説明

吹払い式防雪柵

【課題】正風時には吹溜りの防止と視程障害の緩和を行なえ、平常時や逆風時には風圧を受けず、吹溜りの発生防止、柵の転倒防止を図ることができ、晴天時や無風時には道路外の視認性を高めて景観をよくすることができる実用的な吹払い式防雪柵を提供する。
【解決手段】 両側の支柱の間に複数の防雪板を配した防雪柵において、各防雪板が、両端部に支柱に設けた支持部で回転可能に受けられる支軸を有するともに道路に近い側の幅方向端縁部に調整用おもりが固定され、無風時と正風時に道路側に下傾した吹払い角度に保持され、逆風時に自動的に略水平状に倒れて反道路側で支えられるよう支柱に支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防雪柵とりわけ正風および逆風に対応可能な吹払い式防雪柵に関する。
【背景技術】
【0002】
道路などにおける防雪対策のための手段として、間隔をおいて立て込んだ支柱の間に複数段の防雪板を設置し、降雪季に各防雪板を20〜30度に傾けて風を側道側から本線に向かって斜め下方に誘導流通せしめ、道路面から反対車線側へ雪を吹払うようにした防雪柵は公知である。
【0003】
この構造の防雪柵は、吹雪時(正風)には吹溜りの発生防止に効果があるものの、季節の変わり目の際や異常気象などによって道路側から外方への逆風が吹いた時に、吹き止め柵のようになり、視程障害の緩和にならず、また道路に大きな雪丘(吹溜り)を発生させ、柵がないときよりもかえって大きな障害を作ってしまう問題があった。
また、前記防雪柵は逆風時に大きな風圧を受けるため、道路構造上大きな基礎を設けられない現状では柵が基礎ごと転倒し、支柱、防雪板の取替えや基礎の再設置あるいは基礎の設計変更を余儀なくされ、費用がかさむ問題があった。
さらに、晴天時や無風時にも防雪板が傾斜しているため、ドライバー目線が目隠しとなり、景観に障害(圧迫感)があると言う問題もあった。
【特許文献1】特開平10−18233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記のような問題点を解消するためになされたもので、その目的とするところは、正風時には吹溜りの防止と視程障害の緩和を行なえ、平常時や逆風時には風圧を受けず、吹溜りの発生防止、柵の転倒防止を図ることができ、晴天時や無風時には道路外の視認性を高めて景観をよくすることができる実用的な吹払い式防雪柵を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため本発明は、 両側の支柱の間に複数の防雪板を配した防雪柵において、各防雪板が、両端部に支柱に設けた支持部で回転可能に受けられる支軸を有するともに道路に近い側の幅方向端縁部に調整用おもりが固定され、無風時と正風時において道路側に下傾した吹払い角度に保持され、逆風時に自動的に略水平状に倒れて反道路側で支えられるよう支柱に支持されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、無風時と正風時には防雪板が道路側に傾いて吹払い角度に保たれ、逆風時には道路に近い側の幅方向端縁部に調整用おもりが固定されていることによる重心点のずれによって防雪板の上部に風圧が大きく作用するため水平方向に自動的に回転して荷重を逃がすので、ドライバーの目線から視程障害を取り除き景観をよくすることができるとともに、道路側からの風がそのまま通過するので道路に雪丘を作ることがなくなり、視程障害を緩和できる。さらに、防雪板が風圧を受けないため逆風の荷重がほとんどなく、正風時の荷重で設計して設置しておいても柵の転倒発生を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
好適には、各防雪板がおもり位置付近で縦方向バーにより相互に連絡され、支柱には、反道路側に、防雪板の倒れ時に防雪板端部下面を受け止めるストッパーを支持部とほぼ同じ高さレベルに設け、ストッパーの上面もしくは防雪板の端板には、衝撃緩衝用のクッション材を固定している。
これによれば、構造が簡単でしかも逆風時には防雪板を安定して略水平状に保持できるとともに、正風時には円滑、確実に防雪板を吹払い角度に傾斜させることができ、また、ストッパーが防雪板の下面と当接するクッション材が固定されているので、起立時と倒れ時の衝撃を緩和できるとともに、防音効果を得ることができる。
【実施例1】
【0008】
以下添付図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図1ないし図4は本発明による吹払い式防雪柵の第1例を示している。
2は複数枚(図面では4枚)の起伏自在な防雪板であり、支柱1,1に対して複数枚の重心位置をずらせた防雪板2を傾転可能に支持させ、正風時と逆風時に自動的に角度変化させるようにしているが、この態様は、無風時および正風時において、図1 (a)と図2の下半部のように吹払い角度を保ち、逆風時には自動的に回転して倒れ姿勢となり、図1(b)と図2の上半部のようにほぼ水平状態に支持されるようになっている。
なお、最下位の防雪板2は、地面との間に1〜1.5m程度の空間が設けられている、これは、この範囲に防雪板を設けた場合、ひとたび埋雪すると機械除雪が不可能になり、シーズンを通しての効果が失われるからである。
【0009】
この態様においては、支柱1が、H形鋼あるいは溝形鋼を背中合わせに接合したメイン支柱1aと、これのフランジ側と間隔をおいて道路側に平行状に立設され、定間隔ごとに設けた横桟10によってメイン支柱1aのウエブに連結されたサブ支柱1bからなっている。
【0010】
各防雪板2は、複数の山状凹凸部230が長手方向に連続したデッキプレートのごときからなり、長手方向の両端には、アングル鋼材あるいは溝形鋼などからなる端板20,20が固定されている。
そして、両端板には、通常の場合の重心位置となる防雪板幅の中心位置に軸200,200が設けられており、メイン支柱1aには、図示しないが、縦溝と交差する軸受片が溶接などにより固定され、この軸受片に軸が載置されるようになっており、かつ軸の浮き上がりを阻止するため軸よりやや上位の柱フランジに、浮き止め部材が軸と直交上に取り付けられている。
【0011】
各防雪板2は、重心点をずらすために幅方向端縁部(道路に近い側)に調整用おもり23がボルトなどによって固定されている。調整用おもり23は鋼管や棒鋼、帯鋼板など任意である。
そして、全部の防雪板2が連動して角度変化されるよう、各防雪板2の調整用おもり23に近い部位にラインアップ用の縦バー24が連結されており、縦バー24の任意の位置(この例では最下段とその上の防雪板2の中間に相当する位置)に対応する支柱部位には、誘導路を兼ねた固定用部25が設けられている。
【0012】
固定用部25は、図2と図4のように、メイン支柱1aとサブ支柱1bを結ぶ横部材25aの側面に溝部材25bを固着してなり、縦バー24は溝部材25bを貫挿して延びている。
縦バー24には、溝部材25bに対応する高さ位置に板厚を貫く孔240が設けられており、溝部材25bには、固定を望む姿勢ないし角度(この例では水平姿勢)を固定化するために、その状態での縦バー24の溝部材内位置における孔240と合致する通孔250が設けられており、通孔250と孔240が整合した状態で固定用ピン26を挿入することにより、縦バー24が左右方向に移動されず、したがって防雪板2の姿勢が固定されるようになっている。
【0013】
一方、防雪板2が倒れ姿勢となったときにこれを受止めるために、少なくとも最下段の防雪板2の支持部近傍に相当するメイン支柱1aに、防雪板2の端板を受け止めるべく反道路側に張り出したストッパー103を設けており、ストッパー103の上面もしくは防雪板2の端板には、衝撃緩衝用のクッション材107を固定している。
【0014】
図5ないし図7は本発明の第2例を示している。
この第2例においては、防雪板2の軸200,200が第1例と同様に防雪板幅方向中央から道路側にずれた位置に設けられることにより重心位置をずらしている。その他は、第1例と同じであるから、説明は援用する。
【0015】
本発明においては、常態において防雪板2は調整用おもり23の重さで下傾するとともに各防雪板2が縦バー24によって連結されているため、同一の吹払い角度に保持される。この状態が正風時および無風時に保たれ、外方からの風が道路側に誘導されるため、雪溜りが解消される。
【0016】
そして、逆風が吹いた時には、防雪板2の重心点がずれていることから風は防雪板2の上部に大きく作用し、それにより、全防雪板2が後方に回転するとともに縦バー24は固定用部25の溝部材25b内で平行移動する。防雪板2はストッパー103に当接することにより水平状に支持される。
【0017】
この結果、風圧による荷重が逃がされ、道路側からの風は水平に近い角度の各防雪板2間の大きな空隙を通って外方に流出する。したがって吹き止め柵とならず、道路上に吹き溜まりを発生させないばかりか、道路上の雪を道路外に吹き飛ばして排出することができる。
また、逆風時には各防雪板2は風圧を受けず、風荷重をほぼゼロにすることができるので、正風条件で強度を設計しておいても、柵の転倒が起こらない。
夏季などにおいて、防雪板2の姿勢を保持したい場合には、固定用ピン26を溝部材25bに貫通させればよく、簡単である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は本発明による吹払い式防雪柵の第1例を正風時の状態で示す側面図、(b)は逆風時の状態で示す側面図である。
【図2】図1 (a)、(b)のX−X線に沿う拡大断面図であり、防雪板の起立状態と倒れ状態を半部ずつ示している。
【図3】(a)は防雪板の平面図、(b)は断面図である。
【図4】固定用部25の斜視図である。
【図5】本発明の第2例を正風時の状態で示す側面図である。
【図6】図5の一部拡大図である。
【図7】逆風時に状態で示す側面図である。
【図8】図3の一部拡大図である。
【符号の説明】
【0019】
1 支柱
2 防雪板
103 ストッパー
200 支軸
23 調整用おもり
24 ラインアップ用の縦バー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両側の支柱の間に複数の防雪板を配した防雪柵において、各防雪板が、両端部に支柱に設けた支持部で回転可能に受けられる支軸を有するともに道路に近い側の幅方向端縁部に調整用おもりが固定され、無風時と正風時に道路側に下傾した吹払い角度に保持され、逆風時に自動的に略水平状に倒れて反道路側で支えられるよう支柱に支持されていることを特徴とする吹払い式防雪柵。
【請求項2】
各防雪板がおもり位置付近で縦方向バーにより相互に連絡され、支柱には、反道路側に、防雪板の倒れ時に防雪板端部下面を受け止めるストッパーを支持部とほぼ同じ高さレベルに設け、ストッパーの上面もしくは防雪板の端板には、衝撃緩衝用のクッション材を固定している請求項1に記載の吹払い式防雪柵。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−30437(P2009−30437A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260151(P2008−260151)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【分割の表示】特願2004−46601(P2004−46601)の分割
【原出願日】平成16年2月23日(2004.2.23)
【出願人】(000003528)東京製綱株式会社 (139)
【Fターム(参考)】