説明

吸殻消火装置

【課題】吸殻を挟圧して押し潰すと同時に水を強制的に浸み込ませることにより消火する吸殻消火装置において、導水スポンジ部材による毛細管現象を利用した給水方式を採用することにより、水を供給するために駆動源を必要としないとともに、給水源の汚れを未然に防止して清掃をする必要がないようにする。
【解決手段】水タンク20に収容された水を導水スポンジ部材10の毛細管力により駆動側消火ローラ8および従動側消火ローラ9に供給する。駆動側消火ローラ8および従動側消火ローラ9が転がり接触しながら回転することにより、吸殻Bを駆動側消火ローラ8および従動側消火ローラ9間で挟圧して押し潰すと同時に、駆動側消火ローラ8および従動側消火ローラ9に含浸された水を強制的に浸み込ませることにより消火する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸殻消火装置に関し、特に煙草の吸殻を押し潰すと同時に水を浸み込ませることによって消火する吸殻消火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および特許文献2には、吸殻を一対の消火ローラの間で挟圧して押し潰すと同時に一対の消火ローラに含浸された水を強制的に浸み込ませることにより消火するローラ型の吸殻消火装置が開示されている。
【0003】
また、特許文献3および特許文献4には、吸殻を水を含んだベルトで挟んで搬送しながら消火するベルト型の吸殻消火装置が開示されている。
【0004】
しかし、従来のローラ型またはベルト型の吸殻消火装置のいずれであっても、消火の確実性という点で問題があった。このため、現在では、一般に、吸殻回収箱に水を張っておいて、そこに吸殻を落とすことにより最終的に消火をしている。このため、吸殻から出た灰や脂で汚れた水が大量に発生していた。吸殻回収箱から吸殻を乾燥分離して一般ゴミとして廃棄したり、灰や脂で汚れた汚水を下水に流したりすることは大変面倒な作業であるとともに、環境保護の観点から難しかった。このため、廃棄物処理業者に産業廃棄物として料金を支払って処理してもらう必要があった。
【0005】
そこで、特許文献5では、最小限の水を使用するだけで吸殻の火を完全に消し、さらには圧縮してゴミを減らすことができるようにした灰皿が提案されている。この灰皿は、一対の消火ローラと、一方の消火ローラに接触して水を供給する水供給ローラと、水供給ローラが浸るように水を溜めたトレイとを備えている。
【特許文献1】実開昭48−068691
【特許文献2】実開昭49−055966
【特許文献3】特開平10−165638
【特許文献4】特開平10−305163
【特許文献5】特開2000−083644
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献5に記載された灰皿では、水供給ローラの一部がトレイ内の水に浸漬されており、水供給ローラがトレイから吸水した水を一対の消火ローラに供給するようになっていたので、水供給ローラを回転駆動する駆動源が必要であるとともに、消火ローラに付着した吸殻の灰や脂が水供給ローラを介してトレイ内の水を汚すことになるという問題点があった。このため、トレイの水を交換してトレイ内を頻繁に清掃する必要があったが、灰皿を使用するパチンコ遊技場等での実務において、トレイの水を交換してトレイ内を頻繁に清掃することを期待することは難しかった。
【0007】
本発明の目的は、上述の点に鑑み、吸殻を挟圧して押し潰すと同時に水を強制的に浸み込ませることにより消火する吸殻消火装置において、導水スポンジ部材による毛細管現象を利用した給水方式を採用することにより、水を供給するために駆動源を必要としないとともに、給水源の汚れを未然に防止して清掃をする必要がないようにした吸殻消火装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る吸殻消火装置は、水を含浸可能な外周部を有し、互いに転がり接触するように水平平行に配置された一対の消火ローラと、転がり接触面が上方から下方に向けて移動するように前記一対の消火ローラを互いに反対方向に回転させる駆動手段と、前記一対の消火ローラの少なくとも一方に一端が摺動接触するように配置された導水スポンジ部材と、前記導水スポンジ部材の他端を挿入して配置する水タンクとを備え、前記水タンクに収容された水が前記導水スポンジ部材の毛細管力により前記一対の消火ローラに供給され、前記一対の消火ローラが互いに転がり接触しながら回転することにより、吸殻を前記一対の消火ローラの間で挟圧して押し潰しながら下方に送ると同時に前記一対の消火ローラに含浸された水を強制的に浸み込ませることにより消火することを特徴とする。請求項1に係る吸殻消火装置によれば、導水スポンジ部材の一端が消火ローラに接触し、他端が水タンクに挿入されているだけであるので、水を供給するために駆動源を必要としないとともに、導水スポンジ部材が消火ローラと接触するのは一端だけであり、このために消火ローラから導水スポンジ部材に吸殻の灰や脂が転移したとしても、水タンクまで逆流して水タンク内の水を汚すおそれはない。よって、パチンコ遊技場等での実務において、水タンクの水を交換して水タンク内を頻繁に清掃する必要がなくなるという効果がある。
【0009】
請求項2に係る吸殻消火装置は、請求項1に記載の吸殻消火装置において、前記消火ローラが、ローラ軸と、このローラ軸に被覆された弾性スポンジ円筒部材とからなり、前記弾性スポンジ円筒部材が、前記ローラ軸に交換可能に取り付けられていることを特徴とする。請求項2に係る吸殻消火装置によれば、弾性スポンジ円筒部材がローラ軸に交換可能に取り付けられているので、弾性スポンジ円筒部材が吸殻の灰や脂で汚れて交換する必要が生じた場合でも、消火ローラ自体を交換する必要はなく、弾性スポンジ円筒部材だけを交換すれば済むという効果がある。また、ローラ軸に弾性スポンジ円筒部材が被覆されているだけなので、弾性スポンジ円筒部材を簡単に交換することができるという効果がある。
【0010】
請求項3に係る吸殻消火装置は、請求項1または2に記載の吸殻消火装置において、前記導水スポンジ部材が、前記水タンクに対して揺動自在に軸支されていて、その一端を前記消火ローラに摺動接触させるようになっていることを特徴とする。請求項3に係る吸殻消火装置によれば、導水スポンジ部材が、その一端を消火ローラに摺動接触させるようになっているので、導水スポンジ部材が消火ローラに柔らかく摺動接触して常に適度な水を水タンクから消火ローラに供給することができる。また、導水スポンジ部材と消火ローラとの摺動接触による磨耗を少なくすることができる。
【0011】
請求項4に係る吸殻消火装置は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の吸殻消火装置において、前記導水スポンジ部材が、吸水性スポンジ板を複数枚の耐食性金属板で挟み込んで積層することによって形成されていることを特徴とする。請求項4に係る吸殻消火装置によれば、導水スポンジ部材が吸水性スポンジ板を複数枚の耐食性金属板で挟み込んで積層して形成されているので、吸水性スポンジ板が水タンクに収容された水に接すると、即座に吸水を開始し、みるみるうちに水を内部に取り込んで、しっかりと保持し、保持した水を消火ローラに確実に供給することができる。また、耐食性金属板によって一定の形を保持することができるとともに導水スポンジ部材と消火ローラとの摺動接触による吸水性スポンジ板の過度の磨耗を防ぐことができる。
【0012】
請求項5に係る吸殻消火装置は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の吸殻消火装置において、前記水タンクに水検知センサが設置されていて、前記水タンクに収容された水の量が所定量以下になったときに水無し警報手段によって警報が発せられることを特徴とする。請求項5に係る吸殻消火装置によれば、水タンクに収容された水の量が所定量以下になったときに水無し警報手段によって警報が発せられるので、パチンコ遊技場等の係員が水タンクに収容された水を補充しなければならない時期を確実に知ることができ、水不足による吸殻の未消火を未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
水を供給するために駆動源を必要としないとともに、給水源の汚れを未然に防止して清掃をする必要がないようにした吸殻消火装置を提供するという目的を、消火ローラが導水スポンジ部材に摺動接触しながら回転することにより水タンクに収容された水が導水スポンジ部材の毛細管力により消火ローラに供給され、消火ローラに含浸された水を吸殻に浸み込ませることにより消火することによって達成した。
【0014】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0015】
図1ないし図9は、本発明の実施例に係る吸殻消火装置1を示す正面図,背面図,平面図,底面図,右側面図,左側面図,内部機構を省略したA−A断面図,正面側斜視図,および背面側斜視図である。本実施例に係る吸殻消火装置1は、図10に示すように、縦長の直方体状のハウジング2と、ハウジング2の内側上部に固定された消火ユニット部3と、ハウジング2内の消火ユニット部3の下位位置に正面側から着脱自在に設置される吸殻回収箱4とから、その主要部が構成されている。本実施例に係る吸殻消火装置1は、例えば、パチンコ遊技場において、パチンコ台の島からコンベア駆動装置100(図10,図11参照)によって搬送されてくる煙草の吸殻B(図10参照)を消火して回収するもので、そのコンベア駆動装置100の終端に設置して使用される。なお、コンベア駆動装置100自体は、すでに公知であり、かつ本発明とは直接関係しないので、その詳しい説明を割愛する。
【0016】
ハウジング2の正面上半部には、図8に示すように、消火ユニット部3に対応するように、本体カバー2aがビス等により取り付けられている。本体カバー2aには、消火ユニット部3の内部を外部に露出させるための窓が穿設されていて、この窓には、蝶番(図示せず)およびスナップラッチ2cによって開閉自在となるようにメンテナンスカバー2bが取り付けられている。このため、スナップラッチ2cに指を掛けてメンテナンスカバー2bを開けると、窓から消火ユニット部3の内部が外部に露呈される。ハウジング2の正面下半部には、ハウジング2の下半部内に吸殻回収箱4を収納設置するための開口2dとなっている。
【0017】
ハウジング2内の上端部は、図9に示すように、コンベア駆動装置100で搬送されてきた吸殻Bが投入される吸殻投入口2eとなっていている。ハウジング2内の吸殻投入口2eの近傍には、投入された吸殻Bが自重で落下するように、駆動側消火ローラ8および従動側消火ローラ9の転がり接触位置に向けて傾斜した4枚の案内板6a,6b,6c,6d(図3参照)が取り付けられている。
【0018】
消火ユニット部3は、図10に示すように、左側板,背面板および右側板からなる取付枠体5を備え、取付枠体5は、ハウジング2内の上半部に固着されている。取付枠体5には、駆動側消火ローラ8および従動側消火ローラ9を駆動させる回収モータM1(駆動手段)と、回収モータM1の動力を伝達するギアボックス7(図11参照)と、ギアボックス7に互いに転がり接触するように水平平行に回転自在に配置された駆動側消火ローラ8および従動側消火ローラ9と、駆動側消火ローラ8に一端が摺動接触するように配置された導水スポンジ部材10と、導水スポンジ部材10の他端を挿入して配置する水タンク20と、駆動側消火ローラ8および従動側消火ローラ9にガムなどの異物が貼り付いたときに掻き落とすための一対の板であるスクレーパ11,12とが取り付けられている。
【0019】
回収モータM1は、図11に示すように、ギアボックス7に取り付けられ、吸殻消火装置1の背面側に突出するように配設されている。吸殻消火装置1の背面側の、回収モータM1の下位位置には、回収箱検知スイッチS3が突設されている。回収箱検知スイッチS3は、吸殻回収箱4がハウジング2内に設置されると、吸殻回収箱4の背面で押されてオンとなるスイッチであり、吸殻回収箱4が正しく設置されていることが、回収モータM1を制御する安全回路(図示せず)によって検知される。吸殻回収箱4をハウジング2から取り外して回収箱検知スイッチS3がオフすると、回収モータM1は安全回路の作用により停止する。
【0020】
ギアボックス7は、図10および図11に示すように、取付枠体5の背面板内面側に固着されており、回収モータM1の出力軸に固着された出力ギアM1aと、出力ギアM1aに噛合された駆動ギア8cと、駆動ギア8cに噛合された従動ギア9cとが配設されている。駆動ギア8cには、駆動ローラ軸8aが同軸的に固定されて片持ち状態で取り付けられており、従動ギア9cには、従動ローラ軸9aが同軸的に固定されて片持ち状態で取り付けられている。駆動ローラ軸8aおよび従動ローラ軸9aは、所定の間隔を介して水平平行に配設されている。この所定の間隔は、押し潰され、水を浸み込まされた吸殻Bが通過できる以上の間隔である必要がある。
【0021】
駆動ローラ軸8aおよび従動ローラ軸9aは、図13(a)に示すように、合成樹脂製の中空ローラであり、駆動ローラ軸8aおよび従動ローラ軸9aの外周面には、その全長を被覆するように弾性スポンジ円筒部材8b,9bが装着されている。弾性スポンジ円筒部材8b,9bの厚さは、駆動ローラ軸8a,従動ローラ軸9a間の所定の間隔の半分より大きく、弾性スポンジ円筒部材8b,9bは、駆動ローラ軸8aおよび従動ローラ軸9aに装着された状態で所定以上の圧力で弾性的に圧接されている。
【0022】
弾性スポンジ円筒部材8b,9bは、例えば、ニトリルゴム,クロロプレンゴム等のゴムスポンジで成形されている。ゴムスポンジは、一般的に原料ゴム(天然ゴム,合成ゴム)に有機発泡剤,架橋剤,軟化剤,補強剤を練り込み、密閉された型内で加硫を行いながら発泡剤の分解により独立した気泡ゴムスポンジとして作られる。ゴムスポンジの特性は、これらの諸原料ゴムの選択と配合剤との組み合わせで、硬さ等の物性をかなりの範囲で調整することが可能である。弾性スポンジ円筒部材8b,9bは、連続化した気泡を備え、適度な弾性を持つと同時に水を含浸して保持する性質を持っている。また、熱伝導率が低く、比較的難燃性であるという性能を持っている。
【0023】
弾性スポンジ円筒部材8b,9bの内径は、駆動ローラ軸8aおよび従動ローラ軸9aの外径より少し小さくできていて、弾性スポンジ円筒部材8b,9bは、手前に引き出すことにより容易に駆動ローラ軸8aおよび従動ローラ軸9aから取り外すことができる。逆に、弾性スポンジ円筒部材8b,9bを駆動ローラ軸8aおよび従動ローラ軸9aに取り付ける場合は、弾性スポンジ円筒部材8b,9bを駆動ローラ軸8aおよび従動ローラ軸9aに圧入して内径を少し押し広げて密着させて空回りしないように装着される。従って、弾性スポンジ円筒部材8b,9bは、駆動ローラ軸8aおよび従動ローラ軸9aに着脱自在に交換可能となっている。弾性スポンジ円筒部材8bを着脱自在に交換可能としたのは、弾性スポンジ円筒部材8bが直接触れる吸殻Bの灰や脂で汚れるため、また従動側消火ローラ9の弾性スポンジ円筒部材9bとの転がり接触や導水スポンジ部材10との摺動接触により磨耗するためである。また、弾性スポンジ円筒部材9bを交換可能としたのは、弾性スポンジ円筒部材9bが直接触れる吸殻Bの灰や脂で汚れるため、また駆動側消火ローラ8の弾性スポンジ円筒部材8bとの転がり接触により磨耗するためである。弾性スポンジ円筒部材8bおよび弾性スポンジ円筒部材9bを着脱自在に交換可能としたことにより、駆動側消火ローラ8および従動側消火ローラ9全体を交換する必要がなくなるので、交換が容易になるとともに経済的である。なお、本実施例のように、駆動ローラ軸8aと従動ローラ軸9aとを同サイズとすることにより、弾性スポンジ円筒部材8bおよび弾性スポンジ円筒部材9bとして同じものを使用することができる。
【0024】
ギアボックス7では、図10および図11に示すように、駆動ギア8cと従動ギア9cとが噛み合っているので、回収モータM1が駆動すると、回収モータM1の出力軸に固定された出力ギアM1aが回転し、出力ギアM1aに噛合する駆動ギア8cを介して駆動側消火ローラ8が正面から見て時計方向(以下、順方向という)に回転すると同時に、駆動ギア8cに噛合する従動ギア9cを介して従動側消火ローラ9が正面から見て反時計方向(以下、逆方向という)に回転する。これにより、駆動側消火ローラ8の弾性スポンジ円筒部材8bと従動側消火ローラ9の弾性スポンジ円筒部材9bとが所定以上の接触圧力で転がり接触しながら同時に上方から下方に回転することになる。
【0025】
駆動側消火ローラ8および従動側消火ローラ9は、外周部が弾性スポンジ円筒部材8b,9bという柔らかい弾性材料であるため、硬い異物混入に対してローラ式では格別に配慮された機構(圧接している駆動側消火ローラ8および従動側消火ローラ9が開く機構等)を取り付ける必要がなく、簡単な構造となる。なお、駆動側消火ローラ8および従動側消火ローラ9の外径または弾性スポンジ円筒部材8b,9bの内径と駆動ローラ軸8aおよび従動ローラ軸9aの外径を同時に調節することにより、通過させたり、通過させなかったりする異物の大きさを調整することができる。
【0026】
導水スポンジ部材10は、図12(a)に示すように、例えば、1枚以上(図示は6枚)の吸水性スポンジ板10a(例えば、ポリビニルアルコール(PVA)スポンジ板等)を複数枚(図示は7枚)の耐食性金属板10b(例えば、ステンレス鋼板等)で挟み込んで積層することによって構成されている。
【0027】
PVAスポンジは、一見ソリッドなブロック状であっても、ミクロの目で捕らえるとその容積の90%は中空である。そして、この中空(気孔)を形成する基質部は、立体網目構造を成し、個々の気孔を完全に連続化している。このため、PVAスポンジは、極めて親水性が高く、縦横にめぐる微細気孔によって毛細管現象が生じるので、抜群の吸水性および保水性を発揮する。すなわち、PVAスポンジは、水に接すると、立体網目構造が即座に吸水を開始し、みるみるうちに水を内部に取り込んで、しっかりと保持する。
【0028】
耐食性金属板10bの間に厚さ2mm程の吸水性スポンジ板10aを挟むことにより、揚程を5cm位にできる。吸水性スポンジ板10aだけであると形状を保つことができないため、耐食性金属板10bが支えとなる。また、弾性スポンジ円筒部材8bと吸水性スポンジ板10aとは弾性体であり、摺動接触しながら弾性スポンジ円筒部材8bが回転するために吸水性スポンジ板10aが磨耗しやすい。耐食性金属板10b(弾性スポンジ円筒部材8bとの摩擦係数は吸水性スポンジ板10aよりも小さい)があることで、磨耗が耐食性金属板10bでとまり、それ以上進行しない。
【0029】
導水スポンジ部材10は、図12(b)に示すように、正面から見て逆L字形に形成されており、水タンク20に設けられた支軸20aに上部寄りの位置で揺動自在に軸支されている。導水スポンジ部材10は、図12(b)に示す支軸20aによる軸支状態で、重力の作用により支軸20aを中心とした比較的弱い右旋回力を与えられており、駆動側消火ローラ8の弾性スポンジ円筒部材8bに一端を接触させ、弾性スポンジ円筒部材8bとの摺動接触面に弱い接触圧力を与えている。なお、導水スポンジ部材10に旋回力を与える手段は、重力とは限られず、バネ等の弾性手段を使用することもできる。
【0030】
導水スポンジ部材10は、他端を水タンク20内に収容される水に浸漬されるように配置されている。導水スポンジ部材10は、吸水性スポンジ板10aの毛細管力により水タンク20に収容された水を、ポンプ等の駆動源を使わずに、弾性スポンジ円筒部材8bに給水することができる。駆動側消火ローラ8は、外周面部が弾性スポンジ円筒部材8bであるため、水タンク20から含浸された水を容易に従動側消火ローラ9の弾性スポンジ円筒部材9bにも含浸させることができる。駆動側消火ローラ8および従動側消火ローラ9が水を含浸することにより、火の着いた吸殻Bでも駆動側消火ローラ8および従動側消火ローラ9自体が燃えることなく消火することができる。導水スポンジ部材10による給水量は基本的に揚程に左右されるが、水を一対の弾性スポンジ円筒部材8b,9bに給水するため、一対の弾性スポンジ円筒部材8b,9bの含水量にも左右される。つまリ、吸殻Bの消火で水を消費すると弾性スポンジ円筒部材8b,9bの表面の水が不足するため、給水量が一時的に多くなるが、吸殻Bが無いときは弾性スポンジ円筒部材8b,9bの表面に充分に水があり、導水スポンジ部材10からは給水されない。導水スポンジ部材10によれば、一対の弾性スポンジ円筒部材8b,9bに水が潤沢であれば給水しないため、水を溜めるトレイが要らなくなるので、構造的に簡単になる。
【0031】
導水スポンジ部材10は、駆動側消火ローラ8の弾性スポンジ円筒部材8bと接触するので吸殻Bの灰や脂で汚れるため、また弾性スポンジ円筒部材8bと摺動接触で磨耗するおそれがあるため、水タンク20に対して支軸20aを抜き差しすることにより、容易に交換できるようになっている。なお、導水スポンジ部材10が弾性スポンジ円筒部材8bと接触するのは、摺動接触面だけであり、このため、弾性スポンジ円筒部材8bから導水スポンジ部材10に転移した吸殻Bの灰や脂が水タンク20に逆流して水タンク20内の水を汚すおそれはない。
【0032】
水タンク20は、有効水量が例えば240cc程度の透明または半透明の合成樹脂製の箱体で形成されており、下端部を消火ユニット部3の取付枠体5の長方形穴に嵌め込まれ、上端部を取付枠体5の曲げ部に嵌め込まれて配置されている。ハウジング2から本体カバー2aを取り外し、水タンク20を持ち上げて取付枠体5の嵌め込み部から外すと、水タンク20を容易に外すことができる。
【0033】
スクレーパ11,12は、ブレード状の板体で形成されていて、長手方向を駆動側消火ローラ8および従動側消火ローラ9の軸方向に配設されている。スクレーパ11,12のブレード先端部は、駆動側消火ローラ8および従動側消火ローラ9の下面に対接されていて、駆動側消火ローラ8および従動側消火ローラ9が回転するたびに弾性スポンジ部材8b,9bの外周面に付着した吸殻Bの灰や脂を掻き落とす役目をする。スクレーパ11,12によって掻き落とされた吸殻Bの灰や脂は、自重によって吸殻回収箱4内に落下する。
【0034】
吸殻回収箱4は、直方体状の箱体で形成され、その上端面には回収口(図示せず)が開口されているとともに、前板に一段と奥まった把手4a(図8等参照)が形成されている。吸殻回収箱4は、ハウジング2内の下半部に、正面側から開口2dを通じて着脱自在に設置される。駆動側消火ローラ8と従動側消火ローラ9との間を消火されて通り抜けてくる吸殻Bは、自重により回収口を通じて吸殻回収箱4内に落下する。吸殻回収箱4内に落下してくる吸殻Bは、押し潰され、かつ水を浸み込まされているので、完全に消火されており、吸殻回収箱4内に水を張る必要がないことは言うまでもない。
【0035】
図14は、本実施例1に係る吸殻消火装置1の電気回路の概要を示す回路ブロック図である。この電気回路は、水検知センサ回路CT1,回転センサ回路CT2,マイクロコンピュータ(以下、マイコンという)MPU,モータ運転回路CT3,警報リレー回路CT4,表示ランプ回路CT5等より構成される。なお、上記マイコンMPUの代わりに、ロジック集積回路の組み合わせ回路でも、構成が可能である。
【0036】
水検知センサ回路CT1は、DC5V電圧Vccと、間欠通電用スイッチング素子SW1と、水検知センサS1の電極棒S1a,S1bと、抵抗R1と、接地電圧GNDとの直列回路を構成する。水検知センサS1は、水タンク20への水の補給し忘れが想定できるため、安全性の確保のため必要である。水タンク20に一対の電極棒S1a,S1bを設置するだけで水検知センサS1としての機能を持たせ、水タンク20内の水が所定量以下になることを警報することができる。例えば、金属製(導通する材料)の一対の電極棒S1a,S1bを水タンク20の上面より下の高さに設置する。水検知センサS1は、2本の金属棒S1a,S1bに電圧を掛け、水が2つの電極棒S1a,S1b間に触れると導通し、水が所定量以下となれば導通が無くなることを利用している。しかし、水に複数の金属を入れると金属間に電圧差が生じ、イオンの移動が起こり、腐食が生じるが、金属間が導通状態にあると腐食の浸行が早くなる。それを食い止めるため、回路的に通常は閉鎖し、時折導通(間欠通電)させて水の量を監視することとしている。運転を開始して一定時間間隔(例えば、5分間)ごとに一定時間(例えば、1秒間)だけ通電して、一対の電極棒S1a,S1bの間の電位差を測定し、一定以上の電位差を生じれば一対の電極棒S1a,S1bは水に触れていないことがわかる。
【0037】
回転センサ回路CT2は、DC5V電圧Vccと、駆動ギア8cまたは従動ギア9cに固定した永久磁石mg1と、永久磁石mg1の磁気を感知する磁気センサMS1と、接地電圧GNDとで回転センサS2を構成する。回転センサS2は、ハウジング2内に設置され、駆動側消火ローラ8または従動側消火ローラ9の回転を検出する。例えば、駆動側消火ローラ8または従動側消火ローラ9が15秒間に1回転し、その間、1秒間だけ磁気センサMS1が永久磁石mg1の磁気を感知するようにする。
【0038】
モータ運転回路CT3は、DC5V電圧Vccと、スイッチング素子SW2と、運転リレーRy1と、回収モータM1と、搬送モータM2と、AC100V電源と、接地電圧GNDとから構成されている。なお、搬送モータM2は、吸殻消火装置1に設けられたものではなく、吸殻消火装置1とケーブル(図示せず)で接続されて使用されるコンベア駆動装置100に設けられているものである。
【0039】
警報リレー回路CT4は、DC5V電圧Vccと、スイッチング素子SW3と、警報リレーRy2と、警報ランプL1と、DC電源と、接地電圧GNDとから構成されている。
【0040】
表示ランプ回路CT5は、DC5V電圧Vccと、スイッチング素子SW4と、水無しランプL2と、抵抗R2と、スイッチング素子SW5と、回転異常ランプL3と、抵抗R3と、接地電圧GNDとから構成されている。警報ランプL1,水無しランプL2および回転異常ランプL3は、吸殻消火装置1の正面下端部寄りに、電源ランプL0と並置されて配設されている。
【0041】
次に、このように構成された吸殻消火装置1の動作について説明する。
【0042】
パチンコ遊技場では、開店始業前に吸殻消火装置1のメンテナンスカバー2bを開いて、水タンク20に所定量以上の水が収容されるように水を補給する。すると、電極棒S1a,S1bが水に接触される。また、導水スポンジ部材10の吸水性スポンジ板10aが水タンク20に収容されている水を吸い上げて、駆動側消火ローラ8の弾性スポンジ円筒部材8bとの摺動接触面に水を供給する。この後、メンテナンスカバー2bを閉じる。
【0043】
次に、パチンコ遊技場では、開店に備えて吸殻消火装置1の電源スイッチ(図示せず)をオンにする。すると、図示しない電源回路を通じて、電源ランプL0(図8等参照)が点灯する。
【0044】
マイコンMPUは、電源を投入されると、水検知センサS1に対して、非通電5分程度、通電1秒程度の間欠通電制御を開始する。そして、マイコンMPUは、水検知センサS1に通電している1秒間に、抵抗R1の端子電圧を読み取り、0Vならば水タンク20に水無しと判断し、高電位ならば水タンク20に水有りと判断する。なお、このように通電を間欠制御することで、水検知センサS1の電極棒S1a,S1bの表面の溶解・腐食の進行を遅らせ、寿命を延ばすことが期待される。
【0045】
水タンク20に水無しと判断したならば、マイコンMPUは、モータ運転信号をモータ運転回路CT3に出力せず、回収モータM1および搬送モータM2は停止したままとなる。また、マイコンMPUは、水無し信号を表示ランプ回路CT5に出力する。表示ランプ回路CT5では、スイッチング素子SW4がオンして、水無しランプL2が点灯する。さらに、マイコンMPUは、警報出力信号を警報リレー回路CT4に出力する。警報リレー回路CT4では、警報出力信号を受けると、スイッチング素子SW3がオンして、警報リレーRy2がオンする。これにより、警報ランプL1にDC電源が供給されて点灯による水無し警報が発せられる。これを見たパチンコ遊技場の係員は、水タンク20に所定量以上の水量が収容されるように水を補給することができる。水タンク20の容積が1日に消費される水量以上に十分にあれば、毎日1回の水チェックと給水で十分であるが、容積が少ない場合や給水を忘れた場合には、水タンク20に水検知センサS1があれば、警報を発生させることができる。
【0046】
水タンク20に水有りと判断したならば、マイコンMPUは、モータ運転信号をモータ運転回路CT3に出力する。モータ運転回路CT3では、モータ運転信号を受けると、スイッチング素子SW2がオンし、リレーRy1がオンして、AC100V電源から回収モータM1および搬送モータM2に通電が開始される。
【0047】
搬送モータM2に通電が開始され、搬送モータM2が回転すると、コンベア駆動装置100が駆動されて、パチンコ台の島に配置された複数の灰皿から吸殻Bがコンベアに乗って搬送され、吸殻投入口2eに導かれ、自重によって落下して、吸殻消火装置1に投入されるようになる。
【0048】
他方、回収モータM1に通電が開始され、回収モータM1が回転すると、出力ギアM1aに噛合する駆動ギア8cを介して駆動側消火ローラ8が順方向に回転すると同時に、駆動ギア8cに噛合する従動ギア9cを介して従動側消火ローラ9が逆方向に回転する。
【0049】
駆動側消火ローラ8が順方向に回転すると、弾性スポンジ円筒部材8bの、導水スポンジ部材10の吸水性スポンジ板10aとの摺動接触面が移動し、弾性スポンジ円筒部材8bの乾いた摺動接触面に水が連続的に供給されるようになる。さらに、弾性スポンジ円筒部材8bに供給された水は軸方向にも広がり、弾性スポンジ円筒部材8bに全長にわたって水が含浸されることになる。また、駆動側消火ローラ8の弾性スポンジ円筒部材8bと転がり接触する従動側消火ローラ9の弾性スポンジ円筒部材9bの乾いた転がり接触面にも水が移り、弾性スポンジ円筒部材9bにも全長にわたって水が含浸されることになる。この間、数分程度で、弾性スポンジ円筒部材8b,9b全体に水が行き渡ることになるが、弾性スポンジ円筒部材8b,9bは、一定量以上に水を含浸すると、それ以上の水を受け入れることはなくなり、導水スポンジ部材10の吸水性スポンジ板10aからの水の供給も停止する。このため、過剰となった水が、弾性スポンジ円筒部材8b,9bから下方に滴下するようなことはない。
【0050】
このような弾性スポンジ円筒部材8b,9bが水を含浸して転がり接触しながら回転する状態で、吸殻Bが吸殻投入口2eから吸殻消火装置1に投入されると、吸殻Bは、自重によって落下し、案内板6a,6b,6c,6dに案内されながら、弾性スポンジ円筒部材8bと弾性スポンジ円筒部材9bとの転がり接触位置に導かれ、弾性スポンジ円筒部材8bと弾性スポンジ円筒部材9bとの間に巻き込まれて挟圧されながら下方へ送り込まれる。
【0051】
すると、吸殻Bは、弾性スポンジ円筒部材8bと弾性スポンジ円筒部材9bとの間で押し潰されると同時に、水を含浸した弾性スポンジ円筒部材8b,9bから水を強制的に浸み込まされることになる。この結果、吸殻Bは、たとえ火が着いていたとしても、完全に消火される。また、吸殻Bが押し潰されるので、体積を圧縮されて一般ゴミとして廃棄しやすくなる。さらに、吸殻Bが水を浸み込ませることにより、水をまったく吸わせなかった場合の吸殻Bの回収時の灰の飛散を防止することが可能になる。
【0052】
そして、消火された吸殻Bは、弾性スポンジ円筒部材8bと弾性スポンジ円筒部材9bとの回転に伴って、両者の転がり接触位置を通り抜けて、自重によって吸殻回収箱4内に落下する。吸殻回収箱4内に落下した吸殻Bは、水を吸って完全に消火されているので、そのまま一般ゴミとして廃棄することができる。
【0053】
なお、弾性スポンジ部材8b,9bの外周面に付着した吸殻Bの灰や脂は、スクレーパ11,12によって掻き落され、自重によって吸殻回収箱4内に落下する。
【0054】
回収モータM1の運転中に、マイコンMPUは、回転センサS2から駆動ローラ軸8aまたは従動ローラ軸9aの回転出力信号を読み取り、パルス信号であれば回転正常と判断し、パルス信号が途切れたならば回転異常と判断する。
【0055】
回転正常と判断したならば、マイコンMPUは、モータ運転信号の出力を継続し、回収モータM1および搬送モータM2の運転を継続する。
【0056】
他方、回転異常と判断したならば、マイコンMPUは、モータ運転信号のモータ運転回路CT3への出力を停止する。モータ運転回路CT3では、モータ運転信号が停止すると、スイッチング素子SW2がオフし、リレーRy1がオフして、回収モータM1および搬送モータM2が停止する。また、マイコンMPUは、回転異常信号を表示ランプ回路CT5に出力する。表示ランプ回路CT5では、回転異常信号が入力すると、スイッチング素子SW5がオンして、回転異常ランプL3が点灯する。さらに、マイコンMPUは、警報出力信号を警報リレー回路CT4に出力する。警報リレー回路CT4では、警報出力信号を入力すると、スイッチング素子SW3がオンして、警報リレーRy2がオンする。これにより、警報ランプL1にDC電源が供給されて点灯による回転異常警報が発せられる。これを見たパチンコ遊技場の係員は、吸殻消火装置1のメンテナンスカバー2bを開いて、回転異常の原因となる異物を除去することができる。
【0057】
吸殻Bではなく、弾性スポンジ円筒部材8bと弾性スポンジ円筒部材9bとの間で押し潰せないほど大きく硬い異物(例えば、ライター等)が吸殻投入口2eから吸殻消火装置1に投入された場合、その異物は弾性スポンジ円筒部材8bと弾性スポンジ円筒部材9bとの転がり接触位置付近に留まることになる。この場合、パチンコ遊技場では、吸殻消火装置1のメンテナンスカバー2bを開いて指等でそれを比較的容易に除去することができる。
【0058】
しかし、弾性スポンジ円筒部材8bと弾性スポンジ円筒部材9bとの間を通り抜ける大きさで、しかも、弾性スポンジ円筒部材8bと弾性スポンジ円筒部材9bとの間に挟まるような長さの異物(例えば、鉛筆等)である場合には、駆動側消火ローラ8と従動側消火ローラ9との回転が、駆動ローラ軸8aおよび従動ローラ軸9aに押し付けられる異物によって同時にロックされ、異物が駆動側消火ローラ8と従動側消火ローラ9との間に挟まったまま留まってしまう恐れがある。このような場合には、図示しない逆転スイッチを操作することにより、マイコンMPUが、回収モータM1を逆回転させて、駆動側消火ローラ8を逆方向に、従動側消火ローラ9を順方向に回転させることができる。これにより、異物が下方から上方に戻ってきて浮き上がることになるので、メンテナンスカバー2bを開いて指等でそれを比較的容易に撤去することができる。
【0059】
本実施例によれば、導水スポンジ部材10の一端が消火ローラ8に接触し、他端が水タンク10に挿入されているだけであるので、水を供給するために駆動源を必要としないとともに、導水スポンジ部材10が消火ローラ8と接触するのは一端だけであり、このために消火ローラ8から導水スポンジ部材10に吸殻の灰や脂が転移したとしても、水タンク10まで逆流して水タンク10内の水を汚すおそれはない。よって、水タンク10の水を交換して水タンク10内を頻繁に清掃する必要がなく、パチンコ遊技場等での実務において水タンク10の水を交換して水タンク10内を頻繁に清掃する必要がなくなる。
【0060】
また、弾性スポンジ円筒部材8b,9bが駆動ローラ軸8aおよび従動ローラ軸9aに交換可能に取り付けられているので、弾性スポンジ円筒部材8b,9bが吸殻Bの灰や脂で汚れたり、磨耗したりした場合にも簡単に交換することができる。
【0061】
さらに、導水スポンジ部材10が、その一端を駆動側消火ローラ8に摺動接触させるようになっているので、導水スポンジ部材10が駆動側消火ローラ8に柔らかく摺動接触して常に適度な水を水タンク20から駆動側消火ローラ8および従動側消火ローラ9に供給することができる。また、導水スポンジ部材10と駆動側消火ローラ8および従動側消火ローラ9との摺動接触による磨耗を少なくすることができる。
【0062】
さらにまた、導水スポンジ部材10が吸水性スポンジ板10aを複数枚の耐食性金属板10bで挟み込んで積層して形成されているので、吸水性スポンジ板10aが水タンク20に収容された水に接すると、即座に吸水を開始し、みるみるうちに水を内部に取り込んで、しっかりと保持し、保持した水を駆動側消火ローラ8に確実に供給することができる。また、耐食性金属板10bによって一定の形を保持することができるとともに導水スポンジ部材10と駆動側消火ローラ8との摺動接触による吸水性スポンジ板10aの過度の磨耗を防ぐことができる。
【0063】
加えて、水タンク10に収容された水の量が所定量以下になったときに水無し警報ランプL2によって警報が発せられるので、水タンク20に収容された水を補充しなければならないことを確実に知ることができる。
【0064】
さらに、駆動側消火ローラ8および従動側消火ローラ9の外周面が比較的厚い弾性スポンジ円筒部材8b,9bで覆われているので、吸殻Bの長さや変形の如何に拘わらずその送り込みおよび押し潰しを的確に行うことができるとともに、吸殻B以外の硬い異物が混入していても、それによって動作停止を起こしたり損傷したりすることなく作動させることができる。
【0065】
以上、本発明の実施例を説明したが、これはあくまでも例示にすぎず、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【0066】
例えば、上記実施例では、水を含浸する一対の消火ローラを転がり接触させながら回転させることにより吸殻を一対の消火ローラ間で挟圧して押し潰すと同時に水を強制的に浸み込ませて消火するようにしたが、1つの消火ローラを静止する相手部材に摺動接触させながら回転させることにより吸殻を消火ローラと相手部材との間で挟圧して押し潰すと同時に水を強制的に浸み込ませて消火するようにすることもできる。
【0067】
また、上記実施例では、導水スポンジ部材を駆動側消火ローラと摺動接触させるようにしたが、導水スポンジ部材を従動側消火ローラと摺動接触させるようにしてもよく、2つの導水スポンジ部材を駆動側消火ローラおよび従動側消火ローラのそれぞれに摺動接触させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本実施例の吸殻消火装置の正面図。
【図2】本実施例の吸殻消火装置の背面図。
【図3】本実施例の吸殻消火装置の平面図。
【図4】本実施例の吸殻消火装置の底面図。
【図5】本実施例の吸殻消火装置の左側面図。
【図6】本実施例の吸殻消火装置の右側面図。
【図7】本実施例の吸殻消火装置の内部機構を省略したA−A断面図。
【図8】本の吸殻消火装置の正面側斜視図。
【図9】本実施例の吸殻消火装置の背面側斜視図。
【図10】本実施例の吸殻消火装置の正面断面図。
【図11】本実施例の吸殻消火装置の側面断面図。
【図12】図11中の消火ローラ,導水スポンジ部材および水タンクを取り出して示す図。
【図13】図12中の消火ローラを拡大して示す図。
【図14】本実施例の吸殻消火装置の電気回路図。
【符号の説明】
【0069】
1 吸殻消火装置
2 ハウジング
2a 本体カバー
2b メンテナンスカバー
2c スナップラッチ
2d 開口
3 消火ユニット部
4 吸殻回収箱
4a 把手
5 取付枠体
6a,6b,6c,6d 案内板
7 ギアボックス
8 駆動側消火ローラ
8a 駆動ローラ軸
8b 弾性スポンジ円筒部材(外周部)
8c 駆動ギア
9 従動側消火ローラ
9a 従動ローラ軸
9b 弾性スポンジ円筒部材(外周部)
9c 従動ギア
10 導水スポンジ部材
10a 吸水性スポンジ板
10b 耐食性金属板
11,12 スクレーパ
20 水タンク
20a 支軸
B 吸殻
CT1 水検知センサ回路
CT2 回転センサ回路
CT3 モータ運転回路
CT4 警報リレー回路
CT5 表示ランプ回路
L0 電源ランプ
L1 警報ランプ
L2 水無しランプ(水無し警報手段)
L3 回転異常ランプ
M1 回収モータ(駆動手段)
M1a 出力ギア
M2 搬送モータ
MPU マイコン
S1 水検知センサ
S2 回転センサ
S3 回収箱検知スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を含浸可能な外周部を有し、互いに転がり接触するように水平平行に配置された一対の消火ローラと、
転がり接触面が上方から下方に向けて移動するように前記一対の消火ローラを互いに反対方向に回転させる駆動手段と、
前記一対の消火ローラの少なくとも一方に一端が摺動接触するように配置された導水スポンジ部材と、
前記導水スポンジ部材の他端を挿入して配置する水タンクとを備え、
前記水タンクに収容された水が前記導水スポンジ部材の毛細管力により前記一対の消火ローラに供給され、前記一対の消火ローラが互いに転がり接触しながら回転することにより、吸殻を前記一対の消火ローラの間で挟圧して押し潰しながら下方に送ると同時に前記一対の消火ローラに含浸された水を強制的に浸み込ませることにより消火することを特徴とする吸殻消火装置。
【請求項2】
前記消火ローラが、ローラ軸と、このローラ軸に被覆された弾性スポンジ円筒部材とからなり、前記弾性スポンジ円筒部材が、前記ローラ軸に交換可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の吸殻消火装置。
【請求項3】
前記導水スポンジ部材が、前記水タンクに対して揺動自在に軸支されていて、その一端を前記消火ローラに摺動接触させるようになっていることを特徴とする請求項1または2に記載の吸殻消火装置。
【請求項4】
前記導水スポンジ部材が、吸水性スポンジ板を複数枚の耐食性金属板で挟み込んで積層することによって形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の吸殻消火装置。
【請求項5】
前記水タンクに水検知センサが設置されていて、前記水タンクに収容された水の量が所定量以下になったときに水無し警報手段によって警報が発せられることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の吸殻消火装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−273402(P2009−273402A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−127449(P2008−127449)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【特許番号】特許第4279341号(P4279341)
【特許公報発行日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(000002266)シルバー精工株式会社 (17)
【Fターム(参考)】