において必ずしも図示したものと同一の形状にならなくともよい。
【0017】
生理用ナプキン100において、着用者の身体から排泄された経血等は表面シート1の肌当接面側に当接すると、その毛管力によって生理用ナプキン100の厚み方向、すなわち非肌当接面側に排泄液mが移行方向tに移行する。繊維間同士の多数の交点を融着して形成される表面シート1の不織布は繊維間の微小な隙間が多数存在している。
通常、不織布は様々な隙間を有する構造体であり、この隙間を通って液が拡散・移動するが、400〜500μm以下の微小な繊維間の隙間に排泄液mが入り込むとそこから液を移行させようとしても微小な繊維間による毛管力により液はその隙間に留まった状態(液残り)で維持されやすい。この液残りが表面シート1の肌当接面側に存在すると、その部分において湿度が上昇したり、ムレが発生したりする。これは着用者にとって不快感を与え、過度になれば肌のかぶれや雑菌の増殖などを助長することもあり、衛生的に望ましくない。
これに対し、本実施形態における表面シート1の肌当接面側には接触印刷によって上記のように多数のインク集合部11が形成されている。前記インク集合部11は上述したように繊維12同士の微小間隙間を埋めるようにインク集合部が形成されている。インク集合部11が予め繊維12同士の微小隙間を既に埋めていることによって、インク集合部11の疎水性のインクが作用し排泄液mをその微小隙間に滞留させない。この微小隙間以外の部分の繊維間の毛管力が、排泄液mをt方向へ停滞なく透過させるように働き、経血等を吸収体3へと送る。これにより排泄液mが吸収体3に確実に吸収保持され得るので、表面シート1の液残りが効果的に抑えられ、肌に適度なドライ感を付与することができる。また、インク集合部11が表面シート1の肌面から所定深さのところまで配されているので、例え液残りが生じてもインク集合部11よりも吸収体3側に残ることとなる。これにより、液は表面シート1の肌当接面側より、より遠い位置に留まり液戻りし難くなる。また液残りした液はインク集合部11よりも非肌面側にあることで、表面シート1の肌当接面側からは隠蔽されることとなる。本実施形態の生理用ナプキン100は、上述したように使用時においては、排泄物の肌への液戻りを抑えることにより快適な使用感を有し、使用後においては、印刷領域Qに施されたインク集合部の排泄物を視覚的に遮蔽する効果によって快適に生理用ナプキンを廃棄することができるという優れた作用効果を有する。
【0018】
本実施形態による表面シート1の素材は特に限定されないが、程よい遮蔽性と液戻り防止性とを考慮すると、不織布の坪量及び不織布密度が低く、かつ、圧縮初期のつぶれやすさが良好な不織布を用いることが好ましく、LC値は0.4〜0.8であることが好ましい。また、インク集合部11を形成するためには、不織布の印刷時の一時的な圧縮のつぶれからの厚みの戻りやすさを示すRC値/WC値は0.5〜1が好ましく、0.7〜0.9がさらに好ましい。また、好ましい不織布密度は0.02〜0.1g/cm3が好ましく、0.03〜0.08g/cm3であることがさらに好ましい。なお、本実施形態におけるLC値、WC値、RC値とは、KES(Kawabata Evaluation System)に従い測定された圧縮荷重―圧縮歪み曲線の直線性であるLC値、圧縮仕事量WC値、圧縮レジリエンス値(圧縮解放時の仕事量)RC値を尺度とする。KESにおいて、LC値は、圧縮仕事量WCを、ToとTm間の圧縮変形量と圧縮荷重Pにより得られる三角形の面積で除して計算される無次元数である。
【0019】
LC値、WC値、RC値の測定は、カトーテック社製のKES−G5「ハンディ圧縮試験機」(商標名)のハンディ圧縮計測プログラムを用いて測定される。具体的な測定条件は次のとおりである。すなわち、試料:布・フィルム、SENS:2、力計の種類:1kg、SPEED RANGE:0.02cm/sec、DEF感度:20、加圧面積:2cm2、測定荷重:5.0に設定することで最大圧縮荷重50gf/cm2、標準温湿度条件(23℃/50%RH)にておこなう。
【0020】
印刷領域Qの好ましい寸法は、ナプキンの大きさなどの仕様等によって変わるので一義的に定めることはできないが、通常の生理用ナプキンにおける利用を考慮すると、中央部Cの長手方向における長さは50〜100mmが好ましく、60〜80mmがより好ましい。腹側部Fの長手方向長さは80〜150mmが好ましく、100〜130mmが更に好ましい。背側部Rの長手方向長さは80〜250mmが好ましく、120〜230mmが更に好ましい。また、その長手方向における比率(腹側部F:中央部C:背側部R)は中央部Cを1としたときは、1.0〜1.5:1:1.2〜4が好ましく、1.1〜1.3:1:1.3〜2.5であることが更に好ましい。
【0021】
図4は本発明における別の実施形態(実施形態2)としての印刷領域Qと表面シート1との関係を模式的に示した平面図である。印刷領域Qの配置以外は第1実施形態にて示した形態と同じであり、裏面シート2、防漏溝5、羽根状シート4、吸収体3及びサイドシート8は図示しておらず、印刷領域Qは1点鎖線で示した。本実施形態において印刷領域Qは表面シート1の非肌当接面側に接触印刷が施されている。すなわち、インク集合部11は表面シート1の非肌当接面側に点在しており、このようにすると、吸収体3に吸収された排泄液の肌面への液戻りが効果的に抑えられる。
【0022】
図5は本発明における別の実施形態(実施形態3)としての印刷領域Qと表面シート1との関係を模式的に示した平面図である。印刷領域Qの配置以外は第1実施形態にて示した形態と同じであり、裏面シート2、防漏溝5、羽根状シート4、吸収体3及びサイドシート8は図示していない。本実施形態において印刷領域Qは表面シート1の肌当接面側に接触印刷が施された肌面印刷領域Q1と非肌当接面側に接触印刷が施された非肌面印刷領域Q2とに区画されている。それぞれ肌面印刷領域Q1は1点鎖線で示し、非肌面印刷領域Q2は2点鎖線で示されている。本実施形態において肌面印刷領域Q1と非肌面印刷領域Q2とは平面視において生理用ナプキンの長手方向前後にその領域が配され、このようにすると、液が排泄され直接接触する領域Q1での液の遮蔽性が高くなされ、吸収体で吸収拡散され液戻りにより吸収体側から液が接触する領域Q2での液戻りが抑制され易い。
【0023】
図6は本発明における別の実施形態(実施形態4)としての印刷領域Qと表面シート1との関係を模式的に示した平面図である。印刷領域Qの配置以外は第1実施形態にて示した形態と同じであり、裏面シート2、防漏溝5、羽根状シート4、吸収体3及びサイドシート8は図示していない。本実施形態において印刷領域Qは表面シート1の肌当接面側に接触印刷が施された肌面印刷領域Q1と非肌当接面側に接触印刷が施された非肌面印刷領域Q2とに区画されている。それぞれ肌面印刷領域Q1は1点鎖線で示し、非肌面印刷領域Q2は2点鎖線で示されている。本実施形態において肌面印刷領域Q1と非肌面印刷領域Q2とは生理用ナプキンの中央部分に施され、平面視において肌面印刷領域Q1の内方に非肌面印刷領域Q2が配され、このようにすると、中央での遮蔽性に加え、拡散した液の液戻りを抑え易い。また、領域Q2に防漏溝が形成されていると、(防漏溝によって留められ)防漏溝に沿って広がった液の液戻りを防止し易い。
【0024】
図7は本発明における別の実施形態(実施形態5)としての印刷領域Qと表面シート1との関係を模式的に示した平面図である。印刷領域Qの配置以外は第1実施形態にて示した形態と同じであり、裏面シート2、防漏溝5、羽根状シート4、吸収体3及びサイドシート8は図示していない。本実施形態において印刷領域Qは表面シート1の肌当接面側に接触印刷が施された肌面印刷領域Q1と非肌当接面側に接触印刷が施された非肌面印刷領域Q2とに区画されている。それぞれ肌面印刷領域Q1は1点鎖線で示し、非肌面印刷領域Q2は2点鎖線で示されている。本実施形態において印刷領域Qは、生理用ナプキンの幅方向にみて肌面印刷領域Q1及び非肌面印刷領域Q2、Q2に区分されており、このようにすると、中央での遮蔽性に加え、拡散し側方に達した液のモレを抑え易い。
【0025】
本発明の吸収性物品において、インク集合部からなる印刷領域Qは上記の実施形態に制限されるものではなく、形状やその配置を利用する環境や条件に合わせ適宜定められることが好ましい。印刷領域Qを施す部材は、表面シート1に限らず、表面シート1下に配される不織布からなる液拡散シートであってもよい。液拡散シートとは、表面シート1から透過される液を素早く引き込んで拡散させて吸収体3内部へと導く機能を担う部材を広く含む意味である。例えば、該液拡散シートとして、吸収体3の外表面となってパルプ繊維等の吸収性コアを被覆するコアラップシートや、表面シート1と吸収体3との間又は裏面シート2と吸収体3との間などに介在配置される中間シートなどが挙げられる。
【0026】
上記液拡散シートとしての中間シートは、例えば図8〜9に示されるものが挙げられる。これらの図は、図2に相当するナプキンの厚み断面の一部を拡大して示す一部拡大断面図である。図8に示す生理用ナプキン200においては、中間シート21が吸収体3と表面シート1との間に配されている。中間シート21は、表面シート1及び吸収体3と平面で当接して広い範囲で表面シート1側の液を吸収体3へと引き渡す。この中間シート21にインク集合部11が形成されることで、前述の実施形態で示した表面シート1と同様に液をできるだけ残さずに液戻りを抑制するよう効果的に作用する。なお、中間シート21は単層であってもよく、2層以上の複数層からなってもよい。また、吸収体もこの種の物品に用いられるものを適宜作用することができ、例えは、パルプ繊維と吸収性ポリマーの混合積繊体、シート状の吸収体、ブロック状の小吸収部が平面方向に分散配置された吸収体などが挙げられる。
【0027】
図9、10及び11は、吸収体3が複数の小吸収部30からなる場合の中間シートの配置を示している。図9(a)の生理用ナプキン300では、中間シート22が吸収体3と表面シート1との間に配置され、吸収体3を構成する各小吸収部30と接合されている。中間シート22は、表面シート1にある液を平面で引き込み、空間部40に沿って小吸収部30に吸収保持させる機能を有する。図9(b)の生理用ナプキン400では、中間シート23が吸収体3と裏面シート2との間に配置され、吸収体3を構成する各小吸収部30と接合されている。中間シート23は、経血等の粘性の高い排泄液を小吸収部30間の空間部40から取り込んで表面シート1から遠い位置で平面方向に液を拡散させる機能を有する。図10及び11の生理用ナプキン500〜800の一部拡大断面図においては、図9に示す中間シート22及び23の組合わせ例を示し、この組合わされた複数の中間シートも中間シート22及び23と同様に表面シート1から液を平面で引き込んで拡散させる機能を担う。
上述の中間シート22及び23は、いずれも液を表面シート1から平面で強く引き込んで確実に小吸収部30で吸収保持させる。これらのシートに前述のインク集合部11が配されることで、該シート自体の液残りを抑えて液のより効果的な引き込みや拡散が得られる。また小吸収部30のない空間部40と接する部分で中間シートに経血の赤みなどが残っても、インク集合部11による遮蔽性で表面シート1から見え難くなる。
【0028】
以上のとおり、本発明において、液拡散シートが不織布からなり、不織布の繊維交点の融着部付近にインク集合部11が形成されることで繊維間の微小隙間の液残りが抑制されて、液はこれよりも相対的に大きな繊維間に引き込まれ易くなる。この液拡散シートによって、表面シート1側の液が積極的に厚み方向に引き込まれて素早く拡散し吸収体3へと引き渡たされ得る。また、たとえ液拡散シートに液残りがあったとしても、インク集合部11による遮蔽性で表面シート1からの経血の赤みなど排泄物の視認性が抑えられる。
本発明においては、液残りとそれによる液戻りを効果的に抑制し、排泄物の隠蔽性を高める観点から、表面シート1又は液拡散シートのいずれか、あるいは両方のシート部材にインク集合部11が配設されることが好ましい。インク集合部11を配置する範囲は、排泄部領域のみでもよく、排泄部領域から前後端に及んで前記実施形態2〜5の配置としてもよい。また、表面シート1と液拡散シートとでインク集合部の配置を変えたものとすることもできる。
【0029】
また、本発明における遮蔽性と液戻り防止性については、以下の方法により計測できる。
【0030】
遮蔽性の評価には、日本電色工業(株)の簡易型分光色差計NF−333を使用した。簡易型分光色差計NF333の設定は、ステープラータイプにてφ4mmのND110センサーを取り付けておき、該センサーの先端部にはOリング(小)を用い、光源C/2、視野角2°でL*値を計測する。表面シートの肌当接面側にセンサーを配し、非肌当接面側には2種の標準着色板を配して計測する(3回計測)。白標準板(L値100)による計測値(平均)L*Wと、赤標準板(L値0〜20)による計測値L*Rを計測し、(1)により相対的な遮蔽性を評価する。得られる値が高いほど遮蔽性が高い。
式(1) (L*W−L*R)/(100−L*W)
なお、相対的な遮蔽性は、表面シートによる吸収体の排泄液による色変化(白から赤への変化)の遮蔽性を示すもので、変化量が少ないほど高い値となるため、印刷が施された表面シートはされていない表面シートに比べ値が高く、印刷の有無や印刷濃度、印刷された色調等が異なるものを評価できる。
【0031】
液戻り防止性は、吸収体の液が表面シートの肌当接面にまで達した液量を計測する事で評価する。日本製紙クレシア製ペーパータオル(商品名キムタオルホワイト、4つ折り)を2つ折りとして、約195×80mmの大きさ(重さ約9.5g)で吸収体として用い、イオン交換水 gを(液を10g程度保持できる筒状構造と10mm径の注入孔を有する160×60mmの大きさの)注入プレートより吸収させ、液注入3分後に表面シートと表面シートの肌側面に2つ折とした(上記吸収体と同じ)ペーパータオルを重ねて、一片50mmの正方形プレート(アクリル製)と重りによる20g/cm2の荷重を30秒かけて、ペーパータオルの加重前後の重量差を計測する。重量差が少ないほど液戻り性が良いと判断できる。
【0032】
裏面シート2は、透湿性フィルム単独、非透湿性フィルム単独、又はフィルムと不織布の貼り合わせ、撥水性の不織布(SMSやSMMS等)を用いることができる。コスト面やズレ止め粘着剤とのマッチングなどから、透湿フィルム単独を防漏材として用いることが最も好ましい。この場合のフィルム材としては、熱可塑性樹脂と、これと相溶性のない無機フィラーを溶融混練して押し出したフィルムを所定の寸法に延伸して微細孔をあけたフィルム、または、本質的に水分の相溶性が高く、浸透膜のように水蒸気排出可能な無孔性のフィルムが挙げられる。本発明に関わる湿度排出の性能を十分に発現し、かつ、水分のにじみ出しがない防漏層を具現化するには、透湿度は、0.7〜3.0g/100cm2hrの範囲にあることが好ましく、1.0〜2.5の範囲にあることが更に好ましい。さらっと感を十分に高める観点からは1.5〜2.5にあることが最も好ましい。また、フィルムの破れ等のトラブルなく使用可能であるためには、フィルム坪量は18〜70g/m2、より好ましくは25〜60g/m2である。また好ましい無機フィラー配合量は、フィルム全体の質量に対するフィラーの質量%として30〜65質量%、より好ましくは40〜60質量%である。
【0033】
吸収体3は、フラッフパルプと高吸収性ポリマー粒子との混合物、または、フラッフパルプと高吸収性ポリマー粒子と熱可塑性合成樹脂繊維との混合物であり、所要の厚みに圧縮されている。コア20は、その型崩れやポリマー粒子の脱落を防ぐため、その全体がティッシュペーパーや親水性繊維不織布等の透液性シートに被覆されていることが好ましい。ポリマー粒子としては、デンプン系、セルロース系、合成ポリマー系のものを使用することができる。
【0034】
本発明における表面シート1及び前記中間シートなどの液拡散シートは、例えば不織布の製造方法や、不織布の構成繊維を適切に選択することで得ることができる。不織布の製造方法に関しては、低坪量及び低密度で、かつ、圧縮初期のつぶれやすさが良好な不織布を製造できる方法を採用することが好ましい。そのような製造方法としては、例えばエアスルー法、エアレイド法等が挙げられるが、これらの方法に限定されない。エアスルー法においては、ステープルファイバを原料として用い、これをカード機に供給して繊維の絡み合いによるウエブを形成し、該ウエブに貫通方式で熱風を吹き付けて、構成繊維の交点を熱融着させる。エアレイド法においては、短繊維を空気流に搬送させ、捕集コンベア上に堆積させることでエアレイドウエブを形成し、該ウエブの構成繊維間を熱や接着剤によって結合する。エアレイドで用いる繊維の長さはエアスルー法より短く、不織布構造が剛直になりやすいため、同じ熱風による製法の後に後処理として、金属、ゴム、コットン等のロールによる圧縮処理により、不織布の柔軟化を施す。また、前述の後処理による不織布強度低下を抑えるため、繊維交点における融着にラテックスバインダーを使用することが好ましい。
【0035】
不織布の構成繊維としては、例えば各種の熱可塑性樹脂から構成される単独の又は複合の熱融着性繊維を用いることが好ましい。この場合、繊維の太さは、上述のLC値を容易に満たすようにする観点から、1.5〜5.5dtex、特に2〜4.4dtexに設定することが好ましい。また、該熱融着繊維として、高融点樹脂からなる第1樹脂成分と、低融点樹脂からなる第2樹脂成分とを含み、第2樹脂成分が繊維表面の少なくとも一部を長さ方向に連続して存在している複合繊維を用いることも好ましい。
【0036】
不織布の構成繊維の具体例としては、単一樹脂の繊維として、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、ポリアミド6や、ポリアミド66等のポリアミド繊維、ポリ乳酸系繊維等の疎水性単一合成繊維が挙げられる。多成分系の複合繊維としては、芯鞘構造繊維における鞘側の低融点成分としてポリエチレン樹脂を用い、芯側にポリエチレンデレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド6や、ポリアミド66等のポリアミド樹脂、ポリ乳酸樹脂等の疎水性複合合成繊維を用いた芯鞘構造繊維が挙げられる。
【0037】
不織布は、上記した繊維を一種含む単独繊維から構成されていてもよく、あるいは二種以上の繊維をブレンドしたものであってもよいが、融着交点の形成の点から芯鞘構造繊維を40〜100質量%用いる事が好ましく、不織布の嵩高さの点から芯成分または単独繊維としてのポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂又はポリ乳酸樹脂等の樹脂量が、不織布において20〜60質量%である事が好ましい。また、上述した繊維を一種以上含む繊維層を複数層重ねて一体化したものであってもよい。更に不織布には、熱融着性繊維以外の繊維として、パルプやレーヨン等の天然系繊維を、融着形成を阻害しない程度(例えば不織布の30質量%まで)含めてもよい。
【0038】
不織布の厚みは、該不織布の坪量及び不織布密度が先に述べた範囲内であることを条件として、0.5〜5.0mm、特に0.8〜4.0mmであることが好ましい。これによって、不織布を十分に嵩高にすることが可能になる。なお、不織布の厚みは、(株)キーエンス製のマイクロスコープVHX−1000または先に述べたKES−G5「ハンディ圧縮試験機」を用い、荷重0.5gf/cm2の条件に測定される。
【0039】
本実施形態における接触印刷は、印刷時に不織布を厚み方向に圧縮して一時的な高密度状態を作り出し、その状態下にインクを施している。この状態においては、繊維交点の融着によって作り出される繊維間の隙間以外に、厚み的に異なっている繊維も介在して小さな繊維間の隙間を多く作り出せる。このことに起因して、インクは繊維上及びこの繊維隙間のうち比較的小さな部分を埋めるように付着する。不織布は、繊維交点が融着した繊維によるネットワーク構造を形成していることから上述のLC値を有しているので、低密度状態から高密度状態への変形が容易であり、印刷工程を通して安定した高密度状態を形成する。その後の圧縮状態の開放によって、不織布は略元の繊維構造に戻る。その場合、一時的に作り出された繊維間の隙間では、隙間の消失によって、付着したインクのうち、繊維表面に固定できない量が繊維交点に移動し、インク濃度の高い部分を作り出す。このようにして、インク集合部が、不織布の外面にのみ存在するだけでなく、該不織布の深さ方向にも分布するようになる。
【0040】
上述したように、LC値からは、圧縮における圧縮初期のつぶれやすさ(追従性)が評価でき、不織布がつぶれにくく高密度状態が安定するLC値は0.4以上であり、高密度状態が作り出しやすいLC値は0.8以下となっている。また、LC値がこの数値内であることは、不織布のネットワーク構造が均一的に作り出されていることが分かる等、印刷における総合的な値となっている。一方、同様にKES−G5を用いたKESによる評価からは、圧縮仕事量であるWC値や圧縮レジリエンスであるRC値を得ることができ、接触印刷によって形成された印刷部を有する不織布のWC値が0.8〜2gf・cm/cm2であり、RC値が50〜80%であると、印刷工程における部分的な適応性に優れている。印刷時の加圧によってもインクが不織布を通り抜けてしまわない程度の厚みが得られるのは、前記不織布のWC値が好ましくは0.8gf・cm/cm2以上であり、高密度状態が安定、かつ、容易に得られる前記不織布のWC値は2gf・cm/cm2以下である。インクの(分散による)固定が良好となる前記不織布のRC値は50%以上であり、高密度状態が安定する前記不織布のRC値は80%以下である。WC値はより好ましくは、1〜1.5gfcm/cm2であり、RC値は好ましくは55〜65%である。
【0041】
インク集合部11は単色のインクから構成されていてもよく、あるいは多色のインクから構成されていてもよい。インクが単色及び多色のいずれの場合であっても、一のインクに注目した場合、そのインクが濃淡印刷されていてもよい。上述した不織布の圧縮及びその解放によるインクの移動を好適なものとするためには、使用する印刷インクとしては、例えば水性や油性等の媒体系インク、紫外線硬化型等の硬化型インクなどを用いることができる。また、着色材を含まないクリアインクを着色インク適用前に不織布へ貼着し、繊維の隙間埋めや繊維隙間をより狭くした後に、着色インクの塗布を実施して、インクの固定性を一層向上させることもできる。また、ドット状にインクを点着するスクリーン印刷では、ドットの大きさや位置を制御することで、複数種のインクを塗布することができるので、マルチ印刷に対応することができる。更に、繊維表面に、インクと異なる性質を発現する界面活性剤や油剤を付与し、インクの移動性を制御するようにしてもよい(例えば、油性インクに対して親水性活性剤を繊維表面に付着させて、界面活性剤量によってインクの移動性を制御する等)。
【0042】
上述の各種のインクを用いた接触印刷法としては、例えば凸版印刷、平版印刷、孔版印刷等を採用することができる。これらの印刷法を行う場合には、接触印刷によって形成された印刷部を有する不織布のLC値が上述の範囲内であることを条件として、該不織布における印刷部形成のための不織布へ加えられる圧力(印刷圧力)が、不織布の厚みを30〜60%、特に40〜50%圧縮する条件下に印刷部が形成されるようにすることが、上述した不織布の圧縮及びその解放によるインクの移動を好適なものとする観点から好ましい。
【0043】
本発明の吸収性物品は、上記の実施形態に制限されるものではなく、この種の生理用ナプキン、例えば失禁パッド、失禁ライナ等に本発明を適応することができる。また、経血に限らずその他、尿、オリモノ、軟便等に対しても効果的である。また、表面シート1、吸収体3、裏面シート2及びサイドシート8の他にも用途や機能に合わせ適宜部材を組み込んでもよい。なお、上記実施形態の生理用ナプキンの表面シート1、吸収体3及び裏面シート2の材料、製法における条件や、製品の寸法諸言は特に限定されず、通常の生理用ナプキン等において用いられている各種材料を用いることができる。なお、「羽根」と同義で、「ウイング」や「フラップ」と表現することもある。
【符号の説明】
【0044】
1 表面シート
11 インク集合部
12 繊維
2 裏面シート
3 吸収体
4 羽根状シート
8 サイドシート
10 吸収性本体
100 生理用ナプキン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌当接面側に配置される表面シート、非肌当接面側に配置される裏面シート、及び両シートに介在された吸収体を有する吸収性物品であって、
前記表面シートは、不織布からなり、該不織布を構成する繊維同士が接触する交点には融着した融着部を有し、前記不織布の融着部付近にインク集合部が形成されており、肌当接面側からの平面視、前記インク集合部が少なくとも排泄部領域に散在している吸収性物品。
【請求項2】
肌当接面側に液透過性の表面シート、非肌当接面側に裏面シート、両シート間に吸収体が配置され、さらに前記表面シート若しくは前記裏面シートと前記吸収体との間、又は両方のシートそれぞれと前記吸収体との間に不織布からなる中間シートが配置され、該中間シートを構成する繊維同士が接触する交点には融着した融着部を有し、該不織布の融着部付近にインク集合部が形成されており、肌当接面側からの平面視、前記インク集合部が少なくとも排泄部領域に散在している吸収性物品。
【請求項3】
前記表面シートにおけるインク集合部は接触印刷によって形成される請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記インク集合部を有する不織布は印刷後熱風処理が施される請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項1】
肌当接面側に配置される表面シート、非肌当接面側に配置される裏面シート、及び両シートに介在された吸収体を有する吸収性物品であって、
前記表面シートは、不織布からなり、該不織布を構成する繊維同士が接触する交点には融着した融着部を有し、前記不織布の融着部付近にインク集合部が形成されており、肌当接面側からの平面視、前記インク集合部が少なくとも排泄部領域に散在している吸収性物品。
【請求項2】
肌当接面側に液透過性の表面シート、非肌当接面側に裏面シート、両シート間に吸収体が配置され、さらに前記表面シート若しくは前記裏面シートと前記吸収体との間、又は両方のシートそれぞれと前記吸収体との間に不織布からなる中間シートが配置され、該中間シートを構成する繊維同士が接触する交点には融着した融着部を有し、該不織布の融着部付近にインク集合部が形成されており、肌当接面側からの平面視、前記インク集合部が少なくとも排泄部領域に散在している吸収性物品。
【請求項3】
前記表面シートにおけるインク集合部は接触印刷によって形成される請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記インク集合部を有する不織布は印刷後熱風処理が施される請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−110537(P2012−110537A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263002(P2010−263002)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]