説明

吸引回収装置および吸引車

【課題】吸引作業をしながら容易にレシーバタンク内の回収対象物ではない液体を排出することが可能な吸引回収装置およびこれを備えた吸引車の提供。
【解決手段】集塵機22,23,24および排気口28を接続する配管に設けられ、それぞれ開閉が制御されることによって、ルーツブロワ25の吸引負圧により回収対象物をレシーバタンク21内に吸引可能にするバルブ群51〜54を備え、回収対象物のレシーバタンク21内への吸引時に、上限センサ37によりレシーバタンク21内の液面の上限が検出されると、バルブ群51〜54を制御してレシーバタンク21内の負圧を開放するとともに液体排出バルブ34を開き、下限センサ36によりレシーバタンク21内の液面の下限が検出されると、液体排出バルブ34を閉じるとともにバルブ群51〜54を制御して回収対象物のレシーバタンク21内への吸引を再開する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥や泥水等の回収対象物を、負圧を利用して吸引回収する吸引回収装置およびこれを備えた吸引車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、汚泥や泥水等の回収対象物を、負圧を利用して吸引回収し、処理場へ搬送する吸引車が知られている。例えば、特許文献1には、回収対象物の回収場所に挿入される吸引ホースと、吸引ホースに接続され、回収対象物を回収するレシーバタンクと、レシーバタンクに接続された第1のサイクロン式集塵機と、第1のサイクロン式集塵機に接続されたブロワと、ブロワの下流側に接続された第2のサイクロン式集塵機とを備えた吸引装置および吸引車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−92481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の吸引車では、作業状況によって回収対象物とともに回収対象物ではない水等の液体も必然的に吸引されてしまう場合がある。特に海底などからヘドロを吸引回収する際には大量の海水も一緒に吸引されるため、適宜レシーバタンクの排水バルブを操作して海水を排出しながら吸引作業を行う必要がある。
【0005】
ところが、この種の負圧を利用して吸引回収する吸引車では、吸引作業時にレシーバタンク内は負圧となっているため、排水バルブを開くだけでは液体を排出することができない。そのため、液体の排出時には、作業者がその都度レシーバタンク内の負圧を開放してから排水バルブを開く必要がある。
【0006】
そこで、本発明においては、吸引作業をしながら容易にレシーバタンク内の回収対象物ではない液体を排出することが可能な吸引回収装置およびこれを備えた吸引車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の吸引回収装置は、回収対象物を回収するものであり、外壁の鉛直方向中間位置に内部の液体を排出する液体排出口を有するレシーバタンクと、レシーバタンク内の液面の下限を検出する下限センサと、レシーバタンク内の液面の上限を検出する上限センサと、液体排出口に設けられた液体排出バルブと、レシーバタンクと配管にて接続されるブロワと、前記配管に介設され、ブロワの吸引負圧により回収対象物をレシーバタンク内に吸引したり、レシーバタンク内を加圧したりすることを可能にするバルブ群と、回収対象物のレシーバタンク内への吸引時に、上限センサによりレシーバタンク内の液面の上限が検出されると、バルブ群を制御してレシーバタンク内の負圧を開放するとともに液体排出バルブを開き、レシーバタンク内の液体が排出されて下限センサによりレシーバタンク内の液面の下限が検出されると、液体排出バルブを閉じるとともにバルブ群を制御して回収対象物のレシーバタンク内への吸引を再開する制御装置とを含むものである。
【0008】
本発明によれば、ブロワの吸引負圧により回収対象物をレシーバタンク内に吸引回収している際に、上限センサによりレシーバタンク内の液面の上限が検出されると、制御装置によりバルブ群が制御されてレシーバタンク内の負圧が開放されるとともに、液体排出バルブが開かれ、レシーバタンク内の回収対象物でない液体が排出される。そして、下限センサによりレシーバタンク内の液面の下限が検出されると、制御装置により液体排出バルブが閉じられるとともに、バルブ群が制御され、回収対象物のレシーバタンク内への吸引が再開される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ブロワの吸引負圧により回収対象物をレシーバタンク内に吸引回収している際に、レシーバタンク内の液面が上昇し、上限センサにより液面の上限が検出されると、自動的にレシーバタンク内の負圧が開放されて液体が排出され、下限センサにより液面の下限が検出されると、自動的に回収対象物の吸引が再開されるので、吸引作業をしながら容易にレシーバタンク内の回収対象物ではない液体を排出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態における吸引車の側面図である。
【図2】図1の吸引車の平面図である。
【図3】図1の吸引車の背面図である。
【図4】図1の吸引装置の配管系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明の実施の形態における吸引車の側面図、図2は平面図、図3は背面図である。図1から図3において、本発明の実施の形態における吸引車1は、車両10と、車両10に搭載された吸引装置20とから構成される。車両10は、キャブ11と、シャーシフレーム12とを有する。シャーシフレーム12は、車両10の前後方向に延びたサブフレーム13を備えている。吸引装置20は、このサブフレーム13上に搭載されている。
【0012】
また、シャーシフレーム12には、図示しないエンジン、ドライブシャフト、PTOや車輪14等が取り付けられている。なお、本明細書中において、車両10のキャブ11側を前側、後述するレシーバタンク21側を後側とし、レシーバタンク21側からキャブ11側に向かって車両10の右舷を右側、左舷を左側として説明する。
【0013】
吸引装置20は、サブフレーム13の後半部分に設置される汚泥や泥水等の回収対象物を回収する1次キャッチャとしてのレシーバタンク21と、サブフレーム13の前半部分にそれぞれ設置される2次キャッチャとしての第1の集塵機であるサイクロン式集塵機22と、3次キャッチャとしての第2の集塵機23と、4次キャッチャとしての第3の集塵機24と、吸引負圧を生じさせるブロワとしてのルーツブロワ25と、サイレンサ26と、操作盤27と、キャブ11内に設けられた制御装置29等により構成される。ルーツブロワ25は、前述のPTOを通じてエンジンにより駆動される。
【0014】
レシーバタンク21は後側が開放されたタンク本体21aと、タンク本体21aの開放部分を覆うテールゲート21bとを備えている。テールゲート21bの下方には、吸引バルブ30付き吸入口31と、排出バルブ32付き排出口33とが設けられている。また、レシーバタンク21の外壁の一部を構成するテールゲート21bの鉛直方向中間位置には、レシーバタンク21内部の上澄みの液体を排出する液体排出バルブ34付き液体排出口35が設けられている。
【0015】
さらに、レシーバタンク21内には、レシーバタンク21内の液面の下限を検出する下限センサ36(図4参照。)および上限を検出する上限センサ37(図4参照。)が設けられている。下限センサ36は、レシーバタンク21内の液面が液体排出口35と略同一高さを検出するものである。また、液体排出口35より下方位置には、レシーバタンク21内に溜まる汚泥の上限位置を検出する汚泥センサ38が設けられている。上限センサ37、下限センサ36および汚泥センサ38には、例えば、リードスイッチ内蔵の棒状本体部と当該本体部に外嵌されて当該本体部に沿って上下動自在なマグネット内蔵のフロートとを備えたリード式レベルセンサや、物質が持っている固有の誘電率が空気または真空と異なることを利用する静電容量式レベルセンサ等が用いられる。
【0016】
次に、図4を参照しながら、吸引装置20の配管系統について説明する。図4は吸引装置20の配管系統図である。
【0017】
図4に示すように、レシーバタンク21の排気口39とサイクロン式集塵機22の吸気口22aとは、配管40により接続されている。サイクロン式集塵機22の排気口22bと集塵機23の吸気口23aとは、配管41により接続されている。なお、配管41の途中には第1のバルブ51が設けられている。また、集塵機23の排気口23bとルーツブロワ25の吸気口25aとは、配管42により接続されている。
【0018】
また、ルーツブロワ25の排気口25bと集塵機24の吸気口24aとは、配管43により接続されている。また、集塵機24の排気口24bには、配管44が接続されている。この配管44の先は、サイレンサ26を介して排気口28に接続されている。また、配管44と配管41の第1バルブ51の位置よりも集塵機23に近い位置とは、配管45により接続されている。配管45の途中には第2のバルブ52が設けられている。また、配管44における配管45との接続部と集塵機24との間には第3のバルブ53が設けられている。
【0019】
配管41における第1のバルブ51の位置よりもサイクロン式集塵機22に近い位置と、配管44における第3のバルブ53の位置よりも集塵機24に近い位置とは、配管46により接続されている。この配管46の途中には、第4のバルブとしての負荷開放バルブ54が設けられている。また、配管43と配管44とは、配管47により接続されている。配管47の途中には、リリーフバルブ55が設けられている。また、配管41の途中には、バキュームブレーカー56が設けられている。
【0020】
なお、第1〜第3のバルブ51〜53のバルブ群、負荷開放バルブ54、吸引バルブ30および液体排出バルブ34は、自動で上水排出制御を行う際、操作盤27の操作に基づいてキャブ11内に設けられた制御装置29によって開閉が制御される。表1は吸引装置20の各作業時における各バルブの開閉状態を示している。なお、本実施形態においては、排出バルブ32は手動により開閉されるものであるが、自動で開閉される構成とすることも可能である。逆に、第1〜第3のバルブ群、負荷開放バルブ54、吸引バルブ30および液体排出バルブ34は、上水排出制御を行わない場合や緊急時には、個別に手動で開閉させることも可能となっている。
【0021】
【表1】

【0022】
次に、上記構成の吸引装置20の動作について説明する。汚泥や泥水等の回収対象物をレシーバタンク21内に吸引回収する場合、レシーバタンク21の吸引口31に吸引ホース(図示せず。)を接続し、この吸引ホースの先端を回収対象物の吸引箇所へ設置する。また、液体排出口35に液体排出ホース(図示せず。)を接続し、この液体排出ホースの先端をレシーバタンク21内の上澄みの液体を排出する箇所へ設置する。
【0023】
そして、表1の吸引時に示すように各バルブを開閉し、ルーツブロワ25を駆動する。これにより、レシーバタンク21内の空気は、配管40、サイクロン式集塵機22、配管41および集塵機23を経てルーツブロワ25によって吸引される。また、ルーツブロワ25によって吸引された空気は、集塵機24およびサイレンサ26を経て排気口28から大気中へ排出される。この結果、レシーバタンク21内の圧力が低下して負圧となり、回収対象物が吸引口31からレシーバタンク21内に吸引回収される。
【0024】
このとき、ルーツブロワ25によって吸引されるレシーバタンク21内の吸引空気は、配管40を経てサイクロン式集塵機22へ流入し、レシーバタンク21にて回収されなかった粉塵等が捕集される。さらに、サイクロン式集塵機22で除去できなかった粉塵は、次の集塵機23によって捕集される。また、ルーツブロワ25から排出された空気中の粉塵は、集塵機24によって捕集される。
【0025】
そして、レシーバタンク21内に回収された回収対象物のうち、回収対象物でない液体の液面が上昇し、上限センサ37によって検出されると、表1の中断時に示すように吸引バルブ30が閉じて回収対象物の吸引回収が中断され、負荷開放バルブ54が開かれる。これにより、レシーバタンク21内の負圧が開放され、大気圧となる。次いで、表1の液体排出時に示すように液体排出バルブ34が開き、レシーバタンク21内の上澄みの液体が液体排出口35から液体排出ホースを通じて排出される。
【0026】
その後、レシーバタンク21内の液面が下降し、液体排出口35と略同一高さとなり、下限センサ36によって検出されると、表1の吸引時に示すように液体排出バルブ34および負荷開放バルブ54が閉じられ、吸引バルブ30が開かれ、前述の吸引回収作業が再開される。これらの動作が繰り返し行われることで、吸引作業をしながらレシーバタンク21内の回収対象物でない液体が自動的に排出され、レシーバタンク21内への回収対象物の回収を容易に行うことができる。
【0027】
なお、本実施形態における吸引車1では、レシーバタンク21内に溜まった汚泥の上限位置が、汚泥センサ38によって液体排出口35より下方位置で検出されるため、この汚泥の上限位置が検出されたところで回収対象物の回収を停止すると、レシーバタンク21内に溜まった汚泥が液体排出口35より排出されることを防止することが可能である。
【0028】
一方、レシーバタンク21内に回収した回収物を加圧排出する場合、レシーバタンク21の排出口33に排出ホース(図示せず。)を接続し、この排出ホースの先端を回収物の排出箇所へ設置する。そして、表1の加圧時に示すように各バルブを開閉し、ルーツブロワ25を駆動する。これにより、大気が排気口28からサイレンサ26および集塵機23を経てルーツブロワ25によって吸引され、集塵機24およびサイクロン式集塵機22を経てレシーバタンク21内へ供給される。このようにレシーバタンク21内のエアーを加圧することで、排出口33からレシーバタンク21内の回収対象物を外部へ排出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の吸引回収装置および吸引車は、汚泥や泥水等の回収対象物を吸引回収する装置および車両として有用である。特に、本発明は、液体分を多く含む汚泥や泥水等の回収対象物から液体分を分離して回収する装置および車両として好適である。
【符号の説明】
【0030】
1 吸引車
10 車両
11 キャブ
12 シャーシフレーム
13 サブフレーム
14 車輪
20 吸引装置
21 レシーバタンク
21a タンク本体
21b テールゲート
22,23,24 集塵機
25 ルーツブロワ
26 サイレンサ
27 操作盤
28 排気口
29 制御装置
30 吸引バルブ
31 吸引口
32 排出バルブ
33 排出口
34 液体排出バルブ
35 液体排出口
36 下限センサ
37 上限センサ
38 汚泥センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回収対象物を回収するものであり、外壁の鉛直方向中間位置に内部の液体を排出する液体排出口を有するレシーバタンクと、
前記レシーバタンク内の液面の下限を検出する下限センサと、
前記レシーバタンク内の液面の上限を検出する上限センサと、
前記液体排出口に設けられた液体排出バルブと、
前記レシーバタンクと配管にて接続されるブロワと、
前記配管に介設され、前記ブロワの吸引負圧により前記回収対象物をレシーバタンク内に吸引したり、前記レシーバタンク内を加圧したりすることを可能にするバルブ群と、
前記回収対象物の前記レシーバタンク内への吸引時に、前記上限センサにより前記レシーバタンク内の液面の上限が検出されると、前記バルブ群を制御して前記レシーバタンク内の負圧を開放するとともに前記液体排出バルブを開き、前記レシーバタンク内の液体が排出されて前記下限センサにより前記レシーバタンク内の液面の下限が検出されると、前記液体排出バルブを閉じるとともに前記バルブ群を制御して前記回収対象物の前記レシーバタンク内への吸引を再開する制御装置と
を含む吸引回収装置。
【請求項2】
前記下限センサは、前記液面が前記液体排出口と略同一高さであることを検出するものである請求項1記載の吸引回収装置。
【請求項3】
前記液体排出口より下方位置に、前記レシーバタンク内に溜まる汚泥の上限位置を検出する汚泥センサを有する請求項1または2に記載の吸引回収装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の吸引回収装置を備えた吸引車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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