呈味物質の拡散が抑制された冷凍食品

【課題】冷凍保管後にも呈味物質が拡散することが少なく、喫食した場合には異味・違和感なく出来立ての味に近い状態が維持される冷凍食品及び冷凍食品の製造に用いられる冷凍食品用材料の提供。
【解決手段】水溶性呈味物質及びゼラチンを、吸水性食材の内部に存在させてなる、冷凍食品用材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷凍保管中に時間が経過しても味が拡散してしまうことの少ない冷凍食品、冷凍食品用材料及び該冷凍食品用材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
保存期間の長い加工法として缶詰処理、レトルト処理及び冷凍処理などの方法が存在するが、その中で冷凍処理は保存期間を長くするだけではなく、素材を活かした製品形態とすることが可能であり、冷凍食品は近年多くの家庭や業界で食されている。そういった中、保存性や簡便性だけでなく出来立ての味をそのまま喫食時まで維持することが求められている。
【0003】
冷凍処理(例えば、−18℃等)を施した食品は凍結状態にあるため、冷凍食品中に含まれる物質は拡散しないように考えられがちであるが、拡散スピードが遅くなっているだけであって、冷凍環境下でも物質の拡散は起きている。そのため、冷凍食品でも保管中に味のコントラストが低下してしまい全体の味がなじんでしまうという問題があった。
【0004】
そこで、保管後であっても出来立てのときの味のコントラストを維持できる、呈味物質の拡散が抑制された冷凍食品が求められている。
【0005】
水溶性呈味物質の拡散抑制法としては、水溶性呈味物質をロウや油脂でコーティングする方法が知られている(特許文献1、2)。しかしながら、食品や食材に通常含まれないロウや油脂を使用すると、得られる食品は喫食時に異味・違和感が生じ、食味が低下するという問題があった。
【0006】
一方、特許文献3には、食塩とゼラチン水溶液とを用いる味付パン粉の製造法が記載されている。しかし、当該製造法によって得られる味付パン粉は、食塩とゼラチンとがパン粉の表面に付着したものに過ぎず、食塩とゼラチンとをパン粉の内部に存在させることについては、記載も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−295987号公報
【特許文献2】特開平11−155523号公報
【特許文献3】特公昭49−18223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、冷凍保管後にも呈味物質が拡散することが少なく、喫食した場合には異味・違和感なく出来立ての味に近い状態が維持される冷凍食品及び冷凍食品の製造に用いられる冷凍食品用材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、拡散を抑制させたい呈味物質及びゼラチンを溶解させた水溶液を、小麦粉やパン粉などの食材に含浸したものを、乾燥させてから少なくとも食品表面に存在させること、又は、少なくとも食品表面に存在させてから乾燥させることにより、冷凍保管中の呈味物質の拡散が抑制された冷凍食品が得られることを見出し、かかる知見に基づいてさらに研究を進めることによって本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0010】
[1]水溶性呈味物質及びゼラチンを、吸水性食材の内部に存在させてなる、冷凍食品用材料。
[2]水溶性呈味物質が、食塩である、上記[1]に記載の材料。
[3]吸水性食材が、穀物粉、デンプン及び食物繊維からなる群より選ばれる一種又は二種以上である、上記[1]又は[2]に記載の材料。
[4]吸水性食材に対する水溶性呈味物質の含有量が、吸水性食材100重量部に対して水溶性呈味物質10〜28重量部である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の材料。
[5]吸水性食材に対するゼラチンの含有量が、吸水性食材100重量部に対してゼラチン2〜8重量部である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の材料。
[6]JIS標準篩で4メッシュパスである、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の材料。
[7]トランスグルタミナーゼを、吸水性食材の内部に更に存在させてなる、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の材料。
[8]上記[1]〜[7]のいずれかに記載の材料が少なくとも表面に存在する食品を冷凍してなる、冷凍食品。
[9]食品が揚げ物である、上記[8]記載の冷凍食品。
[10]水溶性呈味物質及びゼラチンを含む水溶液を吸水性食材に含浸し、乾燥する工程を含む、冷凍食品用材料の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、冷凍保管中に呈味物質が拡散することが少なく、喫食した場合には異味・違和感なく出来立ての味に近い状態が維持される冷凍食品及び冷凍食品用材料を提供し得る。
また、本発明によれば、冷凍食品中の呈味物質の拡散を抑制するため、大量の呈味物質を使用しなくても出来立てのときの味のコントラストを維持でき、呈味物質の過大な使用を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1及び比較例1のパン粉を用いて調製した評価用冷凍コロッケの官能評価の結果を表したグラフである。
【図2】実施例2及び比較例2のパン粉を用いて調製した評価用冷凍コロッケの官能評価の結果を表したグラフである。
【図3】実施例3及び比較例3のパン粉を用いて調製した評価用冷凍コロッケの官能評価の結果を表したグラフである。
【図4】実施例4及び比較例4のパン粉を用いて調製した評価用冷凍コロッケの官能評価の結果を表したグラフである。
【図5】実施例5及び比較例5のパン粉を用いて調製した評価用冷凍コロッケの官能評価の結果を表したグラフである。
【図6】実施例6、7及び比較例6のパン粉を用いて調製した評価用冷凍コロッケの官能評価の結果を表したグラフである。
【図7】実施例8〜10及び比較例7、8のパン粉を用いて調製した評価用冷凍コロッケの官能評価の結果を表したグラフである。
【図8】実施例11及び比較例9、10のパン粉を用いて調製した評価用冷凍コロッケの官能評価の結果を表したグラフである。
【図9】実施例9及び実施例11のパン粉を用いて調製した評価用冷凍コロッケの官能評価の結果を表したグラフである。
【図10】比較例7及び比較例9のパン粉を用いて調製した評価用冷凍コロッケの官能評価の結果を表したグラフである。
【図11】比較例8及び比較例10のパン粉を用いて調製した評価用冷凍コロッケの官能評価の結果を表したグラフである。
【図12】試験例1〜9のパン粉の溶出率(%)を表したグラフである。
【図13】実施例11のパン粉の断面の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[冷凍食品用材料]
本発明の冷凍食品用材料は、水溶性呈味物質及びゼラチンを、吸水性食材の内部に存在させてなるものである。
本明細書において「冷凍食品用材料」とは、冷凍食品の調理、製造に用いられる材料をいい、「食材」とは、食品用材料をいう。
また、吸水性食材の「内部」とは、吸水性食材の中心から表層までの距離のうち10%以上表層から内側の部分をいう。
【0014】
水溶性呈味物質は、水溶性物質であって、かつ喫食時に何らかの食味を呈するものであれば特に制限されず、例えば、食塩(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化マグネシウム(MgCl)等の塩化物、アミノ酸、糖等が挙げられ、中でも喫食時に先味がたつことで出来立ての味を感じる等の観点から、食塩、塩化カリウム、塩化マグネシウム等の塩化物が好ましい。ここに「水溶性」とは、例えば、水に添加して穏やかに攪拌することにより、呈味性を有する程度の濃度の水溶液が得られる程度の溶解性を有するものをいう。
【0015】
吸水性食材における「吸水性」とは、食材の内部に水が浸み込むことができる性質を意味し、例えば、食材の自重に対して、少なくとも30重量%、好ましくは70重量%以上、より好ましくは100重量%以上の水が浸み込むことができる程度の吸水性を有するものをいう。
吸水性食材に対する水溶性呈味物質の含有量は、用いる吸水性食材及び水溶性呈味物質の種類等を考慮して適宜設定すればよいが、通常、吸水性食材100重量部に対して水溶性呈味物質10〜28重量部、好ましくは10〜20重量部である。吸水性食材100重量部に対して水溶性呈味物質が10重量部未満であると、呈味性が低くなる傾向があり、逆に、28重量部を超えると、製造時に水に対して充分に溶解できなくなる傾向がある。
【0016】
吸水性食材は、水を含浸できるものであれば特に制限されないが、冷凍食品に含まれて違和感のないものを用いることが好ましい。吸水性食材としては、パン粉、小麦粉、米粉等の穀物粉、デンプン、食物繊維等が例示され、好ましくはパン粉である。吸水性食材は、これらより一種を選択し、単独で用いてもよく、又は二種以上を選択し、組み合わせて用いることもできる。
【0017】
本発明において用いるゼラチンは、食品に通常使用されるものであればいずれも用いることができ、例えばアルカリ処理ゼラチン、酸処理ゼラチン等の製造方法や、その由来、種類等は特に制限されない。市販品を用いてもよい。本明細書において「ゼラチン」は、例えば、コハク化ゼラチン等のゼラチンの修飾物や、コラーゲンをも含む概念である。
【0018】
吸水性食材に対するゼラチンの含有量は、用いる吸水性食材の種類等を考慮して適宜設定すればよいが、通常、吸水性食材100重量部に対してゼラチン2〜8重量部、好ましくは2〜4重量部である。吸水性食材100重量部に対してゼラチンが2重量部未満であると、呈味物質の拡散抑制効果が充分でなく、逆に、8重量部を超えると、製造時に水溶液が凝固し、吸水性食材に含浸させることが困難となる。
【0019】
吸水性食材における、水溶性呈味物質とゼラチンとの含有比率は特に制限されないが、通常、重量比で、水溶性呈味物質:ゼラチン=1:0.05〜1.0、好ましくは水溶性呈味物質:ゼラチン=1:0.1〜0.8である。
【0020】
本発明の冷凍食品用材料は、トランスグルタミナーゼを吸水性食材の内部に更に存在させてなるものであってもよい。トランスグルタミナーゼが存在することにより、水溶性呈味物質の拡散抑制効果が更に向上する。
【0021】
トランスグルタミナーゼは、タンパク質のグルタミン酸残基とリジン残基を結合させる酵素である。本発明において用いるトランスグルタミナーゼは、食品に通常使用されるものであれば由来等は特に制限されず、市販品を用いてもよい。
【0022】
吸水性食材に対するトランスグルタミナーゼの含有量は、通常、ゼラチン100重量部に対してトランスグルタミナーゼ0.15〜0.5重量部、好ましくは0.3〜0.4重量部である。ゼラチン100重量部に対してトランスグルタミナーゼが0.15重量部未満であると、分散性が悪く、反応に時間がかかることとなり、逆に、0.5重量部を超えると、ダマが発生したり、反応が早すぎたりして吸水性食材に含浸させにくいこととなる。
【0023】
本発明の冷凍食品用材料は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて上記成分以外の各種の添加物が、吸水性食材の内部に更に存在していてもよい。当該添加物としては、例えば、保存料、着色料、香料、香辛料等が挙げられる。
【0024】
本発明の冷凍食品用材料の製造方法は、水溶性呈味物質及びゼラチンを含む水溶液を吸水性食材に含浸し、乾燥する工程を含むものである。
【0025】
水溶性呈味物質及びゼラチンを含む水溶液の水の量は、吸水性食材100重量部に対して70〜90重量部が好ましい。かかる水の量が吸水性食材100重量部に対して70重量部未満であると吸水性食材に均一に含浸させるのが難しくなる傾向があり、90重量部を超えると吸水性食材がべとつき乾燥後の食感に違和感を生じてしまう傾向がある。
【0026】
吸水性食材に、水溶性呈味物質及びゼラチンを含む水溶液を含浸させる方法は、特に制限されず、例えば、まず水溶性呈味物質を水に溶解し、ゼラチンを添加して50℃程度まで加熱溶解した後に40℃程度に冷まし、その後所望によりトランスグルタミナーゼを添加し、攪拌した後、吸水性食材にスプレーし、1時間程放置する方法等が挙げられる。
また、吸水性食材を微粉化したものに水溶性呈味物質及びゼラチンを含む水溶液を滴下又はスプレーし造粒することによっても実質的に同様のものが得られる。このとき冷凍食品用材料の粒径は滴下又はスプレーする液滴のサイズによって制御可能である。
【0027】
水溶性呈味物質及びゼラチンを含む水溶液を含浸させた吸水性食材を乾燥する方法は、特に制限されず、例えば、マイクロウェーブ加熱により乾燥する方法、オーブン加熱により乾燥する方法、ドライヤー等により温風を放射して乾燥する方法、過熱水蒸気を放射して乾燥する方法、揚げることにより乾燥する方法等の熱源を必要とする方法や、吸水性食材の微粉をまぶすことにより水分を吸い上げて乾燥させる方法等が挙げられ、中でも、乾燥時間の短さ、乾燥後の外観、拡散抑制効果の観点から、マイクロウェーブ加熱により乾燥する方法が好ましい。
【0028】
吸水性食材の乾燥の程度は特に制限されないが、水の含有量が、通常5重量%以下(好ましくは3重量%以下、より好ましくは1重量%以下、最も好ましくは0.1重量%程度又はそれ以下)となるまで乾燥することが好ましい。また、乾燥の速度も特に制限されない。
【0029】
乾燥した吸水性食材を粉砕及び篩別することにより、本発明の冷凍食品用材料が得られる。本発明の冷凍食品用材料の粒径は特に制限されないが、JIS標準篩で4メッシュパスであることが好ましい。当該粒径がJIS標準篩で4メッシュオンであると、そのような冷凍食品用材料を用いて調理、製造した冷凍食品は、外観に違和感のあるものとなってしまう傾向がある。また、当該粒径の下限値は特に制限されないが、JIS標準篩で16メッシュオンであることが好ましい。
【0030】
[冷凍食品]
本発明の冷凍食品は、本発明の冷凍食品用材料が少なくとも表面に存在する食品を冷凍してなるものである。
【0031】
本発明の冷凍食品用材料が少なくとも表面に存在する食品としては、例えば、揚げ物等の衣を有する食品(例、コロッケ、フライ、メンチカツ等のパン粉を使用した食品や、から揚げ、天ぷら等の小麦粉を使用した食品)等が挙げられ、中でも、パン粉を使用した食品(好ましくは、コロッケ)が好ましい。特に、表面と内部とで水溶性呈味物質の濃度が異なるものが好ましい。
【0032】
本発明の冷凍食品用材料が少なくとも表面に存在する食品は、本発明の冷凍食品用材料を少なくとも表面に存在させる工程を含むこと以外は、公知の食品と同様の原料を用い、公知の製造方法によって製造することができる。
【0033】
また、本発明の冷凍食品用材料が少なくとも表面に存在する食品は、水溶性呈味物質及びゼラチンを含む水溶液を含浸させた未乾燥の吸水性食材を、食品の少なくとも表面に存在させた後に、乾燥させる工程を含む製造方法によっても製造することができる。未乾燥の吸水性食材の乾燥の時期は、食品の冷凍前であれば特に制限されない。
【0034】
本発明の冷凍食品用材料が少なくとも表面に存在する食品の冷凍方法は、特に制限されず、公知の冷凍方法によって冷凍することができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0036】
本発明の冷凍食品用パン粉の冷凍保管後における先味の変化の評価
(実施例1のパン粉の調製)
水80gを200mlビーカーに入れた後、食塩5gを加え、攪拌して溶解させた。次いで、ゼラチン(商品名:LP250、Rousselot Isle Sur La Sorgue S.A.S社製)2gを更に添加し、50℃まで加熱して溶解した後、40℃まで放冷させた。バットにカラーセミドライパン粉100gを薄く敷き広げ、放冷した溶液をパスツールピペットを使ってパン粉全体へ塗布し、含浸させた。105℃で一晩乾燥させ、放冷した後、16メッシュと7.5メッシュのJIS標準篩を用いて、粒径が16メッシュオン〜7.5メッシュパスのものを篩別し、実施例1のパン粉を得た。
【0037】
(実施例2及び3のパン粉の調製)
食塩の量を、下表1に示す通り、10g又は20gに変更した以外は、実施例1と同様の操作により、実施例2及び3のパン粉を得た。
【0038】
(実施例4のパン粉の調製)
水80gを200mlビーカーに入れた後、食塩10gを加え、攪拌して溶解させた。次いで、ゼラチン(商品名:LP250、Rousselot Isle Sur La Sorgue S.A.S社製)2gを更に添加し、50℃まで加熱して溶解した後、40℃まで放冷させた。バットにカラーセミドライパン粉100gを薄く敷き広げ、放冷した溶液をパスツールピペットを使ってパン粉全体へ塗布し、含浸させた。105℃で一晩乾燥させ、放冷した後、16メッシュのJIS標準篩を用いて、粒径が16メッシュパス(粉状)のものを篩別し、実施例4のパン粉を得た。
【0039】
(実施例5〜7のパン粉の調製)
粒径を、下表2に示す通り、16メッシュオン〜7.5メッシュパス、7.5メッシュオン〜4メッシュパス又は4メッシュオンに変更した以外は、実施例4と同様の操作により、実施例5〜7のパン粉を得た。
【0040】
(実施例8のパン粉の調製)
水80gを200mlビーカーに入れた後、食塩10gを加え、攪拌して溶解させた。次いで、ゼラチン(商品名:LP250、Rousselot Isle Sur La Sorgue S.A.S社製)1gを更に添加し、50℃まで加熱して溶解した後、40℃まで放冷させた。バットにカラーセミドライパン粉100gを薄く敷き広げ、放冷した溶液をパスツールピペットを使ってパン粉全体へ塗布し、含浸させた。105℃で一晩乾燥させ、放冷した後、16メッシュと7.5メッシュのJIS標準篩を用いて、粒径が16メッシュオン〜7.5メッシュパスのものを篩別し、実施例8のパン粉を得た。
【0041】
(実施例9及び10、比較例8のパン粉の調製)
ゼラチンの量を、下表3に示す通り、2g、8g又は0gに変更した以外は、実施例8と同様の操作により、実施例9及び10、比較例8のパン粉を得た。
【0042】
(比較例1のパン粉の調製)
食塩5gを微粉状に粉砕し、カラーセミドライパン粉100gに付着させた後、16メッシュと7.5メッシュのJIS標準篩を用いて、粒径が16メッシュオン〜7.5メッシュパスのものを篩別し、比較例1のパン粉を得た。
【0043】
(比較例2及び3のパン粉の調製)
食塩の量を、下表1に示す通り、10g又は20gに変更した以外は、比較例1と同様の操作により、比較例2及び3のパン粉を得た。
【0044】
(比較例4のパン粉の調製)
食塩10gを微粉状に粉砕し、カラーセミドライパン粉100gに付着させた後、16メッシュのJIS標準篩を用いて、粒径が16メッシュパス(粉状)のものを篩別し、比較例4のパン粉を得た。
【0045】
(比較例5及び6のパン粉の調製)
粒径を、下表2に示す通り、16メッシュオン〜7.5メッシュパス又は7.5メッシュオン〜4メッシュパスに変更した以外は、比較例4と同様の操作により、比較例5及び6のパン粉を得た。
【0046】
(比較例7のパン粉の調製)
食塩10gを微粉状に粉砕し、カラーセミドライパン粉100gに付着させた後、16メッシュと7.5メッシュのJIS標準篩を用いて、粒径が16メッシュオン〜7.5メッシュパスのものを篩別し、比較例7のパン粉を得た。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
(官能評価)
3名の専門パネルにより、実施例1〜10、比較例1〜8のパン粉を用いて調製した冷凍コロッケを、−10℃で0日、5日、8日及び14日保存したときの先味の変化を評価した。本明細書において「先味」とは、食品を口中に入れ2〜4回咀嚼したときに感じる味をいう。
官能評価に用いた冷凍コロッケは下記の通りに調製した。
【0051】
(評価用冷凍コロッケの調製)
通常のカラーセミドライパン粉90重量部に対し、実施例1〜10、比較例1〜8のパン粉を各々10重量部ずつ混合し、冷凍コロッケ調製用の混合パン粉を得た。
70%加水マッシュポテト14gを成型し、その表面に打ち粉0.3g、乳化バッター3.2g、混合パン粉4.5gを順に付着させた後、240℃の過熱水蒸気を3分放射して、コロッケを調製し、得られたコロッケを−10℃で冷凍保存することにより、評価用冷凍コロッケを得た。
【0052】
(官能評価の方法)
官能評価は、評価用冷凍コロッケを市販の電子レンジを用いて、3個ずつ600W、50秒で加熱した後、20分放置してコロッケを調製し、その先味を3名の専門パネルが、それぞれ下記の評価基準を用いて0.5点刻みで採点を行い、それらの平均値を算出することにより行った。
8点:コントロールに比べとても強まっている
7点:コントロールに比べやや強まっている
6点:コントロールに比べわずかに強まっている
5点:コントロールとほとんど差がない
4点:コントロールに比べわずかに弱まっている
3点:コントロールに比べやや弱まっている
2点:コントロールに比べとても弱まっている
1点:コントロールに比べ非常に弱まっている
0点:塩味を感じない
コントロールには、実施例1と比較例1の官能評価では、比較例1の0日保存後のものをコントロールとし、実施例2と比較例2の官能評価では、比較例2の0日保存後のものをコントロールとし、実施例3と比較例3の官能評価では、比較例3の0日保存後のものをコントロールとし、実施例4と比較例4の官能評価では、比較例4の0日保存後のものをコントロールとし、実施例5と比較例5の官能評価では、比較例5の0日保存後のものをコントロールとし、実施例6、7と比較例6の官能評価では、比較例6の0日保存後のものをコントロールとし、実施例8〜10と比較例7、8の官能評価では、比較例7の0日保存後のものをコントロールとした。
【0053】
結果を図1〜7に示す。
【0054】
(先味の変化率の算出)
呈味物質の拡散抑制効果を評価するために、実施例1〜7、比較例1〜6のパン粉を用いて調製した評価用冷凍コロッケを、−10℃で8日保存したときの先味の変化率を、下記の通りに算出した。
変化率は、上記の官能評価の8日保存したときの評点の最大値と最小値との差を求めた後、実施例1〜3及び比較例1〜3は、比較例2の評点の最大値と最小値との差を100としてそれぞれ換算し、実施例4〜7及び比較例4〜6は、比較例5の評点の最大値と最小値との差を100としてそれぞれ換算することにより、算出した。変化率は60未満であることが好ましい。
【0055】
結果を表4に示す。
【0056】
【表4】

【0057】
また、実施例8〜10、比較例7、8のパン粉を用いて調製した評価用冷凍コロッケを、−10℃で14日保存したときの先味の変化率を、下記の通りに算出した。
変化率は、上記の官能評価の14日保存したときの評点の最大値と最小値との差を求めた後、比較例7の評点の最大値と最小値との差を100としてそれぞれ換算することにより、算出した。変化率は60未満であることが好ましい。
【0058】
結果を表5に示す。
【0059】
【表5】

【0060】
図1〜7及び表4、5に示す通り、本発明による実施例1〜10のパン粉を用いて調製した評価用冷凍コロッケは、−10℃で冷凍保存した後においても先味の強さが維持され、保存中の味の変化率が小さく、水溶性呈味物質の拡散が抑制されていることが確認された。一方、比較例1〜8のパン粉を用いて調製した評価用冷凍コロッケは、保存期間の経過に伴って、先味が弱まっていったことが確認された。
【0061】
トランスグルタミナーゼ添加による効果の評価
(実施例11のパン粉の調製)
水32gを200mlビーカーに入れた後、食塩8gを加え、攪拌して溶解させた。次いで、ゼラチン(商品名:LP250、Rousselot Isle Sur La Sorgue S.A.S社製)1gを更に添加し、50℃まで加熱して溶解した後、40℃まで放冷させ、その後、1%トランスグルタミナーゼ含有酵素製剤(商品名:KS−CT、味の素社製)1gを添加した。バットにカラーセミドライパン粉50gを薄く敷き広げ、得られた溶液をパスツールピペットを使ってパン粉全体へ塗布し、含浸させた。105℃で一晩乾燥させ、放冷した後、16メッシュと7.5メッシュのJIS標準篩を用いて、粒径が16メッシュオン〜7.5メッシュパスのものを篩別し、実施例11のパン粉を得た。
【0062】
(比較例9のパン粉の調製)
食塩8gを微粉状に粉砕し、カラーセミドライパン粉50gに付着させた後、16メッシュと7.5メッシュのJIS標準篩を用いて、粒径が16メッシュオン〜7.5メッシュパスのものを篩別し、比較例9のパン粉を得た。
【0063】
(比較例10のパン粉の調製)
水32gを200mlビーカーに入れた後、食塩8gを加え、攪拌して溶解させた。バットにカラーセミドライパン粉50gを薄く敷き広げ、得られた溶液をパスツールピペットを使ってパン粉全体へ塗布し、含浸させた。105℃で一晩乾燥させ、放冷した後、16メッシュと7.5メッシュのJIS標準篩を用いて、粒径が16メッシュオン〜7.5メッシュパスのものを篩別し、比較例10のパン粉を得た。
【0064】
(官能評価)
3名の専門パネルにより、実施例11、比較例9及び10のパン粉を用いて調製した冷凍コロッケを、−10℃で0日、5日、8日及び14日保存したときの先味の変化を評価した。
官能評価に用いた冷凍コロッケは下記の通りに調製した。
【0065】
(評価用冷凍コロッケの調製)
通常のカラーセミドライパン粉90重量部に対し、実施例11、比較例8及び9のパン粉を各々10重量部ずつ混合し、冷凍コロッケ調製用の混合パン粉を得た。
70%加水マッシュポテト14gを成型し、その表面に打ち粉0.3g、乳化バッター3.2g、混合パン粉4.5gを順に付着させた後、240℃の過熱水蒸気を3分放射して、コロッケを調製し、得られたコロッケを−10℃で冷凍保存することにより、評価用冷凍コロッケを得た。
【0066】
(官能評価の方法)
官能評価は、評価用冷凍コロッケを市販の電子レンジを用いて、4個ずつ600W、60秒で加熱した後、20分放置してコロッケを調製し、その先味を3名の専門パネルが、それぞれ下記の評価基準を用いて0.5点刻みで採点を行い、それらの平均値を算出することにより行った。コントロールには、比較例9の0日保存後のものを用いた。
5点:コントロールとほとんど差がない
4点:コントロールに比べわずかに弱まっている
3点:コントロールに比べやや弱まっている
2点:コントロールに比べとても弱まっている
1点:コントロールに比べ非常に弱まっている
0点:塩味を感じない
【0067】
結果を図8に示す。
【0068】
図8に示す通り、本発明による実施例11のパン粉を用いて調製した評価用冷凍コロッケは、−10℃で冷凍保存した後においても先味の強さが維持され、保存中の味の変化率が小さく、水溶性呈味物質の拡散が抑制されていることが確認された。一方、比較例9、10のパン粉を用いて調製した評価用冷凍コロッケは、保存期間の経過に伴って、先味が弱まっていったことが確認された。
また、トランスグルタミナーゼを添加した実施例11は、トランスグルタミナーゼ未添加の実施例9に比べ、評点が高いことから(図9)、トランスグルタミナーゼの添加により、食塩の呈味性が向上したことが確認された。尚、比較例7及び9、並びに、比較例8及び10は、食塩の濃度のみが異なり、その他の配合、製造方法はそれぞれ同様であるが、−10℃で保存したときの先味の変化はいずれも同様の挙動を示した(図10及び11)。
【0069】
乾燥方法についての検討
(試験例1〜9のパン粉の調製)
水80gを200mlビーカーに入れた後、食塩20gを加え、攪拌して溶解させた。次いで、ゼラチン(商品名:LP250、Rousselot Isle Sur La Sorgue S.A.S社製)2gを更に添加し、50℃まで加熱して溶解した後、40℃まで放冷させた。バットにカラーセミドライパン粉100gを薄く敷き広げ、放冷した溶液をパスツールピペットを使ってパン粉全体へ塗布し、含浸させた。下記の方法により、それぞれ乾燥させ、放冷した後、7.5メッシュと4メッシュのJIS標準篩を用いて、粒径が7.5メッシュオン〜4メッシュパスのものを篩別し、試験例1〜9のパン粉を得た。試験例1〜9のパン粉の乾燥後の水の含有量は、いずれも0.3重量%程度であり、カリカリとした食感を有していた。
試験例1:オーブン加熱(105℃、14.5時間)
試験例2:オーブン加熱(105℃、90分)
試験例3:オーブン加熱(105℃、210分)
試験例4:オーブン加熱(150℃、140分)
試験例5:オーブン加熱(150℃、270分)
試験例6:過熱水蒸気放射(200℃、20分)
試験例7:過熱水蒸気放射(240℃、20分)
試験例8:マイクロウェーブ加熱(500W、4分)
試験例9:ドライヤーによる温風放射(70℃、20分)
【0070】
(溶出率の確認試験)
200mlのビーカーに水100mlを入れ、200rpmで攪拌した後、試験例1〜9のパン粉1gを中心部に投入し、0、15、30、60、120秒、8、15、20分経過後に0.5mlずつビーカー内の水を採取した。それぞれの食塩濃度をNa濃度測定器(HORIBA C−122)により測定し、20分経過後の食塩濃度を100%として、それぞれの溶出率(%)を算定した。
【0071】
結果を図12に示す。
【0072】
乾燥時間、乾燥後のパン粉の外観(色等)及び溶出率等を考慮すると、試験例8のマイクロウェーブ加熱が最も好ましい乾燥方法であった。
【0073】
本発明の冷凍食品用パン粉の構造の確認
実施例11で調製したパン粉について、断面の電子顕微鏡観察を実施した。結果を図13に示す。
【0074】
図13に示す通り、本発明の実施例11のパン粉は、パン粉の内部に食塩が存在していることが確認された(図中白色部分)。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明によれば、冷凍保管中に呈味物質が拡散することが少なく、喫食した場合には異味・違和感なく出来立ての味に近い状態が維持される冷凍食品及び冷凍食品用材料を提供し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性呈味物質及びゼラチンを、吸水性食材の内部に存在させてなる、冷凍食品用材料。
【請求項2】
水溶性呈味物質が、食塩である、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
吸水性食材が、穀物粉、デンプン及び食物繊維からなる群より選ばれる一種又は二種以上である、請求項1又は2に記載の材料。
【請求項4】
吸水性食材に対する水溶性呈味物質の含有量が、吸水性食材100重量部に対して水溶性呈味物質10〜28重量部である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の材料。
【請求項5】
吸水性食材に対するゼラチンの含有量が、吸水性食材100重量部に対してゼラチン2〜8重量部である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の材料。
【請求項6】
JIS標準篩で4メッシュパスである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の材料。
【請求項7】
トランスグルタミナーゼを、吸水性食材の内部に更に存在させてなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の材料。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の材料が少なくとも表面に存在する食品を冷凍してなる、冷凍食品。
【請求項9】
食品が揚げ物である、請求項8記載の冷凍食品。
【請求項10】
水溶性呈味物質及びゼラチンを含む水溶液を吸水性食材に含浸し、乾燥する工程を含む、冷凍食品用材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−111059(P2013−111059A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262984(P2011−262984)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】