説明

吸収性物品

【課題】排泄液の蒸発があっても効率よく湿度の低減を行うことができ、肌側をムレにくくし、肌荒れ等を抑制し得る吸収性物品を提供する。
【解決手段】肌当接面側に配置された表面シート、非肌当接面側に配置された裏面シート、及び両シート間に介在配置された吸収体を備えた縦長の吸収性物品であって、前記吸収性物品の長手方向両側部に、着用者肌面側へ向かって起立する立体ガードを備えており、前記吸収性物品は、排泄液を受ける排泄部よりも吸収体長手方向端部側の部分に、液との接触で吸熱反応する吸熱物質を有し、前記吸収体は、前記排泄部から前記吸熱物質を有する部分へ液を誘導する液誘導手段を備える吸収性物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつや尿とりパッド等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ等の吸収性物品については、各部材の材料や構造が改良され、その機能や着用感の向上が図られてきた。吸収体についても、かかる改良を企図して開発がなされ、特に最近では使用状況や物品の種類に応じた機能性のものが種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1〜3には、排泄を着用者に知覚させて申告させるトレーニング用使い捨ておむつが記載されている。特許文献1のおむつでは、温度変化物質を配置するポケット部(吸収体の表裏貫通部)が吸収体に形成されている。これにより温度変化感応性に優れ、素早く確実な温度変化シグナルを発することができるとされる。特許文献2のおむつでは、粒子状の温度変化物質の一部を加熱溶融することにより粒子の移動や脱落が防止できるとされる。特許文献3のおむつでは、温度変化物質を浸透性層と不浸透層との間に挟持した温度変化要素を吸収体とは別体のもとして形成し、着用者の皮膚側に配置されている。これにより、緊密で連続的な接触状態で液体を保持でき、着用者により感知される温度変化のシグナルを最大限にできるとされる。特許文献4のおむつでは、幅方向にわたり重量比で非均一に分散した状態で温度変化材料を含むようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−81954号公報
【特許文献2】特開2009−201923号公報
【特許文献3】特開2004−525730号公報
【特許文献4】特表2009−511116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、排泄された尿は、人の深部体温に近い温度であり、一般的に36〜38℃と比較的高い温度を有する。前記従来技術は、この尿の温度を変化させることによって、着用者に排泄を知覚させるものである。一方、この尿の温度によって排泄部周辺の温度が上昇し、尿は吸収体内取り込まれても再び蒸気として肌側へ戻ることがある。特に、長時間装着等で吸収体が多量に尿を保持すると、肌側との空間へ蒸発が生じやすい。その蒸発の程度によっては、肌側の湿度の上昇となって肌への負担となりかねない。
【0006】
上記の点に鑑み、本発明は、排泄液の蒸発があっても効率よく湿度上昇を防止でき、肌側をムレにくくし、肌荒れ等を抑制し得る吸収性物品の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、肌当接面側に配置された表面シート、非肌当接面側に配置された裏面シート、及び両シート間に介在配置された縦長の吸収体を備えた吸収性物品であって、前記吸収性物品の長手方向両側部に、着用者肌面側へ向かって起立する立体ガードを備えており、前記吸収性物品は、排泄液を受ける排泄部よりも吸収体長手方向端部側の部分に、液との接触で吸熱反応する吸熱物質を有し、前記吸収体は、前記排泄部から前記吸熱物質を有する部分へ液を誘導する液誘導手段を備える吸収性物品を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の吸収性物品は、排泄液の蒸発があっても効率よく湿度上昇を防止でき、肌側をムレにくくし、肌荒れ等を抑制し得るという優れた作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明における第1の実施形態としてのパンツ型の使い捨ておむつを概ね着用状態の形状として模式的に示す斜視図である。
【図2】本実施形態のパンツ型使い捨てを展開して伸長した状態を示す一部切欠展開平面図である。
【図3−1】図2に示すA−A線断面を拡大して模式的に示す拡大断面図である。
【図3−2】図2に示すB−B線断面を拡大して模式的に示す拡大断面図である。
【図3−3】図1に示す使い捨ておむつの腹側部から股下部の一部までを肌当接面側(おむつの内側)から模式的に示した一部切欠斜視図である。
【図4】本実施形態の吸収体を肌当接面側から模式的に示した斜視図である。
【図5】本実施形態の吸収体に係る液誘導手段の変形例(変形例1)について、吸収体を概ねおむつ装着時の湾曲形状として模式的に示す縦方向断面図である。
【図6】本実施形態の吸収体に係る液誘導手段の別の変形例(変形例2)を模式的に示した図であり、(A)は吸熱部を含む液誘導手段を一部拡大して示す幅方向断面図であり、(B)吸熱部を含む液誘導手段を一部拡大し示す縦方向断面図である。
【図7】本実施形態の吸収体に係る液誘導手段のさらに別の変形例(変形例3)を模式的に示す斜視図である。
【図8】本実施形態の吸収体に係る液誘導手段のさらに別の変形例(変形例4)を模式的に示した図面であり、(A)は吸熱部を含む液誘導手段の平面図であり、(B)は(A)のB−B線断面の断面図である。
【図9】本実施形態の吸収体に係る液誘導手段のさらに別の変形例(変形例5)を模式的に示した縦方向断面図である。
【図10】本実施形態の使い捨ておむつに配設された凹状の蒸気誘導部について模式的に示した一部拡大斜視図である。
【図11】本実施形態の使い捨ておむつに配設された凹状の蒸気誘導手段の別の好ましい形態について模式的に示した図であり、(A)はおむつの幅方向断面図であり、(B)はおむつの縦方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態であるパンツ型使い捨ておむつについて詳細に説明する。まず本実施形態のパンツ型使い捨ておむつ10の概要を図1及び2を参照して説明する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態のパンツ型使い捨ておむつ10は、胴回り部Dを構成する環状外装体2と股下部Cを構成する吸収性本体3とを有する。吸収性本体3は、液保持性の吸収体31を備える。環状外装体2はおよそ胴回り部Dのおよそ半周ずつをなす腹側帯21及び背側帯22からなる。腹側帯21の左右両側部25,25と背側帯22の左右両側部26,26とがそれぞれ合掌状態に重ね合されて接合され、一対のサイドシール部11,11が形成されている。このサイドシール部11は、ヒートシール、超音波シール等の任意の手段を用いて形成することができる。こうして形成されたおむつ10は、胴回り部Dの上端が開放されたウエスト開口部12と、股下部Cの左右両側が開放された一対のレッグ開口部13,13とを有する。
【0012】
一方、おむつ10をサイドシール11,11で破断して展開した形状は、図2に示すように、長手方向(Y方向)に着用者の腹側に配される腹側部Fと背側に配される背側部Rとその間に位置する股下部Cとに区分される。腹側部Fに腹側帯21が配され、背側部Rに背側帯22が配されている。吸収性本体3は、股下部Cから腹側部F及び背側部Rを繋ぐように縦方向に配されている。展開されたおむつ10は、全体として、長手方向(Y方向)と幅方向(X方向)とを有するI字状の形状とされている。このおむつ10は、展開した状態から股下部Cのおむつの長手方向中央線CL付近で折りたたまれて前述のサイドシール部11が形成されて、図1のおむつ10となる。
【0013】
環状外装体2を構成する腹側帯21及び背側帯22は、いずれも撥水性でかつ水蒸気透過性の、着用者肌面側の1層以上の内層シート23と着用者非肌面側の外層シート24とからなる。この内層シート23と外層シート24との間に、胴回り方向に沿ってそれぞれ腰回り弾性部材27および胴回り弾性部材28が伸長状態で固定されている。これらの弾性部材が着用状態で適度に胴回り方向に伸縮して腰回りギャザー及び胴回りギャザーを形成しながら、着用者の胴回りにフィットして、おむつ10を着用者に密着させる。また、図示したものとは異なり、腹側帯21及び背側帯22において、外層シート24がおむつ10の身丈方向上方に延出して、あるいは外層シート24と内層シート23とがともにおむつ10の身丈方向上方に延出して、ウエスト開口部12の端縁から肌面側へ折り返され吸収性本体3の長手方向端縁を被覆した状態にしてもよい。すなわち外装体に折り返し部分を設け、吸収性本体3の前後端を押さえるような構成であってもよい。これにより該吸収性本体3の端縁が直接肌に当らないようにされ、装着時の柔らかな肌触りが生まれる。
【0014】
吸収性本体3は、液透過性の表面シート32、液不透過性又は撥水性の裏面シート33及び両シート間に介在配置される液保持性の吸収体31を有する縦長の形状である。吸収性本体3は、外装体の肌面側において、その長手方向をおむつの長手方向(Y方向)に向け、環状外装体2の腹側部F及び背側部Rの一部へ亘って配設され固定されている。その固定方法としては、例えば接着剤、ヒートシール、超音波シール等による方法が用いられる。吸収体31は、平面視において吸収性本体3と相似の縦長の形状である。本発明の吸収体31の形状は本実施形態のものに限定されるものではなく、股下部で括れた砂時計形状、その他の形状でもよい。
【0015】
吸収性本体3において、表面シート32の肌当接面側の両側部には、サイドシート4が吸収性本体3の長手方向に沿うように配されている。サイドシート4は吸収体31の幅方向外方に延出してその非肌当接面側に捲き下げられ、表面シート32と裏面シート33との間に固定されている。なお、サイドシート4の固定はこの形態に限定されず、裏面シート33と外装体2との間に固定されてもよいし、サイドシート4の吸収体31の幅方向外方に延出した部分を巻き下げず、吸収体31の幅方向外方に延出された裏面シート33に、平面的に固定されていてもよい(図示せず)。サイドシート4の幅方向内方の端縁は、表面シート32に固着されない一対の自由端となり、その端部を折り返した内部に弾性部材42を有する。おむつの着用状態において弾性部材42の収縮により自由端が起立して立体ガード41,41となり、ポケットが形成され液等の横モレを防ぐ効果を有する。また立体ガード41は、着用者の肌と吸収性本体3との間に実質的に閉じた空間を形成し、後述の湿気の低減について効果的な作用をする。また左右それぞれのサイドシート4は、その幅方向外方の端部を折り返して弾性部材43を挟持し、レッグギャザーを形成する。レッグギャザーは、弾性部材43の伸縮により着用者の足の付け根回りをバランス良く適度に締め付けて良好な装着性とこの部分からの液等の漏れ防止性とを発揮する。
【0016】
環状外装体2及び吸収性本体3の材料等に関する詳細は後述するが、本実施形態において表面シート32は、排泄された体液を速やかに透過し、吸収体31に伝達する観点と、肌触りのよさの観点から親水性のエアスルー不織布を用いている。また、裏面シート33は、液難透過性で且つ水蒸気の透過性を有する多孔質フィルムを用いている。
吸収体31は親水性繊維(フラッフパルプ)及び高吸水性ポリマー等を含有した集合体をコアラップシート(図示せず)で被覆したものを用いている。
環状外装体2としては、内層シート23及び外層シート24がともに不織布からなり、実質的に撥水性で且つ水蒸気の透過性を有する構造とされている。環状外装体2をなす腹側帯21及び背側帯22は、吸収性本体3の長手方向端部の外方において、水蒸気をおむつの外側へと排出可能とされた透湿性のウエストフラップ部29となる。
【0017】
本発明においては、特に断らない限り、人体に接触する側を肌面側ないし肌当接面側あるいは表面側といい、これと反対側を非肌面側ないし非肌当接面側あるいは裏面側という。着用時に人体の前側に位置する方向を前方といいその端部を前端部とし、後側に位置する方向を後方といいその端部を後端部として説明する。吸収性物品の表面又は裏面の法線方向を厚み(厚さ)方向といいその量を厚み(厚さ)という。
【0018】
図2に示すように、おむつ10の股下部Cは、着用者の排泄液を直接的に受ける排泄部(本実施形態において排尿部)81、82(男性の場合は81、女性の場合は82)を有する。排尿部81、82は、股下部Cにおける長手方向中央線CL付近よりも腹側寄りにある。本実施形態において、おむつ10を長手方向に均等に4分割したときの腹側端部から2番目の領域を排泄部対応領域85と定義し、さらに排泄部対応領域85を長手方向に均等に3分割して腹側から領域85a,85b,85cと定義する。排泄部81及び82はそれぞれ領域85b及び85cに対応している。また排泄部対応領域85よりも腹側に位置する部分(4分割の1番目の部分)を腹側端部領域86とし、他方、排泄部対応領域85よりも背側に位置する部分(4分割の3番目及び4番目)を順に臀部領域87、背側端部領域88と定義する。
【0019】
次に、本実施形態のおむつ10における、尿等の排泄液由来水蒸気の低減構造の好ましい態様について、図2〜4を参照して説明する。また、この水蒸気を単に蒸気や湿気ともいう。図3−1において、腹側帯21及び背側帯22の構成を省略してそれぞれ一体の部材として示した(これ以降の図面においても同様とした。)。また図4は、吸収体の模式的な斜視図であるが、ウエストフラップ部29との関係の理解のため腹側帯21及び背側帯22を一点鎖線で示した(図10においても同様とした。)。
【0020】
まず、おむつ10には、前述のとおり立体ガード41,41を有する。立体ガード41は、図3−2及び図3−3に示すように、弾性部材42の収縮によって着用者の肌側へと起立するようにされている。おむつ10の装着時には、起立した立体ガード41が排泄部81、82の左右両側で着用者の股下部分に当接する。そして着用者の腹側においては、鼠経部から下腹部へと至る部分に当接し、背側において臀部に当接している。これにより、吸収性本体3の肌当接面と立体ガード41,41と着用者の肌500とで囲まれた縦方向(Y方向)に沿う空間部45が形成されることとなる。
【0021】
通常、排泄尿は、排泄部81、82で直接受け取った時点では、着用者の深部体温に近い温度を有し、吸収体31に吸収保持されても、おむつ内の湿度条件によっては、水蒸気となって空間部45内に戻ることがある。本実施形態のおむつ10の空間部45では、空間部45内の湿度が平衡になるように、水蒸気が長手方向へと拡散し易い。特に腹側端部領域86ないし背側端部領域88が比較的水分が少なく低湿度であるため、高湿度の排泄部81(領域85b)、82(領域85c)付近から空間部45に沿って水蒸気が拡散し易い。さらに空間部45では、おむつ10の装着状態で股下部Cからウエスト開口部12へ水蒸気が上昇してより拡散し易い。これにより着用者のデリケートな排泄ポイント付近の湿度の上昇を効果的に防止することができ、着用者の肌荒れ防止に効果的である。
【0022】
このように水蒸気を長手方向に効果的に拡散させ、ひいては外部へと排出できるようにする観点から、立体ガード41は、着用者の鼠径部から下腹部辺りまでしっかりと当接していることが好ましい。そのため、立体ガード41の長手方向(Y方向)の起立基点41aは、吸収体31の腹側端部領域86にあることが好ましい(図2及び図3−3参照)。
【0023】
加えておむつ10の吸収体31には、排尿部81(領域85b)、82(領域85c)よりも長手方向端部側に、水分との接触により吸熱反応する吸熱物質36が複数配置されている。この配置部分を吸熱部38という。本実施形態の吸熱部38は、図2及び図3−1に示すように、吸収体31において、排泄部対応領域85の領域85aから腹側端部領域86に亘って配されている。その位置において、吸熱部38の幅(X方向の長さ)は、吸収体31の幅以下であり幅方向中央付近に配置されている。吸熱部38は、本実施形態においては、吸収体31と一体的に形成されている。具体的には、吸収体31の吸収素材である親水性繊維及び高吸水性ポリマーの混合積繊されたものに、粒子状の吸熱物質36を散布して吸熱部38を形成し、これをコアラップシート(図示せず)で被覆して吸収体31を得る。吸収体31は、吸熱部38の配設面側を肌当接面側として吸収性本体3に配置されている。
【0024】
この吸熱部38の形成(吸熱物質36の配置)方法は、これに限定されずこの種の物品に用いられる方法を任意に採用することができる。その際、後述の蒸気との接触による作用を考慮して、空間部45と吸熱部38との接触界面を多くすることが好ましい。つまり、吸熱物質36を吸収体31の肌当接面側に多く配置することが好ましい。例えば、吸収体31と一体的に形成する以外に、別工程で吸熱物質36をシート材料で挟んだ積層体を吸熱部38として形成し、これを適当な長さに切断して吸収体31の肌当接面上に載置してもよい。この場合、積層体としての吸熱部38は、吸収体31上に配置された後にコアラップシートによって被覆されていてもよいし、吸収体31を被覆したコアラップシートの上に載置されてもよい。この積層体に用いられるシート材料としては、液透過性の不織布、発泡体、織布素材などが挙げられる。
また別の形成方法として、パルプ繊維等からなる繊維集合層間の全体(一部でも良い)に、吸熱物質の粒子状物(及び高吸水性ポリマー)を積層状態又は混合状態で挟み、加熱して一体化することによっても得られる。この場合、吸熱物質36の一部は粒子の状態を維持し、残りの一部は溶融後固化して吸熱物質36の粒子状物、繊維、高吸水性ポリマー等を固定して一体化している。この、吸熱物質36を含む積層体は、上面及び/又は下面に、コアラップと同様の透液性のシートがさらに積層されてもよい。このような積層体の形成には、エアレイド不織布の製造プロセスを応用してもよい。
【0025】
吸熱部38と排泄尿との接触を迅速、かつ確実にするために、本実施形態のおむつ10の吸収体31には、排泄部81、82から吸熱部38へと排泄尿が素早く移行できるように、液誘導手段5としての凹部51が配設されている。凹部51は、図2及び図3−1に示すように、排泄部81、82から縦方向(Y方向)に吸熱部38を越える部分までに形成されている。凹部51は、吸収体31の親水性繊維や高吸水性ポリマー等の吸収素材が配されないか、周囲部より吸収素材の坪量が低くなされた溝形状部である。凹部51の縦方向端部側において、その位置の吸収体31内部に、吸熱部38が凹部51の窪み底面51aに面するように形成されている。凹部51においては、尿の移動を阻害するものがなく、排尿時の排出圧力が損なわれずに溝形状に沿って移動され易い。つまり排泄された尿(図4の矢印f参照)は、排泄部81、82から長手方向端部側にある吸熱部38へと素早く直接的に導かれる(図3−3及び図4(矢印f)参照)。そして導かれた尿は、凹部51の底にある吸熱部38の肌当接面側を覆うようにして吸熱部38と接触可能であり、広い面で素早く吸熱部38の吸熱反応が起こり得る。
【0026】
このように吸熱部38は、排泄液との接触により冷却され、その界面の空気を冷却する。これにより、前述の空間部45内で排尿部から拡散されてきた水蒸気は冷却により液体化され、再び吸収体31内部で吸収保持可能となる。その結果、吸熱部38が配された領域(領域85aから腹側端部領域86まで)のおむつ内の湿度が低減されうる。湿度低減による水蒸気圧の不均衡が作用し、前述の排泄尿の水蒸気の拡散とともに、さらに空間部45内の水蒸気が流動化しておむつ内の湿度の希釈化と平衡化とが促進される。これにより、股下部Cにおける湿度が更に低減し、肌への負担が軽減されて好ましい。
また液誘導手段5としての凹部51は、空気と接する界面でもある。しかも溝形状であるので、水蒸気自体もこれに沿って流動し得る(図3−3及び図4(矢印f)参照)。これにより、液体の尿のみならず気体の水蒸気を直接的に吸熱部38へと導いて接触させることができ、湿度低減に効果的である。このように排泄尿の液体と気体とが同一方向に移動し易く、吸熱反応と水蒸気の拡散とがタイミングよく生じ得るので好ましい。また吸熱部38が凹部51の底面51a側に配されていることで、該吸熱部38が肌に直接接し難くされており、良好な着用感の観点から好ましい。
【0027】
本発明において液誘導手段5は、排泄部81,82で受けた排泄液を積極的に吸熱部38へと導いて吸熱反応を起こさせる手段であり、尿と接し易い吸熱物質36の配置構造をも含めた手段である。この観点から、液誘導手段5は、本実施形態の凹部51に限定されるものではなく、水蒸気の拡散スピートにも対応して素早く液を吸熱部38へと導いて吸熱反応を起こさせる機能を有する手段を種々採用できる。
【0028】
例えば本実施形態の好ましい変形例として、図5〜9に示すような液誘導手段を挙げることができる。
図5の液誘導手段5では、図4に示す凹部51について、排尿部82から排尿部81を経由して吸熱部38の内方端38aへと向かって溝の深さが逓増するスロープ部52が形成されている。これにより、排尿部82からのスロープ部52を伝ってより尿が吸熱部38へと伝わり易く素早い吸熱反応が生じやすい。
【0029】
図6〜8に示す液誘導手段は、吸熱物質36の配置構造をも含めた液誘導手段である。
図6の液誘導手段5では、図4及び5に示す凹部51の底面51a、側壁51b,51b,51bに沿った吸収体31内部に吸熱物質36を配設する構造としている。この場合、図4及び5に示すような底面51aと液との接触に加え、3つの側壁51bとも接触することができるので吸熱作用面が増えて好ましい。さらにコの字状の窪みの中で吸熱反応が生じるので、立体的な冷却領域ができ、より確実に効果的に水蒸気を凝縮して吸収体31内部へと取り込むことができるので好ましい。またその配置面積に合わせて吸熱物質36の量も多くなるので、吸熱反応が持続され連続的な冷却作用による湿度低減の持続性が高められて好ましい。
【0030】
図7の液誘導手段5では、凹部51を幅方向に2つに分割し、それぞれの凹部51の端部側に吸熱部38,38を配置している。この場合、排泄液の誘導路を複数有し、より確実に尿を吸熱部38へと誘導できる。また同時に複数個所で吸熱反応を起こさせることができるので、水蒸気の凝縮とこれによる湿度低減がより効果的になされて好ましい。
【0031】
図8の液誘導手段5では、図3−1に示す底面51a下のものに加え、さらに吸熱部38を複数分散させ、肌当接面側に隆起させて配置している。ただし、各吸熱部38は吸収体31の肌当接面の位置よりも低くされている。これにより、液との接触をし易くし吸熱作用を効果的に奏し得るようにし、かつ肌に接し難くしている。また複数の吸熱部38が凹部51内で平面方向に複数列をなして配置されている。互いの列は、半ピッチずらされた配置である。これにより、凹部51に沿って流れてくる尿が手前側、奥手側の複数の吸熱部38と同時に接触することができ、素早く多くの吸熱反応を生じさせることができて好ましい。また、これに接する水蒸気の凝縮も複数個所でなされるので好ましい。
【0032】
図9の液誘導手段5では、図4に示す凹部51に代えて排尿部81、82に対応した液取り込み凹部53を設け、かつ吸収体31の構成素材の比率を変えている。具体的には、液取り込み凹部53下の吸収体31の構成素材の構成比率として、親水性繊維(フラッフパルプ等)の密度(v)に対する高吸収性ポリマーの密度(v)の比率(v/v)を、吸熱部38が配されている領域85a及び腹側端部領域86の同比率よりも低くしている。これにより、排尿部81、82における親水性繊維の含有量を下げて繊維間の距離を大きく保って、液の透過性を高めることができる(図9の矢印fからfへ)。そして、排泄部81、82よりも領域85a及び腹側端部領域86の繊維密度を高めて、その毛管力によって尿を強く引き込むことができる(図9の矢印f及びf参照)。その結果、一定の液吸収保持能力を維持しつつ、長手方向への液拡散性を有するものとなって好ましい。そして領域85a及び腹側端部領域86の高吸水性ポリマーの構成比率を高めたことで、凝縮した液を効果的に吸収保持できるので、液漏れ防止に効果的である。
【0033】
その他、図4〜9の液導液手段5において、さらに吸収体31の繊維密度を高めた筋状の高密度部を排泄部81及び82と吸熱部38とを繋ぐように設けてもよい(図示せず)。これにより、液が幅方向に拡散し難く、吸熱部38へとより素早く液を導くことができるので好ましい。
【0034】
以上のとおり、本実施形態で示した吸熱部38は、排泄尿の吸熱とこれによる界面付近の空気の冷却による水蒸気の凝縮と湿度の低減化をもたらすものである。これらの作用を効果的にするため、吸熱部38の大きさとして、吸熱部38の幅方向(X方向)の長さ(m)の吸収体31の幅方向の長さ(m)に対する割合は、50%以上が好ましく、70%以上がさらに好ましい。なお、吸熱部38の幅方向の長さ(m)は、吸熱部38が連続的に形成された領域の、幅方向の最も離間した端縁間の距離である。例えば、吸熱物質36を吸収体31と一体的に形成した場合は、吸収体31の吸熱物質36が含まれた箇所における、幅方向の端縁間の距離である。また、吸熱部38がシート状に形成された場合は、該シートの幅方向端縁間の距離である。シート状に形成された吸熱部38が、幅方向に離間して複数配置されている場合は、各吸熱部38の幅の和がmとなる。吸収体31の幅方向の長さ(m)は、吸熱部38と厚み方向に重なる部分における、吸収体38の幅方向長さを意味する。
また、吸熱部38を前身頃側(中心線CLより腹側寄り部分)に設ける場合、その長手方向(Y方向)の長さ(n)の吸収体31の前身頃側の長手方向の長さ(n)に対する割合は、10%〜80%が好ましく、40%〜60%がさらに好ましい。上記下限以上とすることで排泄尿が吸熱部38に到達しやすくなり、上限以下とすることで相対的に温度差が生じる部位を形成できる。なお、吸熱部38を分割して配置する場合の大きさは、分割したもの全てを含む領域として定義できる。また、吸熱部38を後身頃側(中心性CLより背側寄り部分)に設ける場合、後身頃吸熱部38の長手方向長さ(n)の吸収体31の後身頃側長さ(n2’)に対する割合は、10〜80%が好ましく、30〜50%がさらに好ましい。
また、排泄部81,82における尿の蒸発による気化熱(吸熱)、吸熱部38界面での水蒸気の凝縮による凝縮熱(発熱)を凌駕し、前記の湿度低減を効果的に持続させる観点から、吸熱物質36の含有坪量は、0.001〜0.075g/cmが好ましく、0.01〜0.05g/cmがさらに好ましい。上記下限以上とすることで相対的な温度差を生じさせることができ、上限以下とすることで着用者の冷感による不快感を低減できる。
【0035】
本発明において、吸熱部38の配置範囲は、前記の実施形態に限定されず、排尿部81及び82よりも長手方向端部側の部分であれば、適宜決めることができる。例えば、長手方向(Y方向)において、腹側端部領域86の端部(吸収体31の端部31a)にまで及んでもよい。また幅方向(X方向)おいて、吸収体の幅に一致するようにしてもよく、起立した立体ガード41,41と重ならない範囲に短くされていてもよい。さらに吸熱部38は、図2示すような1つの領域とすることに限定されず、複数に分割して配置してもよい。また、本発明において、吸熱部85及び液誘導手段5は、前記実施形態のように領域85aないし腹側端部領域86への配置に限定されず、臀部領域87ないし背側端部領域88にあってもよく、腹側及び背側の両方にあってもよい。
【0036】
さらに本実施形態において、環状外装体2をなす腹側帯21及び背側帯22は、いずれも液不透過性でかつ水蒸気透過性である。そのため、吸収性本体3が配されないウエストフラップ部29では、空間部45に存在する湿気が迅速に外部へと排出され易い。これによりおむつ内の空気の流動化が進み換気され易く、吸熱部38の作用を補助して湿度低減に貢献し得る。
【0037】
前述のウエストフラップ部29からの湿気の排出をより効果的なものとするため、吸収体31の長手方向端部側に凹状の蒸気誘導手段6を設けることが好ましい。具体的には、図10の吸収体31の斜視図が示すように、吸熱部38の幅方向(X方向)の長さに合わせて排気凹部61が配設されている。排気凹部61は、吸熱部38から吸収体31の端部側へと繋がる吸収体31の窪みであり、これにより、湿気がウエストフラップ部29へと誘導され易くされている(図10の矢印f参照)。また、凹状の蒸気誘導手段6として、図10の形状に限定されることなく、ウエストフラップ部29へと湿気を効果的に誘導するものであれば、任意に採用できる。例えば、図示しないが、排気凹部61の平面形状が、吸熱部38から吸収体31の端部側へ扇状に広がるものであってもよい。また排気凹部61が複数の筋状として放射線状に形成されたものであってもよい。
【0038】
本実施形態のおむつ10において、図11に示す蒸気誘導手段6を有することも好ましい。図11に示す蒸気誘導手段6として、吸収体31と表面シート32との間に、吸収体31を幅方向(X方向)に横断する複数本の弾性部材34を伸長状態で配設した構造を有する(図11(A)参照)。該複数本の弾性部材34は、それぞれ縦方向(Y方向)に間隔を空けて配されている。具体的には、本実施形態における弾性部材34は、おむつ10の縦方向4分の1の範囲当たり、つまり腹側端部領域86、排泄部対応領域85、臀部領域87、及び背側端部領域88それぞれの領域について、3〜15本ずつ配されていることが好ましい。本実施形態における各弾性部材34の縦方向(Y方向)の配置間隔は、略等間隔とされている。なお各弾性部材34の配置間隔は必ずしも等間隔に限定されるものではない。
【0039】
本実施形態における各弾性部材34は、幅方向(X方向)に横断する部分において、吸収体31とは接合されず、吸収体31の幅方向外方におけるシート部材間で接合固定されている。具体的には、複数本の弾性部材34それぞれの両端部は、縦方向(Y方向)に延びる一対のパネル部34a,34aで固定されている。該パネル部34aを介して弾性部材34の両端部が表面シート32とサイドシート4ないし裏面シート33との間で接合固定されている。各パネル部34aは、平面視してY方向に長い矩形状であり(図示せず)、2枚の同形同大のシート片から形成されている。各弾性部材34の両端部それぞれを、2枚のシート片の間で挟持した状態で、2枚のシート片をホットメルト型接着剤等の接合手段(接着剤)によって接合することにより、一対のパネル部34a間に、複数本の弾性部材34が縦方向(Y方向)に間隔を空けて配されている梯子状の弾性構成体を形成している。本実施形態においては、一組のパネル部34aで吸収体31の縦方向に亘って全ての弾性部材を固定するようにされているが、これに限らず4等分した腹側端部領域86、排泄部対応領域85、臀部領域87、及び背側端部領域88ごとにパネル部材34aを配してそれぞれの領域で固定するようにしてもよい。
【0040】
本実施形態において、幅方向に掛け渡した複数の弾性部材34は、パネル部34a以外では固定されておらず、自由に伸縮可能とされている。この接合固定によって、おむつ10の使用時に複数本の弾性部材34それぞれが収縮すると、吸収体31と表面シート32とは同一方向には変形せず、それぞれが離間するようになされている。これによって、表面シート32と吸収体31との間に縦方向(Y方向)に亘る蒸気誘導手段6としての凹状空間部62が形成される。吸収性本体3内部にある凹状空間部62では、主に排泄部81及び82で発生する水蒸気を長手方向(Y方向)へと誘導でき(図11の矢印f及びf参照)、湿度軽減の観点から好ましい。特に本実施形態においては、吸熱部38がある腹側方向への誘導が促進され、吸熱作用による湿度低減がより効果的に奏されて好ましい。このように吸収性本体3内部に形成される凹部空間部62において、湿気を肌から遠ざけ表面シート32下で流動化させることができる。このことが、前述の立体ガード41による空間部45と相俟って、肌の濡れた感触を軽減しつつ、おむつ10内の湿度を軽減でき好ましい。
また、凹状空間部62は、吸収体31に縦方向(Y方向)に沿った窪みを生じやすく、このことが前述の液誘導手段5の作用をより効果的なものとすることができ好ましい。加えて、弾性部材34の吸収体31端部側の収縮は、前述の蒸気誘導手段6と表面シート32との間に隙間を生じやすく、蒸気の外部への排出及び換気の作用をより効果的に生じ得るので好ましい。なお、本実施形態において弾性部材34はパネル部34aのみで固定されているが、前述の作用を阻害しない範囲で弾性部材34と表面シート32とを部分的に接合するようにしてもよい。
【0041】
次に、本実施形態の使い捨ておむつ10を構成する部材の好ましい形成素材について説明する。本実施形態における吸収体31、表面シート32、裏面シート33、吸収体31及びサイドシート4、並びに環状外装体2の形成材料としては、この種の物品に採用されるものを特に制限なく用いることができる。
例えば、吸収体31は、親水性繊維と高吸水性ポリマー粒子との混合物、または、親水性繊維と高吸水性ポリマー粒子と熱可塑性合成樹脂繊維との混合物、または、複数の繊維シートの間に高吸水性ポリマー粒子が挟まれた吸水性シートであり、所要の厚みに圧縮されている。親水性繊維としては、親水性表面を有する繊維を用いることができ、例えばセルロース繊維や、合成繊維を必要に応じ界面活性剤等により親水化処理したものが挙げられる。コアは、その型崩れやポリマー粒子の脱落を防ぐため、その全体がティッシュペーパーや親水性繊維不織布等の透液性シートに被覆されていてもよい。ポリマー粒子としては、デンプン系、セルロース系、合成ポリマー系のものを使用することができる。
【0042】
吸熱物質36としては、尿への溶解により吸熱するもの、尿との反応により熱を吸収するもの等を用いることができる。例えば、尿への溶解により熱を吸収するものとして、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等の含水塩、硝酸アンモニウム、硝酸カリウム、塩化アンモニウム、塩化カリウム(約−59cal/g)、硝酸ナトリウム等の無水塩、尿素、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール等の糖アルコール等、ポリオール等が挙げられる。特にソルビトールやキシリトールは、溶解性に極めて優れ、化学的安定性が良く、人体に悪影響を及ぼさないため、好適に使用できる。吸熱物質36は、粒子状(粉粒体含む)のものが液との接触性の観点から好ましいが、繊維状等の他の形状のものを用いることができる。また高吸水性ポリマーに吸熱物質36を含有させたものとしてもよい。
【0043】
表面シート32は、排泄された体液を速やかに吸収し、吸収体に伝達する観点と肌触りのよさの観点とから親水性のサーマルボンド不織布が好ましく、特にエアスルー不織布が好ましい。表面シート32は親水化処理された熱可塑性樹脂繊維であり、かつ、該繊維が2次クリンプ又は3次クリンプのような立体捲縮がなされた繊維であることが好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、及びこれらの複合繊維を作成し、所定の長さにカットしてステープルを形成する前の段階で、各種親水化剤を塗工する。親水化剤としては、αオレフィンスルホン酸塩に代表される各種アルキルスルホン酸塩、アクリル酸塩、アクリル酸塩/アクリルアミド共重合体、エステルアミド、エステルアミドの塩、ポリエチレングリコール及びその誘導物、水溶性ポリエステル樹脂、各種シリコーン誘導物、各種糖類誘導物、及びこれらの混合物など、当業者公知の親水化剤による親水化処理を用いることができる。
【0044】
裏面シート33としては、防水性があり透湿性を有していれば特に限定されないが、例えば疎水性の熱可塑性樹脂と、炭酸カルシウム等からなる微小な無機フィラー又は相溶性のない有機高分子等とを溶融混練してフィルムを形成し、該フィルムを一軸又は二軸延伸して得られる多孔性フィルムが挙げられる。前記熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィンが挙げられる。該ポリオレフィンとしては、高〜低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等が挙げられ、これらを単独で又は混合して用いることができる。また、他のおむつの中に挿入して用いる尿とりパッドなどにおいては、裏面シート33は液透過性を有していてもよい。
【0045】
サイドシート4としては撥水性の不織布が好ましく、カード法により製造された不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、ヒートロール不織布、ニードルパンチ不織布等の中から撥水性の物、または撥水処理した種々の不織布を用いることができる。特に好ましくは、例えば、スパンボンド不織布、スパンボンド−メルトブローン(SM)不織布、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド(SMS)不織布等が用いられる。
【0046】
環状外装体2(腹側帯21及び背側帯22)における内層シート23及び外層シート24の材料は、実質的に撥水性で且つ水蒸気の透過性を有するものであれば、この種の物品に一般的に用いられるものを好適に使用することができる。外層シート24としては、例えばエアスルー不織布、ヒートロール不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布等の各種製法による不織布、織布、編布、樹脂フィルム等が挙げられ、これらを積層一体化させてなるシート材等を用いることができる。内層シート23も外層シート24と同様のシート材等を用いることができる。また、内層シート23及び外層シート24は、いずれか一方もしくは両方が伸縮性を有するシート材で構成されていてもよい。伸縮性を有するシートとしては、2枚のシート材の間に伸縮性を有するフィルムを挟み込んだシートやポリウレタン等の伸縮性を有するエラストマー繊維から構成された不織布等が挙げられる。いずれの場合も内層シート23及び外層シート24からなる環状外装体2は撥水性を有していた方が防漏性の観点から好ましく、通気性及び水蒸気の透過性を有していた方が、おむつ10内の過度の湿度の上昇を防ぐために好ましい。また、内層シート23は1枚であっても複数のシートを組み合わせたものであってもよい。
【0047】
腰回り弾性部材27及び胴回り弾性部材28、立体ガード41を形成する弾性部材42、レッグギャザーを形成する弾性部材43、並びに凹状空間部62を形成する弾性部材34は、吸収性物品に用いられる通常の弾性材料を用いることができ、それぞれ同じ素材でもよいし、異なる素材、太さでもよい。
特に凹状空間部62を形成する弾性部材34としては、天然ゴム(又は合成ゴム)、ポリウレタンのスパンデックス弾性繊維等が挙げられる。弾性部材34として天然ゴム(合成ゴム)を用いる場合には、厚みが0.05〜3mm、幅が0.2〜5mmの弾性部材が用いられる。このような天然ゴム(合成ゴム)は、単糸での100%伸長時の応力が1〜70gfであることが好ましく、1〜30gfであることが好ましい。このような応力の天然ゴム(合成ゴム)の単糸を、100%以上、特に200%以上の伸長倍率となるように配することが好ましい。尚、伸長倍率は、自然長に対する、伸長されて増加した分の長さの割合であり、例えば、長さ10cmのものを20cmに伸長するとその伸長率は100%とされる。弾性部材34としてポリウレタンのスパンデックス弾性繊維を用いる場合には、単糸のサイズが10〜3360デニールのもの、特に70〜1120デニールのものを好ましく用いることができる。デニールは糸の太さを表す単位であり、9000mで1gある糸を1デニールと呼ぶ。このようなスパンデックス弾性繊維を、30%以上、特に100%以上の伸長倍率となるように配することが好ましい。
【0048】
本発明の吸収性物品は、上記の実施形態のパンツ型使い捨ておむつのほか、テープ型の使い捨ておむつや尿とりパッド、生理用ナプキン、失禁パッド、失禁ライナ等に適応することができる。
【符号の説明】
【0049】
2 環状外装体
3 吸収性本体
31 吸収体
32 表面シート
33 裏面シート
36 吸熱物質
38 吸熱部
4 サイドシート
41 立体ガード
41a 起立基点
45 空間部
5 液誘導手段
51 凹部
53 液取り込み凹部
6 蒸気誘導手段
61 排気凹部
62 凹状空間部
10 パンツ型使い捨ておむつ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌当接面側に配置された表面シート、非肌当接面側に配置された裏面シート、及び両シート間に介在配置された縦長の吸収体を備えた吸収性物品であって、
前記吸収性物品の長手方向両側部に、着用者肌面側へ向かって起立する立体ガードを備えており、
前記吸収性物品は、排泄液を受ける排泄部よりも吸収体長手方向端部側の部分に、液との接触で吸熱反応する吸熱物質を有し、
前記吸収体は、前記排泄部から前記吸熱物質を有する部分へ液を誘導する液誘導手段を備える吸収性物品。
【請求項2】
前記液誘導手段として、前記吸収体に、前記排泄部から吸収体の長手方向の前記吸熱物質が配置された部分へと向かう凹部が配設されている請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収体において、前記吸熱物質が配置された部分から前記長手方向端部に蒸気を導通する凹状の蒸気誘導手段が配設されている請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収体は親水性繊維と高吸水性ポリマーを含み、
前記液誘導手段として、前記排泄部における前記親水性繊維の密度(V)の前記高吸水性ポリマーの密度(V)に対する比率(V/V)を、前記長手方向端部側付近の比率よりも低くしている請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収体の長手方向端部の外方に、透湿性のウエストフラップ部が配されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収性物品において、前記吸収体と前記表面シートとの間に、前記吸収体を横断する弾性部材が伸長状態で配設されており、該弾性部材の少なくとも両端部は前記表面シートと前記裏面シートとの間で固定されており、使用時に該弾性部材の収縮により、前記吸収体と前記表面シートとが離間するようにされた蒸気誘導手段を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−106723(P2013−106723A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253258(P2011−253258)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】